【課題】検者の飲食時の飲み込みを検出することができる衣服であって、検者に不快感等を与えず、容易に使用することができる飲み込み検出衣服および飲み込み検出器を提供する。
【解決手段】飲み込み検出衣服は、襟部を有する衣服本体10と、襟部に架け渡される架渡部20と、架渡部20に取り付けられる加速度センサ30と、を備える。飲み込み検出器は、衣服本体10の襟部12に取り付けられ、頸部の前側に掛け渡される架渡部20と、架渡部20に取り付けられる加速度センサと、を備える。
【背景技術】
【0002】
介護施設等に従事する介護者は、通常複数の被介護者の介護を行う。介護者は、被介護者の食事の介護において、自己が担当する全ての被介護者の食事介護を所定時間内に行う必要があり、個々の被介護者の食事介護を短時間で効率よく行わなければならない。しかしながら、被介護者の飲食物の飲み込み(嚥下)を外見上判断することは熟練の介護士でも困難であることから、介護者は、個々の被介護者に対して食事の介護を効率よく行うことができない。また、被介護者が誤嚥により死にもつながる肺炎を引き起こす可能性があるため、介護者は、被介護者の食事の介護に強い心理負担を感じている。
【0003】
そのため、被介護者の飲食時における飲み込みを正確に判断することができれば、介護者は、食事の介護の効率を向上させることができ、その心理負担を軽減することができるものと考えられる。さらに、被介護者についても効率よく食事できるので、食事に関する「生活の質」の向上も期待される。
【0004】
人の飲み込みを判断する方法として、嚥下造影検査がある。嚥下造影検査によれば、被検者の飲み込みや誤嚥の有無を安全に判別することができる。しかしながら、嚥下造影検査は、造影装置のサイズが大きく、その価格も高価であり、しかも造影剤を服用する必要があるとともに、X線被ばくの問題もあるため、毎回の食事において利用することはできない。
【0005】
また、特許文献1には、嚥下に関与する複数の筋肉表面に電極を配置して表面筋電図を記録し、嚥下障害を検知する方法が記載されている。しかしながら、この方法は、電極の取り付けに手間がかかり、電極が使い捨てのものである場合には電極のコストが嵩むので、毎回の食事において利用することはできない。
【0006】
また、上記の方法はいずれも、被介護者に対し、拘束感や不快感を与えてしまうという問題もある。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下において、まず本発明の実施形態の飲み込み検出衣服について説明し、次いで本発明の実施形態の飲み込み検出器について説明する。
以下の説明において、被介護者または患者等の飲み込み検出衣服を着用する者を被検者Aと言うものとする。また、被介護者または患者等の被検者Aを介護、看護または検査する者を検者と言うものとする。また、飲み込みのことを嚥下という場合があるものとする。
【0015】
飲み込み検出衣服は、
図1および
図2に示すように、衣服本体10と、架渡部20と、加速度センサ30と、を備えている。
【0016】
衣服本体10は、布・織物などの素材を平面視して略台形状に形成したものである。衣服本体10の上部には、頸部を通すための開口部11が設けられており、開口部11の周縁が襟部12となっている。また、開口部11には、その上部から上方に向かって切り欠かれる切欠部14が設けられている。切欠部14の左右に位置する部分は、飲み込み検出衣服を頸部に装着するための装着部16,16となっている。左右の装着部16,16のうち、一方の前側の面と他方の後側の面には、互いに着脱自在に連結可能な面ファスナ18,19が設けられている。
なお、衣服本体10の形態は、上記形態に限定されるものではなく襟部12を有するものであればどのようなものであってもよい。また、襟部12の形態も上記形態に限定されるものではなく、頸部の周りを囲むようなものであればどのような形態であってもよい。また、衣服本体10の素材は、食べこぼしなどの汚れを落としやすいポリエステル等の合成樹脂製のシートであってもよい。
【0017】
架渡部20は、帯状であって、その両面が略前後方向に直交し、かつ、被検者Aが飲み込み検出衣服を装着した際に、被検者Aの頸部の前側に位置するように、襟部12に架け渡されている。
