(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2016-168013(P2016-168013A)
(43)【公開日】2016年9月23日
(54)【発明の名称】食酢含有飲料の風味改善方法及び風味改善された食酢含有飲料
(51)【国際特許分類】
A23L 2/00 20060101AFI20160826BHJP
A23L 2/38 20060101ALI20160826BHJP
【FI】
A23L2/00 B
A23L2/38 R
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2015-50541(P2015-50541)
(22)【出願日】2015年3月13日
(71)【出願人】
【識別番号】000135324
【氏名又は名称】株式会社ノエビア
(72)【発明者】
【氏名】若林 明
(72)【発明者】
【氏名】鉄井 崇仁
【テーマコード(参考)】
4B017
4B117
【Fターム(参考)】
4B017LC02
4B017LK14
4B017LK26
4B117LC02
4B117LC03
4B117LK14
4B117LK26
(57)【要約】
【課題】
本発明の課題は、食酢を含有する飲料において、酸味を抑制するとともに、渋味を低減し、飲み易さを向上させた飲料の風味改善方法並びに風味が改善された食酢含有飲料を提供ことである。
【解決手段】
食酢を含有する飲料を調製する際に、アラニンを配合することを特徴とする酸味を有する飲料の風味改善方法である。特に、食酢100質量部に対し0.1〜5.0質量部のアラニンを添加する。食酢成分としては、リンゴ酢、梅酢、ブドウ酢、プルーン酢、その他果実酢が好ましく用いられる。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アラニンを添加することを特徴とする食酢含有飲料の風味改善方法。
【請求項2】
食酢100質量部に対し0.1〜5.0質量部のアラニンを添加することを特徴とする、請求項1に記載の食酢含有飲料の風味改善方法。
【請求項3】
食酢100質量部に対し0.2〜5質量部のアラニンを添加することを特徴とする、請求項1又は2に記載の、食酢含有飲料の風味改善方法。
【請求項4】
食酢成分がリンゴ酢、梅酢、ブドウ酢、プルーン酢、その他果実酢から選ばれる1種又は2種以上の食酢であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の、食酢含有飲料の風味改善方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法を用いて製造された食酢含有飲料。
【請求項6】
食酢を含有する飲食品であって、食酢成分100質量部に対し0.1〜0.5質量部のアラニンを配合したことを特徴とする食酢含有飲料。
【請求項7】
食酢を含有する飲食品であって、食酢成分100質量部に対し0.2〜0.5質量部のアラニンを配合したことを特徴とする食酢含有飲料。
【請求項8】
食酢成分がリンゴ酢、梅酢、ブドウ酢、プルーン酢、その他果実酢から選ばれる1種又は2種以上の食酢であることを特徴とする、請求項6又は7記載の、食酢含有飲料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食酢含有飲料の風味改善方法及び風味改善された食酢含有飲料に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の高齢化社会やそれに伴う健康志向によって、生活習慣病等の日常生活における改善に関する関心が高まってきている。そのため、例えば日常の食生活に特定保健用食品と称されるものや各種機能性食品が取り入れられるようになっている。その中でも、古くから食酢は民間療法としても健康に良いとされ、最近ではそのさまざまな具体的な効果が注目を集めている。例えば食酢を摂取することにより、血圧降下作用、高血圧症低減効果、コレステロール低減効果、胃酸分泌促進、疲労回復等の効果があることが判明している。
【0003】
食酢は上述のごとく、様々な効果を有している。しかし食酢は、特有の強い酸味があり飲料では飲みにくいため、酸味を気にせず飲みやすい食酢含有飲料が望まれている。かかる問題点を解決するために3−ヒドロキシ4,5−ジメチル−2(5H)−フラノンやフルフラールを添加する方法(特許文献1参照)、高甘味度甘味料を添加する方法(特許文献2参照)、還元水飴等の糖アルコールを用いて酢カドを低減する方法(特許文献3参照)、ホエイを添加する方法(特許文献4参照)など多くの試みがなされてきた。しかし、酸味の低減効果が満足できるものではなかったり、添加した物質自体の香りが飲食物に移行し、食品としての香味バランスがくずれ、かえって嗜好性が低下する等の問題があった。
【0004】
