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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2016-166364(P2016-166364A)
(43)【公開日】2016年9月15日
(54)【発明の名称】ベンズオキサジン樹脂
(51)【国際特許分類】
   C08L 79/02 20060101AFI20160819BHJP
   C08L 81/06 20060101ALI20160819BHJP
   C08K 7/06 20060101ALI20160819BHJP
【FI】
   C08L79/02
   C08L81/06
   C08K7/06
【審査請求】有
【請求項の数】13
【出願形態】OL
【全頁数】32
(21)【出願番号】特願2016-82734(P2016-82734)
(22)【出願日】2016年4月18日
(62)【分割の表示】特願2013-550817(P2013-550817)の分割
【原出願日】2012年1月10日
(31)【優先権主張番号】1101302.6
(32)【優先日】2011年1月25日
(33)【優先権主張国】GB
(71)【出願人】
【識別番号】594060532
【氏名又は名称】サイテク・テクノロジー・コーポレーシヨン
(74)【代理人】
【識別番号】110000741
【氏名又は名称】特許業務法人小田島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ステイーブン・リチヤード・ワード
(72)【発明者】
【氏名】ポール・クロス
(72)【発明者】
【氏名】ロビン・マスケル
(57)【要約】      (修正有)
【課題】ベンズオキサジン−末端スルホン含有分子の製造及びベンズオキサジン樹脂中の強化剤のための相溶化剤としてのそれらの使用ならびにベンズオキサジン樹脂中の強化剤自身としてのベンズオキサジン−末端スルホン含有分子の使用方法の提供。
【解決手段】(A)熱硬化ベンズオキサジン樹脂前駆体成分;及び(C)1個もしくはそれより多いベンズオキサジン側鎖基及び/又は末端基を含有するポリアリールスルホン熱可塑性強化剤を含有する硬化性ポリマー組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)少なくとも1の、アリールスルホンを含まない熱硬化ベンズオキサジン樹脂前駆体;及び
(C)ポリアリールスルホン熱可塑性強化剤成分であって、1以上のベンゾキサジン側鎖基及び/又は末端基を有する成分
を含んでなる、
硬化性ポリマー組成物。
【請求項2】
成分(A)が式(I):
【化1】
[式中:
1は直接結合、−C(R3)(R4)−、−C(R3)(アリール)−、−C(O)−、−S−、−O−、−S(O)−、−S(O)2−、2価複素環及び−[C(R3)(R4)]x−アリーレン−[C(R5)(R6)]y−から選ばれるか、あるいはベンズオキサジン部分の2個のベンジル環は縮合していることができ;
1及びR2は独立してアルキル、シクロアルキル及びアリールから選ばれ;
3、R4、R5及びR6は独立してH、C1-8アルキル及びハロゲン化アルキルから選ばれ;そして
x及びyは独立して0又は1である]
の化合物を含む請求項1に記載された組成物。
【請求項3】
該ポリアリールスルホン熱可塑性強化剤(C)が、繰り返し単位を含んでなる1種もしくはそれより多いポリアリールスルホンを含み、繰り返し単位は:
−[ArSO2Ar]n
から選ばれ、式中:
Arはフェニレンであり;
n=1〜2であり、分数であることができ;
該フェニレン基は化学的単結合又は−SO2−以外の2価の基を介して直線的に連結しているか、あるいは一緒に縮合しており、
但し繰り返し単位−[ArSO2Ar]n−は常に、存在する各ポリマー鎖中で平均して少なくとも2個の該−[ArSO2Ar]n−単位が並んで存在するような割合でポリアリールスルホン中に存在し、
ポリアリールスルホンが1以上のベンゾキサジン側鎖基及び/又は末端基を有する、
請求項1に記載された組成物。
【請求項4】
ポリアリールスルホン中の繰り返し単位が:
(I):−X−Ar−SO2−Ar−X−Ar−SO2−Ar−
及び
(II):−X−(Ar)a−X−Ar−SO2−Ar−
であり、ここで:
XはO又はSであり、そして単位から単位で異なることができ;そして
単位I:IIの比は10:90〜80:20の範囲内である
請求項3に記載された組成物。
【請求項5】
強化繊維および請求項1に記載された組成物を含んでなる複合材料。
【請求項6】
強化繊維および硬化性ポリマー組成物を含む複合材料であって、硬化性ポリマー組成物が、
(A)少なくとも1の、アリールスルホンを含まない熱硬化ベンズオキサジン樹脂前駆体;
(B)アリールスルホン含有ベンズオキサジン成分及び
(C)ベンゾキサジン側鎖基又は末端基を含まないポリアリールスルホン熱可塑性強化剤成分
を含んでなり、
ここで、成分(A)、(B)、および(C)は単相組成物を形成し、硬化すると、該組成物は粒子状形態を示す硬化樹脂マトリックスを生成し、成分(C)は硬化樹脂マトリックス全体に分散された分離粒子状相を形成する、
複合材料。
【請求項7】
アリールスルホン含有ベンズオキサジン成分(B)が式(II):
【化2】
[式中、
2は1個もしくはそれより多いアリールスルホン単位、−[Ar−SO2−Ar]n−を含み;
ここでArはフェニレンであり;
n=1〜2であり、分数であることができ;
ここで、R10及びR11は独立してH、アルキル、シクロアルキル及びアリールから選ばれる]
の化合物から選択される、請求項6に記載された複合材料。
【請求項8】
2は、さらに1個もしくはそれより多いアリーレン単位−[Ar]a−を含み、ここで該アリールスルホン単位及びアリーレン単位はエーテル結合(−O−)及び/又はチオエーテル結合(−S−)により連結しており、a=1〜3であり、分数であることができ、1を超える場合、該フェニレン基は化学的単結合又は−SO2−以外の2価の基を介して直線的に連結しているか、あるいは一緒に縮合している、請求項7に記載された複合材料。
【請求項9】
式(II)の化合物が化合物(II−a)、(II−b)及び(II−c):
【化3】
から選ばれる請求項7に記載された複合材料。
【請求項10】
アリールスルホン含有ベンズオキサジン成分(B)が1種もしくはそれより多い式(III):
【化4】
[式中、R10及びR11は、独立してH、アルキル、シクロアルキル及びアリールから選ばれ、Z3は、SO2、又は、1個もしくはそれより多いアリールスルホン単位、−[Ar−SO2−Ar]n−を含み、ここでArはフェニレンであり、n=1〜2であり、分数であることができる]の化合物を含む、請求項6に記載された複合材料。
【請求項11】
強化繊維が連続性繊維またはチョップトファイバーである、請求項6に記載された複合材料。
【請求項12】
強化繊維が一方向的に配置された繊維又は編織布の形状である、請求項6に記載の複合材料。
【請求項13】
強化繊維が炭素繊維である、請求項12に記載の複合材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願へのクロスリファレンス
本出願は、2011年1月25日に申請された英国特許出願第1101302,6号明細書からの優先権の利益を請求する。
【0002】
発明の分野
本発明は、ベンズオキサジン−末端スルホン含有分子の製造及びベンズオキサジン樹脂中の強化剤のための相溶化剤としてのそれらの使用ならびにベンズオキサジン樹脂中の強化剤自身としての(in their own right)ベンズオキサジン−末端スルホン含有分子の使用に関する。
【背景技術】
【0003】
背景
熱硬化性樹脂の製造におけるベンズオキサジン化合物の使用は、それらの比較的長い保存寿命、分子設計柔軟性、低コスト、高いガラス転移温度、高い弾性率、比較的低い粘度、難燃性、低い吸湿性及び非常に低い収縮率(shrinkage)を含む複数の利点を与える。さらに、それらの重合は開環機構(下記のスキームにおいて二官能基性ベンズオキサジンに関して示される通り)を介して行われるので、やっかいな縮合副生成物の生成を避けることができる。
【0004】
【化1】
【0005】
特許文献1は、無溶媒系における複数のベンズオキサジン化合物の製造を記載している。それでも、ベンズオキサジンは他の熱硬化性マトリックスを超える複数の利点を有しているが、それらの主な欠点は、それらが一般的に非常に脆いことならびに高性能複合材料中における使用に適した商業的に入手可能な純粋なベンズオキサジンマトリックスがないことである。典型的には、ベンズオキサジンは通常用いられる熱可塑性強化剤と非常に劣った相溶性を有し、この非相溶性は、混合の間にベース樹脂中に熱可塑性材料を溶解するのを困難にするか、又は硬化の間の熱可塑性材料のグロス相分離(gross phase separation)に導く。ベンズオキサジン系の強化はゴム、修飾ベンズオキサジンモノマー及び低性能熱可塑性材料の使用に限られてきたが、これらはベンズオキサ
ジンの有益な性質、最も顕著には弾性率及び高いガラス転移温度を低下させもする。
【0006】
いくつかのベンズオキサジンハイブリッド系が商業的に入手可能である(Araldite(登録商標) MT樹脂として入手可能なベンズオキサジン−エポキシハイブリッド系のような)が、共反応物(エポキシ)の添加はベンズオキサジンの利点のいくつかを無効にし得る。現在、純粋なベンズオキサジンの有益な性質のすべてを保持しているが高性能用途に適した靭性を示すベンズオキサジン系を得ることはできない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開第95/31447−A号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
