特開2016-166257(P2016-166257A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2016-166257(P2016-166257A)
(43)【公開日】2016年9月15日
(54)【発明の名称】セルロース系ポリマーの保管方法
(51)【国際特許分類】
   C08J 3/00 20060101AFI20160819BHJP
   B65D 81/26 20060101ALI20160819BHJP
【FI】
   C08J3/00CEP
   B65D81/26 S
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【全頁数】5
(21)【出願番号】特願2015-45405(P2015-45405)
(22)【出願日】2015年3月9日
(71)【出願人】
【識別番号】000183484
【氏名又は名称】日本製紙株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126169
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 淳子
(74)【代理人】
【識別番号】100130812
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 淳
(72)【発明者】
【氏名】井上 一彦
【テーマコード(参考)】
3E067
4F070
【Fターム(参考)】
3E067AA05
3E067AB99
3E067BA12A
3E067BB12A
3E067BB14A
3E067CA06
3E067FA01
3E067FB11
3E067GA19
3E067GB13
3E067GD01
4F070AA02
4F070BA10
4F070BB03
(57)【要約】
【課題】
本発明は、保管直後のセルロース系ポリマーの粉末を水に溶解した溶液の粘度と比較して、長期保管後(一か月程度)のセルロース系ポリマーの粉末を水に溶解した溶液の粘度低下を抑制するセルロース系ポリマーの保管方法を提供することを目的とする。
【解決手段】
酸素濃度を0.5%以下に調整したガスバリアー性を有する包装袋内でセルロース系ポリマーを保管するに際し、前記包装袋が酸素吸収剤を包含していることを特徴とするセルロース系ポリマーの保管方法。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸素濃度を0.5%以下に調整したガスバリアー性を有する包装袋内でセルロース系ポリマーを保管するに際し、前記包装袋が酸素吸収剤を包含していることを特徴とするセルロース系ポリマーの保管方法。
【請求項2】
前記セルロース系ポリマーがカルボキシメチルセルロースであることを特徴とする請求項1に記載のセルロース系ポリマーの保管方法。
【請求項3】
前記包装袋がエチレン−ビニルアルコール共重合体によりガスバリアー性を付与されていることを特徴とする請求項1〜請求項2のいずれかに記載のセルロース系ポリマーの保管方法。
【請求項4】
前記セルロース系ポリマーを60℃の雰囲気化で30日間保管した際の粘度変化率が−10%以上であることを特徴とする請求項1〜3記載のいずれかに記載のセルロース系ポリマーの保管方法。
粘度変化率=〔(粘度2−粘度1)/粘度1〕×100 (%)
粘度1:経過日数0日(包装前)のセルロース系ポリマーの1%水溶液粘度
粘度2:包装後60℃で保管したセルロース系ポリマーの1%水溶液粘度
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はセルロース系ポリマーの保管方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースなどのセルロース由来のポリマーはその安全性の高さから、医療、食品などの様々な分野に利用されている。例えば、カルボキシメチルセルロースはアイスクリームなどの食品の増粘剤や乳化安定剤に使用されているとともに、歯磨剤、下剤、ダイエット用錠剤、水性インク、界面活性剤、紙製品などの非食品製品にも使用されている。
【0003】
従来から、セルロース系ポリマーは粉末状態で保管されることが一般的であるが、長期間保管したセルロース系ポリマーの粉末を水に溶解した溶液の粘度は、保管直後のセルロース系ポリマーの粉末を水に溶解した溶液の粘度と比較して、大きく低下する。このため、セルロース系ポリマーは粘度調整剤としての役割を果たせなくなってしまうという問題があった。
【0004】
この問題に対しては、セルロース系ポリマーをエチレン−ビニルアルコール共重合体によりガスバリアー性を付与された包装袋を用いて、セルロース系ポリマーを酸素濃度が0.3%以下で保存する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2012−121957
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1のセルロース系ポリマーの保存方法を用いることにより、セルロース系ポリマーの粘度低下を抑制する効果があるものの、更なる粘度低下を抑制の向上が要求されてきている。
【0007】
そこで、本発明は、保管直後のセルロース系ポリマーの粉末を水に溶解した溶液の粘度と比較して、長期保管後(一か月程度)のセルロース系ポリマーの粉末を水に溶解した溶液の粘度低下を抑制するセルロース系ポリマーの保管方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、[1]〜[4]を提供する。
[1] 酸素濃度を0.5%以下に調整したガスバリアー性を有する包装袋内でセルロース系ポリマーを保管するに際し、前記包装袋が酸素吸収剤を包含していることを特徴とするセルロース系ポリマーの保管方法。
