(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2016-163897(P2016-163897A)
(43)【公開日】2016年9月8日
(54)【発明の名称】打ち抜き片の形成方法及びその方法で形成した打ち抜き片を用いた積層体並びに積層鉄心の製造方法
(51)【国際特許分類】
B21D 28/02 20060101AFI20160815BHJP
H02K 15/02 20060101ALI20160815BHJP
H01F 41/02 20060101ALI20160815BHJP
【FI】
B21D28/02 B
H02K15/02 E
H02K15/02 F
H01F41/02 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-44415(P2015-44415)
(22)【出願日】2015年3月6日
(71)【出願人】
【識別番号】000144038
【氏名又は名称】株式会社三井ハイテック
(74)【代理人】
【識別番号】100090697
【弁理士】
【氏名又は名称】中前 富士男
(74)【代理人】
【識別番号】100176142
【弁理士】
【氏名又は名称】清井 洋平
(74)【代理人】
【識別番号】100127155
【弁理士】
【氏名又は名称】来田 義弘
(72)【発明者】
【氏名】小野 慎一郎
(72)【発明者】
【氏名】大和 茂敏
(72)【発明者】
【氏名】泉 雅宏
【テーマコード(参考)】
5E062
5H615
【Fターム(参考)】
5E062AC05
5E062AC11
5H615AA01
5H615BB01
5H615BB05
5H615BB14
5H615PP06
5H615SS03
5H615SS05
5H615SS10
5H615SS13
5H615SS19
(57)【要約】
【課題】設計の自由度が高く、形状精度に優れた打ち抜き片の形成方法及びその方法で形成した打ち抜き片を用いた積層体並びに積層鉄心の製造方法を提供する。
【解決手段】貫通孔10を備えた製品領域11と、貫通孔10の内側に配置された少なくとも1つのカシメ接続領域12とを有し、カシメ接続領域12が、製品領域11の嵌入部13に嵌入して一時連結している打ち抜き片14を形成する方法であって、被打ち抜き材に打ち抜き孔16を形成する工程と、打ち抜き孔16内の突出部17の先側に接する当接部18を打ち抜き孔16内に設けて嵌入部13の輪郭に沿った切り離しを行って、カシメ接続領域12を打ち抜き形成した後、カシメ接続領域12を嵌入部13と当接部18の間に押し戻して、カシメ接続領域12を被打ち抜き材と一時連結させる工程と、カシメ接続領域12と一時連結した被打ち抜き材から製品領域11の外形抜きを行う工程とを有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
中央側に貫通孔を備えた製品領域と、前記貫通孔の内側に突出して配置された少なくとも1つのカシメ接続領域とを有し、前記製品領域と前記カシメ接続領域が、前記製品領域の貫通孔縁部に形成された嵌入部に前記カシメ接続領域の一部を嵌入させて一時連結している打ち抜き片を被打ち抜き材から形成する方法であって、
前記被打ち抜き材に、前記貫通孔の内周から前記嵌入部の開口領域を除いた部分の輪郭と、前記カシメ接続領域の前記貫通孔内に突出した部分の輪郭とを組み合わせた形状と同一輪郭を有する打ち抜き孔を形成する工程と、
前記打ち抜き孔内に形成された突出部の先側に接する当接部を備えたガイド部材を該打ち抜き孔内に設けて前記嵌入部の輪郭に沿った切り離しを行って、前記被打ち抜き材に対して前記カシメ接続領域を下方に打ち抜き形成した後、該カシメ接続領域を形成された前記嵌入部と前記当接部の間に押し戻して、該カシメ接続領域を該カシメ接続領域が打ち抜きされた後の被打ち抜き材と一時連結させる工程と、
