【課題】受光素子または発光素子を有する光ユニットと該光ユニットが固定されるハウジングとを備える光モジュールであって、受光素子または発光素子の位置の変化が光ユニットの固定前後で小さいモジュールを提供する。
【解決手段】光モジュール1は、信号光を受信するPD2aを有する光受信ユニット2と、光受信ユニット2が固定されるハウジング5と、を備えるものであって、光受信ユニット2のハウジング5への固定面は、PD2aの受光面と同一平面上にある。
前記ハウジングは、前記光ユニットに対向するレンズを保持するレンズホルダと、該レンズホルダと前記光ユニットとを連結するジョイントスリーブとを有し、前記固定面は前記ジョイントスリーブを固定する面である、請求項1に記載の光モジュール。
前記レンズホルダと前記ジョイントスリーブとは貫通溶接され、前記ジョイントスリーブと前記受信モジュールとは隅肉溶接されている、請求項2または3に記載の光モジュール。
【背景技術】
【0002】
光通信装置の分野では、敷設された光ファイバを有効利用するために光ファイバを通過する光信号が他の波長の光信号と干渉しないことを利用し、光波長多重通信や一心双方向通信を行っている。これらの光通信等のために、現在10Gbpsやそれ以上の速度で動作する光モジュールが普及している。高速受信を行うためには、受信用PD(フォトダイオード)、APD(アバランシェ・フォトダイオード)などの受光素子の寄生容量を減らす必要がある。受光素子の受光部はPIN構造になっており寄生容量を持つ。そのために、受光部の面積をφ30μmやφ20μmといったように小さくし寄生容量の低減化が図られる。
【0003】
受光素子を有する光受信ユニットの組立は、受光部の面積が狭くされるにつれ、高精度の調芯と高精度の固定が必要である。固定は、YAG溶接や樹脂固定で行われるが、樹脂固定は樹脂の硬化収縮があるため硬化前後で調芯ずれを招き、またYAG溶接は溶接時にずれを生ずる。高精度の調芯はジョイントスリーブ(Jスリーブ)を用いて3軸の調芯を行う必要がある。
【0004】
図7は、従来の光モジュール(例えば特許文献1)を説明するための図であり、
図7(A)は光モジュールが有する光受信ユニットの溶接固定前の様子を、
図7(B)は同溶接固定後の様子をそれぞれ示す。
図7(A)の光モジュール100は、光受信ユニット101と、不図示の光送信ユニット、光ファイバ結合ユニット等を有する一心双方向通信用のモジュールである。光モジュール100は、さらに、レンズ104aを保持するレンズホルダ104を有し、該レンズホルダ104に光受信ユニット101や光送信ユニット、光結合ユニット等が取り付けられている。
【0005】
光モジュール100では、保持リング102に保持された光受信ユニット101をJスリーブ103の内面に摺動させて光軸方向すなわち光軸Pの方向の調芯を行い、その後に保持リング102とJスリーブ103とを貫通溶接している。さらに、光モジュール100では、Jスリーブ103の下面を、レンズホルダ104の実装面104b上で摺動させて、光軸Pに垂直面内の調芯を行った後、YAGレーザを用いた隅肉溶接によってJスリーブ103の下部をレンズホルダ104と固定する。このようにして光モジュール100では高精度の調芯を行っている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、光モジュール100では、光受信ユニット101が、より具体的には受光素子101aの受光面101bが、調芯後かつ隅肉溶接前において、光軸Pに対して垂直であったにも関わらず、隅肉溶接後には、
図7(B)に示すように光軸Pに対して非垂直な状態になることがある。また、寸法誤差によっては、溶接前において
図7(B)のように非垂直な状態であったのが溶接後において
図7(A)のように垂直となる場合もある。
【0008】
上述のように、溶接前後で光軸に対する受光素子の受光面の搭載角度が変化すると、光モジュール100のような構成では、受光素子の受光面の位置が隅肉溶接前後で大きく変化してしまう。光モジュール100の構成では、受光素子101aに代えて発光素子を用いた場合も同様の問題は発生しうる。
