【解決手段】工作機械10によれば、撮像装置33の画像の視野V内に工具20全体の輪郭が収まらない場合、撮像装置33と工具20との相対移動によって撮像装置33の視野Vは移動する。しかも、画像データに基づき特定された部分輪郭線51に基づき視野Vの移動方向53が決定されることから、撮像装置33は、視野Vの移動によって工具20の輪郭線54を辿ることができる。こうして、撮像装置33の視野Vよりも大きな径の工具20の寸法の測定に際しても例えば所望の範囲の部分輪郭線51が特定される。特定された複数の部分輪郭線51が結合されれば、工具20の所望の範囲の輪郭線が抽出される。こうした輪郭線を用いて工具20の寸法が測定されることが可能である。
請求項2に記載の工具寸法の測定装置において、前記画像データに基づき特定される前記工具の形状を表示する表示装置と、前記表示装置上で前記工具の形状に対して所定の指示を入力する入力装置と、をさらに備える工具寸法の測定装置。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照しつつ本発明の一実施形態を説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る工具寸法の測定装置を備えた工作機械10の構成を概略的に示す図である。この工作機械10は、ワーク(図示されず)に加工処理を実行する機械部分に加え、工作機械10の動作を制御するNC装置12と、工作機械10及びNC装置12に接続されて工作機械10の工具の寸法を測定する寸法測定装置13と、を備える。工作機械10には例えば5軸立形のマシニングセンタが用いられる。本実施形態では、寸法測定装置13はNC装置12と別個に図示されているものの、寸法測定装置13は例えばNC装置12内に組み込まれてもよい。
【0012】
まず、工作機械10の機械構成を説明する。工作機械10にはXYZ直交3軸の基準座標系が設定される。工作機械10は、水平面すなわちXY平面に沿って広がるベッド15と、ベッド15上に配置されたテーブルベース16と、テーブルベース16の後方でベッド15からZ軸に平行に垂直方向に立ち上がるコラム17と、を備える。テーブルベース16上にワーク(図示されず)が固定される。コラム17には主軸頭18が支持されている。主軸頭18の下端には主軸19を介して下向きに着脱自在に工具20が装着される。工具20は、主軸頭18内に組み込まれるスピンドルモータ(図示されず)により回転駆動される。ここでは、工具20には例えばボールエンドミルが用いられる。
【0013】
テーブルベース16は、直線送り機構を介して水平方向(X軸方向)に移動可能にベッド15上に支持されている。その一方で、主軸頭18は、直線送り機構を介して鉛直方向(Z軸方向)及び水平方向(Y軸方向)に移動可能にコラム17に支持されている。直線送り機構は、例えばボールねじと、このボールねじを回転駆動するサーボモータと、を備える。これらの直線送り機構によってテーブルベース16と主軸頭18すなわち工具20との相対移動が実現される。相対移動は、NC装置12から供給される後述の駆動信号に基づき実現される。相対移動中に回転する工具20が所定の加工点でワークに接触する。こうしてワークが所望の形状に加工される。
【0014】
ベッド15には、当該ベッド15とテーブルベース16との間のX軸に沿った相対位置を読み取るX軸位置検出器21が組み込まれている。コラム17には、当該コラム17と主軸頭18との間のY軸及びZ軸に沿った相対位置をそれぞれ読み取るY軸位置検出器(図示されず)及びZ軸位置検出器22が組み込まれている。これらの位置検出器には例えばデジタルスケールが用いられればよい。これらの位置検出器で読み取られた相対位置は基準座標系の座標値で特定される。読み取られた座標値はNC装置12に出力すなわちフィードバックされる。
【0015】
