【解決手段】手術用索体を結索する際の留め具として使用される結索用バックル1として、手術用索体の後端が連結される連結部21を具備するバックル本体2と、バックル本体の連結部が存する一端側に倒された第一ポジションと、バックル本体の他端側に倒された第二ポジションと、の二つのポジション間を回動可能となるようにしてバックル本体に取り付けられたフラップ3と、を具備してなるものを用い、フラップを第二ポジションに位置させたうえで、バックル本体の後端側から、手術用索体の先端をバックル本体の上面とフラップの回転軸4が存する基端部31との間に通過させた後、フラップを第一ポジションに位置させ、バックル本体の上面とフラップ3の下面との間に手術用索体を挟持させることによって、手術用索体を結索する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
確かに、前記特許文献1に開示された胸骨縫合用材料は、輪の穴を利用して結索を行うことができるため、従来のステンレスワイヤやステンレス板等の手術用索体と比較して、結索作業が容易なものとなる。
【0008】
しかしながら、前記特許文献1に開示された胸骨縫合用材料も、手術用索体を輪に通した後は、端部同士を互いにねじり合わせ、クリンプにて固定する必要があるため、やはり、締め付けの強弱は術者の熟練度によって左右される。
【0009】
本発明は前記技術的課題に鑑みて開発されたものであり、手術用索体の結索作業を安定的に行うことができる新規な結索用バックル、及び前記結索用バックルを備えたバックル付索体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記技術的課題を解決するために、本発明の結索用バックルは、手術用索体を結索する際の留め具として使用される結索用バックルであって、前記手術用索体の後端が連結される連結部を具備するバックル本体と、前記バックル本体の前記連結部が存する一端側に倒された第一ポジションと、前記バックル本体の他端側に倒された第二ポジションと、の二つのポジション間を回動可能となるようにして前記バックル本体に取り付けられたフラップと、を具備してなり、前記フラップを前記第二ポジションに位置させたうえで、前記バックル本体の後端側から、前記手術用索体の先端を前記バックル本体の上面と前記フラップの回転軸が存する基端部との間に通過させた後、前記フラップを前記第一ポジションに位置させ、前記バックル本体の上面と前記フラップの下面との間に前記手術用索体を挟持させることによって、前記手術用索体を結索するものであることを特徴とする(以下、「本発明バックル」と称する。)。
【0011】
前記本発明バックルにおいては、前記フラップを前記第二ポジションに位置させた際、前記バックル本体の上面と前記フラップの基端部と間に、前記手術用索体を挿通し得る空間が確保されるように、前記フラップの上面、且つ、基端部寄りの位置に凹溝が設けられてなるものが好ましい態様となる。
【0012】
前記本発明バックルにおいては、前記フラップを前記第一ポジションに位置させた際、前記バックル本体の上面と前記フラップの基端部との間隔が狭くなるように、前記フラップの下面、且つ、基端部寄りの位置に、突起部が設けられてなるものが好ましい態様となる。
【0013】
前記本発明バックルにおいては、前記フラップの下面に、索体押込み用凸部が設けられてなり、前記フラップを前記第一ポジションに位置させて、前記手術用索体を挟持させた際に、前記索体押込み用凸部が、前記手術用索体を押圧するようになされたものが好ましい態様となる。
【0014】
前記本発明バックルにおいては、更に、前記バックル本体の上面に、索体圧入用凹部が設けられてなり、前記フラップを前記第一ポジションに位置させて、前記手術用索体を挟持させた際に、前記索体押込み用凸部によって押圧された手術用索体が、前記索体圧入用凹部に押し込まれるようになされたものが好ましい態様となる。
【0015】
前記本発明バックルにおいては、前記手術用索体の結索作業時に、前記バックル本体を鉗子にて摘まんで保持し得るように、前記フラップの基端部が存する位置より前記バックル本体の他端側の位置に、前記鉗子にて摘まむことができる摘み部が設けられてなるものが好ましい態様となる。
【0016】
前記本発明バックルにおいては、前記手術用索体の結索作業時に前記フラップを前記第一ポジションに位置させる際、鉗子にて前記フラップを前記バックル本体に向かって押圧し得るように、前記フラップの上面に、前記鉗子の先端を差し込むことができる陥没孔が設けられてなるものが好ましい態様となる。
【0017】
