【課題】特に大型の電動弁において、弁体が軸方向に直線的に移動するにあたり、弁体を可及的に軸方向に直線運動のみを行わせることができ、ひいてはシール部材による過度の摺動抵抗を抑制することができる電動弁を提供する。
【解決手段】弁ポート13の圧力を背圧室68に導いて背圧室68側からも弁体17に圧力を作用させる電動弁2であって、雌ネジ部材6dと弁体17との間を相対的に回転可能に構成するとともに、弁ガイド18と前記弁体17との間を相対的に回転可能に構成したことを特徴としている。
ロータ(4)の回転運動を、雄ネジ部材(41)と雌ネジ部材(6)とのネジ結合(A)により直線運動に変換し、この直線運動に基いて弁本体(30)内に収容された弁体(17)を軸方向に移動させるとともに、
前記弁体(17)または前記弁本体(30)に圧力の導入孔を設け、この圧力の導入孔により、前記弁体(17)の上方側に設けた背圧室(68)に、弁ポート(13)内の圧力を導入し、
前記雄ネジ部材(41)と前記弁体(17)との間に筒状の弁ガイド(18)を装着し、さらに、前記筒状の弁ガイド(18)の内周面と前記弁体(17)の外周面との間にシール部材(48)を装着し、このシール部材(48)により前記弁体(17)の下方側の空間と前記弁体(17)の上方側の空間とを気密に分離した電動弁(2)であって、
前記雄ネジ部材(41)と前記弁ガイド(18)との間を相対的に回転可能に構成するとともに、前記弁ガイド(18)と前記弁体(17)との間を相対的に回転可能に構成したことを特徴とする電動弁。
前記雄ネジ部材(41)と前記弁ガイド(18)との間に第1の摺動部材(70)を介装し、前記弁体(17)と前記弁ガイド(18)との間に第2の摺動部材(90)を介装し、
前記第1の摺動部材(70)に生じる摩擦抵抗力をμ1、前記第2の摺動部材(90)に生じる摩擦抵抗力をμ2としたとき、μ1とμ2との関係を、
μ1>μ2
となるように設定したことを特徴とする請求項1に記載の電動弁。
【背景技術】
【0002】
大型のパッケージエアコンや冷凍機に用いられる電動弁には、流量制御用として複数使用されていた電動弁を1つにまとめるなどの制御機器合理化等の背景から、大口径かつ高圧力差が生じた際にも良好な作動性を持つ性能が望まれている。
【0003】
しかし、比較的大口径の電動弁は、マグネットのトルクにより発生するねじの推力に対し差圧によって発生する弁体への負荷が大きく、弁体の作動性において懸念がある。
そこで、例えば、
図3に示す従来の電動弁1では、開弁動作を行う際に弁体31を引き上げるための棒状の部材(連結金具34)の外周面にシール機能を備えたシール部材37を介装し、このシール機能を備えたシール部材37により、弁室10A内に背圧室25を画成し、この背圧室25内の背圧を利用することで、弁体31の正面側と背面側とに等しい圧力を均等に作用させ、これにより上記の差圧力をキャンセルし、弁体31に対する負荷を小さくしている。
【0004】
ところで、弁体31の作動性を良好にするには、弁体31が軸方向に直線的に移動する際に、弁体31が回転運動を伴わないことが望ましい。
従来の電動弁1では、スリーブ50の下端部51aが連結金具34のバネ受け部35に一体的に結合されているため、弁体31の開閉を行うため弁体31が軸方向に直線的な移動を行うときに、弁軸ホルダ50の下端部51aが回転すると、連結金具34も一体的に回転し、さらには弁体31もスリーブ50とともに回転してしまうことになる。そのため、弁体31が回転運動を伴ってしまうと、シール部材37に過度の摺動抵抗が作用してしまい、弁体31の作動性に大きな影響がある。また、シール部材37に過度の負荷がかかり摩耗が促進されてしまうという問題もあった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、このような従来の実情に鑑み、特に大型の電動弁において、弁体が軸方向に直線的に移動するにあたり、弁体を可及的に軸方向に直線運動のみを行わせることができ、ひいてはシール部材による過度の摺動抵抗を抑制することができる電動弁を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための本発明に係る電動弁は、
ロータ4の回転運動を、雄ネジ部材41と雌ネジ部材6とのネジ結合Aにより直線運動に変換し、この直線運動に基いて弁本体30内に収容された弁体17を軸方向に移動させるとともに、
