(54)【発明の名称】患者の口腔内に装着される人工物の品質を保証または管理するサービスを実現するためのコンピュータシステム、そのコンピュータシステムにおいて実行される方法およびプログラム
【解決手段】コンピュータシステム10は、ネットワーク20を介して、複数の端末装置30に接続されるように構成されている。コンピュータシステム10は、プロセッサ部50とデータベース部60とを含む。データベース部60には、患者識別情報と患者識別情報に関連付けられた人工物材料特定情報とが記憶されている。プロセッサ部50は、端末装置30の読み出し手段によって電子タグから読み出された患者識別情報に関連付けられた人工物材料特定情報が端末装置30の表示手段に表示されることを可能にするように構成されている。
患者の口腔内に装着される人工物の品質を保証または管理するサービスを実現するためのコンピュータシステムであって、前記コンピュータシステムは、ネットワークを介して、端末装置に接続されるように構成されており、
前記コンピュータシステムは、プロセッサ部とデータベース部とを含み、
前記データベース部には、患者識別情報と前記患者識別情報に関連付けられた人工物材料特定情報とが記憶されており、前記患者情報は、患者を識別するための情報であり、前記人工物材料特定情報は、前記患者の口腔内に装着される人工物の少なくとも一部の材料を特定するための情報であり、
前記患者識別情報が記憶された電子タグが前記患者の口腔内に装着された前記人工物に埋め込まれており、
前記端末装置は、前記電子タグに記憶された前記患者識別情報を読み出すための読み出し手段と、情報を表示するための表示手段とを含み、
前記プロセッサ部は、前記端末装置の前記読み出し手段によって読み出された前記患者識別情報に関連付けられた前記人工物材料特定情報が前記端末装置の前記表示手段に表示されることを可能にするように構成されている、コンピュータシステム。
患者の口腔内に装着される人工物の品質を保証または管理するサービスを実現するためのコンピュータシステムにおいて実行される方法であって、前記コンピュータシステムは、ネットワークを介して、端末装置に接続されるように構成されており、前記コンピュータシステムは、プロセッサ部とデータベース部とを含み、前記データベース部には、患者識別情報と前記患者識別情報に関連付けられた人工物材料特定情報とが記憶されており、前記患者情報は、患者を識別するための情報であり、前記人工物材料特定情報は、前記患者の口腔内に装着される人工物の少なくとも一部の材料を特定するための情報であり、前記患者識別情報が記憶された電子タグが前記患者口腔内に装着された前記人工物に埋め込まれており、前記端末装置は、前記電子タグに記憶された前記患者識別情報を読み出すための読み出し手段と、情報を表示するための表示手段とを含み、
前記方法は、前記プロセッサ部が、前記端末装置の前記読み出し手段によって読み出された前記患者識別情報に関連付けられた前記人工物材料特定情報が前記端末装置の前記表示手段に表示されることを可能にすることを含む、方法。
患者の口腔内に装着される人工物の品質を保証または管理するサービスを実現するためのコンピュータシステムにおいて実行されるプログラムであって、前記コンピュータシステムは、ネットワークを介して、端末装置に接続されるように構成されており、前記コンピュータシステムは、プロセッサ部とデータベース部とを含み、前記データベース部には、患者識別情報と前記患者識別情報に関連付けられた人工物材料特定情報とが記憶されており、前記患者情報は、患者を識別するための情報であり、前記人工物材料特定情報は、前記患者の口腔内に装着される人工物の少なくとも一部の材料を特定するための情報であり、前記患者識別情報が記憶された電子タグが前記患者の口腔内に装着された前記人工物に埋め込まれており、前記端末装置は、前記電子タグに記憶された前記患者識別情報を読み出すための読み出し手段と、情報を表示するための表示手段とを含み、
前記プログラムは、前記プロセッサ部によって実行されると、前記端末装置の前記読み出し手段によって読み出された前記患者識別情報に関連付けられた前記人工物材料特定情報が前記端末装置の前記表示手段に表示されることを可能にすることを前記プロセッサ部に行わせる、プログラム。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態を説明する。
1.患者の口腔内に装着される人工物の品質を保証または管理するという新しいサービス