また、よりまろやかな酸味と香気を有する、リンゴ酢、梅酢、ブドウ酢等の果実酢含有飲料が開発されている(特許文献5参照)。しかしながら果実酢は渋みを有することが多く、多量を摂取することは困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−69940号公報
【特許文献2】特開平10−215793号公報
【特許文献3】特開2004−89119号公報
【特許文献4】特開2009−65842号公報
【特許文献5】特開2010−227054
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、食酢を含有する飲料において、酸味を抑制するとともに、渋味を低減し、飲み易さを向上させた飲料の風味改善方法並びに風味が改善された食酢含有飲料を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、かかる課題について鋭意検討した結果、アラニンが食酢特有の酸味を抑制し、かつ渋みを低減する効果を有することを見出し本発明を完成させた。
【0008】
すなわち、本発明は以下の態様を有する。
(1) アラニンを添加することを特徴とする食酢含有飲料の風味改善方法。
(2) 食酢100質量部に対し0.1〜5.0質量部のアラニンを添加することを特徴とする、(1)に記載の食酢含有飲料の風味改善方法。
(3) 食酢100質量部に対し0.2〜5.0質量部のアラニンを添加することを特徴とする、(1)又は(2)に記載の、食酢含有飲料の風味改善方法。
(4) 食酢成分がリンゴ酢、梅酢、ブドウ酢、プルーン酢、その他果実酢から選ばれる1種又は2種以上の食酢であることを特徴とする、(1)〜(3)のいずれかに記載の、食酢含有飲料の風味改善方法。
(5) (1)〜(4)のいずれかに記載の方法を用いて製造された食酢含有飲料。
(6) 食酢を含有する飲食品であって、食酢成分100質量部に対し0.1〜0.5質量部のアラニンを配合したことを特徴とする食酢含有飲料。
(7) 食酢を含有する飲食品であって、食酢成分100質量部に対し0.2〜0.5質量部のアラニンを配合したことを特徴とする食酢含有飲料。
(8) 食酢成分がリンゴ酢、梅酢、ブドウ酢、プルーン酢、その他果実酢から選ばれる1種又は2種以上の食酢であることを特徴とする、(6)又は(7)記載の、食酢含有飲料。
【発明の効果】
【0009】
本発明の食酢含有飲料は、食酢特有の酸味を抑制し、かつ渋みを低減する効果を発揮する。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下本発明を実施するための形態を説明する。
【0011】
本発明に係る食酢含有飲料は、食酢を含有する飲料であり、そのまま若しくは希釈、溶解して摂取する飲料である。
【0012】
本発明に係る食酢含有飲料に含有される食酢としては、一般的に食酢として用いられているものを使用することができる。食酢としては醸造酢、米酢、玄米酢、もろみ酢、オオムギ黒酢、黒糖黒酢、その他の穀物酢、リンゴ酢、梅酢、ブドウ酢、プルーン酢、その他果実酢を用いることが出来る。発明に係る食酢含有飲料には、食酢のいずれか1種あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0013】
特に、リンゴ酢、梅酢、ブドウ酢、プルーン酢、その他果実酢から選ばれる1種又は2種以上を用いた場合、特にリンゴ酢を用いた場合、アラニンによる渋み抑制効果が十分に発揮されるため好ましい。
【0014】
本発明に用いるアラニンは、D体、L体、DL体を問わないが、入手のしやすさ等の点からL体若しくはDL体を用いることが好ましい。
【0015】
アラニンの含有量は、食酢100質量部に対し0.1〜5.0質量部とするが好ましく、さらには0.2〜5.0質量部とすることがより好ましい。0.1質量部未満の配合ではアラニンによる酸味の抑制並びに渋み低減効果が得られない場合がある。5.0質量部を超えて配合すると、アラニンによるアミノ酸臭が立ちすぎ、味のバランスが崩れる場合がある。
【0016】
本発明の食酢含有飲料は、果汁又はその濃縮物を添加することが好ましい。果汁又はその濃縮物を添加することにより、風味が良好で、飲みやすい飲料を得ることができる。かかる果汁としては、特に限定されないが、リンゴ果汁、かんきつ系果汁、ブドウ系果汁、梅果汁、プルーン果汁、ベリー系果汁等が例示される。
【0017】
本発明の食酢含有飲料には、ビタミン類を配合することができる。かかるビタミン類としては、飲料に配合し得るビタミンであれば特に限定されない。例えばアスコルビン酸若しくはその誘導体並びにそれらの塩から選ばれる1種又は2種以上のビタミンC類、チアミン若しくはその誘導体並びにそれらの塩から選ばれる1種又は2種以上のビタミンB
1類、リボフラビン若しくはその誘導体並びにそれらの塩類から選ばれる1種又は2種以上のビタミンB
