特開2016-163978(P2016-163978A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特開2016-163978樹脂製の分岐管部材の製造方法、及び、この製造方法によって製造された熱可塑性樹脂製の分岐管部材
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2016-163978(P2016-163978A)
(43)【公開日】2016年9月8日
(54)【発明の名称】樹脂製の分岐管部材の製造方法、及び、この製造方法によって製造された熱可塑性樹脂製の分岐管部材
(51)【国際特許分類】
   B29C 45/14 20060101AFI20160815BHJP
   F16L 47/00 20060101ALI20160815BHJP
   B29C 45/16 20060101ALI20160815BHJP
   B29C 33/14 20060101ALI20160815BHJP
   B29D 23/00 20060101ALI20160815BHJP
   B29L 23/00 20060101ALN20160815BHJP
【FI】
   B29C45/14
   F16L47/00
   B29C45/16
   B29C33/14
   B29D23/00
   B29L23:00
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2015-45117(P2015-45117)
(22)【出願日】2015年3月6日
(71)【出願人】
【識別番号】598040787
【氏名又は名称】大場 祥右
(74)【代理人】
【識別番号】100069903
【弁理士】
【氏名又は名称】幸田 全弘
(74)【代理人】
【識別番号】100101166
【弁理士】
【氏名又は名称】斎藤 理絵
(74)【代理人】
【識別番号】100157509
【弁理士】
【氏名又は名称】小塩 恒
(72)【発明者】
【氏名】大場 祥右
【テーマコード(参考)】
3H019
4F202
4F206
4F213
【Fターム(参考)】
3H019FA12
4F202AA34
4F202AD05
4F202AD12
4F202AG03
4F202AG29
4F202AH11
4F202AR07
4F202AR12
4F202CA11
4F202CB01
4F202CB20
4F202CK25
4F202CQ01
4F206AA34
4F206AD05
4F206AD12
4F206AD14
4F206AD24
4F206AG03
4F206AG08
4F206AG29
4F206AH81
4F206JA07
4F206JB12
4F206JB22
4F206JF05
4F206JL02
4F206JN25
4F206JQ06
4F206JQ81
4F213AG08
4F213AG29
4F213WA05
4F213WA53
4F213WB01
(57)【要約】
【課題】要求された仕様に応じて容易に設計変更を行うことができ、製造コストを抑制することができる樹脂製の分岐管部材の製造方法を提供する。
【解決手段】本発明の樹脂製の分岐管部材1の製造方法は、熱可塑性樹脂で形成された管部材12を準備する第1の工程と、両開口端部4,6の間の所定の領域R内の一部に分岐穴22を穴開け加工する第2の工程と、主管部の開口端部4,6及び分岐穴のそれぞれに各保持部材24,26,28を挿入して取り付ける第3の工程と、管部材の外側に複数の金型30,32,34,36を取り付けた後、これらの金型と管部材を射出成形部Wに位置決めする第4の工程と、金型の一部に設けられた注入口38から熱可塑性樹脂材料mを注入し、空洞部46内に熱可塑性樹脂を射出する第5の工程と、金型を管部材から分離する第6の工程と、各保持部材24,26,28を各開口端部4,6,10から抜き取る第7の工程と、を有する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂製の分岐管部材の製造方法であって、
熱可塑性樹脂で形成された管部材を準備する第1の工程と、
上記管部材の第1の開口端部から第2の開口端部まで長手方向に延びる主管部の側周面において、要求された仕様に応じて上記第1の開口端部と上記第2の開口端部との間の所定の領域内の一部に第3の開口端部である分岐穴を穴開け加工する第2の工程と、
上記主管部の上記第1の開口端部、上記第2の開口端部及び上記第3の開口端部のそれぞれに対して、第1の保持部材、第2の保持部材及び第3の保持部材のそれぞれを挿入して取り付ける第3の工程と、
上記第1の保持部材、上記第2の保持部材及び上記第3の保持部材のそれぞれを取り付けた状態の上記管部材の外側に複数の金型を取り付けた後、これらの金型と上記管部材を射出成形部に位置決めする第4の工程と、
上記射出成形部において、予め加熱して混練した熱可塑性樹脂を作り、次に上記金型の一部に設けられた注入部から熱可塑性樹脂を注入し、上記管部材の側周面の上記所定の領域の上記第3の開口端部から外側に突出する上記第3の保持部材の外面と、この外面と対向する上記金型の内面との間に形成される空洞部内に上記熱可塑性樹脂を射出することにより、上記主管部の第3の開口端部から上記第3の保持部材の軸方向外側に突出した先端部に第4の開口端部を形成する分岐管部を射出成形する第5の工程と、
上記空洞部内に充填された熱可塑性樹脂を冷却した後、上記金型を上記管部材から分離する第6の工程と、
上記第1の保持部材を上記第1の開口端部から抜き取り、上記第2の保持部材を上記第2の開口端部から抜き取り、上記第3の保持部材を上記第3の開口端部及び上記第4の開口端部から抜き取ることにより、上記主管部と上記分岐管部とが一体的に形成された熱可塑性樹脂製の分岐管部材を完成品にする第7の工程と、
を有することを特徴する樹脂製の分岐管部材の製造方法。
【請求項2】
上記分岐管部は、その中心軸線が上記主管部の中心軸線に対して直交するように形成されており、上記第4の開口端部の中心から上記分岐管部の中心軸線に沿って上記主管部の中心軸線までの距離が、上記主管部の第1の開口端部の中心及び上記第2の開口端部の中心から上記主管部の中心軸線に沿って上記分岐管部の中心軸線までの距離以下に設定されている請求項1記載の樹脂製の分岐管部材の製造方法。
【請求項3】
上記主管部の第3の開口端部及び上記分岐管部は、上記主管部に対して複数設けられている請求項1又は2に記載の樹脂製の分岐管部材の製造方法。
【請求項4】
上記分岐管部の流路断面積は、上記主管部の流路断面積以下に設定されている請求項1乃至3の何れか1項に記載の樹脂製の分岐管部材の製造方法。
【請求項5】
更に、上記熱可塑性樹脂製の分岐管部材を完成品にする上記第7の工程の後、上記完成品の熱可塑性樹脂製の分岐管部材の流路内の流体に関する所定の特性を検出する検出手段が上記分岐管部の第4の開口端部に取り付けられる請求項1乃至4の何れか1項に記載の樹脂製の分岐管部材の製造方法。
【請求項6】
上記分岐管部は、その中心軸線が上記主管部の中心軸線に対して直交するように形成されており、上記主管部の上記第2の開口端部の中心から上記主管部の中心軸線に沿って上記分岐管部の中心軸線までの距離は、上記第1の開口端部の中心から上記主管部の中心軸線に沿って上記分岐管部の中心軸線までの距離よりも小さく、且つ、上記分岐管部の上記第4の開口端部の中心から上記分岐管部の中心軸線に沿って上記主管部の中心軸線までの距離よりも小さく設定されている請求項1記載の樹脂製の分岐管部材の製造方法。
【請求項7】
更に、上記熱可塑性樹脂製の分岐管部材を完成品にする上記第7の工程の後、上記完成品の熱可塑性樹脂製の分岐管部材の流路内の流体に関する所定の特性を検出する検出手段が上記主管部の上記第2の開口端部に取り付けられる請求項6記載の樹脂製の分岐管部材の製造方法。
【請求項8】
上記請求項1乃至7の何れか1項に記載の製造方法によって製造された熱可塑性樹脂製の分岐管部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂製の分岐管部材の製造方法、及び、この製造方法によって製造された熱可塑性樹脂製の分岐管部材に係り、特に、食品や飲料並びに医薬品等の製造設備で用いられる樹脂製の分岐管部材の製造方法、及び、この製造方法によって製造された熱可塑性樹脂製の分岐管部材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、牛乳、ドレッシング、清涼飲料水、果汁等の飲料や流体食品、或いは、医薬品等を製造する設備で用いられる管部材として、ステンレス製の管部材や、特許文献1に記載されているポリフェニルサルフォン樹脂(以下「PPSU樹脂」と呼ぶ。)等の熱可塑性樹脂で成形された熱可塑性樹脂製の管部材が使用されている。