【0009】
本発明は、上述のごとき実情に鑑みてなされたもので、受光素子または発光素子を有する光ユニットと該光ユニットが固定されるハウジングとを備える光モジュールであって、受光素子または発光素子の位置の変化が光ユニットの固定前後で小さいモジュールを提供することをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の光モジュールは、信号光を受信または送信する光素子を有する光ユニットと、該光ユニットが固定されるハウジングと、を備えるものであって、光ユニットのハウジングへの固定面は、光素子の受光面または発光面と同一平面上にある。
【0011】
ハウジングが、光ユニットに対向するレンズを保持するレンズホルダと、該レンズホルダと光ユニットとを連結するジョイントスリーブとを有し、上記固定面はジョイントスリーブを固定する面である場合に好適に用いられる。
【0012】
光ユニットが、信号光を透過する平板窓を有する構成であってもよい。レンズホルダとジョイントスリーブとは貫通溶接され、ジョイントスリーブと受信モジュールとは隅肉溶接される構成も可能である。光モジュールは、光ユニットとは異なる波長の信号光を受信または送信する光素子を搭載する別の光ユニットをさらに備えていてもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明の光モジュールによれば、光ユニットの固定前後での受光素子または発光素子の位置ズレを小さくすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しながら、本発明の光モジュールに係る好適な実施の形態について説明する。なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内ですべての変更が含まれることを意図する。また、以下の説明において、異なる図面においても同じ符号を付した構成は同様のものであるとして、その説明を省略する場合がある。
【0016】
図1乃至
図3は、本発明に係る光モジュールの一例を説明するための図である。
図1は光モジュールの斜視図、
図2は送信用光通信ユニットを省略した状態での
図1に示した光モジュールの要部断面図、
図3は
図1の光モジュールの一部の分解断面図である。
図1の光モジュール1は、1本の光ファイバで光信号を送受信する一芯双方向光モジュールであり、受信用信号光(以下、Rx光)を受信する光受信ユニット2、送信用信号光(Tx光)を送信する光送信ユニット3、光ファイバケーブルに付属する光コネクタが装着される光結合ユニット4を備える。また、光モジュール1は、これらユニット2〜4が取り付けられるハウジング5を備える。
【0017】
光受信ユニット2は、Rx光を受光するためにPD(Photodiode)2a(後述の
図4参照)等を搭載し、上記光コネクタの光ファイバの光軸と90°をなす軸の延長線上に位置する。光送信ユニット3は、Tx光を出力するためにLD(Laser Diode)等を搭載し、上記光コネクタの光ファイバの光軸の延長線上に位置する。図の例では、光送信ユニット3は、箱型の筐体から成る所謂バタフライパッケージを有するものであるが、光受信ユニット2と同様に円筒状の同軸型パッケージを有するものであってもよい。
【0018】
光結合ユニット4は、
図2に示すように、第1レンズホルダ6aと第1Jスリーブ6bを介して調芯されてハウジング5に対して固定される。調芯方法及び光結合ユニット4の詳細は後述する。第1レンズホルダ6aは第1集光レンズ6cを保持するものであり、第1Jスリーブ6bは、第1レンズホルダ6aを覆い、第1レンズホルダ6aと光結合ユニット4を連結する。
【0019】
ハウジング5は、
図3に示すように、円筒状のハウジング本体7と、WDM(Wavelength Division Multiplexing)フィルタ8aを保持するフィルタホルダ8と、第2集光レンズ9aを保持する第2レンズホルダ9と、第2レンズホルダ9と光受信ユニット2とを連結する第2Jスリーブ10とを有する。これら第2レンズホルダ9と第2Jスリーブ10を介してハウジング本体7と光受信ユニット2とは調芯されて固定される。第2集光レンズ9aは非球面レンズが好ましい。球レンズでは収差がありPD2aの受光径が20μmなどと小さい場合にその受光径の大きさまでRx光を絞れないためである。