前記カシメ接続領域と一時連結した前記被打ち抜き材に対して前記製品領域の外形抜きを行う工程とを有することを特徴とする打ち抜き片の形成方法。
【請求項2】
請求項1記載の打ち抜き片の形成方法において、前記ガイド部材の前記当接部は、前記カシメ接続領域の打ち抜き形成に使用するダイの上面側に設けることを特徴とする打ち抜き片の形成方法。
【請求項3】
請求項1記載の打ち抜き片の形成方法において、前記ガイド部材の前記当接部は、前記カシメ接続領域の打ち抜きに使用するパンチと共に昇降するストリッパープレートの下面側に設けることを特徴とする打ち抜き片の形成方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の打ち抜き片の形成方法において、前記嵌入部の幅を、該嵌入部の開口側に向けて徐々に拡大又は一定に形成することを特徴とする打ち抜き片の形成方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の打ち抜き片の形成方法で作製した前記打ち抜き片を積層して形成する積層体の製造方法であって、
積層された前記製品領域は、カシメ接合部を介してカシメ接合した前記カシメ接続領域により仮固定されていることを特徴とする積層体の製造方法。
【請求項6】
請求項4記載の打ち抜き片の形成方法で作製した前記打ち抜き片を積層して形成する積層鉄心の製造方法であって、
前記被打ち抜き材を電磁鋼板、前記製品領域を該積層鉄心を構成する鉄心片として、
積層された前記製品領域を、カシメ接合部を介してカシメ接合した前記カシメ接続領域により仮固定し、
仮固定された前記製品領域を一体化して該積層鉄心を構成した後に、カシメ接合した前記カシメ接続領域を積層方向と直交する方向に移動して、一体化された前記製品領域から取り外すことを特徴とする積層鉄心の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、設計の自由度が高く、形状精度に優れた打ち抜き片の形成方法及びその方法で形成した打ち抜き片を用いた積層体並びに積層鉄心の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
モータは、冷蔵庫、エアコン、ハードディスクドライブ、電動工具等の駆動源として従来から使用されており、近年ではハイブリッドカーの駆動源としても使用されている。モータの主な構成部品である回転子(ロータ)及び固定子(ステータ)をそれぞれ構成する積層鉄心は、薄い電磁鋼板を所定の形状に打ち抜いて作製した鉄心片を所定枚数だけ積層し、これらを締結することによって形成されている。そして、固定子用の積層鉄心に巻線を施し、回転子用の積層鉄心にシャフトを取り付け、それらをケーシングに収納することによりモータが完成する。ここで、積層状態の鉄心片において上下方向に隣り合う鉄心片同士を締結する手段として、コストパフォーマンス及び作業効率の観点から、カシメや溶接が用いられている。
【0003】
一方、モータ特性において高いトルク及び低い鉄損を優先させる場合、カシメや溶接の代わりに、樹脂材料を用いて鉄心片同士を締結する方法が使用されている。例えば、特許文献1には、
図7に示す分割型ステータ100の製造において、分割型ステータ100を構成している単位積層鉄心101を、
図8に示す鉄心片102を積層して締結することにより製造することが記載されている。ここで、鉄心片102は、単位積層鉄心101を構成する製品片部103と、プッシュバックにより製品片部103へ嵌め合い固定されている製造治具片部104から構成されている。
なお、
図7の符号101aは巻線である。また、プッシュバックとは、打ち抜きパンチの移動を途中で停止させる半抜き状態の打ち抜き加工を行って又は打ち抜きパンチを電磁鋼板の厚み分移動させる完全抜き状態の打ち抜き加工を行って、打ち抜き部を電磁鋼板からほぼ分離状態にした後に、打ち抜き部を電磁鋼板に形成された打ち抜き穴内へ押し戻す加工方法をいう。
