【解決手段】光ファイバ100,200の融着接続方法は、一対の可動ステージ40A,40B上にそれぞれ設置された光ファイバ保持部30,35に光ファイバ100,200を保持するステップと、一対の可動ステージ40A,40Bを互いに近づけて光ファイバ100,200の端面を突き合わせるステップと、突き合わされた光ファイバ100,200を融着接続して融着接続部Sを形成するステップと、一対の可動ステージ40A,40Bが互いに離れるように移動させることで融着接続部Sに対して張力を付与するプルーフテストを実施するステップと、プルーフテストの完了後に、一対の可動ステージ40A,40B同士を所定距離だけ近づけるステップと、を備える。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような融着接続方法においては、プルーフテスト時に光ファイバに付与された
張力が光ファイバにかかったままであるため、融着接続が完了した光ファイバを融着接続装置から取り外すべく光ファイバ保持部の蓋部を開放すると、光ファイバが跳ね上がってしまい、融着接続部が断線する可能性がある。
【0005】
本発明は、光ファイバを融着接続装置から取り外す際に融着接続部が断線することを防止可能な光ファイバの融着接続方法および融着接続装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の光ファイバの融着接続方法は、
一対の可動ステージ上にそれぞれ設置された光ファイバ保持部に光ファイバを保持するステップと、
前記一対の可動ステージを互いに近づけて前記光ファイバの端面を突き合わせるステップと、
突き合わされた前記光ファイバを融着接続して融着接続部を形成するステップと、
前記一対の可動ステージが互いに離れるように移動させることで前記融着接続部に対して張力を付与するプルーフテストを実施するステップと、
前記プルーフテストの完了後に、前記一対の可動ステージ同士を所定距離だけ近づけるステップと、を備える。
【0007】
本発明の光ファイバの融着接続方法は、
一対の可動ステージ上にそれぞれ設置された光ファイバ保持部に光ファイバを保持するステップと、
前記一対の可動ステージが備える送り部材を原点位置から突き合わせ位置まで移動させることで、前記一対の可動ステージを互いに近づけて、前記光ファイバ同士を突き合わせるステップと、
突き合わされた前記光ファイバを融着接続して融着接続部を形成するステップと、
前記送り部材を前記突き合わせ位置から前記原点位置側の退避位置に移動させることで、前記一対の可動ステージを互いに離れるように移動させて、前記融着接続部に対して張力を付与するプルーフテストを実施するステップと、
を備え、
前記退避位置は、前記原点位置よりも前記突き合わせ位置側に寄った位置である。
【0008】
本発明の融着接続装置は、上記記載の光ファイバの融着接続方法により前記光ファイバ同士を融着接続する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、融着接続された光ファイバを融着接続装置から取り外す際に融着接続部が断線することを防止できる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<本発明の実施形態の概要>
最初に本発明の実施形態の概要を説明する。
本実施形態の一例に係る光ファイバの融着接続方法は、
(1)一対の可動ステージ上にそれぞれ設置された光ファイバ保持部に光ファイバを保持するステップと、
前記一対の可動ステージを互いに近づけて前記光ファイバの端面を突き合わせるステップと、
突き合わされた前記光ファイバを融着接続して融着接続部を形成するステップと、
前記一対の可動ステージが互いに離れるように移動させることで前記融着接続部に対して張力を付与するプルーフテストを実施するステップと、
前記プルーフテストの完了後に、前記一対の可動ステージ同士を所定距離だけ近づけるステップと、を備える。
【0012】
また、本実施形態の別の一例に係る光ファイバの融着接続方法は、
(2)一対の可動ステージ上にそれぞれ設置された光ファイバ保持部に光ファイバを保持するステップと、
