【発明の効果】
【0009】
本発明のポリエステル樹脂組成物は、優れた機械物性、流動性を維持しながら、優れた難燃性と耐光性と高い白色度を併せ有し、さらに耐トラッキング性にも優れる。このため、特に照明機器等の白色度の要求される各種家電製品の部品として特に好適に使用できる。
【0010】
本発明のポリエステル樹脂組成物は、上記したように、熱可塑性ポリエステル樹脂(A)100質量部に対し、臭素化フタルイミド系難燃剤(B)を3〜60質量部、アンチモン化合物(C)を1〜20質量部および群青(D)0.005〜1質量部含有することを特徴とする。
【0011】
以下、本発明の内容について詳細に説明する。
以下に記載する各構成要件の説明は、本発明の代表的な実施態様や具体例に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施態様や具体例に限定して解釈されるものではない。なお、本願明細書において、「〜」とはその前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用される。
【0012】
[熱可塑性ポリエステル樹脂(A)]
本発明のポリエステル樹脂組成物の主成分である熱可塑性ポリエステル樹脂(A)とは、ジカルボン酸化合物とジヒドロキシ化合物の重縮合、オキシカルボン酸化合物の重縮合あるいはこれらの化合物の重縮合等によって得られるポリエステルであり、ホモポリエステル、コポリエステルの何れであってもよい。
【0013】
熱可塑性ポリエステル樹脂(A)を構成するジカルボン酸化合物としては、芳香族ジカルボン酸又はそのエステル形成性誘導体が好ましく使用される。
芳香族ジカルボン酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸、オルトフタル酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、2,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、ビフェニル−2,2’−ジカルボン酸、ビフェニル−3,3’−ジカルボン酸、ビフェニル−4,4’−ジカルボン酸、ジフェニルエーテル−4,4’−ジカルボン酸、ジフェニルメタン−4,4’−ジカルボン酸、ジフェニルスルフォン−4,4’−ジカルボン酸、ジフェニルイソプロピリデン−4,4’−ジカルボン酸、1,2−ビス(フェノキシ)エタン−4,4’−ジカルボン酸、アントラセン−2,5−ジカルボン酸、アントラセン−2,6−ジカルボン酸、p−ターフェニレン−4,4’−ジカルボン酸、ピリジン−2,5−ジカルボン酸等が挙げられ、テレフタル酸が好ましく使用できる。
【0014】
これらの芳香族ジカルボン酸は2種以上を混合して使用しても良い。これらは周知のように、遊離酸以外にジメチルエステル等のエステル形成性誘導体として重縮合反応に用いることができる。
なお、少量であればこれらの芳香族ジカルボン酸と共にアジピン酸、アゼライン酸、ドデカンジオン酸、セバシン酸等の脂肪族ジカルボン酸や、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸および1,4−シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環式ジカルボン酸を1種以上混合して使用することができる。
【0015】
熱可塑性ポリエステル樹脂(A)を構成するジヒドロキシ化合物としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、へキシレングリコール、ネオペンチルグリコール、2−メチルプロパン−1,3−ジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール等の脂肪族ジオール、シクロヘキサン−1,4−ジメタノール等の脂環式ジオール等、およびそれらの混合物等が挙げられる。なお、少量であれば、分子量400〜6,000の長鎖ジオール、すなわち、ポリエチレングリコール、ポリ−1,3−プロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等を1種以上共重合せしめてもよい。
また、ハイドロキノン、レゾルシン、ナフタレンジオール、ジヒドロキシジフェニルエーテル、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン等の芳香族ジオールも用いることができる。
【0016】
また、上記のような二官能性モノマー以外に、分岐構造を導入するためトリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン等の三官能性モノマーや分子量調節のため脂肪酸等の単官能性化合物を少量併用することもできる。
【0017】
熱可塑性ポリエステル樹脂(A)としては、通常は主としてジカルボン酸とジオールとの重縮合からなるもの、即ち樹脂全体の50質量%、好ましくは70質量%以上がこの重縮合物からなるものを用いる。ジカルボン酸としては芳香族カルボン酸が好ましく、ジオールとしては脂肪族ジオールが好ましい。
【0018】
なかでも好ましいのは、酸性分の95質量%以上がテレフタル酸であり、アルコール成分の95質量%以上が脂肪族ジオールであるポリアルキレンテレフタレートである。その代表的なものはポリブチレンテレフタレート及びポリエチレンテレフタレートである。これらはホモポリエステルに近いもの、即ち樹脂全体の95質量%以上が、テレフタル酸成分及び1,4−ブタンジオール又はエチレングリコール成分からなるものであるのが好ましく、ポリブチレンテレフタレート及びポリエチレンテレフタレートのホモポリマーであるものがより好ましい。
【0019】
本発明の熱可塑性ポリエステル樹脂(A)は、ポリエステル樹脂中の好ましくは50質量%以上が、より好ましくは70質量%以上が、さらに好ましくは80質量%以上が、特に好ましくは90質量%以上がポリブチレンテレフタレートであることが好ましく、熱可塑性ポリエステルの全量がポリブチレンテレフタレート樹脂であることが最も好ましい。
