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特開2016-166903生体分子の単離および/または精製のためのデバイス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2016-166903(P2016-166903A)
(43)【公開日】2016年9月15日
(54)【発明の名称】生体分子の単離および/または精製のためのデバイス
(51)【国際特許分類】
   G01N 1/10 20060101AFI20160819BHJP
   G01N 1/28 20060101ALI20160819BHJP
   C12N 15/09 20060101ALN20160819BHJP
   C07K 1/16 20060101ALN20160819BHJP
   C12M 1/26 20060101ALN20160819BHJP
【FI】
   G01N1/10 C
   G01N1/28 J
   C12N15/00 A
   C07K1/16
   C12M1/26
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2016-120506(P2016-120506)
(22)【出願日】2016年6月17日
(62)【分割の表示】特願2013-519088(P2013-519088)の分割
【原出願日】2011年7月13日
(31)【優先権主張番号】10007275.0
(32)【優先日】2010年7月14日
(33)【優先権主張国】EP
(71)【出願人】
【識別番号】507214038
【氏名又は名称】キアゲン ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】フェーラ ホレンダー
(72)【発明者】
【氏名】マルクス ミュラー
(72)【発明者】
【氏名】カリン シュルテ
【テーマコード(参考)】
2G052
4B029
4H045
【Fターム(参考)】
2G052AA28
2G052AD26
2G052AD46
2G052DA12
2G052DA25
2G052DA27
2G052EA01
2G052ED06
2G052ED17
2G052JA07
4B029AA09
4B029BB15
4B029CC04
4B029GA02
4B029GB05
4H045GA20
(57)【要約】
【課題】少ないピペット操作ステップでかつ交差汚染のリスクが減じられた状態で、任意の対象の生体分子から、後で行われる生体分子プロセシングステップを妨げる(1種または複数の)汚染化合物を、簡単かつ効果的に分離させる方法およびデバイスを提供する。
【解決手段】本発明は、(i)それぞれが少なくとも1つの開口端を有する少なくとも1つの中空本体(1);(ii)任意の所望の生体分子を汚染する化合物を結合、吸着、吸収、キレート化、または保持する少なくとも1つのタイプの固体またはゲル状材料;(iii)必要に応じて、中空本体の内部の少なくとも1つの多孔質の液体透過性エレメント(4);(iv)必要に応じて、開口端の少なくとも1つを封止するための少なくとも1つの取外し可能な閉鎖デバイス(6)を含むデバイスを提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書に記載の発明。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サンプル中の望ましくない化合物を結合、吸着、吸収、キレート化、または保持する少なくとも1つの固体マトリックスを含む、少なくとも1つの開口端を有する中空本体を含むデバイス、サンプルから生体分子を単離または精製するためのそのようなデバイスの使用、前記デバイスを調製するための方法、および前記デバイスを使用して任意の生体分子を単離または精製するための方法に言及する。
【背景技術】
【0002】
例えば生物学的サンプルから生体分子を単離または精製するための前記サンプルの処理中に、サンプルを任意の結合、吸収、吸着、キレート化、または濾過マトリックスと接触させることは、非常に一般的であり、一般に、対象の化合物は前記マトリックスに結合され、吸着され、もしくは吸収され、またはサンプルは、内部に含有される化合物のサイズに応じてクロマトグラフィーにより分離され、それによって、対象の化合物があらゆる残分から分離される。生体分子を単離するためのいくつかの周知の手法が現況技術において記述されており、例えば核酸結合材料のカラムに対するDNAもしくはRNAの結合のような、任意のマトリックスへの生体分子の結合、例えばタンパク質もしくは低分子量分子の親和性結合、または生体分子のサイズもしくは体積に応じて生体分子を分離するクロマトグラフィーデバイスが包含される。通常、これら全ての手順は、いくつかの洗浄および溶出ステップを含み、必要に応じて溶出をモニタすることが必要であり、したがっていくつかの方法ステップが、対象の生体分子が所望の形態で得られる前に実施されなければならない。したがって、そのようなタイプの方法は面倒であり、汚染され易く、時間がかかる。
【0003】
別の手法は、例えば、非特許文献1または非特許文献2に記載される、DNA単離のためにChelex 100を使用するような、サンプルの望ましくない化合物を結合、吸収、吸着、またはキレート化してその化合物を所望の生体分子から分離することである。望ましくない化合物のそのような分離は通常、バッチ式手順で実施され、サンプルを、結合マトリックス、吸収マトリックス、吸着マトリックス、またはキレート化マトリックスと接触させ、インキュベートし、その後、固体材料を例えば遠心分離によってサンプルから分離する。次いで対象の化合物を含む上清を、例えばピペット操作により除去する。前記除去は、固体マトリックスによるいかなる汚染のリスクも冒さないように、しかし可能な限り多くの上清が得られるように、非常に慎重に実施しなければならない。そのような手法ではやはり、方法を面倒にし、汚染され易くし、時間がかかるものにするいくつかの方法ステップを実施しなければならない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Walshら、BioTechniques 10巻、4号(1991年)
【非特許文献2】Burkhartら、2002年、J Biochem Biophys Methods 52巻(2002年)145〜149頁
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の目的は、少ないピペット操作ステップでかつ交差汚染のリスクが減じられた状態で、任意の対象の生体分子から、後で行われる生体分子プロセシングステップを妨げる(1種または複数の)汚染化合物を、簡単かつ効果的に分離させる方法およびデバイスを提供することであった。さらにデバイスは、この手順を自動化させるべきである。
【0006】
この目的は、(i)それぞれが少なくとも1つの開口端を有する少なくとも1つの中空本体(1);(ii)任意の所望の生体分子を汚染する化合物を結合、吸着、吸収、キレート化、または保持する少なくとも1つのタイプの固体またはゲル状材料;(iii)必要に応じて、中空本体の内部の少なくとも1つの多孔質の液体透過性エレメント(4);(iv)必要に応じて、開口端の少なくとも1つを封止するための少なくとも1つの取外し可能な閉鎖デバイス(6)を含むデバイスを提供することによって、適えられる。
【0007】
デバイスはさらに、周囲条件下では液体および固体に対して不透過性であるが外力を加えることによって液体透過性になる少なくとも1つの障壁(5)を好ましくは含む。
【0008】
前記デバイスは、サンプルを含む任意の液体、例えば対象とする生体分子を含む液体サンプルを処理し、かつ/または対象とする生体分子をそのようなサンプルから単離もしくは精製するのに使用することができる。
【0009】
デバイスの中空本体(1)は、プラスチック、金属、ガラス、磁器、または類似のもののような、サンプルの収集、貯蔵、または処理に適切な任意の材料で作製することができ、好ましくは本体は、プラスチックで作製される。特に本体は、好ましくは、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリプロピレン−コポリマー、ポリ塩化ビニル、ポリウレタン、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリイミド、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリラクチド、エチレン−ポリ酢酸ビニル、塩化ビニル酢酸ビニルコポリマー、ポリアセタール、ポリエーテルアルコール、酢酸ビニルコポリマー、またはアクリルポリマーのような熱硬化性または熱可塑性樹脂で作製されるが、これらに限定するものではない。
