【実施例】
【0122】
次に、本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明は、かかる実施例のみに限定されるものではない。
【0123】
なお、以下の各実施例で得られた化合物の物性は、以下の方法に基づいて調べた。
〔
1H−NMRおよび
13C−NMR〕
・測定装置:核磁気共鳴分光装置(ブルカー社製、商品名:AVANCE III)
【0124】
〔ゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)〕
・測定装置:昭和電工(株)製、商品名:Shodex−101
・測定条件
・注入時の濃度:0.001質量%
・注入量:25μL
・流速:0.5mL/min
・溶媒:N,N−ジメチルホルムアミド
・カラム:昭和電工(株)製、商品名:Shodex KD−803および商品名:Shodex KD−804
・カラムの温度:40℃
【0125】
〔熱重量−示差熱分析〕
・測定装置:熱重量−示差熱同時測定装置〔(株)日立ハイテクノロジーズ製、商品名:STA7200〕
窒素ガスの雰囲気中にて昇温速度10℃/minで800℃まで加熱し、5%重量減少温度または10%重量減少温度を測定した。
【0126】
実施例1〔4,4’−ジアミノ−δ−トルキシン酸ジメチル(1)の調製〕
出発物質として4−ニトロ桂皮酸を用いて4,4’−ジアミノ−δ−トルキシン酸ジメチルを調製するまでのスキームを以下に示す。
【0127】
【化17】
【0128】
(1)4−ニトロ桂皮酸コハク酸イミド(1)の調製
4−ニトロ桂皮酸25.17g(0.130mol)、N−ヒドロキシコハク酸イミド22.38g(0.194mol)およびN,N’−ジイソプロピルカルボジイミド30mL(0.194mol)を1,4−ジオキサン300mLに添加し、120℃の温度で加熱還流を行なうことにより、4−ニトロ桂皮酸とN−ヒドロキシコハク酸イミドとを反応させた。反応終了後、得られた反応溶液を濾過することによって4−ニトロ桂皮酸コハク酸イミドを回収し、2−プロパノールで洗浄した。得られた4−ニトロ桂皮酸コハク酸イミドエステルの収量は36.45gであり、収率は96.7%であった。
【0129】
なお、4−ニトロ桂皮酸とN−ヒドロキシコハク酸イミドとの反応生成物が4−ニトロ桂皮酸コハク酸イミドであることは、以下の物性の測定結果から確認された。
【0130】
1H-NMR (400 MHz, DMSO-d
6): δ 2.87 (s, 4H, -CH
2-CH
2-), 7.24 (d, 1H, J = 16.1 Hz, -CH=CH-), 8.15 (d, 2H, J = 8.8 Hz, 芳香環), 8.30 (d, 2H, J = 8.8 Hz, 芳香環)
13C-NMR (100 MHz, DMSO-d
6): δ 25.5, 116.2, 124.0, 130.3, 139.5, 147.2, 148.8, 161.9, 170.3.
FT-ICR MS (ESI): 計算値[M+Na, C
13H
10N
2O
6Na]
+: 313.0473, 実側値: 313.0431
【0131】
前記で得られた4−ニトロ桂皮酸コハク酸イミドの
1H−NMRスペクトル、
13C−NMRスペクトルおよびマススペクトルをそれぞれ
図1、
図2および
図3に示す。
【0132】
(2)4,4’−ジニトロ−δ−トルキシン酸コハク酸イミド(2)の調製
前記で得られた4−ニトロ桂皮酸コハク酸イミド1.0g(3.45mmol)をベンゼン20mL中に懸濁させ、得られた懸濁液に紫外線を高圧水銀灯で24時間照射することにより、4−ニトロ桂皮酸コハク酸イミドから4,4’−ジニトロ−δ−トルキシン酸コハク酸イミドを生成させた。
【0133】
次に、前記で得られた懸濁液を濾過することにより、生成した4,4’−ジニトロ−δ−トルキシン酸コハク酸イミドを回収し、減圧下で乾燥した。得られた4,4’−ジニトロ−δ−トルキシン酸コハク酸イミドの収量は0.63gであり、収率は63.0%であった。
【0134】
なお、生成した化合物が4,4’−ジニトロ−δ−トルキシン酸コハク酸イミドであることは、以下の物性の測定結果から確認された。
【0135】
1H-NMR (400 MHz, DMSO-d
6): δ 2.81 (s, 8H, -CH
2-CH
2-), 4.21 (4H, シクロブタン), 7.77 (d, 4H, J = 8.8 Hz, 芳香環), 8.22 (d, 4H, J = 8.8 Hz, 芳香環).
13C-NMR (100 MHz, DMSO-d
6): δ 26.0, 47.5, 124.3, 128.8, 146.0, 147.6, 167.1, 170.4.
FT-ICR MS (ESI): 計算値 [M+Na, C
26H
20N
4O
12-Na]
+: 603.0975, 実側値: 603.0973.