従来のこれらのステンレス製の管部材や樹脂製の管部材の例として、主管部と分岐管部とを備えた分岐管部材があるが、このような分岐管部材は、例えば、主管部内の流体物を分岐管部に分流させる用途、若しくは分岐管部内の流体物を主管部に合流させる用途、或いは、管内の流体物の圧力や温度を測定するためのセンサー等の検出手段を分岐管部に装着する用途等、種々の用途に使用されている。
【0003】
また、これらの従来の分岐管部材でも、特に、食品や医薬品の製造現場では、ステンレス製の分岐管部材が主に使用されており、このようなステンレス製の分岐管部材は、製造現場で要求される設計仕様等に応じて、溶接加工等により種々の形状や寸法に形成されている。
しかしながら、このようなステンレス製の分岐管部材においては、不透明な材質で形成されているため、内部の流体物の挙動や混合状態、気泡の混入等、分岐管部材の内部の状態を目視で瞬時に確認することができず、継続的な変化を把握することは極めて困難であるという問題がある。
さらに、ステンレス製の分岐管部材の溶接された加工部が食塩や酸性流体により錆び易いという問題もある。
【0004】
また、図12は、従来のステンレス製の分岐管部材の分岐管部に圧力センサーが装着された状態を概略的に示す概略断面図である。
図12に示すように、ステンレス製の分岐管部材400は、水平方向に延びる主管部402と、この主管部402の上面の一部から上方に立ち上がるように形成される分岐管部404とを備えており、この分岐管部404の上端部には、圧力センサー406が装着されている。この圧力センサー406が装着された分岐管部404の管路内の流体においては、主管部402の管路内に沿って図12の左右方向に流れる流体の主流408の近傍部分410では、主流408に誘引されて合流するが、分岐管部404内の上方部分412の流体は、その大部分が停滞しており、この停滞している流体は、分岐管部404内の管路に沿って主流408の近傍部分410に向かって徐々に下降するため、主流408の近傍部分410の流体に比べて、遅延して主流408に合流することになる。
したがって、この分岐管部404内の上方部分412に停滞している流体が、主流408の流体の品質性能と差異が生じることになり、結果として、ステンレス製の分岐管部材400の管路内全体で流体物の品質のばらつきが生ずるため、分岐管部等にセンサー等の検出手段を装着した場合には、装着部の流体挙動を確認する負担を軽減させて、管内に流体物が停滞することを最小限に留めなければならないという課題が生じているが、これらの課題を十分に解決するには限界がある。
【0005】
これに対し、従来のPPSU樹脂等の熱可塑性樹脂製の分岐管部材においては、透明な材質で形成されているため、管内の流体物に関する性状、色調、気泡の有無、流体の停滞具合や分散性等の多数の品質性能について、管内を流体物が流れる過程で連続的に或いは随時に目視により確認することができるようになっている。
また、分岐管部等にセンサー等の検出手段を装着することにより、管内の流体物に関する圧力、温度、濃度、導電率、pH等の特性を確認することができるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第408873号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来のPPSU樹脂等の熱可塑性樹脂製の分岐管部材を製造するためには、高価な射出成形用金型を用い、この金型に高圧で且つ高温に加熱された熱可塑性樹脂を射出成形によって一体的に形成されている。
一方、分岐管部材の多様化に伴って、要求された仕様に応じて多品種の分岐管部材を製作するには、その都度一体型の金型を製作しなければならず、金型の製作コストが増大し、分岐管部材の全体の製造コストも増大するという問題がある。
したがって、いかに多品種のPPSU樹脂製の分岐管部材を要求された場合でも、製造コストを抑制し、且つ多様な品種の部材を容易に製造するかが、従来から要請された課題となっている。
また、従来のPPSU樹脂等の熱可塑性樹脂製の分岐管部材においては、上述した従来の標準規格寸法のステンレス製の分岐管部材と同様に、分岐管部にセンサー等の検出手段を分岐管部に装着した場合には、この分岐管部の装着部の管路内の流体と主管部の管路内の流体との距離が大きい程、分岐管部内に停滞している流体と主管部内の主流の流体との品質性能の差異が大きく生じることにより、熱可塑性樹脂製の分岐管部材の管路内においても品質のばらつきが生じるという問題がある。したがって、いかに分岐管部におけるセンサー等の検出手段の装着部と主管部との距離を可能な限り小さく設計製作し、検出手段の検出部が主管部の管路内の流体の圧力や温度等の諸特性を正確に測定するかが要請された課題になっている。
さらに、従来のステンレス製の規格寸法の分岐管部材やPPSU樹脂等の熱可塑性樹脂製の規格寸法の分岐管部材においては、流体の温度や圧力測定用センサーを装着して使用する場合に分岐部の容積が大きいため、管路内の主流の流れに追随できず、センサー装着部周辺が停滞流となることが多いという問題もある。
【0008】
そこで、本発明は、上述した従来技術の問題や要請された課題を解決するためになされたものであり、要求された仕様に応じて容易に設計変更を行うことができ、製造コストを抑制することができる樹脂製の分岐管部材の製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために、本発明は、樹脂製の分岐管部材の製造方法であって、熱可塑性樹脂で形成された管部材を準備する第1の工程と、上記管部材の第1の開口端部から第2の開口端部まで長手方向に延びる主管部の側周面において、要求された仕様に応じて上記第1の開口端部と上記第2の開口端部との間の所定の領域内の一部に第3の開口端部である分岐穴を穴開け加工する第2の工程と、上記主管部の上記第1の開口端部、上記第2の開口端部及び上記第3の開口端部のそれぞれに対して、第1の保持部材、第2の保持部材及び第3の保持部材のそれぞれを挿入して取り付ける第3の工程と、上記第1の保持部材、上記第2の保持部材及び上記第3の保持部材のそれぞれを取り付けた状態の上記管部材の外側に複数の金型を取り付けた後、これらの金型と上記管部材を射出成形部に位置決めする第4の工程と、上記射出成形部において、予め加熱して混練した樹脂を作り、次に上記金型の一部に設けられた注入部から熱可塑性樹脂を注入し、上記管部材の側周面の上記所定の領域の上記第3の開口端部から外側に突出する上記第3の保持部材の外面と、この外面と対向する上記金型の内面との間に形成される空洞部内に上記熱可塑性樹脂を射出することにより、上記主管部の第3の開口端部から上記第3の保持部材の軸方向外側に突出した先端部に第4の開口端部を形成する分岐管部を射出成形する第5の工程と、上記空洞部内に充填された熱可塑性樹脂を冷却した後、上記金型を上記管部材から分離する第6の工程と、上記第1の保持部材を上記第1の開口端部から抜き取り、上記第2の保持部材を上記第2の開口端部から抜き取り、上記第3の保持部材を上記第3の開口端部及び上記第4の開口端部から抜き取ることにより、上記主管部と上記分岐管部とが一体的に形成された熱可塑性樹脂製の分岐管部材を完成品にする第7の工程と、を有することを特徴としている。
