【解決手段】凸部を有する成形型を用いて、フィルムを、前記成形型の凸部が反転した形状の凹部を有するフィルム成形体に成形する成形工程と、フィルム成形体の凹部に樹脂を充填し、フィルム成形体の凹部に対応する形状の凸部を有する充填品を得る充填工程と、周囲が閉じた抜き刃7と空気給排口10とを備えた抜き型6を、抜き刃7の刃先が鉛直方向とは反対の方向に向くように配置し、充填品1Cの凸部を鉛直方向に向け、前記抜きの内側に充填品1Cの凸部を挿入することで、充填品1Cを刃先に配置し、打ち抜き位置を決める位置決め工程と、抜き刃7が充填品1Cの凸部を打ち抜く打ち抜き工程と、充填品1Cの凸部と抜き型6とで囲まれた空間を、空気給排口10から空気を供給することで加圧する加圧工程と、を有する樹脂成形品の製造方法。
前記位置決め工程は、前記空気給排口から空気を排出し、前記充填品の凸部と前記抜き型とで囲まれた空間を減圧することで、打ち抜き位置を決める請求項1に記載の樹脂成形品の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の樹脂成形品の製造方法について詳細に説明する。
なお、本明細書において「〜」を用いて示された数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。
【0016】
<樹脂成形品の製造方法>
本発明の樹脂成形品の製造方法は、凸部を有する成形型を用いて、フィルムを、前記成形型の凸部が反転した形状の凹部を有するフィルム成形体に成形する成形工程と、前記フィルム成形体の凹部に樹脂を充填することで、フィルム成形体の凹部に対応する形状の凸部を有する充填品を得る充填工程と、周囲が閉じた抜き刃と空気給排口とを備えた抜き型を、抜き刃の刃先が鉛直方向とは反対の方向に向くように配置し、前記充填品の凸部を鉛直方向に向け、前記抜きの内側に前記充填品の凸部を挿入することで、前記充填品を刃先に配置し、打ち抜き位置を決める位置決め工程と、前記抜き刃が前記充填品の凸部を打ち抜く打ち抜き工程と、充填品から打ち抜かれた凸部と前記抜き型とで囲まれた空間を、前記空気給排口から空気を供給することで加圧する加圧工程と、を有する。
【0017】
なお、本明細書における「鉛直方向」とは、重力方向(水平方向を0°としたときの90°の方向)のみならず、充填品が凸部の自重により抜き刃に固定される範囲で重力方向に対して傾斜した略鉛直な方向(例えば、90°±15°)も包含される。
【0018】
本発明者らは、本発明の効果が得られる理由を以下のように推定している。
本発明の樹脂成形品の製造方法は、周囲が閉じた抜き刃と空気給排口とを備えた抜き型を、抜き刃の刃先が鉛直方向とは反対の方向に向くように配置し、充填品の凸部を鉛直方向に向け、前記抜き刃の内側に前記充填品の凸部を挿入し、充填品の凸部が抜き刃の内側に収まるように打ち抜き位置を決定する。これにより、打ち抜き時に、充填品の凸部と抜き型とで囲まれた空間に存在する空気が、抜き型に設けられた空気給排口から前記空間外に排出される。そのため、前記空間が加圧状態にならず、前記空間が加圧状態になることで生じる打ち抜き位置のずれを抑制することができると考えられる。そして、上記の位置決め工程により、打ち抜き工程の前工程である成形工程や充填工程において発生するフィルム成形体の平坦部又は充填品の平坦部の歪みの影響を受けにくく、その後の打ち抜き工程において充填品の凸部を欠損せずに打ち抜くことができると考えられる。その結果、外観の良好な樹脂成形品が得られると考えられる。
一方、打ち抜き後は、前記充填品から打ち抜かれた凸部(樹脂成形品)と抜き型とで囲まれた空間に、抜き型に設けられた空気給排口から空気を供給し加圧することで、空気が樹脂成形品を抜き刃から押出すことができる。そのため、樹脂成形品の回収が容易になり、手作業で樹脂成形品を取り出す従来の方法に比べ、生産性に優れると考えられる。また、ピン等で樹脂成形品を押出す方法と異なり、樹脂成形品に損傷跡が付かず良好な外観が維持されると考えられる。
