(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2016-166518(P2016-166518A)
(43)【公開日】2016年9月15日
(54)【発明の名称】摩擦減震装置
(51)【国際特許分類】
E04H 9/02 20060101AFI20160819BHJP
F16F 15/04 20060101ALI20160819BHJP
F16F 15/02 20060101ALI20160819BHJP
【FI】
E04H9/02 351
F16F15/04 E
F16F15/02 E
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2015-153755(P2015-153755)
(22)【出願日】2015年8月4日
(11)【特許番号】特許第5896546号(P5896546)
(45)【特許公報発行日】2016年3月30日
(31)【優先権主張番号】特願2015-39736(P2015-39736)
(32)【優先日】2015年3月2日
(33)【優先権主張国】JP
(71)【出願人】
【識別番号】504451690
【氏名又は名称】半澤 薫和
(74)【代理人】
【識別番号】100119275
【弁理士】
【氏名又は名称】遠藤 信明
(72)【発明者】
【氏名】半澤 薫和
(72)【発明者】
【氏名】半澤 和夫
【テーマコード(参考)】
2E139
3J048
【Fターム(参考)】
2E139AA01
2E139AC04
2E139AC22
2E139CA21
2E139CC02
2E139CC03
3J048AA06
3J048AB01
3J048AC01
3J048BA23
3J048BE12
3J048CB21
3J048DA01
3J048EA38
(57)【要約】
【課題】簡単な構造で施工性に優れ、中規模や大規模地震に有効に機能する摩擦減震装置であって、滑り面が1つであっても2つの場合と同様の減震効果を得ることができる摩擦減震装置を提供する。
【解決手段】土台または基礎に接触する円盤状の第1の滑り平板と、基礎または杭頭に接触する円盤状の第2の滑り平板とからなり、前記第2の滑り平板の表面には略等脚台形を呈する1つ以上のリング状のリング突条が凸設される一方、該第1の滑り平板の底面には断面が下方向に広がる略等脚台形を呈し該リング突条に対置して該リング突条を跨るように被包する略等脚台形でリング状のリング被包溝が刻設され、前記第1の滑り平板はその厚さを調整する嵩上げ部を有する、構成とした。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の基礎と土台または杭頭と基礎との間に重ね合わされて介挿される複数枚の滑り平板からなる摩擦減震装置において、
前記摩擦減震装置は上段に位置し前記土台または前記基礎に接触する第1の滑り平板と、下段に位置し前記基礎または前記杭頭に接触する第2の滑り平板と、からなり、
前記第1の滑り平板および前記第2の滑り平板は円盤状を呈し、該第1の滑り平板の直径は前記土台または前記基礎の幅と略同一であって該第2の滑り平板よりも大きく形成され、
前記第2の滑り平板が前記該第1の滑り平板に重ね合わされる面には該第2の滑り平板と同心で断面が略二等辺三角形または略等脚台形を呈する1つ以上のリング状のリング突条が凸設される一方、該第1の滑り平板が該第2の滑り平板に重ね合わされる面には断面が下方向に広がる略等脚台形を呈し該リング突条に対置して該リング突条を跨るように被包するリング状のリング被包溝が刻設され、該リング突条の第2の滑り平板の中心からの距離は該リング被包溝の第1の滑り平板の中心からの距離と略同一であって、断面における該リング突条の斜辺は直線である一方、該リング被包溝の斜辺は下に凸の曲線または直線であり、
前記第1の滑り平板の前記土台または前記基礎に接触する表面および前記第2の滑り平板の前記基礎または前記杭頭に接触する裏面は凸起や凸条が浮き彫りとなっている粗面である、ことを特徴とする摩擦減震装置。
【請求項2】
前記第1の滑り平板および前記第2の滑り平板の中心部にはアンカーボルトが遊貫する挿通孔が貫設されて該第1の滑り平板の挿通孔は該第2の滑り平板の挿通孔よりも大きく形成され、該第2の滑り平板の挿通孔の直径は該アンカーボルトの直径に略一致するとともに、該第1の滑り平板の挿通孔の直径および該第2の滑り平板の挿通孔の直径の差は断面から見た前記リング被包溝の底辺の長さおよび前記リング突条の底辺の長さの差よりも大きく形成されている、ことを特徴とする請求項1に記載の摩擦減震装置。
【請求項3】
前記リング突条の斜辺の勾配は水平方向に対して略3%ないし6%であって、直線状となるリング被包溝の斜辺の勾配も略同一であるとともに、該リング突条の高さおよび該リング被包溝の深さは略同一である、ことを特徴とする請求項1または請求項3のいずれかに記載の摩擦減震装置。
【請求項4】
前記第1の滑り平板はその厚さを調整する嵩上げ部を有し、該嵩上げ部は外周面が前記第2の滑り平板の外周縁に一致する外周壁と、内周面が該第1の滑り平板の挿通孔の内周縁に一致する内周壁と、該外周壁および該内周壁に連結する複数の連結壁と、からなり、
前記第1の滑り平板は前記第2の滑り平板に面接触する滑り平面を具えるとともに、前記内周壁、前記外周壁および前記連結壁が形成する空間は上部が開放され、
前記リング被包溝は前記滑り平面の裏面に刻設されている、ことを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の摩擦減震装置。
【請求項5】
前記第1の滑り平板はその厚さを調整する嵩上げ部を有し、該嵩上げ部は外周面が前記第2の滑り平板の外周縁に一致する外周壁と、内周面が該第1の滑り平板の挿通孔の内周縁に一致する内周壁と、該外周壁および該内周壁に連結する複数の連結壁と、からなり、
前記内周壁、前記外周壁および前記連結壁が形成する空間は下部が開放されて、該連結壁の下端部が前記第2の滑り平板に接触し、