前記一対の可動ステージが備える送り部材を原点位置から突き合わせ位置まで移動させることで、前記一対の可動ステージを互いに近づけて、前記光ファイバ同士を突き合わせるステップと、
突き合わされた前記光ファイバを融着接続して融着接続部を形成するステップと、
前記送り部材を前記突き合わせ位置から前記原点位置側の退避位置に移動させることで、前記一対の可動ステージを互いに離れるように移動させて、前記融着接続部に対して張力を付与するプルーフテストを実施するステップと、
を備え、
前記退避位置は、前記原点位置よりも前記突き合わせ位置側に寄った位置である。
【0013】
これらの構成によれば、光ファイバを融着接続装置から取り外す際に融着接続部が断線することを防止可能な光ファイバの融着接続方法を提供することができる。
【0014】
本実施形態に係る融着接続装置は、(1)または(2)に記載の光ファイバの融着接続方法により前記光ファイバ同士を融着接続する。
この構成によれば、光ファイバを取り外す際に融着接続部が断線することを防止可能な光ファイバの融着接続装置を提供することができる。
【0015】
<本発明の実施形態の詳細>
以下、本発明に係る光ファイバの融着接続方法および融着接続装置の実施の形態の例を、図面を参照して説明する。
【0016】
図1は、本実施形態に係る融着接続装置により融着接続される光ファイバコード100とスタブ200とを示す斜視図である。
本実施形態に係る融着接続方法は、例えば光ファイバ設備の工事が行われる現地で、光ファイバコード100のガラスファイバ110とスタブ200のガラスファイバ210とを融着して接続する際に用いられる。本実施形態に係るスタブ200は、例えば、不図示の光コネクタ(融着型現地組立単心コネクタ)内に収容される部材である。
図1に示すように、スタブ200は、フェルール201と、このフェルール201の中心に形成された挿入孔(図示省略)に挿入された短尺光ファイバ202とを備えている。フェルール201と、そのフェルール201から突出された短尺光ファイバ202との間には金属フランジ203が設けられている。短尺光ファイバ202は、ガラスファイバ210を有している。スタブ200のガラスファイバ210に、光ファイバコード100の外被から露出されたガラスファイバ110が融着接続される。ガラスファイバ210とガラスファイバ110とが融着接続される箇所を融着接続部Sとする。光ファイバコード100は、ガラスファイバ110を紫外線硬化性樹脂からなる外被で覆った外径0.25mmの光ファイバ心線の外周をさらに樹脂で被覆して外径0.9mmとしたコードである。なお、光ファイバ心線を用い、この光ファイバ心線の端部で露出させたガラスファイバとスタブ200のガラスファイバ210とを融着接続する場合もある。
【0017】
次に、本実施形態に係る光ファイバの融着接続装置について説明する。
図2および
図3は、本実施形態に係る融着接続装置の一実施形態の外観を示す斜視図である。
融着接続装置1は、例えば、光ファイバ設備の工事が行われる現地で、光ファイバコード100のガラスファイバ110とスタブ200のガラスファイバ210とを融着接続し、さらにその融着接続部Sを補強する装置である。
図2および
図3に示されるように、融着接続装置1は、箱状の筐体2を備えている。この筐体2の上部には、光ファイバコード100のガラスファイバ110とスタブ200のガラスファイバ210とを融着するための融着処理部3と、融着処理部3で融着接続された融着接続部Sに被せられたファイバ補強スリーブ(図示せず)を加熱収縮させる補強装置4とが設けられている。さらに、融着接続装置1は、融着処理部3への風の進入を防止するための風防カバー5を備えている。
【0018】
また、融着接続装置1は、筐体2の内部に配置されたカメラ(図示せず)によって撮像されたガラスファイバ110,210の融着接続状況を表示するモニタ6を備えている。モニタ6は、例えば、CCD等の撮像素子を備えた顕微鏡で撮影されたガラスファイバ110,210の融着箇所の映像を映し出す。作業者は、モニタ6の映像を見ながら融着作業を行うことができる。また、このモニタ6は、融着処理部3および補強装置4を作動させる操作部を兼ねており、モニタ6に触れることで各種の操作が可能とされている。