これらが相俟って、本発明の樹脂成形品の製造方法は、良好な外観を維持しつつ、生産性に優れると考えられる。
【0019】
[成形工程]
本発明の樹脂成形品の製造方法は、凸部を有する成形型を用いて、フィルムを、前記成形型の凸部が反転した形状の凹部を有するフィルム成形体に成形する成形工程を有する。
本発明における成形工程は、複数の樹脂成形品を同時に製造し生産性を向上させる観点から、フィルムを、成形型の凸部が反転した形状の凹部を複数有するフィルム成形体に成形することが好ましい。
成形工程においてフィルム成形体を成形する方法は特に限定されないが、例えば、予め所定の形状に模られた凸部を有する成形型(凸型)と、前記凸部を有する成形型の凸部に対応する凹部を有する成形型(凹型)と、を用いてフィルムをプレスし加熱により賦形を行う方法や、予め所定の形状に模られた凸部を有する成形型に、フィルムを密着させ加熱により賦形を行う方法などが挙げられる。
成形型にフィルムを密着させる方法としては、例えば、真空成形、圧空成形などの方法が挙げられる。また、真空吸引下において凸型と凹型によるプレスを行うなど、上記の方法を組み合わせて用いてもよい。
加熱の方法は、フィルムに賦形を行うことができる温度に制御できる方法から選択され、用いるフィルムの材質に合わせて適宜選択することができる。
成形型は、加熱と圧力に耐え得る材質から選択され、例えば、金型、樹脂型、木型、石膏型などが挙げられる。中でも、温度を制御しやすい観点から、金型が好ましい。
【0020】
本発明におけるフィルムの材質は、成形工程においてフィルム成形体の形状を維持できる樹脂から選択される。フィルムの樹脂として、例えば、(メタ)アクリル系樹脂、ポリエステル樹脂、スチレン−アクリロニトリル−ブタジエン(ABS)樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリウレタン樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、フッ素系樹脂等が挙げられる。
本発明におけるフィルムは、単層のフィルムであっても、2層以上が積層されたフィルムであってもよい。2層以上が積層されたフィルムである場合、同じ材質の層を積層しても、異なる材質の層を積層してもよい。
【0021】
本発明におけるフィルムは、金属光沢を有する層や着色層などの意匠性を向上させる層、及びフィルムの表面を保護する表面保護層などを含んでもよい。
【0022】
金属光沢を有する層は、錫、インジウム、アルミニウム、銀、クロム、ニッケル、マグネシウム、金等の金属を用いて、真空蒸着法、スパッタリング法等の方法により、フィルム上に形成することができる。
金属光沢を有する層は、均一な層を形成する観点から、蒸着法を用いて形成することが好ましい。
【0023】
着色層は、無機顔料、有機顔料、染料などの着色剤を樹脂に混合した着色層形成用組成物をフィルム上に付与することで形成してもよい。また、着色層形成用組成物をスクリーン印刷、グラビア印刷、インクジェットプリンター印刷、フレキソ印刷などの方法によりフィルム上に印刷することで形成してもよい。
また、フィルム自体に着色剤を練り込んだ着色フィルムを、粘着剤によりフィルムと貼り合わせ、前記着色フィルムを着色層としてもよい。
【0024】
本発明における成形工程は、例えば、
図1に示すように、フィルム1Aのピン穴2を、凸部を有する成形型3のピン4に填め込み、前記凸部に対応する形状の凹部を有する成形型(不図示)でプレスし、フィルム1Aを、凸部を有する成形型3に密着させ、加熱することで、フィルム1Aを成形型3の凸部が反転した形状の凹部を有するフィルム成形体1Bに成形する工程とすることができる。
