特開2016-166426(P2016-166426A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ キヤノンアネルバ株式会社の特許一覧

特開2016-166426スパッタリング装置および基板処理装置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2016-166426(P2016-166426A)
(43)【公開日】2016年9月15日
(54)【発明の名称】スパッタリング装置および基板処理装置
(51)【国際特許分類】
   C23C 14/34 20060101AFI20160819BHJP
   C23C 14/56 20060101ALI20160819BHJP
【FI】
   C23C14/34 C
   C23C14/34 G
   C23C14/56 G
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2016-87356(P2016-87356)
(22)【出願日】2016年4月25日
(62)【分割の表示】特願2014-549761(P2014-549761)の分割
【原出願日】2013年8月23日
(31)【優先権主張番号】特願2012-263648(P2012-263648)
(32)【優先日】2012年11月30日
(33)【優先権主張国】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000227294
【氏名又は名称】キヤノンアネルバ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076428
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 康徳
(74)【代理人】
【識別番号】100115071
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 康弘
(74)【代理人】
【識別番号】100112508
【弁理士】
【氏名又は名称】高柳 司郎
(74)【代理人】
【識別番号】100116894
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 秀二
(74)【代理人】
【識別番号】100130409
【弁理士】
【氏名又は名称】下山 治
(74)【代理人】
【識別番号】100134175
【弁理士】
【氏名又は名称】永川 行光
(72)【発明者】
【氏名】石原 繁紀
(72)【発明者】
【氏名】小長 和也
(72)【発明者】
【氏名】戸谷 寛行
(72)【発明者】
【氏名】須田 真太郎
(72)【発明者】
【氏名】安松 保志
(72)【発明者】
【氏名】藤本 雄
(72)【発明者】
【氏名】中澤 俊和
(72)【発明者】
【氏名】中村 英司
(72)【発明者】
【氏名】今井 慎
(57)【要約】      (修正有)
【課題】搬送チャンバの周囲への配置に有利で、かつ、使用するターゲットの位置によって生じうるスパッタリング特性の差を低減するスパッタリング装置の提供。
【解決手段】スパッタリング装置100は、チャンバ7と、基板を保持する面に直交する軸8を中心として回転可能な基板ホルダと、第1〜第4ターゲットホルダ91〜94とを有し、4つのターゲットのうちスパッタリングに使用するターゲットを選択するシャッターユニットを備える。ゲートバルブ6を介してチャンバ7の内部空間と外部空間との間で基板が搬送される。第1〜第4ターゲットホルダ91〜94は、軸8を中心とする1つの仮想円VCに内接する仮想長方形の頂点上に配置され、第1および第2ターゲットホルダ91、92は、仮想長方形の短辺を定める2つの頂点に配置され、かつ、ゲートバルブ6までの距離が第3および第4ターゲットホルダ93、94からゲートバルブ6までの距離より小さい。
【選択図】図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
チャンバと、前記チャンバの中で基板を保持可能であり、前記基板を保持する面に直交する軸を中心として回転可能な基板ホルダと、それぞれターゲットを保持するための第1乃至第4ターゲットホルダとを有し、ゲートバルブを介して前記チャンバの内部空間と外部空間との間で前記基板が搬送されるスパッタリング装置であって、
前記第1乃至第4ターゲットホルダによってそれぞれ保持される4つのターゲットのうちスパッタリングのために使用するターゲットを選択するためのシャッターユニットを備え、