【0004】
鉄心片102の製品片部103は、扇形状のバックヨーク片部105と、バックヨーク片部105の内側中央部から半径方向内側に突設するティース片部106を有している。そして、バックヨーク片部105の外側中央部(ティース片部106の反対側中央部)には製造治具片部104が嵌め合い固定される嵌合凹部107が設けられ、バックヨーク片部105の両端には隣接する製品片部103が互いに係合する係合凹部108と係合凸部109がそれぞれ設けられている。
【0005】
また、鉄心片102の製造治具片部104は、バックヨーク片部105の嵌合凹部107に嵌め合い固定される嵌合凸部110と、嵌合凸部110に突設して設けられた把持用凸部111とを有している。そして、バックヨーク片部105の嵌合凹部107との嵌合部の接触面積を低減するため、嵌合凸部110の端部には離脱用凹部112が、嵌合凸部110の両側には離脱用凹部113、114が設けられている。なお、バックヨーク片部105の嵌合凹部107の内側には、嵌め合い固定された嵌合凸部110の離脱用凹部112、113、114に対向するように離脱用凹部115、116、117がそれぞれ設けられている。更に、製造治具片部104の把持用凸部111の中央部には、表面側が固定用凹部118となり、裏面側が固定用凸部119となって、鉄心片102が上下方向に積層された際に、上下方向に隣り合う製造治具片部104同士を結束するカシメ接合部120が形成されている。
【0006】
このような構成とすることにより、積層された鉄心片102をカシメ接合すると、
図9に示すように、カシメ接合された製造治具片部104は、積層された製品片部103を積層状態で仮結束する固定治具121を形成することになる。固定治具121により仮結束された状態の製品片部103を、例えば、ダイキャストモールディングにより絶縁樹脂122で一体成型することで仮結束された状態の製品片部103を本結束することができる。そして、ティース片部106が本結束された部分に巻線101aを施した後、固定治具121を鉄心片102の積層方向、例えば、A方向にスライドさせることにより、カシメ部が存在しない単位積層鉄心101と、カシメ接合部が存在する固定治具121を分離することができる。
なお、上下方向に隣り合う製造治具片部104をカシメ接合部120を介して結束することをダミーカシメと呼び、ダミーカシメで形成された固定治具121はダミーカシメブロックと呼ばれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第5357187号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
図10に示すように、製造治具片部104の嵌合凸部110の幅は、把持用凸部111側からバックヨーク片部105側に向けて徐々に幅広(テーパ状)となるように形成されている。このため、固定治具121の取り外しを容易にするために、嵌合部の接触面積を低減させる離脱用凹部112〜117を加工しなければならないという問題、固定治具121を取り外す(スライドさせる)方向が積層方向に限定されるという問題が生じる。更に、固定治具121を積層方向にスライドさせると、単位積層鉄心101を構成している製品片部103がめくれてしまうという問題が生じる。
なお、符号123は電磁鋼板、符号124は電磁鋼板123を順送りするためのパイロット孔、符号125は鉄心片102を外形抜きした際に形成される外形抜き孔である。
【0009】
そこで、製造治具片部の嵌合凸部をストレート形状又はテーパ角が小さくなるように形成することが考えられ、特に、