前記リング被包溝は前記連結壁の下端部に刻設されている、ことを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の摩擦減震装置。
【請求項6】
前記第1の滑り平板および前記第2の滑り平板は、亜鉛合金、ステンレス鋼およびアルミニウム合金からなる第1のグループ、該第1のグループにフッ素樹脂をコーティングした第2のグループ並びに重ね合わせ面のみ該第1のグループの内の1つとなるように合成樹脂板を積層した第3のグループの内から選択されるいずれか1つ、または該第1ないし該第3のグループの内から選択される組み合わせである、ことを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の摩擦減震装置。
【請求項7】
前記第1の滑り平板の表面および前記第2の滑り平板の裏面には前記挿通孔を避けて表面または裏面を横断する複数の横断溝が対置して刻設されるとともに、該第1の滑り平板の横断溝の両端部には前記第2の滑り平板をその中心を一致させて重ね合わせたときに該第2の滑り平板の外周縁まで達するスリットが形成され、該横断溝にリング状合成ゴムを嵌入したときには該リング状合成ゴムは該第1の滑り平板の表面および該第2の滑り平板の裏面より突出することなく巻回される、ことを特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれかに記載の摩擦減震装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地震から建物を保護するための減震装置に関し、より詳しくは、建物の基礎と土台または杭頭と基礎との間に介挿される板材を主要素とする薄型の摩擦減震装置に関する。
【背景技術】
【0002】
木造建物に代表される比較的軽量な小規模の建物に適用される免震技術として、平板間の摩擦力を利用した減震装置が提案されていて、例えば、特開2002−206245号公報、特開2002−371569号公報、特開2007−138678号公報、特開2009−293234号公報および特許第5657825号公報に関示されている。なお、特開2007−138678号公報、特開2009−293234号公報および特許第5657825号公報に関示の技術は、本願出願人によるものである。
【0003】
特開2002−206245号公報に開示の技術は、「戸建住宅のような構造物に適し、安価で提供できる住宅減震用基礎構造を提供する」ことを目的としていて、「住宅が構築される地盤に形成された地盤側コンクリート基礎と、住宅の下部に構成され、地盤側基礎の上に置かれる住宅側コンクリート基礎と、地盤側コンクリート基礎と住宅側コンクリート基礎との間に設けられた複数の摩擦軽減機構とを含み、摩擦軽減機構は、地盤側コンクリート基礎に設けられた所定の面積を持つ板材と、住宅側コンクリート基礎における該板材に対応する箇所に住宅側コンクリート基礎の下面から出没可能に設けられて前記板材の上を住宅側コンクリート基礎と共にスライド可能な滑動部材とを含む」構成とすることにより、この目的を達成しようとしたものである。
【0004】
また、特開2002−371569号公報に開示の技術は、特開2002−206245号公報に開示の技術と同様に、「戸建住宅のような構造物に適し、安価で提供できる住宅減震用基礎構造を提供する」ことを目的としていて、「住宅が構築される地盤に形成された地盤側コンクリート基礎と、住宅の下部に構成され、地盤側基礎の上に置かれる住宅側コンクリート基礎と、地盤側コンクリート基礎と住宅側コンクリート基礎との間に設けられた複数の摩擦軽減機構とを含み、摩擦軽減機構は、地盤側コンクリート基礎に設けられた所定の面積を持つ板材と、住宅側コンクリート基礎における該板材に対応する箇所の下面に設けられて前記板材の上を住宅側コンクリート基礎と共にスライド可能な滑動部材とを含む」構成とすることにより、この目的を達成しようとしたものである。
【0005】
そして、本願出願人による特開2007−138678号公報に開示の技術は、「一戸建ての住宅のような小型の建築物に、好適な減震装置を提供する」ことを目的としていて、「基礎と土台又は柱との間で、主にアンカーボルトの各箇所に分散して設けられる、地震時の横揺れ荷重により潤滑な滑動可能なフッ素系高分子樹脂を塗装した二重の鋼板等とからなる摩擦減衰装置と地震荷重を受けてこの摩擦減衰装置が滑動した場合、基礎に固定されたアンカーボルトと土台の衝突を緩衝し基礎と土台のずれを拘束する低反発高分子樹脂等の円筒形の衝撃緩衝装置及び地震荷重を受けた時に発生する引抜力をアンカーボルトに拘束する滑動可能な座板鋼板及びナット、スプリングワッシャー等からなる引抜拘束装置からなる」構成とすることにより、この目的を達成しようとしたものである。
【0006】
また、特開2009−293234号公報に関示の技術は、「大規模の建物はもちろんのこと、一戸建て住宅のような新築や既存の小規模の建物に設置することができ、簡単な構造を有し低コストで設置可能であって、中規模や大規模地震に有効に機能する摩擦減震装置を提供する」ことを目的としていて、解決手段を「建物の基礎と土台との間または杭頭と基礎との間に重ね合わされて介挿される少なくとも3枚の滑り平板からなり、最下段に位置する該滑り平板は該基礎または該杭頭に固定されるとともに、最上段に位置する該滑り平板は該土台または該基礎に固定され、中間に位置する該滑り平板は上部の該滑り平板および下部の該滑り平板に対して摺動可能に設置され、相互に面接触する該滑り平板の1つの滑り面同士は摩擦係数が所定値となるように形成されるとともに、他の1つの滑り面同士は摩擦係数が該所定値よりも大きな値となるように形成されるよう」にしている。
【0007】