概略
本発明の目的は、前記の問題の1つもしくはそれより多くを解決することである。特に本発明の目的は、高い靭性及び優れた弾性率を示すベンズオキサジン熱硬化樹脂を提供することである。本発明のさらなる目的は、熱硬化樹脂成分がベンズオキサジン樹脂から成る、高い靭性及び優れた弾性率を示すベンズオキサジン熱硬化樹脂を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に従い:
(A)熱硬化ベンズオキサジン樹脂前駆体成分;
(B)場合によりアリールスルホン含有ベンズオキサジン成分及び
(C)ポリアリールスルホン熱可塑性強化剤成分
を含んでなり、ここで成分(B)の不在下において該成分(C)は1個もしくはそれより多いベンズオキサジン側鎖基及び/又は末端基を含む硬化性ポリマー組成物を提供する。
【0010】
本発明のさらに別の側面に従い、以下の成分:
(A)熱硬化ベンズオキサジン樹脂前駆体成分;
(B)場合によりアリールスルホン含有ベンズオキサジン成分;及び
(C)ポリアリールスルホン熱可塑性強化剤成分
を含んでなり、ここで成分(B)の不在下において該成分(C)は1個もしくはそれより多いベンズオキサジン側鎖基及び/又は末端基を含む組成物の、場合により硬化剤の存在下における反応から誘導される熱硬化樹脂組成物を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】1つの実施例に従うポリマー組成物に関する硬化サイクルを示す図。
図2】比較のための硬化されたポリマー試料の写真。
図3】樹脂マトリックス中の熱可塑性強化剤の不均一な粒子状形態を示す走査型電子顕微鏡(SEM)画像。
図4】樹脂マトリックス中の熱可塑性強化剤の微粒子状形態を示すSEM画像。
【発明を実施するための形態】
【0012】
詳細な記述
本明細書で用いられる場合、「硬化性ポリマー組成物」は硬化前の組成物を指し、「熱硬化樹脂組成物」は後硬化された(post−cured)組成物を指す。
【0013】
成分(B)は比較的低分子量のモノマー性又はオリゴマー性アリールスルホン含有ベン
ズオキサジン化合物であり、それは熱硬化性ベンズオキサジン樹脂前駆体成分(A)と相互作用し、ポリアリールスルホン熱可塑性成分(C)をマトリックス樹脂に相溶化する。成分(B)はベース樹脂の溶解パラメーターを変化させるように働き、形態(morphology)の制御を可能にすると思われる。
【0014】
第1の態様において、成分(C)はベンズオキサジン末端基で官能基化されておらず、成分(B)は必須である。この態様における非官能基化ポリアリールスルホン熱可塑性強化剤(すなわちベンズオキサジン末端基を含まない)は、下記で成分(C−i)と呼ばれる。
【0015】
第2の態様において、成分(C)は1個もしくはそれより多いベンズオキサジン末端基で官能基化され、強化機能及び相溶化機能の両方を果たす。ポリアリールスルホン熱可塑性強化剤の末端におけるベンズオキサジン基の形成は、熱可塑性材料が熱硬化性マトリックス樹脂(A)と反応して入り、それと相溶化することを可能にする。この態様における官能基化ポリアリールスルホン熱可塑性強化剤(すなわちベンズオキサジン末端基を含んでなる)は、下記で成分(C−ii)と呼ばれる。この態様において、成分(B)は存在しても又は存在しなくても良いが、成分(C)の数平均分子量が約7000かもしくはそれより高い、特に約9000かもしくはそれより高い態様において、成分(B)は存在するのが好ましい。
【0016】
本発明は、熱可塑性強化剤をベンズオキサジン樹脂と相溶化し、それによりベンズオキサジン樹脂の弾性率又はガラス転移温度を有意に低下させることなく強化を与えることにより、ベンズオキサジン熱硬化性樹脂を高性能複合材料において、例えば厳しい航空宇宙用途において用いることを可能にする。
【0017】
熱硬化ベンズオキサジン樹脂前駆体成分(A)
熱硬化ベンズオキサジン樹脂前駆体成分は、1種もしくはそれより多い重合可能なベンズオキサジン化合物を含む。重合可能なベンズオキサジン化合物は、化合物中に1個のベンズオキサジン部分がある一官能基性であることができるが、好ましくは少なくとも二官能基性であり、化合物中に少なくとも2個のベンズオキサジン部分を含有し、架橋の形成を可能にする。三官能基性前駆体も本発明の範囲内に包含される。好ましい態様において、前駆体は二官能基性であり、2個のベンズオキサジン部分を含有する。前駆体成分は1種もしくはそれより多い一官能基性重合可能ベンズオキサジン化合物及び/又は1種もしくはそれより多い二官能基性重合可能ベンズオキサジン化合物及び/又は1種もしくはそれより多い三官能基性重合可能ベンズオキサジン化合物及び/又はもっと多くの官能基を有する1種もしくはそれより多い重合可能ベンズオキサジン化合物のブレンドを含むことができる。さらに別の好ましい態様において、前駆体成分は1種もしくはそれより多い一官能基性重合可能ベンズオキサジン化合物と1種もしくはそれより多い二官能基性重合可能ベンズオキサジン化合物のブレンドを含む。
【0018】
好ましくは、前駆体は下記の式(I):
【0019】
【化2】
【0020】
[式中:
1は直接結合、−C(R3)(R4)−、−C(R3)(アリール)−、−C(O)−、−S−、−O−、−S(O)−、−S(O)2−、2価複素環及び−[C(R3)(R4)]x−アリーレン−[C(R5)(R6)]y−から選ばれるか、あるいはベンズオキサジン部分の2個のベンジル環は縮合していることができ;そして
1及びR2は独立してアルキル(好ましくはC1-8アルキル)、シクロアルキル(好ましくはC5-7シクロアルキル、好ましくはC6シクロアルキル)及びアリールから選ばれ、ここでシクロアルキル及びアリール基は場合により例えばC1-8アルキル、ハロゲン及びアミン基により、好ましくはC1-8アルキルにより置換されていることができ、置換されている場合、1個もしくはそれより多い置換基(好ましくは1個の置換基)が各シクロアルキル及びアリール基上に存在することができ;
3、R4、R5及びR6は独立してH、C1-8アルキル(好ましくはC1-4アルキル、そして好ましくはメチル)及びハロゲン化アルキル(ここでハロゲンは典型的には塩素又はフッ素(好ましくはフッ素)であり、且つここでハロゲン化アルキルは好ましくはCF3である)から選ばれ;そして
x及びyは独立して0又は1である]
の化合物から選ばれる。
【0021】
1つの態様において、Z1は直接結合、−C(R3)(R4)−、−C(R3)(アリール)−、−C(O)−、−S−、−O−、2価複素環及び−[C(R3)(R4)]x−アリーレン−[C(R5)(R6)]y−から選ばれるか、あるいはベンズオキサジン部分の2個のベンジル環は縮合していることができる。
【0022】
1が2価複素環から選ばれる場合、それは好ましくは3,3−イソベンゾフラン−1(3H)−オンであり、すなわちここで式(I)の化合物はフェノールフタレインから誘導される。
【0023】
1が−[C(R3)(R4)]x−アリーレン−[C(R5)(R6)]y−から選ばれる場合、2個のベンズオキサジン基を連結する鎖はさらに1個もしくはそれより多いアリーレン基及び/又は1個もしくはそれより多い−C(R7)(R8)−基(ここでR7及びR8は独立して上記でR3に関して定義した基から選ばれる)を含むことができるか、あるいは場合によりそれらにより中断されている(interrupted)ことができ、但し(各)(the or each)置換されたもしくは置換されていないメチレン基は別の置換されたもしくは置換されていないメチレン基と隣接しない。
【0024】
好ましい態様において、該アリーレン基はフェニレンである。1つの態様において、フェニレン基に結合する基は互いに対してパラ−又はメタ位で配置されることができる。
【0025】
基Z1は線状又は非線状であることができ、典型的には線状である。
【0026】
基Z1は、好ましくは式(I)に示す通り、ベンズオキサジン部分の酸素原子に対してパラ位においてベンズオキサジン部分のそれぞれのベンジル基に結合し、これは好ましい異性体配置である。しかしながら基Z1は、ビスベンズオキサジン化合物中のベンジル基の1つ又は両方において、メタ位又はオルト位のいずれかで結合することもできる。かくして基Z1はパラ/パラ;パラ/メタ;パラ/オルト、メタ/メタ又はオルト/メタ配置でベンジル環に結合することができる。1つの態様において、熱硬化ベンズオキサジン樹脂成分(A)は異性体の混合物を含み、好ましくはここで混合物の大部分は式(I)に示されるパラ/パラ異性体であり、好ましくは、これは異性体混合物全体の少なくとも75モル%、好ましくは少なくとも90モル%そして好ましくは少なくとも99モル%で存在する。
【0027】
好ましい態様において、該アリール基はフェニルである。
【0028】
好ましい態様において、前駆体はZ1が−C(CH32−、−CH2−及び3,3−イソベンゾフラン−1(3H)−オンから選ばれる化合物、すなわちビスフェノールA、ビスフェノールF及びフェノールフタレインのベンズオキサジン誘導体から選ばれる。
【0029】
好ましい態様において、前駆体はR1及びR2が独立してアリール、好ましくはフェニルから選ばれる化合物から選ばれる。1つの態様において、(各)アリール基は置換されていることができ、好ましくはここで置換基はC1-8アルキルから選ばれ、且つ好ましくはここで(各)アリール基上に1個の置換基が存在する。好ましくは、R1及びR2は独立して非置換アリールから選ばれ、好ましくは非置換フェニルである。
【0030】
そのようなベンズオキサジン樹脂前駆体化合物を、当該技術分野において周知の通常の方法を用いる、例えば国際公開第95/31447−A号パンフレットに開示されている方法によるビスフェノール、ホルムアルデヒド及びアミンの間の反応により合成することができる。