【0025】
フィルム成形体は、加熱による収縮等によりフィルム成形体の端部やピン穴付近において歪みが生じることがある。フィルム成形体の端部やピン穴付近に歪みが発生した場合、成形工程と後述する充填工程の間に、歪んだ部分を除去する除去工程を設けてもよい。
【0026】
[除去工程]
本発明の樹脂成形品の製造方法は、フィルム成形体の歪み部分を除去する除去工程を有していてもよい。除去工程において、フィルム成形体の端部やピン穴の付近に生じた歪み部分を除去する方法は特に限定されない。
歪み部分を除去する方法として、例えば、
図2に示すように、凸部5を有するフィルム成形体1Bのピン穴2に、抜き刃7及びピン4が配置された抜き型6のピン4を填め込み、抜き刃7によりフィルム成形体1Bの平坦部を裁断し、歪み部分を除去する方法が挙げられる。
【0027】
[充填工程]
本発明の樹脂成形品の製造方法は、成形工程により成形された、成形型の凸部が反転した形状の凹部を有するフィルム成形体の凹部に、樹脂を充填することで、フィルム成形体の凹部に対応する形状の凸部を有する充填品を得る充填工程を有する。
充填工程におけるフィルム成形体の凹部に樹脂を充填する方法は、特に限定されず、例えば、注入法やコート法などにより行うことができる。
【0028】
本発明に用いる樹脂は、特に限定されず、可塑性樹脂であっても硬化性樹脂であってもよい。本発明に用いる樹脂は、樹脂充填後、体積収縮等により充填品に歪みが発生しやすく、本発明の効果がより顕著に現れる観点から、硬化性樹脂が好ましい。
【0029】
可塑性樹脂としては、前記フィルムの材質として例示した樹脂と同じものを用いることができる。
【0030】
硬化性樹脂はフィルム成形体の凹部に充填後、硬化させることができる樹脂から選択される。硬化性樹脂の硬化は、加熱により行ってもよく、光の照射により行ってもよく、2種以上の樹脂を反応させて行ってもよい。すなわち、硬化性樹脂は、熱硬化性樹脂であっても、光硬化性樹脂であっても、反応性樹脂であってもよい。
【0031】
硬化性樹脂としては、例えば、熱硬化性のウレタン樹脂、エポキシ樹脂、及びシリコーン樹脂等の熱硬化性樹脂、並びに、光硬化性のアクリル樹脂、及びエポキシ樹脂等の光硬化性樹脂、などが挙げられる。
【0032】
本発明の充填工程において、硬化性樹脂が硬化することで、硬化性樹脂が体積収縮を起こし、充填品の端部や平坦部に歪みが生じることがある。
【0033】
[粘着剤層付与工程]
本発明の樹脂成形品の製造方法は、粘着剤層付与工程を有してもよい。
粘着剤層は、前記充填工程を経た後のフィルムにおける樹脂が充填されることで平坦化した面(充填品の凸部とは反対側の面)に形成されることが好ましい。また、粘着剤層の形成は、前記平坦化した面に粘着剤を塗布する方法で行ってもよく、剥離フィルム等に粘着剤を塗布し粘着剤層を形成した後、前記平坦化した面に粘着剤層を転写する方法で行ってもよい。
【0034】
前記平坦化した面や剥離フィルムに粘着剤を塗布する方法としては、グラビアロールコーター、リバースロールコーター、キスロールコーター、ディップロールコーター、バーコーター、ナイフコーター、スプレーコーター等を用いた公知の方法が挙げられる。
【0035】
本発明における粘着剤層付与工程で用いる粘着剤は、例えば、(メタ)アクリル系、ウレタン系などの粘着剤が挙げられる。
【0036】
粘着剤層の厚さは、特に制限されるものではなく、適宜選択することができる。粘着剤層の厚さとして、例えば10μm〜100μmの範囲が挙げられる。
【0037】
粘着剤層は、剥離フィルムによって粘着剤層の表面が保護されていてもよい。