2類、ナイアシン、パントテン酸、ピリドキシン若しくはその誘導体並びにそれらの塩から選ばれる1種または2種以上のビタミンB
6類などが例示される。
【0018】
本発明の食酢含有飲料には、アラニン以外のアミノ酸、ペプチド、タンパク質を配合することができる。かかるアラニン以外のアミノ酸、ペプチド、タンパク質としては保健機能食品、食品、医薬品および医薬部外品の分野に利用し得るものであれば特に限定されない。例えばアミノ酸としては、バリン、ロイシン、イソロイシン、グルタミン、アスパラギン酸、グルタミン酸、プロリン、システイン、リジン、スレオニン、アスパラギン、フェニルアラニン、セリン、メチオニン、グリシン、チロシン、ヒスチジン、トリプトファン、シスチン、テアニンなどが例示される。ペプチド、タンパク質としては、例えばコラーゲン及びその加水分解物、エラスチン及びその加水分解物などが例示される。
【0019】
本発明の食酢含有飲料には、甘味料を配合することができる。かかる甘味料としては飲料の分野に利用し得る甘味料であれば特に限定されず、白砂糖、グラニュー糖、和三盆、黒糖、三温糖などの砂糖、蜂蜜、メープルシロップ、糖蜜、水飴、ブドウ糖、果糖、麦芽糖、ブドウ糖果糖液糖、還元麦芽糖水飴、粉飴、還元澱粉糖化物、エリスリトール、マルトーストレハロース、マルチトール、パラチノース、キシリトール、ソルビトール、甘草抽出物、ステビア抽出物及び/又はその精製物、羅漢果抽出物、ソーマチン、モネリン、ミラクリン、アスパルテーム、アセスルファムカリウム、スクラロース、サッカリン及び/又はその塩、ズルチン、ネオテームなどが挙げられる。これらの甘味料は、1種を単独で若しくは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0020】
本発明においては、蜂蜜、黒糖から選択される1種又は2種を添加することが好ましい。はちみつ、黒糖を添加することにより食酢含有飲料の味にコクを加えることが可能である。
【0021】
本発明の食酢含有飲料は、増粘剤を配合して、ゼリー状飲料として用いることもできる。かかる増粘剤としては保健機能食品、食品、医薬品および医薬部外品の分野に利用し得る増粘剤であれば特に限定さない。例えば寒天、ローカストビーンガム、グアーガム、カラギナン、キサンタンガム、タマリンド種子多糖類、ネイティブジェランガム、脱アシル型ジェランガム、未加工でんぷん、加工でんぷん、ペクチン、タラガム等が挙げられる。
【0022】
本発明の食酢含有飲料は、賦形剤を添加し乾燥させることにより、粉末化したものを摂取時溶解して用いることもできる。また、飲料は炭酸タイプであってもよい。
【0023】
本発明の食酢含有飲料には、通常飲料に用いることが可能な成分、例えば、上記以外のビタミン類、有機酸類、無機酸類、生薬、着色料、香料、保存剤、増粘剤、オリゴ糖類、多糖類、などの他、キトサン化合物、栄養強化成分、滋養強壮成分などを適時選択して配合することができ、飲料製造の常法により製造することができる。
【実施例】
【0024】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、これにより本発明の範囲が限定されるものではない。
【0025】
まず、アラニンによる食酢飲料の味覚への影響を検討した。酸度4.5のリンゴ酢を37.5v/v%含有する10倍濃縮食酢飲料(比較例1)に、DL−アラニンを0.5w/v%(実施例1)、1.0w/v%(実施例2)となるように添加し、味認識装置TS−5000Z (株式会社インテリジェントセンサーテクノロジー製)を用いて、味覚の変化を確認した。結果を表1に示す。
【0026】
【表1】
【0027】
表1に示した通り、本発明のアラニンを添加した食酢含有飲料は、アラニンを添加していない比較例より、濃度依存的に酸味が抑制され、渋みが低減した。
【0028】
次に、表2に示した配合量で食酢配合飲料を調製し、味の評価を行った。味の評価は比較例2と実施例3、4、5をそれぞれブラインドで飲み比べて、相対評価を下記のとおり行った。
【0029】
[味の評価]
「酸味」
◎:実施例の方が明らかに酸味がまろやかである
○:実施例の方が酸味がまろやかである
×:比較例、実施例とも酸味が変わらない、若しくは比較例の方が酸味がまろやかである
[渋味]
◎:実施例の方が明らかに渋味が少ない
○:実施例の方が渋みが少ない
×:比較例、実施例とも渋味が変わらない、若しくは比較例の方が渋味が少ない
【0030】
【表2】
【0031】
表2に示した通り、本発明の実施例は、リンゴ酢の酸味が抑制され、渋みも低減していた。
【0032】
表3に本願発明の実施例6に係る、リンゴ酢濃縮飲料の処方例を示す。本飲料は10倍量に希釈して飲用する濃縮飲料である。実施例6は、希釈して飲用した場合、まろやかで渋みの少ない、良好な風味を呈していた。
【0033】
【表3】