本発明のバックル付索体は、前記本発明バックルと、手術用索体と、を具備してなることを特徴とする(以下、「本発明索体」と称する。)。
【0018】
前記本発明索体においては、更に、貫通刃を具備してなるものが好ましい態様となる。
前記本発明索体においては、前記手術用索体が、金属製フィラメントの単線、又は金属製フィラメントの収束線からなる基本線を複数本、互いに交差させた状態にて筒編みすることによって構成された網状の周壁を有する中空の編組体であるものが好ましい態様となる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、手術用索体の結索作業を安定的に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】
図1(a)は、実施形態1に係る本発明バックルを示す分解斜視図であり、
図1(b)は、前記本発明バックルにおけるフラップを第一ポジションに位置させた状態を示す斜視図であり、
図1(c)は、前記本発明バックルにおけるフラップを第二ポジションに位置させた状態を示す斜視図である。
【
図2】
図2(a)は、実施形態1に係る本発明索体を示す斜視図であり、
図2(b)は、前記本発明索体における手術用索体の伸縮状態を断面状態にて示す正面図であり、
図2(c)は、前記手術用索体の伸縮状態を示す側面図であり、
図2(d)は、前記手術用索体の偏平変形状態を断面状態にて示す正面図である。
【
図3】
図3は、前記本発明索体にて胸骨を結束した状態を示す正面図である。
【
図4】
図4(a)〜(d)は、前記本発明索体を用いた結索工程を示す断面図である。
【
図5】
図5は、前記本発明索体にて胸骨を結束する工程を示すフローチャートである。
【
図6】
図6(a)〜(c)は、第一結索工程時における貫通刃の通過状態を示す斜視図である。
【
図7】
図7(a)は、実施形態2に係る本発明バックルを示す分解斜視図であり、
図7(b)は、前記本発明バックルにおけるフラップを第一ポジションに位置させた状態を示す斜視図であり、
図7(c)は、前記本発明バックルにおけるフラップを第二ポジションに位置させた状態を示す斜視図である。
【
図8】
図8は、実施形態2に係る本発明索体を示す斜視図である。
【
図9】
図9(a)は、鉗子を用いて結索工程を実行している状態を示す斜視図であり、
図9(b)は、鉗子にて、前記本発明バックルにおけるフラップを第一ポジションに位置させている状態を示す断面図である。
【
図10】
図10(a)は、実施形態3に係る本発明バックルを示す分解斜視図であり、
図10(b)は、前記本発明バックルにおけるフラップを第一ポジションに位置させた状態を示す斜視図であり、
図10(c)は、前記本発明バックルにおけるフラップを第二ポジションに位置させた状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して説明するが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではない。
【0022】
[実施形態1]
<本発明バックル1>
図1に、実施形態1に係る本発明バックル1を示す。
図1(a)の分解斜視図に示すように、前記本発明バックル1は、バックル本体2と、フラップ3と、を具備する。
【0023】
‐バックル本体2‐
前記バックル本体2は、連結部21を具備する。更に詳しく説明すると、本実施形態において、前記バックル本体2は、ステンレス(SUS316)を素材として形成されたものであり、前記連結部21は、平板状のバックル本体主部20の一端に対し、一体的に取り付けられている。又、前記連結部21には、開口方向が前記バックル本体2の一端側となされた連結穴210が設けられている。
【0024】
更に、本実施形態においては、前記バックル本体主部20の他端側寄りの両側に沿って一対の軸受部22が備えられている。
【0025】
各軸受部22には、それぞれバックル本体側軸受孔220が設けられており、各軸受部22は、前記バックル本体側軸受孔220を前記バックル本体主部20の上面より上側に位置させた状態、且つ、互いの前記バックル本体側軸受孔220が対向するようにして、前記バックル本体主部20に対し一体的に取り付けられている。
【0026】
‐フラップ3‐
本実施形態において、前記フラップ3は、前記バックル本体に対し、起伏可能となるようして取り付けられている。更に詳しく説明すると、本実施形態において、前記フラップは、ステンレス(SUS316)を素材として形成されたものであり、平板状のフラップ主部30と、基端部31と、を具備する。又、前記基端部31には、両側面から内方向に向かって陥没するフラップ側軸受孔310が設けられている。
