【課題】比較的簡易な構成でありながら通過する異物の状況(大きさ、形状、通過位置)に関する情報を得ることができる血管内異物透視、例えば血管内異物の判別を容易に行うことのできる血管内異物透視装置を提供する。
【解決手段】複数の超音波振動子を送信子・受信子それぞれ同配列で二次元配列し、この二次元配列によって構成される検出面範囲を所定の連続時間に亘って超音波検知するとともに、二次元配列された各受信子のうち一部の受信子の検出信号によって検出された血流内の異物オブジェクトTP1,BP1を、表示装置の表示画面D1において前記所定の連続時間に亘って、前記二次元マップ上の対応位置に表示する。
複数の超音波振動子を送信子・受信子それぞれ同配列で二次元配列し、この二次元配列によって構成される検出面範囲を所定の連続時間に亘って超音波検知するとともに、二次元配列された各受信子のうち一部の受信子の検出信号によって検出された血流内の異物オブジェクトを、表示装置の表示画面において前記所定の連続時間に亘って、前記二次元マップ上の対応位置に表示する血管内異物透視装置。
二次元配列された各受信子の検出信号によって検出された血管形状を、表示装置において二次元配列した二次元マップ上に表示し、二次元配列された各受信子のうち一部の受信子の検出信号によって検出された血流内の異物オブジェクトを、前記二次元マップ上の対応位置に表示する請求項1記載の血管内異物透視装置。
二次元配列された複数の受信子による反射波のデータを、時間領域又は周波数領域のいずれかによって送信から受信までの時間遅れを補正する補正項によって補正し、前記補正項による補正後のデータに基づいて、検出異物を検出深さの情報と共に表示装置に表示する請求項1又は2記載の血管内異物透視。
各振動子で受信した超音波信号を、時間軸を含む情報として分析し、異物オブジェクトの固さ、大きさ、及び流通速度に基づく判別基準によって、異物オブジェクトを予め分類した複数種類のオブジェクトモデルのいずれかに判別し、表示画面において、前記判別したオブジェクトモデルに1対1対応した色又は形状で、前記所定の連続時間に亘って、前記二次元マップ上の対応位置に表示する請求項1,2,3,4のいずれかに記載の血管内異物透視。
【背景技術】
【0002】
ドップラー・エコーを利用した肺血栓・塞栓症の検出モニター装置として、従来、超音波ドップラー・エコー断装置のセンサー(超音波発振・受信部)を常に患者肺動脈にむけておき、肺動脈主幹部内の血液の速度を検知し数値としてインジケーターに表示する計算・表示部分を備え、モニターは患者肺動脈末梢に血栓・塞栓が進入(飛来)し肺動脈血液速度が低下した場合には、これを認識し30%程度の血液速度低下でアラーム音を発するとしたものが開示される(特許文献1参照)。
【0003】
また従来、生体内の血管を通過する血栓を検出する血栓血管内異物透視として、超音波を送受波する振動子手段と、前記振動子手段に駆動パルスを印加すると共に前記振動子手段から出力される信号を受信する送受波手段と、前記送受波手段の出力信号を処理して血管内を通過する血栓を検出する検出手段と、前記検出手段の検出結果に基づいて警報を発する警報手段とを備えたものが開示される(特許文献2参照)。これは、血栓が血管内を通過する場合には、その血栓の通過に伴って、エコー信号には、血管の内壁部の位置で反射する波形(正常な波形)に加えてその波形のほぼ中間付近(血栓の通過位置)に血栓の形状に応じて反射するような波形が観察されるようになる。検出手段はこの血栓の形状に応じた反射波形を検出する、とされる。