図11に示すように、製造治具片部126の嵌合凸部127をストレート形状に形成すると、固定治具を、単位積層鉄心に対して半径方向外側(B方向)にスライドさせることができ、固定治具をスライドさせても単位積層鉄心を構成している製品片部がめくれてしまうという問題は生じない。しかしながら、製造治具片部126の嵌合凸部127をストレート形状に形成すると、プッシュバックを行った際に、製造治具片部126が把持用凸部128の外側方向(B方向)に向けてずれてしまうという問題が生じる。そして、製造治具片部126の位置が(従って、ダミーカシメの位置が)ずれたまま鉄心片の外形抜きを行って積層すると、固定治具が傾斜した状態で形成されるため製品片部は傾斜した状態で仮結束されることになって、単位積層鉄心は傾斜した状態で形成されてしまうという問題がある。
【0010】
製造治具片部の嵌合凸部をストレート形状に形成しても、プッシュバックを行った際に、製造治具片部が把持用凸部の外側方向に向けてずれることを防止するには、
図12に示すように、製造治具片部の形成を、鉄心片の外形抜き(外形抜き孔125の形成)と同時に行うことが考えられる。これによって、プッシュバックを行う際に、切り離しが行われる領域129(嵌合凸部側の輪郭)の反対側(把持用凸部が形成される側)が電磁鋼板123と繋がっているため、ずれが生じるという問題は発生しない。しかしながら、鉄心片の製造において、製造治具片部を、外形抜きの段階でしか、製品片部の外側領域に形成することができず、ダミーカシメの位置や鉄心片の打ち抜き加工順序に制約が生じ、積層鉄心設計の自由度が小さくなるという問題がある。
【0011】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたもので、設計の自由度が高く、形状精度に優れた打ち抜き片の形成方法及びその方法で形成した打ち抜き片を用いた積層体並びに積層鉄心の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記目的に沿う第1の発明に係る打ち抜き片の形成方法は、中央側に貫通孔を備えた製品領域と、前記貫通孔の内側に突出して配置された少なくとも1つのカシメ接続領域とを有し、前記製品領域と前記カシメ接続領域が、前記製品領域の貫通孔縁部に形成された嵌入部に前記カシメ接続領域の一部を嵌入させて一時連結している打ち抜き片を被打ち抜き材から形成する方法であって、
前記被打ち抜き材に、前記貫通孔の内周から前記嵌入部の開口領域を除いた部分の輪郭と、前記カシメ接続領域の前記貫通孔内に突出した部分の輪郭とを組み合わせた形状と同一輪郭を有する打ち抜き孔を形成する工程と、
前記打ち抜き孔内に形成された突出部の先側に接する当接部を備えたガイド部材を該打ち抜き孔内に設けて前記嵌入部の輪郭に沿った切り離しを行って、前記被打ち抜き材に対して前記カシメ接続領域を下方に打ち抜き形成した後、該カシメ接続領域を形成された前記嵌入部と前記当接部の間に押し戻して、該カシメ接続領域を該カシメ接続領域が打ち抜きされた後の被打ち抜き材と一時連結させる工程と、
前記カシメ接続領域と一時連結した前記被打ち抜き材に対して前記製品領域の外形抜きを行う工程とを有する。
【0013】
前記目的に沿う第2の発明に係る積層体の製造方法は、第1の発明に係る打ち抜き片の形成方法で作製した前記打ち抜き片を積層して形成する積層体の製造方法であって、
積層された前記製品領域は、カシメ接合部を介してカシメ接合した前記カシメ接続領域により仮固定されている。
【0014】
前記目的に沿う第3の発明に係る積層鉄心の製造方法は、第1の発明に係る打ち抜き片の形成方法で作製した前記打ち抜き片を積層して形成する積層鉄心の製造方法であって、
前記被打ち抜き材を電磁鋼板、前記製品領域を該積層鉄心を構成する鉄心片として、
積層された前記製品領域を、カシメ接合部を介してカシメ接合した前記カシメ接続領域により仮固定し、
仮固定された前記製品領域を一体化して該積層鉄心を構成した後に、カシメ接合した前記カシメ接続領域を積層方向と直交する方向に移動して、一体化された前記製品領域から取り外す。
【発明の効果】
【0015】