前記第1乃至第4ターゲットホルダは、前記軸を中心とする1つの仮想円上、かつ、長辺及び短辺を有し前記仮想円に内接する仮想長方形の頂点上に配置され、前記第1ターゲットホルダおよび前記第2ターゲットホルダは、前記仮想長方形の1つの短辺を定める2つの頂点にそれぞれ配置され、かつ、前記ゲートバルブまでの距離が前記第3ターゲットホルダおよび前記第4ターゲットホルダから前記ゲートバルブまでの距離より小さい、
ことを特徴とするスパッタリング装置。
【請求項2】
前記第1乃至第4ターゲットホルダのそれぞれは、前記基板ホルダによって保持される基板の表面に対してターゲットの表面が傾斜した姿勢で該ターゲットを保持する、
ことを特徴とする請求項1に記載のスパッタリング装置。
【請求項3】
前記第1ターゲットホルダおよび前記第2ターゲットホルダは、前記ゲートバルブまでの距離が互いに等しい、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のスパッタリング装置。
【請求項4】
前記第1乃至第4ターゲットホルダは、前記仮想円に沿って前記第1ターゲットホルダ、前記第2ターゲットホルダ、前記第3ターゲットホルダ、前記第4ターゲットホルダの順に配置され、
前記シャッターユニットは、前記軸を中心として回転可能な第1シャッターおよび第2シャッターを含み、
前記第1シャッターおよび前記第2シャッターは、前記軸に沿った方向に互いに離隔して配置され、
前記第1シャッターは、前記軸を中心とする1つの仮想円上に配置された2つの開口を有し、前記第2シャッターは、前記軸を中心とする1つの仮想円上に配置された2つの開口を有し、
前記第1シャッターの前記2つの開口のそれぞれの中心を弧の両端とする中心角は、前記第1乃至第4ターゲットホルダから選択されうる互いに隣接するターゲットホルダのそれぞれの中心を弧の両端とする中心角と等しく、前記第2シャッターの前記2つの開口のそれぞれの中心を弧の両端とする中心角は、前記第1乃至第4ターゲットホルダから選択されうる互いに隣接するターゲットホルダのそれぞれの中心を弧の両端とする中心角と等しい、
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のスパッタリング装置。
【請求項5】
前記第1シャッターの前記2つの開口のそれぞれの中心を弧の両端とする中心角は、前記第2ターゲットホルダおよび前記第3ターゲットホルダのそれぞれの中心を弧の両端とする中心角と等しく、前記第2シャッターの前記2つの開口のそれぞれの中心を弧の両端とする中心角は、前記第2ターゲットホルダおよび前記第3ターゲットホルダのそれぞれの中心を弧の両端とする中心角と等しい、
ことを特徴とする請求項4に記載のスパッタリング装置。
【請求項6】
前記第1シャッターの前記2つの開口のそれぞれの中心を弧の両端とする中心角は、前記第1ターゲットホルダおよび前記第2ターゲットホルダのそれぞれの中心を弧の両端とする中心角と等しく、前記第2シャッターの前記2つの開口のそれぞれの中心を弧の両端とする中心角は、前記第1ターゲットホルダおよび前記第2ターゲットホルダのそれぞれの中心を弧の両端とする中心角と等しい、
ことを特徴とする請求項4に記載のスパッタリング装置。
【請求項7】
前記第1シャッターは、前記第1乃至第4ターゲットホルダと前記第2シャッターとの間に配置され、
前記第1乃至第4ターゲットホルダによってそれぞれ保持された前記4つのターゲットのうち1つのターゲットのみをスパッタリングのために使用する場合に、前記第1シャッターは、前記第1シャッターの前記2つの開口の1つは前記1つのターゲットに対向し他の開口は前記4つのターゲットのいずれにも対向しないように制御される、
ことを特徴とする請求項4乃至6のいずれか1項に記載のスパッタリング装置。
【請求項8】
複数の接続面を有する搬送チャンバと、
前記複数の接続面の少なくとも1つに接続されたスパッタリング装置と、を備え、
前記スパッタリング装置は、請求項1乃至7のいずれか1項に記載のスパッタリング装置であり、
前記複数の接続面のうち互いに隣接する接続面のなす角度が90度より大きい、
ことを特徴とする基板処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スパッタリング装置および基板処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、搬送チャンバの周囲に複数のスパッタリング装置が配置された構成が記載されている。各スパッタリング装置では、成膜チャンバを構成する容器の天井部に4つのターゲットが配置されている。これらのターゲットと基板ホルダとの間には、二重回転シャッター機構が配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−41108号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
