特開2016-16390(P2016-16390A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2016-16390(P2016-16390A)
(43)【公開日】2016年2月1日
(54)【発明の名称】撹拌脱泡装置
(51)【国際特許分類】
   B01D 19/00 20060101AFI20160105BHJP
   B01F 9/22 20060101ALI20160105BHJP
   B01F 13/02 20060101ALI20160105BHJP
   B01F 15/02 20060101ALI20160105BHJP
   B01F 15/06 20060101ALI20160105BHJP
   B01F 15/00 20060101ALI20160105BHJP
【FI】
   B01D19/00 102
   B01D19/00 101
   B01F9/22
   B01F13/02 A
   B01F15/02 A
   B01F15/06 Z
   B01F15/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2014-142382(P2014-142382)
(22)【出願日】2014年7月10日
(71)【出願人】
【識別番号】000132161
【氏名又は名称】株式会社スギノマシン
(74)【代理人】
【識別番号】100105809
【弁理士】
【氏名又は名称】木森 有平
(72)【発明者】
【氏名】杉森 正
(72)【発明者】
【氏名】氷見 太
(72)【発明者】
【氏名】小原 香雪
(72)【発明者】
【氏名】藤田 志朗
【テーマコード(参考)】
4D011
4G036
4G037
【Fターム(参考)】
4D011AA06
4D011AA16
4D011AD02
4D011AD06
4G036AA26
4G037AA01
4G037CA04
4G037CA18
4G037DA30
4G037EA05
(57)【要約】
【課題】 容器に収容された原料を撹拌及びおよび脱泡する撹拌脱泡装置において、装置を大型化させずに、原料の撹拌状態を維持しつつ、容器内の環境を制御することが可能な撹拌脱泡装置を提供する。
【解決手段】 公転機構および自転機構によって、容器201に収容された原料200を撹拌および脱泡する撹拌脱泡装置1であって、流体を制御する流体制御装置8と制御棒3とが配管接続された環境制御装置を備え、前記制御棒3が所定の傾斜角度で容器201に挿入され、制御棒3と容器201との相対位置を維持した状態で容器201を公転させながら自転させて容器201内の環境を制御する構成である。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
公転機構および自転機構によって、容器に収容された原料を撹拌および脱泡する撹拌脱泡装置であって、流体を制御する流体制御装置と制御棒とが配管接続された環境制御装置を備え、前記制御棒が所定の傾斜角度で前記容器に挿入され、前記制御棒と前記容器との相対位置を維持した状態で前記容器を公転させながら自転させて前記容器内の環境を制御することを特徴とする撹拌脱泡装置。
【請求項2】
前記公転機構の回転軸の中心線上には前記配管接続のための回転継手が配されており、前記回転継手によって前記制御棒が前記容器との相対位置を維持した状態で前記容器とともに公転することを特徴とする請求項1記載の撹拌脱泡装置。
【請求項3】
前記回転継手の下方には前記配管接続のための支持部が配されており、前記支持部によって前記制御棒がその傾斜角度を可変に連結支持されていることを特徴とする請求項2記載の撹拌脱泡装置。
【請求項4】
前記公転機構の回転軸の中心線上には、前記制御棒および前記回転継手の位置を上下にスライド可能に位置決めするスライド機構が配されていることを特徴とする請求項2または3記載の撹拌脱泡装置。
【請求項5】
前記制御棒の内部には循環用の管路が形成されており、前記制御棒と前記流体制御装置とで所定温度の流体を循環させることで前記容器内の温度を制御することを特徴とする請求項1から4のいずれか一項記載の撹拌脱泡装置。
【請求項6】