次に、NC装置12の構成を説明する。NC装置12は、NCプログラムを格納する記憶部24と、記憶部24に格納されているNCプログラムを解析するプログラム解析部25と、プログラム解析部25で解析されたNCプログラムに従って移動指令を生成する移動指令部26と、移動指令部26から出力された移動指令に従って工作機械10のサーボモータに駆動信号を出力するサーボ制御部27と、を備える。移動指令には、例えばワークの加工点の割り出しデータ及び割り出し後の加工点に対応した主軸頭18の位置を示す座標値データが含まれる。
【0016】
次に、寸法測定装置13の構成を説明する。寸法測定装置13は、テーブルベース16上に配置される寸法測定ユニット31を備える。寸法測定ユニット31は、光源32と、光源32に向き合う撮像装置33と、を備える。光源32には撮像装置33に向かって平行光を出力する例えば高輝度LEDが用いられる。撮像装置33は例えば基準座標系のYZ平面内でテーブルベース16に対して相対移動することが可能である。撮像装置33はレンズユニット34及びCCD(電荷結合素子)イメージセンサ35を備える。CCDイメージセンサ35は例えば二次元イメージセンサを構成する。レンズユニット34は、例えば複数枚のレンズを備えており、レンズの駆動に基づき光学ズームによるズームイン及びズームアウトを実行する。
【0017】
寸法測定装置13は、撮像装置33で撮像された画像の画像データの供給を受ける画像調整装置36と、光源32及び撮像装置33の動作を制御する制御装置37と、を備える。前述のCCDイメージセンサ35は、その受光面に結像される画像に対応してアナログの画像信号を生成する。画像信号は、所定の時間間隔ごとに設けられる各フレームに生成される。ここでは、例えば毎秒30〜60フレームの画像信号が出力される。画像信号は画素ごとの多階調輝度信号を特定する。画像信号はデジタル信号の画像データに変換されて画像調整装置36に出力される。
【0018】
画像調整装置36は、画像データのシェーディング補正、ノイズリダクション、ホワイトバランス調整、輪郭補正及びコントラスト調整などの画像調整を実行する。画像調整された画像データでは画素ごとに明暗2値が特定される。画像調整装置36は、画像調整後の画像データを後述のフレームメモリに格納する。その一方で、制御装置37は、撮像装置33の移動やズームを制御する駆動信号を撮像装置33に出力する。なお、撮像装置33の視野には前述の基準座標系のYZ平面に対応してxy直交2軸の視野座標系が設定される。この視野座標系の各座標値は、YZ平面内における撮像装置33の移動後の各位置の視野ごとに基準座標系の各座標値に関連付けられる。
【0019】
寸法測定装置13は、寸法測定プログラム及び工具寸法データを記憶する記憶装置41と、寸法測定プログラムに基づき様々な演算処理を実行する演算装置42と、フレームごとの画像データを格納するフレームメモリ43と、を備える。演算処理にあたって寸法測定プログラムは一時的にメモリ(図示されず)に読み出されればよい。寸法測定プログラム及び工具寸法データの詳細は後述される。なお、寸法測定プログラムは例えばFD(フレキシブルディスク)やCD−ROMその他の可搬性記録媒体から記憶装置41に取り込まれてもよく、LANやインターネットといったコンピューターネットワークから記憶装置41に取り込まれてもよい。
【0020】
寸法測定装置13は、例えば工具20の像(シルエット)を表す画像データを構成する画素ごとの明暗2値の情報やその画素の座標値を表示する表示画面を有する表示装置44と、例えば表示画面上で所定の位置を指定することによって演算装置42に指示を入力する入力装置45と、を備える。表示装置44は例えばLCD(液晶ディスプレイ)パネルなどの平面ディスプレイパネルであればよく、入力装置45は例えばタッチパネルやキーボード、マウスなどであってよい。使用者は例えばタッチパネルやマウスを用いて、表示装置44の表示画面上に表示される画像上で工具20の輪郭線の方向を指定したり、工具20の輪郭線上の位置を指定したりすることができる。
【0021】
