特開2016-168548(P2016-168548A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2016-168548(P2016-168548A)
(43)【公開日】2016年9月23日
(54)【発明の名称】破砕装置の制御方法
(51)【国際特許分類】
   B02C 18/22 20060101AFI20160826BHJP
   B02C 18/24 20060101ALI20160826BHJP
   B02C 25/00 20060101ALI20160826BHJP
【FI】
   B02C18/22
   B02C18/24
   B02C25/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2015-50147(P2015-50147)
(22)【出願日】2015年3月13日
(71)【出願人】
【識別番号】000001236
【氏名又は名称】株式会社小松製作所
(71)【出願人】
【識別番号】596170228
【氏名又は名称】株式会社 タガミ・イーエクス
(74)【代理人】
【識別番号】100097755
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 勉
(74)【代理人】
【識別番号】100102211
【弁理士】
【氏名又は名称】森 治
(72)【発明者】
【氏名】銘形 良介
(72)【発明者】
【氏名】村田 義人
【テーマコード(参考)】
4D065
4D067
【Fターム(参考)】
4D065CA05
4D065CB01
4D065CC01
4D065EB20
4D065ED02
4D065ED27
4D065EE07
4D065EE13
4D067FF04
4D067FF14
4D067FF15
4D067GA11
4D067GB03
(57)【要約】      (修正有)
【課題】破砕条件に関わらず回転慣性体の損失エネルギーを破砕効率の低下を招くことなく回復させることができる破砕装置の制御方法を提供する。
【解決手段】回転方向に刃先を向けて装着される破砕刃13を具備するチッパドラム11を有してなる回転慣性体4を回転させるとともに、被破砕物7を回転慣性体4へと送って破砕刃13で破砕するようにした破砕装置1の制御方法であって、前記回転慣性体の回転速度が減少したとき、その減少量に応じて被破砕物7の送り速度を減少させる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転方向に刃先を向けて装着される破砕刃を有してなる回転慣性体を回転させるとともに、被破砕物を前記回転慣性体へと送って前記破砕刃で破砕するようにした破砕装置の制御方法であって、
前記回転慣性体の回転速度が減少したとき、その減少量に応じて被破砕物の送り速度を減少させることを特徴とする破砕装置の制御方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フライホイール効果を利用して被破砕物を破砕する破砕装置の制御方法に関し、特に、バイオマス発電用木材チップの生産に際して例えば間伐材由来の丸太を破砕するのに用いられて好適な破砕装置の制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の従来の破砕装置として、回転方向に刃先を向けて装着される破砕刃を有してなる回転体を備え、この回転体をモータにより回転駆動するとともに、丸太をその回転体へと送って破砕刃で破砕してバイオマス発電用の木材チップを生産するようにしたものがある。
【0003】
この破砕装置では、丸太をその端部から破砕刃で切削して木材チップを生産するようにしているが、連続的に切削を行うため、切削時のせん断抵抗によって回転体の回転エネルギーが減少し、モータが過負荷となって切断が中断されてしまうことがある。このため、回転体への丸太の供給を停止して、モータ過負荷が解消されるのを待って、再度丸太の供給を行い、切削動作を再開するようにしている。
【0004】
モータ容量に対して、ある限界よりも大きな径の丸太を供給すると、モータ過負荷で停止頻度が高くなり、生産性が悪くなる。例えば250kWのモータを駆動源とする場合、φ350mm以下の丸太に対しては、停止することなく安定的に生産可能であるが、φ350mm以上の丸太では、過負荷により停止する頻度が高くなる。また、例えば160kWのモータを駆動源とする場合、φ350mm以下の丸太でも停止の頻度が高くなる。
【0005】
