【課題を解決するための手段】
【0004】
故に本発明者等は、回分量設定作業の間において駆動スプリングの力から回分量設定要素を隔離するクラッチ機構が配備されるという注射器装置を設計した。
【0005】
故に、ひとつの見地において本発明は、
自身から複数回の回分量を供与するカートリッジもしくは注入器と共に使用される注射器装置であって、
上記カートリッジもしくは注入器のためのハウジングと、
使用に際して上記カートリッジもしくは注入器と協働して順次的な複数回の回分量を圧出するプランジャと、
回分量体積を選択する回分量設定機構と、
上記順次的な選択された複数回の回分量を圧出する夫々の所定の規模の段増分にて上記プランジャを前進させるべく解除可能な駆動機構と、
を備えるという注射器装置において、
上記駆動機構は上記プランジャに対して直接的もしくは間接的に放出駆動運動を付与する駆動スプリングを含み、
上記回分量設定機構は、回分量設定作業において運動することで所定回分量に対する上記プランジャの移動の段増分の規模を設定し得る回分量設定要素を備え、
上記駆動機構は更に、上記回分量設定作業の間に作用し得るクラッチ機構であって、上記駆動スプリングの力から上記回分量設定要素を隔離すると共に、選択的に上記プランジャの前方移動を直接的もしくは間接的に阻止するというクラッチ機構を含むことを特徴とする注射器装置を提供する。
【0006】
上記回分量設定作業の間において上記駆動スプリングの力から上記回分量設定要素が隔離されるという配置構成において、上記回分量設定要素は容易に回転され得ると共に、該回分量設定要素は好適には、ユーザが該回分量設定要素を必要な回分量を通り越して移動したならば逆転方向にも移動され得る。上記回分量設定要素を隔離するとは、該回分量設定要素の回分量設定運動が上記スプリングにより抵抗されないことを意味する。
【0007】
上記からは、上記回分量設定動作が上記駆動スプリングを励起しないのであれば、該駆動スプリングは一定の様式で励起される必要があることが理解される。好適には上記駆動スプリングは、上記注入器もしくはカートリッジの使用可能な内容物の実質的に全てを順次的な複数回の回分量にて供与するに十分な程度まで事前負荷される。回分量設定作業の間において上記回分量設定要素が上記駆動スプリングから隔離される場合、習用のユーザ巻回式のデバイスに対して適切であるものよりも、更に強力なスプリングが使用され得る。完全に事前負荷された駆動スプリングの代わりに、該駆動スプリングは、部分的に事前負荷され得るか、または、該スプリングを励起する適切で別体的な手段を備え乍ら、事前負荷なしとされ得る。斯かる配置構成においては、回分量が一旦ダイアル入力されたときにのみ駆動機構が荷重下になるという先行技術のデバイスと対照的に、上記駆動機構は回分量設定に先立ち通常的に既に上記駆動スプリングから負荷されることも理解される。
【0008】
好適には、上記回分量設定要素は角度的に運動することで、上記プランジャ移動の段増分を設定し得る。
【0009】
上記クラッチ機構は好適には、係合解除位置と係合位置との間で移動可能なクラッチ要素を含む。故に、上記クラッチ要素は上記回分量設定要素と共に軸心方向に移動し得ることから、第1の休止位置から第2の回分量設定位置までの上記回分量設定要素の軸心方向移動により、上記クラッチ要素は上記プランジャに係合してその前方移動を阻止し得る。上記回分量設定要素および上記ハウジングは、相補的な夫々の当接部であって、上記回分量設定要素がその休止位置に在るときには相互に係合することで、上記ハウジングに対する上記回分量設定要素の相対回転を阻止し、且つ、それがその設定位置に在るときには相互から係合解除することで、上記回分量設定要素の回分量設定回転を許容するという夫々の当接部を含むことも好適である。この様にして、上記回分量設定要素は、その休止位置からその回分量設定位置まで軸心方向に移動されてから、必要な回分量体積をダイアル入力すべく転回され、次に軸心方向においてその休止位置へと戻されて自身は回転に対して固定され得る。
【0010】
好適には、その休止位置からその設定位置までの上記回分量設定要素の運動時に、上記クラッチは、上記回分量設定要素および上記ハウジング上の上記当接部が係合解除されて上記回分量設定要素が回分量設定運動のために解除される所定距離だけ以前に係合して、上記駆動プランジャの移動を阻止する。
【0011】