【0027】
そして、前記フラップ3は、前記基端部31が、一対の前記軸受部22の間に挿入配置され、且つ、前記フラップ側軸受孔310と前記バックル本体側軸受孔220とが連通された状態となされたうえで、前記フラップ側軸受孔310と前記バックル本体側軸受孔220とを通じて、回転軸4が挿通されることによって、前記バックル本体2に軸支されている。
【0028】
これにより、前記フラップ3は、
図1(b)に示す、前記連結部21が存する前記バックル本体2の一端側に倒された第一ポジションと、
図1(c)に示す、前記バックル本体2の他端側に倒された第二ポジションと、の間を回動可能となされている。
【0029】
<本発明索体10>
図2に、本発明索体10を示す。前記本発明索体10は、前記本発明バックル1と、手術用索体5と、貫通刃6と、を具備する。
【0030】
‐手術用索体5‐
図2(a)の拡大図(前記手術用索体5の中ほどの部分の拡大図)に示すように、本実施形態においては、前記手術用索体5として、金属製フィラメント(本実施形態においては、ステンレス製フィラメント)の単線からなる基本線50が複数本(本実施形態においては48本)、互いに交差された状態にて編組された中空の編組体が用いられている。
【0031】
前記手術用索体5は、前記基本線50の各々を筒編みし、前記基本線50の各々が螺旋状に配置されることによって網状の周壁となり、もって、全体として中空の編組体となされたものである。
【0032】
前記「筒編み」とは、「輪編み」とも称される縦糸と横糸の区別が無い編み方であり、前記手術用索体5を構成する各基本線50を、前記手術用索体5の仮想軸芯周りにおいて、同一の螺旋ピッチにて螺旋状に走るように配置しながら各々を互い違いに交差させて編組する編み方を意味する。係る筒編みにて編組された前記手術用索体5は、前記手術用索体5の仮想軸芯と、前記手術用索体5の長さ方向に対して螺旋状に走る各基本線50の走行方向とがなす角が、前記手術用索体5のいずれの位置においても等しくなる。
【0033】
図2(b)、(c)に示すように、このような構成を有する前記手術用索体5は、長さ方向に沿って引張応力が付加されると、その線径を委縮させながら長さ方向に伸長し、その後、長さ方向に沿う引張応力から解放されると、ほぼ元の状態に弾性的に回復する性質(伸縮性)を有する。又、何らかの対象物に巻き付けられると、
図2(d)に示すように、伸縮性を維持したまま偏平し、平板状に変形する性質(偏平変形性)も有する。
【0034】
本実施形態において、前記手術用索体5は、その後端を、前記本発明バックル1における前記連結部21の前記連結穴210に挿入させ、前記連結部21に対し上下方向から圧力を加えて変形させることにより、前記連結部21に加締め付けられた状態で前記本発明バックル1に連結されている。
【0035】
‐貫通刃6‐
前記貫通刃6は、生体組織に突き刺して、前記手術用索体5を通過させるための通路を切開するためのものであり、先端側が鋭利となされた刃61と、湾曲する胴体部62と、直線状の末端部63とを具備する。前記貫通刃6は、前記末端部63が前記手術用索体5の先端側に挿入された状態にて前記手術用索体5に溶接固定されている。この際、前記手術用索体5の先端側は、前記末端部63の外径に応じて線径を委縮させた状態となされている。
【0036】
<本発明バックル1による前記手術用索体5の結索>
図3に、前記本発明索体10によって胸骨Bを結束した状態を示す。以下、
図4の工程図、及び
図5のフローチャートを参照しながら、開胸手術時における前記本発明バックル1を用いた胸骨Bの結束作業を説明する。
【0037】
開胸手術においては、胸部を胸骨Bの中央にて縦方向に切断して開き(S1〜S2)、必要な処置を行った後(S3)、切断した前記胸骨Bを、前記本発明索体10にて結束する。
【0038】
前記胸骨Bの結束は、まず、前記本発明索体10の先端に存する前記貫通刃6を肋骨B1間に突き刺し、前記胸骨Bの周囲に存する組織を切開しながら、前記貫通刃6に続く前記手術用索体5を、
図4(a)に示すように、前記胸骨Bの周囲に周回させる運針工程(S4)を実行した後、前記手術用索体5を結索する結索工程(S5〜S9)を実行する。
【0039】
前記結索工程(S5〜S9)では、まず、前記フラップ3を前記第二ポジションに位置させ、
図4(b)に示すように、胸骨Bの周囲を周回して術者の手元側に戻ってきた前記手術用索体5の先端に存する前記貫通刃6を、前記バックル本体2の後端側から、前記バックル本体2の上面と前記フラップ3の基端部31との間に通過させる第一結索工程(S5)を実行する。
