【解決手段】光ファイバ110の融着接続方法は、一対の可動ステージ20A,20B上にそれぞれ配置された光ファイバ保持部30A,30Bに光ファイバ110を保持し、風防カバーにより光ファイバ保持部30A,30Bを覆うステップと、一対の可動ステージ20A,20Bを互いに近づけて光ファイバ110の端面を突き合わせるステップと、突き合わされた光ファイバ110同士を融着接続するステップと、風防カバーを開ける前に、光ファイバ保持部30A,30Bと風防カバーの光ファイバ110と接触する部分との間において、光ファイバ110に付与される張力を緩めるステップと、を備える。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような光ファイバの融着接続機においては、風防カバーを閉じた状態で上下の閉塞用弾性体の間で光ファイバが保持固定されるため、光ファイバがその軸方向に沿って移動することを阻害するような負荷が光ファイバにかかっている。そのため、光ファイバ同士の融着接続処理が完了した後に、風防カバーを開けると、光ファイバにかかっていた負荷が急に解放され、光ファイバがその軸方向に意図せずに移動して、光ファイバ同士の融着接続部が断線してしまう場合がある。
【0005】
本発明は、光ファイバの融着接続後に風防カバーを開けた際に、光ファイバの融着接続部が断線することを防止可能な光ファイバの融着接続方法および融着接続装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の光ファイバの融着接続方法は、
一対の可動ステージ上にそれぞれ配置された光ファイバ保持部に光ファイバを保持し、風防カバーにより前記光ファイバ保持部を覆うステップと、
前記一対の可動ステージを互いに近づけて前記光ファイバの端面を突き合わせるステップと、
突き合わされた前記光ファイバ同士を融着接続するステップと、
前記風防カバーを開ける前に、前記光ファイバ保持部と前記風防カバーの前記光ファイバと接触する部分との間において、前記光ファイバに付与される張力を緩めるステップと、を備える。
【0007】
本発明の光ファイバの融着接続方法は、
一対の可動ステージ上にそれぞれ配置された光ファイバ保持部に光ファイバを保持し、風防カバーにより前記光ファイバ保持部を覆うステップと、
前記一対の可動ステージを互いに近づけて前記光ファイバの端面を突き合わせるステップと、
突き合わされた前記光ファイバ同士を融着接続するステップと、
前記風防カバーを開ける前に、前記一対の可動ステージを互いに離れるように移動させるステップと、を備える。
【0008】
本発明の光ファイバの融着接続装置は、
上記の光ファイバの融着接続方法により前記光ファイバ同士を融着接続する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、光ファイバの融着接続後に風防カバーを開けた際に、光ファイバの融着接続部が断線することを防止可能な光ファイバの融着接続方法および融着接続装置を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<本発明の実施形態の概要>
最初に本発明の実施形態の概要を説明する。
本実施形態の一例に係る光ファイバの融着接続方法は、
(1)一対の可動ステージ上にそれぞれ配置された光ファイバ保持部に光ファイバを保持し、風防カバーにより前記光ファイバ保持部を覆うステップと、
前記一対の可動ステージを互いに近づけて前記光ファイバの端面を突き合わせるステップと、
突き合わされた前記光ファイバ同士を融着接続するステップと、
前記風防カバーを開ける前に、前記光ファイバ保持部と前記風防カバーの前記光ファイバと接触する部分との間において、前記光ファイバに付与される張力を緩めるステップと、を備える。
【0012】
また、本実施形態の別の一例に係る光ファイバの融着接続方法は、
(2)一対の可動ステージ上にそれぞれ配置された光ファイバ保持部に光ファイバを保持し、風防カバーにより前記光ファイバ保持部を覆うステップと、
前記一対の可動ステージを互いに近づけて前記光ファイバの端面を突き合わせるステップと、
突き合わされた前記光ファイバ同士を融着接続するステップと、
前記風防カバーを開ける前に、前記一対の可動ステージを互いに離れるように移動させるステップと、を備える。
【0013】
これらの構成によれば、光ファイバの融着接続後に風防カバーを開けた際に、光ファイバの融着接続部が断線することを防止可能な光ファイバの融着接続方法を提供することができる。