【0010】
中空本体/デバイスの中空本体のそれぞれが少なくとも1つの開口端を有し、これにより、少なくとも1つの端部によって何かを中空本体内に挿入することが可能となり、例えば対象とするサンプルおよび/もしくは任意の液体を挿入することが可能となるか、または中空本体から何かを除去することが可能となるようなことを意味する。好ましくはデバイスは、入口(2)および出口(3)を有し、典型的には入口の開口はデバイスの「上」端にあり、出口の開口はデバイスの「底面」側にある。特に好ましいのは、入口(2)および出口(3)が互いに対向することである。必要に応じてデバイスは、開口の少なくとも1つ、例えば出口(3)もしくは入口(2)を、取外し可能に閉鎖する少なくとも1つの取外し可能な閉鎖デバイス(6)、または全ての開口に対するいくつかの(必要に応じて異なる形状の)閉鎖デバイスをさらに含む。
【0011】
本発明による生体分子は、生物学的サンプル中に存在する任意の分子である。生物学的サンプルは、血液、血漿、血清、白血球画分またはバフィコートのような血液画分、尿、血清、液(liquor)、痰、精液、唾液など、脳、皮膚、筋肉などの任意の器官の組織;鱗屑;スワブ;大便;毛髪、爪、角、または枝角のようなケラチンサンプル;甲皮(carapace)または羽(特に昆虫の);細胞懸濁物または細胞培養物、細胞断片または細胞小器官、例えば葉緑体またはミトコンドリア、小胞、核または染色体;細菌、真菌、もしくは酵母の細胞または断片、任意のタイプのウイルス、ウイロイド、またはプリオンを含むサンプル;穿刺液または組織切片のような組織学的サンプル;組織培養物;植物;植物の部分、細胞、または組織;例えば水、塵埃、空気、または泥サンプルのような、環境から採取されたサンプル;食物サンプル;煙草フィルター、織物サンプル、歯ブラシのような法医学的サンプル;予備精製されまたは予備単離された生体分子などを含む任意の溶液などのようなものであるが、挙げた例に限定することのない、任意の体液もしくは組織またはヒトもしくは昆虫を含む動物とすることができる。
【0012】
したがって生体分子は、DNAまたはRNAのような任意の核酸であり、特に直鎖状、分岐状、または環状の、一本鎖または二本鎖核酸、より具体的にはmRNA、siRNA、miRNA、snRAN、tRNA、hnRNA、またはリボザイム、ゲノムDNA、プラスミドDNA、またはオルガネラDNA;任意のヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、またはポリヌクレオチド、さらに合成の、改変された、もしくは標識されたオリゴもしくはポリヌクレオチド;ハイブリダイゼーション用の、PCR−プライマー、短鎖DNAまたはRNA断片;PNA(ペプチド核酸);標識されていないまたは標識された抗体、受容体、ホルモン、成長因子、ならびに改変タンパク質、核酸、感染由来のタンパク質およびペプチドを含む、任意のタンパク質、ペプチド、またはアミノ酸;代謝産物、任意の脂質;糖(モノマー、オリゴマー、またはポリマー);プロテオグルカン;任意の低分子量経路産物、シグナル分子、受容体、または酵素アクチベータもしくはインヒビター;剤、薬物、および薬物の代謝産物、対象とする薬物または任意のその他の生体分子である。
【0013】
汚染物質と見なされる化合物は、微粒子の手法では望ましくないような化合物である。例えば、あるタイプの生体分子を対象とし、例えば核酸を単離するものとする場合、その他全てのタイプの生体分子ならびにこの手法のための任意のさらなる化合物は、汚染物質と見なすことができる。特にそのような化合物は、対象とする生体分子の任意のその後の処理または検出を妨げる汚染物質と見なすことができる。汚染物質についての例は、メラニン、ユーメラニン、ヘモグロビン、イムノグロビン、ミオグロビン、プロテイナーゼ、フミン酸または誘導体、金属イオン、尿素、着色剤または色素、多糖、二次植物代謝産物、エンドトキシン、胆汁酸、タンニン剤(tannic agent)、さらに、従った手法で望ましくないと考えられる、上記にて引用されたその他の生体分子である。
【0014】
本発明によれば、中空本体(1)の内部に、デバイスは、所望の(1種または複数の)生体分子を汚染する望ましくない化合物を結合、吸収、吸着、キレート化、または保持する少なくとも1つのタイプの固体またはゲル状マトリックスを有する。例えば、デバイスは、サンプル組成物の特定のもしくは不特定の結合、吸収、吸着、もしくはキレート化のための結合マトリックス、吸収マトリックス、吸着マトリックス、もしくはキレート化マトリックス、汚染物質を保持する濾過材料、細胞を溶解しもしくは細胞成分を結合するためのビーズ、または、対象とする生体分子ではなく汚染物質を保持する限りにおいて、生体分子の単離もしくは精製に一般に使用される任意のその他の構成要素を含んでいてもよい。特に好ましいのは、マトリックスが、生物学的サンプルの望ましくない化合物を吸着、吸収、キレート化、または結合する微粒子固体材料であるのに対し、対象とする(1種または複数の)生体分子は本質的に吸着、吸収、および結合もなされないことである。1つの好ましい固体微粒子マトリックスは、イオン交換によって化合物を精製し、例えば金属イオン、特に遷移金属イオンをキレート化する、キレート化樹脂を含みまたはこのキレート樹脂からなる。そのような一般に公知の樹脂は、DNAまたはRNAの単離に適切に使用されるChelex 100(Biorad)という名称で販売されたイミノ二酢酸基を含むスチレン−ジビニルベンゼン樹脂であり、核酸は前記樹脂に結合しない。さらに、例えばアガロース、Sephacryl樹脂、シリコーン;ラテックス;多糖、セルロースエーテルおよび誘導体、熱硬化性もしくは熱可塑性ポリマー、金属、またはビーズ、フィルム、箔、粒子などのようなさらなる固体マトリックスのような、任意の不活性材料を使用してもよい。前記材料は、その(1つまたは複数の)表面に、望ましくない汚染物質のいずれかに選択的に結合する官能基を含んでいてもよい。さらなる好ましいマトリックスは、イオン交換マトリックスまたは生物学的化合物に特異的な結合部位を含むマトリックスを含みまたはそのようなマトリックスからなる。マトリックスはさらに、例えばシリカ、多糖、または任意のその他の適切な材料の、織りの、もしくは不織の繊維またはフリースを含んでいてもよい。
【0015】
汚染物質を所望の生体分子から分離するのに適切なマトリックスは、さらに、HIC粒子(疎水性相互作用クロマトグラフィー粒子、Dionex Corp.、USA)、陽イオンまたは陰イオン交換材料;アガロースのようなサイズ排除材料;ゲル濾過材料;例えばハイドロキシアパタイト、ベントナイト、ゼオライト、カオリナイト、珪藻岩、またはシリカのような処理された鉱物のような鉱物;InhibitEX(登録商標)(Qiagen、Hilden、ドイツ)、IDA(イミノ二酢酸)、NTA(ニトリロ酢酸)、および挙げた最後の2種のものの誘導体、IDAもしくはNTA基またはそれらの誘導体を有する樹脂またはその他の基材、EDTA、特異的な抗体、アンフィポール;チャコール、PVP(ポリビニルピロリドン);超吸収ポリマー;BLOTTO(Bovine Lacto Transfer Technique Optimizer)と呼ばれる無脂肪乳カクテル(S.H. De Boer(1995年)Nucleic Acids Research、1995年、23巻、13号 2567〜2568頁);多糖、例えばキトサン(chitosane)、デンプン、グリコーゲン、セルロース、またはそれらの誘導体;特異的な抗体または酵素のようなタンパク質を含むことができまたはこれらからなることができるが、挙げた例に限定するものではない。
【0016】
引用されたマトリックス材料の全ては(独立して)、例えば粉末、粒子、ビーズ、顆粒、球、フリース、(1つまたは複数の)膜、フィルターの形態、または生物学的サンプルと接触するようになる任意のその他の適切な形態で、中空本体(1)の内部に存在することができる。さらに、逆相クロマトグラフィーに適切な材料を使用してもよい。
【0017】