前記弁体17または前記弁本体30に所定の圧力導入孔を設け、この圧力導入孔により、前記弁体17の上方側に設けた背圧室68に、弁ポート13内の圧力を導入し、
前記雄ネジ部材41と前記弁体17との間に筒状の弁ガイド18を装着し、さらに、前記筒状の弁ガイド18の内周面と前記弁体17の外周面との間にシール部材48を装着し、このシール部材48により前記弁体17の下方側の空間と前記弁体17の上方側の空間とを気密に分離した電動弁であって、
前記雄ネジ部材41と前記弁ガイド18との間を相対的に回転可能に構成するとともに、前記弁ガイド18と前記弁体17との間を相対的に回転可能に構成したことを特徴としている。
【0008】
ここで、本発明は、
前記雄ネジ部材41と前記弁ガイド18との間に第1の摺動部材70を介装し、前記弁体17と前記弁ガイド18との間に第2の摺動部材90を介装し、
前記第1の摺動部材70に生じる摩擦抵抗力をμ1、前記第2の摺動部材90に生じる摩擦抵抗力をμ2としたとき、μ1とμ2との関係を、
μ1>μ2
となるように設定することが好ましい。
【0009】
さらに、本発明では、
前記弁体17と前記弁本体30との間にシール部材48を介装し、
前記シール部材48に生じる摩擦抵抗力をμ3としたとき、μ1とμ2とμ3との関係を、
μ3>μ1>μ2
となるように設定することが好ましい。
このような電動弁であれば、弁体を軸方向に移動させる際に可及的に直線運動のみとすることができる。
【0010】
さらに、本発明では、
前記第1の摺動部材70と前記第2の摺動部材90とを、それぞれ平板状のワッシャ部材より構成し、
前記第1の摺動部材70に生じる摩擦抵抗力μ1と、前記第2の摺動部材90に生じる摩擦抵抗力μ2とは、前記第1の摺動部材70の摺動面積S1と、前記第2の摺動部材90の摺動面積S2により設定することが好ましい。
また、本発明では、前記シール部材48がOリングであることが好ましい。
このような構成の本発明によれば、摺動部材の構成が容易である。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る電動弁によれば、特に大型の電動弁であっても、弁体を回転させることなく軸方向への直線的な移動のみを行わせることができ、ひいてはシール部材による過度の摺動抵抗を抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、図面を参照しながら、本発明の好ましい実施形態(実施例)について説明する。
図1は、本発明の一実施例に係る電動弁2を示したもので、
図2(A)は
図1の要部を拡大して示したものである。
なお、本明細書において、「上」あるいは「下」とは
図1の状態で規定したものである。すなわち、ロータ4は弁体17より上方に位置している。
【0014】
この電動弁2では、非磁性体製で筒状のカップ形状をなすケース60の開口側の下端部に、弁本体30が溶接などにより一体的に接続されている。
弁本体30は、ステンレス鋼板のプレス加工により製作されたプレス成形品であり、内部に弁室11を有している。弁本体30には、弁室11に連通する銅製の第1の管継手12と、弁ポート13を介して弁室11に連通する銅製の第2の管継手15とが、各々溶接、ろう付け等によって固定装着されている。なお、弁ポート13は、
図1のように弁本体30に直接形成されていることに限定されない。例えば、弁ポート13が形成された弁座形成部材を別部材で用意し、この弁座形成部材を弁本体30内に組み込んでも良い。
【0015】
ケース60の内周には、回転可能なロータ4が収容され、ロータ4の軸芯部分には、ブッシュ部材33を介して弁軸41が配置されている。ブッシュ部材33で結合されたロータ4と弁軸41は、回転しながら上下方向に一体的に移動する。なお、この弁軸41の中間部付近の外周面には雄ネジ41aが形成されている。また、弁軸41は本実施例における雄ネジ部材を構成している。
【0016】
ケース60の外周には、図示しないヨーク、ボビン、およびコイルなどからなるステータが配置され、ロータ4とステータとでステッピングモータが構成されている。
ケース60の天井面にはガイド支持体52が固定されている。ガイド支持体52は、円筒部53と、円筒部53の上端側に形成された傘状部54とを有し、全体をプレス加工により一体成形されている。傘状部54はケース60の頂部内側と略同形状に成形されている。
【0017】