【0020】
また、熱可塑性ポリエステル樹脂(A)として好ましく用いられるポリブチレンテレフタレート樹脂はホモポリマーであることが好ましいが、イソフタル酸、ダイマー酸、ポリテトラメチレングリコール(PTMG)等のポリアルキレングリコール等が共重合された変性ポリブチレンテレフタレート樹脂であってもよい。
【0021】
変性ポリブチレンテレフタレート樹脂として、イソフタル酸共重合ポリブチレンテレフタレート樹脂を用いる場合は、全カルボン酸成分に占めるイソフタル酸成分の割合は、カルボン酸基として1〜30モル%であることが好ましく、2〜20モル%がより好ましく、3〜15モル%がさらに好ましい。このような共重合割合とすることにより、耐熱性、射出成形性及び靭性のバランスに優れる傾向となり好ましい。
変性ポリブチレンテレフタレート樹脂として、ポリテトラメチレングリコールを共重合したポリエステルエーテル樹脂を用いる場合は、共重合体中のテトラメチレングリコール成分の割合は3〜40質量%であることが好ましく、5〜30質量%がより好ましく、10〜25質量%がさらに好ましい。このような共重合割合とすることにより、靱性に優れる傾向となり好ましい。
変性ポリブチレンテレフタレート樹脂として、ダイマー酸共重合ポリブチレンテレフタレート樹脂を用いる場合は、全カルボン酸成分に占めるダイマー酸成分の割合は、カルボン酸基として0.5〜30モル%であることが好ましく、1〜20モル%がより好ましく、3〜15モル%がさらに好ましい。このような共重合割合とすることにより、長期耐熱性及び靭性のバランスに優れる傾向となり好ましい。
【0022】
上記した変性ポリブチレンテレフタレート樹脂の中でも、ポリテトラメチレングリコールを共重合したポリエステルエーテル樹脂、イソフタル酸共重合ポリブチレンテレフタレート樹脂が好ましい。
【0023】
このような変性ポリブチレンテレフタレート樹脂を使用する場合は、ポリブチレンテレフタレートホモポリマーと併用することが好ましい。この場合、ポリブチレンテレフタレート樹脂と変性ポリブチレンテレフタレート樹脂との含有割合は、ポリブチレンテレフタレート樹脂と変性ポリブチレンテレフタレート樹脂の合計100質量%に対して、変性ポリブチレンテレフタレート樹脂が、好ましくは10〜70質量%であり、より好ましくは20〜65質量%であり、さらに好ましくは30〜60質量%である。変性ポリブチレンテレフタレート樹脂の含有量が10質量%未満であると、靱性が低下する傾向にあり、70質量%を超えると、成形性が著しく低下する場合があり好ましくない。
【0024】
熱可塑性ポリエステル樹脂(A)の固有粘度は、0.5〜2dl/gであるのが好ましい。成形性及び機械的特性の点からして、0.6〜1.5dl/gの範囲の固有粘度を有するものが好ましい。固有粘度が0.5dl/gより低いものを用いると、得られる樹脂組成物が機械物性の低いものとなりやすい。また2dl/gより高いものでは、樹脂組成物の流動性が悪くなり成形性が悪化する場合がある。
なお、熱可塑性ポリエステル樹脂の固有粘度は、テトラクロロエタンとフェノールとの1:1(質量比)の混合溶媒中、30℃で測定する値である。
【0025】
[臭素化フタルイミド系難燃剤(B)]
本発明のポリエステル樹脂組成物が含有する臭素化フタルイミド系難燃剤(B)としては、各種のものが使用できる。中でも、臭素化フタルイミド系難燃剤(B)としては、好ましくは、下記一般式(1)で示される臭素化フタルイミド化合物が挙げられる。
【0026】
【化1】
(式(1)中、Rは2価の有機基、iは1〜4の整数である。)
【0027】
一般式(1)中、Rは2価の有機基であるが、好ましくはアルキレン基、アリーレン基である。例えば、メチレン、エチレン、1,4−ブチレン、1,6−ヘキサメチレン、フェニレン、4,4’−メチレンジフェニレン、4,4’−オキシジフェニレン、キシリレン、テトラクロロキシリレン、テトラブロモキシリレン等が例示され、中でも低級アルキレン基が好ましく、エチレン、ブチレン、ヘキサメチレン基であることが好ましい。
【0028】
上記一般式(1)で示される臭素化フタルイミド系難燃剤としては、例えばN,N’−(ビステトラブロモフタルイミド)エタン、N,N’−(ビステトラブロモフタルイミド)プロパン、N,N’−(ビステトラブロモフタルイミド)ブタン、N,N’−(ビステトラブロモフタルイミド)ジエチルエーテル、N,N’−(ビステトラブロモフタルイミド)ジプロピルエーテル、N,N’−(ビステトラブロモフタルイミド)ジブチルエーテル、N’−(ビステトラブロモフタルイミド)ジフェニルスルホン、N,N’−(ビステトラブロモフタルイミド)ジフェニルケトン、N,N’−(ビステトラブロモフタルイミド)ジフェニルエーテル等が挙げられる。
【0029】
一般式(1)中でも、臭素化フタルイミド系難燃剤(B)としては、上記一般式(1)におけるRがエチレンでiが4である、N,N’−エチレンビス(テトラブロモフタルイミド)が最も好ましい。
【0030】
臭素化フタルイミド系難燃剤(B)は、臭素濃度が52〜75質量%であることが好ましく、56〜73質量%であることがより好ましく、57〜70質量%であることがさらに好ましい。臭素濃度をこのような範囲とすることにより、難燃性を良好に保つことが容易である。
【0031】
臭素化フタルイミド系難燃剤(B)は、加熱発生ガス量が300質量ppm以下であることが好ましく、200質量ppm以下がより好ましく、100質量ppm以下がさらに好ましく、50質量ppm以下が特に好ましく、30質量ppm以下が特に好ましい。加熱発生ガス量が300質量ppm以下であると、成形時の発生ガス量が少なく、また、耐光変色や金型汚染等の問題が発生し難い傾向となり好ましい。