【0031】
適した一官能基性重合可能ベンズオキサジン化合物をフェノール、アミン及びホルムアルデヒドの反応生成物から誘導することができ、ここでアミン上の置換基はR1に関して上記で定義したものから選ばれる。
【0032】
本明細書で定義される重合可能ベンズオキサジン化合物の(各)ベンズオキサジン基中のベンジル環は、各環の3つの利用できる位置のいずれにおいても独立して置換されていることができ、典型的には場合による置換基はZ1基の結合位置に対してオルト位に存在する。しかしながら好ましくは、ベンジル環は非置換のままである。
【0033】
さらに別の態様において、重合可能ベンズオキサジン化合物は、米国特許第2008/0045688−A1号明細書及び米国特許第2009/0054614−A1号明細書に開示されているビスベンズオキサジン化合物のいずれかから選ばれ、それらの特許文献の開示は引用することにより本明細書の内容となる。さらに別の態様において、重合可能ベンズオキサジン化合物は、米国特許第2008/0045688−A1号明細書に開示されているトリスベンズオキサジン化合物のいずれかから選ばれ、その特許文献の開示は引用することにより本明細書の内容となる。
【0034】
熱可塑性強化剤成分(C)
熱可塑性強化剤(C)はエーテル結合した繰り返し単位を含んでなり、場合によりさらにチオエーテル結合した繰り返し単位を含んでなる1種もしくはそれより多いポリアリー
ルスルホンを含み、単位は:
−[ArSO2Ar]n
及び場合により:
−[Ar]a
から選ばれ、式中:
Arはフェニレンであり;
n=1〜2であり、分数(fractional)であることができ;
a=1〜3であり、分数であることができ、1を超える場合、該フェニレン基は化学的単結合又は−SO2−以外の2価の基(好ましくはここで2価の基は基−C(R92−であり、ここで各R9は同じか又は異なり、H及びC1-8アルキル(特にメチル)から選ばれる)を介して直線的に連結しているか、あるいは一緒に縮合しており、但し繰り返し単位−[ArSO2Ar]n−は常に、存在する各ポリマー鎖中で平均して少なくとも2個の該−[ArSO2Ar]n−単位が並んで(in sequence)存在するような割合でポリアリールスルホン中に存在し、
且つここでポリアリールスルホンは1個もしくはそれより多い反応性側鎖及び/又は末端基を有する。
【0035】
「分数」により、種々のn又はaの値を有する単位を含有する与えられるポリマー鎖に関する平均値を指す。
【0036】
1つの態様において、ポリアリールスルホン中のフェニレン基は単結合を介して連結している。
【0037】
ポリアリールスルホン中のフェニレン基は1個もしくはそれより多い置換基(登録商標)により置換されていることができ、置換基はそれぞれ独立して、場合によりO、S、Nもしくはハロ(例えばClもしくはF)から選ばれる1個もしくはそれより多いヘテロ原子を含んでなることができるC1-8分枝鎖状もしくは直鎖状脂肪族飽和もしくは不飽和脂肪族基又は部分;ならびに活性水素を与える基、特にOH、NH2、Raが最高で8個の炭素原子を含有する炭化水素基であるNHRa又は−SH、あるいは他の架橋活性を与える基、特にベンズオキサジン、エポキシ、(メタ)アクリレート、シアナート、イソシアナート、アセチレン又はビニル、アリルもしくはマレイミドにおけるようなエチレン、無水物、オキサゾリン及び不飽和を含有するモノマーから選ばれる。
【0038】
好ましくは、フェニレン基はメタ−又はパラ−(好ましくはパラ)である。ポリマー主鎖に沿ってコンホーメーション(特にメタ−及びパラ−コンホーメーション)の混合物が存在することができる。
【0039】
好ましくは、ポリアリールスルホンはエーテル及び/又はチオ−エーテル結合により、好ましくはエーテル結合により連結した−[ArSO2Ar]n−及び−[Ar]a−繰り返し単位の組み合わせを含む。かくして好ましくは、ポリアリールスルホンは、エーテル結合したポリエーテルスルホン(PES)及びポリエーテルエーテルスルホン(PEES)繰り返し単位の組み合わせを含む。
【0040】
−[ArSO2Ar]n−及び−[Ar]a−繰り返し単位の相対的な割合は、存在する各ポリマー鎖中で平均して少なくとも2個の−[ArSO2Ar]n−繰り返し単位が直接互いに連続するような割合であり、−[ArSO2Ar]n−単位対−[Ar]a−単位の比は、好ましくは1:99〜99:1、より好ましくは10:90〜90:10の範囲内である。典型的には、[ArSO2Ar]n:[Ar]aの比は75:25〜50:50の範囲内である。
【0041】
1つの態様において、ポリアリールスルホン中の好ましい繰り返し単位は:
(I):−X−Ar−SO2−Ar−X−Ar−SO2−Ar−(本明細書で「PES単位」と呼ばれる)
及び
(II):−X−(Ar)a−X−Ar−SO2−Ar−(本明細書で「PEES単位」と呼ばれる)
であり、ここで:
XはO又はS(好ましくはO)であり、単位から単位で異なることができ;そして
単位I:IIの比は好ましくは10:90〜80:20の範囲内、より好ましくは10:90〜55:45の範囲内、より好ましくは25:75〜50:50の範囲内であり、1つの態様において、I:IIの比は20:80〜70:30の範囲内、より好ましくは30:70〜70:30の範囲内、最も好ましくは35:65〜65:35の範囲内である。
【0042】
ポリアリールスルホンの繰り返し単位の好ましい相対的な割合を、(SO2の重量)/(平均繰り返し単位の重量)の100倍として定義されるSO2含有量の重量パーセントにより表わすことができる。好ましいSO2含有率は少なくとも22、好ましくは23〜25%である。a=1である場合、これは少なくとも20:80、好ましくは35:65〜65:35の範囲内のPES/PEES比に相当する。
【0043】
ポリエーテルエーテルスルホンの流れ温度(flow temperature)は一般に対応するMnのポリエーテルスルホンの流れ温度より低いが、両方とも類似の機械的性質を有する。従って、上記のa及びnに関する値を決定することにより、比を決定することができる。
【0044】
米国特許第6437080号明細書は、そのような組成物をそれらのモノマー前駆体から、所望通りの選ばれた分子量におけるモノマー前駆体を単離するやり方で得るための方法を開示しており、それらの開示は引用することにより本明細書の内容となる。
【0045】
上記の割合は、挙げられた単位のみに言及している。そのような単位の他に、ポリアリールスルホンは最高で50モル%、好ましくは最高で25モル%の他の繰り返し単位を含有することができ:その場合、好ましいSO2含有率の範囲はポリマー全体に適用される。そのような単位は例えば式:
【0046】
【化3】
【0047】
のものであることができ、式中、Lは直接結合、酸素、硫黄、−CO−又は2価の基(好ましくは2価の炭化水素基、好ましくはここで2価の基は基−C(R122−であり、ここで各R12は同じか又は異なることができ、H及びC1-8アルキル(特にメチル)から選ばれる)である。
【0048】
ポリアリールスルホンが求核的合成の生成物である場合、その単位は例えばヒドロキノン、4,4’−ジヒドロキシビェニル、レゾルシノール、ジヒドロキシナフタレン(2,6及び他の異性体)、4,4’−ジヒドロキシベンゾフェノン、2,2’−ジ(4−ヒドロキシフェニル)プロパン及び−メタンから選ばれる1種もしくはそれより多いビスフェ
ノール及び/又は対応するビスチオール又はフェノール−チオールから誘導されていることができる。ビスチオールが用いられる場合、それはその場で生成することができ、すなわちジハライドをアルカリスルフィド又はポリスルフィドあるいはチオサルフェートと反応させることができる。
【0049】
そのような追加の単位の他の例は式:
【0050】
【化4】
【0051】
のものであり、式中、Q及びQ’は同じか又は異なることができ、CO又はSO2であり;Ar’は2価の芳香族基であり;そしてpは0、1、2又は3であり、但しQがSO2である場合pはゼロではない。Ar’は、好ましくはフェニレン、ビフェニレン又はターフェニレンから選ばれる少なくとも1個の2価の芳香族基である。特別な単位は式:
【0052】
【化5】
【0053】
を有し、ここでqは1、2又は3である。ポリマーが求核的合成の生成物である場合、そのような単位は、例えば4,4’−ジハロベンゾフェノン、4,4’ビス(4−クロロフェニルスルホニル)ビフェニル、1,4,ビス(4−ハロベンゾイル)ベンゼン及び4,4’−ビス(4−ハロベンゾイル)ビフェニルから選ばれる1種もしくはそれより多いジハライドから誘導されていることができる。もちろんそれらは部分的に対応するビスフェノールから誘導されていることができる。
【0054】
ポリアリールスルホンは、ハロフェノール及び/又はハロチオフェノールからの求核的合成の生成物であることができる。いずれの求核的合成においても、ハロゲンが塩素又は臭素である時(if chlorine or bromine)、それを銅触媒の存在により活性化することができる。そのような活性化は、ハロゲンを電子吸引性基により活性化するなら、多くの場合に不必要である。いずれにしても、フルオリドは通常クロリドより活性である。ポリアリールスルホンのいずれの求核的合成も、好ましくは最高で化学量論的量より10モル%過剰の1種もしくはそれより多いアルカリ金属塩、例えばKOH、NaOH又はK2CO3の存在下で行われる。
【0055】
上記の通り、ポリアリールスルホンは1個もしくはそれより多い反応性側鎖基及び/又は末端基を含有し、好ましい態様においてポリアリールスルホンは2個のそのような反応性側鎖基及び/又は末端基を含有する。1つの態様において、ポリアリールスルホンは1個のそのような反応性側鎖基及び/又は末端基を含む。モノマーの反応により、あるいは単離の前か又はそれに続く生成物ポリマーのその後の転換により反応性末端基を得ること