本発明のデバイスの中空本体(1)は、いくつかの区画を含むことができ、例えば前記中空本体(1)は、少なくとも1つの液体透過性エレメント(4)、または周囲条件下では液体および固体に対して不透過性であるが外力を加えることによって液体透過性になる障壁(5)であって、中空本体(1)の内部側壁の全てと接触しており前記側壁と同一平面にあり、もしくは側壁と同一平面にあるホルダー(7)内に配置される障壁(5)によって、区画に分けられる。液体透過性エレメント(4)、障壁(5)、またはホルダー(7)の間に残っている任意の隙間は、適切な封止材料で封止することができる。
【0018】
好ましくは、デバイスは、少なくとも1つの液体透過性エレメント(4)と、周囲条件下では液体および固体に対して不透過性であるが外力を加えることによって液体透過性になる少なくとも1つの障壁(5)とをさらに含む。
【0019】
中空本体(1)は、上記にて引用された少なくとも1つのタイプの固体またはゲル状マトリックスを含んでいてもよく、これは、上記にて引用されたマトリックスの、1つの選択されたタイプのマトリックス、もしくはマトリックスの混合物を、1つの区画内に含むこと、または上記にて引用されたマトリックス材料から独立して選択された、前記マトリックスの1つ超を、中空本体(1)の内部のいくつかの区画内に含んでもよいことを意味する。
【0020】
好ましくは、固体マトリックスを含む任意の区画は、少なくとも1つの液体透過性エレメント(4)によって境界が定められており、任意のさらなる(1つまたは複数の)区画へのまたはデバイスの出口(3)への任意の液体移動とは無関係に、区画内に固体マトリックスが保持されている。本発明の好ましい実施形態では、デバイスの中空本体(1)は、内部に、好ましくは多孔質のフリット、フィルター、フリース、繊維マトリックス、または膜のような少なくとも1つの液体透過性エレメント(4)を含む。(1つまたは複数の)前記液体透過性エレメント(4)は主に、溶出から、中空本体の区画の少なくとも1つに含まれる任意の固体材料を留めるが、任意の液体および溶解成分をエレメント(4)へと通過させる機能を有する。したがって、例えば液体サンプルの一部を任意の固体サンプル部分から分離することができ、または液体サンプルを、デバイス内に含まれ保持されたクロマトグラフィーマトリックス、濾過マトリックス、キレート化マトリックス、もしくは結合マトリックスにより精製することができる。(1つまたは複数の)前記液体透過性エレメント(4)は、好ましくは、中空本体(1)の内部側壁の全てと接触しかつ前記側壁と同一平面にあり、もしくは側壁と同一平面にあるホルダー(7)内に配置され、かつ/または液体透過性エレメント(4)もしくはホルダー(7)の間に残っている任意の隙間は、適切な封止材料で封止することができる。
【0021】
デバイスが、いくつかの区画、例えば2、3、または4つの区画を含む場合、それらの少なくとも1つは、上記にて引用された結合マトリックス、吸収マトリックス、吸着マトリックス、またはキレート化マトリックスの少なくとも1つのタイプで充填されるのに対し、その他の区画の少なくとも1つは、好ましくは上記にて引用されたものから選択された、結合マトリックス、吸収マトリックス、吸着マトリックス、もしくはキレート化マトリックスの任意のさらなるタイプで、または任意の液体もしくは溶液で充填されることが好ましい。さらに、中空本体(1)の任意の区画は、上記にて引用された固体またはゲル状マトリックスのいずれかと液体または溶液との混合物を含むことができ、例えば中空本体は、任意の液体または溶液中に懸濁されまたは分散されたマトリックスを含む。
【0022】
液体または溶液は、水、任意の水性緩衝液、細胞培養培地、栄養分溶液、有機溶媒、もしくは任意の反応溶液、またはそれらの混合物のような、任意の水性または有機ベースの液体または溶液とすることができる。好ましくは、溶液は水性緩衝液であり、緩衝液は特定の緩衝液に限定されないが、好ましくは細胞処理で一般に使用される、特に生体分子単離法中に使用される、緩衝液のいずれかであり、または溶液は、細胞培養培地もしくは栄養分溶液である。
【0023】
特に、デバイスの中空本体(1)が液体、緩衝液、または溶液を含みまたは液体、緩衝液、または溶液と共に使用されることが意図される場合、中空本体(1)はさらに、周囲条件下では液体および固体に対して不透過性であるが外力を加えることによって液体透過性になる少なくとも1つの障壁(5)を含んでいてもよく、前記液体、溶液、または緩衝液は、前記少なくとも1つの障壁(5)によって漏れが防止され、これは液体、溶液、または緩衝液が2つの障壁(5)の間にあるということか、液体が1つの障壁(5)によって保持され、デバイスが少なくとも1つの閉鎖デバイス(6)を含むことを意味する。デバイスはさらに、いくつかの独立して選択された液体を、いくつかの区画内に含有することができる。
【0024】
そのような障壁(5)は、好ましくは、周囲条件下では液体および固体に対して不透過性であるが外力、好ましくは圧力、抗力、または推進力を加えることによって、液体透過性になる材料からなる。前記少なくとも1つの障壁(5)は、中空本体(1)の内部側壁の全てと接触しかつ前記側壁と同一平面にあり、または側壁と同一平面にあるホルダー(7)内に配置される。障壁(5)またはホルダー(7)の間に残っている任意の隙間は、適切な封止材料で封止することができる。そのような障壁(5)も同様に、中空本体(1)を少なくとも2つの区画に分割することができる。
本明細書は、例えば、以下を提供する。
(項目1)
(i)それぞれが少なくとも1つの開口端を有する少なくとも1つの中空本体(1);
(ii)任意の所望の生体分子を汚染する化合物を結合、吸着、吸収、キレート化、または保持する、少なくとも1つのタイプの固体またはゲル状マトリックス材料;
(iii)必要に応じて、該中空本体の内部の少なくとも1つの多孔質の液体透過性エレメント(4);
(iv)必要に応じて、該開口端の少なくとも1つを封止するための少なくとも1つの取外し可能な閉鎖デバイス(6)
を含むデバイス。
(項目2)
(i)それぞれが入口(2)および出口(3)を有する少なくとも1つの中空本体(1);
(ii)任意の所望の生体分子を汚染する化合物を結合、吸着、吸収、キレート化、または保持する少なくとも1つのタイプの固体またはゲル状マトリックス材料;
(iii)該出口(3)の上方に配置された、好ましくは多孔質のフリット、フィルター、フリース、繊維マトリックス、または膜のような少なくとも1つの液体透過性エレメント(4);
(iv)必要に応じて、該中空本体の該入口(2)および/または該出口(3)を封止するための少なくとも1つの取外し可能な閉鎖デバイス(6);
(v)必要に応じて、該出口(3)の上方に配置されまたは(1つまたは複数の)該液体透過性エレメント(4)の少なくとも1つに隣接して配置され、周囲条件下では液体および固体に対して不透過性であるが外力を加えることによって液体透過性になる少なくとも1つの障壁(5);ならびに
(vi)必要に応じて、該出口(3)を通過した後に移動相(溶出液)を収集するための少なくとも1つの収集管
を含む、項目1に記載のデバイス。
(項目3)
上記固体またはゲル状材料が、粉末、粒子、ビーズ、顆粒、球、フリース、または少なくとも1つの膜の形態で提供されることを特徴とする、項目1または2に記載のデバイス。
(項目4)
上記マトリックスが、キレート化樹脂、陽イオンまたは陰イオン交換マトリックス材料;望ましくない化合物、シリカ、多糖、HIC粒子に対する特異的結合部位を含むマトリックス;サイズ排除材料;ゲル濾過材料;鉱物;シリカ;InhibitEX(登録商標);ID;NTA、および挙げた最後の2種のものの誘導体、IDAもしくはNTA基またはそれらの誘導体を有する樹脂またはその他の基材;EDTA;特異的な抗体;アンフィポール;チャコール;PVP;超吸収ポリマー;無脂肪乳カクテル;キトサン、デンプン、グリコーゲン、セルロース、またはそれらの誘導体のような多糖から選択されることを特徴とする、項目1から3のいずれかに記載のデバイス。
(項目5)
上記中空本体(1)が、周囲条件下では液体および固体に対して不透過性であるが外力を加えることによって液体透過性になる少なくとも1つの障壁(5)をさらに含むことを特徴とする、項目1から4のいずれかに記載のデバイス。
(項目6)
上記液体透過性が、好ましくは上記障壁(5)を破壊し、穿刺し、破裂させ、または切断することによって不可逆的になる、項目5に記載のデバイス。
(項目7)
上記中空本体(1)が、少なくとも部分的に円筒状または円錐状であることを特徴とする、項目1から6のいずれかに記載のデバイス。