なお、本発明における加熱発生ガス量は、サーマルデソープション(加熱脱離)システムを用い、温度270℃、10分加熱後に捕集されたガスを、ガスクロマトグラフ質量分析(GC−MS)装置に導入し、MSにより検出されたイオンの強度により定量された値である。
【0032】
また、臭素化フタルイミド系難燃剤(B)の遊離臭素含有量は、0.5質量%以下であることが好ましく、0.4質量%以下であることがより好ましく、0.3質量%以下であることがさらに好ましい。遊離臭素の含有量が0.5質量%を超えると、最終的に得られる樹脂組成物中の遊離臭素量が多くなり、樹脂組成物の処理時や成形時等の高温になる際に脱離し、樹脂組成物の耐熱変色性、色調及び耐光変色性を悪化させたり、成形時に金型等の金属腐食や金型汚染を引き起こす場合がある。また、遊離臭素の含有量を0質量%まで除去することは、経済性を度外視するような精製を必要とするので、含有量の下限は、通常0.001質量%であり、0.005質量%であることが好ましく、より好ましくは0.01質量%である。
【0033】
臭素化フタルイミド系難燃剤(B)中の塩素の含有量は、0.2質量%以下であることが好ましく、0.15質量%以下であることがより好ましく、0.08質量%以下であることがさらに好ましく、0.03質量%以下であることが特に好ましい。塩素含有量が0.2質量%を超えると、最終的に得られる樹脂組成物中の塩素含有量が多くなりすぎ、耐トラッキング性、靭性、耐金属腐食性、耐金型汚染性が悪くなる傾向にある。
【0034】
さらに、臭素化フタルイミド系難燃剤(B)中の硫黄の含有量は、0.1質量%以下であることが好ましく、0.05質量%以下であることがより好ましく、0.03質量%以下であることがさらに好ましい。硫黄の含有量が0.1質量%を超えると、最終的に得られる樹脂組成物中の硫黄含有量が多くなりすぎ、耐トラッキング性、耐金属腐食性、耐金型汚染性が悪くなる傾向にある。
【0035】
なお、臭素化フタルイミド系難燃剤(B)中の遊離臭素、塩素、硫黄の含有量は、燃焼イオンクロマトグラフィー法により測定することができる。具体的には、三菱化学アナリテック社製「AQF−100型」の自動試料燃焼装置を用い、アルゴン雰囲気下、270℃、10分の条件で臭素化フタルイミド系難燃剤(B)を加熱し、発生した臭素、塩素、硫黄の量を、日本ダイオネクス社製「ICS−90」を用いて定量することにより求めることができる。
【0036】
臭素化フタルイミド系難燃剤(B)の含有量は、熱可塑性ポリエステル樹脂(A)100質量部に対して、3〜60質量部である。含有量が3質量部未満であると充分な難燃効果が得られず、また、60質量部を超えると機械的強度や成形品外観が低下し、また、十分な白色度が得られない。臭素化フタルイミド系難燃剤(B)の好ましい含有量は、熱可塑性ポリエステル樹脂(A)100質量部に対し、5〜50質量部であり、より好ましくは8〜40質量部、特に好ましくは10〜30質量部である。
【0037】
[アンチモン化合物(C)]
本発明のポリエステル樹脂組成物は、アンチモン化合物(C)を含有する。
アンチモン化合物(C)としては、三酸化アンチモン(Sb
2O
3)、五酸化アンチモン(Sb
2O
5)、アンチモン酸ナトリウム等が挙げられる。これらの中では、特に、三酸化アンチモンが好ましい。
【0038】
アンチモン化合物(C)は、樹脂組成物中の臭素化フタルイミド系難燃剤(B)由来の臭素原子と、アンチモン化合物由来のアンチモン原子の質量濃度が、両者の合計で3〜25質量%であることが好ましく、4〜22質量%であることがより好ましく、10〜20質量%であることがさらに好ましい。3質量%未満であると難燃性が低下する傾向にあり、25質量%を超えると機械的強度が低下する傾向にある。また、樹脂組成物中の臭素原子とアンチモン原子の質量比(Br/Sb)は、0.3〜5であることが好ましく、0.3〜4であることがより好ましい。このような範囲とすることにより、難燃性が発現しやすい傾向にあり好ましい。
【0039】
アンチモン化合物(C)の含有量は、熱可塑性ポリエステル樹脂(A)100質量部に対して、1〜20質量部であり、好ましくは1.5質量部以上、より好ましくは2質量部以上、さらに好ましくは3質量部以上、中でも4質量部以上、特に5質量部以上が好ましく、また、好ましくは15質量部以下、さらに好ましくは10質量部以下、中でも8質量部以下、特に好ましくは7質量部以下である。アンチモン化合物(C)の含有量が1質量部未満であると難燃性が低下し、含有量が20質量部を超えると、機械物性が低下する。
【0040】
[群青(D)]
本発明の樹脂組成物の(D)成分である群青は、別名「ウルトラマリンブルー」とも呼ばれ、通常、一般式Na
xAl
xSi
(12−x)O
24・Na
yS
zで表わすことのできるケイ酸塩であり、天然のものでも合成によるものであってもよい。天然のものは藍銅鉱(アズライト)というラピスラズリの主鉱物である。合成によるものでは、通常、カオリナイト、ケイ酸、硫黄、炭酸ナトリウム、炭素質還元剤(木炭、石炭またはロジン等)を原料として製造され、合成ウルトラマリンとも呼ばれる。
青色顔料として無機のものとしては、CoO・Al
2O
3又はCoO・ZnO・SiO
2で表されるようなコバルトブルー等もよく知られているが、このようなコバルト含有顔料は環境に対して悪影響を及ぼしやすいので好ましくない。
【0041】
群青(D)は硫酸バリウムを含むことが好ましい。硫酸バリウムには、重晶石を粉砕して水ひして製造するひ性硫酸バリウム(バライト粉)と重晶石の還元バイ焼により得た硫化バリウムの溶液に硫酸ナトリウム溶液を加え、沈殿させて作る沈降性硫酸バリウムがあり、そのいずれであってもよいが、本発明においては、平均粒子径が小さく、粒子径のばらつきが小さい点から、沈降性硫酸バリウムがより好ましい。
【0042】
群青(D)中の硫酸バリウムの含有量は50質量%以下であることが好ましく、30質量%以下がより好ましく、20質量%以下がさらに好ましい。硫酸バリウムの含有量が50質量%以下であると、ポリエステル樹脂組成物中での群青の分散性が向上し、得られるポリエステル樹脂組成物、樹脂組成物成形品が均一に着色され、着色力が向上しやすくなり好ましい。