好適な配置構成において、上記回分量設定要素がその休止位置に在るとき、それは上記駆動スプリングの推力を受けて反発することから、該回分量設定要素は上記駆動プランジャの移動を阻止する。この様にして、上記回分量設定要素がその休止位置に在るときに上記駆動スプリングの推力は上記回分量設定要素により且つその後に上記ハウジングにより反発されるが、上記回分量設定要素がその設定位置に在るとき、上記駆動スプリングの推力は、上記ハウジングと係合している上記クラッチ部材により反発される。
【0012】
好適には、回分量を設定し、上記回分量設定要素をその第1位置へと軸心方向に戻すと、上記クラッチ要素は係合解除されて上記駆動機構を解除することで、上記プランジャは、設定された上記所定回分量に対応する所定段増分だけ前進される。
【0013】
好適には、上記プランジャは、関連付けられた駆動器もしくは制御要素と螺着係合されることから、上記プランジャの前進には、該プランジャおよび上記制御要素の回転が伴い、上記前進の段増分の規模は上記回転を制約することにより設定される。
【0014】
好適には、上記回分量設定要素と関連付けられた停止部材は、上記回分量設定要素を移動することにより調節されることで、上記駆動機構の解除時における上記プランジャと上記駆動器もしくは制御要素との間の相対回転に対する角度的な段増分を規定し得る。
【0015】
上記停止部材は単に、上記回分量設定要素上に配備された当接表面とされることもある。これにより、上記回分量設定要素の角度的運動の最大の使用可能な程度は、ちょうど360°の手前とされ得る。このことは、一定の場合において各目印が十分に緊密に密集される必要があることを意味する。故に、その場合には、上記回分量設定要素に対しては中間ダイアルもしくはシャトル部材が螺着係合され、該部材は、上記プランジャおよび制御要素の内の回転可能な方と共に回転すべく拘束され、上記ダイアルもしくはシャトル部材と上記回分量設定要素との相対的な角度的運動の程度は、上記回分量設定要素に関連付けられた上記停止部材の相対位置により設定されることが好適である。上記螺条付きダイアルもしくはシャトル部材の配備は、今や、数回の転回による一回分量を設定し得ることを意味する。このことは、目印に対して利用可能なサイズに関する利点を有すると共に、上記プランジャと上記制御部材との間の螺条のピッチの選択肢に関して大きな融通性を許容するものでもある。特に好適な配置構成において、回分量の目印は、上記相補的な各回分量設定要素の一方上の螺旋状細長片として配備されると共に、他方の回分量設定要素上のマーカもしくは窓部を介して読み取られ得る。
【0016】
上述の種々の配置構成における上記駆動スプリングは、解除されたときに回転運動を付与するトーションスプリング(torsion spring)、または、線形移動を付与する圧縮スプリングのいずれかとされ得る。
【0017】
多くの用途において、例えば当該デバイスが使い捨て式であることが意図されるなら、各回分量の間において駆動器を再励起する必要がない様に、事前負荷されて供給される複数回の回分量用の注射器デバイスを提供することは好適である。
【0018】
故に、別の見地において本発明は、自身から複数回の回分量を供与するカートリッジもしくは注入器と共に使用される注射器装置であって、
上記カートリッジもしくは注入器のためのハウジングと、
使用に際して上記カートリッジもしくは注入器と協働して順次的な複数回の回分量を圧出するプランジャと、
回分量体積を選択する回分量設定機構と、
上記順次的な複数回の回分量を圧出する夫々の所定の規模の段増分にて上記プランジャを前進させるべく解除可能な駆動機構と、
を備えるという注射器装置において、
上記駆動機構は、上記順次的な複数回の回分量の内の少なくとも数回の回分量を供与するに十分な事前負荷を備えて回転式に蓄力されたエネルギ要素を含むことを特徴とする注射器装置を提供する。
【0019】
上記配置構成において上記注射器装置は、例えば、各回分量を圧出するために必要な機械的エネルギをユーザが入力する必要がない様に、十分に事前負荷されたスプリングを備え得る。これにより上記デバイスは、器用でないまたは把持力が不十分であるユーザに対して特に適切とされる。
【0020】
上述の如く、習用のAutopen(登録商標)および同様のデバイスは、360°に限られた回分量設定運動の角度範囲を有し、このことは、マーク付け用の目印、駆動螺条のピッチ、および、駆動スプリングの各特性に対して制約を課す。故に本発明者等は、上記回分量設定機構が、必要であれば回分量設定運動を数回の転回とし得るべく螺着係合された第1および第2の相補的な回分量設定要素を含むという配置構成を設計した。