(項目8)
反応管、反応カップ、収集管、収集容器、カラム本体、スピンカラム、遠心分離管、微小遠心分離管、特に、区画化された容器、例えば管、カップ、フラスコ、クロマトグラフィーカラム、スピンカラム、プラスチックシリンジ、マルチウェルプレート、マルチウェルブロック、マルチウェルカラムプレート、フラスコ、ボトル、カップ、フィオール(phiol)、収集または遠心分離ベッセルを表す、項目7に記載のデバイス。
(項目9)
液体含有サンプルを処理するための、または生体分子もしくは生体分子含有サンプルを処理もしくは単離するための、好ましくは液体サンプルから生体分子を単離および/もしくは精製するための、項目1から8のいずれかに記載のデバイスの使用。
(項目10)
少なくとも1つの液体透過性エレメント(4)を、少なくとも1つの開口端を有する中空本体(1)の内部に配置するステップであって、少なくとも1つのエレメント(4)が、好ましくは該中空本体(1)の1つの開口端に近接しているステップと、その後、任意の所望の生体分子を汚染する化合物を結合、吸着、吸収、キレート化、または保持するが該生体分子には本質的にそうしない固体またはゲル状マトリックス材料を、少なくとも部分的に該中空本体に充填するステップとを含む、項目1から8のいずれかに記載のデバイスを調製するための方法。
(項目11)
上記液体透過性エレメントは、該エレメント(4)が上記中空本体(1)に正確に取り付けられ該中空本体の側壁全てと同一平面にあるように、該中空本体の内部に配置され、または、該中空本体に正確に取り付けられ該中空本体の側壁全てと同一平面にあるホルダー(7)内に配置され、残っている任意の隙間に封止材料を充填できることを特徴とする、項目10に記載の方法。
(項目12)
少なくとも1つのタイプの生体分子を含むサンプルから、対象とする少なくとも1つの生体分子を単離または精製するための方法であって、
(a)対象とする該生体分子の任意の汚染物質を濾過によって結合、吸収、吸着、キレート化、または保持するが該生体分子には本質的にそうしない少なくとも1つの固体またはゲル状マトリックスを含む上記のデバイスの中空本体(1)の内部に該サンプルを配置するステップであって、該サンプルが液体サンプルであり、または該サンプルが、該中空本体の内部に該サンプルを配置する前もしくは後に任意の液体と接触し、または該中空本体が、該サンプルが該デバイス内に配置された場合に該サンプルと接触するようになる液体を含むステップと、
(b)必要に応じて、該中空本体(1)の内部の該サンプルをインキュベートするステップと、
(c)外力、好ましくは圧力、抗力、または推進力を該デバイスに加え、その結果、対象とする該生体分子が隣の区画にまたは該中空本体(1)の出口(3)に移送されるステップと、
(d)対象とする該生体分子を含む溶出液を収集するステップと
を含む方法。
(項目13)
上記デバイスの上記中空本体(1)が、2、3、4、5、または6つの液体透過性エレメント(4)または障壁(5)を含み、その結果、所望の生体分子の任意の汚染物質を結合、吸収、吸着、もしくはキレート化するが該生体分子には本質的にそうしない異なるタイプの固体もしくはゲル状マトリックス、および/または任意の液体、溶液、もしくは緩衝液を必要に応じて含む、該中空本体(1)の3、4、5、6、または7つの区画が得られ、含まれる該エレメント(4)または障壁(5)の全てを越えかつ対象とする該生体分子を含有する溶出液が得られるように単離または精製プロセス中に必要な頻度でステップ(b)および/または(c)を繰り返す、項目12に記載の方法。
(項目14)
上記デバイスの上記中空本体(1)の上記区画の少なくとも1つが、上記生体分子を含むサンプルが添加される前に任意のさらなる固体マトリックスおよび/または少なくとも1種の液体を含む、項目12または13に記載の方法。
(項目15)
少なくとも1つのタイプの生体分子を含むサンプルから、対象とする少なくとも1つの生体分子を単離または精製するための方法であって、
(a)対象とする生体分子を含む生物学的サンプルを、所望の生体分子の少なくとも1つのタイプの汚染物質を濾過によって結合、吸収、吸着、キレート化、または保持するが該生体分子には本質的にそうしない少なくとも1つの固体またはゲル状マトリックス材料と接触させるステップと、
(b)その後、該マトリックスを含む全サンプルを、中空本体(1)を有しかつ該中空本体(1)の内部に少なくとも1つの液体透過性エレメント(4)を有するデバイス内に移送するステップと、
(c)外力、好ましくは圧力、抗力、または推進力を該デバイスに加え、その結果、対象とする該生体分子が該中空本体(1)の隣の区画にまたは該中空本体(1)の出口(3)に移送されるステップと、
(d)対象とする該生体分子を含む溶出液を収集するステップと
を含む方法。
(項目16)
生物学的サンプルを処理するための、または生物学的サンプルから生体分子を精製および/もしくは単離するためのキットであって、項目1から8のいずれかに記載のデバイス、または中空本体(1)と、その内部にある少なくとも1つの液体透過性エレメント(4)と、さらなる容器内にある、所望の該生体分子の少なくとも1つのタイプの汚染物質を濾過によって結合、吸収、吸着、キレート化、もしくは保持するが該生体分子には本質的にそうしない固体もしくはゲル状マトリックス材料とを含むデバイスを含むキット。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1図1は、中空本体(1)、入口(2)および出口(3)、多孔質のフリット(4)、障壁(5)としてのポリスチレンフィルムまたはアルミ箔、ならびにChelex樹脂(マトリックス)を含むスピンカラムである、本発明のデバイスの一実施形態を示す。
図2図2は、中空本体(1)、入口(2)および出口(3)、多孔質のフリット(4)、ポリスチレンフィルム(5)、ホルダー(7)、ならびに2つの取外し可能な閉鎖デバイス(6)を含み、微粒子イオン交換材料(マトリックス)および緩衝液(液体)をさらに含むスピンカラムである、本発明のデバイスの一実施形態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本出願による「周囲条件」とは、障壁材料がデバイスの周囲と同じ条件下にあり、特に障壁材料には外力が全く加わらないことを意味する。外力は、表面の少なくとも1つもしくは障壁の側部のいずれかに対する高い圧力、真空もしくは吸引のような抗力、推進力、例えば遠心力、振盪、もしくは衝突であって挙げた最後の2つが好ましくは質量の慣性を利用することによるものであり、または穿刺、切断、破裂もしくは類似のもののような機械力であってもよい。したがって材料は、テーブル上に立たせるというようなデバイスの通常の取扱い中、ピペット操作ステップ中、インキュベーションステップまた類似のステップ中では「周囲条件」下にある。「高い圧力」は、周囲圧力の少なくとも2倍の圧力が障壁材料に外部から加えられることを意味する。「高い圧力」は、例えばスピンカラムのようなカラムに液体または固体マトリックスが充填された場合、障壁材料に加えられた、任意の液体または固体マトリックスから生じる僅かに高い圧力を含まない。
【0027】
「液体に対して不透過性」とは、液体、例えば水溶液または水、アルコール、または有機溶液、特に好ましくは水溶液が、障壁の表面に保持され、周囲条件下では前記障壁を通過できず、好ましくは障壁材料に進入すること、浸透すること、または浸み込むこともできないことを意味する。液体と障壁との接触時間とは無関係に、前記溶液は、外力が加えられない限り障壁を通過できないことが特に好ましい。
【0028】
上記にて引用された外力のいずれかを加えることによって、障壁(5)の材料は液体透過性になる。これは、材料がその障壁特性を減少させ、少なくとも任意の液体、好ましくは溶解した材料を含む溶液を、材料に通すことが可能になることを意味する。透過性は、周囲条件に戻った後は、可逆的であっても不可逆的であってもよい。好ましくは、透過性は不可逆的である。これは、障壁材料が、圧力、抗力、もしくは推進力を加えることにより多孔質になること、または障壁材料が、周囲条件下では閉鎖されるが圧力、抗力、もしくは推進力を加えることにより開放される所定のオリフィスを有することによって例示される。好ましくは、多孔性が得られた後またはオリフィスが開放された後、障壁は、周囲条件下であっても含有される開口により液体透過性のままである。さらに障壁(5)は、圧力、抗力、または推進力を加えることにより、好ましくは所定の破断点で破断し得る。