このように構成された発明においては、熱可塑性樹脂製の分岐管部材を製造する際に、まず、第1の工程において、熱可塑性樹脂で形成された管部材を準備し、次の第2の工程で、管部材の主管部の側周面における主管部の第1の開口端部と第2の開口端部との間の所定の領域内の一部に第3の開口端部である分岐穴を穴開け加工する。そして、次の第3の工程で、主管部の第1の開口端部、第2の開口端部及び第3の開口端部のそれぞれに対して、第1の保持部材、第2の保持部材及び第3の保持部材のそれぞれを挿入して取り付けた後、次の第4の工程で、管部材の外側に複数の金型を取り付け、これらの金型と管部材を射出成形部に位置決めする。そして、次の第5の工程で、射出成形部において、予め加熱して混練した樹脂を作り、次に金型の一部に設けられた注入部から熱可塑性樹脂を注入し、管部材の側周面の所定の領域の第3の開口端部から外側に突出する第3の保持部材の外面と、この外面と対向する金型の内面との間に形成される空洞部内に熱可塑性樹脂を射出することにより、主管部の第3の開口端部から第3の保持部材の軸方向外側に突出した先端部に第4の開口端部を形成する分岐管部を射出成形する。そして、次の第6の工程で、空洞部内に充填された熱可塑性樹脂を冷却した後、これらの金型を管部材から分離し、第7の工程で、第1の保持部材を主管部の第1の開口端部から抜き取り、第2の保持部材を主管部の第2の開口端部から抜き取り、第3の保持部材を主管部の第3の開口端部及び第4の開口端部から抜き取ることにより、主管部と分岐管部とが一体的に形成された熱可塑性樹脂製の分岐管部材を完成品にする。これらの第1の工程から第7の工程までの一連の工程により、分岐管部材の主管部については、熱可塑性樹脂で形成された既存の管部材をそのまま利用することができ、主管部の側周面の所定の領域内の一部について第3の開口端部である分岐穴を穴開け加工した後、分岐管部のみを射出成形するだけで、主管部と分岐管部とが一体的に形成された完成品の熱可塑性樹脂製の分岐管部材を容易に製造することができる。また、既存の管部材を利用して分岐管部材の主管部の第3の開口端部を分岐穴として穴開け加工する位置や寸法を要求された仕様に応じて変更することにより容易に設計変更を行うことができ、種々の形態の分岐管部材を製造することができる。したがって、既存の管部材を利用せずに、主管部及び分岐管部の双方について、要求された仕様に応じて最初から一体的に射出成形する場合に比べて、金型等の製作に要する費用を大幅に抑制し、製造コスト全体を効果的に抑制することができる。
【0010】
本発明において、好ましくは、上記分岐管部は、その中心軸線が上記主管部の中心軸線に対して直交するように形成されており、上記第4の開口端部の中心から上記分岐管部の中心軸線に沿って上記主管部の中心軸線までの距離が、上記主管部の第1の開口端部の中心及び上記第2の開口端部の中心から上記主管部の中心軸線に沿って上記分岐管部の中心軸線までの距離以下に設定されている。
このように構成された発明においては、分岐管部が、その中心軸線が主管部の中心軸線に対して直交するように形成されており、分岐管部の第4の開口端部の中心から分岐管部の中心軸線に沿って主管部の中心軸線までの距離が、主管部の第1の開口端部の中心及び第2の開口端部の中心から主管部の中心軸線に沿って分岐管部の中心軸線までの距離以下に設定されているため、分岐管部の流路内の容積を主管部の流路内の容積に比べて小さく設定することができ、分岐管部の流路内に流体が停滞したとしても、停滞する量を少なくすることができる。また、分岐管部の第4の開口端部に接続される接続要素を主管部の流路内に近づかせることができるため、主管部の流路と接続要素との間で流体を効率良く出入りさせることができる。
【0011】
本発明において、好ましくは、上記主管部の第3の開口端部及び上記分岐管部は、上記主管部に対して複数設けられている。
このように構成された発明においては、分岐管部材の主管部については、熱可塑性樹脂で形成された既存の管部材をそのまま利用することができ、主管部の側周面の所定の領域内の一部について第3の開口端部である複数の分岐穴を穴開け加工した後、複数の分岐管部のみを射出成形するだけで、主管部と複数の分岐管部とが一体的に形成された完成品の熱可塑性樹脂製の分岐管部材を容易に製造することができる。また、主管部の第3の開口端部と分岐管部が主管部に対して複数設けられているため、主管部の第1の開口端部又は第2の開口端部から流入した流体について、主管部の各第3の開口端部から各分岐管部のそれぞれに分流させることができる。或いは、各分岐管部の第4の開口端部のそれぞれから各分岐管部の流路内に流入した流体について、主管部の各第3の開口端部から主管部の流路内に合流させることができる。
【0012】
本発明において、好ましくは、上記分岐管部の流路断面積は、上記主管部の流路断面積以下に設定されている。
このように構成された発明においては、分岐管部の流路断面積が主管部の流路断面積以下に設定されているため、分岐管部の流路内の容積を主管部の流路内の容積に比べて小さく設定することができ、分岐管部の流路内に流体が停滞したとしても、停滞する量を少なくすることができる。また、分岐管部の第4の開口端部に接続される接続要素を主管部の流路内に近づかせることができるため、主管部の流路と接続要素との間で流体を効率良く出入りさせることができる。
【0013】
本発明において、好ましくは、更に、上記熱可塑性樹脂製の分岐管部材を完成品にする上記第7の工程の後、上記完成品の熱可塑性樹脂製の分岐管部材の流路内の流体に関する所定の特性を検出する検出手段が上記分岐管部の第4の開口端部に取り付けられる。
このように構成された発明においては、熱可塑性樹脂製の分岐管部材を完成品にする第7の工程の後、この完成品の熱可塑性樹脂製の分岐管部材の流路内の流体に関する所定の特性を検出する検出手段を分岐管部の第4の開口端部に取り付けることにより、主管部及び分岐管部の流路内の流体に関する所定の特性を検出することができるため、熱可塑性樹脂製の分岐管部材について、その内部を流れる流体の状態を把握しながら使用することができる。また、熱可塑性樹脂製の分岐管部材が透明の材質で形成されているため、内部を流れる流体の状態を目視でも容易に把握することができるため、不具合の発生を素早く発見することができ、万一の異常事態に対して迅速に対応することができる。
【0014】
本発明において、好ましくは、上記分岐管部は、その中心軸線が上記主管部の中心軸線に対して直交するように形成されており、上記主管部の上記第2の開口端部の中心から上記主管部の中心軸線に沿って上記分岐管部の中心軸線までの距離は、上記第1の開口端部の中心から上記主管部の中心軸線に沿って上記分岐管部の中心軸線までの距離よりも小さく、且つ、上記分岐管部の上記第4の開口端部の中心から上記分岐管部の中心軸線に沿って上記主管部の中心軸線までの距離よりも小さく設定されている。
このように構成された発明においては、分岐管部の中心軸線が主管部の中心軸線に対して直交するように形成されており、主管部の第2の開口端部の中心から主管部の中心軸線に沿って分岐管部の中心軸線までの距離が、主管部の第1の開口端部の中心から主管部の中心軸線に沿って分岐管部の中心軸線までの距離よりも小さく、且つ、分岐管部の第4の開口端部の中心から分岐管部の中心軸線に沿って主管部の中心軸線までの距離よりも小さく設定されているため、主管部の第2の開口端部付近の流路内の容積について、主管部の第1の開口端部から第3の開口端部を経て分岐管部の第4の開口端部までの流路内の容積に比べて小さく設定することができ、主管部の第2の開口端部付近の流路内に流体が停滞したとしても、停滞する量を少なくすることができる。また、主管部の第2の開口端部に接続される接続要素について、主管部の第1の開口端部から第3の開口端部を経て分岐管部の第4の開口端部までの流路内に近づかせることができるため、主管部や分岐管部の流路と接続要素との間で流体を効率良く出入りさせることができる。
【0015】
本発明において、好ましくは、更に、上記熱可塑性樹脂製の分岐管部材を完成品にする上記第7の工程の後、上記完成品の熱可塑性樹脂製の分岐管部材の流路内の流体に関する所定の特性を検出する検出手段が上記主管部の上記第2の開口端部に取り付けられる。
このように構成された発明においては、熱可塑性樹脂製の分岐管部材を完成品にする第7の工程の後、この完成品の熱可塑性樹脂製の分岐管部材の流路内の流体に関する所定の特性を検出する検出手段を主管部の第2の開口端部に取り付けることにより、主管部及び分岐管部の流路内の流体に関する所定の特性を検出することができるため、熱可塑性樹脂製の分岐管部材について、その内部を流れる流体の状態を把握しながら使用することができる。
【0016】
また、本発明は、上記製造方法によって製造された熱可塑性樹脂製の分岐管部材である。
このように構成された発明においては、分岐管部材の主管部については、熱可塑性樹脂で形成された既存の管部材をそのまま利用することができ、主管部の側周面の所定の領域内の一部について第3の開口端部である分岐穴を穴開け加工した後、分岐管部のみを射出成形するだけで、主管部と分岐管部とが一体的に形成された完成品の熱可塑性樹脂製の分岐管部材を容易に製造することができる。また、分岐管部材の主管部の第3の開口端部を分岐穴として穴開け加工する位置や寸法を要求された仕様に応じて変更することにより容易に設計変更を行うことができ、種々の形態の分岐管部材を製造することができるため、既存の管部材を利用せずに、主管部及び分岐管部の双方について、要求された仕様に応じて最初から一体的に射出成形する場合に比べて、金型等の製作に要する費用を大幅に抑制し、製造コスト全体を効果的に抑制することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の樹脂製の分岐管部材の製造方法によれば、要求された仕様に応じて容易に設計変更を行うことができ、製造コストを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の第1実施形態による熱可塑性樹脂製の分岐管部材の製造方法により製造された熱可塑性樹脂製の分岐管部材の完成品を斜め上方から見た斜視図である。