デバイスの製造のために多数の膜を高いスループットで形成するためには、搬送チャンバの周囲に複数のスパッタリング装置が配置された基板処理装置を使用することが有利である。搬送チャンバの周囲には、ゲートバルブを介して複数のスパッタリング装置が配置されうる。ここで、搬送チャンバの周囲により多くのスパッタリング装置を配置するためには、ゲートバルブを通して基板を搬送する方向に直交する方向におけるスパッタリング装置の幅、特にゲートバルブ側におけるスパッタリング装置の幅を小さくするべきである。
【0005】
特許文献1の図2に記載された成膜チャンバでは、ターゲット35、36、37、38が仮想的な等脚台形の頂点に配置されている。ゲートバルブ20側に配置されたターゲット36、38間の距離は、ゲートバルブ20とは反対側に配置されたターゲット35、37間の距離よりも小さい。このような構成は、搬送チャンバの周囲に多数の成膜チャンバを配置するために有利である。
【0006】
しかしながら、ターゲットの裏面側には、マグネトロン放電を発生させるためのマグネットが備えられている。マグネットは、一般的に、N極およびS極のうちの一方の磁極が成膜チャンバの内側方向に向き、他方の磁極が成膜チャンバの外側方向に向くように配置される。ターゲットの裏面側に配置されたマグネットによって成膜チャンバ内に形成される磁場は、隣接するターゲットの裏面側に配置されたマグネットからの影響を受ける。特許文献1の図2に記載された成膜チャンバでは、ターゲット35、36、37、38が仮想的な等脚台形の頂点に配置されているので、ターゲットごとにその表面に形成される磁場が異なりうる。例えば、ターゲット35の表面に形成される磁場は、ターゲット36、37、38のためのマグネットからの影響を受け、ターゲット36の表面に形成される磁場は、ターゲット35、37、38のためのマグネットからの影響を受ける。ターゲット35に対するターゲット36、37、38の相対位置と、ターゲット36に対するターゲット35、37、38の相対位置とは異なるので、ターゲット35の表面に形成される磁場とターゲット36の表面に形成される磁場とは異なりうる。したがって、特許文献1の図2に記載された構成では、使用するターゲットが配置された位置によってスパッタリング特性が異なりうる。
【0007】
本発明は、上記の課題認識を契機としてなされたものであり、例えば、搬送チャンバの周囲への配置に有利で、しかも、使用するターゲットの位置によって生じうるスパッタリング特性の差を低減するために有利なスパッタリング装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の側面は、チャンバと、前記チャンバの中で基板を保持可能であり、前記基板を保持する面に直交する軸を中心として回転可能な基板ホルダと、それぞれターゲットを保持するための第1乃至第4ターゲットホルダとを有し、ゲートバルブを介して前記チャンバの内部空間と外部空間との間で前記基板が搬送されるスパッタリング装置であって、前記第1乃至第4ターゲットホルダによってそれぞれ保持される4つのターゲットのうちスパッタリングのために使用するターゲットを選択するためのシャッターユニットを備え、前記第1乃至第4ターゲットホルダは、前記軸を中心とする1つの仮想円上、かつ、長辺及び短辺を有し前記仮想円に内接する仮想長方形の頂点上に配置され、前記第1ターゲットホルダおよび前記第2ターゲットホルダは、前記仮想長方形の1つの短辺を定める2つの頂点にそれぞれ配置され、かつ、前記ゲートバルブまでの距離が前記第3ターゲットホルダおよび前記第4ターゲットホルダから前記ゲートバルブまでの距離より小さい。
【0009】
本発明の第2の側面は、基板処理装置に係り、前記基板処理装置は、複数の接続面を有する搬送チャンバと、前記複数の接続面の少なくとも1つに接続されたスパッタリング装置と、を備え、前記スパッタリング装置は、前記第1の側面に係るスパッタリング装置であり、前記複数の接続面のうち互いに隣接する接続面のなす角度は、90度より大きい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、例えば、搬送チャンバの周囲への配置に有利で、しかも、使用するターゲットの位置によって生じうるスパッタリング特性の差を低減するために有利なスパッタリング装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1A】本発明の一つの実施形態のスパッタリング装置の模式的な平面図。