次に、本発明に係る工作機械10の工具20の寸法を測定する方法を説明する。処理の実行にあたって寸法測定装置13の演算装置42は、記憶装置41から寸法測定プログラムを例えばメモリに一時的に読み出す。こうして演算装置42は寸法測定プログラムに基づき様々な演算処理を実行する。まず、演算装置42はNC装置12に開始信号を出力する。開始信号の受信に応じてNC装置12は、工作機械10に向かって駆動指令を出力する。その結果、工作機械10では、XY平面上で光源32及び撮像装置33の間の所定の基準位置に工具20の刃先部分が進入するように主軸19が位置決めされる。工具20はその回転中心回りに回転駆動される。主軸頭18すなわち工具20はZ軸に平行に下降させられる。ここで、基準位置とは、視野の中に予め設けられた、工具20の進入動作の停止を指示する基準となる位置のことである。
【0022】
同時に、演算装置42は、光源32及び撮像装置33の動作を開始させる。制御装置37は、撮像装置33を駆動させる駆動信号を出力する。こうして撮像装置33は撮像を開始する。撮像装置33は撮像のフレームごとにアナログの画像信号を生成する。この画像信号から生成された画像データは画像調整装置36を介してフレームメモリ43にフレームごとに格納される。主軸頭18の下降に基づき工具20の輪郭の一部が撮像装置33の画像の視野内に進入すると、Z軸に沿った主軸頭18の下降は停止される。こうして基準位置の撮像装置33の画像の視野内には工具20の輪郭の一部が特定される。
【0023】
CCDイメージセンサ35の受光面には、光源32から照射される平行光によって工具20の影(シルエット)を投影した画像が結像される。画像データは、視野内の画像を特定する多数の画素から構成される。前述されるように、画像データでは画素ごとに明暗2値が特定されることから、例えば
図2に示されるように、基準位置の画像データで特定される視野V内では、暗の画素は工具20の影の投影部分として特定される一方で、明の画素は平行光の受光部分として特定される。こうして工具20の一部の輪郭が特定される。
【0024】
図3は、本発明の第1実施形態に係る工具20の寸法測定方法の処理の流れを示すフローチャートである。フレームメモリ43から読み出された基準位置の画像データに対して、ステップS1で、演算装置42は工具20の輪郭のエッジを検出する。前述のように各画素は明暗2値で示されることから、エッジは、画像の視野V中で工具20の画像の画素に対応する暗の画素のうち、明の画素に隣接する暗の画素で特定される。こうして
図2から明らかなように、演算装置42は、ステップS2で、明の画素に隣接する連続した複数の暗の画素の抽出に基づき部分輪郭線51を特定する。
【0025】
前述のように、撮像装置33の視野内にはxy直交2軸の視野座標系が設定されることから、部分輪郭線51を構成する各画素の座標値が特定される。視野座標系の座標値は工作機械10の基準座標系に例えばキャリブレーションで予め関連付けられており、視野座標系の座標値は基準座標系の座標値に変換される。こうして基準座標系で部分輪郭線51の座標値が特定される。特定された部分輪郭線51の画像データはフレームメモリ43に格納される。部分輪郭線51の座標値を示す座標値データは画像データに関連付けてフレームメモリ43に格納されればよい。
【0026】
その後、ステップS3で、演算装置42は部分輪郭線51の接線52を算出する。接線52は、部分輪郭線51上の座標値で例えば視野V内のx軸方向の中間位置の座標値を示す中間点で算出される。算出にあたって、例えば部分輪郭線51を構成する画素の座標値に基づいて部分輪郭線51を特定する数式が導き出される。この数式の微分に基づき接線52が算出される。また、数式の微分に代えて、部分輪郭線51を構成する任意の2点(例えば前述の中間点を含む)の画素から導き出される傾きから接線52が算出されてもよい。
【0027】