【0021】
故に、本発明の別の見地においては、
自身から複数回の回分量を供与するカートリッジもしくは注入器と共に使用される注射器装置であって、
上記カートリッジもしくは注入器のためのハウジングと、
使用に際して上記カートリッジもしくは注入器と協働して順次的な複数回の回分量を圧出するプランジャと、
回分量体積を選択する回分量設定機構と、
上記順次的な複数回の回分量を圧出する夫々の所定の規模の段増分にて上記プランジャを前進させるべく解除可能な駆動機構であって、上記プランジャの前進は、該プランジャの前進に応じて角度的に運動する制御部材により制御されるという駆動機構と、
を備えるという注射器装置において、
上記回分量設定機構は、第1限界位置から離間する相対的な螺合運動のために螺着係合された第1および第2の相補的な回分量設定要素を含み、上記第1の回分量設定要素は設定作業において休止位置から、回分量体積を設定する可変角度的位置まで上記ハウジングに対して運動可能であり、且つ、上記第2の回分量設定要素は上記制御要素と共に回転すべく拘束され、
これにより、上記駆動機構の解除時に上記制御部材および上記第2回分量設定要素は、該第2要素が上記第1部材に関して上記第1限界位置に戻ることで該制御部材の更なる回転を阻止するまで回転することを特徴とする注射器装置を提供する。
【0022】
別の見地に依れば、本発明は、
自身から複数回の回分量を供与するカートリッジもしくは注入器と共に使用される注射器装置であって、
上記カートリッジもしくは注入器のためのハウジングと、
上記カートリッジもしくは注入器と協働して順次的な複数回の回分量を圧出するプランジャと、
駆動スプリングにより励起される駆動機構であって、回分量設定要素の調節により決定された所定段増分にて上記プランジャを前進させるべく解除可能であるという駆動機構と、
上記回分量設定要素の運動から独立して上記スプリングを再励起する再励起要素とを備える、注射器装置を提供する。
【0023】
好適には、上記駆動スプリングはトーションスプリングであり且つ上記再励起要素は、例えば手動的に回転可能な回転式要素である。
【0024】
別の見地に依れば、本発明は、
自身から複数回の回分量を供与するカートリッジもしくは注入器と共に使用される注射器装置であって、該装置は、
上記カートリッジもしくは注入器のためのハウジングと、
使用に際して上記カートリッジもしくは注入器と協働して順次的な複数回の回分量を圧出するプランジャと、
回分量体積を選択すべく運動可能な回分量設定要素と、
上記選択された複数回の回分量を圧出する夫々の所定の規模の段増分にて上記プランジャを前進させるべく解除可能な駆動機構であって、上記プランジャに対して直接的もしくは間接的に推進力を提供して該プランジャを前進させる駆動スプリングを含むという駆動機構とを備え、
該装置は、上記駆動スプリングの推進力が、それにより反発されるべき上記ハウジングへと上記回分量設定要素を介し伝達されるという第1位置と、上記駆動スプリングの推進力が、それにより反発されるべき上記ハウジングへと当該クラッチ要素を介して伝達されるという位置へとクラッチ要素が移動されるという第2位置と、の間で設定可能であることから、上記回分量設定要素の回分量設定運動は上記駆動スプリングにより抵抗されない、注射器装置を提供する。
【0025】
本発明は上記に記述されたが、本発明は、上記において、または、特許請求の範囲の各請求項の記述において示された特徴、さらに以下に記述された特徴の一切の発明的な組み合わせに及んでいる。
本発明の第15の見地において、
自身から複数回の回分量を供与するカートリッジ(12)もしくは注入器と共に使用される注射器装置であって、
前記カートリッジもしくは注入器のためのハウジング(101、102)と、
使用に際して前記カートリッジもしくは注入器と協働して順次的な回分量を圧出するプランジャ(40)と、
回分量体積を選択する回分量設定機構(16、20)と、
前記順次的な回分量を圧出する夫々の所定の規模の段増分にて前記プランジャを前進させるべく解除可能な駆動機構(22、24)と、
を備えるという注射器装置において、
前記駆動機構は、前記順次的な回分量の内の少なくとも数回の回分量を供与するに十分な事前負荷を備えて回転式に蓄力されたエネルギ要素(22)を含む、ことを特徴とする注射器装置を提供する。