【0040】
その後、
図4(c)に示すように、前記手術用索体5の先端側(若しくは、前記貫通刃6)を更に引っ張ったり、戻したりしながら、前記胸骨Bの周囲に周回させた前記手術用索体5に適当な締結力を生じさせた後、前記フラップ3を前記第一ポジションに位置させる第二結索工程(S6)を実行する。前記第二結索工程(S6)の実行により、前記手術用索体5は、前記バックル本体2の上面と前記フラップ3の下面との間に挟持された状態で固定される。
【0041】
最後に、患者の骨密度や年齢に応じた適当な締結力にて前記手術用索体5が前記胸骨Bの周囲に固定されていることを確認(S7)した後、
図4(d)に示すように、前記手術用索体5の先端側の余剰部分を切断して前記貫通刃6を前記手術用索体5から切り離す切断工程(S8)を実行する。なお、前記切断工程(S8)を実行する前に、前記胸骨Bの周囲に周回させた前記手術用索体5につき、締め付けが強すぎたり、緩すぎたりしていると確認された場合は、前記フラップ3を前記第二ポジションに戻し(S9)、再度、前記手術用索体5の先端側(若しくは、前記貫通刃6)を更に引っ張ったり、戻したりすることによって適当な弾性力に調整した後、前記第二結索工程(S6)を実行し、前記切断工程(S8)を実行する。
【0042】
即ち、前記本発明バックル1を用いた結束作業では、前記第二結索作業(S6)の実行後、前記胸骨Bの周囲に周回させた前記手術用索体5につき、締め付けが強すぎたり、緩すぎたりしていると確認された場合は、前記切断工程(S8)を実行する前に、前記フラップ3を前記第二ポジションに戻し、再度、前記手術用索体5の先端側(若しくは、前記貫通刃6)を更に引っ張ったり、戻したりすることによって適当な締結力に調整することができるため、術者の熟練度にかかわらず、安定した結索が可能となる。
【0043】
又、前記手術用索体5の結索、及び締結力の調整は、前記フラップ3を前記第一ポジションと前記第二ポジションとの二つのポジション間を回動させることによって実行されるため、非常に容易となる。
【0044】
なお、本実施形態では、前記本発明バックル1に前記貫通刃6を通過させる第一結索作業時において、湾曲する前記貫通刃6の針先を図中上方向に向けて前記本発明バックルに挿し(
図4(b)参照)、そのまま図中上方向に抜いているが(
図4(c)参照)、
図6(a)〜(c)に示すように、針先を図中上方向に向けて前記本発明バックルに挿した前記貫通刃6を、90度回転させたうえで、図中横方向に抜いていく方が、係る作業は実行しやすいものとなる。
【0045】
又、本実施形態においては、前記本発明バックル1につき、ステンレス製のものを用いたが、前記本発明バックルを形成する素材としては、ある程度の生体適合性を有する素材であれば特に限定されるものではない。前記本発明バックルを形成する素材の具体例としては、チタンやセラミックなどの無機材料の他、プラスチックなどの有機材料を挙げることができる。
【0046】
更に、本実施形態においては、前記手術用索体5として金属製フィラメントの単線からなる基本線50が複数本、互いに交差された状態にて編組された中空の編組体が用いられているが、前記手術用索体5の素材、及び形態は特に限定されるものではない。前記手術用索体5の具体例としては、手術用の縫合糸、ステンレスワイヤ、ステンレス板、バンド等を挙げることができる。
【0047】
加えて、本実施形態においては、前記貫通刃6として、先端側が鋭利となされた刃61と、湾曲する胴体部62と、直線状の末端部63とを具備するものを用いたが、前記貫通刃6の形状は、特に限定されるものではない。又、前記貫通刃6は、必ずしも、前記第一結索工程において、前記本発明バックル1における前記バックル本体2の上面と前記フラップ3の基端部31との間を通過し得るものでなくても良い。前記貫通刃6が、前記本発明バックル1における前記バックル本体2の上面と前記フラップ3の基端部31との間を通過し得る形状を有していなくても、前記第一結索工程の実行前に、前記貫通刃6を前記手術用索体5から切り離せば、前記第一結索工程の実行は可能となる。
【0048】
[実施形態2]
<本発明バックル1>
図7に、実施形態2に係る本発明バックル1を示す。
図7(a)の分解斜視図に示すように、前記本発明バックル1は、バックル本体2と、フラップ3と、を具備する。
【0049】
‐バックル本体2‐
本実施形態に係る本発明バックル1におけるバックル本体2は、
(1)バックル本体(バックル本体主部20)2の両側縁中程に、当該両側縁を内方向に後退させる切欠き部202が設けられている点、