前記容器が密閉容器であって、前記制御棒の内部には吸引用の管路が形成されており、前記制御棒から真空吸引することを特徴とする請求項1から4のいずれか一項記載の撹拌脱泡装置。
【請求項7】
前記容器が密閉容器であって、前記制御棒の内部には加圧用の管路が形成されており、前記制御棒から加圧することを特徴とする請求項1から4のいずれか一項記載の撹拌脱泡装置。
【請求項8】
前記制御棒の内部には供給用の管路が形成されており、前記制御棒から不活性ガスを供給することを特徴とする請求項1から4のいずれか一項記載の撹拌脱泡装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撹拌脱泡装置に関する。
【背景技術】
【0002】
歯科材料、医薬品材料、化粧品基材、インク、塗料、顔料等の色材、シリコーン、エポキシ、ウレタン等の合成樹脂、接着剤、その他の化学材料であって、液状、ゲル状、ペースト状の原料や複数の原料の混合物からなる化学材料は、その使用に際しては、均質化を図るために、撹拌と同時に脱泡することが求められている。このため、撹拌と脱泡を同時処理することが可能な撹拌脱泡装置の需要が高まっている。
【0003】
本明細書では、撹拌と脱泡を同時処理することが可能な撹拌脱泡装置を用いて、撹拌と脱泡のいずれかないしは両方の処理を含む処理を行うことを撹拌脱泡処理と定義する。
【0004】
従来、原料が収納された密閉容器を公転させながら自転させることによって、原料を撹拌脱泡処理する撹拌脱泡装置が知られている(例えば特許文献1〜3を参照)。また、従来からの課題として、撹拌の際に原料の温度が上昇し、原料の温度が上昇することで処理効果に影響が及ぶことが知られている(例えば特許文献3,特許文献4を参照)。
【0005】
特許文献1には、「真空の状態で容器の自転、公転を制御することであらゆる種類の溶剤等を最適な状態に撹拌、脱泡することのできる溶剤等の撹拌・脱泡方法を提供すること(その段落0012)」を課題とし、「容器に収納された溶剤等の温度を検知し、温度の上昇に応じて容器の公転数及び自転数を制御する撹拌・脱泡方法(その請求項2)」が開示されている。
【0006】
特許文献2には、「被混練材料の収納容器が真空雰囲気内に設置され、公転ならびに自転をしている状態で、短時間で確実に撹拌脱泡作業を行うこと(その段落0007)」を課題とし、「前記収納容器を保持する容器ホルダに設置した状態でその収納容器内を密閉する押さえ蓋と、この押さえ蓋に設けたフレキシブル吸引ホースと、このフレキシブル吸引ホースを回動自在に支持する取付部と、この取付部に設けた吸引ホースと、この吸引ホースに接続した真空ポンプと、この真空ポンプにより真空吸引する経路中に設けたバルブ(開閉弁)とから構成される撹拌脱泡装置(その請求項1)」が開示されている。
【0007】
特許文献3には、「混練脱泡に伴う温度制御を簡単にすること(その段落0007)」を課題とし、「前記自転機構及び公転機構を収容する閉鎖筐体と、前記閉鎖筐体内に冷却気体を送り込む冷却機構と、前記容器ホルダ或いは収容容器の温度を計測する温度センサと、前記閉鎖筐体内の温度と湿度を計測する温度・湿度センサとを備え、前記温度・湿度センサにより計測した温度及び湿度に基づいて、前記容器ホルダ及び収容容器のいずれの表面にも結露が生じないように、前記冷却機構から送り込む冷却気体の温度或いは流量の少なくとも一方を制御することによって前記閉鎖筐体内の温度制御する温度制御機構を備えている温度調整機能付混練脱泡装置(その請求項1)」が開示されている。
【0008】
特許文献4には、「従来の撹拌装置の構成によると、冷却用ジャケットにより撹拌槽全体を冷却する場合、または冷却用コイルにより撹拌槽内の外周付近を冷却する場合、撹拌槽が大型であったり、混合攪拌する液体の粘度が高かったりすると、どうしても伝熱性が悪く、冷却能力が不足すること(その段落0004)」を課題とし、「回転支持軸の下端部に、回転平面の直径方向に沿う上部支持板を回転平面に対して垂直となるように取り付け、この上部支持板の下端面に、短冊状の翼を所定間隔置きに複数個垂下して設け、これら各翼の下端面に亘って下部支持板を取り付け、かつ上記回転支持軸、上部支持板、各翼および下部支持板の内部に、冷却流体の通路を形成した撹拌翼(その請求項1)」が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2005―131622号公報(特許第3627220号公報)