[2] 前記セルロース系ポリマーがカルボキシメチルセルロースであることを特徴とする[1]のいずれかかに記載のセルロース系ポリマーの保管方法。
[3] 前記包装袋がエチレン−ビニルアルコール共重合体によりガスバリアー性を付与されていることを特徴とする[1]〜[2]のいずれかかに記載のセルロース系ポリマーの保管方法。
[4] 前記セルロース系ポリマーを60℃の雰囲気化で30日間保管した際の粘度変化率が−10%以上であることを特徴とする[1]〜[3]記載のいずれかに記載のセルロース系ポリマーの保管方法。
粘度変化率=〔(粘度2−粘度1)/粘度1〕×100 (%)
粘度1:経過日数0日(包装前)のセルロース系ポリマーの1%水溶液粘度
粘度2:包装後60℃で保管したセルロース系ポリマーの1%水溶液粘度
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、保管直後のセルロース系ポリマーの粉末を水に溶解した溶液の粘度と比較して、長期保管後(一か月程度)のセルロース系ポリマーの粉末を水に溶解した溶液の粘度低下を抑制するセルロース系ポリマーの保管方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明において、セルロース系ポリマーとはセルロース由来の化合物であれば特に限定されるものではないがヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等が挙げられ、特にカルボキシメチルセルロースにおいて水溶液の粘度低下を防止することができる。
【0011】
本発明において、セルロース系ポリマーを酸素濃度0.5%以下、より好ましくは酸素濃度0.3%の雰囲気下、さらに好ましくは0.2%の雰囲気下で保管することが必要である。なお、酸素濃度は、残存酸素計(飯島電子工業株式会社)を用いて測定した値である。
【0012】
本発明において、セルロース系ポリマーを保管する雰囲気の酸素濃度を0.5%以下にする方法は特に限定されものではないが、例えば、ガスバリアー性を有する包装袋にセルロース系ポリマーを入れ、1)包装袋内を真空にする方法、2)包装袋内を窒素置換する方法、3)包装袋内を真空にした後、窒素置換する方法、4)包装袋内に酸素吸収剤を同封する方法等が挙げられる。
【0013】
これらの方法の中では、包装袋内を真空にした後、窒素置換する方法が好ましい。この方法を用いることで、カルボキシメチルセルロースが凝集することを防止することができる。
【0014】
本発明においてセルロース系ポリマーの包装袋は、アルミ包材、ポリアクリロニトリル、ポリビニルアルコール、エチレン−ビニルアルコール共重合体などにより、ガスバリアー性を付与した包装袋を使用することが好ましく、特に、酸素バリア性に優れるエチレン−ビニルアルコール共重合体によりガスバリアー性を付与した包装袋を使用することが好ましい。
【0015】
本発明において、上記包装体に含油させる酸素吸収剤としては、エージレス(三菱ガス化学社製)、ウエルパック(タイセイ社製)、エバーフレッシュ(鳥繁産業社製)、オキシーター(上野製薬社製)、キーピット(ドレンシー社製)、ケプロン(ケプロン社製)、サンソカット(アイリス・ファインプロダクツ社製)、サンソレス(博洋社製)、セキュール(ニッソーファイン社製)、タモツ(大江化学工業社製)、バイタロン(常盤産業社製)、モデュラン(日本化学フードテクノ社製)、ワンダーキープ(パウダーテック社製)、鮮度保持剤C(凸版印刷社製)などがある。
【実施例】
【0016】
[実施例1]
カルボキシメチルセルロース及び酸素吸収剤(商品名:エージレスZ−2000PKC、三菱ガス化学社製)を入れたエチレン―ビニルアルコール共重合体ラミネート加工を施した包装袋を、真空脱気した後、窒素ガスを注入し、包装袋内の酸素濃度0.4%に調整した。このカルボキシメチルセルロースを入れた包装袋は60℃の乾燥機中に保管した。
【0017】
[比較例1]
真空脱気、窒素ガス注入を行わなかった以外は実施例1と同様にしてカルボキシメチルセルロースを保管した。
【0018】
[比較例2]
酸素吸収剤を使用しなかった以外は実施例1と同様にしてカルボキシメチルセルロースを保管した。
【0019】
[比較例3]
酸素吸収剤を使用しなかった以外は比較例1と同様にしてカルボキシメチルセルロースを保管した。
【0020】
実施例1、比較例1〜3のカルボキシメチルセルロースの保管前、及び保管後、5日、11日、26日の1%水溶液粘度を測定した。
【0021】
<水分>
試料1〜2gを秤量瓶にはかりとり、105℃の乾燥機中において3時間乾燥し、デシケーター中に冷却した後、蓋をして重さをはかり、その減量から次式(1)により水分を算出する。
水分(%)=(減量(g)/試料(g))×100・・・(1)
【0022】
<水溶液の調整>
試料約10gを上皿天秤で採取する。その試料を純水880ml入りのビーカーに溶解用攪拌機を使用し、攪拌しながら徐々に試料を投入して3時間攪拌する。水分値から計算した純水を濃度が1%になるように補正する。
<粘度測定>
3時間攪拌後(完全溶解確認)、溶液の温度を25±0.2℃に調整する。B型粘度計を用い、粘度を測定する。測定値はローターを始動してから3分後の目盛りを読み取る。
【0023】
[粘度変化率]
経過日数0日(包装前)のセルロース系ポリマーの1%水溶液粘度(粘度1)に対する、包装後60℃で保管(5、11、30日)したセルロース系ポリマーの1%水溶液粘度(粘度2)粘度の変化率は次式(2)により算出する。
〔(粘度2−粘度1)/粘度1〕×100 (%)・・・(2)
【0024】
[結果及び考察]
結果を表1に示す。
【0025】
【表1】