【0014】
(3)前記一対の可動ステージを互いに離れるように移動させるステップの後に、前記風防カバーを開けるステップと、
前記風防カバーを開けた後に、前記一対の可動ステージ同士がさらに離れるように前記一対の可動ステージを移動させて、前記光ファイバの融着接続部のプルーフテストを実施するステップと、をさらに備えることが好ましい。
プルーフテスト実施前に融着接続部が断線してしまうことを確実に防止することができる。
【0015】
本実施形態の一例に係る光ファイバの融着接続装置は、
(4)上記の(1)から(3)のいずれかに記載の光ファイバの融着接続方法により前記光ファイバ同士を融着接続する。
この構成によれば、光ファイバの融着接続後に風防カバーを開けた際に、光ファイバの融着接続部が断線することを防止可能な光ファイバの融着接続装置を提供することができる。
【0016】
<本発明の実施形態の詳細>
以下、本発明に係る光ファイバの融着接続方法および融着接続装置の実施の形態の例を、図面を参照して説明する。
【0017】
図1および
図2は、本実施形態に係る光ファイバ融着接続装置の一実施形態の外観を示す斜視図である。
融着接続装置1は、例えば、光ファイバ設備の工事が行われる現地で光ファイバ同士を融着接続する装置である。特に、本実施形態は、ドロップケーブル100に内蔵される光ファイバ110同士を融着接続する場合に好適である。
【0018】
図1に示されるように、融着接続装置1は、箱状の筐体2を備えている。筐体2の上部には、ドロップケーブル100から露出された光ファイバ110同士を融着するための融着処理部3が設けられている。さらに、融着接続装置1は、融着処理部3への風の進入を防止するための風防カバー4を備えている。また、融着接続装置1は、筐体2の内部に配置されたカメラ(図示省略)によって撮像された光ファイバ110同士の融着接続状況を表示するモニタ(図示省略)を備えている。作業者は、モニタに映し出された光ファイバ110の融着箇所の映像を見ながらモニタを操作して融着作業を行うことができる。
【0019】
融着処理部3は、一対の放電電極10と、一対の放電電極10間において光ファイバ110の接続端面を対向させてドロップケーブル100を保持する一対の可動ステージ20A,20Bと、を備えている。一対のステージ20A,20B上にはドロップケーブル100を保持固定するホルダ30A,30B(光ファイバ保持部の一例)がそれぞれ設けられている。一対の放電電極10および可動ステージ20A,20Bを含む融着処理部3は、開閉自在の風防カバー4により覆うことができるように構成されている。
【0020】
一対の放電電極10は、それぞれ先端が尖った針状の電極であり、間隔をおいて互いに対向配置される。光ファイバ110の融着接続時には、放電電極10間で放電させ、放電熱で光ファイバ110の端面を溶融して接続する。一対の放電電極10が対向する位置を放電部15とする。
【0021】
一対の可動ステージ20A,20Bは、ホルダ30A,30Bを介して、一対のドロップケーブル100をそれぞれ保持する。これにより、一対の放電電極10の対向方向と直交する方向に光ファイバ110の端面同士が対向して配置される。一対の可動ステージ20A,20Bは、光ファイバ110の融着接続時に、両光ファイバ110の端面を近づけるように水平方向に移動可能である。一対の可動ステージ20A,20Bと放電電極10との間にはV溝支持部60が形成されている。V溝支持部60の表面にはV溝が形成され、当該V溝にホルダ30A,30Bから突出された光ファイバ110の先端部が配置される。
【0022】
ホルダ30A,30Bは、それぞれ、基部31と蓋部32とを備え、各可動ステージ20A,20Bに着脱可能に構成されている。ホルダ30A,30Bは、基部31と蓋部32との間にドロップケーブル100を挟み込んで保持固定する。
【0023】
風防カバー4は、融着処理部3を開閉自在に覆うように筐体2に連結されている。風防カバー4の裏側(融着処理部3と対向する側)には、風防カバー4を閉じた際に、ドロップケーブル100をV溝支持部60へ押さえつけるクランプ41が設けられている。風防カバー4の両側面には、融着処理部3へ(すなわちホルダ30A,30Bのそれぞれへ)ドロップケーブル100を導入するための導入口42が形成されている。導入口42のそれぞれは、略矩形状の切り欠きとなっている。風防カバー4の裏面側には、導入口42の少なくとも上部を塞ぐように閉塞用弾性体43が設けられている。閉塞用弾性体43は、例えば、スポンジ材やゴム材から構成されている。
