【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献1に記載の装置では、容器に収納された溶剤等の温度を検知し、温度の上昇に応じて容器の公転数および自転数を制御するため、容器の公転数および自転数が一定にし難くなり、原料の撹拌状態を維持することが難しくなる。
また、特許文献2に記載の装置では、吸引ホースが回動して捻れ易い構造であり、吸引ホースが捻れることで、吸引力を維持することが難しくなるうえ、耐久性に難がある。
そして、特許文献3に記載の装置では、閉鎖筐体を形成するため、装置自体が大掛かりとなってしまう。
さらに、特許文献4に記載の装置では、撹拌翼によって撹拌する構造であるから、清掃等のメンテナンスが煩雑であり、原料が収納された密閉容器を公転させながら自転させる撹拌脱泡機のような脱泡作用はない。
つまり、特許文献1〜4に記載の既知の装置では、装置を大型化させずに、原料の撹拌状態を維持しつつ、容器内の環境を制御することはできなかった。
【0011】
そこで本発明の目的は、容器に収容された原料を撹拌および脱泡する撹拌脱泡装置において、装置を大型化させずに、原料の撹拌状態を維持しつつ、容器内の環境を制御することが可能な撹拌脱泡装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の撹拌脱泡装置は、公転機構および自転機構によって、容器に収容された原料を撹拌および脱泡する撹拌脱泡装置であって、流体を制御する流体制御装置と制御棒とが配管接続された環境制御装置を備え、前記制御棒が所定の傾斜角度で前記容器に挿入され、前記制御棒と前記容器との相対位置を維持した状態で前記容器を公転させながら自転させて前記容器内の環境を制御することを特徴とする。
【0013】
本発明によれば、前記制御棒が所定の傾斜角度で前記容器に挿入され、前記制御棒と前記容器との相対位置を維持した状態で前記容器を公転させながら自転させて前記容器内の環境を制御するので、吸引ホースのように回動して捻れることはなく、比較的単純な形状とすることで清掃等のメンテナンスが容易となる。よって、本発明によれば、コンパクトな構成でありながら、原料の撹拌状態を維持しつつ、容器内の環境を高い精度で制御することができる。
【0014】
前記制御棒は、前記自転機構の回転軸を中心として当該回転軸に沿って前記容器に挿入される。
前記制御棒が前記自転機構の回転軸上に配されることで、前記制御棒に係る原料の流動抵抗を最小に抑えることができる。或いは、敢えて前記制御棒が前記自転機構の回転軸からオフセットした位置に配されることで、前記制御棒に係る原料の流動抵抗を上昇させて前記制御棒により撹拌を促進することができる。
【0015】
前記流体制御装置が制御する前記流体としては、空気、不活性ガス、水、不凍液、オイル、ドライアイス、スチーム等が挙げられる。
【0016】
前記容器内の環境を制御することとしては、例えば、温度制御、真空度制御、不活性ガス注入等の雰囲気制御等が挙げられる。これらの環境を制御することによって、撹拌状態や脱泡状態を当初の設定通りに維持することができる。
【0017】
また、本発明によれば、前記流体を少量ずつ追加しながら撹拌脱泡処理する等して、原料の反応環境を微調整することも可能である。すなわち、本発明によれば、原料の処理効果の向上に繋がる。
【0018】
本発明は、前記公転機構の回転軸の中心線上には前記配管接続のための回転継手が配されており、前記回転継手によって前記制御棒が前記容器との相対位置を維持した状態で前記容器とともに公転することを特徴とする。
【0019】
本発明によれば、前記制御棒を公転させるための回転継手が配されているので、前記流体の流量を設定条件通りにすることが容易となり、耐久性に優れた構造となる。
【0020】
前記回転継手はロータリージョイントと同義である。または、前記回転継手はスイベルジョイントと同義である。すなわち、前記回転継手は、流体を輸送しながら前記制御棒を公転自在に支持する構成部材である。
【0021】
本発明は、前記回転継手の下方には前記配管接続のための支持部が配されており、前記支持部によって前記制御棒がその傾斜角度を可変に連結支持されていることを特徴とする。
【0022】
本発明によれば、前記制御棒の傾斜角度を適宜調節することができる。例えば、前記制御棒を前記自転機構の回転軸上に配することで、前記制御棒に係る原料の流動抵抗を最小に抑えることができる。或いは、前記制御棒を前記自転機構の回転軸からオフセットした位置に配することで、前記制御棒に係る原料の流動抵抗を上昇させて前記制御棒により撹拌を促進することができる。さらに、原料が収容された容器をホルダに収容する際、また、当該容器をホルダから取り出す際に、前記制御棒が前記容器の移動の妨げにならないように前記制御棒の傾斜角度を調節することができる。また、前記制御棒と前記回転継手との管路を、前記支持部を関節として折り畳むことが可能となる。