前記特許文献2にはさらに、超音波を送受波する振動子手段と、前記振動子手段に駆動パルスを印加すると共に前記振動子手段から出力される信号を受信する送受波手段と、前記送受波手段の出力信号を処理して血管内を通過する血栓を検出する第1の検出手段と、検査光を発生する光源部手段と、前記光源部から発生して被検体を通過した検査光を受光し、受光した検査光の強度に応じた電気信号を出力する受光部手段と、前記受光部手段の出力信号を処理して血管内を通過する血栓を検出する第2の検出手段と、前記第1及び第2の検出手段の検出結果に基づいて警報を発する警報手段とを備えたものが開示される。これは、超音波式の第1の血栓血管内異物透視と光源式の第2の血栓血管内異物透視とを組み合わせたものであり、これによって、両者の特長をうまく利用して血栓の通過を高精度に検出することができる、とされる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記前者の肺血栓・塞栓症の検出モニター装置は超音波の振動子の送受が一対一で行われる、いわゆる1チャンネル測定であるため、超音波の振動子の送受によって得られる情報に制限があった。特に血管内の異物通過は単なる異物通過数や通過速度に関する情報の他に、通過した異物の大きさ、形状、或いは異物通過した異物がこれらのいずれの種かを判別すること、等が必要とされる。
また上記後者の血栓血管内異物透視のように、血栓の通過を高精度に検出すべく、超音波式の第1の血栓血管内異物透視と光源式の第2の血栓血管内異物透視とを組み合わせて構成すると、検出手段の構成及び情報の同期制御が複雑となり、装置構成が複雑で高価なものとなってしまう。
【0006】
そこで本発明は、血管内異物透視装置及び血管内異物透視方法として、比較的簡易な構成でありながら通過する異物の状況(大きさ、形状、通過位置)に関する情報を得ることができる血管内異物透視、例えば血管内異物の判別を容易に行うことのできるものを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は上記課題を解決するために以下(1)〜(6)の手段を講じている。
(1)(二次元配列範囲の異物連続検知)
複数の超音波振動子を送信子・受信子それぞれ同配列で二次元配列し、この二次元配列によって構成される検出面範囲を所定の連続時間に亘って超音波検知するとともに、二次元配列された各受信子のうち一部の受信子の検出信号によって検出された血流内の異物オブジェクトを、表示装置の表示画面において前記所定の連続時間に亘って、前記二次元マップ上の対応位置に表示する血管内異物透視装置。
【0008】
これにより、複数の超音波振動子を送信子・受信子それぞれ同配列で二次元配列し、この二次元配列によって構成される検出面範囲を超音波検知する検知ステップと、
前記二次元配列された複数の超音波振動子の受信子による反射波のデータを、時間領域又は周波数領域のいずれかによって送信から受信までの時間遅れを補正する補正項によって補正するステップと、
二次元配列された複数の超音波振動子の受信子によって検出された血流内の異物オブジェクトを、表示装置の表示画面における前記検知ステップの検出面範囲に対応した表示領域において、一部の受信子の検出信号を受信した特定の受信子に対応する前記二次元マップ上の対応位置に表示する表示ステップとを、
各ステップそれぞれ連続時間に亘って連続的に実行することができる。所定の検出面範囲内の血流状態(血流内の異物の流れ方)を連続的に検知し、動画として連続的に表示する。異物通過を動画として、前記二次元マップ上の対応位置に表示することで、通過する異物の通過有無だけでなく、通過の情報(大きさ、速度、位置等)を容易に得ることができる。
【0009】
(2)(二次元配列のマップ表示)
上記いずれかに記載の検出装置においては、例えばさらに、二次元配列された各受信子の検出信号によって検出された血管形状を、表示手段において二次元配列した二次元マップ上に表示し、二次元配列された各受信子のうち一部の受信子の検出信号によって検出された血流内の異物オブジェクトを、前記二次元マップ上の対応位置に表示することが好ましい。
検出面に合わせた2次元配列のマップ表示を行う。通過する異物の2次元通過情報(速度、位置等)を直感的に得ることができる。
【0010】
(3)(時間遅れ補正項によるドプラフォーカシング)
上記いずれかに記載の検出装置においては、例えばさらに、二次元配列された複数の受信子による反射波のデータを、時間領域又は周波数領域のいずれかによって時間遅れを補正する補正項によって補正し、前記補正項による補正後のデータに基づいて、検出異物を検出深さの情報と共に表示装置に表示することが好ましい。