【0029】
さらなる可能性は、デバイスが、中空本体(1)内部の障壁(5)の上方または下方に、例えば圧力、抗力、または推進力のような外力がデバイスに加えられたときに障壁材料を穿刺し切断しまたは破裂させる任意の材料または構成要素を含むことである。障壁材料が穿刺される場合、穿刺は微小穿刺が好ましいが、これはごく小さな穿刺だけが障壁材料に得られ、その結果障壁(5)の破裂は生じないが障壁(5)が多孔質になることを意味する。
【0030】
「上方」とは、デバイスがその使用様式で位置決めされた場合、例えばカラムがホルダーまたはカップ上に直立して配置された場合、障壁材料を穿刺し切断しまたは破裂させる材料または構成要素が、前記障壁材料の上側にあることを意味する。特に、デバイスが任意の液体を含んで意図されるように使用される場合、障壁材料を穿刺し切断しまたは破裂させる材料または構成要素は、液体と同じ側にあり、外力を加えることによって、特に圧力、抗力、または推進力を加えることによって、液体とも同様に接触する障壁材料の上面へと加圧される。
【0031】
障壁材料を穿刺し切断しまたは破裂させる材料または構成要素が障壁材料の「下方」にある場合、障壁材料の底面は、外力によって、障壁材料を穿刺し切断しまたは破裂させる材料または構成要素へと加圧されることになる。後者の場合、障壁材料を穿刺し切断しまたは破裂させる材料または構成要素は、液体と同様に液体透過性エレメント(4)の反対側にある。
【0032】
(1つまたは複数の)障壁(5)を液体透過性にするのに適切な、加えられる外力の強度およびタイプは、(1つまたは複数の)障壁(5)に使用される材料に、また必要に応じて(1つまたは複数の)障壁(5)を穿刺し切断しまたは破裂させるのに使用される構成要素または材料に依存する。(1つまたは複数の)障壁(5)は、所定強度まではいかなる外力に対しても抵抗性であることが好ましく、選択された材料によっておよび材料の任意の処理によって、(1つまたは複数の)障壁(5)が液体透過性になるときの強度は様々である。当業者にとって、どのタイプの外力が、またその力のいずれかがどの程度の強度であると、(1つまたは複数の)障壁(5)に関して選択された材料に液体透過性をもたらすのか、標準的な実験により決定することは容易である。障壁材料の異なる材料もしくは厚さ、または異なる原理があってもよく、その結果、障壁を液体透過性にするのに必要な外力は異なる強度になる。しかし、(1つまたは複数の)障壁(5)は、いずれにせよ、1×gに、好ましくは2×gに、より好ましくは5×gに、さらにより好ましくは10×gに、特に好ましくは20×g、40×g、または50×gに対して抵抗性であることが特に好ましい。(1つまたは複数の)障壁(5)は、100×gに対して抵抗性であることが特に好ましい。特に、(1つまたは複数の)障壁は、ピペット操作中、旋回中、円滑なボルテックス中、およびその他の一般に使用されるプロセスステップ中に生じる力に対して抵抗性であるべきである。
【0033】
(1つまたは複数の)障壁(5)は、好ましくは、フィルム、箔、コーティング、隔壁、膜、疎水性焼結材料(疎水性フリット)、化学的なもしくはその他の処理によって疎水性にされた材料の形態で、または効果的な障壁として働く任意のその他の適切な形態で提供される。障壁(5)に適切な材料は、例えば、疎水性フィルター材料;疎水性繊維ウェブ材料;ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリプロピレン−コポリマー、ポリ塩化ビニル、ポリウレタン、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリイミド、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリラクチド、エチレン−ポリ酢酸ビニル、塩化ビニル酢酸ビニルコポリマー、ポリアセタール、ポリエーテルアルコール、酢酸ビニルコポリマー、アクリルポリマーのような、特に熱可塑性もしくは熱硬化性ポリマーの、プラスチックの膜、フィルム、もしくは箔;またはシリコーン;ラテックス;多糖、特にセルロースエーテルおよび誘導体;アルミ箔もしくは銅箔のような薄い金属層、または任意のその他の適切な、好ましくはフィルム、箔、コーティング、隔壁、もしくは膜として提供することができるフィルム形成材料である。フィルムまたはコーティングとして、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリプロピレン−コポリマー、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリウレタン、ポリカーボネート、またはポリアミドのような熱可塑性ポリマーが特に好ましい。疎水性フィルター材料として、疎水性化ポリエチレンフィルターが好ましく、膜としては、例えばFiltrona(登録商標)繊維膜(Filtrona、Reinbek、ドイツ)のいずれかのような疎水性化繊維膜が、また膜としては、Gore tex(登録商標)または類似のもののような材料が好ましい。任意の耐水性であるが蒸気透過性の膜も同様に好ましい。
【0034】
障壁材料を穿刺し切断しまたは破裂させる構成要素または材料の例は:例えばシリカもしくはポリマーのような任意の不活性材料で作製された例えば多孔質のフリットのような、粗面を提供する任意の固体の多孔質の、穴のある、もしくは有孔プレート;その表面に微細な針を有する金属シーブ;穿孔部位に鋭いエッジを有する有孔プレート;鋭いエッジもしくは(1本または複数の)針を有する穿通デバイス、砂、または任意のその他の微粒子不活性材料である。好ましい実施形態では、上記の外力がデバイスに加えられたときに前記障壁(5)がエレメント(4)へと加圧される場合、液体透過性エレメント(4)として働く多孔質のフリットも同様に、障壁材料を穿刺する構成要素として働く。
【0035】
本発明の最も単純な実施形態の1つによれば、デバイスは、少なくとも1つの開口端を有する中空本体(1)を表すことができ、中空本体(1)の内部には、生物学的サンプルから単離されまたは精製された生体分子の任意の汚染物質を濾過によって結合、吸収、吸着、キレート化、または保持する一方で、対象とする生体分子は本質的に結合されず、吸収されず、吸着されず、また保持されない、少なくとも1つのタイプのマトリックスと、好ましくは少なくとも1つの液体透過性エレメント(4)とを含む。好ましくは中空本体は、少なくとも1つの障壁(5)をさらに含む。
【0036】
中空本体(1)が、液体透過性エレメント(4)ならびに障壁(5)を含む場合、(1つまたは複数の)液体透過性エレメント(4)の少なくとも1つを(1つまたは複数の)障壁(5)の少なくとも1つに隣接させることが可能であり、「隣接」は、障壁(5)に近いが接触はしていないこと、または障壁(5)と直接接触していることを意味する。障壁(5)がコーティングを表す場合、コーティングは、液体透過性エレメント(4)の少なくとも1つの面上に配置することが好ましく、特に好ましいのはフリット、フィルター、または膜の1つの面上に配置することである。いずれにせよ、(1つまたは複数の)液体透過性エレメント(4)は、障壁(5)の上方または下方に配置することができ、「上方」および「下方」は、障壁材料を穿刺し切断しまたは破裂させる構成要素または材料に関して上記のものと同じ意味である。好ましくは、障壁(5)は液体透過性エレメント(4)の上方にあり、これは、デバイスがその使用様式で位置決めされる場合には(入口(2)が上、出口(3)が下)、前記障壁(5)が液体透過性エレメント(4)の上面に隣接することを意味する。
【0037】
本発明によれば、中空本体(1)は、1つ超の液体透過性エレメント(4)および/または障壁(5)を含んでいてもよく、エレメント(4)または障壁(5)は、中空本体(1)をいくつかの区画に分離している。中空本体は、デバイスの意図される用途に応じて、3、4、5、6つ、またはそれより多くの液体透過性エレメント(4)または障壁(5)を同様に含んでいてもよい。
【0038】