出願人は、患者の口腔内に装着される人工物の品質を保証または管理するという新しいサービスのためのビジネスモデルを提案する。以下に説明する実施形態では、患者の口腔内に装着される人工物の一例であるインプラントを例にとり、インプラントの品質を保証または管理するという新しいサービスのためのビジネスモデルを説明する。ただし、品質を保証または管理する対象である人工物は、インプラントに限定されない。品質を保証または管理する対象である人工物は、インプラントを構成する任意の構成要素であってもよい。あるいは、品質を保証または管理する対象である人工物は、インプラント以外の患者の口腔内に装着される任意の人工物(例えば、入れ歯(有床義歯)、差し歯、ブリッジなどの義歯、義歯を構成する任意の構成要素、歯列矯正装置、歯列矯正用アライナー、歯列咬合用アライナーなどの歯科用器具、歯科用器具を構成する任意の構成要素、インプラントガイド(手術用ガイド)、インプラントガイド(手術用ガイド)を構成する任意の構成要素であってもよい。このように、この新しいサービスのためのビジネスモデルは、患者の口腔内に装着される任意の人工物の品質を保証または管理するために適用することが可能である。ここで、本願明細書では、「人工物の品質を保証または管理する」とは、人工物の品質を保証すること、および、人工物の品質を管理することのうちの少なくとも一方を行うことをいうものとする。
【0014】
図1は、インプラントの品質を保証または管理するという新しいサービスのためのビジネスモデルのフローを示す。
【0015】
ステップS1:歯科医は、患者に対して歯の診断を行う。その結果、その患者に対してインプラントの施術を行うことが適切であると判断した場合には、どのようなインプラントを用いるかを決定する。インプラントは、一般に、個々の患者の歯に合わせて製作されることが必要とされない部分(例えば、フィクスチャー)と、個々の患者の歯に合わせて製作されることが必要とされる部分(例えば、アバットメントの少なくとも一部および/または補綴冠の少なくとも一部)とを含む。歯科医は、個々の患者の歯に合わせて製作されることが必要とされない部分については、その部分に相当する製品(市販品)を自分でメーカーに注文することが可能であるが、個々の患者の歯に合わせて製作されることが必要とされる部分については、その部分の製作を歯科技工所に依頼することが多い。
【0016】
ステップS2:歯科医は、個々の患者の歯に合わせて製作されることが必要とされる部分の製作を歯科技工所に依頼する。この依頼の際に、製作されるべき部分の詳細に記載したものが技工指示書である。技工指示書には、通常、製作されるべき部分を石膏で製作したもの(すなわち、石膏型)、または、患者の口腔内を撮影することによって得られた画像データ(例えば、特殊なカメラで患者の口腔内を様々な角度から撮影することによって得られた画像データ)などが添付される。
【0017】
ステップS3:歯科技工所は、歯科医からの技工指示書に従って、個々の患者の歯に合わせて製作されることが必要とされる部分を製作する。一般に、個々の患者の歯に合わせて製作されることが必要とされる部分を製作するためには、その部分の設計データ(例えば、CADデータ)を作成する工程と、そのような設計データに従って材料を加工することによって半製品を製作する工程と、その半製品に対して調整や表面加工などを行うことによって技工指示書どおりの製品に仕上げる工程とが必要とされる。歯科技工所は、設計データ(例えば、CADデータ)を作成した後、設計データ(例えば、CADデータ)に従って材料を加工することによって半製品を製作する工程を加工業者に委託することが多い。
【0018】
ステップS4:加工業者は、歯科技工所からの設計データ(例えば、CADデータ)に従って材料を加工することによって半製品を製作する。このような半製品の製作は、例えば、CAM装置や3Dプリンターなどの適切な機械を用いて行うことが可能である。加工業者は、製作した半製品を歯科技工所に納入する。
【0019】
ステップS5:歯科技工所は、加工業者から納入された半製品に対して調整や表面加工などを行うことによって技工指示書どおりの製品に仕上げる。例えば、歯科技工所は、半製品に対して、1)調整、2)調整後、強度を高める焼結処理、3)形態修正し歯の機能の付与、4)表面研磨、5)形態、咬合の微調整、6)洗浄を行う。なお、2)と3)との間に、ガラスセラミック材料を用いてべニアリングを行い形態と審美性の再現を行うようにしてもよい。歯科技工所は、技工指示書どおりに仕上げられた製品を歯科医に納入する。
【0020】
ステップS6:歯科医は、患者に対してインプラントの施術を行う。インプラントの施術は、歯科医が自分でメーカーに注文して購入した製品(市販品)と、歯科医が歯科技工所に製作を依頼しその依頼に応じて歯科技工所から納入された製品とを用いて行われる。