【0136】
前記で得られた4,4’−ジニトロ−δ−トルキシン酸コハク酸イミドの
1H−NMRスペクトル、
13C−NMRスペクトルおよびマススペクトルをそれぞれ
図4、
図5および
図6に示す。
【0137】
(3)4,4’−ジニトロ−δ−トルキシン酸ジメチル(3)の調製
前記で得られた4,4’−ジニトロ−δ−トルキシン酸コハク酸イミド0.93g(1.60mmol)のメタノール20mL溶液を24時間加熱下で還流させた後、メタノールを減圧留去した。
【0138】
次に、前記で得られた反応生成物を酢酸エチル20mLおよび水20mLからなる抽出溶媒に添加し、液−液抽出を行ない、有機層を回収した。回収した有機層に硫酸ナトリウムを加えて乾燥させた。乾燥後、有機層から硫酸ナトリウムを濾過して除去し、減圧下で酢酸エチルを除去することにより、4,4’−ジニトロ−δ−トルキシン酸ジメチル(3)を回収した。得られた4,4’−ジニトロ−δ−トルキシン酸ジメチルの収量は1.42gであり、収率は80.2%であった。
【0139】
なお、生成した化合物が4,4’−ジニトロ−δ−トルキシン酸ジメチルであることは、以下の物性の測定結果から確認された。
【0140】
1H-NMR (400 MHz, DMSO-d
6): δ 3.58-3.60 (m, 2H, シクロブタン), 3.67 (s, 6H, COOCH
3), 3.91-3.94 (m, 2H, シクロブタン), 7.64 (d, 4H, J = 8.8 Hz, 芳香環), 8.21 (d, 4H, J = 8.8 Hz, 芳香環).
13C-NMR (100 MHz, DMSO-d
6): δ 43.5, 46.1, 52.1, 123.8, 128.5, 146.7, 147.9, 171.7.
FT-ICR MS (ESI): 計算値 [M+Na, C
20H
18N
2O
8Na]
+: 437.0961, 実側値: 437.0952.
【0141】
前記で得られた4,4’−ジニトロ−δ−トルキシン酸ジメチルの
1H−NMRスペクトル、
13C−NMRスペクトルおよびマススペクトルをそれぞれ
図7、
図8および
図9に示す。
【0142】
(4)4,4’−ジアミノ−δ−トルキシン酸ジメチル(4)の調製
前記で得られた4,4’−ジニトロ−δ−トルキシン酸ジメチル2.57g(6.20mmol)および10%パラジウム炭素(Pd/C)触媒0.66g(0.01mol%)をメタノール50mLに添加し、50℃の温度で4.5時間加熱することにより、4,4’−ジニトロ−δ−トルキシン酸ジメチルの水素還元反応を行なった。反応終了後、得られた反応溶液を濾過することによってパラジウム炭素(Pd/C)触媒を除去し、減圧下でメタノールを除去することにより、生成した4,4’−ジアミノ−δ−トルキシン酸ジメチル(4)を回収した。得られた4,4’−ジアミノ−δ−トルキシン酸ジメチル(4)の収量は1.52gであり、収率は69.1%であった。
【0143】
なお、生成した化合物が4,4’−ジアミノ−δ−トルキシン酸ジメチルであることは、以下の物性の測定結果から確認された。
【0144】
1H-NMR (400 MHz, DMSO-d
6): δ 3.17-3.31 (4H, m, シクロブタン), 3.64 (s, 6H, COOCH
3), 5.01 (s, 4H, NH
2), 6.50 (d, 4H, J = 8.4 Hz, 芳香環), 6.92 (d, 4H, J = 8.4 Hz, 芳香環).
13C-NMR (100 MHz, DMSO-d
6): δ 44.4, 47.6, 51.9, 113.9, 127.5, 147.7, 172.6.
FT-ICR MS (ESI): 計算値 [M+Na, C
20H
22N
2O
4-Na]
+: 377.1477, 実側値: 377.1472.
【0145】
前記で得られた4,4’−ジアミノ−δ−トルキシン酸ジメチルの
1H−NMRスペクトル、
13C−NMRスペクトルおよびマススペクトルをそれぞれ
図10、
図11および
図12に示す。
【0146】
実施例2〔4,4’−ジアミノ−δ−トルキシン酸ジエチル(6)の調製〕
出発物質として4−ニトロ桂皮酸を用い、実施例1と同様にして4,4’−ジニトロ−δ−トルキシン酸コハク酸イミド(2)を調製し、得られた4,4’−ジニトロ−δ−トルキシン酸コハク酸イミド(2)を用いて以下のようにして4,4’−ジアミノ−δ−トルキシン酸ジエチルを調製した。
【0147】
なお、4−ニトロ桂皮酸を用いて4,4’−ジアミノ−δ−トルキシン酸ジエチルを調製するまでのスキームを以下に示す。
【0148】
【化18】
【0149】
(1)4,4’−ジニトロ−δ−トルキシン酸ジエチル(5)の調製
4,4’−ジニトロ−δ−トルキシン酸コハク酸イミド2.01g(3.43mmol)を脱水エタノール20mLに溶解させ、得られた溶液を40時間加熱還流した後、エタノールを減圧留去した。
【0150】
次に、前記で得られた反応生成物を酢酸エチル50mLおよび水50mLからなる抽出溶媒に添加し、液−液抽出を3回行ない、有機層を回収した。回収した有機層に硫酸ナトリウムを加えて乾燥させた。乾燥後、有機層から硫酸ナトリウムを濾過することによって除去し、減圧下で酢酸エチルを除去することにより、4,4’−ジニトロ−δ−トルキシン酸ジエチル(5)を回収した。得られた4,4’−ジニトロ−δ−トルキシン酸ジエチルの収量は1.28gであり、収率は84.0%であった。
【0151】
なお、生成した化合物が4,4’−ジニトロ−δ−トルキシン酸ジエチルであることは、以下の物性の測定結果から確認された。
【0152】
1H-NMR (400 MHz, DMSO-d
6): δ 1.18 (t, 6H, J = 7.2 Hz, COOCH
2CH
3), δ 3.49-3.51 (m, 2H, シクロブタン), δ 3.92-3.95 (m, 2H, シクロブタン), 4.13 (q, 4H, J = 7.0 Hz, COOCH
2CH
3), 7.64 (d, 4H, J = 8.8 Hz, 芳香環), 8.20 (d, 4H, J = 8.8 Hz, 芳香環).