さらに、特許第5657825号公報に関示の技術は、「床下空間が換気型や密閉型等の木造住宅に対応でき、簡単な構造を有し低コストで施工性にも優れ、中規模や大規模地震に有効に機能する摩擦減震装置を提供する」ことを目的としていて、解決手段を「土台に接触する円盤状の第1の滑り平板と、基礎に接触する円盤状の第2の滑り平板と、該第1の滑り平板および該第2の滑り平板に介挿される円盤状の第3の滑り平板とからなり、前記第1の滑り平板および前記第2の滑り平板の厚さは略同一であり、前記第3の滑り平板はそれより厚く形成され、その中心部にはアンカーボルトが遊貫する挿通孔が貫設され、該第1の滑り平板の直径は前記土台の幅と略同一であって該第2の滑り平板や該第3の滑り平板よりも大きく形成されるとともに、該第1の滑り平板の挿通孔の直径、該第3の滑り平板の挿通孔の直径および該第2の滑り平板の挿通孔の直径はこの順に小さくなるように形成され、重ね合わせ面は平滑で均等に接触する構成」としている。
【0008】
【特許文献1】特開2002−206245号公報
【特許文献2】特開2002−371569号公報
【特許文献3】特開2007−138678号公報
【特許文献4】特開2009−293234号公報
【特許文献5】特許第5657825号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1および特許文献2に開示の技術は、摩擦軽減機構が地盤側基礎に設けられた所定の面積を持つ板材と、住宅側基礎の下面における該板材に対応する箇所に設けられて該板材の上を該住宅側基礎と共にスライド可能な滑動部材とから構成されていて、たとえば、摩擦係数を大きく設定した場合には、中規模程度の地震に対して有効に働かず、摩擦係数を小さく設定した場合には、大規模の地震に対して有効に働かない恐れがある。
【0010】
そして、特許文献3に開示の技術では、コンクリート製の基礎および木製の土台からなる一般的な住宅にも適用できるものの、摩擦減衰装置が地震時の横揺れ荷重により滑動が可能なフッ素系高分子樹脂を塗装した二層の鋼板から構成されていて、摩擦面が1箇所であるので、前述の特許文献1および特許文献2に開示の装置と略同様の課題があり、基礎に固定されたアンカーボルトと土台の衝突を緩衝する衝撃緩衝装置に使用される円筒形の低反発高分子は、高価であって経済性に難点があるとともに、温度変化に対し脆弱化するという課題がある。一方、特許文献4に開示の技術では、一戸建て住宅のような新築や既存の小規模の建物に設置することができ、簡単な構造を有し低コストで設置可能であって、中規模や大規模地震に有効に機能する摩擦減震装置ではあるものの、床下空間が換気型や密閉型等のあらゆる一戸建て住宅に適用できるわけではなく、かつ、施工性の観点からは施工精度の確保が難しいとの問題点が指摘されている。また、特許文献5に開示の技術では、摩擦減震効果を高めるためには、第1の滑り平板ないし第3の滑り平板を重ね合わせて2つの滑り面を形成する必要があり、2枚重ねの場合よりもコストアップにつながることとなる。
【0011】
そこで、本願発明は、木造住宅のような床下空間が換気型や密閉型等にも対応でき、簡単な構造を有し低コストで施工性にも優れ、中規模や大規模地震に有効に機能する摩擦減震装置であって、滑り面(摩擦面)が1つであっても滑り面が2つの場合と同程度の減震効果を得ることができる摩擦減震装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するため、本願請求項1に係る摩擦減震装置は、建物の基礎と土台または杭頭と基礎との間に重ね合わされて介挿される複数枚の滑り平板からなる摩擦減震装置において、前記摩擦減震装置は上段に位置し前記土台または前記基礎に接触する第1の滑り平板と、下段に位置し前記基礎または前記杭頭に接触する第2の滑り平板と、からなり、前記第1の滑り平板および前記第2の滑り平板は円盤状を呈し、該第1の滑り平板の直径は前記土台または前記基礎の幅と略同一であって該第2の滑り平板よりも大きく形成され、前記第2の滑り平板が前記該第1の滑り平板に重ね合わされる面には該第2の滑り平板と同心で断面が略二等辺三角形または略等脚台形を呈する1つ以上のリング状のリング突条が凸設される一方、該第1の滑り平板が該第2の滑り平板に重ね合わされる面には断面が下方向に広がる略等脚台形を呈し該リング突条に対置して該リング突条を跨るように被包するリング状のリング被包溝が刻設され、該リング突条の第2の滑り平板の中心からの距離は該リング被包溝の第1の滑り平板の中心からの距離と略同一であって、断面における該リング突条の斜辺は直線である一方、該リング被包溝の斜辺は下に凸の曲線または直線であり、前記第1の滑り平板の前記土台または前記基礎に接触する表面および前記第2の滑り平板の前記基礎または前記杭頭に接触する裏面は凸起や凸条が浮き彫りとなっている粗面である、ことを特徴としている。
また、本願請求項2に係る摩擦減震装置は、請求項1に記載の摩擦減震装置であって、前記第1の滑り平板および前記第2の滑り平板の中心部にはアンカーボルトが遊貫する挿通孔が貫設されて該第1の滑り平板の挿通孔は該第2の滑り平板の挿通孔よりも大きく形成され、該第2の滑り平板の挿通孔の直径は該アンカーボルトの直径に略一致するとともに、該第1の滑り平板の挿通孔の直径および該第2の滑り平板の挿通孔の直径の差は断面から見た前記リング被包溝の底辺の長さおよび前記リング突条の底辺の長さの差よりも大きく形成されている、ことを特徴としている。なお、リング被包溝の底辺およびリング突条の底辺とはそれぞれ摩擦減震装置の使用状態における等脚台形および二等辺三角形の概念である。
そして、本願請求項3に係る摩擦減震装置は、請求項1または請求項2に記載の摩擦減震装置であって、前記リング突条の斜辺の勾配は水平方向に対して略3%ないし6%であって、直線状となるリング被包溝の斜辺の勾配も略同一であるとともに、該リング突条の高さおよび該リング被包溝の深さは略同一である、ことを特徴としている。