【0021】
このように、歯科医によって最終的に患者に施術されるインプラントには、様々な材料の部分が含まれることになる。インプラントの各部分に用いられる材料としては、例えば、歯科医が購入した製品(市販品)の材料、歯科技工所が加工業者によって製作された半製品を製品として完成させるために用いた材料、加工業者が半製品を製作するために加工に用いた材料などがある。
【0022】
従来、患者の口腔内に装着される人工物の各部分に用いられる様々な材料の品質を保証または管理するサービスは存在しなかった。そのため、患者の口腔内に装着される人工物の全体の品質を保証または管理するサービスもまた存在しなかった。
【0023】
出願人が提案するビジネスモデルは、患者の口腔内に装着される人工物の各部分に携わるそれぞれの者(例えば、歯科医、歯科技工所の担当者、加工業者の担当者)が、患者の口腔内に装着される人工物の各部分の材料を特定するための情報を入力することを可能とし、そのように入力された情報をその人工物を口腔内に装着された患者に関連付けてクラウド(例えば、遠隔サーバ上のデータベース)に格納することを可能にするソフトウェアおよびそのソフトウェアを実装するシステムを提供することによって、患者の口腔内に装着される人工物の品質を保証または管理するという新しいサービスを実現するという画期的な発想に基づいている。
【0024】
例えば、
図1に示される例では、歯科医が患者に対してインプラントを施術する際に、歯科医が購入した製品(市販品)の材料を特定するための情報(材料特定情報1)、歯科技工所が加工業者によって製作された半製品を完成品させるために用いた材料を特定するための情報(材料特定情報2)、加工業者が半製品を製作するために加工に用いた材料を特定するための情報(材料特定情報3)のうちの少なくとも1つが、端末装置を介して入力される。もちろん、材料特定情報1〜3のすべてが端末装置を介して入力されることが好ましいが、材料特定情報1〜3うちのいずれもが端末装置を介して入力されないよりは材料特定情報1〜3のうちの少なくとも1つが端末装置を介して入力される方が好ましい。端末装置を介して入力された材料特定情報1〜3のうちの少なくとも1つは、インプラントが施術された患者に関連付けてクラウド(例えば、遠隔サーバ上のデータベース)に格納される。ここで、このビジネスモデルでは、歯科医、歯科技工所の担当者、加工業者の担当者のうちの誰が材料特定情報1〜3を入力するのかは問わないものとする。歯科医が材料特定情報1〜3のすべてを入力するようにしてもよい。あるいは、歯科医が材料特定情報1を入力し、歯科技工所の担当者が材料特定情報2を入力し、加工業者の担当者が材料特定情報3を入力するようにしてもよい。歯科医、歯科技工所の担当者、加工業者の担当者のうちの誰が何を入力するのかは、当事者間の話し合いで予め決めておくものとする。材料特定情報1〜3のそれぞれは、例えば、材料の名称と材料のロットナンバーとを含む。
【0025】
このようにして、材料特定情報1〜3のうちの少なくとも1つをデータベースに格納しておくことにより、インプラントの特定の部分に用いられる材料を明確にすることが可能になる。また、材料特定情報1〜3のうちのすべてをデータベースに格納しておくことにより、インプラントのすべての部分に用いられる材料を明確にすることが可能になる。その結果、インプラントの部分または全体の品質を保証または管理することが可能になる。
【0026】
同様に、患者の口腔内に装着される人工物の特定の部分の材料を特定する情報をデータベースに格納しておくことにより、患者の口腔内に装着される人工物の特定の部分に用いられる材料を明確にすることが可能になる。また、患者の口腔内に装着される人工物のすべての部分の材料を特定する情報をデータベースに格納しておくことにより、患者の口腔内に装着される人工物のすべての部分に用いられる材料を明確にすることが可能になる。その結果、患者の口腔内に装着される人工物の部分または全体の品質を保証または管理することが可能になる。
【0027】
さらに、歯科医を特定するための情報(例えば、歯科医院の名称、歯科医の氏名など)、歯科技工所を特定するための情報(例えば、歯科技工所の名称、歯科技工所の担当者の氏名など)、加工業者を特定するための情報(例えば、加工業者の名称、加工業者の担当者の氏名など)のうちの少なくとも1つをデータベースに格納しておくようにしてもよい。これにより、インプラントの部分または全体の製作に携わった関係者を明確にすることが可能になる。その結果、歯科医、歯科技工所、加工業者のうちの少なくとも1つの名声や評判等によってインプラントの部分または全体の品質を保証または管理することが可能になる。