ができる。好ましくは、反応性側鎖基及び/又は末端基は、活性水素を与える基、特にOH、NH2、NHRb又は−SH(ここでRbは最高で8個の炭素原子を含有する炭化水素基である)であるか、あるいは他の架橋活性を与える基、特にベンズオキサジン、エポキシ、(メタ)アクリレート、シアナート、イソシアナート、アセチレン又はビニル、アリルもしくはマレイミドにおけるようなエチレン、無水物、オキサゾリン及び飽和を含有するモノマーである。1つの態様において、反応性側鎖基及び/又は末端基は式−A’−Yのものであり、ここでA’は結合又は2価の炭化水素基、好ましくは芳香族の基、好ましくはフェニルである。Yの例は活性水素を与える基、特にOH、NH2、NHRb又は−SH(ここでRbは最高で8個の炭素原子を含有する炭化水素基である)、あるいは他の架橋活性を与える基、特にベンズオキサジン、エポキシ、(メタ)アクリレート、シアナート、イソシアナート、アセチレン又はビニル、アリルもしくはマレイミドにおけるようなエチレン、無水物、オキサゾリン及び飽和を含有するモノマーである。他の架橋活性を与える基は、直接結合を介して、あるいはエーテル、チオエーテル、スルホン、−CO−又は上記のような2価の炭化水素基結合を介して、最も典型的にはエーテル、チオエーテル又はスルホン結合を介してポリアリールスルホンのAr基に結合することができる。さらに別の態様において、末端基又はより典型的にはその一部のみが、ハロ基(特にクロロ)から選ばれることができる。成分(C)は、異なる末端基を有するポリアリールスルホンの混合物を含むことができる。1つの態様において、成分(C)のポリアリールスルホンが複数種の末端基を含む場合、末端基の少なくとも50モル%、好ましくは少なくとも60モル%、好ましくは少なくとも70モル%、好ましくは少なくとも80モル%そして好ましくは少なくとも85モル%は1つの型のものであろう。
【0056】
成分(C−i)において、反応性側鎖基及び/又は末端基は、好ましくは活性水素を与える基から選ばれ、特にNH2である。好ましくは、ポリアリールスルホンは2個のそのような基を含む。1つの態様において、ポリアリールスルホンは1個のそのような反応性側鎖基及び/又は末端基を含む。
【0057】
成分(C−ii)において、ポリアリールスルホンは、ベンズオキサジンから選ばれる少なくとも1個の反応性側鎖基及び/又は末端基、そして好ましくは2個のそのような基を含み、それらは好ましくはポリマー主鎖の1つの末端又は各末端に位置する。かくして成分(C−ii)において、ポリアリールスルホンは、典型的にはベンズオキサジン末端基を末端とする。上記のリストから選ばれる他の反応性側鎖基及び/又は末端基も存在することができる。1つの態様において、ポリアリールスルホンは1個のそのような反応性側鎖基及び/又は末端基を含む。
【0058】
ベンズオキサジン側鎖基及び/又は末端基の導入は、アルコール、アミン及びホルムアルデヒドの間の通常の反応を介して達成され得る。かくして成分(C−ii)のベンズオキサジン基は、アミン末端ポリアリールスルホン又はアルコール末端ポリアリールスルホンから誘導され得る。アミン末端ポリアリールスルホンから誘導される成分(C−ii)のベンズオキサジン末端基は、ベンズオキサジンのN原子を介してポリアリールスルホンのAr基に結合する。アルコール末端ポリアリールスルホンから誘導される成分(C−ii)のベンズオキサジン末端基は、ベンズオキサジンのベンジル環の環炭素原子を介してポリマー主鎖に結合し、O、S、SO2又は本明細書に記載される他の結合(linkage)に、あるいはAr基に結合することができる。
【0059】
ポリアリールスルホンの数平均分子量は、適切には2000〜60000の範囲内である。好ましくは、本発明における使用に適したポリアリールスルホンの分子量は、約2,000〜約30,000、好ましくは約5,000〜約15,000、好ましくは約7,000〜約13,000、そして1つの態様においては約9,000〜約12,000の範囲内である。さらに別の態様において、数平均分子量は9000〜25000(好まし
くは11000〜25000)である。1つの別の態様において、数平均分子量は3000〜11000(好ましくは3000〜9000)の範囲内である。そのようなポリアリールスルホンは、熱硬化樹脂のみと比較すると、架橋された熱硬化領域の間に強靭な熱可塑性材料の領域を与えることにより、構造的にならびに化学的相互作用により靭性を向上させる。官能基化ポリアリールスルホン熱可塑性強化剤成分(C−ii)(すなわちベンズオキサジン末端基を含んでなる)の数平均分子量が少なくとも7,000そして特に少なくとも9,000である場合、成分(B)が組成物中に存在するのが好ましい。成分(C−ii)の数平均分子量が2,000〜約9,000の範囲内である、特に2,000〜約7,000の範囲内である場合、成分(B)は場合により存在することができる。
【0060】
成分(C)に従う化合物の合成は、米国特許第2004/0044141号明細書及び米国特許第6437080号明細書にさらに記載されており、それらの開示は引用することにより本明細書の内容となる。
【0061】
アリールスルホン−含有ベンズオキサジン成分(B)
アリールスルホン含有ベンズオキサジン成分(B)は、1種もしくはそれより多いアリールスルホン含有ベンズオキサジン化合物を含む。好ましい態様において、アリールスルホン含有ベンズオキサジン成分(B)は、一般式(II):
【0062】
【化6】
【0063】
の化合物から選ばれる1種もしくはそれより多い化合物を含み、式中、Z2は1個もしくはそれより多いアリールスルホン単位、−[Ar−SO2−Ar]n−を含み、場合によりさらに1個もしくはそれより多いアリーレン単位−[Ar]a−を含み、ここで該アリールスルホン単位及びアリーレン単位はエーテル結合(−O−)及び/又はチオ−エーテル結合(−S−)により、好ましくはエーテル結合及び場合によりチオ−エーテル結合によっても、そして好ましくはエーテル結合のみにより連結しており;
ここでArはフェニレンであり;
n=1〜2であり、分数であることができ;
a=1〜3であり、分数であることができ、1を超える場合、該フェニレン基は化学的単結合又は−SO2−以外の2価の基(好ましくはここで2価の基は基−C(R92−であり、ここで各R9は同じか又は異なり、H及びC1-8アルキル(特にメチル)から選ばれる)を介して直線的に連結しているか、あるいは一緒に縮合しており、
且つここでR10及びR11は独立してH、アルキル(好ましくはC1-8アルキル)、シクロアルキル(好ましくはC5-7シクロアルキル、好ましくはC6シクロアルキル)及びアリールから選ばれ、ここでシクロアルキル及びアリール基は場合により例えばC1-8アルキル、ハロゲン及びアミン基により、好ましくはC1-8アルキルにより置換されていることができる。
【0064】
式(II)中の基Arは置換されていても置換されていなくても良いが、好ましくは置換されていない。置換されている場合、1個もしくはそれより多い置換基が存在すること
ができ、例えばアルキル(好ましくはC1-4アルキル)、不飽和ヒドロカルビル及びハロゲン基から、そして好ましくはC1-4アルキルから選ばれる。
【0065】
好ましくは、(各)フェニレン基はメタ−又はパラ−である(そして1つの態様においてパラである)。コンホーメーション(特にメタ−及びパラ−コンホーメーション)の混合物が存在することができる。
【0066】
式(II)中のAr基は、成分(C)におけるAr基から独立して選ばれる。
【0067】
式(II)に従う化合物のいくつかの例は:
【0068】
【化7】
【0069】
である。
【0070】
さらに別の態様においてアリールスルホン含有ベンズオキサジン成分(B)は、R10及びR11が水素であり、且つベンズオキサジン基のベンジル環が利用できる位置の1つもしくはそれより多くにおいて、特に酸素原子に対して3−もしくは5−位において、上記でR10及びR11に関して記載したアルキル、シクロアルキル及びアリールから独立して選ばれる置換基によりさらに置換されている1種もしくはそれより多い一般式(II)の化合物を含む。
【0071】
さらに別の態様においてアリールスルホン含有ベンズオキサジン成分(B)は、R10
びR11がアルキル、シクロアルキル及びアリールから独立して選ばれ、且つベンズオキサジン基のベンジル環が利用できる位置の1つもしくはそれより多くにおいて、特に酸素原子に対して3−もしくは5−位において、上記でR10及びR11に関して記載したアルキル、シクロアルキル及びアリールから独立して選ばれる置換基によりさらに置換されている1種もしくはそれより多い一般式(II)の化合物を含む。
【0072】
好ましくは、R10及びR11は、ベンズオキサジン基の各ベンジル環上で同じである、及び/又は追加の置換基の位置及び正体(identity)はベンズオキサジン基の各ベンジル環上で同じである。
【0073】
別の態様において、アリールスルホン含有ベンズオキサジン成分(B)は、一般式(III):
【0074】
【化8】
【0075】
の化合物から選ばれる1種もしくはそれより多い化合物を含み、式中、R10及びR11は式(II)に関して定義した通りであるが、それらから独立して選ばれ、Z3はSO2及び式(II)に関して定義した通りであるがそれらから独立して選ばれるZ2より成る群から選ばれる。
【0076】
アリールスルホン含有ベンズオキサジン成分(B)は、1種もしくはそれより多い式(II)の化合物及び1種もしくはそれより多い式(III)の化合物のブレンドを含むことができる。
【0077】
成分(B)としての使用に適した化合物の数平均分子量は、典型的には最高で約2000である。
【0078】