本発明の第16の見地において、
前記回転式に蓄力されたエネルギ要素(22)は、順次的な回分量にわたり前記注入器もしくはカートリッジの使用可能な内容物の実質的に全てを供与すべく選択された事前負荷を有する、第15の見地に記載の注射器装置を提供する。
本発明の第17の見地において、
前記回転式に蓄力されたエネルギ要素を再励起する手段を含む、第16の見地に記載の注射器装置を提供する。
本発明の第18の見地において、
自身から複数回の回分量を供与するカートリッジ(12)もしくは注入器と共に使用される注射器装置であって、
前記カートリッジもしくは注入器のためのハウジング(101、102)と、
使用に際して前記カートリッジもしくは注入器と協働して順次的な回分量を圧出するプランジャ(40)と、
回分量体積を選択する回分量設定機構(16、20)と、
前記順次的な回分量を圧出する夫々の所定の規模の段増分にて前記プランジャを前進させるべく解除可能な駆動機構(22、24)であって、前記プランジャ(40)の前進は、該プランジャの前進に応じて角度的に運動する制御部材(24)により制御されるという駆動機構(22、24)と、
を備えるという注射器装置において、
前記回分量設定機構は、第1限界位置から離間する相対的な螺合運動のために螺着係合された第1および第2の相補的な回分量設定要素(16、20)を含み、前記第1の回分量設定要素(16)は設定作業において休止位置から、回分量体積を設定する可変角度的位置まで前記ハウジング(101、102)に対して運動可能であり、且つ、前記第2の回分量設定要素(20)は前記制御要素(24)と共に回転すべく拘束され、
これにより、前記駆動機構の解除時に前記制御部材(24)および前記第2部材(20)は、該第2部材が前記第1部材に関して前記第1限界位置に戻り且つ該制御部材(24)の更なる回転を阻止するまで回転する、ことを特徴とする注射器装置を提供する。
本発明の第19の見地において、
自身から複数回の回分量を供与するカートリッジ(12)もしくは注入器と共に使用される注射器装置であって、
前記カートリッジもしくは注入器のためのハウジング(101、102)と、
前記カートリッジもしくは注入器と協働して順次的な回分量を圧出するプランジャ(40)と、
駆動スプリング(22)により励起される駆動機構(22、24)であって、回分量設定要素(16)の調節により決定された所定段増分にて前記プランジャを前進させるべく解除可能であるという駆動機構(22、24)と、
前記回分量設定要素(16)の運動から独立して前記スプリング(24)を再励起する再励起要素(70)とを備える、注射器装置を提供する。
本発明の第20の見地において、
前記駆動スプリングはトーションスプリングであり且つ前記再励起要素は回転式要素である、第19の見地に記載の注射器装置を提供する。
本発明の第21の見地において、
前記回転式の再励起要素は一方向における回転運動のために、前記ハウジング上にラチェット機構により取付けられる、第20の見地に記載の注射器装置を提供する。
本発明の第22の見地において、
自身から複数回の回分量を供与するカートリッジ(12)もしくは注入器と共に使用される注射器装置であって、該装置は、
前記カートリッジもしくは注入器のためのハウジング(101、102)と、
使用に際して前記カートリッジもしくは注入器と協働して順次的な回分量を圧出するプランジャ(40)と、
回分量体積を選択すべく運動可能な回分量設定要素(16)と、
前記選択された回分量を圧出する夫々の所定の規模の段増分にて前記プランジャを前進させるべく解除可能な駆動機構(22、24)であって、前記プランジャに対して直接的もしくは間接的に推進力を提供して該プランジャを前進させる駆動スプリング(22)を含むという駆動機構(22、24)と、を備え、
該装置は、前記駆動スプリング(22)の推進力が、それにより反発されるべき前記ハウジング(10)へと前記回分量設定要素(16)を介し伝達されるという第1位置と、前記駆動スプリング(22)の推進力が、それにより反発されるべき前記ハウジング(10)へと当該クラッチ要素(56)を介して伝達されるという位置へとクラッチ要素(56)が移動されるという第2位置と、の間で設定可能である、注射器装置を提供する。
【0026】
本発明は種々の様式で実施され得ると共に、本発明の実施形態は次に、添付図面を参照しながら例示的にのみ記述される。