【0028】
同様に、患者の口腔内に装着される人工物の部分または全体の製作に携わった関係者を特定するための情報をデータベースに格納しておくようにしてもよい。これにより、患者の口腔内に装着される人工物の部分または全体の製作に携わった関係者を明確にすることが可能になる。その結果、そのような関係者の名声や評判等によって患者の口腔内に装着される人工物の部分または全体の品質を保証または管理することが可能になる。
【0029】
2.新しいサービスを実現するためのコンピュータシステムの構成
図2Aは、新しいサービスを実現するためのコンピュータシステム10の構成の一例を示す。
【0030】
コンピュータシステム10は、インターネット20を介して、複数の端末装置30に接続することが可能なように構成されている。コンピュータシステム10は、複数の端末装置30に対して遠隔サーバとして機能する。複数の端末装置30のそれぞれは、インターネット20を介してコンピュータシステム10と通信することが可能な任意の装置であり得る。端末装置30は、例えば、歯科医、歯科技工所の担当者、加工業者の担当者のうちの少なくとも一人によって操作されることが可能である。
【0031】
コンピュータシステム10は、インターフェース部40とプロセッサ部50とデータベース部60とメモリ部65とを含む。
【0032】
インターフェース部40は、複数の端末装置30との通信との通信を制御する。
【0033】
プロセッサ部50は、コンピュータシステム10の全体の動作を制御するために、インターフェース部40とデータベース部60とメモリ部65とに結合されている。
【0034】
データベース部60は、個々の患者を管理するための患者管理データベース61と、患者の口腔内に装着される人工物(例えば、インプラント)の少なくとも一部の品質を管理するための人工物品質管理データベース62とを含む。データベース部60は、遠隔サーバ上のデータベース(いわゆる「クラウド」)として機能する。
【0035】
メモリ部65には、プロセッサ部50によって実行されるプログラムやプログラムの実行に必要とされるデータ等が格納されている。
【0036】
患者管理データベース61は、各患者について、患者の個人情報を管理するためのものである。患者管理データベース61には、患者を識別するための情報(すなわち、「患者識別情報」)、患者の個人情報などが維持されている。患者の個人情報は、例えば、患者名、性別、住所、電話番号、生年月日のうちの少なくとも1つを含む。
【0037】
人工物品質管理データベース62は、各患者について、患者の口腔内に装着された人工物(例えば、インプラント)の少なくとも一部の品質を管理するための情報(すなわち、「人工物品質管理情報」)などを管理するためのものである。人工物品質管理データベース62には、患者識別情報、人工物品質管理情報などが維持されている。
【0038】
なお、
図2Aに示されるインターフェース部40、プロセッサ部50、データベース部60、メモリ部65のそれぞれの構成要素は、単一のハードウェア部品で構成されてもよいし、複数のハードウェア部品で構成されてもよい。コンピュータシステム10の構成は、特定のハードウェア構成には限定されない。
【0039】
また、
図2Aに示される実施の形態では、コンピュータシステム10と複数の端末装置30とは、インターネット20を介して接続されることが可能であるとしたが、本発明はこれに限定されない。インターネット20の代わりに任意のタイプのネットワークを用いることも可能である。
【0040】
図2Bは、端末装置30の構成の一例を示す。端末装置30は、電子タグ70に記憶された患者識別情報を読み出すための読み出し手段31と、情報を表示するための表示手段32とを含む。読み出し手段31の一例は、「接触型」のスキャナ装置または「非接触型」のスキャナ装置であるがこれに限定されない。電子タグ70に記憶された患者識別情報を読み取ることが可能である限り、読み出し手段31は、任意のタイプの装置であり得る。ただし、読み出し手段31としては、電子タグ70から0.5mm〜1.0mmくらいの距離に電子タグ70を近づけないと反応しないようなタイプの読み出し手段を用いることが好ましい。電子タグ70に記憶された患者識別情報の漏洩を防止し、電子タグ70に記憶された患者識別情報に関連付けられた情報の漏洩を防止するためである。
【0041】