図2】本発明の第1実施形態による熱可塑性樹脂製の分岐管部材の製造方法において予め準備される熱可塑性樹脂製の管部材を示す正面断面図である。
図3】本発明の第1実施形態による熱可塑性樹脂製の分岐管部材の製造方法において穴開け加工された状態の熱可塑性樹脂製の管部材を示す正面断面図である。
図4】本発明の第1実施形態による熱可塑性樹脂製の分岐管部材の製造方法において射出成形機に位置決めされた射出成形中の金型、並びに、分岐管部材の主管部及び分岐管部を概略的に示す横断面図である。
図5】本発明の第1実施形態による熱可塑性樹脂製の分岐管部材の製造方法において射出成形が行われた後、開いた金型から成形品を取り外し、分岐管部材から保持部材を抜き取る前の状態を示す正面断面図である。
図6】本発明の第1実施形態による熱可塑性樹脂製の分岐管部材の製造方法により製造された熱可塑性樹脂製の分岐管部材の完成品の正面断面図である。
図7】本発明の第1実施形態による熱可塑性樹脂製の分岐管部材の製造方法により製造された熱可塑性樹脂製の分岐管部材の完成品において、分岐管部に圧力センサーが装着された状態を概略的に示す概略正面断面図である。
図8】本発明の第2実施形態による熱可塑性樹脂製の分岐管部材の製造方法により製造された熱可塑性樹脂製の分岐管部材の完成品を示す概略正面図である。
図9】本発明の第3実施形態による熱可塑性樹脂製の分岐管部材の製造方法により製造された熱可塑性樹脂製の分岐管部材の完成品を斜め上方から見た斜視図である。
図10】本発明の第3実施形態による熱可塑性樹脂製の分岐管部材の製造方法により製造された熱可塑性樹脂製の分岐管部材の完成品において、分岐管部に温度センサーが装着された状態を概略的に示す概略正面断面図である。
図11】本発明の第4実施形態による熱可塑性樹脂製の分岐管部材の製造方法により製造された熱可塑性樹脂製の分岐管部材の完成品を示す概略正面図である。
図12】従来のステンレス製の分岐管部材の分岐管部に圧力センサーが装着された状態を概略的に示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図1図7を参照して、本発明の第1実施形態による熱可塑性樹脂製の分岐管部材の製造方法について説明する。
図1は、本発明の第1実施形態による熱可塑性樹脂製の分岐管部材の製造方法により製造された熱可塑性樹脂製の分岐管部材の完成品を斜め上方から見た斜視図である。
まず、図1を参照して、本発明の第1実施形態による熱可塑性樹脂製の分岐管部材の製造方法において製造される樹脂製の分岐管部材1の構造について概略的に説明すると、この分岐管部材1は、熱可塑性樹脂であるPPSU樹脂(ポリフェニルサルフォン樹脂)で射出成形されたPPSU樹脂製の分岐管部材であり、ほぼ円筒状に形成された主管部2を備えている。また、分岐管部材1は、主管部2の一端の開口端部4と他端の開口端部6との中間部分の所定の領域から主管部2の径方向外側に突出するように主管部2に一体的に形成された分岐管部8を備えている。この分岐管部材1は、分岐管部8の上端に形成される開口端部10を含めると、三方に開口端部4,6,10を備えた形態となっている。
【0020】
つぎに、図1図6を参照して、本発明の第1実施形態による熱可塑性樹脂製の分岐管部材の製造方法について具体的に説明する。
まず、図2は、本発明の第1実施形態による熱可塑性樹脂製の分岐管部材の製造方法において予め準備される熱可塑性樹脂製の管部材を示す正面断面図である。
図2に示すように、まず、本発明の第1実施形態による熱可塑性樹脂製の分岐管部材の製造方法の第1の工程では、既にPPSU樹脂を射出成形することによりほぼ円筒状に形成された既存の管部材12を予め用意し、製造の準備を行う。この既存の管部材12は、実質的には、後の完成品の分岐管部材1の主管部2に相当する部分となる。
また、図1及び図2に示すように、主管部2の両端部は、溝14が円環状に形成されたフランジ16を形成しており、いわゆる、フェルール付きの管部材12の接続部となっており、フランジ16の溝14にパッキン(図示せず)等を取り付けた状態で、他の管部材(図示せず)や接続部材(図示せず)等と接続可能となっている。
【0021】
つぎに、図3は、本発明の第1実施形態による熱可塑性樹脂製の分岐管部材の製造方法において穴開け加工された状態のPPSU樹脂製の管部材を示す正面断面図である。
図3に示すように、上述した第1の工程後の第2の工程では、管部材12の一方の開口端部4から他方の開口端部6まで長手方向に延びる主管部2の側周面18において、要求された仕様に応じて、開口端部4,6の双方間の中間部分の所定の周面領域Rの表面層18aについて、スキン層(表面層)20を切削加工して除去する。
また、図3に示すように、管部材12における開口端部4,6の双方間の中間部分の所定の周面領域Rについては、管部材12の側周面18における長手方向の中央位置P1を中心として長手方向に所定の幅w1[mm]で管部材12の外周のスキン層20の切削加工を行うと共に、管部材12の表面層18aに対して径方向内側に所定の深さd[mm]でスキン層20の切削加工を行う。
なお、管部材12として、例えば、両端部の外径D1が64mm、内径D2が47.8mmの部材を採用した場合、周面領域Rの幅w1については、管部材12の両端部の外径D1に等しい寸法に設定する(w1=D1=64mm)のが好ましく、深さdについては、0.1mm〜1.0mmに設定し、スキン層20を除去するのが好ましい。その後、このスキン層20を除去した部分の一部について、穴開け加工を行い、直径D3が管部材12の内径D2に等しい分岐穴22を形成する(D3=D2=47.8mm)のが好ましい。
しかしながら、分岐管部材1の主管部2の側周面18の所定の周面領域Rの位置やその分岐穴22の穴開け加工する位置や寸法等については、要求された仕様に応じて変更することにより容易に設計変更を行うことができ、種々の形態の分岐管部材を製造することができるようにもなっている。
また、本実施形態では、スキン層20を切削加工して除去して後、分岐穴22の穴開け加工を行う例について説明するが、スキン層20の切削加工を除去することなく、主管部2の側周面18に対して直接的に分岐穴22の穴開け加工を行ってもよい。
【0022】
つぎに、図4は、本発明の第1実施形態による熱可塑性樹脂製の分岐管部材の製造方法において射出成形機に位置決めされた射出成形中の金型、並びに、分岐管部材の主管部及び分岐管部を概略的に示す横断面図である。
図3及び図4に示すように、上述した第2の工程後の第3の工程では、管部材12の開口端部4,6及び分岐穴22のそれぞれに対して、各保持部材24,26,28を挿入して取り付け、管部材12が変形しないように各保持部材24,26,28で管部材12を保持する。
そして、図4に示すように、第3の工程後の第4の工程において、射出成形機Mによる射出成形を行う射出成形部Wに予め取り付けられた複数の金型30,32,34,36に対し、各保持部材24,26,28を取り付けた状態の管部材12を取り付ける。これにより、各金型30,32,34,36が管部材12の外側を覆うように取り付けられた状態となり、各金型30,32,34,36と管部材12が射出成形機Mの射出成形部Wの所定位置に位置決めされ、装着された状態となる。
【0023】
つぎに、図4に示すように、上述した第4の工程後の第5の工程では、射出成形機Mの射出成形部Wにおいて、予め加熱して混練したPPSU樹脂を作り、次に金型30の外側の一部に設けられた注入口38からPPSU樹脂材料mを注入する。
そして、この注入されたPPSU樹脂材料mは、注入口38から順次内側(下流側)にそれぞれ形成されたスプルー40及びランナー42からゲート44を経て、管部材12の側周面18の所定の周面領域Rの分岐穴22から外側に突出する保持部材28の外面28aと、この外面28aと対向する金型30,32の内面30a,32aとの間に形成される空洞部46内に射出される。これにより、分岐管部材1の分岐管部8が、主管部2に対して分岐穴22から保持部材28の外面28aに沿って軸方向外側に突出するように一体的に射出成形される。
