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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2016-168691(P2016-168691A)
(43)【公開日】2016年9月23日
(54)【発明の名称】離型シート
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/32 20060101AFI20160826BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20160826BHJP
【FI】
   B32B27/32 103
   B32B27/00 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2015-48420(P2015-48420)
(22)【出願日】2015年3月11日
(71)【出願人】
【識別番号】000004503
【氏名又は名称】ユニチカ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】高橋 一幸
(72)【発明者】
【氏名】奥村 暢康
【テーマコード(参考)】
4F100
【Fターム(参考)】
4F100AH03B
4F100AK01B
4F100AK41
4F100AK62B
4F100AK64B
4F100AK65B
4F100AL07B
4F100AT00A
4F100BA02
4F100BA07
4F100BA10A
4F100BA10B
4F100DE01B
4F100EH462
4F100EJ552
4F100JB16B
4F100JN30
4F100YY00B
(57)【要約】
【課題】離型性に優れ、さらに被剥離物表面の光沢を抑え、ぎらつきを防止できる離型シートを提供する。
【解決手段】基材上に酸変性エチレン−α−オレフィン共重合体および架橋剤を含有する樹脂層を有し、前記架橋剤がカルボジイミド化合物及び/またはオキサゾリン化合物であり、かつ前記樹脂層表面の60°光沢度が50%以下であることを特徴とする離型シート。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材上に下記(i)および(ii)を含有する樹脂層を有し、かつ前記樹脂層表面の60°光沢度が50%以下であることを特徴とする離型シート。
(i)酸変性エチレン−α−オレフィン共重合体
(ii)カルボジイミド化合物および/またはオキサゾリン化合物
【請求項2】
酸変性エチレン−α−オレフィン共重合体を構成するエチレン成分とα−オレフィン成分との質量比(エチレン成分/α−オレフィン成分)が、60/40〜99/1であることを特徴とする請求項1記載の離型シート。
【請求項3】
α−オレフィン成分が、プロピレンまたは1−ブテンであることを特徴とする請求項1または2記載の離型シート。
【請求項4】
酸変性エチレン−α−オレフィン共重合体を構成する酸変性成分の含有量が、エチレン成分とα−オレフィン成分との合計に対して、1質量%未満であることを特徴とする請求項1〜3いずれか記載の離型シート。
【請求項5】
樹脂層が平均粒径0.1〜10μmの微粒子を含有することを特徴とする請求項1〜4いずれか記載の離型シート。
【請求項6】
微粒子が非架橋の熱可塑性樹脂微粒子であることを特徴とする請求項5に記載の離型シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、離型シートに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、離型シートは工業的に広く用いられている。離型シートの用途としては、例えば、粘着シート、粘着テープなどの粘着材料の粘着・接着面保護材料用途、該粘着材料の製造のための工程材料用途、プリント配線板、フレキシブルプリント配線板、多層プリント配線板等の製造のための工程材料用途、液晶ディスプレー用部品である偏光板や位相差板の保護材料用途、さらには、シート状構造体の成形用途などが挙げられる。
【0003】
離型シートの一般的な構成としては、離型性を有する樹脂をフィルム化したもの、またはフィルムや紙などの基材の上に離型剤を含む離型層を積層したものなどが挙げられる。特許文献1〜3の離型シートは、粘着シートに対して良好な離型性を示すものである。
【0004】
また、離型シートは、ゴムまたはFRP(繊維強化プラスチック)からなるシートや、不飽和ポリエステルからなるシート等の形成に用いる場合がある。かかる場合には、凹凸形状が転写されてつや消し調となった剥離面を得ることを目的として、マット化されたフッ素フィルム、梨地のポリビニルアルコールフィルム、またはサンドマット等が用いられた離型シートが使用される。すなわち、シートが形成された後に、該シートから離型シートを剥離させると、該剥離面には凹凸形状が転写し、つや消し調となった表面が得られる。このようなつや消し調の表面を有するシートは、その他の樹脂との接着性に優れるものであり、加えて建材用途などに用いられた場合には高級感や防眩性を発現することができるという利点がある。しかしながら、かかる場合においては、離型シート自体が高価であったり、ポリビニルアルコールが湿度の影響を受けるため加工しにくい場合があったり、離型シートに異物が付着したりするという問題を抱えていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−162900号公報
【特許文献2】特開2004−162048号公報
【特許文献3】特開2012−152965号公報
【特許文献4】特開2012−040707号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1、2記載の離型シートは、耐熱性が低いため、粘着シートと貼り合せた状態で、高温で保存した場合に、粘着シートと強く接着してしまい、ハンドリング性が低下することがあった。特に、粘着剤を塗工した後の乾燥時や、粘着シートの転写時などにおいて、熱がかかると、離型シートは離型性が変化しやすく、ハンドリング上好ましくないものであった。
【0007】
特許文献3記載の離型シートは、離型層が柔らかいため、離型シートをロール状に巻き取った場合に、シートのブロッキングが生じ、ロールから巻き出すことができなくなるおそれがあった。
【0008】
また、特許文献4記載の粗面化フィルムは、剥離が重いため柔らかい樹脂シートを剥がそうとすると、シートが伸びたり破れたりすることがあった。
【0009】
本発明は、上記の問題に鑑み、被剥離物表面の光沢を抑え、ぎらつきを防止できる離型シートを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、特定の組成を有する樹脂層をシート上に積層することにより、本発明に到達した。
【0011】
すなわち、本発明の要旨は、下記の通りである。
(1)基材上に下記(i)および(ii)を含有する樹脂層を有し、かつ前記樹脂層表面の60°光沢度が50%以下であることを特徴とする離型シート。
(i)酸変性エチレン−α−オレフィン共重合体
(ii)カルボジイミド化合物および/またはオキサゾリン化合物
(2)酸変性エチレン−α−オレフィン共重合体を構成するエチレン成分とα−オレフィン成分との質量比(エチレン成分/α−オレフィン成分)が、60/40〜99/1であることを特徴とする(1)記載の離型シート。
(3)α−オレフィン成分が、プロピレンまたは1−ブテンであることを特徴とする(1)または(2)記載の離型シート。
(4)酸変性エチレン−α−オレフィン共重合体を構成する酸変性成分の含有量が、エチレン成分とα−オレフィン成分との合計に対して、1質量%未満であることを特徴とする(1)〜(3)いずれか記載の離型シート。