異物情報を、3次元の血管の検出深さの情報と共に連続的に表示することができる。
【0011】
(4)(時間領域における時間遅れ補正項)
前記時間遅れを補正する補正項が、下記式による時間領域における補正式からなることが好ましい。
【数1】
空間的な時間遅れを幾何的に解析し立式し、さらに著音波素子単体の音場特性、アレイ全体の音場特性を考慮した単純式に置き換えることで、時間遅れを補正する。簡易判別でありながら多くの情報を伴うドプラフォーカシングを連続的に行うことができる。
【0012】
(5)(異物種の判別表示)
上記いずれかに記載の血管内異物透視においては、例えばさらに、各振動子で受信した超音波信号を、時間軸を含む情報として分析し、異物オブジェクトの固さ、大きさ、及び流通速度に基づく判別基準によって、異物オブジェクトを予め分類した複数種類のオブジェクトモデルのいずれかに判別し、表示画面において、前記判別したオブジェクトモデルに1対1対応した色又は形状で、前記所定の連続時間に亘って、前記二次元マップ上の対応位置に表示することが好ましい。
ここで、複数種類のオブジェクトモデルとは血栓/飛沫/気泡という、異物の2種類以上の分類のほか、小栓子/大栓子という大きさの2種類以上の分類、或いは硬栓子/軟栓子という形状変化の2種以上の分類のそれぞれ、或いはこれら各分類の組み合わせに対応したオブジェクトモデルを含む。前記手段によれば、簡易な構成でありながら、検出異物を分類したマップ表示を行うことができる。
(6)血管内異物透視方法
本発明の血管内異物透視方法は、複数の超音波振動子を送信子・受信子それぞれ同配列で二次元配列し、この二次元配列によって構成される検出面範囲を超音波検知する検知ステップと、
前記二次元配列された複数の超音波振動子の受信子による反射波のデータを、時間領域又は周波数領域のいずれかによって送信から受信までの時間遅れを補正する補正項によって補正するステップと、
二次元配列された複数の超音波振動子の受信子によって検出された血流内の異物オブジェクトを、表示装置の表示画面における前記検知ステップの検出面範囲に対応した表示領域において、一部の受信子の検出信号を受信した特定の受信子に対応する前記二次元マップ上の対応位置に表示する表示ステップとを、
各ステップそれぞれ連続時間に亘って連続的に実行する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によって提供される血管内異物透視装置及び血管内異物透視方法は、上記のとおり、超音波の発信素子と受信素子とを同じ配列で二次元配列し、この二次元配列によって構成される検出面範囲を所定の連続時間に亘って超音波検知すると共に、表示装置においても同配列で二次元配列してマップ表示する構成を採用しているため、他の血管内異物透視の組み込み等による複雑な構造をとることなく、通過する異物の状況(数、大きさ、形状、通過位置)に関する情報を高精度に得ることができるものとなった。特に送受信共に同じ二次元配列と連続波信号との組み合わせにより、比較的簡易な構造でありながら長期間の使用によっても動作不良や異常振動が比較的生じにくく、安定した高精度の検出情報を連続的に得られるものとなった。また簡易な構造でありながらさらには例えば血管内異物の判別を容易に行うことのできるものとなった。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の実施例1の血管内異物透視装置の装置構成を示す説明図。
【
図2】本発明の実施例2の血管内異物透視装置の装置構成を示す説明図。
【
図3A】本発明の血管内異物透視装置の検出デバイスにおける超音波振動子の第一の配列例を示す説明図。
【
図3B】本発明の血管内異物透視装置の検出デバイスにおける超音波振動子の第二の配列例を示す説明図。
【
図3C】本発明の血管内異物透視装置の検出デバイスにおける超音波振動子の第三の配列例を示す説明図。
【
図4A】本発明の血管内異物透視装置による検出面範囲(a)及び表示画面(b)の第一の例を示す説明図。
【
図4B】本発明の血管内異物透視装置による検出面範囲(a)及び表示画面(b)の第二の例を示す説明図。
【