【0024】
一方で、筐体2には、風防カバー4を閉じた状態において閉塞用弾性体43に対応する箇所に、導入口42の下部を塞ぐように閉塞用弾性体50が設けられている。閉塞用弾性体50も、例えば、スポンジ材やゴム材から構成されている。筐体2の閉塞用弾性体50は、風防カバー4を閉じた状態において、風防カバー4の閉塞用弾性体43との間にドロップケーブル100を挟み込むとともに、閉塞用弾性体43と協働して導入口42を塞ぐ。
【0025】
ドロップケーブル100が筐体2の閉塞用弾性体50上に配置された状態で風防カバー4を閉じると、閉塞用弾性体43,50の弾性力によってドロップケーブル100が押さえつけられる。また、風防カバー4を閉じることにより、閉塞用弾性体43や閉塞用弾性体50にドロップケーブル100の外形に沿っての変形(及び変位)が生じ、導入口42とドロップケーブル100との隙間が閉塞される。これにより、導入口42を介しての融着処理部3への風の進入が防止される。
【0026】
図2(a)〜(c)は、ホルダ30A,30Bをそれぞれ支持する一対の可動ステージ20A,20Bの構造を示す概略図である。
図2(a)〜(c)に示すように、一対の可動ステージ20A,20Bは、それぞれ、ステージ本体21と、送りねじ25と、スプリング27とを備えている。
【0027】
ステージ本体21は、ホルダ30A,30Bがその上面に設置されるホルダ設置部22と、ホルダ設置部22の前方側および後方側の側面からそれぞれ下方に突出する前壁部23と後壁部24とを備えている。
図2(a)に示すように、光ファイバ110の融着接続前には、一対の可動ステージ20A,20Bの各ステージ本体21は、放電部15を中心として互いに離隔した原点位置に配置されている。
【0028】
送りねじ25は、ステージ本体21の下方に設けられており、ホルダ30A,30Bに支持されるドロップケーブル100の軸方向に移動可能である。具体的には、送りねじ25は、モータ(図示省略)により駆動されて、ステージ本体21を押圧して、可動ステージ20A,20Bを原点位置から放電部15に向かって移動(押動)させることができる。具体的には、
図2(b)に示すように、送りねじ25は、ステージ本体21の前壁部23を放電部15とは反対の側から押圧して、可動ステージ20A,20Bを放電部15に向かって互いに近づけるように前進させ、光ファイバ110の端面同士を突き合わせる。
【0029】
スプリング27は、送りねじ25によって押動されるステージ本体21を弾性付勢して、可動ステージ20A,20Bを放電部15から離隔させる方向(後退方向)へ移動させるための部材である。スプリング27は、ステージ本体21の後端部下側に突設されている後壁部24と、スプリング受け部材28との間に介装されている。スプリング受け部材28は、略L字状の部材であって、一端にスプリング27が連結されるとともに、一端部側から下方に折り曲げられた他端部には送りねじ25が挿通されて固定されている。スプリング27は、具体的には圧縮コイルばねである。
図2(b)に示すように、送りねじ25が、ステージ本体21の前壁部23を押圧して、可動ステージ20A,20Bを放電部15に向かって前進させると、スプリング27は圧縮される。一方、
図2(c)に示すように、送りねじ25が、放電部15から離隔させる方向に退避位置まで移動されると、スプリング27の圧縮が解放されることでステージ本体21を弾性付勢して、可動ステージ20A,20Bを放電部15から離隔させる方向へ後退させることができる。
【0030】
次に、ドロップケーブル100の光ファイバ110同士を融着接続する方法について
図2および
図3を参照して説明する。
図3は、本実施形態に係る融着接続方法を示すフローチャートである。
まず、互いに接続するそれぞれのドロップケーブル100のうち、何れか一方のドロップケーブル100に、熱収縮性チューブ(図示省略)を通しておく(
図3のステップS1)。ホルダ30A,30Bの蓋部32を開けて、基部31と蓋部32との間にドロップケーブル100を挟み込んで保持固定する(ステップS2)。次いで、融着処理部3を覆う風防カバー4を開ける(ステップS3)。そして、ドロップケーブル100を保持したホルダ30A,30Bを融着処理部3の一対の可動ステージ20A,20B上にそれぞれ装着する(ステップS4)。または、融着処理部3にホルダ30A,30Bが装着された状態で、ホルダ30A,30Bの蓋部32を開けて、基部31と蓋部32との間にドロップケーブル100を挟み込んで保持固定してもよい。このようにすると、一対のドロップケーブル100から露出された光ファイバ110が、融着処理部3の融着位置に位置決めされて突き合わされる。この状態で、風防カバー4を閉じる(ステップS5)。風防カバー4を閉じると、閉塞用弾性体43と閉塞用弾性体50との間でドロップケーブル100が挟みこまれ、導入口42の隙間が塞がれる。この状態においては、