【特許文献2】特開平11−290668号公報(特許第3896449号公報)
【特許文献3】特開2007−245110号公報(特許第4689507号公報)
【特許文献4】特開平7−792号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献1に記載の装置では、容器に収納された溶剤等の温度を検知し、温度の上昇に応じて容器の公転数および自転数を制御するため、容器の公転数および自転数が一定にし難くなり、原料の撹拌状態を維持することが難しくなる。
また、特許文献2に記載の装置では、吸引ホースが回動して捻れ易い構造であり、吸引ホースが捻れることで、吸引力を維持することが難しくなるうえ、耐久性に難がある。
そして、特許文献3に記載の装置では、閉鎖筐体を形成するため、装置自体が大掛かりとなってしまう。
さらに、特許文献4に記載の装置では、撹拌翼によって撹拌する構造であるから、清掃等のメンテナンスが煩雑であり、原料が収納された密閉容器を公転させながら自転させる撹拌脱泡機のような脱泡作用はない。
つまり、特許文献1〜4に記載の既知の装置では、装置を大型化させずに、原料の撹拌状態を維持しつつ、容器内の環境を制御することはできなかった。
【0011】
そこで本発明の目的は、容器に収容された原料を撹拌および脱泡する撹拌脱泡装置において、装置を大型化させずに、原料の撹拌状態を維持しつつ、容器内の環境を制御することが可能な撹拌脱泡装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の撹拌脱泡装置は、公転機構および自転機構によって、容器に収容された原料を撹拌および脱泡する撹拌脱泡装置であって、流体を制御する流体制御装置と制御棒とが配管接続された環境制御装置を備え、前記制御棒が所定の傾斜角度で前記容器に挿入され、前記制御棒と前記容器との相対位置を維持した状態で前記容器を公転させながら自転させて前記容器内の環境を制御することを特徴とする。
【0013】
本発明によれば、前記制御棒が所定の傾斜角度で前記容器に挿入され、前記制御棒と前記容器との相対位置を維持した状態で前記容器を公転させながら自転させて前記容器内の環境を制御するので、吸引ホースのように回動して捻れることはなく、比較的単純な形状とすることで清掃等のメンテナンスが容易となる。よって、本発明によれば、コンパクトな構成でありながら、原料の撹拌状態を維持しつつ、容器内の環境を高い精度で制御することができる。
【0014】
前記制御棒は、前記自転機構の回転軸を中心として当該回転軸に沿って前記容器に挿入される。
前記制御棒が前記自転機構の回転軸上に配されることで、前記制御棒に係る原料の流動抵抗を最小に抑えることができる。或いは、敢えて前記制御棒が前記自転機構の回転軸からオフセットした位置に配されることで、前記制御棒に係る原料の流動抵抗を上昇させて前記制御棒により撹拌を促進することができる。
【0015】
前記流体制御装置が制御する前記流体としては、空気、不活性ガス、水、不凍液、オイル、ドライアイス、スチーム等が挙げられる。
【0016】
前記容器内の環境を制御することとしては、例えば、温度制御、真空度制御、不活性ガス注入等の雰囲気制御等が挙げられる。これらの環境を制御することによって、撹拌状態や脱泡状態を当初の設定通りに維持することができる。
【0017】
また、本発明によれば、前記流体を少量ずつ追加しながら撹拌脱泡処理する等して、原料の反応環境を微調整することも可能である。すなわち、本発明によれば、原料の処理効果の向上に繋がる。
【0018】
本発明は、前記公転機構の回転軸の中心線上には前記配管接続のための回転継手が配されており、前記回転継手によって前記制御棒が前記容器との相対位置を維持した状態で前記容器とともに公転することを特徴とする。
【0019】
本発明によれば、前記制御棒を公転させるための回転継手が配されているので、前記流体の流量を設定条件通りにすることが容易となり、耐久性に優れた構造となる。
【0020】
前記回転継手はロータリージョイントと同義である。または、前記回転継手はスイベルジョイントと同義である。すなわち、前記回転継手は、流体を輸送しながら前記制御棒を公転自在に支持する構成部材である。