架渡部20を構成する素材はどのようなものであっても構わないが、伸縮性を有する素材が好ましい。架渡部20の素材として伸縮糸等で編成した編物等の伸縮性を有する素材を用いると、架渡部20または加速度センサ30を容易かつ確実に頸部に当てることができる。
なお、架渡部20が架け渡される位置および架け渡し方は、被検者Aが飲み込み検出衣服を装着した際に、架渡部20が頸部の前で架け渡され、加速度センサ30が所定の測定部位上に位置するようであれば、どのようなものであってもよい。
【0018】
加速度センサ30は、少なくとも1つの軸の加速度を計測できるセンサが用いられている。加速度センサ30は、加速度の計測軸の一つが略前後方向に平行となるように、接着剤や粘着テープ等の固定手段により、架渡部20の後側の面の中央部周辺に取り付けられている。加速度センサ30は、架渡部20の前側の面に取り付けてもよいが、後側の面に取り付けるほうが、加速度センサ30を被検者Aの頸部の皮膚に直接当てることができるので、加速度の検出精度が向上する。
加速度センサ30は、加速度データをパソコン等の計算機74に送信するために、有線または無線の通信部を備えるものであってもよい。
【0019】
飲み込み検出衣服は、架渡部20が、衣服本体10の襟部12において所定の位置に架け渡されて、縫い付けまたは接着等の固定手段により衣服本体10に固定されるものであってもよいが、襟部12における架渡部20の架け渡し位置を調節することができる位置調節部40,42を備えるものであってもよい。本実施形態では、位置調節部40,42として、衣服本体10および架渡部20に面ファスナ40,42がそれぞれ設けられている。具体的に説明すると、
図2に示すように、衣服本体10の後側の面のうち襟部12の左側と右側の部分には、略上下方向に延びる帯状の面ファスナ40,40がそれぞれ設けられている。また、
図3に示すように、架渡部20の前側の面のうち左右の端部側には、この面ファスナ40,40に着脱自在に連結可能であって、架渡部20の長手方向に延びる帯状の面ファスナ42,42がそれぞれ設けられている。
位置調節部40,42によると、衣服本体10の面ファスナ40,40が略上下方向に延びる態様で設けられているので、襟部12における架渡部20の掛け渡し位置を上下方向に変えて、架渡部20を衣服本体10に取り付けることができる。また、架渡部20の左右の端部側に架渡部20の長手方向に延びる帯状の面ファスナ42,42が設けられているので、架渡部20を左右方向にずらして衣服本体10に取り付けることができる。したがって、飲み込み検出衣服は、位置調節部40,42により加速度センサ30の位置を上下左右に変更することができる。
なお、衣服本体10の面ファスナ40,40は、衣服本体10の前側の面に設けてもよく、この場合、架渡部20の面ファスナ42,42は、架渡部20の後側の面に設ける。
また、位置調節部40,42は、面ファスナ40,42以外のものであってもよく、加速度センサ30の位置を上下左右に変えるため、襟部12における架渡部20の架け渡し位置を変えることができるものであればどのようなものであってもよい。例えば、衣服本体10の面ファスナ40,40に代えて、スナップボタンの凹部または凸部を略上下方向に複数設け、架渡部20の面ファスナ42,42に代えて衣服本体10のスナップボタンに対応するスナップボタンの凸部または凹部を設けてもよい。また、位置調節部40,42は、スナップボタンの代わりに、ボタンとボタンホールの組み合わせとしてもよい。
【0020】
飲み込み検出衣服は、さらに、制御部と、通知部と、を備えるものであってもよい。制御部および通知部は、例えば加速度センサ30に備えることができる。飲み込み検出衣服に制御部および通知部を備えると、制御部が、計測された加速度と閾値とを比較し、加速度が閾値より大きい場合には、飲み込みがあったものと判断する飲み込み判断処理を行い、飲み込みがあったと判断した場合には通知部で通知するようにすることができる。制御部としては、例えばCPU(Central Processing Unit)と、ROM(Read Only Memory)と、RAM(Random Access Memory)と、を有するものを用いることができる。通知部としては、例えばランプ、ブザーまたはモニタ等を用いることができ、なかでも食事や会話の際に邪魔にならないランプが望ましい。なお、制御部および通知部を、必ずしも加速度センサ30に備える必要はなく、例えば、制御部としてパソコン等の計算機74を用い、通知部として、モニタ等を用いることもできる。この場合、加速度センサ30および計算機74には、加速度データを送受信するために有線または無線の通信部が設けられる。