既知の方法、例えば国際公開第95/31447−A号パンフレットに開示されている方法に従って、ベンズオキサジン末端化合物を製造することができる。一般的に言うと、フェノール及びアミン化合物の混合物(成分の反応性及びそれらの物理的形態に依存して、化学量論的比率又は大過剰を有する比率における)を約80〜130℃の温度で約30分〜4時間加熱する。溶融生成物をわずかに冷まし、次いで温かい間に撹拌ジエチルエーテル中に注ぐ。ジエチルエーテル中の1〜2日に及ぶソックスレー(Soxhlet)抽出により生成物を回収し、且つ精製し、洗浄し(例えば70℃で30分間0.1M NaOH溶液を用いて、及び次いで水を用いて)、真空中で乾燥することができる。
【0079】
熱硬化性組成物及びそれのための用途
熱硬化ベンズオキサジン樹脂前駆体成分(A)を、場合により上記の通り成分(B)の存在下に、且つ場合により硬化剤及び/又は触媒の存在下で、熱硬化樹脂組成物を与えるのに有効な相対的な量で成分(C)と反応させる。
【0080】
用いられる場合、アリールスルホン含有ベンズオキサジン成分(B)の重量の割合は、典型的には組成物中の成分(A)、(B)及び(C)の合計重量の約70重量%より多くない、典型的には約60重量%より多くない、典型的には約55重量%より多くない、そして好ましくは少なくとも約5重量%、好ましくは少なくとも約8重量%、好ましくは少なくとも約10重量%、好ましくは少なくとも約15重量%、好ましくは少なくとも約20重量%、好ましくは少なくとも約25重量%、好ましくは少なくとも約30重量%、好ましくは少なくとも約35重量%そして好ましくは約15〜約70重量%、より好ましくは約20〜約60重量%、そして特に約30〜約55重量%の範囲内の量で存在する。成分(B)の存在下で成分(A)が用いられる場合、成分(A)及び(B)の正体は異なる。
【0081】
熱可塑性ポリアリールスルホン強化剤(成分(C))の重量の割合は、典型的には組成物中の成分(A)、(B)及び(C)の合計重量の約5〜約70重量%、より好ましくは約5〜約50重量%、より好ましくは約5〜約40重量%、そして特に約5〜約20重量%の範囲内である。
【0082】
本発明の第1の態様において、アリールスルホン含有ベンズオキサジン成分(B)は、好ましくは約5〜約70重量%の範囲内、好ましくは少なくとも10重量%、好ましくは少なくとも約15重量%で、及び他に、成分(B)に関する一般的な及び好ましい範囲に関して上記に記載した通りに存在し、熱可塑性ポリアリールスルホン成分(C−i)は約5重量%〜約70重量%の範囲内で、及び他に成分(C)に関する一般的な及び好ましい範囲に関して上記に記載した通りに存在する。パーセンテージは、組成物中の成分(A)、(B)及び(C)の合計重量に対する成分の重量パーセンテージである。
【0083】
本発明の第2の態様において、ベンズオキサジン末端熱可塑性ポリアリールスルホン成分(C−ii)は、典型的には約50重量%より多くない量で、及び他に成分(C)に関する一般的な及び好ましい範囲に関して上記で記載した通りに存在する。ポリアリールスルホン−含有ベンズオキサジン成分(B)は、場合により上記の量で存在することができる。
【0084】
本発明の硬化性ポリマー組成物は、熱的に硬化性である。硬化剤及び/又は触媒の添加は場合によるが、そのようなものの使用は、所望なら硬化速度を上げることができ、及び/又は硬化温度を下げることができる。好ましい態様において、上記の硬化性ポリマー組成物は、硬化剤又は触媒を使用せずに熱的に硬化する。
【0085】
1つの態様において、組成物はさらに1種もしくはそれより多い反応性希釈剤、例えば熱硬化ポリマー前駆体を含み、それは上記のベンズオキサジン樹脂系のための加工助剤として有用であり得る。熱硬化樹脂はエポキシ樹脂、付加重合樹脂(特にビスマレイミド樹脂)、ホルムアルデヒド縮合物樹脂(特にホルムアルデヒド−フェノール樹脂)、シアナート樹脂、イソシアナート樹脂、フェノール樹脂及びそれらの2つもしくはそれより多くの混合物より成る群から選ばれることができる。好ましくは、熱硬化ポリマーはエポキシ、フェノール又はシアナートエステル樹脂、特にエポキシ及びフェノール樹脂、そして特にエポキシ樹脂である。エポキシ樹脂は、好ましくは芳香族ジアミン、芳香族モノ第1級アミン、アミノフェノール、多価フェノール、多価アルコール、ポリカルボン酸など又はそれらの混合物より成る化合物の群の1つもしくはそれより多くのモノ−もしくはポリグリシジル誘導体から誘導されるエポキシ樹脂である。付加重合樹脂の例は、アクリル樹脂、ビニル樹脂、ビスマレイミド及び不飽和ポリエステルである。ホルムアルデヒド縮合物樹脂の例は、ウレア、メラミン及びフェノール樹脂(phenols)である。組成物中の熱硬化樹脂は、存在する場合、例えば欧州特許第A−0311349号明細書、欧州特許第A−0365168号明細書、欧州特許第A−0486197号明細書又は米国特許
第6013730号明細書に開示されているような、周囲温度で液体である少なくとも1種のエポキシ、シアナートエステル又はフェノール樹脂前駆体を含む。
【0086】
エポキシ樹脂はN,N,N’,N’−テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン(例えば銘柄MY 9663、MY 720又はMY 721;Ciba−Geigy);N,N,N’,N’−テトラグリシジル−ビス(4−アミノフェニル)−1,4−ジイソ−プロピルペンゼン(例えばEPON 1071;Shell Chemical Co.);N,N,N’,N’−テトラグリシジル−ビス(4−アミノ−3,5−ジメチルフェニル)−1,4−ジイソプロピルベンゼン(例えばEPON 1072;Shell Chemical Co.);p−アミノフェノールのトリグリシジルエーテル(例えばMY 0510、Ciba−Geigy);2,2−ビス(4,4’−ジヒドロキシフェニル)プロパンのようなビスフェノールAに基づく材料のジグリシジルエーテル(例えばDE R 661(Dow)又はEpikote 828(Shell))ならびに好ましくは25℃における粘度が8〜20Pa sのノボラック(Novolak)樹脂;フェノールノボラック樹脂のグリシジルエーテル(例えばDEN 431又はDEN 438;Dow);ジグリシジル1,2−フタレート(例えばGLY CEL A−100);ジヒドロキシジフェニルメタン(ビスフェノール F)のジグリシジル誘導体(例えばPY 306;Ciba Geigy)から選ばれることができる。他のエポキシ樹脂前駆体には3’,4’−エポキシシクロヘキシル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレートのような環状脂肪族化合物(例えばCY 179;Ciba Geigy)及びUnion Carbide Corporationの“Bakelite”の種類(range)内のものが含まれる。
【0087】
シアナートエステル樹脂は、1種もしくはそれより多い中心式(central formula)NCOAr(YxArmqOCNの化合物及びオリゴマー及び/又はポリシアナートエステルならびにそれらの組み合わせから選ばれることができ、ここでArは単一の又は縮合芳香族基又は置換芳香族基及びそれらの組み合わせであり、それらの間に核がオルト、メタ及び/又はパラ位において連結し、x=0〜2であり、m及びq=独立して0〜5である。Yは酸素、カルボニル、硫黄、酸化硫黄、化学結合、オルト、メタ及び/又はパラ位において連結する芳香族基ならびに/あるいはR1及びR2が水素、ハロゲン化アルカン、例えばフッ素化アルカン及び/又は置換芳香族基及び/又は炭化水素単位であり、ここで該炭化水素単位は単結合又は多重結合しており、各R1及び/又はR2に関して最高で20個の炭素原子からなるCR12、ならびに、R3がアルキル、アリール、アルコキシ又はヒドロキシであり、R’4がR4に等しいことができ、単結合している酸素又は化学結合であり、R5が二重結合している酸素又は化学結合であるP(R34R’45)あるいはR3及びR4、R’4が上記のP(R34R’45)における通りに定義され、R5が上記のR3に類似して定義されるSi(R34R’46)より成る群から選ばれる連結基である。場合により、熱硬化樹脂(thermoset)は本質的にフェノール/ホルムアルデヒド由来ノボラックのシアナートエステル又はそのジシクロペンタジエン誘導体から成ることができ、その例はDow Chemical Companyにより販売されているXU71787である。この節において記載されるシアナート樹脂中のR基の定義は、本発明の成分A及び式(I)中のR基の定義と全く異なることがわかるであろう。
【0088】
フェノール樹脂は、メタナール、エタナール、ベンズアルデヒド又はフルフラルアルデヒドのようなアルデヒド及びフェノール、クレゾール、二価フェノール、クロルフェノール及びC1-9アルキルフェノール、例えばフェノール、3−及び4−クレゾール(1−メチル,3−及び4−ヒドロキシベンゼン)、カテコール(2−ヒドロキシフェノール)、レゾルシノール(1,3−ジヒドロキシベンゼン)及びキノール(1,4−ジヒドロキシベンゼン)のようなフェノールから誘導されるいずれのアルデヒド縮合物樹脂からも選ば
れることができる。好ましいフェノール樹脂はクレゾール及びノボラックフェノールを含む。
【0089】