硫酸バリウムが沈降性硫酸バリウムである場合も同様の理由で、群青(D)中の含有量は50質量%以下であることが好ましく、30質量%以下がより好ましく、20質量%以下がさらに好ましい。
【0043】
また、群青(D)の平均粒子径は5μm以下であることが好ましく、3μm以下がより好ましく、2μm以下がさらに好ましい。その下限は通常0.1μm、好ましくは0.5μm、より好ましくは1μmである。このような平均粒子径とすることにより、ポリエステル樹脂組成物中での群青の分散性が向上し、得られるポリエステル樹脂組成物、樹脂組成物成形品が均一に着色され、着色力が向上しやすくなり好ましい。
【0044】
また、群青(D)はその表面をシランカップリング剤等の表面処理剤で処理していることも好ましい。このようなシランカップリング剤としては、例えば、末端にビニル基、(メタ)アクリル基のような重合性2重結合基、エポキシ基を有するものを好適に使用することができる。
【0045】
群青(D)の含有量は、熱可塑性ポリエステル樹脂(A)100質量部に対し、0.005〜1質量部であり、好ましくは0.008質量部以上、より好ましくは0.01質量部以上であり、また好ましくは0.6質量部以下、より好ましくは0.4質量部以下、さらに好ましくは0.2質量部以下、特に好ましくは0.1質量部以下である。群青(D)の含有量が0.005質量部未満では、高い白色度が達成できず、耐光性も悪く、耐トラッキング性が不十分である。また、1質量部を超えても高い白色度が達成できない。
【0046】
[酸化チタン(E)]
本発明のポリエステル樹脂組成物は、更に、酸化チタン(E)を含有することが好ましい。酸化チタン(E)としては制限はないが、塩素法で製造された酸化チタンが好ましい。塩素法で製造された酸化チタンは、硫酸法で製造された酸化チタンに比べて、白度等の点で優れている。酸化チタンの結晶形態としては、ルチル型の酸化チタンが好ましく、アナターゼ型の酸化チタンに比べ、白色度、耐光性の点で優れている。
【0047】
酸化チタン(E)の平均粒子径は、0.01〜2μmのものが好ましく、0.05〜1μmがより好ましく、0.07〜0.5μmのものがさらに好ましく、最も好ましくは0.1〜0.35μmである。平均粒子径が0.01μm未満では、樹脂組成物製造時の作業性に劣り、2μmを超える場合は、成形品表面に肌荒れを起こしたり、成形品の機械的強度が低下したりしやすい。なお、平均粒子径の異なる酸化チタンを2種類以上混合して使用してもよい。
【0048】
酸化チタン(E)は、シリカ、アルミナ、ジルコニア、これらの混合物等の無機系処理剤で表面処理されていてもよく、アルミナ水和物等のアルミナ系表面処理剤で処理するのが好ましい。処理剤としてアルミナ水和物を用いる場合は、それと共に珪酸水和物を用いてもよい。アルミナ水和物、さらに必要に応じて珪酸水和物による表面処理は、酸化チタン(E)100質量部に対して好ましくは0.1〜10質量部、より好ましくは0.5〜5質量部、さらに好ましくは1〜3質量部である。
また、酸化チタン(E)は、オルガノシロキサン系等の有機化合物による表面処理をしたものであることも、熱安定性、耐加水分解性の点で好ましい。特に、無機処理をしない酸化チタンは、有機化合物による表面処理を行うことが好ましい。有機系表面処理剤としては、アルコキシ基、エポキシ基、アミノ基若しくはSi−H基、Si−CH
3基、Si−OH基、Si−NH基、Si−OR基を有する有機シラン化合物又は有機シリコーン化合物等が挙げられる。好ましいのは、Si−H基、Si−OH基、Si−OR基を有する有機シリコーン化合物であり、特に好ましいのはSi−H基、Si−CH
3基を有する有機シリコーン化合物である。
【0049】
Si−H基、Si−CH
3基含有有機シリコーン化合物としては、分子中にSi−H基又はSi−CH
3基を持つ化合物であれば特に制限されず、適宜選択して用いればよいが、なかでも、ポリ(メチルハイドロジェンシロキサン)、ポリ(ジメチルシロキサン)、ポリシクロ(メチルハイドロジェンシロキサン)、ポリ(エチルハイドロジェンシロキサン)、ポリ(フェニルハイドロジェンシロキサン)、ポリ[(メチルハイドロジェンシロキサン)(ジメチルシロキサン)]コポリマー、ポリ[(メチルハイドロジェンシロキサン)(エチルメチルシロキサン)]コポリマー、ポリ[(メチルハイドロジェンシロキサン)(ジエチルシロキサン)]コポリマー、ポリ[(メチルハイドロジェンシロキサン)(ヘキシルメチルシロキサン)]コポリマー、ポリ[(メチルハイドロジェンシロキサン)(オクチルメチルシロキサン)]コポリマー、ポリ[(メチルハイドロジェンシロキサン)(フェニルメチルシロキサン)]コポリマー、ポリ[(メチルハイドロジェンシロキサン)(ジエトキシシロキサン)]コポリマー、ポリ[(メチルハイドロジェンシロキサン)(ジメトキシシロキサン)]コポリマー、ポリ[(メチルハイドロジェンシロキサン)(3,3,3−トリフルオロプロピルメチルシロキサン)]コポリマー、ポリ[(ジハイドロジェンシロキサン)((2−メトキシエトキシ)メチルシロキサン)]コポリマー、ポリ[(ジハイドロジェンシロキサン)(フェノキシメチルシロキサン)]コポリマー等のポリオルガノシロキサンが好ましい。
【0050】
酸化チタン(E)のオルガノシロキサン系表面処理剤による表面処理法には、(1)湿式法と(2)乾式法とがある。湿式法は、オルガノシロキサン系の表面処理剤と溶剤との混合物に、アルミナ水和物、さらに必要に応じて珪酸水和物で前処理された酸化チタンを加え、撹拌した後に脱溶媒を行い、更にその後100〜300℃で熱処理する方法である。乾式法は、上記と同様に前処理された酸化チタンとオルガノシロキサン系表面処理剤とをヘンシェルミキサーなどで混合する方法、前処理された酸化チタンにオルガノシロキサン系表面処理剤の有機溶液を噴霧して付着させ、100〜300℃で熱処理する方法などが挙げられる。