13C-NMR (100 MHz, DMSO-d
6): δ 14.4, 44.3, 46.2, 61.1, 124.2, 178.9, 147.1, 148.3, 171.6
【0153】
前記で得られた4,4’−ジニトロ−δ−トルキシン酸ジエチルの
1H−NMRスペクトルおよび
13C−NMRスペクトルをそれぞれ
図13および
図14に示す。
【0154】
(2)4,4’−ジアミノ−δ−トルキシン酸ジエチル(6)の調製
前記で得られた4,4’−ジニトロ−δ−トルキシン酸ジエチル1.31g(2.94mmol)および10%パラジウム炭素(Pd/C)触媒0.13g(1.17mmol)をメタノール40mLに添加し、50℃の温度で24時間加熱することにより、4,4’−ジニトロ−δ−トルキシン酸ジエチルの水素還元反応を行なった。反応終了後、得られた反応溶液を濾過することによってパラジウム炭素(Pd/C)触媒を除去し、減圧下でメタノールを除去することにより、生成した4,4’−ジアミノ−δ−トルキシン酸ジエチル(6)を回収した。得られた4,4’−ジアミノ−δ−トルキシン酸ジエチルの収量は1.05gであり、収率は92%であった。
【0155】
なお、生成した化合物が4,4’−ジアミノ−δ−トルキシン酸ジエチルであることは、以下の物性の測定結果から確認された。
【0156】
1H-NMR (400 MHz, DMSO-d
6): δ 1.16 (t, 6H, J = 7.2 Hz, COOCH
2CH
3), δ 3.08-3.10 (m, 2H, シクロブタン), δ 3.28-3.30 (m, 2H, シクロブタン), 4.10 (q, 4H, J = 7.0Hz, COOCH
2CH
3), δ 4.97 (s, 4H, NH
2), 6.49 (d, 4H, J = 8.4 Hz, 芳香環), 8.40 (d, 4H, J = 8.4 Hz, 芳香環).
13C-NMR (100 MHz, DMSO-d
6): δ 14.6, 45.2, 47.7, 60.8, 114.3, 127.9, 128.5, 148.1, 172.6.
【0157】
前記で得られた4,4’−ジアミノ−δ−トルキシン酸ジエチルの
1H−NMRスペクトルおよび
13C−NMRスペクトルをそれぞれ
図15および
図16に示す。
【0158】
実施例3〔N,N’−ジフェニル−4,4’−ジアミノ−δ−トルキシンアミド(8)の調製〕
出発物質として4−ニトロ桂皮酸を用い、実施例1と同様にして4,4’−ジニトロ−δ−トルキシン酸コハク酸イミド(2)を調製し、得られた4,4’−ジニトロ−δ−トルキシン酸コハク酸イミド(2)を用いて以下のようにしてN,N’−ジフェニル−4,4’−ジアミノ−δ−トルキシンアミドを調製した。
【0159】
なお、4−ニトロ桂皮酸を用いてN,N’−ジフェニル−4,4’−ジアミノ−δ−トルキシンアミドを調製するまでのスキームを以下に示す。
【0160】
【化19】
【0161】
(1)N,N’−ジフェニル−4,4’−ジニトロ−δ−トルキシンアミド(7)の調製
4,4’−ジニトロ−δ−トルキシン酸コハク酸イミド3.50g(6.02mmol)およびアニリン2.24g(24.1mmol)を脱水ジメチルアセトアミド20mLに溶解させ、14時間室温で攪拌した後、ジエチルエテールで再沈殿させ、得られた沈殿物を乾燥させることにより、N,N’−ジフェニル−4,4’−ジニトロ−δ−トルキシンアミド(7)を得た。得られたN,N’−ジフェニル−4,4’−ジニトロ−δ−トルキシンアミド(7)の収量は2.75gであり、収率は85%であった。
【0162】
なお、生成した化合物がN,N’−ジフェニル−4,4’−ジニトロ−δ−トルキシンアミドであることは、以下の物性の測定結果から確認された。
【0163】
1H-NMR (400 MHz, DMSO-d
6): δ 3.67-3.69 (m, 2H, シクロブタン), 4.07-4.09 (m, 2H, シクロブタン), 7.05 (t, 2H, J = 7.1 Hz, 芳香環), 7.30 (t, 4H, J = 7.1 Hz, 芳香環), 7.64 (d, 8H, J = 7.1 Hz, 芳香環), 8.26 (d, 4H, J = 8.9 Hz, 芳香環), 10.26 (s, 2H, NH).
13C-NMR (100 MHz, DMSO-d
6): δ 45.7, 46.8, 119.8, 124.1, 124.4, 128.7, 129.2, 139.2, 147.1, 149.1, 169.7.