剥離フィルムとしては、粘着剤層からの剥離が容易に行なえるものであれば特に限定されず、例えば、剥離処理剤を用いて少なくとも片面に易剥離処理が施された樹脂フィルム(例えばポリエチレンテレフタレート等のポリエステルフィルム)が挙げられる。剥離処理剤として、例えば、フッ素系樹脂、パラフィンワックス、シリコーン、長鎖アルキル基化合物などが挙げられる。
【0038】
粘着剤層は、市販の両面テープ等を用いることもできる。
【0039】
[位置決め工程]
本発明の樹脂成形品の製造方法は、周囲が閉じた抜き刃と空気給排口とを備えた抜き型を、前記抜き刃の刃先が鉛直方向とは反対の方向に向くように配置し、前記充填品の凸部を鉛直方向に向け、前記抜き刃の内側に前記充填品の凸部を挿入することで、前記充填品を刃先に配置し、打ち抜き位置を決める位置決め工程を有する。
【0040】
本発明における位置決め工程は、
図4に示すように、充填品1Cの凸部5を鉛直方向に向けて周囲が閉じた抜き刃7の内側に挿入し、抜き刃7の内側に充填品1Cの凸部5が収まるように刃先に載せる。これにより、樹脂が充填されたフィルム成形体である充填品1Cの凸部5が、その自重により抜き刃7に填り充填品が刃先に固定され、後述の打ち抜き工程における打ち抜き時の位置ずれが抑制される。さらに、充填品1Cの凸部5自体が充填品1Cの位置決めに寄与するため、前記成形工程及び前記充填工程において、フィルム成形体や充填品に歪みが発生したとしても、所定の位置に充填品を配置することができる。
【0041】
本発明における抜き型に備えられた空気給排口は、後述する加圧工程において加圧を行うことができる加圧減圧装置(例えば、真空ポンプ等)に連結される。
また、空気給排口は、加圧減圧装置に替えて、ゴム弾性密閉器材(例えば、風船等)に連結されてもよい。
【0042】
本発明における位置決め工程は、空気給排口から空気を排出し、前記充填品の凸部と前記抜き型とで囲まれた空間を減圧することで打ち抜き位置を決めることが好ましい。
前記空間を減圧することで、充填品が刃先により確実に固定されるとともに、後述の打ち抜き工程において、打ち抜き時の位置ずれを抑制することができる。
前記空間の減圧は、空気給排口に連結された加圧減圧装置により行われることが好ましい。
【0043】
本発明における抜き刃の内側には、前記充填品の凸部が反転した形状を有し前記凸部が挿入される凹部を有する弾性体が配置されていることが好ましい。
具体的には、
図5に示すように、抜き型6に配置された抜き刃7の内側に充填品1Cの凸部5が挿入される前記充填品1Cの凸部5が反転した形状の凹部を有する弾性体11が配置される。
【0044】
抜き刃の内側に配置される弾性体としては、通気性を有するものが好ましく、例えば、発泡ウレタン樹脂、発泡シリコーン樹脂、ブタジエン系樹脂、ニトリル系樹脂、及びクロロプレン系樹脂等の合成ゴム、並びに天然ゴム等が挙げられる。
【0045】
抜き刃の内側に弾性体を配置することで、充填品の凸部を打ち抜く時に、充填品の位置が固定化されるため、より精度の高い打ち抜きが可能となる。また、弾性体が抜き刃より先に充填品の凸部に接触することで、より確実に充填品を固定化することができ、さらには、打ち抜き後に樹脂成形体を取り出す際、取り出しやすくなり生産性が向上するため好ましい。
【0046】
[打ち抜き工程]
本発明の樹脂成形品の製造方法は、抜き刃が充填品の凸部を打ち抜く打ち抜き工程を有する。
本発明は、打ち抜き工程において、空気給排口を備えた抜き型の抜き刃を用いることで、打ち抜き時に、抜き型の空気給排口から空気が排出されるため、充填品の凸部と抜き型とで囲まれた空間が加圧状態にならず、加圧状態になることで生じる打ち抜き位置のずれを抑制することができる。
その結果、充填品の凸部を欠損せずに打ち抜くことができ、外観が良好な樹脂成形品を得ることができる。
【0047】