なお、各金型30,32,34,36には、PPSU樹脂材料mの成形温度を調節するためのヒータ30b,32b,34a,36aが内蔵されている。例えば、PPSU樹脂材料mの射出成形を行う際には、PPSU樹脂材料mの成形温度が約350℃〜約400℃に設定されるように、注入口38から注入されるPPSU樹脂材料mの温度を370℃〜380℃に設定されるのが好ましいため、各金型30,32,34,36の温度が100℃〜150℃に設定されるように、各ヒータ30b,32b,34a,36aの温度は、130℃〜140℃に設定されるのが好ましい。
【0024】
つぎに、上述した第5の工程後の第6の工程では、空洞部46内に充填されたPPSU樹脂材料mを冷却した後、射出成形が完了し、図4に示す各金型30,32,34,36を管部材12から分離する。
【0025】
つぎに、図5は、本発明の第1実施形態による熱可塑性樹脂製の分岐管部材の製造方法において射出成形が行われた後、開いた金型から成形品を取り外し、分岐管部材から保持部材を抜き取る前の状態を示す正面断面図であり、図6は、本発明の第1実施形態による熱可塑性樹脂製の分岐管部材の製造方法により製造された熱可塑性樹脂製の分岐管部材の完成品の正面断面図である。
図5に示すように、上述した第6の工程後の第7の工程では、主管部2の各開口端部4,6から各保持部材24,26を軸方向外側(図5の各矢印A1,A2の方向)に抜き取ると共に、主管部2の分岐穴22及び分岐管部8の開口端部10からも保持部材28を軸方向外側(図5の各矢印A3の方向)に抜き取る。
そして、図1及び図6に示すように、主管部2と分岐管部8とが一体的に形成されたPPSU樹脂製の透明な分岐管部材1が完成品となる。
なお、図6に示すように、完成品の分岐管部材1においては、分岐管部8の開口端部10の外径D4が主管部2の両端部の外径D1と等しく(D4=D1)設定され、分岐管部8の内径D5が主管部2の内径D2と等しく(D5=D2)設定される。
【0026】
つぎに、図7は、本発明の第1実施形態による熱可塑性樹脂製の分岐管部材の製造方法により製造された熱可塑性樹脂製の分岐管部材の完成品において、分岐管部に圧力センサーが装着された状態を概略的に示す概略正面断面図である。
図7に示すように、上述した第7の工程後、さらなる第8の工程において、完成品の熱可塑性樹脂製の分岐管部材1の流路内の流体の圧力を検出する圧力センサー48が、分岐管部8の開口端部10にパッキン50を介して取り付けられ、クランプ52によって固定される。
なお、本実施形態では、分岐管部材1の流路内の流体に関する所定の特性を検出する検出手段の例として、分岐管部材1の流路内の流体の圧力を検出する圧力センサー48を適用した例について説明するが、流体の温度を検出する温度センサー等、圧力以外の流体の特性を検出するための検出手段についても適用可能である。
【0027】
また、図1及び図6に示すように、熱可塑性樹脂製の分岐管部材1の分岐管部8は、その軸方向の中心軸線C1が主管部2の中心軸線C2に対して交点Qで直交するように形成されており、分岐管部8の開口端部10の中心O1から分岐管部8の中心軸線C1に沿って主管部2の中心軸線C2(交点Q)までの距離L1が、主管部2の各開口端部4,6の各中心O2,O3から主管部2の中心軸線C2に沿って分岐管部8の中心軸線C1(交点Q)までの距離L2よりも小さく(L1<L2)設定されている。例えば、主管部2の全長L(=2×L2)を125mmに設定し、内径D2を47.8mmに設定した場合、距離L1は40mmに設定される。
これにより、図6に示す分岐管部8の流路内の容積V1は、仮に、距離L1と距離L2とが同一である場合の標準寸法の分岐管部の容積に比べても小さく設定することができ、また、図6に示す分岐管部8の流路内の容積V1を主管部2の流路内の容積V2に比べても著しく小さく設定することができるようになっており、分岐管部8の流路内に流体が停滞したとしても、停滞する量を極めて少なくすることができるようになっている。
さらに、図7に示すように、分岐管部8の開口端部10に接続される圧力センサー48を主管部2の流路内に近づかせることができ、分岐管部8内の上方部分の開口端部10付近に流体fが停滞することを抑制することができるため、主管部2の流路と圧力センサー48との間で流体fを効率良く出入りさせることができるようになっている。これにより、主管部2内の流路から分岐管部8内に分流した後、再び主管部2内の流路に合流する流体fと、主管部2の流路内に主流を形成する流体Fとにおいて、互いの品質性能に差異が生じることを抑制することができるため、分岐管部8に圧力センサー48を装着した場合には、分岐管部材1の流路内の流体の圧力等の特性や挙動を正確に把握することができるようになっている。
【0028】
上述した本発明の第1実施形態による熱可塑性樹脂製の分岐管部材1の製造方法によれば、第1の工程から第7の工程までの一連の工程により、分岐管部材1の主管部2については、PPSU樹脂で形成された既存の管部材12をそのまま利用することができ、主管部2の側周面18の所定の周面領域R内の一部について分岐穴22を穴開け加工した後、分岐管部8のみを射出成形するだけで、主管部2と分岐管部8とが一体的に形成された完成品の熱可塑性樹脂製の分岐管部材1を容易に製造することができる。
また、既存の管部材12を利用して分岐管部材1の主管部2の側周面18の所定の周面領域Rの位置やその分岐穴22の穴開け加工する位置や寸法等について、要求された仕様に応じて変更することにより容易に設計変更を行うことができ、種々の形態の分岐管部材を製造することができるため、既存の管部材12を利用せずに、主管部2及び分岐管部8の双方について、要求された仕様に応じて最初から一体的に射出成形する場合に比べて、金型等の製作に要する費用を大幅に抑制し、製造コスト全体を効果的に抑制することができる。
【0029】
また、本実施形態による熱可塑性樹脂製の分岐管部材1の製造方法によれば、図6に示すように、分岐管部8が、その軸方向の中心軸線C1が主管部2の中心軸線C2に対して交点Qで直交するように形成されており、分岐管部8の開口端部10の中心O1から分岐管部8の中心軸線C1に沿って主管部2の中心軸線C2(交点Q)までの距離L1(例えば、L1=40mm)が、主管部2の各開口端部4,6の各中心O2,O3から主管部2の中心軸線C2に沿って分岐管部8の中心軸線C1(交点Q)までの距離L2(例えば、L2=62.5mm)よりも小さく設定されているため、分岐管部8の流路内の容積V1(例えば、V1=28.9cm2)は、図12に示す従来のステンレス製の分岐管部材400の分岐管部404の開口端部404aの中心O1から分岐管部404の中心軸線C1に沿って主管部402の中心軸線C2(交点Q)までの距離L401(例えば、L401=82mm)と主管部402の各開口端部4,6の各中心O2,O3から分岐管部404の中心軸線C1(交点Q)までの距離L402(例えば、L2=82mm)とが同一(例えば、L401=L402=82mm)の場合の分岐管部404の容積V401(例えば、V401=104cm2)に比べて小さく、かつ、主管部2の流路内の容積V2に比べて小さく設定することができ、分岐管部8の流路内に流体fが停滞したとしても、停滞する量を少なくすることができる。
また、図6に示すように、分岐管部8の開口端部10の中心O1から分岐管部8の中心軸線C1に沿って主管部2の中心軸線C2(交点Q)までの距離L1(例えば、L1=40mm)を図12に示すステンレス製の分岐管部404の高さL401(例えば、L401=82mm)よりも著しく小さく設定することができることにより、分岐管部8の開口端部10に接続される圧力センサー48を主管部2の流路内に近づかせることができるため、主管部2の流路と圧力センサー48との間で流体fを効率良く出入りさせることができる。
【0030】
さらに、本実施形態による熱可塑性樹脂製の分岐管部材1の製造方法によれば、熱可塑性樹脂製の分岐管部材1を完成品にする第7の工程の後、この完成品の熱可塑性樹脂製の分岐管部材1の流路内の流体の圧力を検出する圧力センサー48を分岐管部8の開口端部10に取り付けることにより、主管部2及び分岐管部8の流路内の流体に関する圧力特性を検出することができるため、熱可塑性樹脂製の分岐管部材1について、その内部を流れる流体の状態を把握しながら使用することができる。