【0021】
本発明は、前記回転継手の下方には前記配管接続のための支持部が配されており、前記支持部によって前記制御棒がその傾斜角度を可変に連結支持されていることを特徴とする。
【0022】
本発明によれば、前記制御棒の傾斜角度を適宜調節することができる。例えば、前記制御棒を前記自転機構の回転軸上に配することで、前記制御棒に係る原料の流動抵抗を最小に抑えることができる。或いは、前記制御棒を前記自転機構の回転軸からオフセットした位置に配することで、前記制御棒に係る原料の流動抵抗を上昇させて前記制御棒により撹拌を促進することができる。さらに、原料が収容された容器をホルダに収容する際、また、当該容器をホルダから取り出す際に、前記制御棒が前記容器の移動の妨げにならないように前記制御棒の傾斜角度を調節することができる。また、前記制御棒と前記回転継手との管路を、前記支持部を関節として折り畳むことが可能となる。
【0023】
前記支持部は、肘継手や自在継手と同じ機能を有する。すなわち、前記支持部は、流体を輸送しながら前記制御棒をその傾斜角度を可変できるように支持する構成部材である。または、前記支持部は、流体を循環させながら前記制御棒をその傾斜角度を可変できるように支持する構成部材である。
【0024】
本発明は、前記公転機構の回転軸の中心線上には、前記制御棒および前記回転継手の位置を上下にスライド可能に位置決めするスライド機構が配されていることを特徴とする。
【0025】
本発明によれば、前記スライド機構によって、原料が収容された容器をホルダに収容する際、また、当該容器をホルダから取り出す際に、前記制御棒が前記容器の移動の妨げにならないように予め上下にスライドさせておくことが容易にできる。
【0026】
前記原料は、撹拌と脱泡を目的としたものであればよく、材質、形態、粘性等は限定されない。前記原料としては、例えば歯科材料、医薬品材料、化粧品基材、インク、塗料、顔料等の色材、シリコーン、エポキシ、ウレタン等の合成樹脂、接着剤、その他の化学材料が挙げられる。前記原料は、例えば液状、ゲル状、ペースト状の原料や複数の原料の混合物からなる。例えば、液体の原料に粉末状固体の原料を混ぜた状態で、撹拌脱泡処理を行うことができる。また、前記原料の粘性として、粘性の低いもの、粘性の高いものを想定した場合、原料の形態と同様、粘性の低いもの同士、粘性の高いもの同士だけでなく、複数の粘性が異なる材料も撹拌または脱泡することができる。
【0027】
前記原料は、前記容器に直接収容することができ、また、前記原料が収容された容器をホルダに収容することができる。清掃や洗浄等のメンテナンス作業を不要とするためには、前記原料が収容された容器をホルダに収容することが好ましい。
【0028】
前記容器は、通常は、所定の蓋をして密閉容器とするが、撹拌脱泡条件によっては蓋をしない場合がある。また、撹拌脱泡条件によっては蓋をしても密閉せずに空気の抜け孔を設ける場合がある。
【0029】
前記制御棒は硬質材からなり、前記容器内の環境を制御するために前記容器に挿入される。
前記制御棒は、例えばアルミニウム、ステンレス、銅、銅合金、ニッケル合金等の熱伝導率の高い硬質金属からなる。
【0030】
前記制御棒は回転対称形状であり、比較的単純な棒形状が好ましい、清掃等のメンテナンスが容易となるからである。また、使い捨てのカバーを前記制御棒に覆うことで、清掃不要とすることができる。
【0031】
前記制御棒は、先端下向きに配することができ、また、先端上向きに配することができる。原料が収容された容器をホルダに収容し、また、当該容器をホルダから取り出す作業性の向上や、装置構成を単純化する観点からは、前記制御棒を先端下向きに配することが好ましい。
【0032】
本発明は、前記制御棒の内部には循環用の管路が形成されており、前記制御棒と前記流体制御装置とで所定温度の流体を循環させることで前記容器内の温度を制御することを特徴とする。
【0033】
本発明によれば、前記制御棒が前記容器に挿入された状態で前記容器が公転しながら自転するので、前記制御棒と前記容器に収容された原料とで直接的かつ効率的に熱交換ができる。前記流体制御装置の温度設定により、前記容器に収容された原料を直接的に冷却することができ、また、前記容器に収容された原料を直接的に加熱することができる。つまり、本発明によれば、熱交換性が高く、前記流体制御装置の温度設定により、前記容器に収容された原料を冷却することが容易にでき、また、前記容器に収容された原料を加熱することが容易にできる。