図2(a)に示すように、一対の可動ステージ20A,20Bは、放電部15を中心に互いに離隔した原点位置に配置されている。
【0031】
次に、融着接続装置1のモニタで融着処理部3を操作して、光ファイバ110の調心および軸合わせを行う。具体的には、
図2(b)に示すように、送りねじ25を駆動して、ステージ本体21の前壁部23を放電部15とは反対の側から押圧させ、一対の可動ステージ20A,20Bを放電部15に向かって互いに近づけるように突き合わせ位置まで前進させる。この突合せ位置において、光ファイバ110の端面同士が突き合わされる(ステップS6)。光ファイバ110の端面同士を突き合わせた状態で、一対の放電電極10間で放電させて、光ファイバ110の端面同士を融着接続させ、融着接続部Sを形成する(ステップS7)。
なお、光ファイバ110同士を突き合わせるために、ドロップケーブル100を保持した一対の可動ステージ20A,20Bを互いに近づけるように移動させると、ホルダ30A,30Bと閉塞用弾性体43,50との間に保持されるドロップケーブル100には両側に引っ張られる張力がかかった状態となっている。
【0032】
光ファイバ110の融着接続部Sを形成したら、
図2(c)に示すように、送りねじ25を駆動して、送りねじ25を放電部15から離隔させる方向に退避位置まで移動させる(ステップS8)。すなわち、送りねじ25をステージ本体21の前壁部23から離す。送りねじ25が前壁部23から離れると、スプリング27の圧縮が解放され、スプリング27がステージ本体21を後退方向へ弾性付勢する。これにより、一対の可動ステージ20A,20Bを後退方向へ移動させる。具体的には、一対の可動ステージ20A,20Bを光ファイバ110が突き合わされる
図2(b)の突合せ位置からわずかに(例えば、200μm程度)後退させる。このとき、風防カバー4は閉じた状態のままとしている。このように、風防カバー4を閉じた状態で一対の可動ステージ20A,20Bを後退させると、ホルダ30A,30B側と閉塞用弾性体43,50側とからドロップケーブル100に付与されていた張力をわずかに緩めることができる。
【0033】
一対の可動ステージ20A,20Bを互いに離れるように後退させた後で、風防カバー4を開ける(ステップS9)。次いで、ホルダ30A,30Bの蓋部32を開けて、ホルダ30A,30Bから融着接続されたドロップケーブル100を取り外す(ステップS10)。
その後、公知の補強装置により、ドロップケーブル100の融着接続部Sに補強部材(図示省略)を沿わせて熱収縮性チューブを被せ、補強装置によって熱収縮性チューブを熱収縮させて、融着接続部Sを補強する(ステップS11)。最後に、補強装置から補強されたドロップケーブル100を取り出して、収納場所に収納する。
【0034】
ところで、上記説明したような融着接続装置1においては、風防カバー4を閉じた状態で閉塞用弾性体43と閉塞用弾性体50との間でドロップケーブル100が保持固定され、ドロップケーブル100にはその軸方向における移動を阻害するような負荷がかかっている。特に、ドロップケーブル100は他のケーブルに比べて断面積が大きいため、閉塞用弾性体43,50との摩擦抵抗が高くなり、ドロップケーブル100の軸方向への移動は阻害されやすい。この状態で、ドロップケーブル100を保持した一対の可動ステージ20A,20Bを互いに近づけるように移動させると、ホルダ30A,30Bと閉塞用弾性体43,50との間でドロップケーブル100に両側へ引っ張られる張力がかかった状態となっている。従来は、ドロップケーブルにこのような張力がかかったままの状態で風防カバーを開けていたため、閉塞用弾性体により固定されていたドロップケーブルが急に解放されドロップケーブルがその軸方向に意図せずに移動して、光ファイバ同士の融着接続部が断線してしまう場合があった。また、ホルダと可動ステージとのクリアランス(約100μm)の影響により、一方のドロップケーブルを保持するホルダと他方のドロップケーブルを保持するホルダとの間で融着接続された光ファイバが撓んでしまい断線が発生する場合もあった。
【0035】