図3Aは、電子タグ70の外観を示す。電子タグ70には、患者識別情報が記憶されている。電子タグ70は、例えば、患者の口腔内に装着された人工物の一部(例えば、インプラントの補綴冠)に埋め込まれることが可能であるが、これに限定されない。電子タグ70は、患者の口腔内に装着された人工物の任意の部位または患者の歯の任意の部位に埋め込まれることが可能である。なお、電子タグ70の一例は、RFIDタグであるがこれに限定されない。
【0042】
図3Bは、電子タグ70が患者のインプラントの補綴冠71に埋め込まれている様子を示す。
図3Bに示される例では、歯の色との対比が特徴的な色(例えば、赤色、青色、緑色など)が付された部分(以下、「色部分」という)72がインプラントの補綴冠71に存在している。
図3Bに示される例では、電子タグ70が色部分72の後ろに隠れるように電子タグ70が患者のインプラントの補綴冠71に埋め込まれている。言い換えると、インプラントの補綴冠71に埋め込まれた電子タグ70を色部分72が覆うことにより電子タグ70が見えなくなるような位置に色部分72が形成されている(ここで、電子タグ70は見えないため、破線で示されている)。インプラントの補綴冠71のいくつかの面のうち色部分72を有する面は、口腔の内側を向くように配列される。あるいは、色部分72の代わりに、透明な部分が電子タグ70を覆うようにしてもよい。
【0043】
図4は、人工物品質管理データベース部62によって管理されている人工物品質管理情報の構成の一例を示す。
図4に示される例では、人工物品質管理情報は、人工物品質管理レコードの形式で人工物品質管理データベース62内に格納されている。
図4に示される例では、人工物品質管理レコード601は、患者識別情報6011と、人工物材料特定情報6012とを少なくとも含む。人工物材料特定情報6012は、患者の口腔内に装着される人工物(例えば、インプラント)に含まれる少なくとも1つの部分の材料を特定するための部分材料特定情報をさらに含んでいてもよい。
【0044】
図5は、インプラントのタイプを示す。インプラントのタイプは、
図5に示されるものには限定されないが、例えば、
図5に示されるように、タイプAのインプラント、タイプBのインプラント、タイプCのインプラント、タイプDのインプラントが少なくとも存在する。
【0045】
タイプAのインプラントは、フィクスチャーとアバットメントの基部とアバットメントの上部と補綴冠とから構成されるタイプのインプラントである。アバットメントの基部は、患者の歯に合わせて製作されることが必要とされない部分(市販品)である。アバットメントの上部は、患者の歯に合わせて製作されることが必要とされる部分である。さらに、アバットメントの上部は、特定の材料(例えば、ガラスセラミック材料)を用いて表面処理されることが必要とされるものとする。
【0046】
タイプBのインプラントは、フィクスチャーとアバットメントの基部との係合の態様を除いて、タイプAのインプラントと同様である。
【0047】
タイプCのインプラントは、フィクスチャーとアバットメントの基部との係合の態様およびアバットメントの基部とアバットメントの上部との係合の態様を除いて、タイプAのインプラントと同様である。
【0048】
タイプDのインプラントは、フィクスチャーとアバットメントの基部と補綴冠とから構成されるタイプのインプラントである。アバットメントの基部は、患者の歯に合わせて製作されることが必要とされない部分(市販品)である。補綴冠は、患者の歯に合わせて製作されることが必要とされる部分である。
【0049】
図6Aは、インプラントのタイプがタイプAである場合における人工物材料特定情報6012の構成の一例を示す。
図6Aに示される例では、人工物材料特定情報6012は、患者の口腔内に装着される人工物のタイプを示す情報6012aと、フィクスチャーの材料を特定するための情報6012b(部分材料特定情報1)と、アバットメントの基部の材料を特定するための情報6012c(部分材料特定情報2)と、アバットメントの上部の材料を特定するための情報6012d(部分材料特定情報3)と、アバットメントの上部の表面加工に用いられる材料を特定するための情報6012e(部分材料特定情報4)と、補綴冠の材料を特定するための情報6012f(部分材料特定情報5)とを含む。部分材料特定情報1〜5の少なくとも1つは、当該部分の材料の名称と当該部分の材料のロットナンバーとを含んでいてよい。
【0050】
例えば、