このように、駆動源であるモータの停止頻度が高くなると、それだけ生産性が阻害され、またそれを防ぐために、容量の大きなモータを使用すると、設備価格が高くなり、かつ使用電気量も多くなるという問題点がある。
【0006】
上記のような問題点を解決し得る技術が、例えば特許文献1にて提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第3491278号公報
【0008】
この特許文献1に記載の技術においては、フライホイール効果を利用することにより、小動力でも被破砕物を安定的に破砕することができるようにされており、更に、破砕抵抗が過大となって破砕動作が実質的に追従しない恐れがあることが検知されると、被破砕物の送り動作が連続運転モードから間欠運転モードに切り替えられ、運転から次の運転までに停止時間が設けられることにより、フライホイールの損失エネルギーの回復を図って駆動源が過負荷になるのを防いで被破砕物の破砕を確実に行うことができるようにされている。
【0009】
しかしながら、上記特許文献1に記載の技術では、間欠運転モード時に被破砕物の送り動作が周期的に停止され、この停止時には被破砕物の破砕が全く行われないことになるため、破砕効率が低下するという問題点がある。
また、被破砕物の種類や大きさ等の破砕条件が変われば、フライホイールの損失エネルギーも変化するのに対し、間欠運転モード時における被破砕物の送り動作の停止時間は、実験データに基づき設定された所定時間で一定であるため、ある破砕条件下でフライホイールの損失エネルギーが想定以上である場合には、送り動作の停止時間が不足して、フライホールの損失エネルギーの回復を十分に図ることができずにその後の破砕動作が不良になり、他の破砕条件下でフライホイールの損失エネルギーが想定以下である場合には、送り動作の停止時間が過剰となり、いずれの場合でも破砕効率の低下を招くという問題点がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、前述のような問題点に鑑みてなされたもので、破砕条件に関わらず回転慣性体の損失エネルギーを破砕効率の低下を招くことなく回復させることができる破砕装置の制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記目的を達成するために、本発明による破砕装置の制御方法は、
回転方向に刃先を向けて装着される破砕刃を有してなる回転慣性体を回転させるとともに、被破砕物を前記回転慣性体へと送って前記破砕刃で破砕するようにした破砕装置の制御方法であって、
前記回転慣性体の回転速度が減少したとき、その減少量に応じて被破砕物の送り速度を減少させることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、回転慣性体の回転速度が減少したときにその減少量に応じて被破砕物の送り速度が減少されるので、破砕抵抗が減少されることになり、被破砕物の送り動作を周期的に停止させることなく、つまり破砕効率の低下を招くことなく回転慣性体の損失エネルギーを回復させることができる。また、被破砕物の種類や大きさ等の破砕条件が変われば、回転慣性体の損失エネルギーも変化するが、回転慣性体の損失エネルギーの増加と、回転慣性体の回転速度の減少とは線形関係にあるため、回転慣性体の回転速度の減少量に応じて被破砕物の送り速度を減少させれば破砕条件に関わらず回転慣性体の損失エネルギーを破砕効率の低下を招くことなく回復させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る破砕装置を示す模式図で、(a)は一部を破断して表す側面図で、(b)は一部を破断して表す背面図である。
図2図2は、同破砕装置の制御システムを示すブロック図である。
図3図3は、同破砕装置におけるコントローラでの処理内容を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、本発明による破砕装置の制御方法の具体的な実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。なお、以下に述べる実施の形態は、被破砕物として例えば間伐材由来の丸太を破砕してバイオマス発電用木材チップの生産に供する破砕装置に本発明が適用された例であるが、勿論これに限定されるものではない。例えば、パルプ用チップの生産にも適用することができる。
【0015】
<破砕装置の概略説明>
図1(a)および(b)に示される破砕装置1は、架台2と、架台2上に設置されるコンベヤ3と、コンベヤ3の下流側に配設される回転慣性体4と、コンベヤ3と回転慣性体4との間で上下に所定間隔を有して配設される上側送りローラ5Aおよび下側送りローラ5Bと、架台2上に設置され、回転慣性体4や送りローラ5A,5B等を収容するケーシング6とを備えて構成されている。