【0051】
この処理に使用する有機系処理剤の処理量としては、酸化チタン100質量部に対し、通常0.01〜10質量部である。処理量が、上記下限値未満の場合は、表面処理効果が低く、本発明のポリエステル樹脂組成物の耐衝撃性、難燃性、耐加水分解性が低下しやすい。また、処理量が、上記上限値を超える場合は、ポリエステル樹脂組成物の流動性が低下しやすくなるため好ましくない。
このような観点より上記処理量は、酸化チタン100質量部に対し、0.1〜6質量部がより好ましく、0.5〜5質量部がさらに好ましく、1〜4質量部が特に好ましい。
【0052】
酸化チタン(E)の好ましい含有量は、熱可塑性ポリエステル樹脂(A)100質量部に対し、0.1〜30質量部であり、より好ましくは1質量部以上、さらに好ましくは2質量部以上、中でも3質量部以上、特には4質量部以上が好ましく、また好ましくは25質量部以下、より好ましくは20質量部以下、さらに好ましくは15質量部以下、特には好ましくは10質量部以下が好ましい。酸化チタン(E)の含有量が0.1質量部未満であると、白色度、耐光性、電気的特性が低下しやすく、含有量が30質量部を超えると、機械物性、流動性が低下しやすい傾向となり好ましくない。
特に、高い白色度及び耐光性を必要とされる用途においては、酸化チタンを配合することが望ましいが、樹脂組成物中に群青を特定量含有することによって、この酸化チタンの配合量を低減させることが可能となる。それにより、酸化チタンを多量に配合することによる機械物性や流動性の低下を抑制でき、諸特性に優れた樹脂組成物を得ることが可能となった。
【0053】
なお、本発明のポリエステル樹脂組成物は、群青や酸化チタン以外の他の着色剤、例えば、カーボンブラックや上記したコバルトブルー等を含む他の無機顔料、シアニンブルー等の有機顔料等の併用することを排除するわけではなく、所望の色調により含有することができる。
【0054】
[脂肪酸エステル系離型剤(F)]
本発明のポリエステル樹脂組成物は、更に、離型剤を含有することが好ましい。離型剤としては、ポリエステル樹脂に通常使用される既知の離型剤が利用可能であり、例えば、脂肪酸エステル系離型剤、オレフィン系離型剤、シリコーン系離型剤が挙げられるが、中でも、脂肪酸エステル系離型剤(F)が離型性に優れ黄色化の問題がないことから好ましい。
【0055】
脂肪酸エステル系離型剤としては、飽和又は不飽和の脂肪族1価又は2価のカルボン酸エステル類、グリセリン脂肪酸エステル類、ソルビタン脂肪酸エステル類等の脂肪酸エステル類やその部分鹸化物等が挙げられ、中でも、炭素数11〜36、好ましくは炭素数17〜32の脂肪酸で構成されるモノ又はジ脂肪酸エステルが好ましい。
【0056】
脂肪族カルボン酸としては、パルミチン酸、ステアリン酸、カプロン酸、カプリン酸、ラウリン酸、アラキン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、メリシン酸、テトラリアコンタン酸、モンタン酸、アジピン酸、アゼライン酸等が挙げられる。また、脂肪族カルボン酸は、脂環式のカルボン酸であってもよい。
アルコールとしては、飽和又は不飽和の1価又は多価アルコールを挙げることができる。これらのアルコールは、フッ素原子、アリール基などの置換基を有していてもよい。これらの中では、炭素数30以下の1価又は多価の飽和アルコールが好ましく、炭素数30以下の脂肪族飽和1価アルコール又は多価アルコールが更に好ましい。ここで脂肪族とは、脂環式化合物も含有する。
かかるアルコールの具体例としては、オクタノール、デカノール、ドデカノール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール、2,2−ジヒドロキシペルフルオロプロパノール、ネオペンチレングリコール、ジトリメチロールプロパン、ジペンタエリスリトール等が挙げられる。
なお、上記のエステル化合物は、不純物として脂肪族カルボン酸及び/又はアルコールを含有していてもよく、複数の化合物の混合物であってもよい。
【0057】
脂肪酸エステル系離型剤としては、具体的には、蜜ロウ(ミリシルパルミテートを主成分とする混合物)、ステアリン酸ステアリル、ベヘン酸ベヘニル、ベヘン酸ステアリル、グリセリンモノパルミテート、グリセリンモノステアレート、グリセリンジステアレート、グリセリントリステアレート、グリセリンモノベヘネート、グリセリンジベヘネート、グリセリン−12−ヒドロキシモノステアレート、グリセリンジモンタネート、エチレングリコールジモンタネート、ソルビタンモノベヘネート、ペンタエリスリトールモノパルミテート、ペンタエリスリトールモノステアレート、ペンタエリスリトールジステアレート、ペンタエリスリトールトリステアレート、ペンタエリスリトールテトラステアレート等が挙げられる。
【0058】
脂肪酸エステル系離型剤(F)の含有量は、熱可塑性ポリエステル樹脂(A)100質量部に対して、0.01〜2質量部であることが好ましい。0.01質量部未満であると、溶融成形時の離型不良により表面性が低下する傾向があり、一方、2質量部を超えると、樹脂組成物の練り込み作業性が低下し、また成形品表面に曇りが見られる場合がある。離型剤の含有量は、より好ましくは0.05〜1.5質量部、更に好ましくは0.1〜1.0質量部である。
【0059】
[安定剤]
本発明のポリエステル樹脂組成物は、さらに安定剤を含有することが、熱安定性改良や、機械的強度、透明性及び色相の悪化を防止する効果を有するという点で好ましい。安定剤としては、リン系安定剤およびフェノール系安定剤が好ましい。
【0060】
リン系安定剤としては、亜リン酸、リン酸、亜リン酸エステル、リン酸エステル等が挙げられ、中でも有機ホスフェート化合物、有機ホスファイト化合物又は有機ホスホナイト化合物が好ましい。
【0061】
有機ホスフェート化合物としては、好ましくは、下記一般式:
(R
1O)
3−nP(=O)OH