本発明における抜き刃は、空気給排口を備えた抜き型に配置されており、所定の形状を打ち抜くことができるものであれば特に限定されない。抜き刃として、例えば、トムソン刃、腐食刃、彫刻刃等が挙げられる。
これらの中でも、打ち抜き後の樹脂成形品の仕上がりの観点から、トムソン刃が好ましい。
【0048】
従来、樹脂成形品の打ち抜きは、例えば、
図3に示すように、刃先を鉛直方向とは反対の方向に向けて載置台8に配置された抜き刃7に充填品1Cの凸部5を填め込むことで位置決めし、充填品1Cを上方からプレスすることで、充填品1Cの凸部5の打ち抜きを行う。このような方法では、充填品1Cの凸部5と抜き型6とで囲まれた空間9に存在する空気が打ち抜き時に圧縮され、空間9が加圧状態となり、充填品1C及び凸部5が圧縮された空気により押出され、充填品1Cの凸部5の位置がずれ、打ち抜き位置がずれることがあった。
これに対し、本発明における打ち抜き工程は、例えば、
図4に示すように、抜き刃7と空気給排口10とを備えた抜き型6を、刃先を鉛直方向とは反対の方向に向けて載置台8に配置する。そして、抜き刃7に充填品1Cの凸部5を填め込むことで、位置決めし、充填品1Cの上方からプレスすることで、充填品1Cの凸部5の打ち抜きを行う。そのため、打ち抜き時に充填品1Cの凸部5と抜き型6とで囲まれた空間9に存在する空気が空気給排口10を通り排出されるため、空間9は加圧状態とはならず、充填品1C及び凸部5が空気により押出されることはない。その結果、充填品1C及び凸部5の位置は固定されたままであり、打ち抜き位置のずれを抑制することができる。
【0049】
抜き型に設けられた空気給排口が、加圧減圧装置に替えてゴム弾性密閉器材に連結された場合、打ち抜き時に、空気給排口から連結されたゴム弾性密閉器材に空気が移動し、充填品の凸部と抜き型とで囲まれた空間が加圧状態とはならず、加圧状態になることで生じる打ち抜き位置のずれを抑制することができる。
その結果、打ち抜きの精度が高く、外観が良好な樹脂成形品を得ることができる。
【0050】
本発明における抜き刃の外側には、抜き刃を支持する剛性体が配置されていてもよい。また、抜き刃の外側に剛性体と弾性体とを積層して配置されていてもよい。抜き刃の外側に剛性体と弾性体とが積層して配置されることで、打ち抜き工程では、剛性体又は弾性体が充填品に接触すると弾性体が変形した状態で充填品の凸部を打ち抜きが行われる。
具体的には、抜き刃の外側に剛性体を配置し、上方から充填品をプレスすることで、充填品の凸部を打ち抜き樹脂成形品を製造することができる。
また、抜き刃の外側に剛性体及び弾性体を積層して配置し、上方から充填品をプレスすることで、充填品の凸部を打ち抜き樹脂成形品を製造することができる。
【0051】
抜き刃の外側に配置される剛性体として、例えば、鉄、銅、アルミニウムなどの金属が挙げられる。
抜き刃の外側に配置される弾性体は、前述した抜き刃の内側に配置される弾性体と同じものを用いることができる。
【0052】
抜き刃は、繰り返し使用されることで抜き刃の形状が変形することがある。例えば、鋭角を有する形状の抜き刃の場合には、打ち抜き時に前記鋭角の先端に圧力が集中し、前記鋭角の角度が広がる傾向にある。そのため、抜き刃を繰り返し使用すると変形した抜き刃により打ち抜きが行われることとなり、寸法精度が低下する傾向がある。
抜き刃の外側に抜き刃を支持する剛性体を配置することで、抜き刃の繰り返し使用による変形を抑制し、繰り返し使用による寸法精度を向上させることができる。
また、抜き刃の外側に剛性体及び弾性体を積層して配置し、抜き刃より先に剛性体又は弾性体がフィルムに接触することで、位置決めの精度が更に向上するとともに、打ち抜き後のカス(打ち抜かれる充填品の凸部の周辺の平坦部)を効率的に除去できる。
【0053】
[加圧工程]