第1の発明に係る打ち抜き片の形成方法においては、被打ち抜き材に打ち抜き孔を設け、打ち抜き孔内に形成された突出部の先側に接する当接部を備えたガイド部材を打ち抜き孔内に設けて嵌入部の輪郭に沿った切り離しを行って、被打ち抜き材からカシメ接続領域を打ち抜き形成した後、カシメ接続領域を被打ち抜き材に形成された嵌入部と当接部の間に押し戻す(プシュバックする)ので、カシメ接続領域を被打ち抜き材と精度よく一時連結させることができる。これにより、製品領域とカシメ接続領域にそれぞれ必要な他の打ち抜き加工を、製品領域とカシメ接続領域のそれぞれの形成に合わせて順次行わなければならないという制約がなくなり、打ち抜き金型の設計自由度を向上させることができる。
また、カシメ接続領域が精度よく一時連結している被打ち抜き材から製品領域の外形抜きを行うので、形状精度に優れた打ち抜き片を安定して形成することが可能になる。
【0016】
第2の発明に係る積層体の製造方法においては、形状精度に優れた打ち抜き片を積層するので、カシメ接続領域が積層したカシメ積層部を精度よく形成することができ、積層した製品領域を精度よく仮固定することができる。
【0017】
第3の発明に係る積層鉄心の製造方法においては、カシメ接合したカシメ接続領域を介して仮固定された積層状態の製品領域を一体化した後に、カシメ接合しているカシメ接続領域を取り外すので、積層状態の製品領域から構成される積層鉄心にはカシメ接合部が存在せず、鉄損の小さな積層鉄心を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の第1の実施の形態に係る打ち抜き片の形成方法により形成する打ち抜き片の説明図である。
【
図2】電磁鋼板Pから打ち抜き孔を打ち抜き形成する説明図である。
【
図3】(A)はカシメ接続領域を打ち抜き形成する際のガイド部材とダイの配置を示す平面図、(B)は上面側にガイド部材が設けられたダイの斜視図である。
【
図4】(A)は電磁鋼板Pに嵌入部の輪郭に沿った切り離しを行っている説明図、(B)は打ち抜いたカシメ接続領域を電磁鋼板Pに一時連結した状態の説明図である。
【
図6】(A)は変形例に係る打ち抜き片の形成方法において、電磁鋼板に嵌入部の輪郭に沿った切り離しを行っている説明図、(B)は打ち抜いたカシメ接続領域を電磁鋼板に一時連結した状態の説明図である。
【
図7】従来例に係る分割型ステータの平断面図である。
【
図8】分割型ステータの形成に使用する鉄心片の説明図である。
【
図9】鉄心片の積層により構成される固定治具と単位積層鉄心の説明図である。
【
図12】更に別の鉄心片の形成方法の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
続いて、添付した図面を参照しつつ、本発明を具体化した実施の形態につき説明し、本発明の理解に供する。
本発明の第1の実施の形態に係る打ち抜き片の形成方法は、
図1に示すように、例えば、平面視した形状が、回転子を構成する鉄心片(図示せず)の平面形状と同一であって、中央側に軸孔10(貫通孔の一例)を備えた製品領域11と、軸孔10の内側に対向するように突出して配置された2つのカシメ接続領域12とを有し、製品領域11とカシメ接続領域12が、製品領域11の貫通孔縁部に形成された嵌入部13にカシメ接続領域12の一部を嵌入させて一時連結している打ち抜き片14を電磁鋼板P(被打ち抜き材の一例)から形成する方法である。以下、詳細に説明する。
【0020】
本実施の形態に係る打ち抜き片の形成方法は、
図2に示すように、電磁鋼板Pに、軸孔10の内周から嵌入部13の開口領域を除いた部分の輪郭と、カシメ接続領域12の軸孔10内に突出した部分の輪郭とを組み合わせた形状と同一輪郭を有する打ち抜き孔16を形成する工程とを有している。
【0021】
更に、打ち抜き片の形成方法は、
図3(A)、(B)に示すように、打ち抜き孔16内に形成された突出部17の先側に接する当接部18を備えたガイド部材19を、カシメ接続領域12の打ち抜き形成に使用するダイ20の上面側に設けることにより、カシメ接続領域12の打ち抜き形成を行う際に、先ず、ガイド部材19を打ち抜き孔16内に進入させ、