ガイド支持体52の円筒部53はロータ4と同芯状態でケース60の天井部中央より軸方向に垂下して設置されている。また、円筒部53の下端部には、位置決め孔57がプレス成形され、位置決め孔57の奥部には切起こし片58が具備されている。
【0018】
ガイド支持体52の円筒部53には、この円筒部53の外周を取り巻くように、ばね性を有する線材によりコイルばね状に形成された螺旋ガイド59が設けられている。螺旋ガイド59は、その下端部に軸方向に延長されたストッパ部62を有している。
【0019】
この螺旋ガイド59は上端側にてガイド支持体52の途中に形成された弁開ストッパ突起部56に当接し、下端部のストッパ部62が位置決め孔57に挿入嵌合し、ストッパ部62の先端が螺旋ガイド59の弾性力によって切起こし片58に突き当っている。
【0020】
これにより、螺旋ガイド59は、軸方向のばね荷重によって弁開ストッパ突起部56と位置決め孔57との間に挟まれ、がたつきを有することなく取付位置が決められている。
螺旋ガイド59には可動ストッパ部材63が回転可能に係合している。可動ストッパ部材63は、1巻コイルばね状に形状されている。
【0021】
可動ストッパ部材63は、ロータ4の回転によって蹴り回されることにより、回転しつつ螺旋ガイド59に案内されて螺旋運動を行い、螺旋ガイド59の軸方向に移動する。可動ストッパ部材63が螺旋ガイド59のストッパ部62に突き当ることにより、それ以上の下方向へ進む左回転が止められ、弁閉基準で、ロータ4の原点位置を機械的に設定する。また、可動ストッパ部材63が弁開ストッパ突起部56に当接することにより、それ以上の上方向へ進む右回転が止められ、弁開(全開)位置を機械的に設定する。
【0022】
ガイド支持体52の円筒部53内には、弁軸41のガイドを兼ねる筒部材65が嵌合されている。筒部材65は、金属あるいは合成樹脂による潤滑材入り素材あるいは表面処理を施された部品により構成され、弁軸41を回転可能に保持している。
【0023】
以下に、弁軸41に結合されたブッシュ部材33より下方側の構成について説明する。
弁軸41のブッシュ部材33より下方には、弁軸41の傾きを抑制する弁軸ホルダ6が弁軸41に装着されている。
【0024】
上記弁軸ホルダ6は、上部側の筒状小径部6aと、下部側の筒状大径部6bと、弁本体30の内周部側に収容される嵌合部6cと、リング状のフランジ部6fとを有し、フランジ部6fが弁本体30の上部開口端に溶接などで固定されている。また、弁軸ホルダ6の内部には、貫通孔6hが形成されている。なお、嵌合部6cの下端部の形状は、
図1の形状に限定されず、例えば、筒状の弁ガイド18を案内する部分を、
図1よりさらに下方に長く延出させても良い。
【0025】
上記弁軸ホルダ6は、合成樹脂、例えば、射出成形性に優れたポリフェニレンサルファイド(Polyphenylenesulfide‐PPS)などにより一体成形されていることが好ましい。
また、この弁軸ホルダ6には、筒状小径部6aの上部開口部6gから所定の深さまで下方に向かって雌ネジ6dが形成されている。
【0026】
そして、弁軸41の外周に形成された雄ネジ41aと、弁軸ホルダ6の筒状小径部6aの内周に形成された雌ネジ6dとにより、ネジ結合Aが構成されている。
さらに、弁軸ホルダ6の筒状大径部6bの側面には、均圧孔51が穿設され、この均圧孔51により、弁軸ホルダ6の筒状大径部6b内に形成された弁軸ホルダ室83と、ロータ収容室67(第2の背圧室)との間が連通されている。
【0027】
また、弁軸41の下端側であって、かつ弁軸ホルダ6におけるフランジ部6fより下方の筒状大径部6b内には、筒状の弁ガイド18が弁軸ホルダ6の貫通孔6hに対して摺動可能に配置されている。この弁ガイド18の下端側は弁軸ホルダ6から一部突出して配置されている。この弁ガイド18は天井部21側がプレス成形により略直角に折り曲げられている。そして、この天井部21には貫通孔18aが形成されている。
【0028】
一方、弁ガイド18の底面部18cは、弁ガイド18の筒状本体部18bとは別体で形成されており、この筒状本体部18bは、後述するように、弁体17の上方凸部17dが弁ガイド18内に組み込まれた後に、筒状本体部18bに一体的に結合される。
【0029】
また、弁軸41の下端部には、鍔部41bが形成されている。
この弁軸41の鍔部41bが、弁ガイド18の貫通孔18aに遊嵌状態で、弁ガイド18に対して回転可能、かつ径方向に変位可能に嵌合している。さらに、鍔部41bが弁ガイド18の貫通孔18aより大径であることにより、弁軸41の抜け止めがなされている。