【0164】
前記で得られたN,N’−ジフェニル−4,4’−ジニトロ−δ−トルキシンアミドの
1H−NMRスペクトルおよび
13C−NMRスペクトルをそれぞれ
図17および
図18に示す。
【0165】
(2)N,N’−ジフェニル−4,4’−ジアミノ−δ−トルキシンアミド(8)の調製
前記で得られたN,N’−ジフェニル−4,4’−ジニトロ−δ−トルキシンアミド2.50g(4.66mmol)および10%パラジウム炭素(Pd/C)触媒0.17g(1.63mmol)を脱水ジメチルアセトアミド30mLに添加し、室温でN,N’−ジフェニル−4,4’−ジニトロ−δ−トルキシンアミドの水素還元反応を72時間行なった。反応終了後、得られた反応溶液を濾過することによってパラジウム炭素(Pd/C)触媒を除去し、減圧下でジメチルアセトアミドを除去することにより、生成したN,N’−ジフェニル−4,4’−ジアミノ−δ−トルキシンアミド(8)を回収した。得られたN,N’−ジフェニル−4,4’−ジアミノ−δ−トルキシンアミド(8)の収量は1.67gであり、収率は75%であった。
【0166】
なお、生成した化合物がN,N’−ジフェニル−4,4’−ジアミノ−δ−トルキシンアミドであることは、以下の物性の測定結果から確認された。
【0167】
1H-NMR (400 MHz, DMSO-d
6): δ 3.47-3.49 (m, 2H, シクロブタン), 4.96 (s, 4H, NH
2), 6.50 (d, 4H, J = 8.4 Hz, 芳香環), 6.94 (d, 4H, J = 8.3 Hz, 芳香環), 7.01 (t, 2H, J = 7.4 Hz, 芳香環), 7.26 (t, 4H, J = 7.9 Hz, 芳香環), 7.63 (d, 4H, J = 7.9Hz, 芳香環), 10.06 (s, 2H, NH).
13C-NMR (100 MHz, DMSO-d
6): δ 46.9, 47.2, 114.3, 119.6, 123.7, 127.9, 129.1, 129.5, 139.5, 147.9, 171.1.
【0168】
前記で得られたN,N’−ジフェニル−4,4’−ジアミノ−δ−トルキシンアミドの
1H−NMRスペクトルおよび
13C−NMRスペクトルをそれぞれ
図19および
図20に示す。
【0169】
実施例4〔4,4’−ジアミノ−β−トルキシン酸ジメチル(11)の調製〕
出発物質として4−ニトロ桂皮酸を用いてN,N’−ジフェニル−4,4’−ジアミノ−δ−トルキシンアミドを調製するまでのスキームを以下に示す。
【0170】
【化20】
【0171】
(1)4−ニトロ桂皮酸メチル(9)の調製
4−ニトロ桂皮酸9.98g(51.7mmol)、メタノール100mLおよび濃硫酸2.5mLを混合し、得られた混合溶液を3時間加熱下で還流を行なうことにより、4−ニトロ桂皮酸メチルを得た。得られた反応溶液を濾過することによって4−ニトロ桂皮酸メチルを回収し、減圧下で溶媒を除去することにより、4−ニトロ桂皮酸メチル(9)を回収した。得られた4−ニトロ桂皮酸メチル(9)の収量は10.13gであり、収率は94.7%であった。
【0172】
なお、生成した化合物が4−ニトロ桂皮酸メチルであることは、以下の物性の測定結果から確認された。
【0173】
1H-NMR (400 MHz, DMSO-d
6) δ 3.75 (s, 3H, COOCH
3), 6.85 (d, 1H, J = 16.1 Hz, COCH=CH), 7.76 (d, 1H, J = 16.1 Hz, COCH=CH), 8.00 (d, 2H, J = 8.80 Hz, 芳香環), 8.23 (d, 2H, J = 8.80 Hz, 芳香環).
13C-NMR (100 MHz, DMSO-d
6) δ 51.8, 122.1, 123.9, 129.5, 140.4, 142.0, 148.1, 166.2.
FT-ICR MS (SALDI): 計算値 [M+Na, C
10H
9NO
4Na]
+: 230.0422 実側値: 230.0422.
【0174】
前記で得られた4−ニトロ桂皮酸メチルの
1H−NMRスペクトル、
13C−NMRスペクトルおよびマススペクトルをそれぞれ
図21、
図22および
図23に示す。
【0175】
(2)4,4’−ジニトロ−β−トルキシン酸ジメチル(10)の調製
前記で得られた4−ニトロ桂皮酸メチルの結晶0.5g(2.41mmol)をヘキサン25mL中に分散させ、得られた分散液に紫外線を高圧水銀灯で24時間照射することにより、4−ニトロ桂皮酸メチルから4,4’−ジニトロ−β−トルキシン酸ジメチルを生成させた。
【0176】
次に、前記で得られた分散液を濾過することにより、生成した4,4’−ジニトロ−β−トルキシン酸ジメチルを回収し、減圧下で乾燥した。得られた4,4’−ジニトロ−β−トルキシン酸ジメチルの収量は0.48gであり、収率は96.0%であった。
【0177】
なお、生成した化合物が4,4’−ジニトロ−β−トルキシン酸ジメチルであることは、以下の物性の測定結果から確認された。
【0178】
1H-NMR (400 MHz, DMSO-d
6) δ 3.67 (s, 6H, COOCH
3), 4.17 (m, 2H, シクロブタン), 4.51 (m, 2H, シクロブタン), 7.39 (d, 4H, J = 8.8 Hz, 芳香環), 7.96 (d, 4H, J = 8.8 Hz, 芳香環).
13C-NMR (100 MHz, DMSO-d
6) δ 41.6, 44.3, 52.0, 123.0, 129.2, 146.0, 146.3, 172.2.
FT-ICR MS (ESI): 計算値 [M+Na, C
20H
18N
2O
8Na]
+: 437.0955 実側値: 437.0954.