図4(A)、(B)に示すように、打ち抜きパンチ21を下降させて、嵌入部13の輪郭に沿った切り離しを行って、電磁鋼板Pからカシメ接続領域12を下方に打ち抜き形成した後、カシメ接続領域12を、カシメ接続領域12が打ち抜きされた後の電磁鋼板Pに形成された嵌入部13と当接部18の間に押し戻して、カシメ接続領域12をカシメ接続領域12が打ち抜きされた後の電磁鋼板Pと一時連結させる工程と、カシメ接続領域12と一時連結した電磁鋼板Pに対して製品領域11の外形抜きを行う工程とを有している。
【0022】
ここで、符号22はダイ20を図示しないダイプレートに固定するための固定ピン、符号23はダイ20に形成された固定ピン22の挿通孔の一部を構成する挿通溝、符号24は下方に打ち抜きされたカシメ接続領域12を収納する収納部、符号25は、打ち抜きパンチ21と共に昇降するストリッパープレートである。
また、符号26は、突出部17を先側に含んでカシメ接続領域12が形成される部位の下面に当接し、打ち抜きパンチ21に押圧されて下降する部位と同期して下降しながら電磁鋼板Pから切り離されて形成したカシメ接続領域12を支持すると共に、打ち抜きパンチ21の上昇に伴って上昇し、カシメ接続領域12を嵌入部13と当接部18の間に押し戻すノックアウトパンチ、符号27は打ち抜きパンチ21の昇降に合わせてノックアウトパンチ26を昇降させるバネ部材である。
【0023】
図4(A)に示すように、打ち抜き孔16内の突出部17からカシメ接続領域12を打ち抜き形成する場合、突出部17の先側には当接部18を介してガイド部材19が存在しているので、突出部17は電磁鋼板P側とガイド部材19で拘束された状態で打ち抜きされる。そして、形成されたカシメ接続領域12は、ノックアウトパンチ26に載置された状態でダイ20の収納部24に進入するので、カシメ接続領域12の水平方向の移動は収納部24により拘束される。
【0024】
次いで、打ち抜きパンチ21が上昇するとノックアウトパンチ26も上昇するので、ノックアウトパンチ26に載置されたカシメ接続領域12は、ダイ20の収納部24から排出されて、カシメ接続領域12が打ち抜きされた後の電磁鋼板Pに形成された嵌入部13とダイ20の上面側に設けられた当接部18で囲まれた空間部に進入する。そして、カシメ接続領域12は、打ち抜きパンチ21が更に上昇するのに伴って、嵌入部13とガイド部材19(当接部18)で両側から挟まれた(拘束された)状態で空間部を上昇するので、上昇中のカシメ接続領域12の中心位置は、電磁鋼板Pから打ち抜かれて形成された際のカシメ接続領域12の中心位置と一致している。その結果、カシメ接続領域12の一部を電磁鋼板Pに形成された嵌入部13内に正確に押し戻して一時連結することができる。そして、カシメ接続領域12が精度よく一時連結している電磁鋼板Pから製品領域11の外形抜きを行うので、形状精度に優れた打ち抜き片14を安定して形成することが可能になる。
【0025】
ガイド部材19を設けることで、カシメ接続領域12の水平方向のずれを防止して、嵌入部13内に正確に押し戻すことができる。このため、従来は、嵌入部の幅を、例えば、嵌入部の開口側に向かうにつれて幅を狭く形成してカシメ接続領域の一部を嵌入部に掛止させて、カシメ接続領域の一部を嵌入部内に押し戻す際に発生する摩擦力により、カシメ接続領域が嵌入部の外に押し出されるのを防止していたが、本実施の形態では、嵌入部13の形状を自由に決定することができる。例えば、
図5(A)に示すように、嵌入部13の幅を、嵌入部13の開口側に向けて徐々に拡大する形状にすることも、又は
図5(B)に示すように、嵌入部13の幅を、一定の幅に形成することもできる。
【0026】