さらに、本願請求項4に係る摩擦減震装置は、請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の摩擦減震装置であって、前記第1の滑り平板はその厚さを調整する嵩上げ部を有し、該嵩上げ部は外周面が前記第2の滑り平板の外周縁に一致する外周壁と、内周面が該第1の滑り平板の挿通孔の内周縁に一致する内周壁と、該外周壁および該内周壁に連結する複数の連結壁と、からなり、前記第1の滑り平板は前記第2の滑り平板に面接触する滑り平面を具えるとともに、前記内周壁、前記外周壁および前記連結壁が形成する空間は上部が開放され、前記リング被包溝は前記滑り平面の裏面に刻設されている、ことを特徴としている。
また、本願請求項5に係る摩擦減震装置は、請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の摩擦減震装置であって、前記第1の滑り平板はその厚さを調整する嵩上げ部を有し、該嵩上げ部は外周面が前記第2の滑り平板の外周縁に一致する外周壁と、内周面が該第1の滑り平板の挿通孔の内周縁に一致する内周壁と、該外周壁および該内周壁に連結する複数の連結壁と、からなり、前記内周壁、前記外周壁および前記連結壁が形成する空間は下部が開放されて、該連結壁の下端部が前記第2の滑り平板に接触し、前記リング被包溝は前記連結壁の下端部に刻設されている、ことを特徴としている。
そして、本願請求項6に係る摩擦減震装置は、請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の摩擦減震装置であって、前記第1の滑り平板および前記第2の滑り平板は、亜鉛合金、ステンレス鋼およびアルミニウム合金からなる第1のグループ、該第1のグループにフッ素樹脂をコーティングした第2のグループ並びに重ね合わせ面のみ該第1のグループの内の1つとなるように合成樹脂板を積層した第3のグループの内から選択されるいずれか1つ、または該第1ないし該第3のグループの内から選択される組み合わせである、ことを特徴としている。
さらに、本願請求項7に係る摩擦減震装置は、請求項1ないし請求項6のいずれかに記載の摩擦減震装置であって、前記第1の滑り平板の表面および前記第2の滑り平板の裏面には前記挿通孔を避けて表面または裏面を横断する複数の横断溝が対置して刻設されるとともに、該第1の滑り平板の横断溝の両端部には前記第2の滑り平板をその中心を一致させて重ね合わせたときに該第2の滑り平板の外周縁まで達するスリットが形成され、該横断溝にリング状合成ゴムを嵌入したときには該リング状合成ゴムは該第1の滑り平板の表面および該第2の滑り平板の裏面より突出することなく巻回される、ことを特徴としている。
【発明の効果】
【0013】
本願発明は以下の効果を奏する。
(1)摩擦減震装置は第1の滑り平板および第2の滑り平板から構成されていて、第1の滑り平板の土台や基礎に接する表面および第2の滑り平板の基礎や杭頭に接する裏面は凹凸模様が凸起する粗面となっているので、設置したときには凸起部分が土台や基礎または基礎や杭頭に食い込んで、この面で滑りが生ずる恐れが少なく、第1の滑り平板と第2の滑り平板との重ね合わせ面で滑りが生ずる。
(2)第2の滑り平板の表面には略二等辺三角形または略等脚台形の断面形状のリング突条が凸設され、そのリング突条を被包するリング被包溝が第1の滑り平板の裏面に刻設されていて、その上、第1の滑り平板の挿通孔の直径および該第2の滑り平板の挿通孔の直径の差はリング被包溝の底辺の長さおよびリング突条の底辺の長さの差よりも大きく形成されているため、地震時にはまず、第1の滑り平板と第2の滑り平板との重ね合わせ面で滑りが生じ、その後にリング突条およびリング被包溝の斜面(断面における斜辺)同士が接触してリング突条にリング被包溝が乗り上がるようになる。すなわち、リング突条およびリング被包溝の斜面同士が接触した後は第1の滑り平板は第2の滑り平板に対して持ち上がった状態となり、第1の滑り平板および第2の滑り平板を締め付けているアンカーボルトの軸力が大きくなって摩擦力が増大するとともに第1の滑り平板の位置エネルギーが増大して減衰効果を高めることとなる。
(3)リング被包溝の斜辺を下に凸の曲線とし、または直線とすることにより、リング突条の斜面にリング被包溝の斜面が点接触または線接触することになって、集中荷重を受けながら摺動する。このため、平面摩擦抵抗に加えて歪摩擦抵抗も発生し、2段階で摩擦によるブレーキが掛かって地震エネルギーを多く吸収することができる。
(4)比較的小規模の木造住宅等ではリング突条およびそれに対置するリング被包溝の本数は1つとすることで減衰効果が発揮されるが、基礎幅の大きな中規模以上の建物にあっては、複数本数とすることで建物の規模に見合った減衰効果を得ることができる。
(5)本願出願人による実験では、リング突条の斜面の勾配は水平方向に対して3%ないし6%とすることで第2の滑り平板に対する第1の滑り平板の動きがスムーズとなる。
(6)第1の滑り平板の嵩上げ部は中実ではなく外周壁と内周壁と外周壁および内周壁に連結する複数の連結壁とから形成されていて上部または下部が開放されている中空となっているので、軽量で扱い易く経済的であるばかりでなく、鋳造が可能となるので、安価に製造することができる。また、嵩上げ部の高さを調整することで、第1の滑り平板および第2の滑り平板の組み合わせでは、略5mmないし20mmの高さの摩擦減震装置が提供できるため、床下空間が密閉型や換気型等のあらゆる木造住宅に適用できる。なお、第1の滑り平板を上部開放型とした場合には、第1の滑り平板はリング突条部分を除いた第2の滑り平板に面接触するので、第1の滑り平板の摩耗が少なくなる。
(7)第1の滑り平板および第2の滑り平板の材質は、所定の静的摩擦係数を得ることができ、耐候性や耐摩耗性を具えていれば様々な材質を用いることができるが、本願出願人の知見では、第1のグループ、第2のグループおよび第3のグループに挙げた材料が適している。ただし、経済性を考慮すると鋳造加工が可能な第1のグループの亜鉛合金がもっとも好ましい。