硬化剤は、反応性希釈剤を含む本発明の態様において好ましい。硬化剤は、適切には例えば引用することによりその記載事項が本明細書の内容となる欧州特許第A−0311349号明細書、欧州特許第A−0486197号明細書、欧州特許第A−0365168号明細書又は米国特許第6013730号明細書に開示されているような既知の硬化剤、例えばアミノ基当たりに最高で500の分子量を有するアミノ化合物、例えば芳香族アミン又はグアニジン誘導体から選ばれる。特定の例は3,3’−及び4−,4’−ジアミノジフェニルスルホン(DDS);メチレンジアニリン;ビス(4−アミノ−3,5−ジメチルフェニル)−1,4−ジイソプロピルベンゼン(Shell Chemical Co.からEPON 1062として入手可能);ビス(4−アミノフェニル)−1,4−ジイソプロピルベンゼン(Shell Chemical Co.からEPON 1061として入手可能);4−クロロフェニル−N,N−ジメチル−ウレア(例えばMonuron);3,4−ジクロロフェニル−N,N−ジメチル−ウレア(例えばDiuronTM)及びジシアノジアミド(AmicureTM CG 1200;Pacific Anchor Chemical)である。ビスフェノール−S及びチオジフェノールのようなビスフェノール連鎖延長剤は、エポキシ樹脂のための硬化剤として特に有用である。
【0090】
硬化性ポリマー組成物は硬化剤及び例えば米国特許第6265491号明細書に開示されているような触媒を含むことができ、その特許の内容は引用することにより本明細書の内容となる。別の触媒、典型的には当該技術分野で通例であるルイス酸又は塩基を用いることもできる。
【0091】
上記の通り反応性希釈剤が用いられる場合、反応性希釈剤は、典型的には組成物中の成分(A)の重量の約20〜40重量%で存在し、硬化剤は典型的には組成物中の成分(A)の重量の約5〜20重量%で存在する。
【0092】
本発明のさらに別の側面に従い、上記の熱硬化樹脂組成物及び硬化性ポリマー組成物を含んでなるか、又はそれらから誘導される複合材料を提供する。
【0093】
本発明のさらに別の側面に従い、上記の熱硬化樹脂組成物及び硬化性ポリマー組成物を含んでなるか、又はそれらから誘導される複合材料の製造方法を提供する。
【0094】
本明細書に記載される組成物は、耐力(load−bearing)又は耐衝撃構造を含む構造の二次加工(fabrication)に特に適している。この目的のために、組成物は繊維のような強化剤を含有することができる。典型的には2cmより長くない、例えば約6mmの平均繊維長の短繊維もしくはチョップトファイバーを加えることができる。あるいは、そして好ましくは、繊維は連続性であり、例えば一方向的に配置された繊維又は編織布であることができ、すなわち複合材料はプレプレグを含む。短繊維及び/又はチョップトファイバー及び連続繊維の両方の組み合わせを用いることができる。繊維はサイジングされているか、又はサイジングされていないことができる。典型的には5〜35、好ましくは少なくとも20重量%の濃度で繊維を加えることができる。構造的用途にために、連続繊維、例えばガラス又は炭素を特に30〜70、さらに特定的に50〜70容量%で用いるのが好ましい。
【0095】
繊維は有機繊維、特にポリパラフェニレンテレフタルアミドのような剛性ポリマーのもの、あるいは無機繊維であることができる。無機繊維の中で、“E”又は“S”のようなガラス繊維あるいはアルミナ、ジルコニア、炭化ケイ素、他のコンパウンドセラミックス(compound ceramics)又は金属を用いることができる。非常に適した
強化繊維は、特にグラファイトのような炭素である。本発明において特に有用であることが見出されたグラファイト繊維は、Cytecにより商品名T650−35、T650−42及びT300の下に供給されるもの;Torayにより商品名T800−HBの下に供給されるもの;ならびにHexcelにより商品名AS4、AU4、IM 8及びIM
7の下に供給されるものである。
【0096】
有機繊維又は炭素繊維は、好ましくはサイジングされていないか、あるいは不利な反応なしで液体前駆体組成物中に可溶性であるか又は繊維及び本明細書に記載される熱硬化/熱可塑性組成物の両方に結合する(bonding)という意味で、本発明に従う組成物と相溶性である材料を用いてサイジングされている。特にサイジングされないか又は樹脂前駆体又は(ポリ)アリールスルホンを用いてサイジングされる炭素又はグラファイト繊維が好ましい。無機繊維は、好ましくは繊維及びポリマー組成物の両方に結合する材料を用いてサイジングされ;例はガラス繊維に適用される有機シランカップリング剤である。
【0097】
組成物はさらに比較的少量の通常の強化剤を含有することができ、すなわち上記で定義された成分(C)は存在する強化剤の大部分を構成し、1つの態様において成分(C)は存在する唯一の強化剤である。通常の強化剤には粒子状強化剤、例えばガラスビーズ、ゴム粒子及びゴムがコーティングされたガラスビーズのような凝集体(aggregates)、ポリテトラフルオロエチレン、シリカ、グラファイト、窒化ホウ素、雲母、タルク及びバーミキュライトのような充填剤、顔料、核化剤ならびにホスフェートのような安定剤が含まれる。反応性基を有する液体ゴムを用いることもできる。組成物中のそのような材料及びいずれかの繊維性強化剤の合計は、典型的にはポリ(アリール)スルホン/熱硬化樹脂混合物の合計容積中のパーセンテージとして少なくとも20容積%である。繊維及びそのような他の材料のパーセンテージは、下記に定義する温度における反応又は処理の後の組成物全体について算出される。
【0098】
好ましくは、複合材料は、熱硬化ベンズオキサジン樹脂前駆体、アリールスルホン含有ベンズオキサジン成分及び場合によるポリアリールスルホンならびに(いずれかの段階に)繊維性強化剤及び他の材料を混合することにより調製される硬化性組成物から得られる。処理を助けるために溶媒が存在することができる。溶媒及びその割合は、成分の混合物が少なくとも安定なエマルション、好ましくは安定な見掛け上1つの相の溶液を形成するように選ばれる。溶媒の成分(C)及び(用いられる場合は)成分(B)の組み合わせに対する比は、適切には重量により5:1〜20:1の範囲内である。好ましくは、溶媒の混合物、例えばハロゲン化炭化水素とアルコールの、適切には99:1〜85:15の範囲内の比における混合物が用いられる。簡便には、そのような混合物における溶媒は1気圧において100℃より低温で沸騰しなければならず、用いられる割合において互いに混和性でなければならない。あるいはまた、ホットメルティング(hot melting)及び/又は高せん断により、成分を一緒にすることができる。
【0099】
十分に均一になるまで、混合物を撹拌する。その後、蒸発により溶媒を除去し、樹脂組成物を与える。蒸発は適切には50〜200℃で行われ、且つ少なくともその最終的な段階において例えば13.33Pa〜1333Pa(0.1〜10mmHg)の範囲内の大気圧より低い圧力で行われることができる。樹脂組成物は、繊維に含浸させるために用いられる場合に流れを助けるため、好ましくは最高で5%w/wの揮発性溶媒を含有する。この残留溶媒は、含浸機の熱ローラー(hot rollers)と接触して除去されるであろう。
【0100】
適切には、樹脂溶液の形態における組成物をパネル、プレプレグなどの製造用の適した金型又は用具上に移し、金型又は用具は所望の脱ガス温度に予備加熱されている。安定なエマルションをいずれかの強化(reinforcing)、強化(toughenin
g)、充填、核化材料もしくは薬剤などと合わせ、温度を上昇させてそれらの硬化を開始させる。適切には、硬化は最高で200℃、好ましくは160〜200℃の範囲内の高められた温度で、より好ましくは約170〜190℃において、且つ脱出ガス(escaping gases)の変形効果(deforming effects)を防止するために、あるいは空隙形成(void formation)を防止するために高められた圧力を用いて、適切には最高で10バール、好ましくは3〜7バール絶対圧(bar abs)の範囲内の圧力で行われる。適切には、硬化温度は最高で5℃/分、例えば2℃〜3℃/分において加熱することにより達成され、最高で9時間、好ましくは最高で6時間、例えば3〜4時間の必要な時間、保持される。圧力を全体的に(throughout)放出し、最高で5℃/分、例えば最高で3℃/分において冷却することにより温度を下げる。生成物のガラス転移温度を向上させるなどのために、大気圧において、適した加熱速度を用いて190℃〜200℃の範囲内の温度で、後硬化を行うことができる。用いられるべき成形温度より高い耐熱度を有するいずれかの適した材料、例えば不飽和ポリエステル又は熱硬化樹脂、例えばエポキシもしくはビスマレイミドの金型又は用具を構築することができる。強化は、適切にはガラス繊維の形態で与えられる。本発明に従う使用のために、複合金型を通常の方法で製造することができる。
【0101】
おそらくすでに存在するか又は新しく加えられるいくらかの揮発性溶媒を含有する組成物を、例えば接着剤として又は表面のコーティングのために又はおそらく発砲した状態におけるキャスティングによる一体構造(solid structures)の製造のために用いることができる。組成物の硬化の前に、短繊維強化を組成物に導入することができる。好ましくは、本質的に連続性の繊維をそのような樹脂組成物と接触して通過させることにより、繊維強化組成物を作る。得られる含浸繊維性強化剤を単独で、又は他の材料、例えばさらなる量の同じもしくは異なるポリマー又は樹脂前駆体又は混合物と一緒に用い、造形品を形成することができる。この方法は、欧州特許第A−56703、102158及び102159号明細書にさらに詳細に記載されている。
【0102】
さらに別の方法は、不完全に硬化した組成物を、例えば圧縮成形、押出し、メルト−キャスティング(melt−casting)又はベルト−キャスティングによりフィルムに成形し、そのようなフィルムを、例えば比較的短い繊維の不織マット、編織布又は本質的に連続性の繊維の形態における繊維性強化剤に、混合物を流動させて繊維を含浸させるのに十分な温度及び圧力の条件において積層し、得られる積層物を硬化させることを含む。
【0103】