こうして算出された接線52に基づき、演算装置42は、ステップS4で、画像装置33の視野の移動方向53を決定する。具体的には、接線52で特定される正逆2方向が、この画像データの視野Vの視野外の輪郭線54の方向として推定される。ここでは、演算装置42は、接線52で特定される正逆2方向のうちの1方向(例えば右上方向)を撮像装置33の視野Vを移動させる移動方向53として設定する。演算装置42は、ステップS5で、移動方向53で特定される方向に視野Vを移動させる。演算装置42は、移動方向53に応じて工具20及び撮像装置33を相対移動させる移動信号を制御装置37に出力する。移動信号を受け取った制御装置37は、工具20及び撮像装置33を相対移動させるべく撮像装置33を移動させる。ここでは、撮像装置33はYZ平面内で移動させられる。撮像装置33の視野Vは移動方向53に沿って移動を開始する。
【0028】
撮像装置33及び工具20が相対移動を開始した後、演算装置42は1フレームごとの画像データに基づきステップS1〜ステップS5の処理を繰り返す。その結果、1フレームごとに視野Vの移動方向53が決定される。こうして、例えば
図4に概念的に示されるように、各フレームごとに工具20の部分輪郭線51が特定されていく。前述の接線52に沿った一方の方向の複数の部分輪郭線51が所望の範囲にわたって特定されると、撮像装置33は最初の撮像位置に戻される。演算装置42は、接線52に沿った他方の方向(すなわち左下方向)に視野Vの移動方向53を設定する。この移動方向53に応じて工具20及び撮像装置33は相対移動する。こうして他方の方向における工具20の所望の範囲の複数の部分輪郭線51が特定される。なお、部分輪郭線51は工具20全体にわたって特定される必要はない。ここでは、工具20はボールエンドミルであることから、部分輪郭線51の特定はボールエンドミルのシャンクすなわち平行部分の輪郭線の一部が特定されるまで実行されればよい。
【0029】
演算装置42は、特定したすべての部分輪郭線51の画像データ及び座標値データをフレームメモリ43から読み出して、すべての部分輪郭線51を相互に結合して結合輪郭線55を形成する。結合にあたって例えば個々の部分輪郭線51の座標値データが用いられればよい。前述の通り、座標値データは基準座標系の座標値で特定される。こうして、
図5から明らかなように、工具20の結合輪郭線55が抽出される。抽出された結合輪郭線55に基づき演算装置42は例えば工具20の刃先位置や工具径などを測定する。測定にあたって基準座標系の座標値が参照される。なお、結合輪郭線55や測定の結果は、例えば表示装置44の表示画面上に表示されてもよい。このとき、使用者が入力装置45を用いて表示画面上で工具20の特定の位置を指定して入力することにより、使用者が任意に工具20の測定位置を指定してもよい。
【0030】
以上のように、第1実施形態に係る工作機械10によれば、撮像装置33の画像の視野V内に工具20全体の輪郭が収まらない場合(例えば0.6mm四方の視野で直径20mmのボールエンドミルを撮像する場合)、撮像装置33及び工具20の相対移動によって撮像装置33の視野Vは移動する。しかも、画像データから特定された部分輪郭線51に基づき1つの画像データの視野外の輪郭線54の方向に視野Vを移動させる移動方向53が決定されることから、撮像装置33は、視野Vの移動によって工具20の輪郭線を辿ることができる。こうして、撮像装置33の視野Vよりも大きな寸法の工具20の測定に際しても例えば所望の範囲にわたる複数の部分輪郭線51が特定される。例えば特定された複数の部分輪郭線51が結合されれば、工具20の所望の範囲の結合輪郭線55が抽出される。その結果、結合輪郭線55を用いて工具20の寸法が測定されることが可能である。
【0031】
図5は、本発明の第2実施形態に係る工具20の寸法測定方法の処理の流れを示すフローチャートである。この実施形態では、前述のステップS1、S2と同様に、フレームメモリ43に格納された画像データが読み出され、ステップT1で工具20の輪郭のエッジが検出され、ステップT2で、連続した複数の暗の画素から部分輪郭線51が特定される。次に、ステップT3で、演算装置42は部分輪郭線51の回帰曲線Y=F(X)を算出する。回帰曲線の算出にあたって視野座標系における画素の座標値が参照されればよい。次に、ステップT4で、記憶装置41に格納された工具寸法データすなわち回帰曲線Y1=f