(5)樹脂層が平均粒径0.1〜10μmの微粒子を含有することを特徴とする(1)〜(4)いずれか記載の離型シート。
(6)微粒子が非架橋の熱可塑性樹脂微粒子であることを特徴とする(5)に記載の離型シート。
【発明の効果】
【0012】
本発明の離型シートは、剥離抵抗が小さいため、粘着シート用保護フィルムのようにこれまで剥離が重くて使用ができなかった被剥離材の表面に、凹凸を形成させ、つや消し効果を付与することができる。 そのため、離型シートにおいて、高速剥離性と防眩性を両立することができる。また、耐熱性に優れるため、粘着材料等と貼りあわせた後、熱処理後でも離型性に優れる。さらに、ロール状に巻き取った場合でも、耐ブロッキング性に優れる。
【0013】
そのため、本発明の離型シートを用いてゴムシートやFRPシートなどを形成すると、剥離した後のゴムシートやFRPシートなどの表面が防眩性に優れるという効果を奏する。加えて、視認性の低下を抑制できる。すなわち、本発明の離型シートを剥離した後に、前記ゴムシートなどの表面の印刷や画像が不明瞭にならないという効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0015】
本発明の離型シートは、基材上に樹脂層を設けてなるものである。
【0016】
樹脂層は、下記(i)および(ii)を含有する。
(i)酸変性エチレン−α−オレフィン共重合体
(ii)カルボジイミド化合物及び/またはオキサゾリン化合物を含む
(i)について以下に説明する。
【0017】
酸変性エチレン−α−オレフィン共重合体は、エチレン−α−オレフィン共重合体が酸変性されたものであり、エチレン−α−オレフィン共重合体は、エチレン成分と一種以上のα−オレフィン成分とを含有する。
【0018】
α−オレフィンとしては、例えば、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ウンデセン、1−ドデセン等が挙げられる。これらの中でも、経済性の観点や入手のしやすさの観点から、プロピレン、1−ブテンが好ましい。
【0019】
エチレン−α−オレフィン共重合体における、エチレン成分とα−オレフィン成分との質量比(エチレン成分/α−オレフィン成分)は、60/40〜99/1であることが好ましく、70/30〜97/3であることがより好ましく、80/20〜95/5であることがさらに好ましい。エチレン成分とα−オレフィン成分との質量比がこの範囲外であると、得られる離型シートは離型性が低下し、また高速剥離性が低下することがある。
【0020】
エチレン−α−オレフィン共重合体は、メタロセン系触媒を使用して製造されることが好ましい。この方法により製造されたエチレン−α−オレフィン共重合体は、分子量分布が狭く、低分子量成分の量が少なく、均一な共重合体となる。
【0021】
本発明において、エチレン−α−オレフィン共重合体は、得られる樹脂層と基材との密着性を向上させ、また架橋剤と反応させて耐熱性を向上させる観点から、酸変性されていることが必要である。エチレン−α−オレフィン共重合体の酸変性は、たとえば、エチレン−α−オレフィン共重合体に不飽和カルボン酸成分を導入することによっておこなうことができる。
【0022】
本発明において、酸変性エチレン−α−オレフィン共重合体を構成する酸変性成分の含有量は、オレフィン成分全量、すなわちエチレン成分とα−オレフィン成分の合計に対して、1質量%未満であることが好ましく、0.01質量%以上、1質量%未満であることがより好ましく、0.05質量%以上、1質量%未満であることがさらに好ましく、0.1質量%以上、1質量%未満であることが特に好ましく、0.2質量%以上、1質量%未満であることが最も好ましい。酸変性成分の含有量が0.01質量%未満の場合、基材との密着性が不十分になったり、架橋剤との反応が不十分となり、耐熱性に劣ることがある。一方、酸変性成分の含有量が1質量%以上である場合、離型性が低下する傾向があり、また、通常エチレン成分を含有するポリオレフィン樹脂を酸変性させる場合、協奏的に架橋反応も進行するために、酸変性量が高いものを製造することは、操業性の観点から、実質的に困難となることがある。
【0023】
エチレン−α−オレフィン共重合体に導入される不飽和カルボン酸成分の具体例としては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、無水イタコン酸、アコニット酸、無水アコニット酸、フマル酸、クロトン酸、シトラコン酸、メサコン酸、アリルコハク酸等のほか、不飽和ジカルボン酸のハーフエステル、ハーフアミド等のように、分子内(モノマー単位内)に少なくとも1個のカルボキシル基または酸無水物基を有する化合物が挙げられる。中でもエチレン−α−オレフィン共重合体への導入のし易さの点から、無水マレイン酸、アクリル酸、メタクリル酸が好ましく、無水マレイン酸がより好ましい。
【0024】
不飽和カルボン酸成分は、エチレン−α−オレフィン共重合体中に共重合されていればよく、その形態は限定されるものではなく、例えばランダム共重合、ブロック共重合、グラフト共重合等が挙げられる。
【0025】
不飽和カルボン酸単位をエチレン−α−オレフィン共重合体へ導入する方法は、特に限定されない。例えば、ラジカル発生剤存在下、エチレン−α−オレフィン共重合体と不飽和カルボン酸とを、エチレン−α−オレフィン共重合体の融点以上に加熱溶融して反応させる方法や、エチレン−α−オレフィン共重合体と不飽和カルボン酸とを有機溶剤に溶解させた後、ラジカル発生剤の存在下で加熱、攪拌して反応させる方法等により、エチレン−α−オレフィン共重合体に不飽和カルボン酸をグラフト共重合する方法が挙げられる。操作が簡便である点から前者の方法が好ましい。
【0026】
グラフト共重合に使用するラジカル発生剤としては、例えば、ジ−tert−ブチルパーオキシド、ジクミルパーオキシド、tert−ブチルヒドロパーオキシド、tert−ブチルクミルパーオキシド、ベンゾイルパーオキシド、ジラウリルパーオキシド、クメンハイドロパーオキシド、tert−ブチルパーオキシベンゾエート、エチルエチルケトンパーオキシド、ジ−tert−ブチルジパーフタレート等の有機過酸化物類や、アゾビスイソブチロニトリル等のアゾニトリル類が挙げられる。これらは反応温度によって適宜、選択して使用すればよい。
【0027】
本発明において、樹脂層製造原料の酸変性エチレン−α−オレフィン共重合体のメルトフローレートは、特に限定されないが、230℃、2160g荷重において、0.01〜500g/10分であることが好ましく、0.1〜100g/10分であることがより好ましく、0.3〜10g/10分であることがさらに好ましい。メルトフローレートが0.01g/10分未満の酸変性エチレン−α−オレフィン共重合体は、溶剤に溶解することが困難であり、一方、酸変性エチレン−α−オレフィン共重合体のメルトフローレートが500g/10分以上であると、得られる樹脂層は、基材との密着性が低下することがあり、また粘着剤等の被着体に、低分子量成分の移行が起こりやすくなる。
【0028】
酸変性するためのエチレン−α−オレフィン共重合体として、市販のエチレン−α−オレフィン共重合体を用いることができる。市販のエチレン−α−オレフィン共重合体として、住友化学社製エスプレンシリーズ、三井化学社製タフマーシリーズなどが挙げられる。このような市販のエチレン−α−オレフィン共重合体を用いて、上記の方法で酸変性を行って、酸変性エチレン−α−オレフィン共重合体を得ることができる。
【0029】
また酸変性エチレン−α−オレフィン共重合体として、市販のものを用いてもよい。市販の酸変性エチレン−α−オレフィン共重合体として、三井化学社製タフマーシリーズのMP−0620、MH−7020、MA−8510などが挙げられる。