図5に示されるタイプAのインプラントにおいて、フィクスチャーの材料が”チタニウム”であり、フィクスチャーの材料のロットナンバーが”#8688”であり、アバットメントの基部の材料が”チタニウム”であり、アバットメントの基部の材料のロットナンバーが”#8777”であり、アバットメントの上部の材料が”酸化ジルコニウム”であり、アバットメントの上部の材料のロットナンバーが”#1322”であり、アバットメントの上部の表面処理に用いられる材料が”ガラスセラミック材料”であり、アバットメントの上部の表面処理に用いられる材料のロットナンバーが”#9866”であり、補綴冠の材料が”酸化ジルコニウム”であり、補綴冠の材料のロットナンバーが”#1448”であるものと仮定する。この場合には、端末装置30を介して当該部分の材料の名称および当該部分の材料のロットナンバーが入力されることにより、
図6Aに示される人工物材料特定情報6012の各部分(すなわち、部分材料特定情報1〜5の各々)に、当該部分の材料の名称および当該部分の材料のロットナンバーが設定されることになる。
【0051】
図6Bは、
図6Aに示される人工物材料特定情報6012の各部分(すなわち、部分材料特定情報1〜5の各々)に当該部分の材料の名称および当該部分の材料のロットナンバーが設定された一例を示す。これらの材料の名称および/または材料のロットナンバーが、数値や記号やコードなどを用いて設定されることが可能であることはもちろんである。
【0052】
インプラントのタイプがタイプBである場合における人工物材料特定情報6012の構成の一例およびインプラントのタイプがタイプCである場合における人工物材料特定情報6012の構成の一例は、
図6Aを参照して上述したインプラントのタイプがタイプAである場合における人工物材料特定情報6012の構成の一例と同様であるので、ここでは、その説明を省略する。
【0053】
図6Cは、インプラントのタイプがタイプDである場合における人工物材料特定情報6012の構成の一例を示す。
図6Cに示される例では、人工物材料特定情報6012は、患者の口腔内に装着される人工物のタイプを示す情報6012aと、フィクスチャーの材料を特定するための情報6012b(部分材料特定情報1)と、アバットメントの基部の材料を特定するための情報6012c(部分材料特定情報2)と、補綴冠の材料を特定するための情報6012f(部分材料特定情報5)とを含む。部分材料特定情報1、2、5の少なくとも1つは、当該部分の材料の名称と当該部分の材料のロットナンバーとを含んでいてよい。
【0054】
例えば、
図5に示されるタイプDのインプラントにおいて、フィクスチャーの材料が”チタニウム”であり、フィクスチャーの材料のロットナンバーが”#8690”であり、アバットメントの基部の材料が”チタニウム”であり、アバットメントの基部の材料のロットナンバーが”#8788”であり、補綴冠の材料が”酸化ジルコニウム”であり、補綴冠の材料のロットナンバーが”#1465”であるものと仮定する。この場合には、端末装置30を介して当該部分の材料の名称および当該部分の材料のロットナンバーが入力されることにより、
図6Cに示される人工物材料特定情報6012の各部分(すなわち、部分材料特定情報1〜5の各々)に、当該部分の材料の名称および当該部分の材料のロットナンバーが設定されることになる。
【0055】
図6Dは、
図6Cに示される人工物材料特定情報6012の各部分(すなわち、部分材料特定情報1、2、5の各々)に当該部分の材料の名称および当該部分の材料のロットナンバーが設定された一例を示す。これらの材料の名称および/または材料のロットナンバーが、数値や記号やコードなどを用いて設定されることが可能であることはもちろんである。
【0056】
このようにして、部分材料特定情報1〜5のうちの少なくとも1つを人工物品質管理データベース62に格納しておくことにより、インプラントの特定の部分に用いられる材料を明確にすることが可能になる。また、部分材料特定情報1〜5のうちのすべてを人工物品質管理データベース62に格納しておくことにより、インプラントのすべての部分に用いられる材料を明確にすることが可能になる。その結果、インプラントの部分または全体の品質を保証または管理することが可能になる。
【0057】
同様に、患者の口腔内に装着される人工物の特定の部分の材料を特定する情報を人工物品質管理データベース62に格納しておくことにより、患者の口腔内に装着される人工物の特定の部分に用いられる材料を明確にすることが可能になる。また、患者の口腔内に装着される人工物のすべての部分の材料を特定する情報を人工物品質管理データベース62に格納しておくことにより、患者の口腔内に装着される人工物のすべての部分に用いられる材料を明確にすることが可能になる。その結果、患者の口腔内に装着される人工物の部分または全体の品質を保証または管理することが可能になる。
【0058】
さらに、人工物材料特定情報6012は、歯科医を特定するための情報、歯科技工所を特定するための情報、加工業者を特定するための情報のうちの少なくとも1つをさらに含むようにしてもよい。