【0021】
次に、飲み込み検出衣服の使用方法について説明する。
図4は、被検者Aが飲み込み検出衣服を装着した状態を示す。飲み込み検出衣服は、被検者Aの頸部を襟部12に通し、左右の装着部16,16をそれぞれの面ファスナ18,19で連結して装着する。この際、架渡部20が頸部の前側に架け渡されるようにするとともに、加速度センサ30が頸部のうち前頸筋上に位置するように、位置調節部40,42により、襟部12における架渡部20の架け渡し位置を調節する。このように襟部12に架渡部20を架け渡すことにより、加速度センサ30の計測軸の1つが筋肉の筋繊維の走行方向に略直交する。
ここで、前頸筋とは、舌骨上筋および舌骨下筋の総称である。舌骨上筋とは、顎二腹筋、茎突舌骨筋、顎舌骨筋およびオトガイ舌骨筋の総称であり、舌骨下筋とは、胸骨舌骨筋、肩甲舌骨筋、胸骨甲状筋および甲状舌骨筋の総称である。
加速度センサ30による計測部位については、前頸筋のうち舌骨下筋がより好ましく、特に、舌骨下筋のうち胸骨舌骨筋上がさらに好ましい。これらの部位上に加速度センサ30を配置すると、他の部位に比べて、計測される加速度の値が大きくなるので、飲み込みの判定において判定精度が向上する。
【0022】
本発明の飲み込み検出衣服は、被検者Aが容易に装着することができるので、従来の検査等に比べ、手間をかけずに飲み込みの判断資料となる被検者Aの頸部の加速度データを計測することができる。また、本発明の飲み込み検出衣服は、加速度センサ30により被検者Aの前頸筋の加速度を計測するため、筋電計等で計測する場合に比べ、飲み込みの判定に非常に適したデータを取得することができる。
また、飲み込み検出衣服は、非侵襲的で拘束性も弱いので、被検者Aに負担をかけずに加速度データを計測することができる。また、エプロンや前掛けなど食事の際に着用する衣服に取り付けることで、食事中に自然な形で着用することができ、飲み込みを検知されているという感覚を薄めることができる。
【0023】
また、飲み込み検出衣服は、位置調節部40,42を備えることにより、加速度センサ30の取り付け位置を調整することができるので、頸部のうちデータの取得に好適な部位上に加速度センサ30を配置することができる。
【0024】
飲み込み検出衣服は、制御部が加速度センサ30で計測された加速度データに基づいて飲み込み判断処理を行い、飲み込みがあったことを通知部により通知させることにより、検者が被検者Aの飲み込みの有無を確実に把握することができるので、一人あたりの食事介護時間を短縮することができ、食事介護の効率化を図ることができる。
【0025】
次に、飲み込み検出衣服に関して行った実験について説明する。実験は、頸部における加速度センサ30の好適な取り付け位置を調べる実験と、飲み込み検出衣服を装着した被検者Aが飲み込みを行う実験を行った。以下、前者、後者の順に説明を行う。
図5は前者の実験の概要を示す。
加速度の測定部位は、顎二腹筋(Daigastric muscle)、胸骨舌骨筋(Sternohyoid muscle)および胸骨甲状筋(Sternothyroid muscle)の3箇所とした。
加速度の測定には、加速度データを送信可能な加速度センサ30(ZB−155H,ZB−156H:日本光電工業株式会社製)と、加速度データを受信する受信機72および計算機74を有するマルチテレメータシステム70(WEB1000:日本光電工業株式会社製)と、を用いた。加速度センサ30は、顎二腹筋には1軸(x軸)の加速度を計測できるZB−155Hを用い、胸骨舌骨筋および胸骨甲状筋には3軸(x軸、y軸、z軸)の加速度を計測できるZB−156Hを用いた。加速度センサ30は、両面テープにより各測定部位上の皮膚の表面に取り付けた。顎二腹筋の加速度センサ30(ZB−155H)は、加速度の検出軸であるx軸がその筋繊維の走行方向と略直交するように取り付けられた。胸骨舌骨筋および胸骨甲状筋の加速度センサ30(ZB−156H)は、加速度の検出軸であるx軸がそれぞれの筋繊維の走行方向と略平行となるようにするとともに、加速度の検出軸であるz軸がそれぞれの筋繊維の走行方向と略直交するように取り付けた。各加速度センサ30で計測された加速度データは、無線で受信機72に送信され、その加速度データを計算機74に送信して、計算機74の記憶装置に記憶させた。加速度データのサンプリング周波数は、1kHzとした。