1つ超の障壁(5)が中空本体(5)に含まれる場合、それらは、液体透過性になる前に外力に対して異なる抵抗性を有することが好ましい。特に、同じ中空本体(1)の内部に含まれるいくつかの障壁は、入口(2)から出口(3)側まで、同じタイプの外力に対して高い抵抗性を示すことが好ましい。例えば、3つの障壁(5)が中空本体(1)に含まれる場合、第1の障壁(5)(入口側に最も近い。)は、遠心力に対して定められた抵抗性を有する。第2の障壁(5)(中空本体のさらに内部にある。)は、第1の障壁に比べて遠心力に対して高い抵抗性を有し、したがって遠心分離は、第2の障壁を液体透過性にするために加速しなければならない。第3の障壁(5)(中空本体の入口側から最も遠い。)は、やはり、第2の障壁に比べて遠心力に対して高い抵抗性を有し、したがって遠心分離は、第3の障壁を液体透過性にするために加速しなければならない。障壁(5)のそれぞれは、障壁に関して上記の材料とは無関係に選択することができるが、異なる材料からなるか、または同じ基礎材料であるが異なる性質を示すものからなることが好ましい。例えば、障壁のそれぞれは、同じ熱可塑性ポリマーフィルムからなるものでもよいが、フィルムのそれぞれは異なる厚さを有する。さらなる可能性は、障壁(5)が様々に処理されることであり、例えば第1の障壁は、遠心力を加えることによって開くオリフィスを含み、第2の障壁は、所定の破断点として働くスズ引きした領域を有する、定められた厚さのフィルムであり、第3の障壁は、遠心力が増加したときに多孔質になる、連続した厚さを有する同じ材料のフィルムであり、その結果前記フィルムは多孔質の材料、例えば前記第3の障壁の下方に隣接して配置されたフリットの粗面と接触するようになる。別の原理は、箔が薄く、箔は、例えば遠心分離のような外力が加えられた場合、液体の定常水頭に起因した圧力により透過性になることである。
【0039】
本明細書に例示される実施形態は、可能性ある実施形態を限定するものではない。当業者にとって、デバイスの中空本体(1)に含まれる障壁(5)が前記中空本体(1)の区画を可能にしかつ任意の外力を加えることによって液体透過性になることができる限り、障壁材料および/または材料処理の任意の組合せを使用することができることは明らかである。好ましくは障壁(5)は、順次、液体透過性にすることができ、この場合「順次」は、外力を増加させることによってまたは外力を変更することによって、障壁が次々に液体透過性になることを意味する。
【0040】
特に好ましいデバイスは、(i)それぞれが入口(2)および出口(3)を有する少なくとも1つの中空本体(1);(ii)任意の所望の生体分子を汚染する化合物を結合、吸着、吸収、キレート化、または保持するが生体分子には本質的にそうしない少なくとも1つのタイプの固体またはゲル状材料;(iii)出口(3)の上方に配置された、好ましくは多孔質のフリット、フィルター、フリース、繊維マトリックス、または膜のような、少なくとも1つの液体透過性エレメント(4);(iv)必要に応じて、中空本体の入口(2)および/または出口(3)を封止するための少なくとも1つの取外し可能な閉鎖デバイス(6);(v)必要に応じて、出口(3)の上方に配置されまたは(1つまたは複数の)液体透過性エレメント(4)の少なくとも1つに隣接して配置された、少なくとも1つの障壁(5);および(vi)必要に応じて、出口(3)を通過した後に移動相(溶出液)を収集するための少なくとも1つの収集管を含む。
【0041】
好ましくは、少なくとも1つの液体透過性エレメント(4)は、デバイスの出口側付近に近接して存在する。「近接して」は、中空本体のさらなる反応区画がエレメント(4)と出口との間になく、しかしデバイスの構成により、確かにいくらかの空間がエレメント(4)とデバイス端部との間にある可能性があることを意味する。
【0042】
好ましい性質が実現されるさらなる実施形態は、上記のいくつかの中空本体(1)を含むデバイスであり、中空本体(1)のそれぞれは同様に構築され、または中空本体のアセンブリーは互いに異なり、しかし中空本体の少なくとも一部は上記にて定義された記述に該当する。
【0043】
デバイスの形態は本発明を限定するものではないが、好ましい実施形態では、デバイスの(1つまたは複数の)中空本体が、少なくとも部分的に円筒状または少なくとも部分的に円錐状である。本発明の実施形態に関する非限定的な例は、反応管、反応カップ、収集管、収集容器、カラム本体、遠心分離管、微小遠心分離管、特に、区画化された容器、例えば管、カップ、フラスコ、クロマトグラフィーカラム、スピンカラム、プラスチックシリンジ、マルチウェルプレート、マルチウェルブロック、マルチウェルカラムプレート、フラスコ、ボトル、カップ、フィオール(phiol)、収集もしくは遠心分離ベッセル、または類似のものである。
【0044】
デバイスは、取外し可能な閉鎖デバイス(6)を、開口端の少なくとも1つにさらに含むことができる。前記閉鎖デバイスは、デバイスの内部を清浄および/もしくは滅菌状態に保つように、または必要に応じてデバイスの内容物を中空本体(1)の内部に保つように働く。閉鎖デバイス(6)は、デバイスを使用する前、使用する間、および/または使用した後に容易に取り外すことができる。好ましくは閉鎖デバイス(6)は、デバイスが任意の液体または流動性もしくは移動性固体材料を含む場合に使用される。閉鎖デバイス(6)は、例えば、キャップ、栓、カバープレート、フィルムもしくは箔、または任意のその他の適切な取外し可能な閉鎖デバイスとすることができる。それは、閉鎖し直すことができまたは使い捨て可能な閉鎖デバイスとすることができる。入口(2)および出口(3)側の閉鎖デバイス(6)は、互いに異ならせることができ、または同じタイプの閉鎖デバイス(6)とすることができる。
【0045】
本発明のデバイスは、サンプル、特に液体含有サンプルの処理のために使用することができる。「液体サンプル」とは、サンプルそのものが液体、溶液、懸濁物、または分散物であること、あるいは任意のゲル状、固体、もしくは微粒子サンプル、または上記のような生物学的サンプルを、溶液、分散物、または懸濁物が得られるように任意の液体または溶液と組み合わせることを意味する。好ましくはデバイスは、任意の生体分子を含む少なくとも1つの液体サンプルの処理のために、例えば前記サンプルからの少なくとも1つの生体分子の単離または精製のために、使用することができる。液体は、上記のようにデバイスに(必要に応じて増加する)外力をそれぞれ加えることにより、所望の時点で、デバイスの区画の少なくとも1つに(一時的に)保持することができ、かつ1つの区画から隣の区画に順次移動させることができ、または放出することがそれぞれできる。
【0046】
さらに、本発明によるデバイスは、多相液体系または多相液体/固体系を分離するために使用することができる。
【0047】
本発明は、少なくとも1つのタイプの生体分子を含むサンプルから、対象とする少なくとも1つの生体分子を単離または精製するための方法であって、
(a)対象とする生体分子の任意の汚染物質を濾過によって結合、吸収、吸着、キレート化、または保持するが生体分子には本質的にそうしない少なくとも1つの固体またはゲル状マトリックスを含む、上記のようにデバイスの中空本体(1)の内部にサンプルを配置するステップであって、サンプルが液体サンプルであり、またはサンプルが、中空本体の内部にサンプルを配置する前もしくは後に任意の液体と接触し、または中空本体が、前記サンプルがデバイス内に配置された場合に該サンプルと接触するようになる液体を含むステップと、
(b)必要に応じて、中空本体(1)の内部のサンプルをインキュベートするステップと、
(c)外力、好ましくは圧力、抗力、または推進力をデバイスに加え、その結果、対象とする生体分子が隣の区画にまたは中空本体(1)の出口(3)に移送されるステップと、(d)対象とする生体分子を含む溶出液を収集するステップと
を含む方法をさらに含む。
【0048】
任意の前処理が可能であり、例えば溶解は、溶解産物が精製カラムに配置される前に、別のデバイスで実施されてもよい。
【0049】
本発明による方法において、デバイスの中空本体(1)は、上記にて定義されたような固体またはゲル状マトリックス材料を含む。さらに中空本体(1)では、細胞溶解のための溶解緩衝液、組織溶解のための液体、酵素含有溶液、有機溶媒、またはサンプルから生体分子を単離および/または精製する間に一般に使用される任意のその他の液体もしくは溶液のような、任意の液体または溶液を含有することができる。中空本体は、上記にて定義されたような異なるタイプのマトリックス材料、液体、緩衝液、もしくは溶液、またはそれらの混合物で、少なくとも部分的に充填されていてもよい、いくつかの区画を含んでいてもよい。
【0050】