【0020】
以上の光モジュール1では、光送信ユニット3からのTx光は、WDMフィルタ8aと第1集光レンズ6cを透過し後述の結合ファイバ4eに光結合され、一方、結合ファイバ4eから出射されたRx光は第1集光レンズ6cを透過した後にWDMフィルタ8aで反射され第2集光レンズ9aにより集光され光受信ユニット2に受光される。この光モジュール1では、光受信ユニット2の固定の際に角度ズレが生じるので以下の構造を採用している。
【0021】
図4は、光受信ユニット2、第2レンズホルダ9、第2Jスリーブ10を相互に溶接した状態の断面図である。
図5は、固定前後の光受信ユニット2の様子を示す断面図であり、
図5(A)は固定前の様子を示し、
図5(B)は固定後の様子を示す。
【0022】
光受信ユニット2は、
図4に示すように、Rx光を受光するPD2aの他に、リードピン2bが設けられたステム2cを有し、PD2aはサブマウント2dを介してステム2c上に実装されている。リードピン2bはPD2aからの電気信号の取り出し等に用いられる。ステム2cの実装面はキャップ2eにより覆われ、該キャップ2e及びステム2cにより光受信ユニット2は気密封止されている。
【0023】
サブマウント2dは例えば窒化アルミニウム(AlN)製である。キャップ2eは抵抗溶接によりステム2cに固定されている。キャップ2eにはRx光を透過する平板窓2fが設けられている。
【0024】
第2Jスリーブ10は、筒状に形成されており、その内孔10aの一方端から第2レンズホルダ9を収納し、他方端から光受信ユニット2を収納する。第2Jスリーブ10と第2レンズホルダ9とは貫通溶接により固定される。第2Jスリーブ10と光受信ユニット2との固定は、第2Jスリーブ10の光受信ユニット2側の端面10bと光受信ユニット2のキャップ2eのフランジ2gとを隅肉溶接することにより行われる。
【0025】
光受信ユニット2のZ方向の調芯(光軸と平行方向の調芯)は第2レンズホルダ9を第2Jスリーブ10の内孔10a内で摺動させることにより行う。光受信ユニット2のXY方向の調芯(光軸と直交する平面内での調芯)は、フランジ2gの端面2hと第2Jスリーブ10の端面10bとを接触させた状態で、光受信ユニット2を第2Jスリーブ10上で摺動させることにより行う。これが可能となるように第2Jスリーブ10の内面と光受信ユニット2のキャップ2eとの間に隙間が設けられている。
【0026】
光受信ユニット2では、第2Jスリーブ10に対する固定面であるフランジ2gの端面2hがPD2aの受光面2iと同一平面上にある。したがって、
図5(A)及び
図5(B)に示すように、第2Jスリーブ10と光受信ユニット2との隅肉溶接前後で、光受信ユニット2すなわちPD2aの光軸Pに対する搭載角度が変化しても、PD2aの受光面2iの位置ズレが非常に少ない。そのため、高速通信用に接合容量を減らすべく受光面2iを小さくしても確実に調芯することができる。
【0027】
図6は、本発明の効果を説明する図である。
摺動面であるフランジ2gの端面2hからPD2aの受光面2iまでの距離をL、溶接前後での上記端面2hの光軸方向の位置ズレをd、フランジ2gの外径をDとする。溶接時のPD2aの搭載角度のズレθ及びPD2aの位置ズレ(dx、dy)は、以下の式で表わされる。
【0028】
θ=tan−1(d/D)
dx=D/2*(1−cosθ)+L*sinθ
dy=D/2*sinθ+L*(1−cosθ)
【0029】
d<<Dであるので、sinθ〜θ、cosθ〜1である。したがって、(dx、dy)=(L*θ、D/2*θ)となる。
【0030】
上述の光モジュール1においては、フランジ2gの端面2hがPD2aの受光面2iと同一平面上にあり、上記距離Lが0であるため、隅肉溶接前後でのPD2aの受光面2iの位置ズレが非常に少なくなる。
【0031】
