(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2016-164104(P2016-164104A)
(43)【公開日】2016年9月8日
(54)【発明の名称】壁材用組成物
(51)【国際特許分類】
C04B 18/12 20060101AFI20160815BHJP
C04B 14/08 20060101ALI20160815BHJP
C04B 16/02 20060101ALI20160815BHJP
C04B 26/28 20060101ALI20160815BHJP
【FI】
C04B18/12
C04B14/08
C04B16/02 Z
C04B26/28
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
【全頁数】5
(21)【出願番号】特願2015-44878(P2015-44878)
(22)【出願日】2015年3月6日
(71)【出願人】
【識別番号】515063301
【氏名又は名称】株式会社日本クリスター
(74)【代理人】
【識別番号】110000475
【氏名又は名称】特許業務法人みのり特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西平 裕
(57)【要約】
【課題】昔ながらの美しい壁面を現出させることができる、天然素材だけで構成された壁材用組成物を提供する。
【解決手段】本発明に係る壁材用組成物は、陶石製石粉に対し、珪藻土と、珪砂と、麻スサと、海藻由来の乾燥糊とを配合してなる。好ましくは、本発明に係る壁材用組成物は、陶石製石粉100重量部に対し、珪藻土32〜48重量部と、珪砂0.4〜4重量部と、麻スサ0.1〜0.28重量部と、乾燥糊12〜28重量部とを配合してなる。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
陶石製石粉に対し、珪藻土と、珪砂と、麻スサと、海藻由来の乾燥糊とを配合してなることを特徴とする壁材用組成物。
【請求項2】
前記陶石製石粉100重量部に対し、前記珪藻土32〜48重量部と、前記珪砂0.4〜4重量部と、前記麻スサ0.1〜0.28重量部と、前記乾燥糊12〜28重量部とを配合してなることを特徴とする請求項1に記載の壁材用組成物。
【請求項3】
藁スサをさらに配合してなることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の壁材用組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、天然素材だけで構成された壁材用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、その見た目の美しさから昔ながらの壁材が見直されている。このような状況の中、特許文献1では、消石灰100重量部に対して、珪砂30〜70重量部、合成樹脂エマルジョンまたはパウダー樹脂3〜10重量部、すさ0.5〜6重量部、クレイ成分0.5〜5重量部、分散剤0.5〜5重量部、セルロース系増粘剤0.2〜3重量部、消泡剤0.1〜2重量部、大理石パウダー3〜7重量部を配合してなる磨き漆喰風壁材用組成物が提案されている。
【0003】
この磨き漆喰風壁材用組成物によれば、見栄えがよく、しかも割れが発生しにくい磨き漆喰風の壁面が得られるとのことである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3694873号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、壁材用組成物には、健康に悪影響を及ぼすホルムアルデヒド等の揮発性有機化合物の発生が少ないこと(好ましくはゼロであること)が求められている。しかしながら、上記のものを含む従来の壁材用組成物は、強度を高めたり割れを防いだりする等の目的で天然素材以外の原材料を含んでいることが多く、未だに健康被害に対する対策が十分になされていないのが実情である。
【0006】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであって、その課題とするところは、昔ながらの美しい壁面を現出させることができる、天然素材だけで構成された壁材用組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明に係る壁材用組成物は、陶石製石粉に対し、珪藻土と、珪砂と、麻スサと、海藻由来の乾燥糊とを配合してなることを特徴とする。
【0008】
施工性、強度、割れ等の観点から、上記壁材用組成物は、陶石製石粉100重量部に対し、珪藻土32〜48重量部と、珪砂0.4〜4重量部と、麻スサ0.1〜0.28重量部と、乾燥糊12〜28重量部とを配合してなることが好ましい。
【0009】
また、上記壁材用組成物は、見た目の美しさの観点から、藁スサをさらに配合してなることが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、昔ながらの美しい壁面を現出させることができる、天然素材だけで構成された壁材用組成物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明に係る壁材用組成物の製造工程を示すフロー図である。
【
図2】本発明に係る壁材用組成物の製造工程および施工工程を示すフロー図である。
【
図3】本発明に係る壁材用組成物からなる壁面の表面写真である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照しつつ、本発明に係る壁材用組成物の実施例について説明する。
【0013】
まず、本実施例に係る壁材用組成物の原材料である、陶石製石粉、珪藻土、珪砂、麻スサ、糊、藁スサについて説明する。
【0014】