本発明の樹脂成形品の製造方法は、充填品から打ち抜かれた凸部(樹脂成形品)と抜き型とで囲まれた空間を、空気給排口から空気を供給することで加圧する加圧工程を有する。
打ち抜き後、樹脂成形品と抜き型とで囲まれた空間に空気を供給し加圧することで、樹脂成形品を抜き刃から容易に取り出すことができ、手作業で樹脂成形品を取り出す従来の方法に比べ、生産性が向上する。また、ピン等で樹脂成形品を押出す従来の方法とは異なり、樹脂成形品に損傷跡が付かず良好な外観が維持される。
【0054】
樹脂成形品と抜き型とで囲まれた空間を加圧する方法として、例えば、加圧減圧装置、ゴム弾性密閉器材などを用いて加圧する方法が挙げられる。
加圧減圧装置を用いて加圧する方法は、充填品を打ち抜き後、樹脂成形品と抜き型とで囲まれた空間に、例えば、エアポンプ等の加圧減圧装置により、空気を供給する方法が挙げられる。
ゴム弾性密閉器材を用いて加圧する方法は、前述の打ち抜き工程において、打ち抜き時に充填品の凸部と抜き型とで囲まれた空間からゴム弾性密閉器材に移動した空気を、樹脂成形品と抜き型とで囲まれた空間に、供給する方法が挙げられる。
【実施例】
【0055】
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明はその趣旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
【0056】
(実施例1)
[成形工程]
45cm×35cmにカットされたフィルム(スチレン−アクリロニトリル−ブタジエン(ABS)フィルム)の四隅に2mmのピン穴を開けた。加圧成形機に3個×2列の凸部が配置された金型を取り付けた後、金型に設けられている位置決め用ピンに、フィルムのピン穴を合わせ、ピン穴にピンを填め込んだ。
フィルムを100℃に加熱し、次いで前記凸部が配置された金型の凸部に対応する形状の凹部を有する金型を用い、フィルムをプレスした。このように加圧成形を行い、フィルムを前記金型の凸部が反転した形状の凹部を有するフィルム成形体に成形した。加圧成形後のフィルム成形体の端部及びピン穴の周囲には歪みが発生した。
【0057】
[除去工程]
以下に
図2に基づき除去工程を説明する。
前記成形工程で成形されたフィルム成形体1Bを、凸部5が鉛直方向とは反対の方向を向くように打ち抜き機の載置台に載置した。抜き刃7とピン4が設けられた抜き型6を、抜き刃7が鉛直方向を向くように上テーブルに配置した。抜き型6に設けられたピン4とフィルム成形体1Bのピン穴2の位置を合わせ、ピン4をフィルム成形体1Bのピン穴2に填め込んだ。その後、抜き型6をプレスし、フィルム成形体1Bの平坦部を裁断し、フィルム端部及びピン穴周辺の歪み部分を除去した。
なお、除去工程において使用する抜き型は、打ち抜き工程において使用する抜き型とは異なり、凸部と同等の形状を有するものではない。
【0058】
[充填工程]
前記除去工程により端部が除去されたフィルム成形体の凹部(すなわち凸部の内側)に、ウレタン樹脂を充填した。
フィルム成形体の凹部にウレタン樹脂が充填されることで、フィルム成形体の凸部の反対側の面は平坦化され、フィルム成形体の凹部に対応する形状の凸部を有する充填品を得た。
【0059】
[粘着剤層付与工程]
両面テープの一方の剥離紙を剥離して、前記充填工程で得られた充填品の凸部を有する面とは反対の面(前記充填工程において平坦化した面)に貼り合せ、充填品に粘着剤層を形成した。
【0060】
[位置決め工程]
以下に
図4に基づき実施例1の位置決め工程を説明する。
打ち抜き機の載置台8に、抜き刃7の刃先が鉛直方向とは反対の方向を向くように抜き型6を設置した。抜き型6には、空気給排口10が備えられており、空気給排口10は、加圧減圧装置に連結されている。
充填品1Cは、前記抜き刃7の内側に充填品1Cの凸部5が鉛直方向を向くように充填品1Cの凸部5を填め込んで設置し位置決めした。