【0059】
歯科医を特定するための情報は、例えば、歯科医院の名称、歯科医の氏名、歯科医院の住所、補綴冠セット日、治療部位、症例ID(カルテ番号)のうちの少なくとも1つを含む。歯科技工所を特定するための情報は、例えば、歯科技工所の名称、歯科技工所の担当者の氏名、歯科技工所の住所のうちの少なくとも1つを含む。加工業者を特定するための情報は、例えば、加工業者の名称、加工業者の担当者の氏名、加工業者の住所のうちの少なくとも1つを含む。
【0060】
このようにして、歯科医を特定するための情報、歯科技工所を特定するための情報、加工業者を特定するための情報のうちの少なくとも1つを人工物品質管理データベース62に格納しておくようにしてもよい。これにより、インプラントの部分または全体の製作に携わった関係者を明確にすることが可能になる。その結果、歯科医、歯科技工所、加工業者のうちの少なくとも1つの名声や評判等によってインプラントの部分または全体の品質を保証または管理することが可能になる。
【0061】
同様に、患者の口腔内に装着される人工物の部分または全体の製作に携わった関係者を特定するための情報を人工物品質管理データベース62に格納しておくようにしてもよい。これにより、患者の口腔内に装着される人工物の部分または全体の製作に携わった関係者を明確にすることが可能になる。その結果、そのような関係者の名声や評判等によって患者の口腔内に装着される人工物の部分または全体の品質を保証または管理することが可能になる。
【0062】
3.コンピュータシステムの処理
図7は、コンピュータシステム10(すなわち、コンピュータシステム10のプロセッサ部50)によって実行される処理の手順の一例を示す。この処理は、患者のインプラントに埋め込まれた電子タグ70に記憶された患者識別情報を読み出し、患者識別情報に関連付けられた人工物材料特定情報6012を人工物品質管理データベース62から取り出し、取り出された人工物材料特定情報を端末装置30の表示手段32に表示するための処理である。この処理は、例えば、プログラムの形式でコンピュータシステム10内のメモリ部65に格納されている。プロセッサ部50は、メモリ部65に格納されているプログラムを読み出し、そのプログラムを実行することが可能である。
【0063】
以下、
図7に示される処理の各ステップを説明する。
【0064】
ステップS7010:プロセッサ部50は、電子タグ70から読み出された患者識別情報をネットワーク20およびインターフェース部40を介して受信する。
【0065】
電子タグ70に記憶された患者識別情報の読み出しは、例えば、歯科医が、端末装置30の読み出し手段31(例えば、スキャナ装置)を操作して、その読み出し手段31を患者のインプラントの特定の部位または患者の歯の特定の部位に近づけることによって達成される。ここで、その特定の部位またはその特定の部位の近傍に患者識別情報が記憶された電子タグ70が埋め込まれているものとする。読み出し手段31によって読み出された患者識別情報は、ネットワーク20を介してコンピュータシステム10に送信される。コンピュータシステム10によって受信された患者識別情報は、インターフェース部40を介してプロセッサ部50に伝達される。このようにして、プロセッサ部50は、電子タグ70から読み出された患者識別情報をネットワーク20およびインターフェース部40を介して受信することが可能である。
【0066】
ステップS7020:プロセッサ部50は、読み出し手段31によって読み出された患者識別情報を検索キーとして人工物品質管理データベース62を検索することにより、患者識別情報に関連付けられた人工物材料特定情報6012を人工物品質管理データベース62から取り出す。
【0067】
ステップS7030:プロセッサ部50は、人工物品質管理データベース62から取り出された人工物材料特定情報6012が端末装置30の表示手段32に表示されることを可能にするようにコンピュータシステム10を制御する。その結果、人工物品質管理データベース62から取り出された人工物材料特定情報6012は、インターフェース部40およびネットワーク20を介して端末装置30に送信される。端末装置30は、人工物材料特定情報6012を受信し、それを表示手段32に表示する。
【0068】
図6A〜
図6Dを参照して上述したように、人工物材料特定情報6012は、インプラントを構成する少なくとも1つの部分の材料を特定するための情報を含む。このような情報を端末装置30の表示手段32に表示することによって、インプラントを構成する少なくとも1つの部分の材料を明確にすることが可能になる。その結果、インプラントの部分または全体の品質を保証または管理することが可能になる。