図1B】本発明の一つの実施形態のスパッタリング装置の模式的な断面図。
図2A】第1シャッターの構成例を示す図。
図2B】第2シャッターの構成例を示す図。
図3A】ターゲット、第1シャッターの開口および第2シャッターの開口の位置関係の制御を例示する図。
図3B】ターゲット、第1シャッターの開口および第2シャッターの開口の位置関係の制御を例示する図。
図4A】ターゲット、第1シャッターの開口および第2シャッターの開口の位置関係の制御を例示する図。
図4B】ターゲット、第1シャッターの開口および第2シャッターの開口の位置関係の制御を例示する図。
図5A】ターゲット、第1シャッターの開口および第2シャッターの開口の位置関係の制御を例示する図。
図5B】ターゲット、第1シャッターの開口および第2シャッターの開口の位置関係の制御を例示する図。
図6A】ターゲット、第1シャッターの開口および第2シャッターの開口の位置関係の制御を例示する図。
図6B】ターゲット、第1シャッターの開口および第2シャッターの開口の位置関係の制御を例示する図。
図7A】ターゲット、第1シャッターの開口および第2シャッターの開口の位置関係の制御を例示する図。
図7B】ターゲット、第1シャッターの開口および第2シャッターの開口の位置関係の制御を例示する図。
図7C】ターゲット、第1シャッターの開口および第2シャッターの開口の位置関係の制御を例示する図。
図7D】ターゲット、第1シャッターの開口および第2シャッターの開口の位置関係の制御を例示する図。
図8】本発明の一つの実施形態のスパッタリング装置の模式的な断面図。
図9】本発明の一つの実施形態の基板処理装置の断面図。
図10】本発明の一つの実施形態の基板処理装置に備えられたコントローラを説明するための図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照しながら本発明をその例示的な実施形態を通して説明する。
【0013】
図1A、1Bは、それぞれ本発明の一つの実施形態のスパッタリング装置100の模式的な平面図、断面図である。スパッタリング装置100は、チャンバ7と、基板ホルダ108と、第1乃至第4ターゲットホルダ91、92、93、94とを有する。基板ホルダ108は、チャンバ7の中で基板109を保持可能であり、かつ、基板109の面に直交する軸8を中心として回転可能である。第1乃至第4ターゲットホルダ91、92、93、94は、それぞれターゲットT1、T2、T3、T4を保持する。ここで、第1乃至第4ターゲットホルダ91、92、93、94は、軸8を中心とする仮想円VCに沿って、時計回りに、第1ターゲットホルダ91、第2ターゲットホルダ92、第3ターゲットホルダ93、第4ターゲットホルダ94の順に配置されている。スパッタリング装置100には、ゲートバルブ6が設けられていて、ゲートバルブ6を介してチャンバ7の内部空間と外部空間との間で基板109が搬送される。
【0014】
スパッタリング装置100はまた、第1乃至第4ターゲットホルダ91、92、93、94によってそれぞれ保持された4つのターゲットT1、T2、T3、T4のうちスパッタリングのために使用するターゲットを選択するためのシャッターユニットSUを備えている。シャッターユニットSUは、軸8を中心として回転可能な第1シャッター111および第2シャッター112と、第1シャッター111および第2シャッター112を個別に回転させる駆動部110とを含みうる。
【0015】
第1シャッター111および第2シャッター112は、それぞれ少なくとも1つの開口を有しうる。第1シャッター111および第2シャッター112のそれぞれが2つの開口を有する場合、2つのターゲットを同時に使ってスパッタリング(同時スパッタリング(Co-sputtering))を行うことができる。
【0016】
図2Aに例示されるように、第1シャッター111は、軸8を中心とする1つの仮想円VC1上に中心が配置された2つの開口H1、H2を有しうる。図2Bに例示されるように、第2シャッター112は、軸8を中心とする1つの仮想円VC2上に中心が配置された2つの開口H3、H4を有しうる。駆動部110は、4つのターゲットT1、T2、T3、T4のうちスパッタリングのために使用するターゲットが、第1シャッター111の開口および第2シャッター112の開口を通して基板109に対して露出するように第1シャッター111および第2シャッター112を駆動する。第1シャッター111および第2シャッター112は、軸8に沿った方向に互いに離隔して配置されうる。第1シャッター111は、第1乃至第4ターゲットホルダ91、92、93、94と第2シャッター112との間に配置されている。