なお、ステム2cの外径<キャップ2eのフランジ2gの外径<第2Jスリーブ10の端面10bの外径の関係であることが好ましい。これはフランジ2gと上記端面10bとの溶接の際にレーザ溶接を用いており、上述の関係であれば、ステム2c、キャップ2eがレーザ光を遮らないからである。
【0032】
キャップ2eのフランジ2gの厚さは0.3mm以上が好ましい。通常、フランジの厚さは0.2mmであり、このように薄いとステムーキャップ間の抵抗溶接の際に変形し、フランジの端面とPDの受光面との間の距離が変化してしまうからである。さらに、キャップ2eのフランジ2gの幅は調芯代と隅肉溶接のため0.5mm以上が好ましい。
【0033】
図2及び
図3に戻り、光結合ユニット4およびハウジング5について説明する。光結合ユニット4は、光コネクタのフェルールを受納するスリーブ4aと、スリーブ4aの根元側すなわちハウジング5側にその先端半分が挿入されるスタブ4bと、スタブ4bの根元側を保持するブッシュ4c、これらスリーブ4a、スタブ4b、ブッシュ4cを覆うカバー4dを含む。
【0034】
スタブ4bは、その中心に結合ファイバ4eを保持しており、スタブ4bの先端と光コネクタのフェルールの先端がスリーブ4a内にて当接することで物理接触(PC:Physical Contact)を実現し、結合ファイバ4eと光コネクタの光ファイバ(以下、外部光ファイバ)とがフレネル反射を生ずる界面を形成することなく光結合する。結合ファイバ4eのハウジング5側の端部に対して光受信ユニット2、光送信ユニット3それぞれを光結合させることで、両ユニット2,3と外部ファイバとの光結合が実現する。また、スタブ4bの後述の第1Jスリーブ6b側の端面は、結合ファイバ4eの先端も含め、その光軸に対して所定の角度に加工されている。光送信ユニット3が出射した光が当該端面で反射され、再度光送信ユニット3に戻るのを防ぐためである。
【0035】
光結合ユニット4とハウジング5とは、第1Jスリーブ6bと第1レンズホルダ6aを介して固定される。第1Jスリーブ6bは、第1レンズホルダ6aを覆う。第1レンズホルダ6aは第1集光レンズ6cを保持しており、第1集光レンズ6cは、光送信ユニット3の出射光を、スタブ4bに保持された結合ファイバ4eの端面に集光する。第1レンズホルダ6aはハウジング5に隅肉溶接される。この場合、外部光ファイバから出力されるRx光が光受信ユニット2に到達し、そこで反射されて受光経路と全く同様の経路を通って再び外部光ファイバ中を伝搬する効果(ORL:Optical Return Loss)が懸念される場合がある。そのような場合には、第2レンズホルダ9aの中心軸と、WDMフィルタ8aで反射した受信光の中心軸をオフセットさせることで、上記ORL効果を低減することができる。
【0036】
第1Jスリーブ6bと第1レンズホルダ6aとは、両者が重なる部分を貫通溶接することで固定される。両者の重なり度によりZ方向の調芯を実施する。この場合、第1集光レンズ6cの焦点に結合ファイバ4eの端面が位置するとは限らない。焦点に位置させた場合、光送信ユニット3が出射するTx光について、結合ファイバ4eに最大効率で結合し、外部光ファイバに入射するTx光の強度が仕様値を超える場面も想定される。仕様値範囲内に出力光強度を設定するために、第1Jスリーブ6bと第1レンズホルダ6aとの重なり度を調整し、結合ファイバ4eの端面位置を第1集光レンズ6cの焦点位置からオフセットすることが行われる(デフォーカスチューニングともいう)。
【0037】
なお、XY方向の調芯は、第1Jスリーブ6bの光結合ユニット4側の端面上にて光結合ユニット4をスライドさせることで行う。XY方向の調芯後、第1Jスリーブ6bと光結合ユニット4とは隅肉溶接される。
【0038】
光送信ユニット3は、ハウジング5の光結合ユニット4とは反対側に固定される。光結合ユニット4の光軸と光送信ユニット3の光軸とは、第1レンズホルダ6aの上述のオフセット装着が無い場合には概ね一致する(一直線上にある)。光送信ユニット3にはその出射側には不図示のコリメートレンズが装着されており、光送信ユニット3から出射されたTx光はほぼコリメート光になる(完全な点光源ではないので準コリメート光である)。