【0030】
弁軸41と弁ガイド18とが互いに径方向に移動可能であることにより、弁軸ホルダ6および弁軸41の配置位置に関して、さほど高度な同芯取付精度を求められることなく、弁ガイド18および弁体17との同芯性を得ることができる。
【0031】
弁ガイド18の天井部21と弁軸41の鍔部41bとの間には、本実施例の第1の摺動部材としてワッシャ70が設置されている。ワッシャ70は高滑性表面の金属製ワッシャ、フッ素樹脂等の高滑性樹脂ワッシャあるいは高滑性樹脂コーティングの金属製ワッシャなどであることが好ましい。ワッシャ70の中央部には貫通孔70aが形成され、この貫通孔70aに弁軸41の鍔部41bが、遊嵌合状態で、弁ガイド18に対して回転可能、且つ径方向に変位可能に貫通されている。
【0032】
一方、弁ガイド18に上部側が支持される長尺の弁体17は、
図2に拡大して示したように、環状溝部17eが形成された上方凸部17dと、上方凸部17dの下方に連続して形成された胴部17gと、胴部17gの下方に連続して形成された弁部17fとから構成されている。
【0033】
そして、弁体17と弁ガイド18と弁軸41との取り付けに関しては、先ず、弁軸41の鍔部41bの上にワッシャ70を装着する。その後、弁体17の上方凸部17dに、弁ガイド18の底面部18cを遊嵌状態で装着し、さらに底面部18cの上方に本実施例の第2の摺動部材としての他のワッシャ90を装着し、さらに、上方凸部17dの上方にナット形状のバネ受け鍔部17hを装着し、しかる後、ナット状のバネ受け鍔部17hと上方凸部17dとを一体化させる。その後、弁ガイド18の内方に、弁バネ27とバネ受け35とを収容する。そして、弁ガイド18の底面部18cと、弁ガイド18の筒状部分18bとが溶接などにより一体化されている。
【0034】
長尺の弁体17の最下方に形成された弁部17fには、弁体17の上方側(背面側)に背圧を導くためにテーパ孔17aが形成され、さらに縦方向の直状孔17bが形成され、さらに、この直状孔17bを横断するように横方向の導入孔17cが形成されている。なお、この横方向の導入孔17cの数は限定されないが、2個以上、周方向に略等間隔で形成されていることが好ましい。
【0035】
本実施例では、弁体17に所定数の導入孔17cが設けられることにより、弁体17の背面側に設けられた第1の背圧室68に、弁ポート13(第2の管継手15内)の圧力を導いている。
また、弁本体30の内周側には、この弁本体30とは別体で形成された略漏斗状の弁体案内部30aが付設されており、弁体17は、この弁体案内部30aに沿って軸方向に案内される。
【0036】
上記のように、弁体17にテーパ孔17a、直状孔17b、横方向の導入孔17cが連続して形成されることにより、本実施例の電動弁2では、弁体17の正面側の圧力と、背面側に画成された第1の背圧室68内の圧力とを均等にさせることができる。これにより、弁体17の移動動作をスムーズに行うことができる。
【0037】
また、本実施例では、この弁体案内部30aと弁体17の外周面との間に、シール部材48が介装されている。本実施例では、シール部材48としてOリングが採用されている。しかしながら、このシール部材48は、Oリングに限定されない。
【0038】
本実施例では、このようなシール部材48が、弁体案内部30aと弁体17の弁部17fとの間に介装されることにより、第1の背圧室68の気密性を確保することができる。
以下に、本実施例の要部について説明する。
【0039】
本実施例では、弁体17の上方凸部17dの環状溝部17e内に、第2の摺動部材としてワッシャ90が収容されている。この第2の摺動部材としてのワッシャ90は、第1の摺動部材としてのワッシャ70と同材質であっても良い。しかしながら、第1の摺動部材(ワッシャ70)に生じる摺動抵抗力をμ1、第2の摺動部材(ワッシャ90)に生じる摺動抵抗力をμ2としたとき、μ1>μ2であるように設定することが望ましい。
【0040】
このように、μ1>μ2の関係を設定するには、第1の摺動部材(ワッシャ70)と第2の摺動部材(ワッシャ90)を同材質とした場合、
図2(B)に示したように第1の摺動部材(ワッシャ70)の摺動面積をS1、
図2(C)に示したように第2の摺動部材(ワッシャ90)の摺動面積をS2としたとき、S1>S2となるように設定すれば、μ1>μ2との関係を容易に設定することができる。
【0041】