図4C】本発明の血管内異物透視装置による検出面範囲(a)及び表示画面(b)の第三の例を示す説明図。
【
図5】本発明の血管内異物透視装置による検出面範囲(a)及び表示画面(b)の第四の例を示す説明図。
【
図6】本発明の血管内異物透視方法における血管内異物のオブジェクトモデル(T/N)の判別フロー例。
【
図7】本発明の血管内異物透視装置及び血管内異物透視方法の試験機構成を示す説明図。
【
図8】血管内異物の無い状態における、受信した超音波信号の時間遅れ補正後のデータの表示例。
【
図9】血管内異物の無い状態における、受信した超音波信号の短時間フーリエ変換後のデータの表示例。
【
図10】血管内異物として気泡のある状態における、受信した超音波信号の時間遅れ補正後のデータの表示例。
【
図11】血管内異物として気泡のある状態における、受信した超音波信号の短時間フーリエ変換後のデータの濃淡画像表示例。
【
図12】血管内異物として気泡のある状態における、受信した超音波信号の時間遅れ補正後のデータの他の表示例。
【
図13】血管内異物として血栓のある状態における、受信した超音波信号の時間遅れ補正後のデータの表示例。
【
図14】血管内異物として血栓のある状態における、受信した超音波信号の短時間フーリエ変換後のデータの濃淡画像表示例。
【
図15】血管内異物として血栓及び気泡のある状態における、受信した超音波信号の短時間フーリエ変換後のデータの濃淡画像表示例。
【
図16】血管内異物として血栓及び気泡のある状態における、受信した超音波信号の時間遅れ補正後のデータの表示例。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を実施するための形態例を、実施例として示す各図と共に説明する。
図1に示す本発明の実施例1の血管内異物透視装置は、複数の超音波振動子を送信子・受信子それぞれ同配列で二次元配列した第一検出デバイスP1,第二検出デバイスP2と、これら各検出デバイスP1,P2による超音波振動を制御し信号を送受信させる制御装置2と、制御装置2によって受信した反射波のデータを補正及び増幅処理する処理装置1と、処理装置1によって処理された反射波のデータに関する情報を表示する表示領域M1を備えた表示装置と、から装置構成される。実施例1は2つの検出デバイスP1,P2と有線で併接続された制御装置2が記憶部R、表示装置M2、入力装置12を備え、各受信子のチャンネルに対応した信号がケーブルCによって処理装置1に接続される。処理装置1にはスイッチS,調整装置V,スピーカー及び検出デバイスP1,P2の係止部が設けられ、表示装置M1,入力装置1に有線又は無線接続される。
【0016】
図2に示す本発明の実施例2の血管内異物透視装置は、複数の超音波振動子を送信子・受信子それぞれ同配列で二次元配列した第三検出デバイスP3´/第四検出デバイスR3のいずれかと、この第三検出デバイスP3´/第四検出デバイスR3のいずれかとケーブルCで接続された制御装置2と、制御装置2によって受信し送信された反射波のデータを受信し処理するサーバー装置Sと、から装置構成される。実施例2は2つの検出デバイスP3´,R3のいずれかとケーブルCで有線接続された処理装置1兼制御装置2が、入力装置13兼用の静電式表示装置M3を備え、処理装置1兼制御装置2が、サーバー装置Sとの間で無線信号を送受信する。
【0017】
(検出デバイス)
検出デバイスは第一検出デバイスP1のような方形の検出面形状でもよいし、第二検出デバイスP2のような円形の検出面形状でもよい。実施例1の血管内異物透視装置は、第一検出デバイスP1,第二検出デバイスP2の2種の検出面形状の検出デバイスを併接続可能に有する。実施例2の血管内異物透視装置は、第三検出デバイスP3´/第四検出デバイスR3の2種の検出面形状の検出デバイスのいずれかをそれぞれ交換によって単独接続可能に有する。
図3A、B,Cには各検出デバイスにおける超音波振動子の第一、第二、第三の配列例が示される。第一検出デバイスP1、第三検出デバイスP3´/第四検出デバイスR3の各先端の検出面PEには、例えば
図3A,