1(X)、Y2=f
2(X)〜Yn−1=f
n-1(X)、Yn=f
n(X)を参照して、算出された回帰曲線と一致する回帰曲線が検索される。なお、工具寸法データは、様々な工具20ごとに予め測定された工具20の輪郭線の回帰曲線である。
【0032】
算出された回帰曲線Y=F(X)に一致する回帰曲線Yn=f
n(X)が特定されると、ステップT5で演算装置42は、例えば
図6に示されるように、一致した回帰曲線Yn=f
n(X)を画像データ上の回帰曲線Y=F(X)に重ね合わせる。次に、ステップT6で演算装置42は、一致した回帰曲線Yn=f
n(X)のY切片などの実値を特定して視野座標系の座標値に変換する。こうしてこの画像データの視野外の輪郭線54の方向が特定される。ステップT7で、演算装置42は、特定された輪郭線54の方向に基づき画像装置33の視野Vの移動方向53を決定する。決定にあたって、演算装置42は、回帰曲線Yn=f
n(X)で特定される視野外の輪郭線54に沿った正逆2方向のうちの例えば1方向を移動方向53として特定する。演算装置42は、ステップT8で、特定された移動方向53に視野Vを移動させる。ここでは、視野V上で例えば右上の方向が選択される。
【0033】
前述と同様に、演算装置42から出力される移動信号に基づき、撮像装置33の視野Vは移動方向53に移動する。演算装置42は1フレームごとにステップT1〜ステップT8の処理を繰り返す。従って、1フレームごとに撮像装置33の視野Vの移動方向53が決定される。前述の輪郭線54の一方の方向の部分輪郭線51が所望の範囲にわたって特定されると、演算装置42は、輪郭線54の他方の方向(例えば視野Vの左方向)に視野を移動させるべく撮像装置33を最初の撮像位置に戻す。演算装置42は、他方の方向に視野Vの移動方向53を設定する。この移動方向53に応じて工具20及び撮像装置33は相対移動する。こうして他方の方向における工具20の所望の範囲の複数の部分輪郭線51が特定される。その後は前述と同様の処理が実行される。なお、視野Vの移動方向53の決定にあたって撮像装置33の視野V内において工具20の影が占める占有面積が用いられてもよい。
【0034】
図7は、本発明の第3実施形態に係る工具20の寸法測定方法の処理の流れを示すフローチャートである。この実施形態では、前述のステップS1、S2と同様に、フレームメモリ43に格納された画像データが読み出され、ステップU1で工具20の輪郭のエッジが検出される。ステップU2で、連続した複数の暗の画素から部分輪郭線51が特定される。その後、ステップU3で、演算装置42は、撮像装置33にズームアウトを実行させる指令信号を制御装置37に出力する。制御装置37はレンズユニット34の駆動に基づきズームアウトを実行する。その結果、
図8に示されるように、撮像装置33の視野Vが拡大する。
【0035】
ステップU4で、演算装置42は、視野の拡大した画像データに基づき部分輪郭線51を除く工具20の概略輪郭線56を特定する。特定にあたって前述の部分輪郭線51を特定する際の手法が用いられる。演算装置42は、ステップU5で、特定した概略輪郭線56に基づき演算装置42は画像装置33の視野Vの移動方向53を決定する。決定にあたって、演算装置42は、概略輪郭線56で特定される正逆2方向のうちの一方の方向を、工具20と撮像装置33とを相対移動させる移動方向53として設定する。ここでは、例えば特定された概略輪郭線56の長さに基づき、次にズームアウトする時までの工具20と撮像装置33との相対移動の距離が特定されればよい。
【0036】