【0034】
本発明は、前記容器が密閉容器であって、前記制御棒の内部には吸引用の管路が形成されており、前記制御棒から真空吸引することを特徴とする。
【0035】
本発明によれば、前記容器内の真空度を高めることで前記容器に収容された原料の脱泡を促進することが容易にできる。
【0036】
本発明は、前記容器が密閉容器であって、前記制御棒の内部には加圧用の管路が形成されており、前記制御棒から加圧することを特徴とする。
【0037】
本発明によれば、前記容器内を加圧状態で前記容器に収容された原料を処理することが容易にできる。
【0038】
本発明は、前記制御棒の内部には供給用の管路が形成されており、前記制御棒から不活性ガスを供給することを特徴とする。
【0039】
本発明によれば、窒素等の不活性ガスを前記容器内にパージすることで前記容器に収容された原料の不活性化を促進することが容易にできる。
【発明の効果】
【0040】
本発明の撹拌脱泡装置によれば、公転または自転の回転数の制御に関係なく、外部環境、例えば、温度、真空、流体を調整することによって、撹拌状態や脱泡状態を当初の設定通りに維持することができる。その結果、原料の処理効果の向上に繋がる。本発明によれば、前記流体の流量を設定条件通りにすることが容易となり、耐久性に優れた構造となる。本発明によれば、前記制御棒が前記容器の移動の妨げにならないように予め上下にスライドさせておくことが容易にできる。本発明によれば、前記制御棒の傾斜角度を適宜調節することができる。
【0041】
本発明によれば、意図する外部環境に応じて、前記制御棒を交換することによって、より適切な条件下で、撹拌および脱泡を行うことができる。その結果、処理のバリエーションを増やすことができる。前記環境制御装置は、前記管路を介して、前記容器と接続されるのみであり、前記容器やホルダが大型化することがない。
【図面の簡単な説明】
【0042】
図1】本発明を適用した実施形態の撹拌脱泡装置を示す斜視図である。
図2】上記実施形態の撹拌脱泡装置の内部構造を示す内部構造図である。
図3】上記実施形態における環境制御装置を示す構造図である。
図4】上記環境制御装置における制御棒と支持部と回転継手の配管接続構造を示す構造図である。
図5】上記実施形態における制御棒を例示する図であり、(a)は側面図であり、(b)は側断面図であり、(c)は平面図である。
図6】上記実施形態における制御棒を例示する図であり、(a)は側面図であり、(b)は側断面図であり、(c)は平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
本発明を適用した具体的な実施の形態について、図面を参照しながら以下、詳細に説明する。
【0044】
(実施の形態)
図1は、本発明を適用した実施形態の撹拌脱泡装置1を示す斜視図である。本実施形態の撹拌脱泡装置1は、略立方体形状の筐体101の上部に蓋102が備わっており、上面手前側にコントロールパネル108が配置されている。また、図1に示す例では、筐体101の背面側に流体を制御する流体制御装置8が配されている。
【0045】
本実施形態の撹拌脱泡装置1は、原料収納容器201を保持するための容器ホルダ300が回転対称となる位置に合計2つ配されており、ベース6の上方が、原料収納容器201を収納するための撹拌室210となっている(図2を参照)。原料収納容器201はカップ形状であり、原料200を収容した後、蓋202が取り付けられる(図2を参照)。図示しないが、筐体101には、制御回路が内蔵されている。なお、筐体101の外側カバーは、メンテナンスを容易とするために着脱可能となっている。
【0046】
本実施形態の撹拌脱泡装置1が撹拌脱泡する対象となる原料200は、撹拌と脱泡を目的としたものであればよく、材質、形態、粘性等は限定されない。例えば、歯科材料、医薬品材料、化粧品基材、インク、塗料、顔料等色材、シリコーン、エポキシ、ウレタンといった化学材料や合成樹脂、接着剤、シーラント剤等が挙げられる。原料の形態として、液体、固体等を想定した場合、液体同士、固体同士で撹拌または脱泡することができる。さらに、単一の原料の処理に用いることができるだけでなく、複数の原料を混ぜ合わせて処理することもできる。例えば、液体の原料に粉末状固体の原料を混ぜた状態で、処理を行うことができる。原料の粘性として、粘性の低いもの、粘性の高いものを想定した場合、原料の形態と同様、粘性の低いもの同士、粘性の高いもの同士だけでなく、複数の粘性が異なる材料も撹拌または脱泡することができる。