【0179】
前記で得られた4,4’−ジニトロ−β−トルキシン酸ジメチルの
1H−NMRスペクトル、
13C−NMRスペクトルおよびマススペクトルをそれぞれ
図24、
図25および
図26に示す。
【0180】
(3)4,4’−ジアミノ−β−トルキシン酸ジメチル(11)の調製
前記で得られた4,4’−ジニトロ−β−トルキシン酸ジメチル1.64g(3.96mmol)および10%パラジウム炭素(Pd/C)触媒0.45g(0.01mol%)をメタノール60mLに添加し、50℃の温度で1.5時間加熱することにより、4,4’−ジニトロ−β−トルキシン酸ジメチルの水素還元反応を行なった。反応終了後、得られた反応溶液を濾過することによってパラジウム炭素(Pd/C)触媒を除去し、減圧下でメタノールを除去することにより、生成した4,4’−ジアミノ−β−トルキシン酸ジメチル(11)を回収した。得られた4,4’−ジアミノ−β−トルキシン酸ジメチル(11)の収量は1.30gであり、収率は92.9%であった。
【0181】
なお、生成した化合物が4,4’−ジアミノ−β−トルキシン酸ジメチルであることは、以下の物性の測定結果から確認された。
【0182】
1H-NMR (400 MHz, DMSO-d
6): δ 3.61 (s, 6H, COOCH
3), 3.74-3.95 (4H, シクロブタン), 4.76 (s, 4H, NH
2), 6.30 (d, 4H, J = 8.3 Hz, 芳香環), 6.66 (d, 4H, J = 8.4 Hz, 芳香環).
13C-NMR (100 MHz, DMSO-d
6): δ 42.7, 44.3, 51.7, 113.5, 126.1, 128.5, 146.6, 173.1.
FT-ICR MS (ESI) 計算値 [M+H, C
20H
22N
2O
4-H]
+: 355.1658, 実側値 355.1651.
【0183】
前記で得られた4,4’−ジアミノ−β−トルキシン酸ジメチルの
1H−NMRスペクトル、
13C−NMRスペクトルおよびマススペクトルをそれぞれ
図27、
図28および
図29に示す。
【0184】
実施例5〔トルキシン酸系ポリマーの調製〕
4,4’−ジアミノ−β−トルキシン酸ジメチルおよびシクロブタンテトラカルボン酸二無水物を用いてトルキシン酸系ポリマー(β−ポリイミド)を調製するまでのスキームを以下に示す。
【0185】
【化21】
【0186】
(1)β−トルキシン酸ジメチル−アミド酸コポリマーの調製
4,4’−ジアミノ−β−トルキシン酸ジメチル100mg(0.28mmol)およびシクロブタンテトラカルボン酸二無水物59mg(0.28mmol)を脱水ジメチルアセトアミド0.2mLに溶解させた後、得られた溶液を窒素ガス雰囲気中で室温にて48時間撹拌させることにより、4,4’−ジアミノ−β−トルキシン酸ジメチルとシクロブタンテトラカルボン酸二無水物とを反応させた。得られた反応溶液をメタノールに滴下することにより、再沈殿を行ない、β−トルキシン酸ジメチル−アミド酸コポリマーを白色固体として得た。得られたβ−トルキシン酸ジメチル−アミド酸コポリマーの収量は61mgであり、収率は43.2%であった。
【0187】
前記で得られたβ−トルキシン酸ジメチル−アミド酸コポリマーの数平均分子量は1.03×10
5であり、重量平均分子量は1.42×10
5であった。
【0188】
なお、前記で得られたβ−トルキシン酸ジメチル−アミド酸コポリマーの数平均分子量および重量平均分子量は、ゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)にて以下の測定条件で測定した。以下の実施例においても、ポリマーの数平均分子量および重量平均分子量は、以下の測定条件にて測定した。
【0189】
〔測定条件〕
・装置:昭和電工(株)製、商品名:Shodex−101
・注入時の濃度:0.001質量%
・注入量:25μL
・流速:0.5mL/min
・溶媒:N,N−ジメチルホルムアミド
・カラム:昭和電工(株)製、商品名:Shodex KD−803および商品名:Shodex KD−804
・カラムの温度:40℃
【0190】
前記で得られたβ−トルキシン酸ジメチル−アミド酸コポリマーの
1H−NMRの測定結果を以下に示す。また、前記で得られたβ−トルキシン酸ジメチル−アミド酸コポリマーの
1H−NMRスペクトルを
図30に示す。
【0191】
1H-NMR (400 MHz, DMSO-d
6): δ 3.92-4.15 (シクロブタン), 6.98-7.31 (芳香環), 9.95 (NH), 12.4 (COOH).