【0030】
(ii)について以下に説明する。
本発明の離型シートの樹脂層は、架橋剤を含有する。架橋剤としては、酸変性エチレン−α−オレフィン共重合体と反応する官能基を分子内に複数個有する化合物が用いられ、反応性の観点から、オキサゾリン化合物およびカルボジイミド化合物から選ばれる少なくとも一つの架橋剤であることが必要である。架橋剤として、オキサゾリン化合物やカルボジイミド化合物以外の化合物を用いると、得られる樹脂層は耐熱性が低下し、熱処理後の離型性が低下する傾向にある。
【0031】
オキサゾリン化合物は、分子中にオキサゾリン基を2つ以上有しているものであれば、特に限定されるものではない。例えば、2,2′−ビス(2−オキサゾリン)、2,2′−エチレン−ビス(4,4′−ジメチル−2−オキサゾリン)、2,2′−p−フェニレン−ビス(2−オキサゾリン)、ビス(2−オキサゾリニルシクロヘキサン)スルフィドなどのオキサゾリン基を有する化合物や、オキサゾリン基含有ポリマー等が挙げられる。これらの1種または2種以上を用いることができる。これらの中でも、取り扱いやすさからオキサゾリン基含有ポリマーが好ましい。
【0032】
オキサゾリン基含有ポリマーは、2−ビニル−2−オキサゾリン、2−ビニル−4−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−2−オキサゾリン等の付加重合性オキサゾリンを重合させることにより得られる。必要に応じて他の単量体が共重合されていてもよい。オキサゾリン基含有ポリマーの重合方法は、特に限定されず、公知の種々の重合方法を採用することができる。
【0033】
オキサゾリン基含有ポリマーの市販品としては、日本触媒社製のエポクロスシリーズ等が挙げられ、具体的には、水溶性タイプの「WS−500」、「WS−700」、固形タイプの「RPS−1005」などが挙げられる。
【0034】
カルボジイミド化合物は、分子中に少なくとも2つ以上のカルボジイミド基を有しているものであれば特に限定されるものではない。例えば、p−フェニレン−ビス(2,6−キシリルカルボジイミド)、テトラメチレン−ビス(t−ブチルカルボジイミド)、シクロヘキサン−1,4−ビス(メチレン−t−ブチルカルボジイミド)などのカルボジイミド基を有する化合物や、カルボジイミド基を有する重合体であるポリカルボジイミドが挙げられる。これらの1種または2種以上を用いることができる。これらの中でも、取り扱いやすさから、ポリカルボジイミドが好ましい。
【0035】
ポリカルボジイミドの製法は、特に限定されるものではない。ポリカルボジイミドは、例えば、イソシアネート化合物の脱二酸化炭素を伴う縮合反応により製造することができる。イソシアネート化合物も限定されるものではなく、脂肪族イソシアネート、脂環族イソシアネート、芳香族イソシアネートのいずれであってもよい。イソシアネート化合物は、必要に応じて多官能液状ゴムやポリアルキレンジオールなどが共重合されていてもよい。
【0036】
ポリカルボジイミドの市販品としては、日清紡社製のカルボジライトシリーズが挙げられ、具体的には、水溶性タイプの「SV−02」、「V−02」、「V−02−L2」、「V−04」、有機溶液タイプの「V−01」、「V−03」、「V−07」、「V−09」、無溶剤タイプの「V−05」などが挙げられる。
【0037】
オキサゾリン化合物および/またはカルボジイミド化合物からなる架橋剤の含有量は、酸変性エチレン−α−オレフィン共重合体100質量部に対して、0.1〜50質量部であることが好ましく、1〜30質量部であることがより好ましく、2〜20質量部であることがさらに好ましい。架橋剤の含有量が0.1質量部未満では、添加効果が乏しく、経時的に離型性が低下したり、十分な耐熱性が得られなかったりする場合がある。含有量が50質量部を超えると、離型性が低下する場合がある。なお、架橋剤は、複数の種類を同時に用いることもできる。同時に用いた場合、架橋剤の合計量が上記の架橋剤の含有量の範囲を満たしていればよい。
【0038】
本発明の離型シートを構成する樹脂層は、上記のように、酸変性エチレン−α−オレフィン共重合体と架橋剤とを含有するものであるが、必要に応じてレベリング剤、消泡剤、ワキ防止剤、帯電防止剤、顔料分散剤、紫外線吸収剤等の各種薬剤や、酸化チタン、亜鉛華、カーボンブラック等の顔料あるいは染料を含有してもよい。また、後述する樹脂層を形成するための液状物の安定性を損なわない範囲で、上記以外の有機もしくは無機の化合物を液状物に添加して、樹脂層に含有させることもできる。
【0039】
本発明の離型シートにおいて樹脂層の厚みは、0.01〜5.0μmであることが好ましく、0.03〜3.0μmであることがより好ましく、0.05〜1.0μmであることがさらに好ましい。樹脂層の厚みが0.01μm未満であると、十分な離型性が得られない場合があり、一方、厚みが5.0μmを超えると、コストアップとなるため好ましくない。
【0040】
本発明において、基材上に樹脂層を設ける方法は特に限定されない。例えば、酸変性エチレン−α−オレフィン共重合体と、架橋剤と、媒体とを含む液状物を作製し、この液状物を基材上に塗布して媒体を乾燥させる方法が、樹脂層の厚みを均一にしやすく、大量生産が可能という点で好ましい。あるいは、酸変性エチレン−α−オレフィン共重合体と架橋剤とを混合したものを基材上に溶融押出して、樹脂層を形成してもよい。また、基材を構成する樹脂材料と樹脂層形成材料とを共押出することにより、離型シートを得てもよい。
【0041】
酸変性エチレン−α−オレフィン共重合体と、架橋剤と、媒体とを含む液状物を作製する方法としては、媒体となる有機溶剤に、酸変性エチレン−α−オレフィン共重合体と架橋剤とを溶解させる方法が挙げられる。
【0042】
また液状物を作製する方法として、酸変性エチレン−α−オレフィン共重合体を水性分散体とし、架橋剤を混合する方法が挙げられる。酸変性エチレン−α−オレフィン共重合体を水性媒体に分散させ、水性分散体を得る方法は特に限定されないが、例えば、密閉可能な容器に酸変性エチレン−α−オレフィン共重合体、有機溶剤、水などの原料を投入し、槽内の温度を40〜150℃程度の温度に保ちつつ攪拌を行うことにより、水性分散体とする方法などが挙げられる。例えば、国際公開02/055598号パンフレットに記載された方法が挙げられ、酸変性エチレン−α−オレフィン共重合体を水性媒体中で塩基性化合物を用いて中和することにより、良好な水性分散体が得られる。
【0043】
液状物における固形分の含有率は、樹脂層の形成条件や厚み、性能等により適宜選択することができ、特に限定されるものではないが、液状物の粘度を適度に保ち、かつ良好な樹脂層を形成させるためには、1〜60質量%が好ましく、2〜20質量%がより好ましい。
【0044】
樹脂層には、突起部を形成し樹脂層のつやを抑制することを目的として、無機フィラーや有機フィラー等の微粒子(以下、「マット剤」と称する場合がある)を含有させることができる。該微粒子の形状は特に限定されないが、不定形、球状、連鎖状、中空、扁平、針状等、平板状等が挙げられる。微粒子は、単独もしくは2種類以上配合して使用することができる。さらに、樹脂層を形成する樹脂との親和性や、樹脂層を積層する際の溶媒中での分散安定性に優れる観点から、マット剤の表面には表面処理が施されていることが望ましい。
【0045】
有機フィラーとしては、特に限定されないが、ポリスチレン、ポリアクリル酸メチルやポリアクリル酸エステル共重合体、ゴム等の架橋微粒子、熱可塑性樹脂の微粉体等が挙げられる。これらの有機フィラーの製法としては、乳化・懸濁重合時に2価以上のエチレン性不飽和化合物を併用し末端基同士で二次架橋する方法、熱可塑性ポリマーと水溶性ポリマーとを混合し、加熱・溶融して、熱可塑性ポリマーを微粒子化する物理的溶融分散法が挙げられる。粒径を制御しやすく、また様々な熱可塑性樹脂を微粒子化できるという点で、物理的溶融分散法が好適である。