【0047】
原料収納容器201は、自転運動と公転運動を円滑に行うことができるよう、適宜軽量化された素材、材質を用いる。例えば、樹脂、ステンレス、アルミニウム等で構成される。
【0048】
図2は、本実施形態の撹拌脱泡装置1の内部構造を示す内部構造図である。本実施形態の撹拌脱泡装置1は、原料収納容器201を保持するための容器ホルダ300が自転機構と連結されており、自転モータ52によって、自転軸の中心線P2−P2線を中心として自転運動をする(図2)。また、容器ホルダ300が公転機構と連結されており、公転モータ51によって、公転軸の中心線P1−P1線を中心として公転運動をする(図2)。公転モータ51と自転モータ52は、いずれもベース6に連結固定されており、それぞれ独立駆動可能な構成となっている。
【0049】
本実施形態では、公転軸の中心線P1−P1線は鉛直線となっており、自転軸の中心線P2−P2線が公転軸の中心線P1−P1となす角度が、角度K1で傾斜している(図2)。この傾斜角度K1は、35〜55°の角度に設定され、好ましくは45°の角度に設定される。傾斜角度K1で傾斜させることによって、自転および公転の際にかかる力を効果的に原料200に伝達することができる。
【0050】
図3は、本実施形態における環境制御装置10を示す構造図である。図4は、環境制御装置10における制御棒3と支持部45と回転継手4の配管接続構造を示す構造図である。図3において、矢印で示す符号L1は環境制御するための流体である。流体制御装置8から送り出された流体L1は、所定の管路を経由した後、流体制御装置8に戻ることで、流体L1が循環する仕組みとなっている(図3)。
【0051】
本実施形態における環境制御装置10は、流体L1を制御する流体制御装置8と制御棒3とが配管接続されており、制御棒3が所定の傾斜角度K1で容器201に挿入され、制御棒3と容器201との相対位置を維持した状態で容器201を公転させながら自転させて容器201内の環境を制御する構成となっている(図2図4)。
【0052】
前記流体制御装置8には流体循環用の配管41,42が取り付けられ、これら配管41,42がそれぞれ回転継手4に取り付けられ、回転継手4の下方には支持部45が取り付けられ、支持部45に制御棒3がその傾斜角度K1を角度可変に連結支持されている(図2図4)。
【0053】
前記流体制御装置8にて設定温度とされた流体L1は、配管41から回転継手4を通り、支持部45を通り、配管451を通り、制御棒3に形成された流路(往路)を通り、制御棒3を前記設定温度とし、そして、制御棒3に形成された流路(復路)を通り、配管452を通り、支持部45を通り、回転継手4から配管42を通り、流体制御装置8に戻ることで、流体L1が循環する(図3)。よって、流体L1の流量を設定条件通りにすることが容易であり、耐久性に優れた構造となる。
【0054】
前記回転継手4は、ロータリージョイント、または、スイベルジョイントが適用される。回転継手4は公転機構の回転軸の中心線P1−P1上に配されており、回転継手4の下方には支持部45が取り付けられ、支持部45の回動ジョイント453によって制御棒3がその傾斜角度を可変に連結支持されている(図2図4)。
【0055】
本実施形態によれば、制御棒3が容器201に挿入された状態で容器201が公転しながら自転するので、制御棒3と容器201に収容された原料200とで直接的かつ効率的に熱交換ができる(図2を参照)。前記流体制御装置8の温度設定により、容器201に収容された原料200を直接的に冷却することができる。または、容器201に収容された原料200を直接的に加熱することができる。つまり、本実施形態によれば、熱交換性能が高い構成であるから、流体制御装置8の温度設定によって、容器201に収容された原料200を冷却することや、容器201に収容された原料200を加熱することが、容易にできる。また、制御棒3を適宜交換することが可能な構造であるから、制御棒3を交換することで、様々なバリエーションに応じた環境制御を設定することができる。