また、カシメ接続領域12の一部を電磁鋼板Pに形成された嵌入部13内に正確に押し戻して一時連結することができるので、電磁鋼板Pと一時連結したカシメ接続領域12を平面視した形状は、電磁鋼板Pの打ち抜き孔16内に形成された突出部17を平面視した形状と一致する。このため、製品領域11とカシメ接続領域12にそれぞれ施す他の打ち抜き加工、例えば、カシメ接続領域12に設けるカシメ接合部15の加工と製品領域11に設ける磁石挿入孔28の加工を、1)打ち抜き孔16を形成する工程の前、2)打ち抜き孔16を形成する工程とカシメ接続領域12を電磁鋼板Pと一時連結させる工程の間、及び3)カシメ接続領域12を電磁鋼板Pと一時連結させる工程と製品領域11の外形抜きを行う工程の間、のいずれかの段階でそれぞれ行うことができる。その結果、カシメ接続領域と被打ち抜き材にそれぞれ更に打ち抜き加工を行うことが可能になり、打ち抜き金型の設計自由度を向上させることができる。
【0027】
第1の実施の形態に係る打ち抜き片の形成方法では、ガイド部材19をダイ20の上面側に設けたが、
図6(A)、(B)に示すように、突出部17の先側に接する当接部29を備えたガイド部材30を、カシメ接続領域12の打ち抜き形成に使用するストリッパープレート25の下面側に設けることもできる。
図6(A)に示すように、打ち抜き孔16内の突出部17からカシメ接続領域12を打ち抜き形成する場合、打ち抜きパンチ21の下降に伴ってストリッパープレート25が下降すると、ストリッパープレート25の下面側に設けられたガイド部材30が打ち抜き孔16内に進入し、突出部17の先側に当接部29を介してガイド部材30が存在し、突出部17を先側に含んでカシメ接続領域12が形成される部位は電磁鋼板P側とガイド部材30で拘束された状態で打ち抜きされて、カシメ接続領域12となってノックアウトパンチ26に載置された状態でダイ20の収納部24に進入する。
【0028】
次いで、打ち抜きパンチ21が上昇するとノックアウトパンチ26も上昇し、ノックアウトパンチ26に載置されたカシメ接続領域12は、ダイ20の収納部24から電磁鋼板Pに形成された嵌入部13とストリッパープレート25の下面側に設けられたガイド部材30(当接部29)で囲まれた空間部に進入する。そして、カシメ接続領域12は、打ち抜きパンチ21が更に上昇するのに伴って、嵌入部13とガイド部材30で両側から挟まれた(拘束された)状態で空間部を上昇し、ストリッパープレート25が電磁鋼板Pから(ストリッパープレート25がカシメ接続領域12から)離脱した時点で、カシメ接続領域12の一部は電磁鋼板Pに形成された嵌入部13内に押し戻されて、カシメ接続領域12は電磁鋼板Pと一時連結する。
なお、ストリッパープレート25の下面側に設けられたガイド部材30の作用効果は、ダイ20の上面側に設けたガイド部材19の作用効果と同一なので、説明は省略する。
【0029】
本発明の第2の実施の形態に係る積層体の製造方法は、第1の実施の形態に係る打ち抜き片の形成方法で作製した打ち抜き片14を積層して積層体を製造する方法である。
ここで、第1の実施の形態に係る打ち抜き片の形成方法では、カシメ接続領域12が電磁鋼板Pに形成された嵌入部13内に正確に押し戻されているので、カシメ接続領域12が一時連結している電磁鋼板Pから製品領域11の外形抜きを行って作製した打ち抜き片14は、常に同一形状となる。従って、打ち抜き片14を積層すると、2つのカシメ接続領域12と製品領域11はそれぞれ上下方向に正確に重なりあって、積層体が形成される。ここで、各カシメ接続領域12は、カシメ接合部15を介してカシメ接合してカシメ接合ブロックを形成する。そして、各カシメ接合ブロックは、打ち抜き片14の中央側に設けられた軸孔10が積層することにより形成された貫通部内に配置されるため、カシメ接続領域12と一時連結する製品領域11が積層した部分は、2つのカシメ接合ブロックにより仮固定されることになる。
【0030】
本発明の第3の実施の形態に係る積層鉄心の製造方法は、第1の実施の形態に係る打ち抜き片の形成方法で作製した打ち抜き片14を積層して回転子を構成する積層鉄心を製造する方法である。