n ・・・(2)
(式(2)中、R
1は、アルキル基またはアリール基であり、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。nは0〜2の整数を示す。)
で表される化合物である。これらの中でも、R
1が炭素原子数8〜30の長鎖アルキルアシッドホスフェート化合物が好ましく挙げられる。炭素原子数8〜30のアルキル基の具体例としては、オクチル基、2−エチルヘキシル基、イソオクチル基、ノニル基、イソノニル基、デシル基、イソデシル基、ドデシル基、トリデシル基、イソトリデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、エイコシル基、トリアコンチル基等が挙げられる。
【0062】
長鎖アルキルアシッドホスフェートとしては、例えば、オクチルアシッドホスフェート、2−エチルヘキシルアシッドホスフェート、デシルアシッドホスフェート、ラウリルアシッドホスフェート、ステアリルアシッドホスフェート、オレイルアシッドホスフェート、ベヘニルアシッドホスフェート、フェニルアシッドホスフェート、ノニルフェニルアシッドホスフェート、シクロヘキシルアシッドホスフェート、フェノキシエチルアシッドホスフェート、アルコキシポリエチレングリコールアシッドホスフェート、ビスフェノールAアシッドホスフェート、ジメチルアシッドホスフェート、ジエチルアシッドホスフェート、ジプロピルアシッドホスフェート、ジイソプロピルアシッドホスフェート、ジブチルアシッドホスフェート、ジオクチルアシッドホスフェート、ジ−2−エチルヘキシルアシッドホスフェート、ジオクチルアシッドホスフェート、ジラウリルアシッドホスフェート、ジステアリルアシッドホスフェート、ジフェニルアシッドホスフェート、ビスノニルフェニルアシッドホスフェート等が挙げられる。
これらの中でも、オクタデシルアシッドホスフェートが好ましく、このものはADEKA社の商品名「アデカスタブ AX−71」として、市販されている。
【0063】
有機ホスファイト化合物としては、好ましくは、下記一般式:
R
2O−P(OR
3)(OR
4) ・・・(3)
(式(3)中、R
2、R
3及びR
4は、それぞれ水素原子、炭素数1〜30のアルキル基または炭素数6〜30のアリール基であり、R
2、R
3及びR
4のうちの少なくとも1つは炭素数6〜30のアリール基である。)
で表される化合物が挙げられる。
【0064】
有機ホスファイト化合物としては、例えば、トリフェニルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、ジラウリルハイドロジェンホスファイト、トリエチルホスファイト、トリデシルホスファイト、トリス(2−エチルヘキシル)ホスファイト、トリス(トリデシル)ホスファイト、トリステアリルホスファイト、ジフェニルモノデシルホスファイト、モノフェニルジデシルホスファイト、ジフェニルモノ(トリデシル)ホスファイト、テトラフェニルジプロピレングリコールジホスファイト、テトラフェニルテトラ(トリデシル)ペンタエリスリトールテトラホスファイト、水添ビスフェノールAフェノールホスファイトポリマー、ジフェニルハイドロジェンホスファイト、4,4’−ブチリデン−ビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェニルジ(トリデシル)ホスファイト)、テトラ(トリデシル)4,4’−イソプロピリデンジフェニルジホスファイト、ビス(トリデシル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(ノニルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ジラウリルペンタエリスリトールジホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、トリス(4−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、水添ビスフェノールAペンタエリスリトールホスファイトポリマー、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、2,2’−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)オクチルホスファイト、ビス(2,4−ジクミルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト等が挙げられる。
【0065】
有機ホスホナイト化合物としては、好ましくは、下記一般式:
R
5−P(OR
6)(OR
7) ・・・(4)
(式(4)中、R
5、R
6及びR
7は、それぞれ水素原子、炭素数1〜30のアルキル基又は炭素数6〜30のアリール基であり、R
5、R
6及びR
7のうちの少なくとも1つは炭素数6〜30のアリール基である。)
で表される化合物が挙げられる。
【0066】
有機ホスホナイト化合物としては、テトラキス(2,4−ジ−iso−プロピルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,4−ジ−n−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,3’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−3,3’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,6−ジ−iso−プロピルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,6−ジ−n−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,6−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,6−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,3’−ビフェニレンジホスホナイト、およびテトラキス(2,6−ジ−tert−ブチルフェニル)−3,3’−ビフェニレンジホスホナイト等が挙げられる。