【0056】
そして、本実施形態によれば、制御棒3の傾斜角度K1を適宜調節することができる。例えば、制御棒3を前記自転機構の回転軸の中心線P2−P2線上に配することで、制御棒3に係る原料200の流動抵抗を最小に抑えることができる。或いは、制御棒3を前記自転機構の回転軸の中心線P2−P2線からオフセットした位置に配することで、制御棒3に係る原料200の流動抵抗を上昇させて制御棒3により撹拌を促進することができる。さらに、原料200が収容された容器201をホルダ300に収容する際、また、当該容器201をホルダ300から外に取り出す際に、制御棒3が容器201の移動の妨げにならないように制御棒3の傾斜角度を調節することができる。また、支持部45を関節として機能させて、制御棒3と回転継手4との管路を折り畳むことが可能である。なお、折り畳む際には、蓋202と連動して動かす、または、容器201やホルダ300等との取り外し手順を工夫することによって、スムーズに作業を行うことができる。
【0057】
図2に示す例では、容器201は、所定の蓋202をして密閉容器としている。ただし、撹拌脱泡条件によっては蓋202をしない場合がある。また、撹拌脱泡条件によっては蓋202をしても密閉せずに空気の抜け孔を設ける場合がある。
【0058】
本実施形態では、制御棒3、支持部45、および回転継手4の位置を上下にスライド可能に位置決めするスライド機構が配されている(図2図4)。前記スライド機構は、公転機構の回転軸の中心線P1−P1上に配されており、支持部45の下方に棒状のスライド軸405が取り付けられ、また、筒状の把持部404がベース6に連結固定されており、公転機構の回転軸の中心線P1−P1上に配された把持部404が棒状のスライド軸405を支持する構成となっている(図2図4)。
【0059】
本実施形態によれば、前記スライド機構(符号404,405)によって、原料200が収容された容器201をホルダ300に収容する際、また、当該容器201をホルダ300から取り出す際に、制御棒3が容器201の移動の妨げにならないように予め上下にスライドさせておくことが容易にできる。なお、前記スライド機構は、上述の例には限定されず、例えば、上側が把持部404で下側がスライド軸405としてもよい。さらに、制御棒3の傾斜角度を調節とスライド機構の組合せを適宜選択することができる。
【0060】
図5図6は、本実施形態における制御棒3を例示する図であり、いずれも、(a)は側面図であり、(b)は側断面図であり、(c)は平面図である。図5図6に示すように、制御棒3は回転対称形状であり、比較的単純な棒形状か、棒形状に近い形状となっている。これは、清掃等のメンテナンスが容易となるからである。また、使い捨てのカバーを制御棒3に覆うことで、清掃不要とすることができる。なお、図5図6では、説明し易くするため、その構造を単純化して示しており、これらの例に限定されるものではない。
【0061】
前記制御棒3は硬質材からなり、容器201内の環境を制御するために容器201に挿入される(図2)。制御棒3は、例えばアルミニウム、ステンレス、銅、銅合金、ニッケル合金等の熱伝導率の高い硬質金属からなる。さらに、制御棒3を伸縮自在な構成とすること等も想定できる。
【0062】
図5の例は、単純な棒形状の制御棒3であり、その長手方向の中心に貫通穴31がひとつ形成されている。
例えば、貫通穴31を吸引用の管路とし、制御棒3から真空吸引することができる。これによれば、容器201内の真空度を高めることで容器201に収容された原料200の脱泡を促進することが容易にできる。
例えば、貫通穴31を加圧用の管路とし、制御棒3から加圧することができる。これによれば、容器201内を加圧状態で容器201に収容された原料200を処理することが容易にできる。
例えば、貫通穴31を流体供給用の管路とし、制御棒3から不活性ガスを供給することができる。これによれば、窒素等の不活性ガスを容器201内にパージすることで容器201に収容された原料200の不活性化を促進することが容易にできる。
【0063】