図3Bのいずれかで示されるように複数の超音波振動子が矩形(正方形)形状として縦横配列される。第二検出デバイスP2の先端の検出面PEには、例えば
図3Cで示されるように複数の超音波振動子が中央に階段状の太幅部を有する横長矩形形状として縦横配列される。
各検出面には、複数の超音波振動子が送信子T・受信子Rそれぞれ、縦横に同配列で二次元配列される。送信子T・受信子Rは左右又は右左に同数ずつの送受子対となり、各送受子対が縦横に特定の二次元配列形状に配列される。また
図3Aでは左右同方向配列の送受子対が,縦横に同数ずつ配列されている一方、
図3B及び
図3Cでは送受子対が別々に構成されて、一行ごとに左右方向を逆にした送受子対が,行ごとに横方向の位置をひとつずつずらして配列されている。すなわち
図3B、
図3Cでは送信子、受信子が互い違いに斜め方向に配列されていわゆる市松模様配列となっている。(なお
図3Cの最上段右上のT12はR12の誤記である。)また慈雨3Cでは一行ごとに左右方向を逆にした送受子対が,行ごとに横方向の列数を変えて、中央に階段状の太幅部を有する横長矩形形状に配列されている。
【0018】
図4A、B,C、
図5の各上図(a)に第一、第二、第三、第四の例を示すように、本発明の血管内異物透視装置による検出面範囲(a)には例えば、受信子の縦配列DV,横配列DHからなる検出領域Dの範囲に、被験者の血管Vが検出される。
図4Aでは1つの血栓Tが、
図4Bでは複数の気泡Bが、
図4Cでは複数の血栓T及び複数の気泡Bが、それぞれ検出面範囲に表れた例となっている。
図4A、B,Cの各下図(b)にそれぞれの上図に対応した第一、第二、第三の表示画面(b)例を示す。
図4A、B,Cの下図(b)の右側のように、表示装置M1,M2には例えば、各上図の検出領域Dの縦配列DV,横配列DHの二次元配列に対応して、縦配列D1V,横配列D1Hからなる表示領域D1の範囲に、検出面範囲に対応した被験者の血管VPが二次元配列内の対応形状で表示される。また検出した異物に対応した異物オブジェクトTP1,BP1が二次元配列内の対応位置かつ対応形状で表示される。
また
図4A、B,Cの下図(b)の左上側のように、検出した異物は検出数に応じて表示領域D2に二次元検出面積量と共にバー表示される。
図4Aでは一つの血栓が一つの血栓表示TP2としてその大きさを表す着色レベルでバー表示され、
図4Bでは四つの気泡が四つの気泡表示BP2としてその大きさを表す
図4Aの血栓表示TP2よりも小さい着色レベルでバー表示され、
図4Cでは2つの血栓と2つの気泡とが2つの血栓表示TP2及び2つの気泡表示BP2としてその大きさの順に上からそれぞれの大きさを示す着色レベルでバー表示される。
これら
図4A、B,Cの下図(b)の右側、左上側の表示は、
図4A、B,Cの下図(b)の各左下側に表示される短時間フーリエ変換後のデータの濃淡画像表示D3に基づくものであり、
図4A、B,Cの下図(b)の各左下側には受信信号の短時間フーリエ変換後のデータの二次元画像が濃淡レベル調整された状態で表示される。この受信信号の短時間フーリエ変換後のデータの濃淡画像表示D3は、
図7の試験機構成によって得られた
図11,
図14,
図15の濃淡画像表示例と同じものであり、血栓Tが検出面範囲に表れた場合は血栓表示TP3として横方向に傾斜して広がる山形のピークが表示され、気泡Bが検出面範囲に表れた場合は気泡表示BP3として縦方向にまっすぐ伸びる線状ピークが表示される。なお、この濃淡画像表示D3は、
図7の試験機構成によって得られた
図11,
図14,
図15の濃淡画像表示例と同じものである。
図5の下図(b)には、同上図(a)に対応した第四の表示画面(b)例を示す。
図5のように、表示装置M1,M2には例えば、各上図の検出領域Dの縦配列DV,横配列DHの二次元配列及び奥行き情報に対応して、縦配列D1V,横配列D1H,及び奥行き配列D1Dからなる三次元表示領域D4の範囲に、検出面範囲に対応した被験者の血管VPが三次元配列内の三次元対応形状で表示される。また検出した異物に対応した異物オブジェクトTP,BPが三次元配列内の対応位置かつ対応した三次元形状で表示される。