【0192】
以上の結果から、前記で得られたβ−トルキシン酸ジメチル−アミド酸コポリマーは、式:
【0193】
【化22】
【0194】
(式中、Meはメチル基を示す)
で表わされる繰返し単位を有することが確認された。
【0195】
次に、前記で得られたβ−トルキシン酸ジメチル−アミド酸コポリマーの熱重量−示差熱分析を行なった。その結果を
図31に示す。前記結果から、前記で得られたβ−トルキシン酸ジメチル−アミド酸コポリマーの10%重量減少温度が339℃であることが確認された。
【0196】
なお、β−トルキシン酸ジメチル−アミド酸コポリマーの10%重量減少温度は、トルキシン酸ジメチル−アミド酸コポリマーを窒素ガス雰囲気中にて5℃/minの昇温速度で800℃まで加熱し、トルキシン酸ジメチル−アミド酸コポリマーの質量が10質量%減少するときの温度である。以下の実施例においてもポリマーの10%重量減少温度は、前記と同様の方法によって測定した。
【0197】
(2)β−トルキシン酸ジメチル−イミドコポリマーの調製
前記で得られたβ−トルキシン酸ジメチル−アミド酸コポリマー100mgをジメチルアセトアミド0.2mLに溶解させ、得られた溶液をガラスプレート上にキャストし、真空オーブン中で100℃、150℃、200℃および250℃と段階的に昇温させることにより、β−トルキシン酸ジメチル−イミドコポリマーのフィルムを形成させた。
【0198】
前記で得られたβ−トルキシン酸ジメチル−イミドコポリマーの
1H−NMRスペクトルを
図32に示す。その結果から、前記で得られたβ−トルキシン酸ジメチル−イミドコポリマーは、式:
【0199】
【化23】
【0200】
(式中、Meはメチル基を示す)
で表わされる繰返し単位を有することが確認された。
【0201】
次に、前記で得られたβ−トルキシン酸ジメチル−イミドコポリマーの熱重量−示差熱分析を行なった。その結果を
図33に示す。前記結果から、前記で得られたβ−トルキシン酸ジメチル−イミドコポリマーの10%重量減少温度が359℃であることが確認された。
【0202】
実施例6〔トルキシン酸系ポリマーの調製〕
4,4’−ジアミノ−β−トルキシン酸ジメチルおよび4,4’−ジアセトアミド−α−トルキシル酸を用いてトルキシン酸系ポリマー(β−ポリアミド)を調製するまでのスキームを以下に示す。
【0203】
【化24】
【0204】
(1)β−トルキシン酸ジメチル−アミドコポリマーの調製
4,4’−ジアミノ−β−トルキシン酸ジメチル(11)301.07mg(0.85mmol)および4,4’−ジアセトアミド−α−トルキシル酸343.74mg(0.84mmol)を亜リン酸トリフェニル0.24mL(0.92mmol)およびピリジン0.42mL(5.2mmol)の存在下でN−メチルピロリドン0.7mL中にて重縮合を行なった。その後、得られた反応溶液を水中に滴下することにより、再沈殿させ、得られた沈殿物を減圧乾燥させることにより、β−トルキシン酸ジメチル−アミドコポリマー(β−ポリアミド)を得た。得られたβ−トルキシン酸ジメチル−アミドコポリマーの収量は0.62gであり、収率は96.1%であった。
【0205】
また、前記で得られたβ−トルキシン酸ジメチル−アミドコポリマーの数平均分子量は4.63×10
5であり、重量平均分子量は5.43×10
5 であった。
【0206】
前記で得られたβ−トルキシン酸ジメチル−アミドコポリマーの
1H−NMRスペクトルを
図34に示す。その結果から、前記で得られたβ−トルキシン酸ジメチル−アミドコポリマーは、式:
【0207】
【化25】
【0208】
(式中、Meはメチル基、Acはアセチル基を示す)
で表わされる繰返し単位を有することが確認された。
【0209】
次に、前記で得られたβ−トルキシン酸ジメチル−アミドコポリマーの熱重量−示差熱分析を行なった。その結果を
図35に示す。前記結果から、前記で得られたβ−トルキシン酸ジメチル−アミドコポリマーの10%重量減少温度が330℃であることが確認された。
【0210】
実施例7〔トルキシン酸系ポリマーの調製〕
4,4’−ジアミノ−β−トルキシン酸ジメチルおよび1,3−フェニレンジイソシアネートを用いてトルキシン酸系ポリマー(β−ポリ尿素)を調製するまでのスキームを以下に示す。
【0211】
【化26】
【0212】
(1)β−トルキシン酸ジメチル−尿素コポリマーの調製
4,4’−ジアミノ−β−トルキシン酸ジメチル(11)100mg(0.28mmol)および1,3−フェニレンジイソシアネート51mg(0.28mmol)を脱水ジメチルアセトアミド0.2mLに溶解せさ、窒素ガス雰囲気中で室温にて48時間撹拌することにより、4,4’−ジアミノ−β−トルキシン酸ジメチルと1,3−フェニレンジイソシアネートとを反応させた。得られた反応溶液をメタノールに滴下することにより、生成したβ−トルキシン酸ジメチル−尿素コポリマーを再沈殿させて回収し、乾燥させた。得られたβ−トルキシン酸ジメチル−尿素コポリマーの収量は120mgであり、収率は80.1%であった。
【0213】
また、前記で得られたβ−トルキシン酸ジメチル−尿素コポリマーの数平均分子量は1.35×10
6であり、重量平均分子量は2.00×10
6であった。
【0214】
前記で得られたβ−トルキシン酸ジメチル−尿素コポリマーの
1H−NMRスペクトルを
図36に示す。その結果から、前記で得られたβ−トルキシン酸ジメチル−尿素コポリマーは、式:
【0215】
【化27】
【0216】