【0017】
第1シャッター111の2つの開口H1、H2のそれぞれの中心を弧の両端とする中心角は、第1乃至第4ターゲットホルダ91、92、93、94から選択されうる互いに隣接するターゲットホルダのそれぞれの中心を弧の両端とする中心角と等しい。第2シャッター112の2つの開口H3、H4のそれぞれの中心を弧の両端とする中心角は、第1乃至第4ターゲットホルダ91、92、93、94から選択されうる互いに隣接するターゲットホルダのそれぞれの中心を弧の両端とする中心角と等しい。
【0018】
図2Aに示す例では、第1シャッター111の2つの開口H1、H2のそれぞれの中心を弧の両端とする中心角αH12は、第2ターゲットホルダ92および第3ターゲットホルダ93のそれぞれの中心を弧の両端とする中心角(第1ターゲットホルダ91および第4ターゲットホルダ94のそれぞれの中心を弧の両端とする中心角と等価)と等しい。図2Bに示す例では、第2シャッター112の2つの開口H3、H4のそれぞれの中心を弧の両端とする中心角αH34は、第2ターゲットホルダ92および第3ターゲットホルダ93のそれぞれの中心を弧の両端とする中心角(第1ターゲットホルダ91および第4ターゲットホルダ94のそれぞれの中心を弧の両端とする中心角と等価)と等しい。
【0019】
図2Aに示す例に代えて、第1シャッター111の2つの開口H1、H2のそれぞれの中心を弧の両端とする中心角は、第1ターゲットホルダ91および第2ターゲットホルダ92のそれぞれの中心を弧の両端とする中心角(第3ターゲットホルダ93および第4ターゲットホルダ94のそれぞれの中心を弧の両端とする中心角と等価)と等しくされてもよい。図2Bに示す例に代えて、第2シャッター112の2つの開口H3、H4のそれぞれの中心を弧の両端とする中心角は、第1ターゲットホルダ91および第2ターゲットホルダ92のそれぞれの中心を弧の両端とする中心角(第3ターゲットホルダ93および第4ターゲットホルダ94のそれぞれの中心を弧の両端とする中心角と等価)と等しくされてもよい。
【0020】
ターゲット91、92、93、94の各々の裏面側には、マグネットユニット80が配置されている。各マグネットユニット80は、マグネトロン放電(例えば、DCマグネトロン放電)を発生させるためのマグネット82と、マグネット82を駆動(例えば、回転駆動)するための駆動部83とを含みうる。各マグネットユニット80はまた、マグネット82とターゲットホルダ(ターゲット)との距離を調整するための距離調整部84を含みうる。
【0021】
ターゲットホルダ91、92、93、94のそれぞれは、基板ホルダ108によって保持される基板109の表面に対してターゲットT1、T2、T3、T4の表面が傾斜した姿勢でターゲットT1、T2、T3、T4を保持するように構成されうる。ここで、ターゲットホルダ91、92、93、94のそれぞれは、ターゲットT1、T2、T3、T4の表面の法線が基板109の中央方向に向くようにターゲットT1、T2、T3、T4を保持しうる。この場合において、マグネットユニット80は、その上部が軸8から遠ざかるように傾けて配置されうる。
【0022】
図9に例示されるように搬送チャンバ300の周囲に多くのスパッタリング装置100を配置するためには、搬送チャンバ300とスパッタリング装置100との間での基板109の搬送方向に直交する方向(以下、「幅方向」という)におけるスパッタリング装置100の寸法を小さくするべきである。前述のように、マグネットユニット80の上部が軸8から遠ざかるようにマグネットユニット80が傾けて配置された場合、マグネットユニット80の上部によってスパッタリング装置100の占有面積が決定されうる。これを考慮すると、幅方向におけるスパッタリング装置100の寸法を小さくするためには、ターゲットホルダ91、92、93、94は、幅方向に圧縮されて配置されるべきである。
【0023】
そこで、この実施形態では、第1乃至第4のターゲットホルダ91、92、93、94(の中心)は、軸8を中心とする1つの仮想円VC上、かつ、長辺LS及び短辺SSを有し仮想円VCに内接する仮想長方形VRの頂点上に配置され、第1ターゲットホルダ91および第2ターゲットホルダ92(の中心)は、仮想長方形VRの1つの短辺SSを定める2つの頂点にそれぞれ配置され、かつ、ゲートバルブ6までの距離が第3ターゲットホルダ93および第4ターゲットホルダ94からゲートバルブ6までの距離より小さい。ここで、第1ターゲットホルダ91および第2ターゲットホルダ92は、ゲートバルブ6までの距離が互いに等しいことが好ましい。