ステップ(a)では、対象とする少なくとも1つの生体分子を含むサンプルは、中空本体内に配置され、例えば本発明のデバイスの中空本体(1)の第1の区画内に配置される。前記サンプルは液体サンプルであり、またはサンプルは、細胞、組織、もしくは少ない液体を含有する上述の生物学的サンプルの任意のその他のもののような固体サンプルであり、サンプルを中空本体の内部に配置する前もしくは後に任意の液体と接触させ、または中空本体は、前記サンプルがデバイス内に配置された場合にサンプルと接触するようになる液体を含む。
【0051】
方法は、少なくとも1つの任意選択のインキュベーションステップ(b)を含み、サンプルに含まれる溶液または緩衝液の成分は、活性であるまたは生物学的サンプルと反応することが可能になる。例えば、生物学的サンプルが細胞含有または組織含有サンプルであり、溶解緩衝液が前記サンプルに添加された場合、細胞または組織の溶解は、任意選択のインキュベーションステップ中で引き起こされる。一方、(1つまたは複数の)インキュベーションステップ中、中空本体(1)に含まれた固体マトリックス材料への、サンプル汚染物質の任意の結合、キレート化、吸収、または吸着が、生じる可能性がある。
【0052】
ステップ(c)では、外力がデバイスに加えられ、その結果、サンプルの液体部分の少なくとも一部が中空本体(1)の次の区画にまたは中空本体(1)の出口(3)にそれぞれ移送される。好ましくは、固体またはゲル状マトリックスを含む区画のそれぞれは、液体透過性エレメント(4)により境界が定められ、したがって外力により、液体サンプルの一部は前記液体透過性エレメント(4)を通して移送されるのに対し、汚染物質が投入された固体またはゲル状マトリックス材料は、液体透過性エレメント(4)が及ばない区画内に残される。中空本体(1)が、いくつかの異なるマトリックス材料を、例えば異なる区画に含む実施形態では、前記区画を単に(1つまたは複数の)液体透過性エレメント(4)によって分離し、または区画を障壁(5)によって、もしくは両方によって分離することが可能である。しかし、いくつかの異なるマトリックス材料が、いかなる区画化もない状態で、例えば前記マトリックス材料を混合するだけでまたは材料の1種を中空本体(1)の内部でその他の材料の上に層状化することにより、中空本体に含まれる実施形態も、同様に本発明の範囲に含まれる。しかしいずれにせよ、対象とする生体分子を含む液体サンプルの一部が中空本体(1)を離れるときに、任意の固体またはゲル状材料が中空本体(1)の内部に保持されるように、中空本体(1)の出口側に近接して少なくとも1つの液体透過性エレメント(4)が含まれることが好ましい。
【0053】
本発明のデバイスが少なくとも1つの障壁(5)を含む場合、定められた第1の外力が第1の障壁(5)に加えられ、その結果、前記第1の障壁(5)が液体透過性になることが好ましい。さらなる障壁(5)が中空本体(1)に含まれる場合、ステップ(c)で第1の定められた外力が加えられる間、第1の障壁(5)(入口側(2)に最も近い。)のみが液体透過性になることが特に好ましい。例えば、圧力をデバイスの入口(2)に加え、対象とする生体分子を中空本体(1)の次の区画内へと加圧してもよく;または遠心力をデバイスに加え、対象とする生体分子を含む液体の少なくとも一部を中空本体(1)の次の区画内へと移送し;または前記力の組合せをデバイスに加える。1つの障壁(5)のみが中空本体に含まれまたは残される場合、デバイスの出口(3)を真空にし、対象とする生体分子をデバイスの出口側に吸引することも、同様に可能である。
【0054】
いくつかの障壁(5)がデバイスに含まれる場合、ステップ(b)によるインキュベーションおよびステップ(c)による外力を加えることを繰り返してもよく、その場合、さらなる外力、例えば高い圧力または遠心力がデバイスに加えられ、前記さらなる外力は、ステップ(c)で加えられた第1の外力とは異なり、異なるタイプの力を加えてもよいかまたは力の強度を変化させることが好ましい。追加の外力を加えることにより、次に存在する障壁を液体透過性にし、液体サンプルの一部を中空本体(1)の次の区画に移送しまたはデバイスから溶出する。サンプルが次の区画内に移送される場合、必要に応じてステップ(b)および(c)は独立して、中空本体(1)の内部の全ての障壁(5)を越えるのに必要な頻度で繰り返してもよく、好ましくは、後に続く障壁(5)のそれぞれは、その前の障壁(5)よりも外力に対してより抵抗性であり、したがって任意のさらなるステップでは、加えられる外力が増加し、または加えられる外力のタイプが変化する。
【0055】
区画のそれぞれは少なくとも部分的に、生物学的サンプルの任意の処理中に適切に使用された任意の液体または任意の固体材料で充填され、本発明によれば、区画の少なくとも1つは、対象とする生体分子の任意の汚染物質を濾過によって結合、吸収、吸着、キレート化、または保持するが前記生体分子には本質的にそうしない固体またはゲル状マトリックス材料を含む。
【0056】
本発明の方法には、デバイスの中空本体(1)が2、3、4、5、または6つの液体透過性エレメント(4)または障壁(5)を含んで中空本体(1)の3、4、5、6、または7つの区画が得られ、したがって、含まれた障壁(5)の全てを越え対象とする生体分子を含有する溶出液がステップ(d)で得られるように、単離または精製プロセス中に必要な頻度でステップ(b)および/または(c)を繰り返してもよいという実施形態が含まれる。
【0057】
本発明の方法には、ステップ(a)から(d)を含むプロセス中の任意の段階で、追加として任意のさらなるステップが実施されることも、同様に含まれる。例えば任意の段階で、例えば液体を入口(2)側から中空本体(1)内にピペット操作することにより、任意の追加の液体をデバイスの中空本体(1)に添加してもよい。さらに、任意の加熱または冷却ステップを、意図される結果を求めて適切な場合実施してもよい。追加としてまたは代替として、反転または振盪のような混合を行うためのステップが、意図される結果に有用であり得る。
【0058】
最後のステップ(d)では、最後の区画を通過する少なくとも1種の溶出液を収集する。ステップ(b)とステップ(d)の間の任意のさらなる任意選択のステップとは無関係に、対象とする生体分子は、本発明のデバイスに外力を少なくとも1回加えた後に、得ることができる。
【0059】
使用される単離または精製手順、およびデバイスの中空本体(1)に含まれる1種または複数のマトリックスに応じて、対象とする生体分子は、液体透過性エレメント(4)を通過する最初の溶出液に含有されていてもよく、または対象とする生体分子は、任意のその後の溶出液に含有される。例えば、出口(3)の前の最後の区画にあるマトリックスが生体分子用の結合、吸収、または吸着マトリックスであり、任意の洗浄ステップが単離/精製手順に含まれる場合、対象の生体分子は、その後の溶出液中に含まれる。この場合、前記溶出液は、デバイスに何らかの外力を再び加えることによって得ることができ、または溶出液は、重力のみによって液体透過性エレメントを通過することが可能である。本発明によれば、中空本体(1)に含まれる少なくとも1つのマトリックスは、対象とする生体分子を本質的に吸収、吸着、そして結合もしない。
【0060】
本発明のデバイスは、少なくとも1つの液体透過性エレメント(4)を、少なくとも1つの開口端を有する中空本体(1)の内部に配置することによって調製することができ、少なくとも1つのエレメント(4)は、好ましくは、中空本体(1)の1つの開口端に近接している。(1つまたは複数の)エレメント(4)は、エレメント(4)もしくはエレメント(4)のそれぞれが中空本体(1)の内部側壁の全てと直接接触しかつ前記側壁と同一平面にあるように、中空本体(1)内に配置され、または(1種または複数の)エレメントは、中空本体(1)の内部側壁の全てと接触しかつ前記側壁と同一平面にあるホルダー(7)内に配置される。(1つまたは複数の)エレメント(4)と側壁との間またはホルダー(7)と側壁との間に残っている任意の隙間に、接着剤または封止材料を充填することができる。
【0061】