【0067】
リン系安定剤は、1種が含有されていてもよく、2種以上が任意の組み合わせ及び比率で含有されていても良い。
リン系安定剤としては、前述したように、優れた相溶性を発揮し、伸びや薄肉靭性を飛躍的に向上させるオクタデシルアシッドホスフェートが特に好ましい。
【0068】
フェノール系安定剤としては、例えば、ペンタエリスリトールテトラキス(3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、チオジエチレンビス(3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3−(3,5−ジ−ネオペンチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)等が挙げられる。これらの中でも、ペンタエリスリト−ルテトラキス(3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネートが好ましい。
【0069】
安定剤の含有量は、熱可塑性ポリエステル樹脂(A)100質量部に対し、0.001〜1質量部である。安定剤の含有量が0.001質量部未満であると、樹脂組成物の熱安定性や相溶性の改良が期待しにくく、成形時の分子量の低下や色相悪化が起こりやすく、1質量部を超えると、過剰量となりシルバーの発生や、色相悪化が更に起こりやすくなる傾向がある。安定剤の含有量はより好ましくは0.05〜0.8質量部であり、さらに好ましくは0.1〜0.5質量部である。
【0070】
[その他の難燃剤及び難燃助剤]
本発明のポリエステル樹脂組成物は、臭素化フタルイミド系難燃剤(B)以外の他の難燃剤を含有することもできる。
【0071】
その他の難燃剤としては、例えばリン系安定剤や、臭素化フタルイミド系難燃剤以外の臭素系難燃剤を挙げることができる。
リン系難燃剤としては、例えば、エチルホスフィン酸アルミニウム、ジエチルホスフィン酸アルミニウム、エチルメチルホスフィン酸アルミニウム、ジエチルホスフィン酸亜鉛等の、(ジ)ホスフィン酸金属塩、ポリリン酸メラミンに代表されるメラミンとリン酸との反応生成物、リン酸エステル、ホスファゼン等が挙げられ、中でも、ジエチルホスフィン酸金属塩、ポリリン酸メラミン、環状フェノキシホスファゼン、鎖状フェノキシホスファゼン、架橋フェノキシホスファゼン等のホスファゼンが熱安定性に優れる点から好ましい。
その他の臭素系難燃剤としては、ポリペンタブロモベンジルアクリレート等のポリ臭素化ベンジル(メタ)アクリレート、ポリブロモフェニレンエーテル、臭素化ポリスチレン、テトラブロモビスフェノールAのエポキシオリゴマー等の臭素化エポキシ化合物、臭素化ポリカーボネート等が挙げられる。
【0072】
また、本発明のポリエステル樹脂組成物は、アンチモン化合物(C)以外の難燃助剤を含有することができる。難燃助剤としては、例えば、タルク、酸化銅、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化モリブデン、酸化ジルコニウム、酸化スズ、酸化鉄、酸化チタン、酸化アルミニウム、硼酸亜鉛等が挙げられ、2種以上併用してもよい。これらの中でも、難燃性がより優れる点から、タルク、硼酸亜鉛が好ましく、タルクがより好ましい。
【0073】
アンチモン化合物(C)以外の難燃助剤を含有する場合の含有量は、熱可塑性ポリエステル樹脂(A)100質量部に対して、好ましくは0.1〜20質量部、より好ましくは0.5〜18質量部、さらに好ましくは1〜15質量部である。
特に、難燃助剤がタルクである場合は、含有量は好ましくは、熱可塑性ポリエステル樹脂(A)100質量部に対して0.1〜10質量部、より好ましくは0.3〜6質量部、さらに好ましくは0.7〜3質量部である。
【0074】
[無機充填材]
本発明のポリエステル樹脂組成物には、無機充填材を含有させてその機械的特性を向上させることができる。無機充填材としては常用のものをいずれも用いることができる。具体的には例えば、ガラス繊維、炭素繊維、鉱物繊維等の繊維状充填材が挙げられるが、中でもガラス繊維を用いることが好ましい。本発明においては、無機充填材は、熱可塑性ポリエステル樹脂(A)100質量部に対して、100質量部以下、中でも10〜60質量部、特に20〜40質量部を含有させることが好ましい。
【0075】
ガラス繊維は、カップリング剤等の表面処理剤によって、表面処理されたものを用いることがより好ましい。表面処理剤が付着したガラス繊維は、耐久性、耐湿熱性、耐加水分解性、耐ヒートショック性に優れるので好ましい。
【0076】
表面処理剤としては、従来公知の任意のものを使用でき、具体的には、例えば、アミノシラン系、エポキシシラン系、アリルシラン系、ビニルシラン系等のシラン系カップリング剤が好ましく挙げられる。
これらの中では、アミノシラン系表面処理剤が好ましく、具体的には例えば、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン及びγ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシランが好ましい例として挙げられる。
【0077】
また、表面処理剤として、ノボラック型等のエポキシ樹脂、ビスフェノールA型のエポキシ樹脂等も好ましく挙げられる。中でもノボラック型エポキシ樹脂が好ましい。
シラン系表面処理剤とエポキシ樹脂は、それぞれ単独で用いても複数種で用いてもよく、両者を併用することも好ましい。
【0078】
ガラス繊維は、寸法安定性、レーザー光透過性の点から、断面における長径と短径の比が1.5〜10である異方断面形状を有するガラス繊維であることも好ましい。