【0016】
<コンベヤの説明>
コンベヤ3は、丸太7を送りローラ5A,5Bへと搬送するものであり、例えば、周回運動するドラッグチェーンを用いて丸太7を搬送するようにしたドラッグチェーンコンベア、鉄履帯プレートを用いて丸太7を搬送するようにしたプレートコンベア、またはベルトによって丸太7を搬送するようにしたベルトコンベヤなどが挙げられる。
【0017】
<回転慣性体の説明>
回転慣性体4は、主に、回転軸10、チッパドラム11およびフライホイール12により構成されている。
回転軸10は、丸太7の搬送方向と直交するようにケーシング6の両側壁に回転自在に支持されている。
チッパドラム11は、その内部に軸心を一致させて配される回転軸10の軸方向中間部にその回転軸10と一体となって回転するように固定されている。チッパドラム11の外周面には、回転方向に刃先を向けて所定の配置で所要の破砕刃13が装着されている。
このチッパドラム11にフライホイール12を付設することにより、チッパドラム11のみの場合の回転エネルギーに加え更に大きな回転エネルギーを得ることができ、フライホイール12は、その回転エネルギーを蓄えるためのものであって、回転軸10の一端部にその回転軸10と一体となって回転するように固定されている。
【0018】
回転軸10の他端部には、従動プーリ14が固定され、架台2の内部には、後述するコントローラ20からの制御信号によって回転制御されるドラム駆動モータ15が設置され、ドラム駆動モータ15の回転軸には、駆動プーリ16が固定され、駆動プーリ16と従動プーリ14とには、伝動ベルト17が巻き掛け装着されている。そして、ドラム駆動モータ15の作動により、ドラム駆動モータ15からの回転動力が、駆動プーリ16、伝動ベルト17および従動プーリ14を介して回転軸10へと伝達されて、チッパドラム11が図1(a)中R矢印方向に回転駆動されるとともに、フライホイール12も同様に回転駆動されてそのチッパドラム11とそれに付帯したフライホイール12に回転エネルギーが蓄えられるようになっている。
【0019】
<送りローラの説明>
上側送りローラ5Aと下側送りローラ5Bは大きさには差があるものの基本的に同構造で、いずれの送りローラ5A,5Bも、その外周面に丸太7を掻き込むための複数のブレードを備えてなるものである。送りローラ5A,5Bは、後述するコントローラ20からの制御信号によって回転制御される送りモータ18と動力伝達可能に接続され、送りモータ18の作動によって図1(a)中RB1,RB2矢印方向に回転されることにより、コンベヤ3から回転慣性体4に向けて搬送される丸太7を当該送りローラ5A,5Bで挟みながらブレードで掻き込み、丸太7を強制的にチッパドラム11へと送り出すことができるようになっている。
【0020】
<コントローラの説明>
ドラム駆動モータ15や送りモータ18の回転制御などを行うコントローラ20は、マイクロコンピュータを主体に構成されるものであって、図2に示されるように、チッパドラム11の回転速度を検出する回転センサ21からの信号を取り込み、所定プログラムに従って所定の演算処理を実行し、その演算結果に基づく制御信号を各モータ15,18へと送信して、各モータ15,18の回転速度を制御する機能を有している。
【0021】
以上に述べたように構成される破砕装置1による丸太7の破砕動作は、以下のようにして行われる。
コントローラ20によるドラム駆動モータ15および送りモータ18の回転制御により、チッパドラム11を定常回転数DoRPM(例えば、650rpm)で回転させるとともに、送りローラ5A,5Bによって丸太7を規定の送り速度VF(例えば、18m/min)でチッパドラム11へと送り出す。これにより、丸太7はその端部から破砕刃13で連続的に切削・破砕されて木材チップ7aとなり、木材チップ7aはスクリーン22を通って排出コンベヤ23を介して製造チップ置場へと搬出される。
かかる破砕動作は、回転慣性体4の中でも特にチッパドラム11とそれに付帯したフライホイール12に蓄えられる回転エネルギーを利用したものであるので、比較的小容量のドラム駆動モータ15でも安定的に木材チップ7aを生産することができる。
【0022】
上記の破砕動作は、連続的に行われるため、破砕(切削)時の破砕抵抗(せん断抵抗)によって回転慣性体4の回転エネルギーが減少して、ドラム駆動モータ15の負荷が増加し、回転慣性体4の回転速度が減少する。回転慣性体4の回転速度が減少したときは、図3のフローチャートに基づく所定プログラムに従って所定の演算処理が実行され、その演算結果に基づく送りモータ18の回転制御により、丸太7の送り速度の制御が実施される。