【0024】
上記の配置によれば、ターゲットホルダ91、92、93、94が幅方向に圧縮されて配置され、これによって幅方向におけるスパッタリング装置100の寸法を小さくすることができる。これは、搬送チャンバの周囲により多くのスパッタリング装置100を配置することを可能にする。また、上記の配置によれば、第1乃至第4のターゲットホルダ91、92、93、94によってそれぞれ保持されるターゲットT1、T2、T3、T4の表面に形成される磁場は、相互に等しくなる。例えば、ターゲットホルダ91によって保持されたターゲットT1の表面に形成される磁場がターゲットホルダ92、93、94によって保持されたターゲットT2、T3、T4の裏面側に配置されたマグネット82から受ける影響と、ターゲットホルダ92によって保持されたターゲットT2の表面に形成される磁場がターゲットホルダ91、93、94によって保持されたターゲットT1、T3、T4の裏面側に配置されたマグネット82から受ける影響とは等価である。即ち、第1乃至第4のターゲットホルダ91、92、93、94(の中心)を仮想長方形VRの頂点に配置することによって、ターゲットT1、T3、T4の表面にそれぞれ形成される磁場を相互に等しくすることができる。これにより、使用するターゲットの位置によって生じうるスパッタリング特性の差を低減することができる。
【0025】
以下、図3A図7Dを参照しながら、ターゲットT1、T2、T3、T4、第1シャッター111の開口H1、H2および第2シャッター112の開口H3、H4の位置関係の制御を例示的に説明する。本実施形態に係るスパッタリング装置は基板に向けて各ターゲットが傾けて配置されたものであるが、説明を容易とするため図3A図7Dでは、ターゲットT1、T2、T3、T4、第1シャッター111の開口H1、H2および第2シャッター112の開口H3、H4を相互に平行に記載している。図7A図7Dは、上記の仮想円に沿ってターゲットT1、T2、T3、T4、第1シャッター111の開口H1、H2、第2シャッター112の開口H3、H4を描いた断面図である。図3A図7Dに例示される位置関係の制御は、図10に示すコントローラによってなされうる。
【0026】
図3A図7Dにおいて、網掛けで示されたターゲットは、スパッタリングのために使用されているターゲットであり、白抜きの実線又は白抜きの点線で示されたターゲットは、スパッタリングのために使用されていないターゲットである。また、白抜きの実線で示されたターゲットは、第1シャッター111の開口又は第2シャッター112の開口と同じ位置にあるターゲットである。また、白抜きの点線で示されたターゲットは、第1シャッター111の開口および第2シャッター112の開口のいずれとも異なる位置にあるターゲットである。
【0027】
図3A図3Bおよび図7Aには、ターゲットT2がスパッタリングのために使用されている状態が例示されている。図4A図4Bおよび図7Bには、ターゲットT1がスパッタリングのために使用されている状態が例示されている。図3A図3Bおよび図7Aに示す例では、スパッタリングのために使用されていないターゲットT3に第1シャッター111の開口H2が対向しているので、スパッタリングのために使用されているターゲットT2から放射された材料がターゲットT3に付着し、これによってターゲットT3が汚染される可能性がある。一方、図4A図4Bおよび図7Bに示す例では、スパッタリングのために使用されていないターゲットT3に第1シャッター111の開口H2が対向していないので、スパッタリングのために使用されているターゲットT2から放射された材料がターゲットT3に付着しにくく、ターゲットT3が汚染される可能性が低減されている。ここで、図4A、4Bおよび図7Bに示す例は、4つのターゲットT1、T2、T3、T4のうち1つのターゲットT1のみをスパッタリングのために使用する場合において、第1シャッター111の2つの開口H1、H2の1つはターゲットT1に対向し他の開口は4つのターゲットT1、T2、T3、T4のいずれにも対向しないように制御される例である。また、図4A図4Bおよび図7Bに示す例では、ターゲットT1、T2間の間隔よりも、開口H1、H2間の間隔の方が大きいので、そうでない場合に比べて、ターゲットT3が汚染される可能性が低減されている。
【0028】
図5A図5Bおよび図7Cには、ターゲットT1、T2、T3、T4のいずれもスパッタリングのために使用されていない状態が例示されている。図6A図6Bおよび図7Dには、ターゲットT1、T2、T3、T4のうちターゲットT2、T3がスパッタリングのために同時に使用されている状態(即ち、同時スパッタリングがなされている状態)が例示されている。