演算装置42は、ステップU6で、指令信号の出力に基づき、前述の最初に部分輪郭線51を特定した視野Vの大きさまで撮像装置33をズームインさせる。その後、演算装置42は、ステップU7で、概略輪郭線56で特定されるいずれかの方向に視野Vを移動させる。ここでは、視野V上で例えば右上の方向の移動方向53が選択される。演算装置42は、工具20と撮像装置33とを相対移動させる移動信号を撮像装置33に出力する。こうして前述と同様に、工具20及び撮像装置33は相対移動する。相対移動中、演算装置42は、フレームメモリ43から読み出される画像データに基づき各フレームごとに部分輪郭線51を特定していく。
【0037】
最初に特定された相対移動の距離を工具20が移動する間、ステップU8で、部分輪郭線51の特定が繰り返される。その後、相対移動の距離を工具20が移動し終わると、演算装置42はステップU3〜U8の処理を繰り返す。前述の輪郭線53の一方の方向の複数の部分輪郭線51が所望の範囲にわたって特定されると、演算装置42は、最初に特定された概略輪郭線56で特定される2方向のうちの他方の方向(すなわち左方向)に視野Vを移動させるべく撮像装置33を最初の撮像位置まで戻す。演算装置42は、他方の方向に視野Vの移動方向53を設定する。この移動方向53に応じて工具20及び撮像装置33は相対移動する。こうして工具20の所望の範囲にわたって複数の部分輪郭線51が特定される。その後は前述と同様の処理が実行される。
【0038】
本実施形態に係る工作機械10によれば、撮像装置33の画像の視野V内に工具20の輪郭の全体が収まらない場合、撮像装置33及び工具20の相対移動によって画像の視野Vは移動する。移動に先立って、ズームアウトによって最初の画像の視野Vに比べて視野が拡大することから、視野外の輪郭線53の方向が確実に認識されることが可能である。その結果、撮像装置33は、視野Vの移動によって輪郭線53を辿ることができる。しかも、ズームインによって最初の画像の視野Vが再び実現されることから、工具20の部分輪郭線51を高精度に特定することができる。こうして特定された複数の部分輪郭線51が結合されれば、工具20の所望の範囲の結合輪郭線55が抽出される。その結果、結合輪郭線55を用いて工具20の寸法が測定されることが可能である。
【0039】
なお、第2実施形態に係る工具寸法の測定方法では、画像データ内の画素数は一定である一方でズームアウトによって視野Vが拡大することから、各画素で特定される撮像範囲が拡大される。従って、ズームアウト時に撮像される工具20の概略輪郭線56は工具20の形状を概略的に特定するに過ぎない。従って、工具20の輪郭の高精度の抽出にあたって概略輪郭線56を用いることは得策ではないと考えられる。
【0040】
その他、ズームアウト時の画像が例えば表示装置44の表示画面に表示されてもよい。使用者は、例えば入力装置45を用いて表示画面上で視野Vの移動方向53を具体的に特定すべく指示を入力してもよい。このとき、演算装置42は、入力装置45によって入力された指示に応じて視野Vの移動方向53を特定すればよい。その他、上述の実施形態では、レンズユニット34の駆動に基づき光学ズームによって撮像装置33のズームイン及びズームアウトが実現されたものの、例えばデジタルズームによってズームイン及びズームアウトが実現されてもよい。
【0041】
以上のような実施形態では、工作機械10の例として立形のマシニングセンタを用いて本発明の工具寸法の測定方法及び測定装置が説明されたものの、本発明の工具寸法の測定方法及び測定装置は、例えば横形のマシニングセンタやその他の工作機械によっても実現されることが可能である。また、工具20の例としてボールエンドミルを用いて本発明の工具寸法の測定方法及び測定装置が説明されたものの、本発明の工具寸法の測定方法及び測定装置は、例えばフラットエンドミルやドリル等、その他の工具によっても実現されることが可能である。また、工作機械10では、主軸頭18のY軸方向の移動に代えてテーブルベース16がY軸方向に移動してもよい。その他、撮像装置33と工具20との相対移動の実現にあたって撮像装置33に対して工具20が移動してもよい。