【0023】
次に、図3のフローチャートに基づく所定プログラムの処理内容について説明する。なお、図3中の記号「S」はステップを表す。
【0024】
まず、ステップS1においては、回転センサ21からの信号に基づいて検出されるチッパドラム11の現在の回転数(以下、「実回転数DxRPM」と称する。)が、定常回転数DoRPM(650rpm)以上であるか否かを判断する。実回転数DxRPMが定常回転数DoRPM以上である、つまりステップS1でYESの場合には、送りローラ5A,5Bによる丸太7の送り速度VFを規定速度VF(例えば、18m/min)とする(S2)。一方、実回転数DxRPMが定常回転数DoRPM未満である、つまりステップS1でNOの場合には、ステップS3へと進む。
【0025】
ステップS3においては、チッパドラム11の実回転数DxRPMが600rpm以上650rpm未満であるか否かを判断する。実回転数DxRPMが600rpm以上650rpm未満である、つまりステップS3でYESの場合には、送り速度VFをVFよりも小さいVF(例えば、16m/min)まで減少させる(S4)。一方、実回転数DxRPMが600rpm未満である、つまりステップS3でNOの場合には、ステップS5へと進む。
【0026】
ステップS5においては、チッパドラム11の実回転数DxRPMが550rpm以上600rpm未満であるか否かを判断する。実回転数DxRPMが550rpm以上600rpm未満である、つまりステップS5でYESの場合には、送り速度VFをVFよりも小さいVF(例えば、14m/min)まで減少させる(S6)。一方、実回転数DxRPMが550rpm未満である、つまりステップS5でNOの場合には、ステップS7へと進む。
以下、同様の判断・処理を繰り返して、送り速度VFを決定する。
【0027】
<作用効果の説明>
本実施形態によれば、チッパドラム11の実回転数DxRPMが減少したときにその減少量に応じて丸太7の送り速度VFが減少されるので、破砕抵抗が減少されることになり、丸太7の送り動作を周期的に停止させることなく、つまり破砕効率の低下を招くことなく回転慣性体4の損失エネルギーを回復させることができる。また、丸太7の種類や大きさ等の破砕条件が変われば、回転慣性体4の損失エネルギーも変化するが、回転慣性体4の損失エネルギーの増加と、チッパドラム11の実回転数DxRPMの減少とは線形関係にあるため、チッパドラム11の実回転数DxRPMの減少量に応じて丸太の送り速度VFを減少させれば破砕条件に関わらず回転慣性体4の損失エネルギーを破砕効率の低下を招くことなく回復させることができる。こうして、丸太7の破砕動作を小動力でも安定的に連続して行うことができるので、設備費や運転費を抑えつつ木材チップ7aの生産性を高めることができる。
【0028】
以上、本発明の破砕装置の制御方法について、一実施形態に基づいて説明したが、本発明は上記実施形態に記載した構成に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において適宜その構成を変更することができるものである。
【0029】
例えば、上述した実施の形態においては、チッパドラム11とフライホイール12とを別々に独立して配設し、これらチッパドラム11とフライホイール12とを回転軸10で連結して回転慣性体4を構成する態様例を示したが、これに限定されるものではなく、チッパドラム11の端面、内周面あるいは外周面にフライホイール12と同様の役目をする部材を一体的に結合して回転慣性体を構成する態様例や、チッパドラム11の内部にフライホイール12と同様の役目をする部材を組み込んで回転慣性体を構成する態様例などもあり得る。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明の破砕装置の制御方法は、破砕条件に関わらず回転慣性体の損失エネルギーを破砕効率の低下を招くことなく回復させることができるという特性を有していることから、例えば間伐材由来の丸太を破砕してバイオマス発電用木材チップを生産する用途、あるいはパルプ用木材チップを生産する用途に好適に用いることができ、産業上の利用可能性が大である。
【符号の説明】
【0031】
1 破砕装置
3 コンベヤ
4 回転慣性体
5A,5B 送りローラ
7 丸太(被破砕物)
10 回転軸
11 チッパドラム
12 フライホイール
13 破砕刃
15 ドラム駆動モータ
18 送りモータ
20 コントローラ
21 回転センサ
23 排出コンベア

図1
図2
図3