(8)挿通孔が貫設されていない摩擦減震装置は、柱直下のようなアンカーボルトが立設されていない箇所や所望の箇所に設置することができるが、挿通孔が貫設されている摩擦減震装置については、第1の滑り平板および第2の滑り平板の組み合わせたものを予めリング状合成ゴムで巻回することにより、第1の滑り平板および第2の滑り平板の挿通孔の中心は一致するので、作業現場では単にリング状合成ゴムで巻回した組み合わせセットをアンカーボルトに挿入するだけで施工精度が向上する。なお、このリング状合成ゴムは仮のものであり摩擦減震装置の性能に影響を及ぼすものではないことから施工後は放置していても支障を及ぼすことはない。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は実施例1に係る摩擦減震装置の設置状態を示す基礎・土台の部分断面図である。
【
図2】
図2は実施例2に係る摩擦減震装置の設置状態を示す基礎・土台の部分断面図である。
【
図4】
図4(a)は実施例1に係る摩擦減震装置の平面図、
図4(b)は実施例1に係る摩擦減震装置の正面図である。
【
図5】
図5(a)は実施例2に係る摩擦減震装置の平面図、
図5(b)は実施例2に係る摩擦減震装置の正面図である。
【
図6】
図6は実施例2係る摩擦減震装置の実験結果のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明を実施するための形態に係る実施例について、
図1ないし
図5を参照して説明する。なお、
図1ないし
図5において、符号1は実施例1に係る摩擦減震装置、符号2は実施例2に係る摩擦減震装置、符号10は第1の滑り平板、符号11は挿通孔、符号13は嵩上げ部、符号131は外周壁、符号133は内周壁、符号135は連絡壁、符号137は滑り平面、符号15はリング被包溝、符号17は横断溝、符号19はスリット、符号20は第2の滑り平板、符号21は挿通孔、符号23はリング突条、符号25は横断溝、符号31はリング状合成ゴム、符号41はアンカーボルト、符号43はナット、符号45は基礎、符号47は土台、である。
【実施例1】
【0016】
まず、実施例1に係る摩擦減震装置1について、
図1、
図3および
図4を基に説明する。
【0017】
摩擦減震装置1は、設置したときに上段に位置し土台47に接する第1の滑り平板10と、下段に位置し基礎45に接する第2の滑り平板20と、から構成されている。そして、第1の滑り平板10は上部の円盤と下部の円柱状の嵩上げ部13が合体した形状となっていて、中心部には上下方向に23mmφの挿通孔11が貫設されている。また、上部の円盤の直径は90mmφで厚さが3mmであって、この90mmφの大きさは土台47の幅に略一致する。下部の円柱状の嵩上げ部13の直径は70mmφで厚さが14mmであって、嵩上げ部13の外周部分は壁状の外周壁131が形成され、内周部分は内周壁133が形成されて、内周壁133から放射状に外周壁131を結ぶ連結壁135が出ている。
【0018】
そして、外周壁131、内周壁133および連結壁135が形成する空間は有底であって上部が外部に開放されていて、有底部が形成する平板の裏面が滑り平面137となっている。なお、外周壁131、内周壁133および連結壁135が形成する有底の空間は雨水等が溜まらないように外周壁131に図示外の水抜き孔が貫設されている。
【0019】
さらに、第1の滑り平板10の上部の円盤の表面には外周壁131、内周壁133および連結壁135が形成する空間が開口しているとともに、凹凸模様が凸起する粗面となっていて、挿通孔11を避けて2本の平行な横断溝17が刻設され、この横断溝17の両端部は後述する第2の滑り平板20の中心を一致させて重ね合わせたときに第2の滑り平板20の外周縁より奥まで達するスリット19が形成されていて、このスリット19に対応する嵩上げ部13の外周壁131の表面にも溝が刻設されている。
【0020】
そして、第1の滑り平板10の滑り平面137の裏面には第2の滑り平板20を重ね合わせたときに第2の滑り平板20に凸設された後述するリング突条23に対応する位置にリング被包溝15が刻設されていて、その断面形状は下方向に広がる略等脚台形であって、上辺の長さが15.0mm、下辺の長さが20.0mm、高さ(溝の深さ)が0.2mm、となっていて、斜辺は下に凸の曲線となっている(
図3参照)。
【0021】
なお、リング被包溝15の斜面、すなわち断面形状としての斜辺は、下に凸の曲線としているが、直線であっても良い。この場合、斜辺の勾配はリング突条23の斜辺の勾配に一致させる。
【0022】
第2の滑り平板20は円盤状を呈していて、中心部には13mmφの挿通孔21が貫設され、その厚さは3mmとなっている。また、第2の滑り平板20の裏面は凹凸模様が凸起する粗面となっていて、挿通孔21を避け、かつ、第1の滑り平板10と重ね合わせたときに横断溝17と対応する位置に2本の横断溝25が刻設されている。
【0023】
そして、第2の滑り平板20の表面には第2の滑り平板20と同心でリング状のリング突条23が凸設されていて、その断面形状は下方向に広がる略等脚台形であって、上辺の長さが1.0mm、下辺の長さが11.0mm.高さが0.2mm、となっている。したがって、斜辺の勾配は0.2mm/(11.0mm−1.0mm)/2=0.04=4% となる。なお、中心を合わせて第1の滑り平板10と重ね合わせたときは、リング突条23およびリング被包溝15はその中心が一致するような位置となっている。
【0024】
また、リング被包溝15の底辺の長さとリング突条23の底辺の長さの差(A)は、20mm−11mm=9mm であり、第1の滑り平板10の挿通孔11の直径と第2の滑り平板20の挿通孔21の直径の差(B)は、23mm−13mm=10mm となって、A<B であるから、第1の滑り平板10および第2の滑り平板20が地震の横揺れにより相対的に移動したときには、リング被包溝15およびリング突条23の斜面が先に接触することになって、第1の滑り平板10が第2の滑り平板20に乗り上げる以前に、第1の滑り平板10の挿通孔11がアンカーボルト41に当接することはない。