【0019】
また本発明の血管内異物透視方法は、本発明の血管内異物透視方法は、複数の超音波振動子を送信子・受信子それぞれ同配列で二次元配列し、この二次元配列によって構成される検出面範囲を超音波検知する検知ステップと、
前記二次元配列された複数の超音波振動子の受信子による反射波のデータを、時間領域又は周波数領域のいずれかによって送信から受信までの時間遅れを補正する補正項によって補正するステップと、
二次元配列された複数の超音波振動子の受信子によって検出された血流内の異物オブジェクトを、表示装置の表示画面における前記検知ステップの検出面範囲に対応した表示領域において、一部の受信子の検出信号を受信した特定の受信子に対応する前記二次元マップ上の対応位置に表示する表示ステップとを、
各ステップそれぞれ連続時間に亘って連続的に実行する。
最小限のステップとして少なくとも、前記実施例のいずれかの血管内異物透視装置によって取得された連続周波数データを球面形状の反射波であると仮定した時間遅れ補正プロセスを含むものであればよい。これにより、
図8,
図10、
図12、
図13、
図16に示すような受信した超音波信号の時間遅れ補正後のデータが連続時間表示として、例えば横軸を時間軸として得られる。以下、時間遅れ補正につき詳述する。
【0020】
(時間遅れ補正について)
血流に照射された超音波は3次元的に拡散し、2次元プローブによって受信される。任意の点に存在する血流は、点音源としてみなすことが可能であり、2次元プローブで受信される超音波はそれぞれ時間遅れを生じることになる。この時間遅れを補正する「時間遅れ補正」を行うことによって、任意の点に存在する血流からの超音波信号は強調され、その他からの望まない信号は抑制することが可能である。
【0021】
また、この時間遅れ補正の際に超音波指向性を考慮することによって、望まない指向性を抑制することが出来る。これは超音波2次元プローブの3次元空間送信音場より決定され、メインローブから−20dB領域とする。
【0022】
Cモードドプラフォーカシングでは、2次元的に配置された超音波アレイより連続波(CW)信号を送信する。このCW信号は生体中に存在する速度を有する血液から反射し、その速度に応じて周波数に偏移が発生する。その反射波は2次元超音波アレイにより受信される。本手法では、アナログ的なコスト等を軽減するために直交検波を行った解析信号を用いてドプラフォーカシングを行う。3次元的に存在する同一の血流からの反射波は2次元アレイによって異なる時間遅れを伴い受信されるために、この時間遅れを時間領域、あるいは、周波数領域で補正することでドプラフォーカシングを実現する。本手法では、この時間補正を時間領域にて行う。
【0023】
送信用チャンネルMt、受信用チャンネルMr(今回はMt=Mrである)を有する2次元超音波アレイのnCh(チャンネル)から送信されるCW信号p
n(r,t)は以下の数式1によって表現される。ここでPは送信音圧強度、kは波数ベクトル、ω
cは角周波数である。また、Pはすべての超音波素子で定圧力であるために、定数である。
【数2】
【0024】
前記CW信号p
n(r,t)は、空間座標r
bnに存在する血流速度に応じて、周波数Δωだけ変移が生じる。変移を考慮したCW信号p
nr(r,t)は、以下の数式2で表される。
【数3】
次に、直交検波後の解析信号p
nr(r,t)は下記数式3のように与えられる。
【数4】
【0025】
(実施例1:時間領域による時間遅れ補正の具体例)
ドプラフォーカシングの主要なプロセスである時間遅れ補正は時間領域または周波数領域で行われる。時間領域で行う時間遅れ補正の例を以下に示す。
まず、幾何学的配置から空間的な時間遅れr
bnを算出する。超音波アレイの中心(二次元超音波アレイの中心素子の中心)を原点Oとした場合を考えると、空間座標における時間遅れr
bnは下記数式4のようにあらわされる。ここで、r
onは原点OからCh n(チャンネルn)までの距離、r
obは原点から血液までの距離を示す。また、超音波振動子の素子幅をw
e、素子間の距離をw
kとする。
【数5】
上式より、
【数6】