被検者Aは、健常な成人男性6名(22.3±0.9歳)とした。被検者Aは、座位で安静状態を保ち、飲料水10mlを口に含んだ後、検者の指示した時刻にそれを飲み込んだ。このような飲み込みを各被検者Aに対し5回行った。
【0026】
図6は、被検者Aの飲み込み実験により得られた飲み込み時刻の前後1.5秒間の加速度データの時系列を示すグラフである。
図6は、上から順に、(A)生データ、(B)生データにバンドパスフィルタを施したデータおよび(C)さらに全波整流を行ったデータが示されている。図中の黒帯線は、被検者Aが飲み込んでいると検者が判断した時間範囲を示す。
図6によると、飲み込み時に加速度が大きく変化することがわかる。
【0027】
次に、加速度データの解析方法について説明する。実験により得られた加速度データの時系列によると、飲み込み時刻の前後に周期的なピークが観測された。そこで、これらのピーク間隔(912±14ms)が、被検者Aの心拍数であると判断し、その最大値を閾値とした。そして、加速度データが最初に閾値を越える時刻を飲み込み開始時刻とし、その後加速度データが最後に閾値を下回る時刻を飲み込み終了時刻とした。また、飲み込み開始時刻の1ms前からの−1s間を安静時とした。
そして、生の加速度データxtのうち、上記のように定義された安静時のデータと飲み込み時のデータから以下の(1)式により単位時間当たりの積分値を求めた。
【0029】
また、統計的処理として、(1)式より求められた加速度データの単位時間当たりの積分値iAcc(以下、加速度の積分値iAccとする)等に対し、t検定または一元配置分析のSidak法による解析を行った。
【0030】
図7(A)は、被検者6名より計測された各測定部位における安静時と飲み込み時の加速度データの積分値iAccを示す。これによると、各測定部位における加速度の積分値iAccは、安静時より飲み込み時のほうが有意に大きくなる。また、胸骨舌骨筋の飲み込み時の加速度の積分値iAccは、他の部位のそれより有意に大きくなる。
図7(B)は、各測定部位における安静時と飲み込み時の加速度の積分値iAccの比を示す。これも
図7(A)と同様に、胸骨舌骨筋の値が最も大きく、他の部位に比べ有意に大きくなる。
【0031】
次に、飲み込み検出衣服を装着した被検者Aが飲み込みを行う実験について説明する。実験に用いた飲み込み検出衣服は、上記実施形態のものである。
被検者Aの対象は、若年者と高齢者とした。若年者は、健常な成人男性10名(22.1±0.9歳)と健常な成人女性10名(21.2±0.4歳)とした。高齢者は、要介護高齢者(男性1名、女性3名、83.0±5.6歳、要介護4.8±0.5)とした。
飲み込み検出衣服は、加速度センサ30が、胸骨舌骨筋上の皮膚の表面において、加速度の検出軸であるx軸がそれぞれの筋繊維の走行方向と略平行となるようにするとともに、加速度の検出軸であるz軸がそれぞれの筋繊維の走行方向と略直交するように被検者Aに装着された。
高齢者に対しては、飲み込み検出衣服による計測に加えて、筋電計(ZB−150H、日本光電工業株式会社製)による計測も行った。筋電計は、顎二腹筋上の皮膚の表面において筋繊維の走行方向と略直角となるように装着した。
被検者Aが飲み込むものは、飲料水に代えてゼリー状のお茶とし、検者がこれを被検者Aの口に運んだ。検者は、被検者Aが飲み込んだと判断した場合には、フットスイッチ76により計算機74にタイムスタンプを入力した。また、被検者Aの飲み込みを観察するためビデオ撮影を行った。
【0032】
若年者の安静時と飲み込み時の判断については、上記加速度センサ30の取り付け位置に関する実験と同じ方法により判断した。高齢者の安静時と飲み込み時の判断については、高齢者から計測される加速度データには上述のような心拍動が見受けられないため、お茶を飲み込むときに計測される加速度データの振幅の半分以下の振幅となる範囲を安静時とし、検者がタイムスタンプを入力した時刻と検者がビデオ映像から推定した飲み込みの時間範囲を飲み込み時と再定義した。