また、熱可塑性樹脂製の分岐管部材1が透明の材質で形成されているため、内部を流れる流体の状態を目視でも容易に把握することができるため、不具合の発生を素早く発見することができ、万一の異常事態に対して迅速に対応することができる。
【0031】
つぎに、一例として、本発明の第1実施形態による熱可塑性樹脂製の分岐管部材1の製造方法で製造された分岐管部材1の諸寸法等に関する仕様と、一般的に使用されている従来のステンレス製の分岐管部材の2つの比較例1,2の諸寸法等に関する仕様を比較すると、以下の表1に示す。
ここで、表1に示す従来のステンレス製の分岐管部材の比較例1は、図12に示すように、分岐管部材400の主管部402の内径D2と分岐管部404の内径D5とが等しい(D2=D5)場合において、分岐管部404の開口端部404aの中心O1から主管部402の中心軸線C2までの距離L401が、主管部402の両開口端部402a,402bの各中心O2,O3から分岐管部404の中心軸線C1(交点Q)までの距離L402と等しい(L401=L402)標準的な形態である。
また、表1に示す従来のステンレス製の分岐管部材の比較例2においては、図12に示すように、主管部が比較例1の分岐管部材400の主管部402と同一であり、図12に鎖線で示す分岐管部504の開口端部504aの中心O1’から主管部402の中心軸線C2までの距離L501が、比較例1の距離L402よりも小さく、従来のステンレス製の分岐管部材の分岐管部において最小距離となる形態である。
さらに、表1では、本実施形態による熱可塑性樹脂製の分岐管部材1の製造方法で製造された分岐管部材1の主管部2の内径D2と分岐管部8の内径D5とが等しい(D2=D5)場合において、主管部2の内径D2、分岐管部8の開口端部10の中心O1から主管部2の中心軸線C2までの距離L1、この距離L1と主管部の内径D2との比(L1/D2)、分岐管部8の流路内の容積V1、図12に示す従来のステンレス製の分岐管部材の比較例1の分岐管部404の容積V401に対する本実施形態による熱可塑性樹脂製の分岐管部材1の分岐管部8の流路内の容積V1の比率(容積比率V1/V401)、及び、分岐管部材の内部が目視可能か否かをそれぞれ示している。
【0032】
【表1】
【0033】
表1に示すように、本実施形態の分岐管部材1においては、従来のステンレス製の分岐管部材の比較例1の分岐管部の容積V401に対する本実施形態による熱可塑性樹脂製の分岐管部材1の分岐管部8の流路内の容積比率(容積比率V1/V401)は、28%であり、比較例1の容積比率(V401/V401=100%)や比較例2の容積比率(V501/V401=42%)よりも著しく小さくなっている。
すなわち、本実施形態の分岐管部材1の分岐管部8の容積V1が、従来のステンレス製の分岐管部材の比較例1の分岐管部404の容積V401や、この比較例1の分岐管部404の距離L401よりも距離L501が短い従来のステンレス製の分岐管部材の比較例2の分岐管部504の容積V501に比べて、分岐管部8の流路内の容積V1を効果的に小さく設定することができ、分岐管部8内に停滞する流体を十分に少なくすることができることが明らかとなった。
【0034】
なお、上述した本発明の第1実施形態による熱可塑性樹脂製の分岐管部材の製造方法においては、分岐管部材1の分岐管部8の開口端部10の中心O1から主管部2の中心軸線C2(交点Q)までの距離L1が、主管部2の各開口端部4,6の各中心O2,O3から分岐管部8の中心軸線C1(交点Q)までの距離L2よりも小さく設定し、圧力センサー48を分岐管部8の開口端部10に取り付けた例について説明したが、分岐管部8の開口端部10には、圧力センサー48を取り付けずに、他の管部材を接続してもよい。この場合には、分岐管部材1の分岐管部8の開口端部10の中心O1から主管部2の中心軸線C2(交点Q)までの距離L1について、必ずしも、主管部2の各開口端部4,6の各中心O2,O3から分岐管部8の中心軸線C1(交点Q)までの距離L2よりも小さく設定する必要はなく、要求された仕様に応じて、両距離L1,L2が互いに等しくなるように設定してもよいし、距離L1を距離L2よりも大きくなるように設定してもよい。
【0035】
つぎに、図8を参照して、本発明の第2実施形態による熱可塑性樹脂製の分岐管部材の製造方法について説明する。
図8は、本発明の第2実施形態による熱可塑性樹脂製の分岐管部材の製造方法により製造された熱可塑性樹脂製の分岐管部材の完成品を示す概略正面図である。
なお、本発明の第2実施形態による熱可塑性樹脂製の分岐管部材100の製造方法において、図1図7に示す上述した本発明の第1実施形態による熱可塑性樹脂製の分岐管部材1の製造方法と同一の部分については同一の符号を付し、これらの説明を省略し、異なる部分のみについて説明する。
図8に示すように、本発明の第2実施形態による熱可塑性樹脂製の分岐管部材100の製造方法では、複数(3つ)の同一形態の分岐穴122a,122b,122c及び分岐管部108a,108b,108cのそれぞれが主管部102の側周面118に対してそれぞれ形成されている点で、本発明の第1実施形態による製造方法で製造される熱可塑性樹脂製の分岐管部材1の単一の分岐穴22及び分岐管部8と異なっている。
【0036】
また、図8に示すように、分岐管部材100においては、上述した本発明の第1実施形態による熱可塑性樹脂製の分岐管部材1と同様に、各分岐管部108a,108b,108cの軸方向の中心軸線C1のそれぞれが主管部102の中心軸線C2に対して各交点Qで直交するように形成されており、特に、各分岐管部108a,108cの開口端部110a,110cの各中心O1から各分岐管部108a,108cの中心軸線C1に沿って主管部102の中心軸線C2(交点Q)までの距離L1が、主管部102の各開口端部104,106の各中心O2,O3から主管部102の中心軸線C2に沿って各分岐管部108a,108cの中心軸線C1(交点Q)までの距離L2よりも小さく(L1<L2)設定されている。
これにより、図8に示す各分岐管部108a,108b,108cの流路内の容積を主管部102の流路内の容積に比べて小さく設定することができ、各分岐管部108a,108b,108cの流路内に流体が停滞したとしても、停滞する量を少なくすることができるようになっている。
また、図8に示す各分岐管部108a,108b,108cの開口端部110a,110b,110cが、主管部102の中心軸線C2から各開口端部110a,110b,110cまでの距離L1が短く設定されているので、各開口端部110a,110b,110cに配管を接続したとき状態では、過剰な曲げ応力が各分岐管部108a,108b,108cに作用することを抑制することができるようになっている。
なお、主管部102の一方の開口端部104から主管部102内に流体が流入した場合、流体は順次各分岐管部108a,108b,108cに分岐していくと、流体の容積は減少するため、各分岐管部108a,108b,108cの各開口端部110a,110b,110cの口径は、主管部102の開口端部104,106の口径よりも小さく設定するのが好ましい。
【0037】
ここで、本発明の第2実施形態による熱可塑性樹脂製の分岐管部材100の製造方法では、まず、第1の工程で、上述した第1実施形態の第1の工程と同様に、既にPPSU樹脂を射出成形することによりほぼ円筒状に形成された既存の管部材112を予め用意する。
そして、次の第2の工程において、管部材112の一方の開口端部104から他方の開口端部106まで長手方向に延びる主管部102の側周面118において、要求された仕様に応じて、開口端部104,106の双方間の中間部分の3つ所定の周面領域Rの表面層118aについて、スキン層(図示せず)を切削加工して除去する。その後、3つ所定の周面領域Rのそれぞれについて、穴開け加工を行い、各分岐穴122a,122b,122cをそれぞれ形成する。
【0038】
その後、上述した本発明の第1実施形態の樹脂製の分岐管部材1の製造方法における第3の工程から第7の工程までの工程と同様に、主管部102の各分岐穴122a,122b,122cに対し、各分岐管部108a,108b,108cがそれぞれ射出成形され、熱可塑性樹脂製の分岐管部材100の完成品が形成される。
【0039】
上述した本発明の第2実施形態による熱可塑性樹脂製の分岐管部材100の製造方法によれば、分岐管部材100の主管部102については、PPSU樹脂で形成された既存の管部材をそのまま利用することができ、主管部102の側周面118の各所定の領域R内の一部について各分岐穴122a,122b,122cを穴開け加工した後、各分岐管部108a,108b,108cのみを射出成形するだけで、主管部102と複数の分岐管部108a,108b,108cとが一体的に形成された完成品の熱可塑性樹脂製の分岐管部材100を容易に製造することができる。