【0029】
以下、図8を参照しながら、スパッタリング装置100の構造に関する実施例を例示的に説明するが、本発明の技術的範囲は、当該実施例によって制限されるものでない。1つの実施例において、ターゲットT1、T2、T3、T4の各々の中心と軸8との距離R1は240mmであり、ターゲットT1、T2、T3、T4の各々の中心と基板109の表面との距離(軸8に沿った距離)Wdは250mmであり、ターゲットT1、T2、T3、T4の各々の中心からの法線と軸8とがなす角度αは35度であり、基板109の直径Dwは300mmである。この実施例において、スパッタリングによって基板109に形成された膜の厚さ分布におけるσ(標準偏差)は、2%以下であった。
【0030】
図9には、1又は複数のスパッタリング装置100が搬送チャンバ300の周囲に配置されて構成された基板処理装置が例示されている。搬送チャンバ300は、複数の接続面301を有する。複数の接続面301の少なくとも1つには、スパッタリング装置100が接続されている。搬送チャンバ300とスパッタリング装置100とは、ゲートバルブ6を介して接続されている。複数の接続面301のうち互いに隣接する接続面301のなす角度Aは90度より大きいことが好ましく、これにより、より多くのスパッタリング装置100を搬送チャンバ300の周囲に配置することができる。
【0031】
図10は、本実施形態に係るコントローラ300の構成を示す図である。コントローラ400は、入力部400b、プログラム及びデータを有する記憶部400c、プロセッサ400d及び出力部400eを備えており、本実施形態に係るスパッタリング装置100を制御しうる。コントローラ400は、プロセッサ400dが、記憶部400cに格納された制御プログラムを読み出して実行することで、スパッタリング装置100の動作を制御しうる。すなわち、コントローラ400による制御によって、駆動部110を動作させ、図3A図7Dに示した第1シャッター111および第2シャッター112の動作を行いうる。なお、コントローラ400は、スパッタリング装置100と別個に設けても良いし、スパッタリング装置100に内蔵しても良い。さらに、コントローラ400は、ターゲットT1、T2、T3、T4に印加される電力(即ちターゲットホルダ91、92、93、94に印加される電力)を制御する電源に接続され、各々のターゲットへの電力供給に併せて駆動部110を制御しうる。
【0032】
本願は、2012年11月30日提出の日本国特許出願特願2012−263648を基礎として優先権を主張するものであり、その記載内容の全てを、ここに援用する。
図1A
図1B
図2A
図2B
図3A
図3B
図4A
図4B
図5A
図5B
図6A
図6B
図7A
図7B
図7C
図7D
図8
図9
図10
【手続補正書】
【提出日】2016年4月25日
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
チャンバと、前記チャンバの中で基板を保持可能であり、前記基板を保持する面に直交する軸を中心として回転可能な基板ホルダと、それぞれターゲットを保持するための第1乃至第4ターゲットホルダとを有し、ゲートバルブを介して前記チャンバの内部空間と外部空間との間で前記基板が搬送されるスパッタリング装置であって、
前記第1乃至第4ターゲットホルダによってそれぞれ保持される4つのターゲットのうちスパッタリングのために使用するターゲットを選択するためのシャッターユニットを備え、
平面視において、
前記第1乃至第4ターゲットホルダは、前記軸を中心とし前記チャンバに収まるように配される1つの仮想円上、かつ、2つの長辺及び2つの短辺を有し前記仮想円に内接する仮想長方形の頂点上に配置され、前記第1ターゲットホルダおよび前記第2ターゲットホルダは、前記仮想長方形の1つの短辺を定める2つの頂点にそれぞれ配置され、かつ、前記第3ターゲットホルダおよび前記第4ターゲットホルダは、前記仮想長方形の他の短辺を定める2つの頂点にそれぞれ配置され、前記1つの短辺は、前記ゲートバルブに対向する
ことを特徴とするスパッタリング装置。
【請求項2】
前記第1乃至第4ターゲットホルダのそれぞれは、前記基板ホルダによって保持される基板の表面に対してターゲットの表面が傾斜した姿勢で該ターゲットを保持する、
ことを特徴とする請求項1に記載のスパッタリング装置。
【請求項3】
前記第1ターゲットホルダおよび前記第2ターゲットホルダは、前記ゲートバルブまでの距離が互いに等しい、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のスパッタリング装置。