【0033】
若年者の加速度データの積分値iAccは、上記加速度センサ30の取り付け位置に関する実験と同様の方法で(1)式より求める。
高齢者の加速度データの積分値iAccは、上記により再定義された高齢者の安静時のデータと飲み込み時のデータから(1)式により求める。
また、筋電計で得られた生のデータEtのうち上記により再定義された高齢者の安静時のデータと飲み込み時のデータから、以下の(2)式によりそれぞれの単位時間当たりの積分値を求める。
【0035】
図8(A)および
図8(B)は、それぞれ健常な男性被検者および女性被検者の安静時と飲み込み時のx軸、y軸およびz軸における加速度の積分値iAccの比を示す。これによると、加速度の積分値iAccの比は、男女いずれも安静時より飲み込み時のほうが有意に大きくなる。また、加速度の積分値iAccの比は、男女問わず、z軸の加速度が、他の軸より有意に大きくなる。
【0036】
図9は、高齢者の典型的な飲み込み時の加速度データおよび筋電値の時系列を示す。図中の凡例において、嚥下はフットスイッチ76によりタイムスタンプが入力された時間を表す。これによると、筋電値は、タイムスタンプが入力された時刻(嚥下時)だけではなく、その時刻以外においても大きな振幅が計測されており、筋電値から飲み込みの有無を判定することは困難であることがわかる。これに対し、加速度データは、タイムスタンプが入力された時刻に対応して振幅が大きく変化しており、加速度データから飲み込みを判定できることがわかる。
【0037】
図10(A)は、各高齢者の安静時の筋電値の積分値iEMGの平均値を基準とした飲み込み時の筋電値の積分値iEMGを示す。
図10(B)は、各高齢者の安静時の加速度の積分値iAccの平均値を基準とした飲み込み時の加速度の積分値iAccを示す。筋電値の積分値iEMGによると、安静時よりも飲み込み時のほうが有意に大きくなるのは、被検者4名のうち2名だけである。一方、加速度の積分値iAccによると、被検者4名全てにおいて安静時よりも飲み込み時の方が、有意に値が大きくなる。
【0038】
図11(A)は、全高齢者の安静時の筋電値の積分値iEMGの平均値を基準とした飲み込み時の筋電値の積分値iEMGを示す。
図11(B)は、全高齢者の安静時の加速度の積分値iAccの平均値を基準とした飲み込み時の加速度の積分値iAccを示す。これらによると、筋電値の積分値iEMGは、安静時と飲み込み時において値に有意な差はなかったが、加速度の積分値iAccは、安静時より飲み込み時の方が、値が有意に大きくなる。
【0039】
次に、本発明の実施形態の飲み込み検出器について説明する。飲み込み検出器は、
図1〜
図3に示すように、衣服(衣服本体10)の襟部12に取り付けられ、頸部の前側に掛け渡される架渡部20と、架渡部20に取り付けられる加速度センサ30と、を備えている。
架渡部20は、上記飲み込み検出衣服のものと同じであるため、ここでは具体的な説明を省略する。架渡部20には、必要に応じて面ファスナ42等の位置調節部42が備えられる。
加速度センサ30も上記飲み込み検出衣服のものと同じであるため、ここでは具体的な説明を省略する。加速度センサ30は、架渡部20が襟部12に架け渡された衣服を被検者が着用する際、被検者の頸部の前頸筋上に位置し、かつ、加速度センサ30の計測軸の一つが略前後方向に平行となるように、接着剤や粘着テープ等の固定手段により架渡部20に取り付けられている。
架渡部20は、上記衣服本体10等の衣服の襟部12において所定の位置に架け渡された状態で、縫い付けまたは接着等の固定手段により衣服に固定して使用してもよいし、架渡部20および衣服に備えた位置調節部40,42により固定して使用してもよい。
衣服の襟部12に架け渡した飲み込み検出器の使用方法および効果については、上記飲み込み検出衣服の使用方法と同じであるため、ここでは説明を省略する。
【0040】
以上に示した本発明の飲み込み検出衣服および飲み込み検出器は、上記実施形態の構成に特に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内において適宜変更可能である。
また、本発明の飲み込み検出衣服および飲み込み検出器は、人に限らず、他の動物に適用することもできる。