【0019】
融着処理部3は、光ファイバコード100を保持固定する光ファイバホルダ30と、スタブ200を保持するスタブホルダ35と、を備えている。さらに、融着処理部3は、光ファイバホルダ30とスタブホルダ35との間に配置され、光ファイバホルダ30とスタブホルダ35とにそれぞれ保持されたガラスファイバ110,210の先端部を位置決めする一対のファイバ位置決め部32と、ファイバ位置決め部32同士の間に配置され、アーク放電によってガラスファイバ110,210の先端同士を融着するための一対の放電電極33とを有している。一対の放電電極33が対向する位置を放電部20とする。また、光ファイバホルダ30およびスタブホルダ35は、一対の可動ステージ40A,40Bにそれぞれ支持されており、一対の可動ステージ40A,40Bによって水平方向へ移動されてガラスファイバ110,210の位置決めが可能とされている。
【0020】
風防カバー5は、融着処理部3を開閉自在に覆うように筐体2に連結されている。風防カバー5の両側面には、融着処理部3へ(すなわち、光ファイバホルダ30とスタブホルダ35とへ)光ファイバコード100とスタブ200とを導入するための導入口8が形成されている。導入口8のそれぞれは、略矩形状の切り欠きとなっている。
【0021】
図4は、スタブホルダ35の一例を示す斜視図である。また、
図5は、スタブホルダ35にスタブ200が収容された状態を示す斜視図である。
図4および
図5に示すように、スタブホルダ35は、ホルダ本体36と保持蓋37とを備え、ホルダ本体36と保持蓋37との間にスタブ200を把持固定可能である。スタブホルダ35は、保持蓋37のホルダ本体36に対する開閉によって、スタブ200の把持固定と、把持解除とを切り替え可能である。ホルダ本体36の一端部には、露出されたガラスファイバ210を収容するガラス収容部36aが突出するように設けられている。ガラス収容部36aは、スタブ200のフェルール201を収容するフェルール収容部36bと連続して設けられている。フェルール収容部36bは、ガラス収容部36aの内部空間よりも拡径した収容空間を有している。すなわち、ホルダ本体36の収容空間は、ガラス収容部36aとフェルール収容部36bとの間に、フェルール201の端部に設けられた金属フランジ203の形状と一致するような段部が形成されている。
【0022】
図6(a),(b)は、光ファイバホルダ30とスタブホルダ35とをそれぞれ支持する一対の可動ステージ40A,40Bの構造を示す概略図である。
図6(a),(b)に示すように、一対の可動ステージ40A,40Bは、光ファイバホルダ30およびスタブホルダ35にそれぞれ保持される光ファイバコード100およびスタブ200の軸方向において、互いに離隔して設けられている。一対の可動ステージ40A,40Bは、互いに独立して移動可能である。一対の可動ステージ40A,40Bは、それぞれ、ステージ本体41と、送りねじ(送り部材)45と、スプリング46とを備えている。
【0023】
ステージ本体41は、光ファイバホルダ30またはスタブホルダ35がその上面に設置されるホルダ設置部42と、ホルダ設置部42の放電部20側(前方側)および放電部20とは反対側(後方側)の側面からそれぞれ下方に突出する前壁部43と後壁部44とを備えている。
【0024】
送りねじ45は、ステージ本体41の下方に設けられており、光ファイバホルダ30およびスタブホルダ35の軸方向に沿って移動可能である。具体的には、送りねじ45は、不図示のモータにより駆動されて、ステージ本体41を押圧して、可動ステージ40A,40Bを放電部20から離隔した位置から放電部20に向かって移動(押動)させる。
図6(b)に示すように、送りねじ45は、ステージ本体41の前壁部43を放電部20とは反対の側から押圧して、可動ステージ40A,40Bを放電部20に向かって互いに近づけるように前進させることができる。
【0025】