本質的に欧州特許第A 56703、102158及び102159号明細書の1つもしくはそれより多くの方法により作られる含浸繊維性強化剤の層(ply)を熱及び圧力により、例えばオートクレーブ、真空もしくは圧縮成形により、あるいは加熱ローラーにより、熱硬化性樹脂の硬化温度より高い温度で、あるいは硬化がすでに起こっていたら、混合物のガラス転移温度より高い温度、簡便には少なくとも180℃そして典型的には最高で200℃で、且つ特に1バールより高い、好ましくは1〜10バールの範囲内の圧力で、一緒に積層することができる。
【0104】
得られる多層(multi−ply)積層品は異方性であって、繊維が連続性で一方向的であり、本質的に互いに平行に配向していることができるか、あるいは擬似等方性であり、その各層において繊維は、上下の層中の繊維に対して、簡便にはほとんどの擬似等方性積層品におけるように45°の角度で、しかしおそらく例えば30°又は60°又は90°又は中間の角度で配向していることができる。異方性と擬似等方性の間の中間の配向及び組み合わせ積層品を用いることができる。適した積層品は少なくとも4層、好ましくは少なくとも8層を含有する。層の数は、積層品に関する用途、例えば必要な強度に依存し、32かもしくはそれよりも多い、例えば数百層を含有する積層品が望ましいかも知れ
ない。層間領域に上記で挙げたような凝集体が存在することができる。編織布は擬似等方性又は異方性と擬似−等方性の間の中間の例である。
【0105】
硬化性ポリマー組成物を、好ましくは上又は中で樹脂組成物を硬化させることが意図されている金型もしくは用具を構成する材料がいかようにも(in any way)感熱性になる温度より低い温度で硬化するように適合させる。
【0106】
本発明のさらに別の側面に従い、組成物を、中でそれが成形されるべき適した金型又は用具中あるいは同等の状態に配置し、組成物を適した圧力で、例えば大気圧で所望の高められた温度に供し、前記で定義したような必要な時間、温度を保持することを含んでなる熱硬化樹脂の製造方法を提供する。
【0107】
本発明のさらに別の側面に従い、前記で定義された熱硬化樹脂組成物及び連続繊維を含んでなるプレプレグ、特に前記で定義された方法により得られるプレプレグを提供する。
【0108】
本発明のさらに別の側面に従い、前記で定義されたプレプレグを含んでなる複合材料を提供する。複合材料は、熱及び圧力により、例えばオートクレープ、圧縮成形又は加熱ローラーにより、ポリマー組成物の硬化温度より高い温度で一緒に積層されたプレプレグを含むことができる。
【0109】
本発明を通常のプレプレグ法による、及びまた樹脂注入法(例えば米国特許第2004/0041128号明細書に記載されているような)による複合材料の製造に適用することができる。樹脂注入は、樹脂トランスファー成形(Resin Transfer Molding)(RTM)、液体樹脂注入(Liquid Resin Infusion)(LRI)、真空補助樹脂トランスファー成形(VARTM)、柔軟成形用具を用いる樹脂注入(Resin Infusion with Flexible Tooling)(RIFT)、真空補助樹脂注入(VARI)、樹脂フィルム注入(RFI)、制御された大気圧樹脂注入(Controlled Atmospheric Pressure Resin Infusion)(CAPRI)、VAP(真空補助法(Vacuum Assisted Process))及びシングルライン注入(single
line injection)(SLI)のような処理法を包含する総称である。本明細書に記載される複合材料は特に、引用することによりその開示が本明細書の内容となる米国特許第2006/0252334号明細書に記載されているような樹脂注入法において、樹脂可溶性熱可塑性ベール(veils)の使用を介して形成される複合材料を含む。1つの態様において複合材料は、構造強化繊維(乾燥)及び樹脂可溶性熱可塑性ベール部品を含んでなる支持構造をバッグ、金型又は用具中に入れて予備成形物を与え、硬化性樹脂マトリックス組成物を組み合わされた構造強化繊維及びベール中に直接注入し(injected/infused)、次いで硬化させる樹脂注入を介して製造される。
【0110】
本発明のさらに別の側面に従い、前記で定義された組成物、プレプレグ又は複合材料を含んでなるかそれらから誘導される熱可塑性(thermoplast)又は熱可塑性改質熱硬化樹脂成形製品、特に前記で定義された方法により得られるものを提供する。好ましくは、そのような製品は輸送用途(航空宇宙、航空、海上及び陸上輸送機関を含み、且つ自動車、鉄道及び箱型バス産業を含む)、建築/建設用途あるいは他の商業的な用途における使用に適した部品から選ばれる。
【0111】
本発明のさらに別の側面に従い、前記の輸送用途における部品として、あるいは建築/建設又は他の商業的製品又はその部品としての使用のための前記で定義された硬化性ポリマー組成物、熱硬化樹脂組成物、複合材料又はプレプレグを提供する。
【0112】
本発明のさらに別の側面に従い、エーテル結合した繰り返し単位を含んでなり、場合によりさらにチオエーテル結合した繰り返し単位を含んでなるポリアリールスルホンを提供し、単位は:
−[ArSO2Ar]n
及び場合により:
−[Ar]a
から選ばれ、式中:
Arはフェニレンであり;
n=1〜2であり、分数であることができ;
a=1〜3であり、分数であることができ、1を超える場合、該フェニレン基は化学的単結合又は−SO2−以外の2価の基を介して直線的に連結しているか、あるいは一緒に縮合しており、
但し繰り返し単位−[ArSO2Ar]n−は常に、存在する各ポリマー鎖中で平均して少なくとも2個の該−[ArSO2Ar]n−単位が並んで存在するような割合でポリアリールスルホン中に存在し、
ここでポリアリールスルホンはベンズオキサジンから選ばれる1個もしくはそれより多い反応性側鎖基及び/又は末端基を含み、
且つここでポリアリールスルホンの数平均分子量は上記の通り約2,000〜約60,000の範囲内である。
【0113】
本発明のさらに別の側面に従い、上記の式(II):
【0114】
【化9】
【0115】
[式中、Z2は1個もしくはそれより多いアリールスルホン単位、−[Ar−SO2−Ar]n−を含み、場合によりさらに1個もしくはそれより多いアリーレン単位−[Ar]a−を含み、ここで該アリールスルホン単位及びアリーレン単位はエーテル結合(−O−)及び/又はチオエーテル結合(−S−)により連結しており;
ここでArはフェニレンであり;
n=1〜2であり、分数であることができ;
a=1〜3であり、分数であることができ、1を超える場合、該フェニレン基は化学的単結合又は−SO2−以外の2価の基を介して直線的に連結しているか、あるいは一緒に縮合しており、
ここでR10及びR11は独立して水素、アルキル、シクロアルキル及びアリールから選ばれ、そして好ましはR10及びR11は独立してアルキル、シクロアルキル及びアリールから選ばれ、
ここでR10及びR11が水素である化合物は、複数の−[Ar−SO2−Ar]n−単位を含むか、又はnが1より大きいか、又は少なくとも1個のチオエーテル結合を含むか、又はaが1より大きい1個もしくはそれより多い−[Ar]a−単位を含むか、又は3個もしくはそれより多い−[Ar]a−単位を含むか、又はフェニレン基がメタ配置で隣接基に結合している−[Ar]a−単位を含むか、これらの組み合わせであり、
且つここで化合物の数平均分子量は2000より低い]
のアリールスルホン−含有ベンズオキサジン化合物を提供する。
【0116】
本発明のさらに別の側面に従い、上記の式(III):
【0117】
【化10】
【0118】
[式中、Z3はSO2及びZ2より成る群から選ばれ、1つの態様においてZ2のみから選ばれ;
ここでZ2は1個もしくはそれより多いアリールスルホン単位、−[Ar−SO2−Ar]n−を含み、場合によりさらに1個もしくはそれより多いアリーレン単位−[Ar]a−を含み、ここで該アリールスルホン単位及びアリーレン単位はエーテル結合(−O−)及び/又はチオエーテル結合(−S−)により連結しており;
ここでArはフェニレンであり;
n=1〜2であり、分数であることができ;
a=1〜3であり、分数であることができ、1を超える場合、該フェニレン基は化学的単結合又は−SO2−以外の2価の基を介して直線的に連結しているか、あるいは一緒に縮合しており、
ここでR10及びR11は独立してH、アルキル、シクロアルキル及びアリールから選ばれ、好ましくはここで特にZ3がSO2である場合、R10及びR11は独立してH、アルキル及びシクロアルキルから選ばれ、
且つここで化合物の数平均分子量は2000より低い]
のアリールスルホン−含有ベンズオキサジン化合物を提供する。
【0119】
ここで本発明を、制限ではないやり方で以下の実施例に言及して例示する。
【実施例】
【0120】
実施例
以下の実施例において、下記の構造を有するm−ESEDA、3’3−DDS及び上記で定義されたPES:PEESコポリマーに基づくベンズオキサジンの製造のための合成方法を記載する。
【0121】
【化11】
【0122】
実施例を特性化するために以下の試験方法を用いた:
(i)Rheometric Scientific ARES機を用いる動機械的熱分析(DMTA)により、90℃から250℃までの3℃分-1の加熱速度でガラス転移温度を評価した(周波数 0.1Hz;歪 0.1%)。Isomet 1000ダイアモンドソー(diamond saw)を用い、試料を4〜5mmの幅、幅より2.5〜3.0倍小さい厚さ(a thickness 2.5−3.0times smaller
than the width)及び長さにおいて40mmに切断する。
(iii)ASTM D790を用いて曲げ弾性率を評価した。
(iv)ISO試験13586−1:「破壊靭性(GC及びKC)の決定−線状弾性破壊力学(LEFM)法」,2000(“Determination of fracture toughnes(GC and KC)−Linear elastic fracture mechanics(LEFM) approach.”,2000)を用い、試料のE−モジュラス、引張強さ(K1C)及び引裂き(G1C)を評価した。