(2)前記バックル本体(バックル本体主部20)2の上面に、索体圧入用凹部201が設けられている点、
(3)前記バックル本体2の他端側の位置に摘み部23が設けられている点、
の三点が前記実施形態1に係る本発明バックル1における前記バックル本体2と異なり、その余の形態は同様となされている。
【0050】
‐フラップ3‐
本実施形態に係る本発明バックル1におけるフラップ3は、
(1)前記フラップ3の上面、且つ、基端部31寄りの位置に凹溝313が設けられている点、
(2)前記フラップ3の下面、且つ、基端部31寄りの位置に、突起部311が設けられている点、
(3)前記フラップ(フラップ主部30)3の下面に、索体押込み用凸部32が設けられている点、
(4)前記フラップ(フラップ主部30)3の上面に、陥没孔312が設けられている点、
の四点が前記実施形態1に係る本発明バックル1における前記フラップ3と異なり、その余の形態は同様となされている。
【0051】
そして、前記フラップ3は、
図7(b)に示す、前記連結部21が存する前記バックル本体2の一端側に倒された第一ポジションと、
図7(c)に示す、前記バックル本体2の他端側に倒された第二ポジションと、の間を回動可能となるように、前記バックル本体2に取り付けられている。
【0052】
なお、本実施形態においては、前記フラップ3を前記第一ポジションに位置させた際、前記索体押込み用凸部32が前記索体圧入用凹部201に挿入されるように、各部分の位置関係が設定されている。
【0053】
<本発明索体10>
図8に、本発明索体10を示す。前記本発明索体10は、前記本発明バックル1と、手術用索体5と、貫通刃6と、を具備する。
【0054】
‐手術用索体5‐
前記手術用索体5は、複数本(本実施形態においては二本)の金属製フィラメント(本実施形態においては、ステンレス製のフィラメント)Fを互いに長さ方向に沿って隣接させた並列配置型の収束線からなる基本線50が複数本(本実施形態においては48本)、筒編みによって、互いに交差された状態にて編組されたものである(
図7の拡大図参照)。前記手術用索体5は、基本線50として並列配置型の収束線を用いた以外は、前記実施形態1と同様の構成を有する。
【0055】
このような構成を有する前記手術用索体5は、前記基本線50として並列配置型の収束線を用いているため、何らかの対象物に巻き付けられて平板状に変形された際、エッジ部分の鋭利さが緩和される。これにより、例えば、骨の周囲に巻き回された際に、骨や骨周囲に存する組織に対して損傷を与えるリスクがより小さくなる利点が生じる。
【0056】
‐貫通刃6‐
前記貫通刃6は、前記実施形態1において用いた貫通刃6と同様のものである。
【0057】
<本発明バックル1による前記手術用索体5の結索>
本実施形態に係る本発明索体10は、前記実施形態1に係る本発明索体10と同様の結索工程を経て結索される(
図4、
図5参照)。
【0058】
前記結索工程における第一結索工程では、前記フラップ3を前記第二ポジションに位置させ、
図9(a)に示すように、前記貫通刃6を、前記バックル本体2の後端側から、前記バックル本体2の上面と前記フラップ3の基端部31との間に通過させる。
【0059】
本実施形態に係る本発明索体10においては、前記フラップ3の上面、且つ、基端部31寄りの位置に凹溝313が設けられており、係る凹溝313によって確保された空間に前記手術用索体5を通過させることができるため、係る第一結索工程が容易となるうえ、本発明バックル1の厚みを薄くすることができることから、術後の違和感を軽減することができる。
【0060】
続く第二結索工程では、前記手術用索体5の先端側(若しくは、前記貫通刃6)を更に引っ張ったり、戻したりしながら、前記胸骨Bの周囲に周回させた前記手術用索体5に適当な締結力を生じさせた後、
図9(b)に示すように、前記フラップ3を前記第一ポジションに位置させる。
【0061】
本実施形態に係る本発明索体10においては、前記バックル本体2の他端側の位置に摘み部23が設けられているから、前記胸骨Bの周囲に周回させた前記手術用索体5に適当な締結力を生じさせる際、
図9(a)に示すように、前記摘み部23を鉗子70にて摘むことができ、もって、前記バックル本体2を前記鉗子70にて保持しながら、係る作業を行うことができる。
【0062】
又、本実施形態に係る本発明索体10においては、前記フラップ(フラップ主部30)3の上面に、陥没孔312が設けられているから、前記フラップ3を前記第一ポジションに位置させる際に、