【0023】
前記支持部は、肘継手や自在継手と同じ機能を有する。すなわち、前記支持部は、流体を輸送しながら前記制御棒をその傾斜角度を可変できるように支持する構成部材である。または、前記支持部は、流体を循環させながら前記制御棒をその傾斜角度を可変できるように支持する構成部材である。
【0024】
本発明は、前記公転機構の回転軸の中心線上には、前記制御棒および前記回転継手の位置を上下にスライド可能に位置決めするスライド機構が配されていることを特徴とする。
【0025】
本発明によれば、前記スライド機構によって、原料が収容された容器をホルダに収容する際、また、当該容器をホルダから取り出す際に、前記制御棒が前記容器の移動の妨げにならないように予め上下にスライドさせておくことが容易にできる。
【0026】
前記原料は、撹拌と脱泡を目的としたものであればよく、材質、形態、粘性等は限定されない。前記原料としては、例えば歯科材料、医薬品材料、化粧品基材、インク、塗料、顔料等の色材、シリコーン、エポキシ、ウレタン等の合成樹脂、接着剤、その他の化学材料が挙げられる。前記原料は、例えば液状、ゲル状、ペースト状の原料や複数の原料の混合物からなる。例えば、液体の原料に粉末状固体の原料を混ぜた状態で、撹拌脱泡処理を行うことができる。また、前記原料の粘性として、粘性の低いもの、粘性の高いものを想定した場合、原料の形態と同様、粘性の低いもの同士、粘性の高いもの同士だけでなく、複数の粘性が異なる材料も撹拌または脱泡することができる。
【0027】
前記原料は、前記容器に直接収容することができ、また、前記原料が収容された容器をホルダに収容することができる。清掃や洗浄等のメンテナンス作業を不要とするためには、前記原料が収容された容器をホルダに収容することが好ましい。
【0028】
前記容器は、通常は、所定の蓋をして密閉容器とするが、撹拌脱泡条件によっては蓋をしない場合がある。また、撹拌脱泡条件によっては蓋をしても密閉せずに空気の抜け孔を設ける場合がある。
【0029】
前記制御棒は硬質材からなり、前記容器内の環境を制御するために前記容器に挿入される。
前記制御棒は、例えばアルミニウム、ステンレス、銅、銅合金、ニッケル合金等の熱伝導率の高い硬質金属からなる。
【0030】
前記制御棒は回転対称形状であり、比較的単純な棒形状が好ましい、清掃等のメンテナンスが容易となるからである。また、使い捨てのカバーを前記制御棒に覆うことで、清掃不要とすることができる。
【0031】
前記制御棒は、先端下向きに配することができ、また、先端上向きに配することができる。原料が収容された容器をホルダに収容し、また、当該容器をホルダから取り出す作業性の向上や、装置構成を単純化する観点からは、前記制御棒を先端下向きに配することが好ましい。
【0032】
本発明は、前記制御棒の内部には循環用の管路が形成されており、前記制御棒と前記流体制御装置とで所定温度の流体を循環させることで前記容器内の温度を制御することを特徴とする。
【0033】
本発明によれば、前記制御棒が前記容器に挿入された状態で前記容器が公転しながら自転するので、前記制御棒と前記容器に収容された原料とで直接的かつ効率的に熱交換ができる。前記流体制御装置の温度設定により、前記容器に収容された原料を直接的に冷却することができ、また、前記容器に収容された原料を直接的に加熱することができる。つまり、本発明によれば、熱交換性が高く、前記流体制御装置の温度設定により、前記容器に収容された原料を冷却することが容易にでき、また、前記容器に収容された原料を加熱することが容易にできる。
【0034】
本発明は、前記容器が密閉容器であって、前記制御棒の内部には吸引用の管路が形成されており、前記制御棒から真空吸引することを特徴とする。
【0035】
本発明によれば、前記容器内の真空度を高めることで前記容器に収容された原料の脱泡を促進することが容易にできる。
【0036】
本発明は、前記容器が密閉容器であって、前記制御棒の内部には加圧用の管路が形成されており、前記制御棒から加圧することを特徴とする。
【0037】
本発明によれば、前記容器内を加圧状態で前記容器に収容された原料を処理することが容易にできる。
【0038】
本発明は、前記制御棒の内部には供給用の管路が形成されており、前記制御棒から不活性ガスを供給することを特徴とする。
【0039】
本発明によれば、窒素等の不活性ガスを前記容器内にパージすることで前記容器に収容された原料の不活性化を促進することが容易にできる。