【0123】
実施例1:m−ESEDAベンズオキサジン
86.40gのp−クレゾール、48.00gのp−ホルムアルデヒド及び86.50gのm−ESEDAを、頭上撹拌機が備えられたガラスジャーに加えた。最初は固体であるブレンドを油浴中で85℃に2時間加熱した。温度を130℃に上げ、さらに30分間保持した。粗溶融物を500cm3のジエチルエーテル中に注ぎ、30分間撹拌してから濾過し、粉砕した。それを次いでソックスレー抽出により、ジエチルーエーテル溶媒を用いて6時間精製した。この時点の後にそれを濾過し、乾燥した。固体を油浴中で70℃において30分間、250cm3の0.1モルdm-3NaOH溶液中で洗浄し、濾過し、脱水した。次いで固体を400cm3の水中で、頭上撹拌を用いて30分間洗浄し、濾過−乾燥し、次いで2回水洗し、再び濾過−乾燥した。最終的な生成物を真空中で20〜30℃において放置して乾燥した。これは115.68gの明褐色の固体を与えた(収率83%)。
【0124】
実施例2:3’3−DDSベンズオキサジン
108.00gのp−クレゾール、60.00gのp−ホルムアルデヒド及び62.00gの3’,3−DDSを、頭上撹拌機が備えられたガラスジャーに加えた。最初は固体であるブレンドを油浴中で85℃に2時間加熱した。温度を130℃に上げ、さらに30分間保持した。粗溶融物を600cm3のジエチルエーテル中に注ぎ、30分間撹拌してから濾過し、粉砕した。それを次いでソックスレー抽出により、ジエチルーエーテル溶媒を用いて6時間精製した。この時点の後にそれを濾過し、乾燥した。固体を油浴中で70℃において30分間、250cm3の0.1モルdm-3NaOH溶液中で洗浄し、濾過し、脱水した。次いで固体を400cm3の水中で、頭上撹拌を用いて30分間洗浄し、濾過−乾燥し、次いで2回水洗し、再び濾過−乾燥した。最終的な生成物を真空中で20〜30℃において放置して乾燥した。105.07gの白色の固体を集めた(収率82%)。
【0125】
実施例3:ベンズオキサジン−末端ポリアリールスルホン
43.20gのp−クレゾール、24.00gのp−ホルムアルデヒド及び86.04gのアミン−末端ポリアリールスルホン(本明細書で定義される一般式(C)の分子量が9000〜12000のPES:PEESコポリマー)を、頭上撹拌機が備えられた丸底フラスコに加えた。最初は固体であるブレンドを油浴中で85℃に2時間加熱した。粗溶融物を400cm3の水中に注ぎ、30分間撹拌してから濾過した。固体を細砕機中で低温破壊し(cryofractured)、次いで温水中で離解した(macerated)。次いで粉末を濾過し、乾燥し、70℃において30分間、250cm3の0.1モルdm-3NaOH溶液中で洗浄し、生成物を脱水した。固体を再粉砕し、再びNaOH溶
液中で洗浄した。ジエチルエーテル溶媒を用いる6時間に及ぶソックスレー抽出により精製し、空気乾燥した。固体を200cm3の0.1モルdm-3NaOH溶液中で70℃において30分間洗浄し、次いで600cm2の水中で、頭上撹拌を用いて30分間洗浄した。濾液を脱水し、再び水中で洗浄し、濾過した。最終的な生成物を真空中で20〜30℃において乾燥した。78.22gのオフホワイト色の固体を集めた(収率88%)。
【0126】
実施例4:ビスフェノール−Aベンズオキサジン中の10%m−ESEDAベンズオキサジン
実施例1の化合物を用いて以下の通りに硬化性ポリマー組成物を調製した。3gのm−ESEDAベンズオキサジン及び27gのビスフェノール−Aベンズオキサジン(Huntsman Advanced Materials)を125cm3のガラスジャー中に量り込んだ。次いでジャーを油浴セット(oil bath set)中にクランプ止めし(clamped)、135℃に平衡化した。頭上撹拌機をジャー中に入れ、撹拌を開始した。ジャー中の粉末が溶融するとともに撹拌機を容器中により深く入れ、その速度を増した。有効な撹拌が達成されたら、それを30分間続けた。アルミニウム金型を100℃に予備加熱し、30分の撹拌時間の最後にベンズオキサジンブレンドを金型中に注いだ。樹脂を95〜120℃において1〜2時間脱ガスした。
【0127】
次いで組成物を、本明細書に記載されるすべてのベンズオキサジンの皿及びプラック(plaques)に関して用いられる以下の硬化サイクルに従って硬化させた:1℃分-1において25℃−180℃,2時間保持,1℃分-1において180℃−200℃,2時間保持,2℃分-1において200−25℃。硬化サイクルを図1に図示する。
【0128】
標準(control)実施例1ならびに実施例5及び6
m−ESEDAベンズオキサジンの種々の配合量(loadings)(0%、30%及び50%)を用い、実施例4の方法を繰り返した。
【0129】
標準実施例2ならびに実施例7,8及び9
ビスフェノール−Fベンズオキサジン(Huntsman Advanced Materials)を用い、標準実施例1ならびに実施例4、5及び6の方法を繰り返した。
【0130】
実施例10〜15
上記の通りに製造される3’,3−DDSベンズオキサジンに関し、実施例4〜9の方法を繰り返した。
【0131】
ビスフェノールベンズオキサジンのそれぞれとm−ESEDAベンズオキサジン又は3’,3−DDSベンズオキサジンのいずれかとの、上記のそれぞれの濃度における混和性を、目視検査により評価した。混和性は一般に優れており、均一な単一相組成物を含有する本質的に透明な硬化された純粋樹脂プラックを生じた。
【0132】
比較実施例1及び2
アミン−末端ポリアリールスルホン熱可塑性強化剤(本明細書で定義される一般式(C)の分子量が9000〜12000のPES:PEESコポリマー)を10重量%の配合量でビスフェノールベンズオキサジンのそれぞれに加える以外は、標準実施例1及び2を繰り返した。成分は劣った混和性を示し、硬化した試料は2相構造、ビスフェノールの豊富な相及びKM−ポリマーの豊富な相を示した。KM−ポリマーの豊富な相はハネカム−様構造を示し、それは、理論により制限されることは望まないが、硬化の間に沈降して高度に粘性となるKMポリマーにより生じ、それが今度は試料中の残留溶媒又は連行空気を捕獲し、多孔質構造に導くと思われる。さらに、ビスフェノールが豊富な相は、KMポリマーが沈降するとともに粘度が低下し、溶媒又は空気の泡はこのより低粘度の層を介して
脱出すると思われる。
【0133】
実施例16〜25
硬化性ポリマー組成物中のビスフェノールベンズオキサジン前駆体の一部をm−ESEDAベンズオキサジン又は3’,3−DDSベンズオキサジンのいずれかにより置き換える以外は、比較実施例1及び2を各ビスフェノールベンズオキサジンに関して繰り返した。m−ESEDAベンズオキサジン又は3’,3−DDSベンズオキサジンのレベルの向上とともに混和性が向上した。
【0134】
硬化すると、熱可塑性強化剤は熱硬化ベンズオキサジン樹脂マトリックス中に不溶性となり、相分離が起こる。熱可塑性強化剤とベース樹脂の間の相溶化がないと、グロス相分離が起こり、2つの異なる材料の層を生ずる。本発明の組成物において、熱可塑性強化剤は熱硬化樹脂マトリックス内及びそれ全体に分散された分離粒子状相として残る。粒子状相は転相又はさらなる粒子状包含(particulate inclusions)を示す。粒子状相が寸法において不均一であり、典型的に約5μm〜約300μmの範囲内である「不均一」相及び粒子状相が一般に均一に約5μmより小さい「微粒子状」相として粒子状相を分類することができる。図3及び4のSEM顕微鏡写真は、それぞれ不均一粒子状形態及び微粒子状形態を示す。微粒子状形態が好ましい。
【0135】
上記の実験の結果を下記の表1及び2にまとめる。
【0136】
【表1】
【0137】
【表2】
【0138】
表1及び2から、m−ESEDA及び3’3−DDSベンズオキサジンは商業的に入手可能なビスフェノール−A及びビスフェノール−Fベンズオキサジンと混和性であること、ならびに相溶化剤として3’3−DDS又はm−ESEDAベンズオキサジンが加えられないと、ポリアリールスルホン強化剤ポリマーは両方のビスフェノールベンズオキサジンと非混和性であることが明らかである。グロス相分離なしで、且つTg及び弾性率のような他の性質の有意な悪化なしで、硬化した材料の強化を助長するのは、このKMポリマーへの樹脂の相溶化である。図2は比較実施例1及び実施例16の硬化した試料の写真を比較しており、比較実施例のグロス相分離を示している。
【0139】
硬化した試料を、熱−機械的性質の決定のために動機械的熱分析(DMTA)によっても、及び形態の決定のためにSEMによっても分析した。硬化した試料のプラックを線状弾性破壊力学(LEFM)によっても分析し、曲げ弾性率を決定した。DMTAにより測定される硬化された樹脂のガラス−転移温度を下記の表3に示す。LEFM及び曲げ弾性率分析の結果も下記の表3に示す。
【0140】
表3中のデータは、ベンズオキサジン樹脂のTgが相溶化剤及び強化剤の添加により有意に影響されないことを示し、事実いくつかの場合には上昇もし得る。
【0141】
表3中のデータは、m−ESEDA及び3’3−DDSベンズオキサジンにより樹脂中に相溶化された熱可塑性KMポリマーにより強化されたベンズオキサジン樹脂の、向上した引張強さ(K1C)及び向上した引裂き(G1C)の両方に関する向上した機械的性質を示
している。データはさらに、この向上した靭性が弾性率又はTgの損失なしで達成されることを示している。事実、Tgのように、弾性率はいくつかの場合に向上し得る。しかしながら、表3中のデータは、少なくとも実施例中で用いられた熱可塑性強化剤の濃度において、相溶化剤に関する最適濃度範囲があることも示している。
【0142】
【表3】
図1
図2
図3
図4