【0039】
光モジュール1においてコリメート光学系を採用するのは、ハウジング5に搭載されているWDMフィルタ8aの波長分別特性を維持するためである。波長分別特性は、WDMフィルタ8aへの入射角度に依存する。Tx光とRx光の波長が近接している場合、WDMフィルタ8aへの両光の入射角度は概ね±0.5°以内としなければならない。
【0040】
光モジュール1では、WDMフィルタ8aはフィルタホルダ8に搭載され、フィルタホルダ8はハウジング本体7の一側面から挿入され該本体7に装着される。WDMフィルタ8aの光送信ユニット3、光受信ユニット2、光結合ユニット4それぞれの光軸に対する角度を精密に規定するために、ハウジング本体7とフィルタホルダ8との相対的な角度を以下のようにして規定している。すなわち、ハウジング本体7に形成された斜面7bとフィルタホルダ8に形成された斜面8bとを利用して上記相対的な角度を規定している。この構造では、斜面7bと斜面8bとの間には隙間は不要であり、隙間が必要となる嵌め合わせによる従前の方法に比べ、WDMフィルタ8aの搭載角度を精密に規定することができる。
【0041】
フィルタホルダ8の一端面に光受信ユニット2は固定される。光モジュール1では、上述のように、フィルタホルダ8とハウジング本体7との間でWDMフィルタ8aの角度を精密に決定する機構を採用している。そして、光受信ユニット2はフィルタホルダ8の一端面に固定されるので、WDMフィルタ8aの角度が入力光の光軸(光結合ユニット4の光軸)に対して45°の角度が正確に規定されれば、WDMフィルタ8aで反射された入力光は法線角度で(光受信ユニット2の光軸に平行に)、光受信ユニット2内のPD2aに入射する。
【0042】
なお、上述の光モジュール1の調芯手順は以下の通りである。
【0043】
(手順1)
フィルタホルダ8をハウジング本体7にセットし両者を固定する。フィルタホルダ8のハウジング本体7に対する回転角度を一意に決定するために、フィルタホルダ8とハウジング本体7とに斜面8b、7bが形成されている。フィルタホルダ8の斜面8bをハウジング本体7の斜面7bに落とし込むことで、フィルタホルダ8の回転角度が一意に決定される。その状態でフィルタホルダ8とハウジング本体7とを溶接固定する。
【0044】
(手順2)
ハウジング本体7へ光送信ユニット3を固定する。具体的には、光送信ユニット3をハウジング本体7の一端面(光結合ユニット4が取り付けられる面とは反対の面)に隅肉溶接で固定する。固定箇所は設計標準位置である。すなわち調芯は行わない。
【0045】
(手順3)
第1レンズホルダ6a及び第1Jスリーブ6bを介して光結合ユニット4をハウジング本体7に固定する。具体的には、まず、ハウジング本体7の光送信ユニット3とは反対側の面における所定位置に第1レンズホルダ6aを搭載する。そして、第1レンズホルダ6aと連動するモニタファイバ(不図示)を結合ファイバ4eに相当する位置にセットし、光送信ユニット3に搭載されたLDが出射するTx光を第1レンズ6cによりモニタファイバを介して検知する。検知強度が最大となる位置で第1レンズホルダ6aをハウジング本体7に隅肉溶接により固定する。
【0046】
次いで、磁力により第1Jスリーブ6bを第1レンズホルダ6aに対して仮固定しておき、第1Jスリーブ6b端面上にて光結合ユニット4をスライドさせて最高光結合位置を見出し、当該位置で第1Jスリーブ6bと光結合ユニット4を隅肉溶接で固定する。そして、第1Jスリーブ6bと第1レンズホルダ6aの重なり代を調整する。この時、結合ファイバ4eの端面への集光度が最大になる位置ではなく、結合ファイバ4eにPC接触して外部に牽き出される外部ファイバからの出力光強度が所定値となる位置で、両者の重なり度を調整する。第1集光レンズ6cの焦点が結合ファイバ4eの終端に一致した場合には、外部に取り出される光強度が所定値を超えるときがある。このとき、レーザ光に対する安全基準を上回る出力になり得る。ゆえに、敢えて焦点を端面上ではなくオフセットさせ、この安全基準を満足するようにしている。所定値の得られる両者の重なり度で第1Jスリーブ6bと第1レンズホルダ6aとを貫通溶接する。その後、上記貫通溶接を終了した光結合ユニット4を、第1Jスリーブ6bの端面上でスライドさせて光結合ユニット4と第1集光レンズ6cとの間の最大光結合効率を与える位置を見出す。当該位置で光結合ユニット4を第1Jスリーブ6bに隅肉溶接する。