断面形状は、断面が長方形又は長円形のものであり、また長径/短径比が2.5〜8、更には3〜6の範囲にあるものが好ましい。長径をD2、短径をD1、平均繊維長をLとするとき、アスペクト比((L×2)/(D2+D1))が10以上であることが好ましい。このようにこのような扁平状のガラス繊維を使用すると、成形品の反りが抑制され、特に箱型の溶着体を製造する場合に効果的である。
【0079】
[滴下防止剤]
本発明のポリエステル樹脂組成物には、滴下防止剤を含有させることも好ましい。滴下防止剤としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)が好ましく、フィブリル形成能を有し、樹脂組成物中に容易に分散し、かつ樹脂同士を結合して繊維状材料を作る傾向を示すものである。このようなポリテトラフルオロエチレンの具体例としては、例えば三井・デュポンフロロケミカル社より市販されている商品名「テフロン6J」又は「テフロン30J」、ダイキン工業社より市販されている商品名「ポリフロン」あるいは旭硝子社より市販されている商品名「フルオン」、3M社より市販されている「ダイニオン」等が挙げられる。
滴下防止剤の含有割合は、好ましくは、熱可塑性ポリエステル樹脂(A)100質量部に対して0.01〜5質量部である。滴下防止剤が0.01質量部未満では難燃性が不十分になりやすく、5質量部を超えると外観が悪くなりやすい。滴下防止剤の含有割合は、より好ましくは、熱可塑性ポリエステル樹脂(A)100質量部に対して、0.1〜3質量部であり、さらに好ましくは0.2〜1質量部である。
【0080】
[その他含有成分]
本発明のポリエステル樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、更に種々の添加剤を含有していても良い。このような添加剤としては、紫外線吸収剤、染顔料、蛍光増白剤、帯電防止剤、核剤、耐加水分解抑制剤、防曇剤、滑剤、アンチブロッキング剤、流動性改良剤、可塑剤、分散剤、抗菌剤等が挙げられる。
【0081】
また、本発明におけるポリエステル樹脂組成物には、熱可塑性ポリエステル樹脂(A)以外の他の熱可塑性樹脂を、本発明の効果を損わない範囲で含有することができる。その他の熱可塑性樹脂としては、具体的には、例えば、ポリカーボネート樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリアミド樹脂、ポリフェニレンオキサイド樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリフェニレンサルファイドエチレン樹脂、ポリサルホン樹脂、ポリエーテルサルホン樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリエーテルケトン樹脂、ポリオレフィン樹脂等が挙げられる。
【0082】
[樹脂組成物の製造方法]
本発明のポリエステル樹脂組成物の製造は、樹脂組成物調製の常法に従って行うことができる。通常は各成分及び所望により添加される種々の添加剤を一緒にしてよく混合し、次いで一軸又は二軸押出機で溶融混練する。また各成分を予め混合することなく、ないしはその一部のみを予め混合し、フィーダーを用いて押出機に供給して溶融混練し、本発明の樹脂組成物を調製することもできる。さらには、ポリエステル樹脂の一部に他の成分の一部を配合したものを溶融混練してマスターバッチを調製し、次いでこれに残りのポリエステル樹脂や他の成分を配合して溶融混練してもよい。
なお、無機充填材としてガラス繊維等の繊維状のものを用いる場合には、押出機のシリンダー途中のサイドフィーダーから供給することも好ましい。
【0083】
溶融混練に際しての加熱温度は、通常220〜300℃の範囲から適宜選ぶことができる。温度が高すぎると分解ガスが発生しやすく、不透明化の原因になる場合がある。それ故、剪断発熱等に考慮したスクリュー構成の選定が望ましい。混練り時や、後行程の成形時の分解を抑制する為、酸化防止剤や熱安定剤の使用が望ましい。
【0084】
上記の方法で得られる本発明のポリエステル樹脂組成物は、後述の実施例に記載の方法で測定されるb
*値が4以下であることが好ましく、3.5以下がより好ましく、3以下であることがさらに好ましい。また、メルトボリュームレート(MVR;250℃、荷重5kgの条件下で測定。)が35cm
3/10分以上であることが好ましく、より好ましくは40cm
3/10分以上である。また、保証トラッキング指数(PTI)は300V以上であることが好ましく、UL94に準拠した厚み0.8mmの難燃性がV−0判定であることが好ましい。
【0085】
[成形体]
本発明のポリエステル樹脂組成物は、通常、任意の形状に成形して成形体として用いる。この成形体の形状、模様、色、寸法等に制限はなく、その成形体の用途に応じて任意に設定すればよい。
成形体の製造方法は、特に限定されず、ポリエステル樹脂組成物について一般に採用されている成形法を任意に採用できる。その例を挙げると、射出成形法、超高速射出成形法、射出圧縮成形法、二色成形法、ガスアシスト等の中空成形法、断熱金型を使用した成形法、急速加熱金型を使用した成形法、発泡成形(超臨界流体も含む)、インサート成形、IMC(インモールドコーティング成形)成形法、押出成形法、シート成形法、熱成形法、回転成形法、積層成形法、プレス成形法、ブロー成形法等が挙げられ、中でも射出成形法が好ましい。
【0086】
本発明のポリエステル樹脂組成物は、優れた機械物性、流動性を維持しながら、優れた耐光性、難燃性と高い白色度を有し、耐トラッキング性にも優れるポリエステル樹脂材料であるので、電気機器、電子機器あるいはそれ等の絶縁性部品として好適であり、特に白物家電製品、例えば照明機器、洗濯機、冷蔵庫、エアコン、食器洗浄機等の高い白色度、耐トラッキング性及び耐光性が求められる部品として好ましく用いることができる。