(式中、Meはメチル基を示す)
で表わされる繰返し単位を有する4,4’−ジアミノ−β−トルキシン酸ジメチル−尿素コポリマーであることが確認された。
【0217】
次に、前記で得られたβ−トルキシン酸ジメチル−尿素コポリマーの熱重量−示差熱分析を行なった。その結果を
図37に示す。前記結果から、前記で得られたβ−トルキシン酸ジメチル−尿素コポリマーの10%重量減少温度が271℃であることが確認された。
【0218】
実施例8〔トルキシン酸系ポリマーの調製〕
4,4’−ジアミノ−δ−トルキシン酸ジメチルおよび4,4’−ジアセトアミド−α−トルキシル酸を用いてトルキシン酸系ポリマー(δ−ポリアミド)を調製するまでのスキームを以下に示す。
【0219】
【化28】
【0220】
(1)δ−トルキシン酸ジメチル−アミドコポリマーの調製
4,4’−ジアミノ−δ−トルキシン酸ジメチル(4)99.39mg(0.28mmol)および4,4’−ジアセトアミド−α−トルキシル酸114.95mg(0.28mmol)を亜リン酸トリフェニル80μL(0.305mmol)およびピリジン0.14mL(1.74mmol)の存在下でN−メチルピロリドン(NMP)0.28mL中にて重縮合を行なった。前記で得られた反応溶液をメタノールに滴下することにより、生成したδ−トルキシン酸ジメチル−アミドコポリマーを再沈殿させ、濾過することによって回収した後、減圧乾燥させた。得られたδ−トルキシン酸ジメチル−アミドコポリマーの収量は0.12gであり、収率は56.6%であった。
【0221】
また、前記で得られたδ−トルキシン酸ジメチル−アミドコポリマーの数平均分子量は9.23×10
4であり、重量平均分子量は1.95×10
5であった。
【0222】
前記で得られたδ−トルキシン酸ジメチル−アミドコポリマーの
1H−NMRスペクトルを
図38に示す。その結果から、前記で得られたδ−トルキシン酸ジメチル−アミドコポリマーは、式:
【0223】
【化29】
【0224】
(式中、Meはメチル基、Acはアセチル基を示す)
で表わされる繰返し単位を有する4,4’−ジアミノ−δ−トルキシン酸ジメチル−アミドコポリマーであることが確認された。
【0225】
次に、前記で得られたδ−トルキシン酸ジメチル−アミドコポリマーの熱重量−示差熱分析を行なった。その結果を
図39に示す。前記結果から、前記で得られたδ−トルキシン酸ジメチル−アミドコポリマーの10%重量減少温度が430℃であることが確認された。
【0226】
また、前記で得られたδ−トルキシン酸ジメチル−アミドコポリマーの示差走査熱量(DSC)を調べた。その結果を
図40に示す。
図40に示された結果から、前記で得られたδ−トルキシン酸ジメチル−アミドコポリマーのガラス転移温度は246℃であることが確認された。
【0227】
実施例9〔トルキシン酸系ポリマーの調製〕
N,N’−ジフェニル−4,4’−ジアミノ−δ−トルキシンアミドおよびシクロブタンテトラカルボン酸二無水物を用いてトルキシン酸系ポリマー(δ−ポリイミド)を調製するまでのスキームを以下に示す。
【0228】
【化30】
【0229】
(1)δ−トルキシン酸アミド−アミド酸コポリマーの調製
N,N’−ジフェニル−4,4’−ジアミノ−δ−トルキシンアミド(8)200mg(0.42mmol)およびシクロブタンテトラカルボン酸二無水物(CBDA)82mg(0.42mmol)を脱水ジメチルアセトアミド0.7mLに溶解させた後、窒素ガス雰囲気中で室温にて48時間撹拌することにより、N,N’−ジフェニル−4,4’−ジアミノ−δ−トルキシンアミドとシクロブタンテトラカルボン酸二無水物とを反応させた。得られた反応溶液をエタノール中に滴下し、再沈殿させることにより、白色固体のδ−トルキシン酸アミド−アミド酸コポリマーを回収した。前記で得られたδ−トルキシン酸アミド−アミド酸コポリマーの収量は245mgであり、収率は87%であった。
【0230】
また、前記で得られたδ−トルキシン酸アミド−アミド酸コポリマーの数平均分子量は4.48×10
5であり、重量平均分子量は4.90×10
5であった。
【0231】
前記で得られたδ−トルキシン酸アミド−アミド酸コポリマーの
1H−NMRスペクトルを調べた。その結果を以下に示す。
【0232】
1H-NMR (400 MHz, DMSO-d
6): δ 3.84-3.51 (シクロブタン), 7.55-7.61(芳香環), 10.16 (NH), 12.40 (COOH)
【0233】
また、前記δ−トルキシン酸アミド−アミド酸コポリマーの
1H−NMRスペクトルを
図41に示す。以上の結果から、前記で得られたδ−トルキシン酸アミド−アミド酸コポリマーは、式:
【0234】
【化31】
【0235】
(式中、Phはフェニル基を示す)
で表わされる繰返し単位を有するδ−トルキシン酸アミド−アミド酸コポリマーであることが確認された。
【0236】
次に、前記で得られたδ−トルキシン酸アミド−アミド酸コポリマー200mgをジメチルアセトアミド2mLに溶解させ、得られた溶液をガラスプレート上にキャストし、真空オーブン中で100℃、150℃、200℃および250℃と段階的に昇温させることにより、δ−トルキシン酸アミド−イミドコポリマーのフィルムを形成させた。
【0237】
前記で得られたδ−トルキシン酸アミド−イミドコポリマーの
1H−NMRスペクトルを
図42に示す。その結果から、前記で得られたδ−トルキシン酸アミド−イミドコポリマーは、式:
【0238】
【化32】
【0239】
(式中、Phはフェニル基を示す)
で表わされる繰返し単位を有することが確認された。
【0240】
次に、前記で得られたδ−トルキシン酸アミド−イミドコポリマーの熱重量−示差熱分析を行なった。その結果を
図43に示す。前記結果から、前記で得られたδ−トルキシン酸アミド−イミドコポリマーの10%重量減少温度が384℃であることが確認された。
【0241】
実施例10〔δ−トルキシン酸アミド−α−トルキシル酸ジエステル−イミドターポリマーの調製〕
N,N’−ジフェニル−4,4’−ジアミノ−δ−トルキシンアミド(8)、4,4’−ジアミノ−α−トルキシル酸ジメチル、シクロブタンテトラカルボン酸二無水物を用いてδ−トルキシン酸アミド−α−トルキシル酸ジエステル−イミドターポリマーを調製するまでのスキームを以下に示す。
【0242】
【化33】
【0243】
(1)δ−トルキシン酸アミド−α−トルキシル酸ジメチル−アミド酸ターポリマーの調製
N,N’−ジフェニル−4,4’−ジアミノ−δ−トルキシンアミド(8)121mg(0.25mmol)、4,4’−ジアミノ−α−トルキシル酸ジメチル94mg(0.25mmol)およびシクロブタンテトラカルボン酸二無水物(CBDA)100mg(0.50mmol)を脱水ジメチルアセトアミド0.85mLに溶解させた後、窒素ガス雰囲気中で室温にて48時間撹拌することにより、N,N’−ジフェニル−4,4’−ジアミノ−δ−トルキシンアミド、4,4’−ジアミノ−α−トルキシル酸ジメチルおよびシクロブタンテトラカルボン酸二無水物を反応させた。得られた反応溶液をエタノール中に滴下し、生成したδ−トルキシン酸アミド−α−トルキシル酸ジメチル−アミド酸ターポリマーを再沈殿させることにより、白色固体のδ−トルキシン酸アミド−α−トルキシル酸ジメチル−アミド酸ターポリマーを回収した。前記で得られたδ−トルキシン酸アミド−α−トルキシル酸ジメチル−アミド酸ターポリマーの収量は261mgであり、収率は83%であった。
【0244】
また、前記で得られたδ−トルキシン酸アミド−α−トルキシル酸ジメチル−アミド酸ターポリマーの数平均分子量は
2.16×10
5であり、重量平均分子量は3.39×10
5であった。
【0245】
前記で得られたδ−トルキシン酸アミド−α−トルキシル酸ジメチル−アミド酸ターポリマーの
1H−NMRスペクトルを調べた。その結果を以下に示す。
【0246】
1H-NMR (400 MHz, DMSO-d
6): δ 3.54-4.27 (シクロブタン), 7.25-7.64 (芳香環), 10.22 (NH), 12.42 (COOH)
【0247】
また、前記δ−トルキシン酸エステル−α−トルキシル酸ジメチル−アミド酸ターポリマーの
1H−NMRスペクトルを
図44に示す。以上の結果から、前記で得られたδ−トルキシン酸アミド−α−トルキシル酸ジメチル−アミド酸ターポリマーは、式:
【0248】
【化34】
【0249】
(式中、Phはフェニル基、Meはメチル基示す)
で表わされる繰返し単位を有することが確認された。
【0250】
(2)δ−トルキシン酸アミド−α−トルキシル酸ジメチル−イミドターポリマーの調製
前記で得られたδ−トルキシン酸アミド−α−トルキシル酸ジメチル−アミド酸ターポリマーをジメチルアセトアミドに溶解させ、得られた溶液をガラスプレート上にキャストし、真空オーブン中で100℃、150℃、200℃および250℃と段階的に昇温させることにより、δ−トルキシン酸アミド−α−トルキシル酸ジメチル−イミドターポリマーのフィルムを形成させた。
【0251】
前記で得られたδ−トルキシン酸アミド−α−トルキシル酸ジメチル−イミドターポリマーの
1H−NMRスペクトルを
図45に示す。その結果から、前記で得られたδ−トルキシン酸アミド−α−トルキシル酸ジメチル−イミドターポリマーは、式:
【0252】
【化35】
【0253】
(式中、Phはフェニル基、Meはメチル基示す)
で表わされる繰返し単位を有することが確認された。
【0254】
次に、前記で得られたδ−トルキシン酸アミド−α−トルキシル酸ジメチル−イミドターポリマーの熱重量−示差熱分析を行なった。その結果を
図46に示す。前記結果から、前記で得られたδ−トルキシン酸アミド−α−トルキシル酸ジメチル−イミドターポリマーの10%重量減少温度が385℃であることが確認された。
【0255】
比較例1
国際公開第2013/073519号パンフレットに記載の「ポリイミドの合成例」に従ってα−ポリイミドを調製した。
【0256】
実験例
各実施例または比較例1で得られたポリマーの有機溶媒(25℃)に対する溶解性を調べ、以下の評価基準に基づいて溶解性を評価した。その結果を表1に示す。なお、表1に示す各略号は、以下のことを意味する。
【0257】
MeOH:メタノール
THF:テトラヒドロフラン
DMSO:ジメチルスルホキシド
DMF:ジメチルホルムアミド
NMP:N−メチルピロリドン
DMAc:ジメチルアセトアミド
TFA:トリフルオロ酢酸
【0258】
〔評価基準〕
++:溶解性に優れる
+ :溶解性が良好
− :不溶
【0259】
【表1】
【0260】
表1に示された結果から、各実施例で得られたポリマーは、従来の比較例1で得られたポリマーと対比して、各種有機溶媒に対する溶解性に優れていることがわかる。したがって、各実施例で得られたポリマーは、樹脂フィルム、コーティング剤などの用途に使用することが期待されるものである。