本実施例の陶石製石粉は、天草陶石(天草陶土ともいう)を粉砕したものであり、240メッシュ程度の粒径を有する。陶石製石粉は、加水することで粘土の性質を示す。見た目の美しさの観点から、陶石製石粉の色は、白色に近い色であることが好ましい。本実施例では、25kgの陶石製石粉を用意した。
【0015】
本実施例の珪藻土は、見た目の美しさの観点から、白色に近い色であることが好ましい。本実施例では、10kgの珪藻土を用意した。珪藻土の量は、多すぎても少なすぎても壁面に割れが発生し易くなる。これを考慮して、珪藻土の量は、8kg〜12kg(陶石製石粉を100重量部とした場合は、32〜48重量部。以下同様)であることが好ましい。
【0016】
本実施例の珪砂は、陶石製石粉よりもやや大粒であり、140メッシュ程度の粒径を有する。本実施例では、0.5kgの珪砂を用意した。珪砂の量を多くすると壁面の割れに対する強度が増加する一方、滑りが悪くなって施工性が低下する。これを考慮して、珪砂の量は、0.1〜1.0kg(0.4〜4重量部)であることが好ましい。
【0017】
本実施例の麻スサは、黄麻を漂白して白色とした白雪スサである。本実施例では、30gの麻スサを用意した。麻スサの量を多くすると壁面の強度が増加する一方、伸びにくくなって施工性が低下する。これを考慮して、麻スサの量は、25g〜70g(0.1〜0.28重量部)であることが好ましい。
【0018】
本実施例の糊は、海藻(角又)を乾燥させた後に粉状に加工したものである。本実施例では、5kgの糊を用意した。糊の量を多くすると壁面の強度が増加する一方、粘着力が高くなって施工性が低下するとともに、乾燥に要する時間が増加する。クロス上に施工する場合に乾燥時間が長くなると、クロスに剥がれが生じる。これを考慮して、糊の量は、3kg〜7kg(12〜28重量部)であることが好ましい。
【0019】
本実施例の藁スサは、壁面の見栄えをよくするためのものである。本実施例では、桜の葉を使って赤みがかった色に染色した10gの藁スサを用意した。後述するが、藁スサは、拭き取りを行うことで壁面の表面に露出し、ランダムな模様を形成する。藁スサの量は、希望する模様の密度に応じて決定すればよい。藁スサの染色は、上記ランダムな模様を目立たせたい場合に行えばよい。
【0020】
本実施例に係る壁材用組成物は、
図1に示すフローF1および
図2に示すフローF2により製造・施工される。フローF1とフローF2は時間的に連続して行う必要はなく、通常は、フローF1を予め実行しておき、施行時にフローF2を実行する。
【0021】
フローF1の工程S1では、陶石製石粉(25kg)と珪藻土(10kg)と糊(5kg)とをミキサーで均一に混ざり合うまで混練する。
【0022】
工程S2では、工程S1で得られた混練体に麻スサ(30g)を加え、ミキサーで均一に混ざり合うまで混練する。大量の陶石製石粉、珪藻土および糊からなる混練体に少量の麻スサを均一に分散させるのは非常に困難である。このため、本工程では、工程S1で得られた混練体から取り分けた一部(例えば5kg)と麻スサの一部(例えば10g)とを別の小さな容器で予め混練したものをミキサーに投入し、全体の混練を行うことが好ましい。
【0023】
続く工程S3では、工程S2で得られた混練体に珪砂(0.5kg)を加え、ミキサーで均一に混ざり合うまで混練する。すぐに施工を行わない場合は、工程S3で得られた混練体を、適当な容器または袋に入れて保管しておけばよい。
【0024】
フローF2の工程S4では、工程S3で得られた混練体に藁スサ(10g)を加え、ミキサーで均一に混ざり合うまで混練する。そして、工程S5では、工程S4で得られた混練体に適当な量の水を加え、ミキサーで均一に混ざり合うまで混練する。工程S4および工程S5は、同時に実行してもよい。すなわち、工程S3で得られた混練体に藁スサと水とを同時に加えて混練してもよい。
【0025】
工程S6および工程S7では、工程S5で得られた混練体、すなわち本実施例に係る壁材用組成物を適当な下地処理を行った後の壁にコテ塗りし、完全に乾かない程度に自然乾燥させる。
【0026】
工程S8では、水を含ませた刷毛で乾燥後の壁面の拭き取りを行う。この拭き取りにより、壁面の最表面を構成する陶石製石粉、珪藻土および珪砂が除去され、藁スサが露出する。
【0027】
図3の左半分は拭き取り後の壁面であり、右半分は拭き取り前の壁面である。左右の比較から、拭き取りにより藁スサを覆っていた陶石製石粉等が除去され、その結果、より多くの藁スサが露出したことが分かる。露出した藁スサによって形成されるランダムな模様は、壁面に昔懐かしい印象を与える。
【0028】
本実施例に係る壁材用組成物は、糊の粘着力だけでなく、陶石製石粉が持つ粘り気によっても各成分が強固に結びついている。このため、拭き取りの際に、刷毛により表面がえぐれたり壁全体が脆くなったりすることなく、最表面の陶石製石粉等だけが除去される。
【0029】
続いて、四方の壁が本実施例に係る壁材用組成物で構成された集合住宅の室内1および室内2において、健康に悪影響を及ぼし得る揮発性有機化合物等の濃度および量を測定した結果を説明する。なお、測定は、室内空気中化学物質の標準的測定方法[平成14年2月7日・医薬発第0207002号]に準拠した方法により行った。
【0030】
測定結果は、表1に示す通り、測定を行った全ての化学物質の濃度および量が指針値を大幅に下回るというものであった。
【表1】
【0031】
本実施例に係る壁材用組成物は、天然素材だけで構成されている。このため、本実施例に係る壁材用組成物から上記の化学物質が放出されることはない。また、本実施例に係る壁材用組成物の原材料の1つのである珪藻土は、吸収性に優れている。これらの2つの効果が合わさった結果、上表のような良好な結果が得られたと考えられる。
【0032】
以上、本発明に係る壁材用組成物の実施例について説明してきたが、本発明の構成は上記の構成に限定されるものではなく、種々の変形例が考えられることは言うまでもない。