【0046】
有機フィラーとしては、非架橋の熱可塑性樹脂粒子が好ましい。非架橋の熱可塑性樹脂粒子は、ガラス転移温度(Tg)以上の熱で変形するという特性を有する。特に、融点を超えるような温度まで加熱することにより流動性が発現する。そのため、非架橋の熱可塑性樹脂粒子を用いると、樹脂層の表面がなだらかな突起が連なった状態となり、離型シートを剥離させた後の、被着体の防眩性が発現することに加え、視認性が向上する。
【0047】
無機フィラーとしては、特に限定されないが、クレ−、マイカ、酸化チタン、炭酸カルシウム、カオリン、湿式および乾式法シリカさらにはコロイド状シリカ、リン酸カルシウム、硫酸バリウム、アルミナ、ゼオライトなどが挙げられる。これらは、単独で、もしくは二種以上組み合わせて用いることができる。無機微粒子は、分散性の向上を目的として、シランカップリング剤等で表面処理されていることが望ましい。
【0048】
無機フィラー、特に無定型の無機粒子を用いた場合は、樹脂層の光沢度は低下するが、樹脂層中に該無機粒子が存在していない平面部が多くなる場合がある。そのため、該離型シートを剥離した後に得られた被着体の光沢が柔らかくなる。つまり、光沢が高すぎず、かつ低すぎない適度な状態となる。具体的には、60°光沢度が30〜50%程度の数値となる。しかしながら、樹脂層の光沢度は無機フィラー以外のフィラーを用いた場合と同程度であっても、離型シートを剥離した後に得られた被着体の光沢度が高くなる場合があるため、被着体の防眩性を向上させるという本発明の効果においては、好ましくない場合がある。
【0049】
樹脂層中の、マット剤の含有量は、特に限定されず、基材フィルムの表面粗さに応じて適宜調整されるが、酸変性エチレン−α−オレフィン共重合体100質量部に対して、5〜30質量部であることが好ましく、10〜30質量部であることがより好ましい。マット剤の含有量が5質量部未満であると、樹脂層の光沢度が高くなり、被着体に防眩性が発現しないことがある。一方、マット剤の含有量が30質量部を超えると、マット剤が凝集し塗膜(樹脂層)の離型性を損なう場合がある。
【0050】
樹脂層中のマット剤の平均粒径は、0.1〜10μmであることが好ましく、0.1〜5μmであることがより好ましい。平均粒径が0.1μm未満であると、光沢度が低下せず、被着体に防眩性が発現しない場合がある。一方、10μmを超えると分散性が悪くなり、樹脂層を得る場合に塗液中で沈降する場合がある。
【0051】
樹脂層には、本発明の効果を損なわない範囲で、シリコーン化合物、フッ素化合物、ワックス類、界面活性剤などが含有されていてもよい。その場合には、シリコーン化合物、フッ素化合物、ワックス類、界面活性剤の合計の含有量が、酸変性エチレン−α−オレフィン共重合体100質量部に対して1質量部以下であることが好ましい。該含有量が少ないほど、樹脂層と基材との密着性が向上するとともに、被着体の汚染が抑制されるため、0.5質量部以下であることがより好ましく、0.1質量部以下であることがさらに好ましく、含有していないことが特に好ましい。
【0052】
ワックス類としては、数平均分子量が10,000以下の、植物ワックス、動物ワックス、鉱物ワックス、石油化学ワックス等が挙げられる。ワックスの具体例としては、キャンデリラワックス、カルナバワックス、ライスワックス、木蝋、ベリーワックス、ホホバワックス、シアバター、蜜蝋、セラックワックス、ラノリンワックス、鯨蝋、モンタンワックス、セレシン、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、合成ポリエチレンワックス合成ポリプロピレンワックス、合成エチレン−酢酸ビニル共重合体ワックス等が挙げられる。
【0053】
界面活性剤としては、カチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、ノニオン性(非イオン性)界面活性剤、両性界面活性剤、フッ素系界面活性剤、反応性界面活性剤が挙げられる。界面活性剤は、一般に乳化重合に用いられるもののほか、乳化剤類も含まれる。
【0054】
アニオン性界面活性剤としては、高級アルコールの硫酸エステル塩、高級アルキルスルホン酸およびその塩、アルキルベンゼンスルホン酸およびその塩、ポリオキシエチレンアルキルサルフェート塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルサルフェート塩、ビニルスルホサクシネート等が挙げられる。
【0055】
ノニオン性界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、エチレンオキサイドプロピレンオキサイドブロック共重合体、ポリオキシエチレン脂肪酸アミド、エチレンオキサイド−プロピレンオキサイド共重合体等のポリオキシエチレン構造を有する化合物やポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル等のソルビタン誘導体等が挙げられる。
【0056】
両性界面活性剤としては、ラウリルベタイン、ラウリルジメチルアミンオキサイド等が挙げられる。反応性界面活性剤としては、アルキルプロペニルフェノールポリエチレンオキサイド付加物やこれらの硫酸エステル塩、アリルアルキルフェノールポリエチレンオキサイド付加物やこれらの硫酸エステル塩、アリルジアルキルフェノールポリエチレンオキサイド付加物やこれらの硫酸エステル塩等の反応性2重結合を有する化合物が挙げられる。
【0057】
樹脂層表面のぬれ張力は、30mN/m以上であることが好ましく、32mN/m以上であることがより好ましい。ぬれ張力が30mN/m未満では、樹脂層上に別のコーティング剤や液状物を積層するのが困難になる場合がある。本発明におけるぬれ張力とは、Zismanによる臨界表面張力を示すものであり、JIS K6768記載の方法で測定することができる。
【0058】
本発明の離型シートにおける基材としては、樹脂材料、紙、合成紙、布、金属材料、ガラス材料等が挙げられる。基材の厚みは特に限定されるものではないが、通常は1〜1000μmであればよく、1〜500μmが好ましく、1〜100μmがより好ましく、1〜50μmが特に好ましい。
【0059】
基材に用いることのできる樹脂材料としては、例えば熱可塑性樹脂として、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリ乳酸(PLA)などのポリエステル樹脂;ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂;ポリスチレン樹脂、6−ナイロン、ポリ−m−キシリレンアジパミド(MXD6ナイロン)等のポリアミド樹脂;ポリカーボネート樹脂;ポリアクリルニトリル樹脂;ポリイミド樹脂、これらの樹脂の複層体(例えば、ナイロン6/MXD/ナイロン6、ナイロン6/エチレン−ビニルアルコール共重合体/ナイロン6など)や、これらの樹脂の混合体等が挙げられる。
【0060】
樹脂材料は延伸処理されていてもよい。また、樹脂材料は、公知の添加剤や安定剤、例えば帯電防止剤、可塑剤、滑剤、酸化防止剤などを含んでいてもよい。さらに、樹脂材料においては、その他の材料と積層する場合の密着性を良くするために、コロナ処理、プラズマ処理、オゾン処理、薬品処理、溶剤処理等の表面処理を施しておいてもよい。また、樹脂材料の表面にはシリカ、アルミナ等が蒸着されていてもよく、バリア層や易接着層、帯電防止層、紫外線吸収層、接着層などの他の層が積層されていてもよい。
【0061】
基材に用いることができる紙としては、和紙、クラフト紙、ライナー紙、アート紙、コート紙、カートン紙、グラシン紙、セミグラシン紙等を挙げることができる。