そこで、本実施形態においては、上記説明したように、風防カバー4を開ける前に、ホルダ30A,30Bと風防カバー4のドロップケーブル100と接触する部分(すなわち、閉塞用弾性体43,50)との間においてドロップケーブル100に付与される張力を緩めるステップを有している。具体的には、光ファイバ110の融着接続部Sを形成した後、
図2(c)に示すように、一対の可動ステージ20A,20Bを放電部15から離隔させる方向へわずかに移動させて、ホルダ30A,30Bと閉塞用弾性体43,50との間に保持されるドロップケーブル100に付与されていた張力をわずかに緩めている。この構成によれば、風防カバー4を開ける際に、ドロップケーブル100がその軸方向に意図せずに移動してしまうことがなく、両ホルダ30A,30Bの間で発生する光ファイバ110の撓み(あるいは、座屈)の影響を軽減することもできる。したがって、光ファイバ110の融着接続部Sの断線を防止することができる。
【0036】
(評価)
本実施形態を評価するため、融着接続後であって風防カバーを開ける前に、一対の可動ステージを離隔する方向に移動させた場合と、一対の可動ステージを後退方向に移動させない場合とで、両ホルダ間における光ファイバの撓み発生率と、断線率とを評価した。
まず、比較例として、風防カバーを開ける前に、一対の可動ステージを後退方向に移動させない場合について評価した。比較例では、突合せ位置から可動ステージを後退させずに風防カバーを開けた。その結果、比較例においては、光ファイバ撓み発生率は100%であり、融着接続部の断線率も約2%であった。
一方、実施例として、風防カバーを開ける前に、一対の可動ステージを互いに離隔する方向に移動させた場合について評価した。実施例では、突合せ位置からの一対の可動ステージの後退量をそれぞれ200μmとして、一対の可動ステージを後退させ、その後に風防カバーを開けた。その結果、実施例においては、光ファイバ撓み発生率は0%であり、融着接続部の断線率も0%であった。
以上から、一対の可動ステージを放電部から離隔させる方向へ移動させて、ホルダと閉塞用弾性体との間に保持されるドロップケーブルに付与されていた張力をわずかに緩めておくことで、風防カバーを開ける際に、ドロップケーブルがその軸方向に意図せずに移動してしまったり、両ホルダ間に保持される光ファイバが撓んでしまうことがなく、融着接続部の断線や損傷を防止できることが確認された。
【0037】
以上、本発明を詳細にまた特定の実施態様を参照して説明したが、本発明の精神と範囲を逸脱することなく様々な変更や修正を加えることができることは当業者にとって明らかである。また、上記説明した構成部材の数、位置、形状等は上記実施の形態に限定されず、本発明を実施する上で好適な数、位置、形状等に変更することができる。
【0038】
上記の実施形態においては、融着接続後に一対の可動ステージ20A,20B同士が離れるように移動させた後で、風防カバー4を開け、そのまま融着接続されたドロップケーブル100をホルダ30A,30Bから取り外す構成としているが、この例に限られない。例えば、風防カバー4を開けた後に、可動ステージ20A,20B同士がさらに離隔されるように後退方向に移動させて融着接続部Sのプルーフテストを実施するステップをさらに有してもよい。プルーフテストとは、光ファイバ110の融着接続後にドロップケーブル100をホルダ30A,30Bが保持したまま、可動ステージ20A,20Bを後退させ、融着接続部Sに引張力を印加して光ファイバ110の不良接続部を予め破断させるものである。プルーフテストにおいては、送りねじ45は例えば
図2(c)に示す退避位置からさらに
図2(a)に示す原点位置にまで戻される。これにより、一対の可動ステージ20A,20Bをさらに後退させて、融着接続部Sに、例えば200〔gf〕程度の引張力を付与する。融着接続部Sに両側から張力を付与した状態で所定時間保持した後に、プルーフテストを完了する。その後、ホルダ30A,30Bの蓋部32を開けて、ホルダ30A,30Bから融着接続されたドロップケーブル100を取り外し、融着接続部Sの補強処理工程へと進むこととなる。
【0039】
このようなプルーフテストを実施する際には、風防カバーを開けた状態でプルーフテストを実施する場合がある。そのため、本変形例においては、プルーフテストを実施する場合であっても、風防カバー4を開ける前にあらかじめ一対の可動ステージ20A,20Bをわずかに後退させておくことで、プルーフテスト実施前に融着接続部Sが断線してしまうことを確実に防止することができる。