ここで、積層鉄心の製造方法は、打ち抜き片14を積層し、打ち抜き片14の中央側に設けられた軸孔10が積層して形成された貫通部内に、打ち抜き片14の軸孔10内に突出して設けられた2つのカシメ接続領域12がそれぞれ上下方向に重なりあって、カシメ接合部15を介してカシメ接合したカシメ接合ブロックを形成して、カシメ接続領域12と嵌入部13を介して一時連結する製品領域11(即ち、鉄心片)が積層した部分を、2つのカシメ接合ブロックにより仮固定する工程と、仮固定された製品領域積層部分(仮固定された鉄心片積層部分)を一体化して積層鉄心を形成する工程と、積層鉄心からカシメ接合ブロックを積層方向と直交する方向に移動して取り外す工程とを有している。
【0031】
カシメ接続領域12と鉄心片が一時連結して構成される打ち抜き片14では、嵌入部13の輪郭に沿った切り離しを行って形成したカシメ接続領域12を、嵌入部13内に正確に押し戻している。このため、打ち抜き片14を積層すると、カシメ接続領域12と鉄心片はそれぞれ上下方向に正確に重なりあう。これにより、各カシメ接合ブロックの軸方向は打ち抜き片14の積層方向と平行になり、2つのカシメ接合ブロックにより仮固定された鉄心片積層部分も打ち抜き片14の積層方向と平行になる。その結果、仮固定された鉄心片積層部分を一体化して得られる積層鉄心の軸方向は積層方向と平行になる。
ここで、仮固定された鉄心片積層部分を一体化するには、例えば、ダイキャストモールディングにより絶縁樹脂で一体成型することにより、仮固定された鉄心片積層部分に形成される磁石挿入部(磁石挿入孔28の積層により形成される)に永久磁石を挿入して樹脂封止することにより、あるいは、鉄心片に予め形成した樹脂注入孔の積層により形成される樹脂注入部に樹脂を注入することにより行うことができる。
【0032】
カシメ接続領域12と鉄心片を一時連結する嵌入部13は、例えば、
図5(A)に示すように、嵌入部13の幅が嵌入部13の開口側に向けて徐々に拡大する形状、又は
図5(B)に示すように、嵌入部13の幅が一定となる形成であるので、積層鉄心からカシメ接合ブロックを積層方向と直交する方向に移動させることができる。これにより、カシメ接合ブロックを積層鉄心から分離する際に、積層鉄心を構成している鉄心片がめくれてしまうという問題が生じない。更に、積層鉄心には、カシメ接合部が存在しないため、高いトルクと鉄損の小さな積層鉄心を得ることができる。
【0033】
以上、本発明を、実施の形態を参照して説明してきたが、本発明は何ら上記した実施の形態に記載した構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載されている事項の範囲内で考えられるその他の実施の形態や変形例も含むものである。
更に、本実施の形態とその他の実施の形態や変形例にそれぞれ含まれる構成要素を組合わせたものも、本発明に含まれる。
例えば、製品領域の貫通孔の内側に対向するように突出する2つのカシメ接続領域を配置したが、製品領域の形状や大きさに応じて、1つ又は3つ以上を配置してもよい。
また、
図6(A)、(B)ではストリッパープレートの下面側にガイド部材を設けたが、打ち抜きパンチに直接ガイド部材を設けてもよい。
更に、本実施の形態では、製品領域の貫通孔の例として軸孔の場合について記載したが、磁石挿入孔又は軽量孔の内側に突出してカシメ接続領域を配置することもできる。
【符号の説明】
【0034】
10:軸孔、11:製品領域、12:カシメ接続領域、13:嵌入部、14:打ち抜き片、15:カシメ接合部、16:打ち抜き孔、17:突出部、18:当接部、19:ガイド部材、20:ダイ、21:打ち抜きパンチ、22:固定ピン、23:挿通溝、24:収納部、25:ストリッパープレート、26:ノックアウトパンチ、27:バネ部材、28:磁石挿入孔、29:当接部、30:ガイド部材