【0062】
基材に用いることのできる合成紙としては、その構造は特に限定されず、単層構造であっても多層構造であってもよい。多層構造としては、例えば基材層と表面層の2層構造、基材層の表裏面に表面層が存在する3層構造、基材層と表面層の間に他の樹脂フィルム層が存在する多層構造を例示することができる。また、基材における各層は、無機や有機のフィラーを含有していてもよい。また、微細なボイドを多数有する微多孔性合成紙であってもよい。
【0063】
基材に用いることのできる布としては、上述した樹脂材料からなる繊維や、木綿、絹、麻などの天然繊維からなる不織布、織布、編布などが挙げられる。
【0064】
基材に用いることのできる金属材料としては、アルミ箔や銅箔などの金属箔やアルミ板や銅板などの金属板などが挙げられる。ガラス材料の例としてはガラス板やガラス繊維からなる布などが挙げられる。
【0065】
上記樹脂材料を用いた基材には、樹脂層が積層された反対側に、紙、合成紙、布、他の樹脂材料、金属材料等を積層してもよい。
【0066】
上記のような構成を有する本発明の離型シートの60°光沢度は、50%以下であることが必要であり、30〜50%であることが好ましく、40〜50%であることがより好ましい。60°光沢度が50%を超えると、離型シートを被着体に接着し剥離した後に、被着体に突起部形状が十分に転写されない。そのため、被着体の光沢度が上がり、防眩性が低下する。その結果、この被着体を、例えば建材として使用した場合に、蛍光灯の姿が写り込み下地の印刷が見えなくなったり、液晶ディスプレー用部品として使用した場合にタッチパネル面の表示が見にくくなったりする。すなわち、視認性が低下する。なお、上記の光沢度が低すぎる場合においても、かえって視認性が低下する場合がある。
【0067】
離型シートのつや(光沢度)を抑制する方法としては、布、サンドマットやコーティングマット、エンボス加工シートなどの凹凸が大きい基材に対して樹脂層をコーティングする方法、基材上に樹脂層を厚く設けておいて、該樹脂層にエッチングやブラスト処理、エンボス等の処理を施すことにより凹凸を付与する方法、樹脂層にマット剤や発泡剤を含有させることにより表面を荒らす方法等が挙げられる。
【0068】
上記の方法のなかでも、本発明の離型シートのつやを抑制し、60°光沢度を50%以下にするためには、凹凸が大きい基材に対して樹脂層をコーティングする方法が最も好ましい。このような方法を用いることで、コストアップを抑制することができ、容易に光沢度を調整することができる。
【0069】
本発明においては、樹脂層に含有されるマット剤の種類、粒径および含有量、樹脂層の厚みを適宜調整することにより、60°光沢度を50%以下とすることができ、つやを効果的に抑制することができる。
【0070】
本発明の離型シートを製造する方法を、以下に説明する。
【0071】
本発明の離型シートの製造方法は、特に限定されないが、例えば、酸変性エチレン−α−オレフィン共重合体とカルボジイミド化合物及び/またはオキサゾリン化合物を含有する液状物を、基材上に塗工した後に乾燥することで樹脂層を積層する製造方法が挙げられる。この方法によれば、工業的に簡便に、離型シートを得ることができる。
【0072】
酸変性エチレン−α−オレフィン共重合体とカルボジイミド化合物及び/またはオキサゾリン化合物を含有する液状物を製造する方法は、各成分が液状媒体中に均一に混合される方法であれば、特に限定されるものではない。例えば、以下の(A)や(B)の方法が挙げられる。
(A):酸変性エチレン−α−オレフィン共重合体分散液または溶液に、カルボジイミド化合物及び/またはオキサゾリン化合物の分散液や溶液を添加して、それらを混合して液状物とする方法。
(B):酸変性エチレン−α−オレフィン共重合体と、カルボジイミド化合物及び/またはオキサゾリン化合物との混合物を液状化する方法。
【0073】
上記(A)の方法を用いる場合において、カルボジイミド化合物及び/またはオキサゾリン化合物の分散液または溶液の溶質濃度は特に制限されるものではないが、取り扱いやすさの点から、5〜10質量%が好ましい。
【0074】
上記(B)の方法を用いる場合においては、酸変性エチレン−α−オレフィン共重合体を液状化する際に、カルボジイミド化合物及び/またはオキサゾリン化合物を添加してもよい。
【0075】
酸変性エチレン−α−オレフィン共重合体、カルボジイミド化合物及び/またはオキサゾリン化合物以外の成分(例えば、前述のマット剤など)を配合する場合は、(A)や(B)の方法における任意の段階で配合することができる。
【0076】
本発明の離型シートを製造する場合において、酸変性エチレン−α−オレフィン共重合体の分散液または溶液を得るための溶媒、カルボジイミド化合物及び/またはオキサゾリン化合物の分散液や溶液を得るための溶媒、酸変性エチレン−α−オレフィン共重合体と、カルボジイミド化合物及び/またはオキサゾリン化合物とを液状物とするための溶媒は、基材上への塗工が可能であれば、特に限定されない。該溶媒としては、たとえば、水、有機溶剤、あるいは水と両親媒性有機溶剤を含む水性媒体などが挙げられる。なかでも、環境負荷低減の観点から、水または水性媒体を使用することが好ましい。
【0077】
有機溶剤としては、ジエチルケトン(3−ペンタノン)、メチルプロピルケトン(2−ペンタノン)、メチルイソブチルケトン(4−メチル−2−ペンタノン)、2−ヘキサノン、5−メチル−2−ヘキサノン、2−へプタノン、3−へプタノン、4−へプタノン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン等のケトン類;トルエン、キシレン、ベンゼン、ソルベッソ100、ソルベッソ150等の芳香族炭化水素類;ブタン、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン等の脂肪族炭化水素類;塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、1,2−ジクロロエタン、1,1,2,2−テトラクロロエタン、クロロベンゼン、o−ジクロロベンゼン、m−ジクロロベンゼン、p−ジクロロベンゼン等の含ハロゲン類;酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸−n−ブチル、酢酸イソブチル、酢酸−sec−ブチル、酢酸−3−メトキシブチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、炭酸ジエチル、γ―ブチロラクトン、イソホロン等のエステル類;加えて後述の両親媒性有機溶剤などが挙げられる。
【0078】
水性媒体とは、水と両親媒性有機溶剤からなり、水の含有量が2質量%以上である溶媒を意味する。両親媒性有機溶剤とは、20℃における有機溶剤に対する水の溶解性が5質量%以上である有機溶剤をいう。なお、20℃における有機溶剤に対する水の溶解性については、例えば「溶剤ハンドブック」(講談社サイエンティフィク、1990年第10版)等の文献に記載されている。
【0079】
水性媒体の具体例としては、メタノール、エタノール(以下「EA」と略称する)、n−プロパノール(以下「NPA」と略称する)、イソプロパノール(以下「IPA」と略称する)等のアルコール類;テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等のエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;酢酸メチル、酢酸−n−プロピル、酢酸イソプロピル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、炭酸ジメチル等のエステル類;そのほか、アンモニアを含む、ジエチルアミン、トリエチルアミン(以下「TEA」と略称する)、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン(以下「DMEA」と略称する)、N,N−ジエチルエタノールアミン、N−ジエタノールアミン等の有機アミン化合物;2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドンなどのラクタム類等が挙げられる。