【0026】
以上のように算出された時間遅れからドプラフォーカシングを行うと、下記数式6のように示される。
【数7】
【0027】
また、上数式6において超音波素子単体、またアレイとしての音場特性を考慮すると、以下のように書き換えられる。但し、w
nは音場特性より算出したアポダイゼーション関数である。
【数8】
以上のような時間領域による時間遅れ補正の他、周波数領域による時間遅れ補正を行うことも可能である。
【0028】
(異物種類の判別方法の具体的手順と具体例について)
予め設定した複数種類(血栓T,気泡B,)の異物の特徴と分類仕訳の設定方法について
【0029】
(実施例1:2次元グラフによる判別)の例
※異物種類は大きく血栓Tと気泡Bに分類される。判別条件の具体例として、
図9,11,13等に示す短時間フーリエ変換図を用いる。また
図6に示す判別チャートを用いる。
【0030】
上記の他、複数種類(血栓T,飛沫T´,気泡Bの3種の分類も可能である。また上記の他、多階層ニューラルネットによる階層型ニューラルネットワーク分類も可能である。この際に学習アルゴリズム、重みづけ更新を組み込むことで正確な分類が可能となる。
【0031】
(その他)
上記のほか、各振動子で受信した超音波信号をスペクトル分析し、学習を経た多層ニューラルネット解析によって、異物オブジェクトを大きさ又は硬さの異なる複数種類のオブジェクトスペクトルモデルのいずれかに判別し、判別したオブジェクトスペクトルモデルに1対1対応した色又は形状でマップ上に表示する。これにより、検出面に合わせたマップ表示を行うことができる。
【0032】
二次元配列された複数の各受信子と隣接する受信子とが重複して信号検出することで、異物オブジェクトの概形、厚さ(深度)が明瞭に認識できる。
【0033】
図7に本発明の血管内異物透視装置及び血管内異ドプラにて分類が可能かどうかを検討したものである。
図7のPPは脈動流を再現するパルスポンプ、PTはプレッシャートランスデューサー、FMは濃淡及びカラー表示可能な表示装置、DUは連続ドプラ波発生装置、DLは記憶装置たるデータロガー、WTは水のタンク、そしてPCは処理装置兼表示装置を示す。試験機用として透明の被験体ブロックBIを用いて、ここに高速カメラVCを設置し、50ミクロンの気泡をながしたときの2次元配列連続超音波の受信信号の時間挙動を計測した。気泡又は血栓が流路内を通った際には、
図12、
図16の各矢印で示すような位相の反転が確認された。これは血液(水)のインピーダンスZw、血栓の各インピーダンスZp、空気のインピーダンスZaの各値を考慮した場合、血栓から空気へ連続波超音波が入射した場合の反射率r(pa)が−1に近似されること、血液(水)から空気へ連続波超音波が入射した場合の反射率r(aw)が−1に近似されることに基づく。また気泡が流路内を通った際には、信号強度の増加及びドプラ変移周波数の週数増加が確認された。これは反射率(−1)の絶対値が1となるように反射波がすべて反射し、信号強度が増加したものと考えられる。また連続波と気泡が共振することで、非線形成分が増加したものと推定される。さらに気泡と血栓を比較すると、短時間フーリエ変換後のデータにおける縦軸:周波数1.1m/sを閾値としてこれを超える場合は気泡、超えない場合は血栓であると確認された。
【0034】
(血流透視方法)
また、本発明の血流透視方法は、血流透視によって非接触で探触データを取得する上記いずれかの血流透視装置と、取得された探触データを分析する分析装置とを具備してなる。この血流透視方法における血流透視装置は、前記第三回転子40の内部、又は第三回転子40の先部に取り付けられた先端キャップ2E内のいずれかに、血流透視41による探触データを送信する送信機43を備える。また分析装置は、送信装置43から送信された探触データを受信する受信機を備えており、一個または他数個の血流透視装置によって取得された探触データを分析する。
【0035】
その他本発明は上述した実施例の構成、数値、手順に限定されず、種々の実施例間の組み合わせ、手順の組み合わせ、構成ないし形状、処理順番の変更またはクロスオーバーが可能である。