【0061】
[打ち抜き工程]
以下に
図4に基づき実施例1の打ち抜き工程を説明する。
位置決め後、充填品1Cを上方からプレスすることで、充填品1Cから樹脂成形品を打ち抜いた。このとき、充填品1Cの凸部5と抜き型6とで囲まれた空間9の空気は、空気給排口10を通り排出されるため、充填品1Cの凸部5と抜き型6とで囲まれた空間9は大気圧が保たれる。
【0062】
[加圧工程]
打ち抜き後、加圧減圧装置を用い、充填品から打ち抜かれた凸部(樹脂成形品)と抜き型とで囲まれた空間に空気を供給し加圧した。供給された空気により打ち抜かれた樹脂成形品が抜き刃から押出された。
実施例1により得られた樹脂成形品は、欠損がなく良好な外観を示していた。また、樹脂成形品の回収が容易であった。
【0063】
(実施例2)
実施例1の位置決め工程において、加圧減圧装置を用いて、充填品の凸部と抜き型とで囲まれた空間を減圧し、位置決めを行った以外は、実施例1と同様にして樹脂成形品を作製した。充填品の凸部の自重に加え、前記空間を減圧することで充填品の凸部が抜き型に吸い付けられ、打ち抜き時の位置ずれをより抑制することができた。
実施例2により得られた樹脂成形品は、欠損がなく良好な外観を示していた。また、樹脂成形品の回収が容易であった。
【0064】
(実施例3)
実施例1の位置決め工程において、空気給排口に連結された加圧減圧装置を、天然ゴム(ラテックス)製の風船(ゴム弾性密閉器材)に替え、加圧工程において、前記風船から、充填品の凸部と抜き型とで囲まれた空間に空気を供給し加圧した以外は、実施例1と同様にして樹脂成形品を作製した。
実施例3により得られた樹脂成形品は、欠損がなく良好な外観を示していた。また、樹脂成形品の回収が容易であった。
【0065】
(実施例4)
実施例1の位置決め工程において、
図5のように、抜き刃7の内側に、充填品1Cの凸部5が挿入される凹部を有する弾性体11(株式会社ソマール製、発泡ウレタン)を配置した以外は、実施例1と同様にして樹脂成形品を作製した。なお、前記弾性体は、空気給排口10が設けられており、前記弾性体は、打ち抜き時、抜き刃より先に充填品に接触する。
実施例4により得られた樹脂成形品は、欠損がなく良好な外観を示していた。また、樹脂成形品の回収が容易であった。
【0066】
(比較例1)
実施例1における位置決め工程及び打ち抜き工程を、以下に手順に変更した以外は、実施例1と同様にして樹脂成形品を作製した。
【0067】
[位置決め工程]
比較例1における位置決め工程を
図3に基づき説明する。
打ち抜き機の載置台8に、抜き刃7の刃先が鉛直方向とは反対の方向に向くように抜き型6を設置した。比較例1で用いた抜き型6には、空気給排口は備えられていない。
充填品1Cは、前記抜き刃7の内側に充填品1Cの凸部5が鉛直方向を向くように重点品1Cの凸部5を填め込んで設置し位置決めした。
【0068】
[打ち抜き工程]
位置決め後、充填品を上方からプレスすることで、充填品から樹脂成形品を打ち抜いた。このとき、充填品1Cの凸部5と抜き型6とで囲まれた空間9の空気は圧縮され、圧縮された空気が充填品1Cの凸部5を押出し、充填品1Cの位置がずれ、打ち抜き位置にずれが生じた。
打ち抜き後、加圧工程は行わず、抜き刃の内側に留まっている樹脂成形品を手作業で取り出した。
比較例1により得られた樹脂成形品は、打ち抜き時に生じた打ち抜き位置のずれに伴う凸部の欠損が部分的にみられ外観に劣っていた。また、打ち抜き後、抜き刃の内側に留まっている樹脂成形品を手作業により抜き刃から取り出すため、生産性に劣っていた。
【0069】
上記のように、いずれの実施例においても、欠損がなく、良好な外観の樹脂成形品が得られることがわかる。また、いずれの実施例も、生産性に優れることがわかる。