【0025】
ここで、摩擦減震装置1の設置手順例を説明する。
摩擦減震装置1の設置に先だって第1の滑り平板10および第2の滑り平板20を重ね合わせそれぞれの横断溝17、25にリング状合成ゴム31を嵌めて巻回させておく。これにより第1の滑り平板10および第2の滑り平板20はその中心が一致する状態で一塊になる。
【0026】
(1)一塊となった第1の滑り平板10および第2の滑り平板20をアンカーボルト41に挿入する。なお、実施例ではアンカーボルト41は12mmφのものを使用していて、第2の滑り平板20の挿通孔21は13mmφであるので、単に挿入するだけで第1の滑り平板10および第2の滑り平板20はアンカーボルト41に対して適切な位置を保持する。
(2)アンカーボルト41のそれぞれに一塊となった第1の滑り平板10および第2の滑り平板20を挿入した後、予めアンカーボルト41の位置に合わせて挿入孔を貫設し挿入孔回りを座堀した木製の土台47をアンカーボルト41に添って設置する。
(3)設置した土台47の座堀部分にはアンカーボルト41の先端部が飛び出しているので、座金を挿入した上でナット43、43を螺入して、電動ドリル等で締め付ける。
以上で摩擦減震装置1の設置作業は完了する。
【0027】
つぎに、摩擦減震装置1の作用について説明する。
地震波により摩擦減震装置1を構成する第1の滑り平板10および第2の滑り平板20は相対的、かつ、周期的に前後左右に摺動するが、このとき、地震エネルギーは第1の滑り平板10および第2の滑り平板20間の摩擦抵抗で減衰することになる。第1の滑り平板10および第2の滑り平板20間の移動量が前述したAの値の1/2、すなわち9mm/2=4.5mmを超えるとリング被包溝15およびリング突条23の斜面が接触し、さらに、移動量が増すと第1の滑り平板10が第2の滑り平板20に乗り上げる。このため、第1の滑り平板10および第2の滑り平板20を締め付けているアンカーボルト41の軸力が大きくなって摩擦力が増大し、さらには、第1の滑り平板10の位置エネルギーが増大して地震エネルギーの減衰効果を高めることとなる。
【0028】
なお、断面から見てリング被包溝15の斜辺を下に凸の曲線とした場合には、リング被包溝15およびリング突条23の斜面の曲率半径が同一ではなく異なるため、リング突条23の斜面にリング被包溝15の斜面が線接触ではなく点接触することになり、リング突条23の斜面は一点集中荷重を受けながら摺動することになる。このため、第1の滑り平板10および第2の滑り平板20間には平面摩擦抵抗に加えて歪摩擦抵抗も発生し、2段階による摩擦抵抗で地震エネルギーを多く吸収することができ、減衰効果がより大きくなる。また、断面から見てリング被包溝15の斜辺を直線とした場合には、リング被包溝15およびリング突条23の斜面の曲率半径が同一ではなく異なるため、リング突条23の斜面にリング被包溝15の斜面が面接触ではなく線接触することになり、リング突条23の斜面は集中荷重を受けながら摺動することになる。この場合も、第1の滑り平板10および第2の滑り平板20間には平面摩擦抵抗に加えて歪摩擦抵抗も発生し、2段階による摩擦抵抗で地震エネルギーを多く吸収することができ、減衰効果が大きくなる。
【実施例2】
【0029】
つぎに、実施例2に係る摩擦減震装置2について、
図2および
図5を基に、
図3を参照して説明するが、摩擦減震装置1は摩擦減震装置2と略同様の構成であり、異なるところは第1の滑り平板10の構成であるので、ここでは主に、第1の滑り平板10について説明し、異なる構成による効果の相違点を説明する。
【0030】
摩擦減震装置2は、設置したときに上段に位置し土台47に接する第1の滑り平板10と、下段に位置し基礎45に接する第2の滑り平板20と、から構成されている。そして、第1の滑り平板10は上部の円盤と下部の円柱状の嵩上げ部13が合体した形状となっていて、中心部には上下方向に23mmφの挿通孔11が貫設されている。また、上部の円盤の直径は90mmφで厚さが3mmであって、この90mmφの大きさは土台47の幅に略一致する。下部の円柱状の嵩上げ部13の直径は70mmφで厚さが14mmであって、嵩上げ部13の外周部分は壁状の外周壁131が形成され、内周部分は内周壁133が形成されて、内周壁133から放射状に外周壁131を結ぶ連結壁135が出ている。
【0031】
そして、外周壁131、内周壁133および連結壁135が形成する空間は、上部が蓋状に覆われている一方、下部が外部に開放されていて、外周壁131、内周壁133および連結壁135の下端縁が第2の滑り平板20に対する滑り面となっている。
【0032】
そして、第1の滑り平板10の連結壁135の下端縁には第2の滑り平板20を重ね合わせたときに第2の滑り平板20に凸設されたリング突条23に対応する位置にリング被包溝15が刻設されていて、その形状は下方向に広がる略等脚台形であり、摩擦減震装置1と同様、上辺の長さが15.0mm、下辺の長さが20.0mm、高さ(溝の深さ)が0.2mm、となっていて、斜辺は下に凸の曲線となっている。なお、リング被包溝15の斜面、すなわち断面形状としての斜辺は、下に凸の曲線としているが、直線であっても良い。この場合、斜辺の勾配はリング突条23の斜辺の勾配に一致させる。また、第1の滑り平板10および第2の滑り平板20による減衰効果については段落〔0028〕で説明したので省略する。
【0033】
第2の滑り平板20の構成および摩擦減震装置2の設置手順例については、摩擦減震装置1と同様であるので、その説明を省略する。
【0034】
摩擦減震装置2における第1の滑り平板10の滑り面は、摩擦減震装置1における第1の滑り平板10の滑り面に比べると接触面積が小さいため、摩耗が大きくなって製品寿命が短くなる傾向にある一方、外周壁131、内周壁133および連結壁135が形成する空間は、下部が開放されていることから、雨水等が溜まることもなくメンテナンスが容易となる。なお、地震エネルギーの減衰効果に関しては略同一である。