【0047】
(手順4)
第2レンズホルダ9をフィルタホルダ8の端面に隅肉溶接により固定する。この時、調芯は行わず、フィルタホルダ8の所定の位置に第2レンズホルダ9を溶接する。
【0048】
(手順5)
光受信ユニット2と第2Jスリーブ10とを一体化し、第2レンズホルダ9と第2Jスリーブ10との重ね代を調整する。外部光ファイバを介して試験光を光受信ユニット2に照射し、光受信ユニット2のPD2aでその強度を観測しつつ、両者の重なり代を調整することでZ調芯を行う。フィルタホルダ8の回転角度が一意に決定されていることから、光受信ユニット2のXY調芯を行わずとも、光受信ユニット2内のPD2aには試験光が入射する(少なくともZ調芯を可能にする程度の強度の光をPD2aは観測することができる)。観測される試験光の光強度が最大となる位置において、第2Jスリーブ10と第2レンズホルダ9とを貫通溶接する。
【0049】
(手順6)
次いで、光受信ユニット2と第2Jスリーブ10との間のXY調芯を実施する。光受信ユニット2の第2Jスリーブ10への挿入部分は、第2Jスリーブ10の内孔10aの内径より小さく設計されている。すなわち、光受信ユニット2の上記挿入部分と第2Jスリーブ10の内壁との間には隙間が生じている。この隙間の大きさの範囲内で光受信ユニット2を第2Jスリーブ10に対してスライドさせ、観測される試験光の光強度が最大となる位置を探索する。そして、上記最大となる位置において、光受信ユニット2と第2Jスリーブ10とを隅肉溶接により固定する。
【0050】
以上により、光モジュール1が完成する。
【0051】
手順6の調芯の際、光受信ユニット2は第2Jスリーブ10に対して回転させない。光受信ユニット2のステム2cにはリードピン2bが固定されている。リードピン2bは光モジュール1が搭載される回路基板に固定されるところ、第2Jスリーブ10すなわちステム2cが回転した場合には、リードピン2bの上記回路基板に対する位置が変動してしまい好ましくない。
【0052】
一般的に光受信ユニットでは、キャップに平板の窓材ではなくレンズを有するものもある。その場合、傾いた入射光の光軸に対しては、ステムを(キャップに装着されているレンズの)光軸に対して回転させることで、ステム上のPDを光軸に整合させることが行われる。しかし、本光モジュール1では、上述のようにステム2cの回転が制限されているため、傾いた光軸に対しては、第1Jスリーブ10の内壁と光受信ユニット2のキャップ2eとの間の隙間を広く設定することによりXY調芯範囲を広くして対応する。
【0053】
この場合、第1Jスリーブ10と光受信ユニット2との隅肉溶接に伴い、光受信ユニット2が第1Jスリーブ10に対して溶接後に傾きを生ずることがある。隅肉溶接は隅部を一旦局所的に溶かした後に固化させる方法であるので、融解−固化の間に第2Jスリーブ10あるいは光受信ユニット2のフランジ2gの外周形状が不均一になる場合がある。この場合、第2Jスリーブ10の端面10bに対して調芯した光受信ユニット2が、第2Jスリーブ10に対して傾斜して取り付けられる可能性が増す。この場合であっても、光モジュール1ではPD2aの受光面2iとフランジ2gの端面2hとが一致されているので、光受信ユニット2に入射した光がPD2aを外すことがない。
【0054】
信号速度が10Gbpsを超えるような極めて高速な動作領域では、PDの高速応答を担保するために、その受光面を、受光効率を大きく低下させない程度に小さく(狭く)する必要がある。その場合、光受信ユニットの回転が規制されている条件下では、XY調芯代を大きくする必要がある。本光モジュールでは、XY調芯代を大きく設定することにより生ずる溶接時の傾斜に対しては、溶接面をPD受光面の延長に採ることにより、微傾斜が生じたとしてもPD受光面に適切に入力光が光結合する系とした。