また、主管部102の各分岐穴122a,122b,122cと各分岐管部108a,108b,108cが主管部102に対して複数(3つ)設けられているため、主管部102の開口端部104又は開口端部106から流入した流体について、主管部102の各分岐穴122a,122b,122cから各分岐管部108a,108b,108cのそれぞれに分流させることができる。或いは、各分岐管部108a,108b,108cの各開口端部110a,110b,110cのそれぞれから各分岐管部108a,108b,108cの流路内に流入した流体について、主管部102の各分岐穴122a,122b,122cから主管部102の流路内に合流させることができる。
【0040】
なお、本実施形態による熱可塑性樹脂製の分岐管部材100の製造方法では、主管部102の分岐穴122及び分岐管部108が主管部102の側周面118に対して複数(3つ)設けられている形態について説明したが、このような形態に限られず、主管部102の分岐穴122及び分岐管部108が主管部102の側周面118に対して2つ又は4つ以上の複数設けられていてもよい。
【0041】
また、本実施形態による熱可塑性樹脂製の分岐管部材100の製造方法では、上述した本発明の第1実施形態の樹脂製の分岐管部材1の製造方法と同様に、第7の工程において、熱可塑性樹脂製の分岐管部材100を完成品にした後、各分岐管部108a,108b,108cの各開口端部110a,110b,110cの少なくとも1つに、分岐管部材100の流路内の流体の圧力を検出する圧力センサーや流体の温度を検出する温度センサー等の流体の特性を検出するための検出手段を取り付けてもよい。
さらに、このような流体の特性を検出するための検出手段を取り付けない場合には、各分岐管部108a,108b,108cの各開口端部110a,110b,110cに、他の管部材(図示せず)や接続部材(図示せず)等を接続してもよい。この場合、分岐管部材100の各分岐管部108a,108b,108cの各開口端部110a,110b,110cの中心O1から主管部102の中心軸線C2(交点Q)までの距離L1については、必ずしも、主管部102の各開口端部104,106の各中心O2,O3から各分岐管部108a,108cの中心軸線C1(交点Q)までの距離L2よりも小さく設定する必要はなく、要求された仕様に応じて、両距離L1,L2が互いに等しくなるように設定してもよいし、距離L1を距離L2よりも大きくなるように設定してもよい。
【0042】
つぎに、図9及び図10を参照して、本発明の第3実施形態による熱可塑性樹脂製の分岐管部材の製造方法について説明する。
まず、図9は、本発明の第3実施形態による熱可塑性樹脂製の分岐管部材の製造方法により製造された熱可塑性樹脂製の分岐管部材の完成品を斜め上方から見た斜視図である。また、図10は、本発明の第3実施形態による熱可塑性樹脂製の分岐管部材の製造方法により製造された熱可塑性樹脂製の分岐管部材の完成品において、分岐管部に温度センサーが装着された状態を概略的に示す概略正面断面図である。
なお、本発明の第3実施形態による熱可塑性樹脂製の分岐管部材200の製造方法において、図1図7に示す上述した本発明の第1実施形態による熱可塑性樹脂製の分岐管部材1の製造方法と同一の部分については同一の符号を付し、これらの説明を省略し、異なる部分のみについて説明する。
【0043】
図9及び図10に示すように、本発明の第3実施形態による熱可塑性樹脂製の分岐管部材200の製造方法では、第1実施形態の分岐管部材1の管部材12と同様な管部材を用いて主管部2とし、この主管部2に対して、分岐管部208の中心軸線C1が主管部2の中心軸線C2に対して直交するように分岐管部208が形成される点で、上述した第1実施形態による熱可塑性樹脂製の分岐管部材1の製造方法と共通する。また、図10に示すように、完成品の分岐管部材200においては、分岐管部208の開口端部210の外径D4が主管部2の両端部の外径D1と等しく(D4=D1)設定され、分岐管部208の内径D5が主管部2の内径D2と等しく(D5=D2)設定される。
しかしながら、図9及び図10に示すように、本実施形態の分岐管部材200においては、主管部2の開口端部6の中心O3から主管部2の中心軸線C2に沿って分岐管部208の中心軸線C1までの距離L201が、主管部2の開口端部4の中心O2から主管部2の中心軸線C2に沿って分岐管部208の中心軸線C1までの距離L202よりも小さく(L201<L202)、且つ、分岐管部208の開口端部210の中心O1から分岐管部208の中心軸線C1に沿って主管部2の中心軸線C2までの距離L203よりも小さく(L201<L203)設定されている点で、第1実施形態の分岐管部材1と異なっている。例えば、主管部2の全長L201+L202を125mmに設定し、距離L201を45mmに設定した場合、距離L203は60mmに設定される。
【0044】
ここで、本発明の第3実施形態による熱可塑性樹脂製の分岐管部材200の製造方法では、まず、第1の工程で、上述した第1実施形態の第1の工程と同様に、既にPPSU樹脂を射出成形することによりほぼ円筒状に形成された既存の管部材12を予め用意する。
そして、次の第2の工程において、管部材12の一方の開口端部4から他方の開口端部6まで長手方向に延びる主管部2の側周面18において、要求された仕様に応じて、長手方向の中央位置P1よりも開口端部6側に所定の幅w1で形成される所定の周面領域Rを設定し、この所定の周面領域Rの表面層18aについて、スキン層(図示せず)を切削加工し、その後、所定の周面領域Rの中心部に穴開け加工を行い、分岐穴222を形成する。
【0045】
その後、上述した本発明の第1実施形態の樹脂製の分岐管部材1の製造方法における第3の工程から第7の工程までの工程と同様に、主管部2の分岐穴222に対し、分岐管部208が射出成形され、熱可塑性樹脂製の分岐管部材200の完成品が形成される。
【0046】
また、図10に示すように、熱可塑性樹脂製の分岐管部材200の完成品が形成された第7の工程後、さらなる第8の工程において、完成品の熱可塑性樹脂製の分岐管部材200の流路内の流体の温度を検出する温度センサー248が、主管部2の開口端部6にパッキン50を介して取り付けられ、クランプ52によって固定される。
なお、本実施形態では、分岐管部材200の流路内の流体に関する所定の特性を検出する検出手段の例として、分岐管部材200の流路内の流体の温度を検出する温度センサー248を適用した例について説明したが、流体の圧力を圧力センサー、流体のpH、導電率、流体の糖度や塩分濃度等の特性等、温度以外の流体の特性を検出するための検出手段についても適用可能である。
【0047】
上述した本発明の第3実施形態による熱可塑性樹脂製の分岐管部材200の製造方法によれば、図10に示すように、主管部2の開口端部6の中心O3から主管部2の中心軸線C2に沿って分岐管部208の中心軸線C1までの距離L201が、主管部2の開口端部4の中心O2から主管部2の中心軸線C2に沿って分岐管部208の中心軸線C1までの距離L202よりも小さく、且つ、分岐管部208の開口端部210の中心O1から分岐管部208の中心軸線C1に沿って主管部2の中心軸線C2までの距離L203よりも小さく設定されているため、主管部2の開口端部6付近の流路内の容積V201について、分岐管部208の流路内の容積V202に比べて小さく設定することができ、主管部2の開口端部6付近の流路内に流体が停滞したとしても、停滞する量を少なくすることができる。
また、図10に示すように、主管部2の開口端部6に接続された温度センサー248について、主管部2の開口端部4から分岐穴222を経て分岐管部208の開口端部210までの流路内に近づかせることができるため、主管部2や分岐管部208の流路と温度センサー248との間で流体を効率良く出入りさせることができる。
【0048】
さらに、本実施形態による熱可塑性樹脂製の分岐管部材200の製造方法によれば、熱可塑性樹脂製の分岐管部材208を完成品にする第7の工程の後、この完成品の熱可塑性樹脂製の分岐管部材200の流路内の流体の温度を検出する温度センサー248を主管部2の開口端部6に取り付けることにより、温度センサー248の感熱部248aが主管部2の長手方向に延びているため、流路内の流体の温度を精度よく測定することができる。