【0035】
ここで、摩擦減震装置2について行った減衰効果実験について
図6を参照して説明する。
【0036】
減衰効果実験には日本パルスモーター株式会社製の振動測定装置を使用したが、その概要は下記の通りである。
分解能 0.001mm
定格推力 370N
加速推力 1940N
定格電流 5.4A
加速電流 28.8A
最大加速度 3.5G
最大速度 3.0m/s
最大可搬重量 120kg
最大ストローク 180mm
使用周囲温度 0〜40℃
使用周囲湿度 20〜80%
保存温度 −20〜60℃
なお、リング被包溝の斜辺は直線状としたものを用いた。
【0037】
実験結果を
図6に示すが、
図6のグラフは横軸を時間軸とし、縦軸を加速度(Gal)としていて、点線は入力加速度(基礎側)、実線は出力加速度(土台側)を示している。グラフに示すように出力加速度は入力加速度の略43%〜70%を示し、入力加速度が大きいほど減衰効果が増していて、1つの滑り面(摩擦面)であっても、特許第5657825号公報に開示の滑り面が2つの摩擦減震装置と同様の減震効果を得られることが立証された。
【0038】
以上、摩擦減震装置1および摩擦減震装置2は、比較的小規模の木造住宅に適したリング突条23およびリング被包溝15の本数がそれぞれ1つの場合における実施例であるが、中規模以上の建物にあっては基礎幅も大きくなり、それに伴って第1の滑り平板10および第2の滑り平板20の直径も大きくなるので、リング突条23およびリング被包溝15の本数を複数とすることもできることは勿論である。
【符号の説明】
【0039】
1 実施例1に係る摩擦減震装置
2 実施例2に係る摩擦減震装置
10 第1の滑り平板
11 挿通孔
13 嵩上げ部
15 横断溝
131 外周壁
133 内周壁
135 連絡壁
137 滑り平面
15 リング被包溝
17 横断溝
19 スリット
20 第2の滑り平板
21 挿通孔
23 リング突条
25 横断溝
31 リング状合成ゴム
41 アンカーボルト
45 基礎
47 土台
【手続補正書】
【提出日】2015年12月9日
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の基礎と土台または杭頭と基礎との間に重ね合わされて介挿される複数枚の滑り平板からなる摩擦減震装置において、
前記摩擦減震装置は上段に位置し前記土台または前記基礎に接触する第1の滑り平板と、下段に位置し前記基礎または前記杭頭に接触する第2の滑り平板と、からなり、
前記第1の滑り平板および前記第2の滑り平板は円盤状を呈し、該第1の滑り平板の直径は前記土台または前記基礎の幅と略同一であって該第2の滑り平板よりも大きく形成され、
前記第2の滑り平板が前記該第1の滑り平板に重ね合わされる面には該第2の滑り平板と同心で断面が略二等辺三角形または略等脚台形を呈する1つ以上のリング状のリング突条が凸設される一方、該第1の滑り平板が該第2の滑り平板に重ね合わされる面には断面が下方向に広がる略等脚台形を呈し該リング突条に対置して該リング突条を跨るように被包するリング状のリング被包溝が刻設され、該リング突条の第2の滑り平板の中心からの距離は該リング被包溝の第1の滑り平板の中心からの距離と略同一であって、断面における該リング突条の斜辺は直線である一方、該リング被包溝の斜辺は下に凸の曲線または直線であり、
前記第1の滑り平板の前記土台に接触する表面および前記第2の滑り平板の前記基礎に接触する裏面は凸起や凸条が浮き彫りとなっている粗面であり、
前記第1の滑り平板および前記第2の滑り平板の中心部にはアンカーボルトが遊貫する挿通孔が貫設されて該第1の滑り平板の挿通孔は該第2の滑り平板の挿通孔よりも大きく形成され、該第2の滑り平板の挿通孔の直径は該アンカーボルトの直径に略一致するとともに、該第1の滑り平板の挿通孔の直径および該第2の滑り平板の挿通孔の直径の差は断面から見た前記リング被包溝の底辺の長さおよび前記リング突条の底辺の長さの差よりも大きく形成されている、ことを特徴とする摩擦減震装置。
【請求項2】
前記リング突条の斜辺の勾配は水平方向に対して略3%ないし6%であって、直線状となるリング被包溝の斜辺の勾配も略同一であるとともに、該リング突条の高さおよび該リング被包溝の深さは略同一である、ことを特徴とする請求項1に記載の摩擦減震装置。
【請求項3】
前記第1の滑り平板はその厚さを調整する嵩上げ部を有し、該嵩上げ部は外周面が前記第2の滑り平板の外周縁に一致する外周壁と、内周面が該第1の滑り平板の挿通孔の内周縁に一致する内周壁と、該外周壁および該内周壁に連結する複数の連結壁と、からなり、
前記第1の滑り平板は前記第2の滑り平板に面接触する滑り平面を具えるとともに、前記内周壁、前記外周壁および前記連結壁が形成する空間は上部が開放され、
前記リング被包溝は前記滑り平面の裏面に刻設されている、ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の摩擦減震装置。
【請求項4】
前記第1の滑り平板はその厚さを調整する嵩上げ部を有し、該嵩上げ部は外周面が前記第2の滑り平板の外周縁に一致する外周壁と、内周面が該第1の滑り平板の挿通孔の内周縁に一致する内周壁と、該外周壁および該内周壁に連結する複数の連結壁と、からなり、
前記内周壁、前記外周壁および前記連結壁が形成する空間は下部が開放されて、該連結壁の下端部が前記第2の滑り平板に接触し、
前記リング被包溝は前記連結壁の下端部に刻設されている、ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の摩擦減震装置。
【請求項5】
前記第1の滑り平板および前記第2の滑り平板は、亜鉛合金、ステンレス鋼およびアルミニウム合金からなる第1のグループ、該第1のグループにフッ素樹脂をコーティングした第2のグループ並びに重ね合わせ面のみ該第1のグループの内の1つとなるように合成樹脂板を積層した第3のグループの内から選択されるいずれか1つ、または該第1ないし該第3のグループの内から選択される組み合わせである、ことを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の摩擦減震装置。