さらに、本実施例の電動弁2では、弁体17の弁部17fの外周面に装着されたシール部材48に生じる摺動抵抗力をμ3としたとき、μ3とμ2とμ1との関係が、
μ3>μ1>μ2となるように設定されている。
【0042】
μ3とμ2とμ1との関係を上記のように設定することにより、弁軸41と弁ガイド18との間で、弁ガイド18に回転させようとする力が若干作用するとしても、弁体17は回転することなく、軸方向にのみ直線的に移動(直動)させることができる。
【0043】
また、本実施例では、μ2が、μ1とμ3に比べて最も小さいことから、第2の摺動部材としてのワッシャ90を、軸方向上部と軸方向下部との間において、クラッチとして機能させることができる。また、摩擦抵抗力の最も大きいμ3により、弁体17の弁部17fが、弁ガイド18の内周面に密に係合しているので、弁ガイド18が回転する場合であっても、軸方向下部の弁体17が回転することがない。したがって、弁ガイド18が回転する場合であっても、弁体17を軸方向にのみ直線的に移動させることができる。
【0044】
以下に、電動弁2の作用について説明するが、以下の説明では、発明の理解を容易にするため、弁ガイド18内のバネ受け35の頭部に設けられた半球状当接部35aと弁軸35の下端部との間に生じる摩擦抵抗力は無視する。
【0045】
上述の構成による電動弁2は、ステッピングモータに駆動パルス信号が与えられることにより、パルス数に応じてロータ4が回転し、これに伴い弁軸41が回転し、弁軸41の雄ネジ41aと固定配置の弁軸ホルダ6の雌ネジ6dからなるネジ結合Aにより、弁軸41が回転しつつ軸方向に移動する。
【0046】
弁軸41の上昇移動(弁開方向移動)は、バネ受け35、弁軸41の鍔部41b、第1の摺動部材としてのワッシャ70、天井部21の当接によって弁ガイド18に伝達され、弁ガイド18および弁体17が上昇移動する。すなわち、弁軸41(雄ネジ部材41)と弁ガイド18とは、ワッシャ70により相対的に回転可能であるが、弁開方向移動時には、弁軸41の回転運動は、ワッシャ70により弁ガイド18に伝達させることが防止されている。これにより、弁軸41は、ワッシャ70によって弁ガイド18に対して低摩擦で相対的に滑り回転できる。
【0047】
弁軸41の上昇移動において、弁ガイド18内では、弁体17の上方凸部17dが弁ガイド18の底面部18cとの間で回転方向の摩擦抵抗力μ2を受けて上方に移動するが、μ2はμ1に比べて小さいため、仮に弁ガイド18が弁軸41から回転力を受けて、弁ガイド18が回転する場合であっても、弁体17の上方凸部17dは回転することがない。
【0048】
さらに、本実施例では、弁軸41の上昇移動において、弁体17は、上述したμ1、μ2に比べて最も大きい摩擦抵抗力μ3を有するシール部材48によって、弁本体30の内側筒状部30bに案内されるので、弁体17が回転してしまうことはない。これにより、弁軸41を上方に移動させる際に、弁体17を直動のみを行わせることができる。
【0049】
弁軸41の降下移動(弁閉方向移動)も、バネ受け35、鍔部41b、ワッシャ70、天井部21、弁バネ27の当たりによって、弁軸41の回転しながらの直線運動が弁ガイド18に伝えられ、弁ガイド18および弁体17が降下移動する。このとき、弁軸41から回転しながらの直線運動力を弁ガイド18が受けるとしても、弁ガイド18と弁体17との間に、上述のμ1より小さい摩擦抵抗力μ2を有するワッシャ90が介在されているために、弁ガイド18が回転することが可及的に防止される。
すなわち、弁体17は、弁閉方向移動において、回転することなく軸方向に案内される。
【0050】
以上、説明したように、本発明の一実施例に係る電動弁では、第1の摺動部材としてのワッシャ70を、弁軸41と弁ガイド18との間に介在されることにより、弁軸41の上昇移動時に、弁体17と弁ガイド18とを、弁軸41に対してスラスト摺動させながら、上方に吊りあげることができる。
【0051】
以上、本発明の一実施例について説明したが、本発明は、上記実施例に何ら限定されない。
例えば、上記実施例では、ステッピングモータでロータ4が回転する電動弁に適応した例を示したが、本発明は、他の手段で駆動される弁にも適用可能である。
【0052】
また、上記実施例では、弁体17に形成した横方向の導入孔17cにより、弁ポート13内の圧力を第1の背圧室68に導入しているが、本発明はこれに限定されず、例えば、弁本体30の壁面内に導入路を形成し、この導入路により、弁ポート13と背圧室68との間を連通させることもできる。