スプリング46は、送りねじ45によって押動されるステージ本体41を弾性付勢して、可動ステージ40A,40Bを放電部20から離隔させる方向(後退方向)へ移動させるための部材である。スプリング46は、ステージ本体41の後端部下側に突設されている後壁部44と、スプリング受け部材47との間に介装されている。スプリング受け部材47は、略L字状の部材であって、一端にスプリング46が連結されるとともに、一端部側から下方に折り曲げられた他端部には送りねじ45が挿通されて固定されている。スプリング46は、具体的には圧縮コイルばねである。
図6(b)に示すように、送りねじ45が、ステージ本体41の前壁部43を押圧して、可動ステージ40A,40Bを放電部20に向かって前進させると、スプリング46は圧縮される。一方、
図6(c)に示すように、送りねじ45が、放電部20から離隔させる方向に移動されると、スプリング46の圧縮が解放されることでステージ本体41を弾性付勢して、可動ステージ40A,40Bを放電部20から離隔させる方向(後退方向)へ移動させる。
【0026】
次に、光ファイバコード100のガラスファイバ110とスタブ200のガラスファイバ210とを融着接続し、その後、その融着接続部Sを補強する融着接続方法について
図7および
図8を参照して説明する。
(ファイバの装着)
まず、スタブ200と接続される光ファイバコード100に、熱収縮性チューブ(図示省略)を通しておく(
図7のステップS1)。そして、光ファイバホルダ30に光ファイバコード100を保持させるとともに、スタブホルダ35にスタブ200を保持させる(ステップS2)。次に、融着処理部3を覆う風防カバー5を開け(ステップS3)、光ファイバホルダ30およびスタブホルダ35を一対の可動ステージ40A,40Bにそれぞれ装着する(ステップS4)。なお、可動ステージ40A,40Bにあらかじめ設けられた光ファイバホルダ30およびスタブホルダ35に光ファイバコード100とスタブ200とをそれぞれ直接保持させる構成としてもよい。光ファイバホルダ30およびスタブホルダ35を一対の可動ステージ40A,40Bにそれぞれ装着すると、光ファイバコード100のガラスファイバ110とスタブ200のガラスファイバ210とが、融着処理部3の融着位置において対向して配置される。その後、風防カバー5を閉じる(ステップS5)。
【0027】
(融着接続)
次に、この状態で、融着接続装置1のモニタ6で可動ステージ40A,40Bを操作して、ガラスファイバ110,210の調心および軸合わせを行う。具体的には、モータにより駆動された送りねじ45により、可動ステージ40A,40Bを押圧して、可動ステージ40A,40Bを放電部20から離隔した位置から放電部20に向かって移動させる。これにより、ガラスファイバ110,210同士が突き合わされる(ステップS6)。
ガラスファイバ110,210の調心および軸合わせが完了すると、放電により、ガラスファイバ110,210の端面同士(突合せ箇所)を融着接続させ、融着接続部Sを形成する(ステップS7)。
【0028】
(プルーフテスト)
図8は、融着接続装置1においてプルーフテストを実施した時の、ガラスファイバ110,210の融着接続部Sに印加される張力の変化を示したグラフである。
融着接続部Sに気泡や傷などがある場合、融着接続部Sの引張り強度が著しく低下し、後に断線等を起こす場合がある。このため、本実施形態においては、ガラスファイバ110,210の融着接続後に光ファイバコード100およびスタブ200を保持したままで光ファイバホルダ30およびスタブホルダ35を後退させ、融着接続部Sに引張力を印加して、ガラスファイバ110,210の不良接続部を予め破断させるプルーフテストを行う。具体的には、ガラスファイバ110,210を融着接続処理が完了したら、風防カバー5を開け(ステップS8)、プルーフテストを開始する(ステップS9)。プルーフテストが開始されると、送りねじ45を放電部から離隔させる方向に移動させる。このとき、送りねじ45は
図6(c)に示す原点位置にまで戻される。これにより、スプリング46の圧縮が解放されて、スプリング46が可動ステージ22を弾性付勢する。スプリング46によりステージ本体41を付勢することで一対の可動ステージ40A,40Bを放電部20から離隔させる方向(後退方向)へ移動させる(ステップS10)。このように、可動ステージ40A,40Bを後退させて、ガラスファイバ110,210を両側から引っ張ることで、ガラスファイバ110,210の融着接続部Sに、例えば200[gf]程度の引張力を印加する(