(1つまたは複数の)エレメント(4)に加え、少なくとも1つの障壁(5)を、中空本体(1)の内部に、少なくとも1つのエレメント(4)に隣接させてまたはその/それらのエレメントから間隔をあけて配置してもよい。液体透過性エレメント(4)は、障壁(5)が内部に配置される前に、中空本体(1)の内部に配置することができ、または障壁(5)は、液体透過性エレメント(4)が本体(1)の内部に配置される前に、中空本体(1)の内部に配置される。デバイスの、1つの可能性ある調製方法では、少なくとも1つの液体透過性エレメント(4)を少なくとも1つの障壁(5)材料と接触させ、その後、液体透過性エレメント(4)と障壁(5)とを組み合わせた「モジュール」が中空本体の内部に配置される。例えば、そのような「モジュール」は、1つの液体透過性エレメント(4)、好ましくはフリット、フリース、繊維マトリックス、フィルター、もしくは膜と、1つの障壁(5)材料、好ましくはフィルム、箔、もしくはコーティング、膜、隔壁、疎水性焼結材料、もしくは疎水性繊維材料とを含むことができ、またはモジュールは、2つの液体透過性エレメント(4)を含むことができ、それら2つの間には少なくとも1つの障壁(5)材料が「サンドイッチ」構造のように含まれている。中空本体(1)は、そのようなモジュールの1つまたはいくつかと、必要に応じて追加として、少なくとも1つの個別の障壁(5)または液体透過性エレメント(4)とを含むことができる。中空本体の少なくとも1つの区画が固体マトリックスを含む場合、前記区画は、少なくとも1つの液体透過性エレメント(4)、または少なくとも1つの液体透過性エレメントおよび少なくとも1つの障壁(5)を含むモジュールによって境界が定められて、この区画には、液体部分が次の区画内にもしくは出口(3)に移送されるときに固体マトリックスが保持されることが、特に好ましい。
【0062】
障壁(5)および/もしくは液体透過性エレメント(4)、または両方を含むモジュールは、それらが中空本体に正確に取り付けられ、前記中空本体の側壁全てと同一平面にあるように、またはそれらが、中空本体に正確に取り付けられ前記中空本体の側壁全てと同一平面にあるホルダー(7)内に配置されもしくは接続されるように、サイズが決められることが好ましい。残っている任意の隙間に、接着剤または封止材料を充填することができる。障壁(5)および任意選択の液体透過性エレメント(4)は、障壁(5)および/または任意選択の液体透過性エレメント(4)の下方で締付けリングまたはグリッドを使用することにより、所定の点で固定することができる。
【0063】
ホルダー(7)を使用しない場合、中空本体は、(1つまたは複数の)液体透過性エレメント(4)もしくは(1つまたは複数の)障壁(5)のいずれかまたは両方に用いられる、少なくとも1つのフランジもしくは支持エレメントを含み、その上にエレメント(4)もしくは障壁(5)が位置することができ、または障壁(5)もしくはエレメント(4)が、中空本体(1)の内部を貫通する支持エレメント上に配置され、または障壁(5)が位置することができ、または障壁(5)および/もしくは液体透過性エレメント(4)が、例えばシリコン(silicon)接着剤、架橋樹脂、ゴム、熱可塑性もしくは熱硬化性ポリマーのような適切な接着剤を介して側壁と接触していることが好ましい。接着剤のタイプは、意図されるように使用される場合、本発明のデバイスに添加される成分の1種に対して反応性ではない限り、本発明を限定するものではない。さらなる実施形態では、中空本体(1)は円錐状であり、液体透過性エレメント(4)および/または障壁(5)は、中空本体(1)の内部の所定の場所にのみ取り付けられるようにサイズが決められ、エレメント(4)または障壁(5)を前記場所へと加圧することによってこの所定の場所に配置され、そこでそれらは張力により保たれる。実施形態のいずれかでは、液体透過性エレメント(4)および/または障壁(5)またはホルダー(7)の間に残っている任意の隙間を、適切な封止材料で封止することが有利と考えられる。適切な封止材料は、例えばシリコーンポリマー、熱可塑性または熱硬化性ポリマーまたは樹脂である。
【0064】
必要に応じて、中空本体(1)には、この得ることが可能な効果が例えば液体透過性エレメント(4)によってまだ発揮されていない場合、障壁材料を穿刺し切断しまたは破裂させる(1種または複数の)構成要素または(1種または複数の)材料を追加として投入することができる。
【0065】
少なくとも1つの液体透過性エレメント(4)を中空本体(1)の内部に配置した後、前記中空本体または中空本体(1)の少なくとも1つの区画には、少なくとも部分的に、所望の生体分子の少なくとも1つのタイプの汚染物質を濾過によって結合、吸収、吸着、キレート化、または保持するが前記生体分子には本質的にそうしない固体またはゲル状マトリックスが、充填される。前記マトリックスを添加する前記ステップの前または後に、中空本体に、任意の所望の精製または単離プロセスに適切な任意のその他の化合物、液体、溶液、緩衝液、またはマトリックスを、追加として充填してもよい。これは、所望のプロセスプロトコルによれば、中空本体に、任意の適切な固体、ゲル状、または液体化合物、または溶液を順次、特に所望の生体分子の適切な精製または単離が可能になる順序で充填してもよいことを意味する。精製または単離プロトコルに応じて、任意の(1種または複数の)区画に充填されるマトリックスまたは溶液の成分を変えることができるが、本発明によれば、少なくとも1つの区画には、所望の生体分子の少なくとも1つのタイプの汚染物質を濾過によって結合、吸収、吸着、キレート化、または保持するが前記生体分子には本質的にそうしないマトリックスが充填される。例えば、望まれる場合には、任意のその他の区画には、細胞もしくは組織溶解のための溶解緩衝液、さらなる精製のために対象とする生体分子に特異的に結合する任意のマトリックス、または対象とする生体分子の任意の反応を可能にする反応緩衝液を、充填することができる。好ましくはデバイスは、中空本体内に、汚染化合物を結合、吸収、吸着、またはキレート化する固体またはゲル状マトリックスが少なくとも部分的に充填された1つ超の区画、例えば2、3、4種、またはそれより多くの異なるタイプのそのような固体またはゲル状マトリックスが充填された、2、3、4つ、またはそれより多くの異なる区画を含み、前記マトリックスのそれぞれは、異なるタイプの汚染化合物を結合、吸収、吸着、またはキレート化する。
【0066】
ここで、「区画」を有する中空本体が同様に記述される場合、中空本体は、1つまたは複数の前記マトリックスが充填されたたった1つの区画を有することを意味する。好ましいマトリックスは、例えばChelex樹脂、シリケート粒子もしくは繊維、イオン交換材料、または任意の類似のものである。特に好ましい実施形態では、中空本体の少なくとも1つの区画は、対象とする生体分子に結合しないキレート化樹脂、例えば核酸単離用のChelex樹脂で、少なくとも部分的に充填される。
【0067】
さらなる固体またはゲル状化合物、液体、または溶液が中空本体(1)に充填される場合、次の化合物または溶液が添加される前に、少なくとも1つの液体透過性エレメント(4)もしくは少なくとも1つの障壁(5)または両方が中空本体(1)内に配置されることが好ましいが、必ずしもそのようにする必要はない。したがって好ましい実施形態では、異なるタイプの固体またはゲル状マトリックスおよび/または液体または溶液を含有する場合、中空本体は、少なくとも1つのさらなるエレメント(4)または少なくとも1つの障壁(5)によって区画化されるが、これは必須ではない。
【0068】
本発明によるさらなる可能性は、対象とする生体分子を含む生物学的サンプルを、最初に本発明のデバイスの外部で、所望の生体分子の少なくとも1つのタイプの汚染物質を濾過によって結合、吸収、吸着、キレート化、または保持するが前記生体分子には本質的にそうしない少なくとも1つのマトリックスと接触させる方法である。マトリックスを前記サンプルと接触させ、必要に応じて任意の追加の(1つまたは複数の)処理ステップを行った後、マトリックスを含む全サンプルを、中空本体(1)を有しかつ中空本体(1)の内部に少なくとも1つの液体透過性エレメント(4)を有するデバイス内に移送することができる。マトリックスを含むサンプルを前記デバイス内に移送した後、上記の外力をデバイスに加え、その結果、対象とする(1つまたは複数の)生体分子を含有するサンプルの液体部分の少なくとも一部を溶出することができる。
【0069】
本発明はさらに、上記のデバイスを含む、生物学的サンプルを処理するための、または生物学的サンプルから生体分子を精製もしくは単離するためのキットを含む。あるいはキットは、少なくとも1つの開口端を有する少なくとも1つの中空本体(1)と、中空本体(1)の内部にある少なくとも1つの液体透過性エレメント(4)と、そこから離れてある、所望の生体分子の少なくとも1つのタイプの汚染物質を濾過によって結合、吸収、吸着、キレート化、または保持するが前記生体分子には本質的にそうしない固体またはゲル状マトリックスを含む少なくとも1つのさらなる容器とを有するデバイスを含む。
図1
図2
【外国語明細書】
2016166903000001.pdf