図9(b)に示すように、前記鉗子70の先端を前記陥没孔312に差し込み、前記鉗子70にて前記フラップ3を前記バックル本体2に向かって押圧することができる。
【0063】
更に、本実施形態に係る本発明索体10においては、前記フラップ3の下面、且つ、基端部31寄りの位置に、突起部311が設けられているから、前記フラップ3を前記第一ポジションに位置させた際、前記バックル本体2の上面と前記フラップ3の基端部31との間隔が狭くなる。これより、前記フラップ3を前記第一ポジションに位置させた際、前記バックル本体2の上面と前記フラップ3の基端部31との間で前記手術用索体5が強く挟持され、もって、結索がより強固なものとなる。
【0064】
加えて、本実施形態に係る本発明索体10においては、前記フラップ3を前記第一ポジションに位置させた際、前記索体押込み用凸部32が、前記索体圧入用凹部201に挿入されるようになされているから、前記手術用索体5は、前記索体押込み用凸部32によって、前記索体圧入用凹部201に押し込まれる。これより、前記フラップ3を前記第一ポジションに位置させた際、前記索体押込み用凸部32と前記索体圧入用凹部201との間で、前記手術用索体5が強く挟持され、もって、結索がより強固なものとなる。
【0065】
そして、本実施形態に係る本発明索体10においては、バックル本体(バックル本体主部20)2の両側縁中程に前記切欠き部202が設けられているから、前記フラップ3を前記第一ポジションに位置させた後、前記フラップ3を前記第二ポジションに戻す必要が生じた場合に、係る切欠き部202に前記鉗子70を差し入れて、前記フラップ3を容易に引き起こすことができる。
その余は、前記実施形態1の説明と同様であり、重複説明を避けるため省略する。
【0066】
[実施形態3]
<本発明バックル1>
図10に、実施形態1に係る本発明バックル1を示す。
図10(a)の分解斜視図に示すように、前記本発明バックル1は、バックル本体2と、フラップ3と、を具備する。
【0067】
‐バックル本体2‐
本実施形態に係る本発明バックル1におけるバックル本体2は、
(1)摘み部23の両端が、軸受部22の内壁に対して連結されており、その結果、前記摘み部23が、一対の軸受部22の内壁間に挟まれた位置に設けられている点、
(2)索体圧入用凹部201が設けられていない点、
の二点が、前記実施形態2に係る本発明バックル1における前記バックル本体2と異なり、その余の基本形態は同様となされている。
【0068】
‐フラップ3‐
本実施形態に係る本発明バックル1におけるフラップ3は、
(1)凹溝313が、前記フラップ3の上面において広範囲に設けられている点、
(2)前記凹溝313に、陥没孔312が設けられている点、
(3)前記実施形態2と比較して、基端部31が長めに設けられている点、
の三点が前記実施形態2に係る本発明バックル1における前記フラップ3と異なり、その余の基本形態は同様となされている。
【0069】
そして、前記フラップ3は、
図10(b)に示す、前記連結部21が存する前記バックル本体2の一端側に倒された第一ポジションと、
図10(c)に示す、前記バックル本体2の他端側に倒された第二ポジションと、の間を回動可能となるように、前記バックル本体2に取り付けられている。
【0070】
なお、本実施形態においては、前記フラップ3を前記第二ポジションに位置させた際、前記基端部31が、一対の軸受部22と前記摘み部23との間に嵌入するように、各部分の位置関係が設定されている。これにより、前記フラップ3を前記第二ポジションに位置させた際の安定性が向上されている。
【0071】
前記実施形態1、2と同様、本実施形態に係る本発明バックル1も、連結部21に手術用索体5の後端が連結されて本発明索体10となり(
図2、
図5参照)、手術用索体5を結索する際の留め具として使用される(
図3参照)。
【0072】
又、本発明バックル1による前記手術用索体5の結索は、前記実施形態1、2に係る本発明索体10と同様の結索工程を経て実行される(
図4、
図5、
図8参照)。
その余は、前記実施形態1、2の説明と同様であり、重複説明を避けるため省略する。
【0073】
なお、本発明は、その精神又は主要な特徴から逸脱することなく、他のいろいろな形態で実施することができる。そのため、上述の実施形態はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示すものであって、明細書本文には何ら拘束されない。更に、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、すべて本発明の範囲内のものである。