図8の時間t1)。融着接続部Sに張力を付与した状態で所定時間保持した後に、プルーフテストを完了する(ステップS11)。プルーフテストが完了した時点では、融着接続部Sには張力がかかったままの状態となっている。なお、本例においては、風防カバー5を開けてからプルーフテストを開始しているが、手動設定により、風防カバー5が閉じた状態でモニタ等を介してプルーフテストのスタートスイッチを押して、プルーフテストを開始し、プルーフテストの完了後に風防カバー5を開けるようにしてもよい。
【0029】
プルーフテストが完了すると(
図8の時間t2)、送りねじ45を放電部20に向かって移動させてステージ本体41をわずかに押圧することで、一対の可動ステージ40A,40B同士を所定距離だけ近づける(ステップS12)。これにより、融着接続部Sに付与される張力をわずかに緩める。このとき
図8に示されるように、融着接続部Sに付与される張力は、プルーフテスト時に融着接続部Sに付与された張力から僅かに小さくなる。
【0030】
(光ファイバの取り外し)
一対の可動ステージ40A,40B同士を所定距離だけ近づけた状態で、光ファイバホルダ30の蓋部およびスタブホルダ35の保持蓋37を開ける。光ファイバホルダ30の蓋部を開けると、光ファイバホルダ30での光ファイバコード100の保持が解除される。また、スタブホルダ35の保持蓋37を開けると(
図8の時間t3)、スタブホルダ35でのスタブ200の保持が解除される。これにより、
図8に示すように、融着接続部Sには張力がかかっていない状態となる。その後、光ファイバホルダ30から光ファイバコード100を取り外すとともに、スタブホルダ35からスタブ200を取り外す(ステップS13)。
【0031】
(補強処理)
プルーフテストが完了したガラスファイバ110,210の融着接続部Sに、補強部材(図示省略)を沿わせて、さらに熱収縮性チューブ(図示省略)を被せる。その後、熱収縮性チューブを被せた融着接続部Sを補強装置4の内部に配置させ、補強装置4が備えるヒータによって熱収縮性チューブを熱収縮させる。これにより、ガラスファイバ110,210の融着接続部Sは、補強部材が沿われて、密着した熱収縮性チューブによって覆われて一体化されて補強される(ステップS14)。
【0032】
ところで、光ファイバコード100のガラスファイバ110とスタブ200のガラスファイバ210との融着接続が完了した後に、スタブ200をスタブホルダ35から取り外す際に、プルーフテストによる張力が光ファイバコード100およびスタブ200に付与されたままであると、スタブホルダ35の保持蓋37を開けたときにスタブ200のフェルール201の端部(金属フランジ203)がスタブホルダ35のガラス収容部36aとフェルール収容部36bとの間の段部に引っ掛かり、スタブ200が意図せずに跳ね上がってしまう場合がある。従来は、このスタブ200の跳ね上がりにより、融着接続部Sが断線してしまうことがあった。
一方、本実施形態においては、上記説明したように、一対の可動ステージ40A,40Bを互いに近づけて光ファイバコード100のガラスファイバ110とスタブ200のガラスファイバ210とを融着接続した後に、一対の可動ステージ40A,40B同士が離れるように移動させることで融着接続部Sに対して張力を付与するプルーフテストを実施し、プルーフテストの完了後に、一対の可動ステージ40A,40B同士を所定距離だけ近づける構成としている。この構成によれば、光ファイバホルダ30の蓋部31およびスタブホルダ35の保持蓋37を開放する前に、融着接続部Sに付与された張力を僅かに減らしておくことができる。すなわち、
図8に示すように、融着接続部Sに付与された張力の解放を段階的に行うことができる。そのため、スタブホルダ35の保持蓋37を開けてスタブ200を取り外す際に、スタブ200が跳ね上がることがなく、融着接続部Sの断線や損傷を防止することができる。
【0033】
上記実施形態においては、プルーフテストの開始時に、送りねじ45を