【0080】
酸変性エチレン−α−オレフィン共重合体を上記のような水性媒体に分散化する方法は、特に限定されず、例えば、国際公開02/055598号パンフレットに記載された方法が挙げられる。
【0081】
水性媒体中の酸変性エチレン−α−オレフィン共重合体の分散粒子径は、他の成分との混合時の安定性および混合後の保存安定性の点から、数平均粒子径が1μm以下であることが好ましく、0.8μm以下であることがより好ましい。このような数平均粒子径は、前記国際公開02/055598号パンフレットに記載の製法により達成することが可能である。
【0082】
上記の(A)や(B)の方法において、液状物の固形分含有率は、樹脂層と基材の積層条件、目的とする樹脂層の厚さ、性能等により適宜選択でき、特に限定されるものではないが、液状物の粘性を適度に保ち、かつ良好な樹脂層を形成させるためには、1〜60質量%が好ましく、5〜30質量%がより好ましい。
【0083】
液状物を基材上に塗布して樹脂層を形成する方法においては、公知の方法、例えばグラビアロールコーティング、リバースロールコーティング、ワイヤーバーコーティング、リップコーティング、エアナイフコーティング、カーテンフローコーティング、スプレーコーティング、浸漬コーティング、はけ塗り法等により、液状物を基材表面に均一に塗布し、必要に応じて室温付近でセッティングした後、乾燥処理または乾燥のための加熱処理に供することにより、均一な樹脂層を基材に密着させて形成することができる。
【0084】
基材上に樹脂層を形成した後、酸変性エチレン−α−オレフィン共重合体と架橋剤との反応を促進させるために、一定の温度にコントロールされた環境下でエージング処理をおこなってもよい。エージング処理をおこなうことによって、樹脂層の凝集性や、基材との密着性の向上を高め、離型性能を安定化することができる。エージング温度は、基材へのダメージを軽減させる観点からは、比較的低いことが好ましいが、反応を十分かつ速やかに進行させるという観点からは、高温で処理することが好ましい。エージング処理は20〜100℃でおこなうことが好ましく、30〜70℃でおこなうことがより好ましく、40〜60℃でおこなうことがさらに好ましい。
【0085】
粘着材料としては、粘着シート、接着シート、粘着テープ、接着テープなどが挙げられる。より具体的には、基材に粘着剤が積層されたものである。粘着剤の成分や基材は特に限定されないが、粘着剤としては、アクリル系粘着剤、天然ゴム系粘着剤、合成ゴム系粘着剤、シリコーン系粘着剤が挙げられ、ここには、ロジン系、クマロン−インデン系、テルペン系、石油系、スチレン系、フェノール系、キシレン系などの粘着付与剤が含まれていてもよい。基材としては、上述の、紙、布、樹脂材料などが挙げられる。
【0086】
粘着材料に対して使用される離型シートは、その取り扱い上、離型性に優れるものが求められており、たとえば、アクリル系粘着材料との剥離強度が0.5N/cm以下であるものが求められている。本発明の離型シートをアクリル系粘着材料に対して使用した場合、アクリル系粘着材料を貼り付けて、放置した後の樹脂層とアクリル系粘着材料との間の剥離強度を、0.5N/cm以下とすることができ、より好ましくは、0.4N/cm以下、さらに好ましくは0.3N/cm以下とすることができる。アクリル系粘着材料との剥離強度が0.5N/cmを超える場合、離型シートを粘着材料から剥離する際に、抵抗を感じたり、粘着材料の表面が荒れることにより、粘着性が低下する場合があるため、アクリル系粘着材料用の離型シートとして使用することが困難となることがある。
【0087】
また、粘着力が強い粘着材料の代表であるシリコーン系粘着材料に対しても、本発明の離型シートを使用することが可能である。シリコーン系粘着材料に対して従来のようなシリコーン系離型シートを用いると、粘着層と樹脂層との親和性が高いため密着性が高まり剥離しにくくなる。これに対して、本発明の離型シートはシリコーン系粘着材料に対しても良好な剥離性を保つことができる。
【0088】
本発明の離型シートは、耐熱性に優れるため、離型シートが貼り付けられた粘着材料が、保管、流通の過程において、高温下に長時間曝されても、経時で剥離強度が変化することがなく、また、貼り付け後長時間経過した後も、樹脂層と粘着材料との剥離強度の変化を小さく抑えることができる。
【0089】
たとえば、アクリル系粘着剤を貼り付けて2kPa荷重、70℃の雰囲気下で20時間放置した後の、アクリル系粘着剤との剥離強度を、0.5N/cm以下とすることができる。該剥離強度は、0.4N/cm以下であることが好ましく、より好ましくは0.3N/cm以下である。剥離強度が0.5N/cmを超えると、基材レス粘着シート等の柔らかい樹脂を剥離する際、延びて変形したり破れたりすることがある。
【0090】
工業的に離型シートを剥離する工程においては、作業ラインの高速化に伴い、一般的に10m/分を超える速度で、離型シートを剥離するため、粘着材料からの高速剥離が可能な離型シートが求められている。本発明の離型シートは、十分な離型性を有しているため、粘着材料から高速で剥離しても、音がなく抵抗感がなく剥離ができる。すなわち、本発明の離型シートは高速剥離時に、ジッピングやスティックスリップと呼ばれる音がする現象によって、粘着材料の表面状態が粗くなることにより透明性や粘着性が低下することを抑制することができる。
【0091】
プリント配線板としては、片面プリント配線板、両面プリント配線板、フレキシブルプリント配線板、多層プリント配線板などが挙げられる。
【0092】
液晶ディスプレー用部品としては、偏光板、位相差偏光板、位相差板などが挙げられる。
【0093】
シート状構造体の例としては、パーフロロスルホン酸樹脂などの高分子電解質などからなるイオン交換膜や、誘電体セラミックスやガラスなどからなるセラミックグリーンシートなどが挙げられる。これらは、溶媒でペースト状あるいはスラリー状とした原料を、離型シート上へキャストすることで形成される。
【0094】
上記の中でも、本発明の離型シートは、防眩性および視認性を必要とする粘着材料や液晶ディスプレー用部品などの保護材料や建材などの用途に、好適に用いられる。
【実施例】
【0095】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
【0096】
測定または評価方法
(1)酸変性エチレン−α−オレフィン共重合体の不飽和カルボン酸成分含有量
オレフィン成分全量に対する不飽和カルボン酸成分の含有量は、下記に示す方法(A)または(B)を用いて求めた。
(A):酸変性エチレン−α−オレフィン共重合体の酸価をJIS K5407に準じて測定し、その値から不飽和カルボン酸の含有量(グラフト率)を次式から求めた。
含有量(質量%)=(グラフトした不飽和カルボン酸の質量)/(原料ポリオレフィン樹脂の質量)×100
(B):赤外吸収スペクトル分析(Perkin Elmer社製フーリエ変換赤外分光光度計 System−2000、分解能4cm−1)を行い、不飽和カルボン酸成分の含有量を求めた。
【0097】
(2)不飽和カルボン酸成分以外の酸変性エチレン−α−オレフィン共重合体の構成
オルトジクロロベンゼン(d)中、120℃にて、H−NMR、13C−NMR分析(バリアン社製、300MHz)を行い、求めた。13C−NMR分析では定量性を考慮したゲート付きデカップリング法を用いて測定した。