図6の例は、単純な棒形状の制御棒3であるが、先端側が広がったスカート部38が形成されている。スカート部38は容器201の底に近い側となる。制御棒3の長手方向には、2つの管路31,31が形成され、制御棒3の先端付近の内部で2つの管路31,31が接続されている。
例えば、制御棒3を容器201に収容された原料200に浸すと、反応熱や撹拌熱等に起因して原料200が流動する際に、スカート部38の側面視でアール形状の形状に沿って対流が生じて、原料200のより一層の均質化が図られる。
例えば、管路31を流体供給用の管路とし、管路32を流体還流用の管路として循環させることで、設定温度の空気、不活性ガス、水、不凍液、オイル、ドライアイス、スチーム等の流体を循環させて、容器201に収容された原料200の温度を設定温度とすることが容易にできる。なお、管路32を流体供給用の管路とし、管路31を流体還流用の管路として循環させても同様の効果が得られる。
【0064】
また、制御棒3が公転または自転で発生する遠心力対策として、容器201やホルダ300に接続できる構成とすること等もできる。例えば容器201を密封する蓋202に軸支機構を配置することや、容器201またはホルダ300に軸支機構を配置すること等ができる。なお、接続する際に、角度調整等も考慮できることは言うまでもない。
【0065】
本実施形態によれば、意図する外部環境に応じて、制御棒3を交換することによって、より適切な条件下で、撹拌および脱泡を行うことができる。その結果、処理のバリエーションを増やすことができる。環境制御装置10は、前記管路を介して、容器201と接続されるのみであり、容器201のみならずホルダ300が大型化することがない。よって、既存の撹拌脱泡装置に、本発明の環境制御装置10を後から内蔵させて、本発明の撹拌脱泡装置とすることが可能である。
【0066】
図2は、本実施形態の撹拌脱泡装置1の内部構造を示す内部構造図である。公転モータ51は、インダクションモータや、サーボモータが適用される。自転モータ52は、インダクションモータや、サーボモータが適用される。
【0067】
本実施形態では、公転モータ51と自転モータ52は、それぞれ独立駆動可能な構成である。本実施形態によれば、公転モータ51と自転モータ52とで、それぞれ個別に回転数等を設定し、処理方法を制御することができる。また、公転モータ51と自転モータ52の回転数の同期制御を行うことができる。
【0068】
図2には示されていないが、公転モータ51および自転モータ52と電気的に接続されている制御回路が備わっており、表示手段108で設定する各種条件に応じ、中央演算装置CPU(図示せず)等の演算処理を得て、信号を送受信する。例えば、公転モータ51または自転モータ52の電流値に基づいてモータの負荷変動を検知し、回転数を制御する。例えば、公転モータ51および自転モータ52の電流値に基づいてモータの負荷変動を検知し、回転数を制御する。公転モータ51および自転モータ52の電流値を相互に俯瞰し、演算処理することによって公転モータ51および自転モータ52によって得られる自転および公転のバランスを調整することもできる。なお、負荷トルク変動の検知方法としては、電流値の変化、エンコーダによる位相の変化等、各種周知技術を組込むことができる。さらに、前記制御回路には、回生抵抗部や電源回生コンバータが備わっており、これらの機能を用いることによって、回生エネルギーを効果的に吸収し、装置に対する負荷を制御することができる。つまり、自転の回転が公転の回転に振り回されることがなく、回生エネルギーを制御することができる。
【0069】
また、公転モータ51および自転モータ52をひとつのモータに置き換えることも可能である。例えば、所定のギヤ接続をすることによってひとつのモータで容器201を公転させながら自転させることが可能である。
【0070】
なお、本発明は、上述の実施形態や実施例に限定されず、各種バリエーションに応じて仕様を変更することができる。本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更が可能であることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0071】
1 撹拌脱泡装置、
3 制御棒、
4 回転継手、
8 流体制御装置、
10 環境制御装置、
200 原料、
201 容器、
L1 流体
図1
図2
図3
図4
図5
図6