また、分岐管部材200が透明な材質で形成されているため、温度センサー248の装着部や感熱部248aの周辺の流体の状況を瞬時に且つ容易に把握することができ、流体の状態を継続的に把握しながら使用することができる。
【0049】
つぎに、図11を参照して、本発明の第4実施形態による熱可塑性樹脂製の分岐管部材の製造方法について説明する。
図11は、本発明の第4実施形態による熱可塑性樹脂製の分岐管部材の製造方法により製造された熱可塑性樹脂製の分岐管部材の完成品を示す概略正面図である。
なお、本発明の第4実施形態による熱可塑性樹脂製の分岐管部材300の製造方法において、図1図7に示す上述した本発明の第1実施形態による熱可塑性樹脂製の分岐管部材1の製造方法と同一の部分については同一の符号を付し、これらの説明を省略し、異なる部分のみについて説明する。
【0050】
図11に示すように、本発明の第4実施形態による熱可塑性樹脂製の分岐管部材300の製造方法では、第1実施形態の分岐管部材1の管部材12と同様な管部材を用いて主管部2とし、この主管部2に対して、分岐管部308の中心軸線C1が主管部2の中心軸線C2に対して直交するように分岐管部308が形成される点で、上述した第1実施形態による熱可塑性樹脂製の分岐管部材1の製造方法と共通する。
また、図11に示すように、本発明の第4実施形態による熱可塑性樹脂製の分岐管部材300の製造方法では、第1実施形態と同様に、管部材12における開口端部4,6の双方間の中間部分の所定の周面領域Rについては、管部材12の側周面18における長手方向の中央位置P1を中心として長手方向に所定の幅w2のスキン層(図示せず)を切削加工し、その後、所定の周面領域Rの中心部に穴開け加工を行い、分岐穴322を形成する点で、上述した第1実施形態による熱可塑性樹脂製の分岐管部材1の製造方法と共通する。
しかしながら、図11に示すように、完成品の分岐管部材300においては、分岐管部308の開口端部310の外径D4が主管部2の両端部の外径D1よりも小さく(D4<D1)設定され、分岐管部308の内径D5が主管部2の内径D2とよりも小さく(D5<D2)設定されており、分岐管部308の流路断面積S1は、主管部2の流路断面積S2よりも小さく(S1<S2)設定されている点で、第1実施形態の分岐管部材1と異なっている。
【0051】
ここで、本発明の第4実施形態による熱可塑性樹脂製の分岐管部材300の製造方法では、まず、第1の工程で、上述した第1実施形態の第1の工程と同様に、既にPPSU樹脂を射出成形することによりほぼ円筒状に形成された既存の管部材12を予め用意する。
そして、次の第2の工程において、管部材12の側周面18における長手方向の中央位置P1を中心として長手方向に所定の幅w2で且つ管部材12の表面層18aに対して径方向内側に所定の深さd[mm]で切削加工を行った後、穴開け加工を行い、分岐穴322を形成する。
その後、上述した本発明の第1実施形態の樹脂製の分岐管部材1の製造方法における第3の工程から第7の工程までの工程と同様に、主管部2の分岐穴322に対し、分岐管部308が射出成形され、熱可塑性樹脂製の分岐管部材300の完成品が形成される。
【0052】
上述した本発明の第4実施形態による熱可塑性樹脂製の分岐管部材300の製造方法によれば、分岐管部308の流路断面積S1は、主管部2の流路断面積S2よりも小さく(S1<S2)設定されているため、分岐管部308の流路内の容積V301を主管部2の流路内の容積V2に比べて小さく設定することができ、分岐管部308の流路内に流体が停滞したとしても、停滞する量を少なくすることができる。また、分岐管部308の開口端部310に分岐管部材300の内の流体の圧力を検出する圧力センサーや流体の温度を検出する温度センサー等の流体の特性を検出するための検出手段を接続した場合には、これらの検出手段が検出する分岐管部308の流路内の容積V301を少なくすることができるため、主管部2の流路と検出手段との間で流体を効率良く出入りさせることができる。
【0053】
なお、本実施形態による熱可塑性樹脂製の分岐管部材300の製造方法では、上述した本発明の第1実施形態の樹脂製の分岐管部材1の製造方法と同様に、第7の工程において、熱可塑性樹脂製の分岐管部材300を完成品にした後、分岐管部308の開口端部310に、分岐管部材300の流路内の流体の圧力を検出する圧力センサーや流体の温度を検出する温度センサー等の流体の特性を検出するための検出手段を取り付けてもよい。これにより、主管部の開口端部の口径と分岐管部の開口端部の口径とが同一の場合に比べて、分岐管部308の流路内に亭々する流体の容積をさらに減少させることができると共に、口径の小さい分岐管部の開口端部に取り付ける流体の検出手段についても、小型の安価なものを採用することができる。
さらに、このような流体の特性を検出するための検出手段を取り付けない場合には、分岐管部308の開口端部310に、他の管部材(図示せず)や接続部材(図示せず)等を接続してもよい。この場合、分岐管部材300の分岐管部308の開口端部310の中心O1から主管部2の中心軸線C2(交点Q)までの距離L1については、必ずしも、主管部2の各開口端部4,6の各中心O2,O3から分岐管部308の中心軸線C1(交点Q)までの距離L2よりも小さく設定する必要はなく、要求された仕様に応じて、両距離L1,L2が互いに等しくなるように設定してもよいし、距離L1を距離L2よりも大きくなるように設定してもよい。
また、分岐管部308の開口端部310に、流体の特性を検出するための検出手段を取り付けない場合には、分岐管部308の内径D5を主管部2の内径D2とよりも小さく(D5<D2)設定しなくてもよいし、分岐管部308の流路断面積S1を主管部2の流路断面積S2と等しく(S1=S2)設定してもよいし、分岐管部308の流路断面積S1を主管部2の流路断面積S2よりも大きく(S1>S2)設定してもよい。
【0054】
さらに、上述した本発明の第1実施形態〜第4実施形態による熱可塑性樹脂製の分岐管部材1,100,200,300においては、熱可塑性樹脂として、PPSU樹脂(ポリフェニルサルフォン樹脂)で射出成形されたPPSU樹脂製の分岐管部材の例として説明したが、PPSU樹脂以外の他の熱可塑性樹脂で射出成形される分岐管部材についても適用可能である。
すなわち、PPSU樹脂以外の他の熱可塑性樹脂として、ポリサルフォン樹脂(PSU)、ポリエーテルサルフォン(PESU)、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)、ポリ塩化ビニル(PVC)等の熱可塑性樹脂を用いて分岐管部材を製造してもよい。
【符号の説明】
【0055】
1 熱可塑性樹脂製の分岐管部材
2 主管部
4 管部材(主管部)の開口端部(第1の開口端部)
6 管部材(主管部)の開口端部(第2の開口端部)
8 分岐管部
10 分岐管部の開口端部(第4の開口端部)
12 管部材
14 溝
16 フランジ
18 管部材(主管部)の側周面
18a 管部材(主管部)の側周面の表面層
20 スキン層
22 分岐穴(第3の開口端部)
24 保持部材(第1の保持部材)
26 保持部材(第2の保持部材)
28 保持部材(第3の保持部材)
28a 保持部材の外面
30 金型
30a 内面
30b ヒーター
32 金型
32a 内面
32b ヒーター
34 金型
34a ヒーター
36 金型
36a ヒーター
38 注入口(注入部)
40 スプルー
42 ランナー
44 ゲート
46 空洞部
48 圧力センサー(検出手段)
50 パッキン
52 クランプ
A1 保持部材の抜き取り方向
A2 保持部材の抜き取り方向
A3 保持部材の抜き取り方向
C1 分岐管部の軸方向の中心軸線
C2 主管部の軸方向の中心軸線
D1 管部材の主管部の外径
D2 管部材の主管部の内径
D3 管部材の主管部の分岐穴の直径
D4 分岐管部の外径
D5 分岐管部の内径
F 流体
f 流体
L1 分岐管部の開口端部の中心から主管部の中心軸線(交点)までの距離
L2 主管部の開口端部の中心から分岐管部の中心軸線(交点)までの距離
M 射出成形機
m PPSU樹脂材料
O1 分岐管部の開口端部の中心
O2 主管部の開口端部の中心
O3 主管部の開口端部の中心
P1 管部材の側周面の長手方向の中央位置
Q 主管部の軸方向の中心軸線と分岐管部の軸方向の中心軸線との交点
R 周面領域
d 深さ
W 射出成形部
w1 幅
w2 幅
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12