【請求項4】
前記第1乃至第4ターゲットホルダは、前記仮想円に沿って前記第1ターゲットホルダ、前記第2ターゲットホルダ、前記第3ターゲットホルダ、前記第4ターゲットホルダの順に配置され、
前記シャッターユニットは、前記軸を中心として回転可能な第1シャッターおよび第2シャッターを含み、
前記第1シャッターおよび前記第2シャッターは、前記軸に沿った方向に互いに離隔して配置され、
前記第1シャッターは、前記軸を中心とする1つの仮想円上に配置された2つの開口を有し、前記第2シャッターは、前記軸を中心とする1つの仮想円上に配置された2つの開口を有し、
前記第1シャッターの前記2つの開口のそれぞれの中心を弧の両端とする中心角は、前記第1乃至第4ターゲットホルダから選択されうる互いに隣接するターゲットホルダのそれぞれの中心を弧の両端とする中心角と等しく、前記第2シャッターの前記2つの開口のそれぞれの中心を弧の両端とする中心角は、前記第1乃至第4ターゲットホルダから選択されうる互いに隣接するターゲットホルダのそれぞれの中心を弧の両端とする中心角と等しい、
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のスパッタリング装置。
【請求項5】
前記第1シャッターの前記2つの開口のそれぞれの中心を弧の両端とする中心角は、前記第2ターゲットホルダおよび前記第3ターゲットホルダのそれぞれの中心を弧の両端とする中心角と等しく、前記第2シャッターの前記2つの開口のそれぞれの中心を弧の両端とする中心角は、前記第2ターゲットホルダおよび前記第3ターゲットホルダのそれぞれの中心を弧の両端とする中心角と等しい、
ことを特徴とする請求項4に記載のスパッタリング装置。
【請求項6】
前記第1シャッターの前記2つの開口のそれぞれの中心を弧の両端とする中心角は、前記第1ターゲットホルダおよび前記第2ターゲットホルダのそれぞれの中心を弧の両端とする中心角と等しく、前記第2シャッターの前記2つの開口のそれぞれの中心を弧の両端とする中心角は、前記第1ターゲットホルダおよび前記第2ターゲットホルダのそれぞれの中心を弧の両端とする中心角と等しい、
ことを特徴とする請求項4に記載のスパッタリング装置。
【請求項7】
前記第1シャッターは、前記第1乃至第4ターゲットホルダと前記第2シャッターとの間に配置され、
前記第1乃至第4ターゲットホルダによってそれぞれ保持された前記4つのターゲットのうち1つのターゲットのみをスパッタリングのために使用する場合に、前記第1シャッターは、前記第1シャッターの前記2つの開口の1つは前記1つのターゲットに対向し他の開口は前記4つのターゲットのいずれにも対向しないように制御される、
ことを特徴とする請求項4乃至6のいずれか1項に記載のスパッタリング装置。
【請求項8】
複数の接続面を有する搬送チャンバと、
前記複数の接続面の少なくとも1つに接続されたスパッタリング装置と、を備え、
前記スパッタリング装置は、請求項1乃至7のいずれか1項に記載のスパッタリング装置であり、
前記複数の接続面のうち互いに隣接する接続面のなす角度が90度より大きい、
ことを特徴とする基板処理装置。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0008
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0008】
本発明の第1の側面は、チャンバと、前記チャンバの中で基板を保持可能であり、前記基板を保持する面に直交する軸を中心として回転可能な基板ホルダと、それぞれターゲットを保持するための第1乃至第4ターゲットホルダとを有し、ゲートバルブを介して前記チャンバの内部空間と外部空間との間で前記基板が搬送されるスパッタリング装置であって、前記第1乃至第4ターゲットホルダによってそれぞれ保持される4つのターゲットのうちスパッタリングのために使用するターゲットを選択するためのシャッターユニットを備え、平面視において、前記第1乃至第4ターゲットホルダは、前記軸を中心とし前記チャンバに収まるように配される1つの仮想円上、かつ、2つの長辺及び2つの短辺を有し前記仮想円に内接する仮想長方形の頂点上に配置され、前記第1ターゲットホルダおよび前記第2ターゲットホルダは、前記仮想長方形の1つの短辺を定める2つの頂点にそれぞれ配置され、かつ、前記第3ターゲットホルダおよび前記第4ターゲットホルダは、前記仮想長方形の他の短辺を定める2つの頂点にそれぞれ配置され、前記1つの短辺は、前記ゲートバルブに対向する