【請求項6】
前記第1の滑り平板の表面および前記第2の滑り平板の裏面には前記挿通孔を避けて表面または裏面を横断する複数の横断溝が対置して刻設されるとともに、該第1の滑り平板の横断溝の両端部には前記第2の滑り平板をその中心を一致させて重ね合わせたときに該第2の滑り平板の外周縁まで達するスリットが形成され、該横断溝にリング状合成ゴムを嵌入したときには該リング状合成ゴムは該第1の滑り平板の表面および該第2の滑り平板の裏面より突出することなく巻回される、ことを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の摩擦減震装置。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0012
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0012】
上記目的を達成するため、本願請求項1に係る摩擦減震装置は、建物の基礎と土台または杭頭と基礎との間に重ね合わされて介挿される複数枚の滑り平板からなる摩擦減震装置において、前記摩擦減震装置は上段に位置し前記土台または前記基礎に接触する第1の滑り平板と、下段に位置し前記基礎または前記杭頭に接触する第2の滑り平板と、からなり、前記第1の滑り平板および前記第2の滑り平板は円盤状を呈し、該第1の滑り平板の直径は前記土台または前記基礎の幅と略同一であって該第2の滑り平板よりも大きく形成され、前記第2の滑り平板が前記該第1の滑り平板に重ね合わされる面には該第2の滑り平板と同心で断面が略二等辺三角形または略等脚台形を呈する1つ以上のリング状のリング突条が凸設される一方、該第1の滑り平板が該第2の滑り平板に重ね合わされる面には断面が下方向に広がる略等脚台形を呈し該リング突条に対置して該リング突条を跨るように被包するリング状のリング被包溝が刻設され、該リング突条の第2の滑り平板の中心からの距離は該リング被包溝の第1の滑り平板の中心からの距離と略同一であって、断面における該リング突条の斜辺は直線である一方、該リング被包溝の斜辺は下に凸の曲線または直線であり、前記第1の滑り平板の前記土台に接触する表面および前記第2の滑り平板の前記基礎に接触する裏面は凸起や凸条が浮き彫りとなっている粗面であり、
前記第1の滑り平板および前記第2の滑り平板の中心部にはアンカーボルトが遊貫する挿通孔が貫設されて該第1の滑り平板の挿通孔は該第2の滑り平板の挿通孔よりも大きく形成され、該第2の滑り平板の挿通孔の直径は該アンカーボルトの直径に略一致するとともに、該第1の滑り平板の挿通孔の直径および該第2の滑り平板の挿通孔の直径の差は断面から見た前記リング被包溝の底辺の長さおよび前記リング突条の底辺の長さの差よりも大きく形成されている、ことを特徴としている。なお、リング被包溝の底辺およびリング突条の底辺とはそれぞれ摩擦減震装置の使用状態における等脚台形および二等辺三角形の概念である。
また、本願請求項2に係る摩擦減震装置は、請求項1に記載の摩擦減震装置であって、前記リング突条の斜辺の勾配は水平方向に対して略3%ないし6%であって、直線状となるリング被包溝の斜辺の勾配も略同一であるとともに、該リング突条の高さおよび該リング被包溝の深さは略同一である、ことを特徴としている。
そして、本願請求項3に係る摩擦減震装置は、請求項1
または請求項2に記載の摩擦減震装置であって、前記第1の滑り平板はその厚さを調整する嵩上げ部を有し、該嵩上げ部は外周面が前記第2の滑り平板の外周縁に一致する外周壁と、内周面が該第1の滑り平板の挿通孔の内周縁に一致する内周壁と、該外周壁および該内周壁に連結する複数の連結壁と、からなり、前記第1の滑り平板は前記第2の滑り平板に面接触する滑り平面を具えるとともに、前記内周壁、前記外周壁および前記連結壁が形成する空間は上部が開放され、前記リング被包溝は前記滑り平面の裏面に刻設されている、ことを特徴としている。
さらに、本願請求項4に係る摩擦減震装置は、請求項1
または請求項2に記載の摩擦減震装置であって、前記第1の滑り平板はその厚さを調整する嵩上げ部を有し、該嵩上げ部は外周面が前記第2の滑り平板の外周縁に一致する外周壁と、内周面が該第1の滑り平板の挿通孔の内周縁に一致する内周壁と、該外周壁および該内周壁に連結する複数の連結壁と、からなり、前記内周壁、前記外周壁および前記連結壁が形成する空間は下部が開放されて、該連結壁の下端部が前記第2の滑り平板に接触し、前記リング被包溝は前記連結壁の下端部に刻設されている、ことを特徴としている。
また、本願請求項5に係る摩擦減震装置は、請求項1ないし
請求項4のいずれかに記載の摩擦減震装置であって、前記第1の滑り平板および前記第2の滑り平板は、亜鉛合金、ステンレス鋼およびアルミニウム合金からなる第1のグループ、該第1のグループにフッ素樹脂をコーティングした第2のグループ並びに重ね合わせ面のみ該第1のグループの内の1つとなるように合成樹脂板を積層した第3のグループの内から選択されるいずれか1つ、または該第1ないし該第3のグループの内から選択される組み合わせである、ことを特徴としている。
そして、本願請求項6に係る摩擦減震装置は、請求項1ないし
請求項5のいずれかに記載の摩擦減震装置であって、前記第1の滑り平板の表面および前記第2の滑り平板の裏面には前記挿通孔を避けて表面または裏面を横断する複数の横断溝が対置して刻設されるとともに、該第1の滑り平板の横断溝の両端部には前記第2の滑り平板をその中心を一致させて重ね合わせたときに該第2の滑り平板の外周縁まで達するスリットが形成され、該横断溝にリング状合成ゴムを嵌入したときには該リング状合成ゴムは該第1の滑り平板の表面および該第2の滑り平板の裏面より突出することなく巻回される、ことを特徴としている。