【0098】
(3)酸変性エチレン−α−オレフィン共重合体のメルトフローレート
JIS K7210(230℃、2160g荷重)に準拠する方法で測定した。
【0099】
(4)アクリル系粘着剤に対する剥離強度(25℃)
得られた離型シートの樹脂層側に、巾50mm、長さ150mmのポリエステル粘着テープ(日東電工社製、No.31B/アクリル系粘着剤)をゴムロールで圧着して、試料とした。試料を、金属板/ゴム板/試料/ゴム板/金属板の形で挟み、2kPa荷重、25℃の雰囲気で20時間放置し、剥離強度測定用試料を得た。この剥離強度測定用試料の、粘着テープと離型シートとの剥離強度を、25℃の恒温室で、引張試験機(インテスコ社製、精密万能材料試験機、2020型)にて測定した。剥離角度は180℃、剥離速度は300mm/分とした。
なお、実用上、剥離強度が1.0N/cm未満であると抵抗感なく剥離することができ、0.5N/cm以下であると特に好ましい。
【0100】
(5)アクリル系粘着剤に対する剥離強度(70℃)
試料を放置する条件を、25℃の雰囲気から70℃の雰囲気に変更した以外は上記(4)に記載の方法で剥離強度測定用試料を得た。この剥離強度測定用試料の、粘着テープと離型シートとの剥離強度を、上記(4)に記載の方法で測定した。
なお、実用上、剥離強度が1.0N/cm未満であると抵抗感なく剥離することができ、0.5N/cm以下であると特に好ましい。
【0101】
(6)高速剥離性
上記(4)に記載された方法で得られた剥離強度測定用試料を用いて、その離型シート部分を両面テープにてステンレス板に固定し、粘着テープの端部を手で持ち、一気に剥離(剥離速度約30m/分)した際の、手の感触及び剥離時に発する音で、下記指標にて評価を行った。
○:音がなく、抵抗感がなく剥離ができる。
△:ジッピングによる音が発生し、剥離時に抵抗を感じるが剥離できる。
×:ジッピングにより大きな音が発生し、剥離時の抵抗が大きいため、剥離速度約30m/分での剥離ができない。
【0102】
(7)固形分濃度
液状物を適量秤量し、これを150℃で残存物(固形分)の質量が恒量に達するまで加熱し、固形分濃度を求めた。
【0103】
(8)酸変性エチレン−α−オレフィン共重合体粒子の数平均粒子径
マイクロトラック粒度分布計(日機装社製、商品名「UPA150」)(MODEL No.9340、動的光散乱法)を用い、数平均粒子径を求めた。粒子径算出に用いる樹脂の屈折率は1.57とした。
【0104】
(9)樹脂層の厚み
接触式膜厚計により、液状物を基材にコーティングし、乾燥して樹脂層を積層して得られた離型シートの全体の厚さから、基材の厚さを減じて求めた。
【0105】
(10)中心面平均粗さ
光干渉型非接触表面粗さ計(テーラーホブソン社製、商品名「CCI6000」)を用い、中心面平均粗さ(Sa)を測定した。
【0106】
(11)耐ブロッキング性
得られた離型シートを50mm×50mmの大きさに2枚切り出し、樹脂層と樹脂層反対面とが接触するように重ね合せ、60℃で10kPaの荷重をかけた状態で、24時間静置したあと、荷重を取り除いて室温まで冷却した後、樹脂層と樹脂層反対面との密着状態を調べた。
○:2枚のフィルムに密着が見られない、または、2枚のフィルムが簡単に剥がれ、樹脂層に白化などの変化が見られない。
×:樹脂層が凝集破壊を起こす、または、2枚のフィルムを剥がした後の樹脂層が全体的に白くなっている。
【0107】
(12)防眩性
0.1mm幅の黒色の直線が20mmピッチで印刷されたメラミン樹脂含浸化粧紙表面に、アミノ基を有するポリエステルアミド樹脂(軟化点:160℃)を2g/m塗布し、ポリエステルアミド樹脂層が形成された化粧シートを準備した。この化粧シートのポリエステルアミド樹脂層の上に、下記の組成物(a)を塗布した。次いで、実施例または比較例で作成した離型シートで、上記の組成物(a)の塗布面を被覆し、ローラーで延展脱気し、樹脂を硬化させた。その後、離型シートを剥離除去して、樹脂シートを得た。なお、硬化後の組成物(a)層の厚みは100μmであった。
得られた樹脂シートにおいて、離型シートを剥離させた面の真上30cmから、蛍光灯の光を照射し、蛍光灯の映り具合を目視にて確認し、以下の基準で評価した。
○:蛍光灯の反射光が、直線状の帯として観察されず、ぼやけて見える。
×:蛍光灯の反射光が、直線状の帯として明瞭に確認される。
なお、組成物(a)の組成は以下の通りである。
エポキシメタクリレート(スチレンモノマー20質量%含有)100重量部、55質量%
メチルエチルケトンパーオキサイド1.5重量部、8質量%オクチル酸コバルト0.15重量部
【0108】
(13)視認性
(11)の防眩性評価で作成した樹脂シートにおいて、離型シートを剥離させた真上30cmから蛍光灯の光を照射し、蛍光灯と照射面とを結ぶ垂線とが45°の角度をなす方向から照射面を観察した。樹脂シートを構成するメラミン樹脂含浸化粧紙表面に印刷された黒線の視認性を目視にて確認し、以下の基準で評価した
○:黒線が直線状にはっきり見える。
△:黒線が存在していることは確認できるが、ぼやけて見える。
×:黒線が存在していることが確認できない。
【0109】
(14)光沢度
光沢度計(村上色彩技術研究所製 商品名「True GlOSS GM−26PRO」)を用いて、樹脂層表面の60°光沢度を測定した。
【0110】
(マット剤)
ポリプロピレンフィラー(トライアル社製、「TRL−PP−101」、平均粒径:1.8μm)(以下、「TRL−PP」と称する場合がある)
(基材)
・二軸延伸ポリエステルフィルム(ユニチカ社製、「エンブレットS-38」、厚み:38μm、中心面平均粗さ:0.035μm)(以下、「S-38」と称する場合がある)
・ポリエステルフィルム(ユニチカ社製、「エンブレットPTH−38」、厚み:38μm、中心面平均粗さ:0.200μm)(以下、「PTH−38」と称する場合がある)
・ポリエステルフィルム(ユニチカ社製、「エンブレットPTHA−25」、厚み:25μm、中心面平均粗さ:0.240μm)(以下、「PTHA−25」と称する場合がある)
・サンドマットフィルム(ユニチカ社製、「エンブレットSM−38」、厚み:38μm、中心面平均粗さ:0.360μm)(以下、「SM−38」と称する場合がある)
樹脂層を構成する樹脂として、次のものを使用した。
【0111】
P−1:
エチレン−プロピレン共重合体(エチレン/プロピレン=75/25質量%)100gを、4つ口フラスコ中、窒素雰囲気下で、130℃に加熱したキシレン400gに溶解させた。次いで、この溶液に、無水マレイン酸のトルエン溶液(5質量%)10gおよびジクミルパーオキサイドのトルエン溶液(10質量%)5gをそれぞれ30分間かけて加え、その後、系内を130℃に保って、4時間反応させた。反応終了後、得られた反応物を多量のアセトン中に投入し、樹脂を析出させた。この樹脂をさらにアセトンで数回洗浄し、未反応の無水マレイン酸を除去した後、減圧乾燥して得られた、酸変性エチレン−α−オレフィン共重合体P−1を使用した。
【0112】
P−2:
P−1の製造において、エチレン−プロピレン共重合体(エチレン/プロピレン=75/25質量%)をエチレン−プロピレン共重合体(エチレン/プロピレン=55/45質量%)に変更した以外は、同様の操作を行って得られた、酸変性エチレン−α−オレフィン共重合体P−2を使用した。
【0113】
P−3:
P−1の製造において、エチレン−プロピレン共重合体(エチレン/プロピレン=75/25質量%)をエチレン−ブテン共重合体(エチレン/1−ブテン=70/30質量%)に変更した以外は、同様の操作を行って得られた、酸変性エチレン−α−オレフィン共重合体P−3を使用した。
【0114】
P−4:
P−1の製造において、エチレン−プロピレン共重合体(エチレン/プロピレン=75/25質量%)をエチレン−(エチレン/プロピレン=90/10質量%)に変更した以外は、同様の操作を行って得られた、酸変性エチレン−α−オレフィン共重合体P−4を使用した。
【0115】
P−5:
P−1の製造において、無水マレイン酸のトルエン溶液(5質量%)の量を20gに変更した以外は同様の操作を行って得られた、酸変性エチレン−α−オレフィン共重合体P−5を使用した。
【0116】
P−6:
P−1の製造において、無水マレイン酸のトルエン溶液(5質量%)の量を3gに変えた以外は同様の操作を行って得られた、酸変性エチレン−α−オレフィン樹脂P−6を使用した。
【0117】
P−7:
P−1の製造において、無水マレイン酸のトルエン溶液(5質量%)の量を40gおよびジクミルパーオキサイドのトルエン溶液(10質量%)の量を7gに変更した以外は、同様の操作を行って得た、酸変性エチレン−α−オレフィン共重合体P−7を使用した。
【0118】
P−8:
P−1の製造において、エチレン−プロピレン共重合体(エチレン/プロピレン=75/25質量%)をプロピレン−1−ブテン共重合体(プロピレン/ブテン=70/30質量%)に変更した以外は、同様の操作を行って得られた、酸変性プロピレン−α−オレフィン共重合体P−8を使用した。
【0119】
P−9:
アルケマ社製、ボンダイン「LX−4110」(無水マレイン酸変性ポリエチレン樹脂)を使用した。
【0120】
P−10:
酸変性されていないエチレン−プロピレン共重合体(エチレン/プロピレン=70/30質量%)を使用した。
【0121】
P−11:
クラレ社製、クラプレン「LIR−403」(酸変性ポリイソプレン、数平均分子量34000、酸価9〜11mgKOH/g)を使用した。
【0122】
上記樹脂層を構成する樹脂P−1〜P−11の組成、特性を表1に示す。
【0123】
【表1】
【0124】
実施例1
酸変性エチレン−α−オレフィン共重合体P−1をトルエンに溶解させて、2質量%の溶液を作製した。酸変性エチレン−α−オレフィン共重合体と、オキサゾリン化合物の溶液(日本触媒社製、エポクロス「WS−500」、固形分濃度:39質量%、イソプロパノールで希釈)とを、オキサゾリン化合物の固形分が、酸変性エチレン−α−オレフィン共重合体100質量部に対して、2質量部となるように混合して得た液状物を、ポリエステルフィルムPTH−38のコロナ処理面に、マイヤーバーを用いてコートした後、150℃で90秒間乾燥させて、厚み0.2μmの樹脂層をフィルム上に形成させたのち、70℃で7日間エージングを行うことで離型シートを得た。
【0125】
実施例2〜13、比較例1、3、5、6
酸変性エチレン−α−オレフィン共重合体の種類、架橋剤の種類と含有量、基材フィルムの種類を表2に記載のように変更した以外は、実施例1と同様の操作を行って、離型シートを得た。なお、カルボジイミド化合物からなる架橋剤として、日清紡社製カルボジライト「V−03」(固形分濃度:50質量%)を用いた。
【0126】
実施例14
マット剤としてTRL−PP−101を酸変性エチレン−α−オレフィン共重合体100質量に対する固形分が20質量部となるようにトルエン溶液を作成して用いた以外は、実施例1と同様の操作を行って離型シートを得た。
【0127】
比較例2
ヒーター付きの密閉できる耐圧1リットル容ガラス容器を備えた撹拌機を用いて、60.0gの無水マレイン酸変性ポリエチレン樹脂P−9(アルケマ社製、ボンダイン「LX−4110」)、90.0gのイソプロパノール、3.0gのトリエチルアミンおよび147.0gの蒸留水をガラス容器内に仕込み、撹拌翼の回転速度を300rpmとした。そして系内温度を140〜145℃に保ってさらに30分間撹拌した。その後、水浴につけて、回転速度300rpmのまま攪拌しつつ室温(約25℃)まで冷却した後、300メッシュのステンレス製フィルター(線径0.035mm、平織)で加圧濾過(空気圧0.2MPa)し、乳白色の均一な酸変性ポリエチレン樹脂水性分散体E−1を得た。
得られた酸変性ポリエチレン樹脂水性分散体E−1と、オキサゾリン化合物の溶液とを、オキサゾリン化合物の固形分が、酸変性ポリエチレン樹脂100質量部に対して、5質量部となるように混合した以外は、実施例1と同様の操作を行って、離型シートを得た。
【0128】
比較例4
ヒーター付きの密閉できる耐圧1リットル容ガラス容器を備えた撹拌機を用いて、60.0gの酸変性ポリイソプレンP−11(クラレ社製、クラプレン「LIR−403」)、60.0gのイソプロパノール、15gのトリエチルアミンおよび165gの蒸留水をガラス容器内に仕込み、撹拌翼の回転速度を300rpmとして撹拌しながら、加熱し、系内温度を120℃に保ってさらに60分間撹拌した。その後、空冷にて攪拌しつつ室温(約25℃)まで冷却した後、300メッシュのステンレス製フィルター(線径0.035mm、平織)で加圧濾過(空気圧0.2MPa)し、乳白色の均一な酸変性ポリイソプレン水性分散体を得た。得られた酸変性ポリイソプレン水性分散体とオキサゾリン化合物の溶液とを、オキサゾリン化合物の固形分が、酸変性ポリエチレン樹脂100質量部に対して、5質量部となるように混合した以外は、実施例1と同様の操作を行って、離型シートを得た。
【0129】
比較例7
実施例1において、オキサゾリン化合物の溶液に代えて、イソシアネート化合物(BASF社製、Basonat「HW−100」、固形分濃度:100質量%)をイソプロパノールで希釈した液を用い、酸変性エチレン−α−オレフィン共重合体100質量部に対して、10質量部となるように混合した以外は同様の操作を行なって、離型シートを得た。
【0130】
比較例8
実施例1において、オキサゾリン化合物の溶液に代えて、エポキシ化合物(DIC社製、EPICLON「860−90X」、固形分濃度:90質量%)を、イソプロパノールで希釈した液を用い、酸変性エチレン−α−オレフィン共重合体100質量部に対して、5質量部となるように混合した以外は同様の操作を行なって、離型シートを得た。
【0131】
比較例9
実施例1において、オキサゾリン化合物の溶液に代えて、メラミン系化合物(日本サイテックインダストリーズ社製、サイメル「325」、固形分濃度:80質量%)をイソプロパノールで希釈した液を用い、酸変性エチレン−α−オレフィン共重合体100質量部に対して、10質量部となるように混合した以外は同様の操作を行なって、離型シートを得た。
【0132】
実施例、比較例のシート構成、評価結果を表2に示す。
【0133】
【表2】
【0134】
実施例1〜14で得られた、酸変性エチレン−α−オレフィン共重合体と本発明で規定する量の架橋剤とを含有する樹脂層を基材フィルム上に設けた離型シートは、耐ブロッキング性、離型性、高速剥離性に優れるものであった。さらに、樹脂層表面の60°光沢度が50%以下であるため、防眩性や視認性も良好であった。
【0135】
一方、樹脂層を構成する樹脂として、エチレン成分とα−オレフィン成分とを同時に含有しないものを使用した場合(比較例1、2)、得られた離型シートは、離型性、高速剥離性に劣るものであった。また、樹脂層を構成する樹脂として、酸変性されていないものを使用した場合(比較例3)、得られた離型シートは、耐熱性に劣り、熱処理により離型性が著しく低下した。
樹脂層を構成する樹脂として、酸変性ポリイソプレンを用いた場合(比較例4)、得られた離型シートは、優れた離型性および耐熱性、残留接着性を有するものの、耐ブロッキング性が著しく低下した。 樹脂層に架橋剤を含有していない場合(比較例5)、離型シートは、熱処理により離型性が著しく低下した。
また、樹脂層表面の60°光沢度を本発明で規定する範囲を満たさない場合(比較例6)、防眩性で劣っていた。
本発明で規定しない架橋剤を用いた場合(比較例7〜9)、得られた離型シートは耐熱性に劣り、熱処理により離型性が低下した。