【0069】
同様に、人工物材料特定情報6012は、患者の口腔内に装着される人工物を構成する少なくとも1つの部分の材料を特定するための情報を含むことが可能である。このような情報を端末装置30の表示手段32に表示することによって、患者の口腔内に装着される人工物を構成する少なくとも1つの部分の材料を明確にすることが可能になる。その結果、患者の口腔内に装着される人工物の部分または全体の品質を保証または管理することが可能になる。
【0070】
さらに、上述したように、人工物材料特定情報6012は、歯科医を特定するための情報、歯科技工所を特定するための情報、加工業者を特定するための情報のうちの少なくとも1つをさらに含むようにしてもよい。このような情報を端末装置30の表示手段32に表示することによって、インプラントの部分または全体の製作に携わった関係者を明確にすることが可能になる。その結果、歯科医、歯科技工所、加工業者のうちの少なくとも1つの名声や評判等によってインプラントの部分または全体の品質を保証または管理することが可能になる。
【0071】
同様に、人工物材料特定情報6012は、患者の口腔内に装着される人工物の部分または全体の製作に携わった関係者を特定するための情報をさらに含むようにしてもよい。このような情報を端末装置30の表示手段32に表示することによって、患者の口腔内に装着される人工物の部分または全体の製作に携わった関係者を明確にすることが可能になる。その結果、そのような関係者の名声や評判等によって患者の口腔内に装着される人工物の部分または全体の品質を保証または管理することが可能になる。
【0072】
なお、患者管理データベース61および/または人工物品質管理データベース62内に格納されている個々の情報に対してアクセスレベルを設定することによって、個々の情報に対するアクセスに制限を課すことも可能である。例えば、歯医者はすべての情報にアクセスすることが可能であるが、歯医者以外の者は特定の情報へのアクセスが制限されるというように個々の情報に対するアクセスレベルを設定するようにしてもよい。
【0073】
また、患者の口腔内に装着される人工物(例えば、インプラント)用の材料に不具合が発見された場合に、その材料を用いた部分を含む人工物を口腔内に装着された患者をコンピュータシステム10を用いて特定することも可能である。これにより、患者の口腔内に装着される人工物用の材料の不具合が発生した場合にその不具合が発生した材料が用いられた製品のリコールに対処することが可能になる。具体的には、端末装置30から入力されたロットナンバー(不具合が発見された人工物用の材料のロットナンバー)を検索キーとして人工物品質管理データベース62を検索することにより、端末装置30から入力されたロットナンバーに関連付けられた患者識別情報6011を人工物品質管理データベース62から取り出すことが可能である。このようにして人工物品質管理データベース62から取り出された患者識別情報6011を検索キーとして患者管理データベース61を検索することにより、患者識別情報6011に関連付けられた患者の個人情報を患者管理データベース61から取り出すことが可能である。このようにして患者管理データベース61から取り出された患者の個人情報を端末装置30の表示手段32に表示することにより、患者を特定することが可能である。
【0074】
また、患者の口腔内に装着される人工物(例えば、インプラント)の少なくとも一部を製作するために用いたデータ(例えば、患者の口腔内の画像データやレントゲン写真、患者の口腔内に装着される人工物(例えば、インプラント)の少なくとも一部を製作するための設計データ(例えば、CADデータ)など)を患者識別情報に関連付けて人工物品質管理データベース62内に格納しておくようにしてもよい。これにより、大阪で勤務していた患者が大阪の歯医者で人工物を口腔内に装着してもらった後に、北海道に転勤した場合でも、北海道の歯医者が患者の口腔内に装着された人工物に埋め込まれた電子タグに記憶された患者識別情報に関連付けられた情報(例えば、その人工物の少なくとも一部を製作するために用いたデータ)を参照することが可能になる。
【0075】
以上のように、本発明の好ましい実施形態を用いて本発明を例示してきたが、本発明は、この実施形態に限定して解釈されるべきものではない。本発明は、特許請求の範囲によってのみその範囲が解釈されるべきであることが理解される。当業者は、本発明の具体的な好ましい実施形態の記載から、本発明の記載および技術常識に基づいて等価な範囲を実施することができることが理解される。