図6(c)に示す原点位置まで戻して、一対の可動ステージ40A,40Bを放電部20から離隔させる方向へ移動させる構成としていたが、この例に限られない。
(変形例)
図9は、本変形例においてプルーフテストを実施した時の、送りねじ45の移動位置の変化を示したグラフである。
この変形例においても、上記の実施形態と同様に、融着接続処理が開始されると、送りねじ45を
図6(a)に示す原点位置から
図6(b)に示す突き合わせ位置に移動させる(
図9の時間t1)。これにより、一対の可動ステージ40A,40B同士を互いに近づける。そして、ガラスファイバ110,210同士を突き合わせてから、放電により、ガラスファイバ110,210の端面を融着接続させ、融着接続部Sを形成する。
次にプルーフテストを開始する。本変形例においては、プルーフテストの開始時に、送りねじ45を
図6(b)の突き合わせ位置から退避位置に移動させる(
図9の時間t2)。この退避位置は、
図6(c)の原点位置よりも突き合わせ位置側に寄った位置である。これにより、スプリング46の圧縮が解除されて可動ステージ40A,40Bを弾性付勢し、一対の可動ステージ40A,40Bを放電部20から離隔させる方向へ移動させ、融着接続部Sに対して張力を付与する。融着接続部Sに張力を付与した状態で所定時間保持した後に、プルーフテストを完了する。プルーフテストが完了した後も、送りねじ45は退避位置に配置されたままであり、融着接続部Sには張力がかかったままの状態となっている。その後、光ファイバホルダ30から光ファイバコード100を取り外すとともに、スタブホルダ35からスタブ200を取り外す。最後に、融着接続部Sの補強処理がなされる。
【0034】
本変形例においては、プルーフテスト開始時に、送りねじ45を突き合わせ位置から退避位置に移動させることで、一対の可動ステージ40A,40Bを互いに離反するように後退させて、融着接続部Sに対して張力を付与する構成となっている。この構成によれば、送りねじ45が原点位置よりも突き合わせ位置側に寄った退避位置にまで後退させた状態でプルーフテストが行われるため、プルーフテスト時に融着接続部Sに付与される張力を従来よりも抑えることができる。そのため、プルーフテスト完了後に、スタブホルダ35の保持蓋37を開けてスタブ200を取り外す際にスタブ200が跳ね上がることがなく、融着接続部Sの断線や損傷を防止することができる。
【0035】
(変形例の評価)
本変形例を評価するため、プルーフテスト開始時に一対の可動ステージを離隔する方向に移動させる量(ステージ後退量)を変化させて、プルーフテストを実施し、プルーフテスト完了後にスタブをスタブホルダから取り外す際のスタブの跳ね上がり発生率を評価した。
まず、比較例として、プルーフテスト開始時に可動ステージを原点位置まで戻した場合について評価した。比較例では、突合せ位置からのステージ後退量を原点位置である1,000μmに設定して、プルーフテストを実施した。その結果、比較例においては、プルーフテスト完了後にスタブをスタブホルダから取り外す際のスタブの跳ね上がり発生率は100%であった。
一方、実施例として、プルーフテスト開始時に可動ステージを原点位置よりも突合せ位置側に寄った退避位置に戻した場合について評価した。実施例では、突合せ位置からのステージ後退量を原点位置よりも手前側の400μmに設定して、プルーフテストを実施した。その結果、実施例においては、スタブの跳ね上がり発生率は0%であり、融着接続部の断線率も0%であった。
以上から、プルーフテスト開始時に送りねじを突き合わせ位置から退避位置(原点位置よりも突き合わせ位置側に寄った位置)に移動させて、ステージ後退量を従来よりも小さくすることで、プルーフテスト完了後に、スタブホルダからスタブを取り外す際にスタブが跳ね上がることがなく、融着接続部の断線や損傷を防止できることが確認された。
【0036】
以上、本発明を詳細にまた特定の実施態様を参照して説明したが、本発明の精神と範囲を逸脱することなく様々な変更や修正を加えることができることは当業者にとって明らかである。また、上記説明した構成部材の数、位置、形状等は上記実施の形態に限定されず、本発明を実施する上で好適な数、位置、形状等に変更することができる。