【解決手段】シートバックフレーム1の左右側方に位置して上下方向に延びるフレーム側部15aを備える車両シートSに関する。フレーム側部15aには、この後端から前方に延出するように形成された第1脆弱部150Aと、フレーム側部15aにおいて第1脆弱部150Aから離れた位置に形成された第2脆弱部150Bと、が備えられており、第1脆弱部150Aは、第2脆弱部150Bの形成位置に向かって延出している。
前記第1脆弱部及び前記第2脆弱部の双方は、該双方が上下方向において同じ位置に位置するように形成されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の車両用シート。
前記第2脆弱部は、前記車両用シートの組み立て時に、前記シートバックフレームを固定する固定治具が挿入される貫通孔であることを特徴とする請求項5に記載の車両用シート。
前記シートバックフレームの左右方向の両端部に備えられた一対のサイドフレームには、それぞれ、前記フレーム側部と、前記フレーム側部から左右方向の内側に向かって延出するフレーム延出部とが設けられ、
前記シートバックフレームには、前記サイドフレーム間を連結する連結フレームが備えられ、
該連結フレームの左右方向の各端部は、各前記サイドフレームに設けられた前記フレーム側部及び前記フレーム延出部のいずれとも重ね合わせられており、
前記第1脆弱部は、前記サイドフレームのうち、前記連結フレームが重ね合わせられている領域と沿うように形成されていることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載の車両用シート。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1で開示されたシートバックフレームは、後面衝突時等、乗員の後方移動に伴って後方への荷重が加わると、サイドフレームが屈曲し、シートバックフレームによって後方移動の衝撃エネルギーが吸収される。しかし、特許文献1のシートバックフレームは、サイドフレームの変形箇所(屈曲箇所)を限定して変形させることが不可能であるため、サイドフレームの上下方向にわたって何れかの点において屈曲する。その結果、屈曲点を限定することができないため、シートバックフレーム全体に衝撃エネルギーが伝達され、衝撃エネルギーの吸収効率が低下し、安定して衝撃エネルギーを緩和することが難しい。
【0007】
そこで、本出願人は、シートバックフレームを変形させることにより衝撃エネルギーを吸収する技術に関し、可撓性のくびれ部を下部フレームに形成することにより、後面衝突時等、衝撃エネルギーが加わった際にくびれ部を優先的に屈曲させ、衝撃エネルギーを効率よく吸収する技術を提案している(PCT/JP2011/078478)。このように、シートバックフレームの変形箇所を限定することにより、効率よく衝撃エネルギーを吸収することが可能となる。
【0008】
しかし、上記技術において、通常使用時の剛性の確保と衝撃荷重付加時の変形の容易さとのバランスをより効果的にとりたいという要望があった。
また、シートバックフレームが後傾するように変形する際、加わる衝撃エネルギーの大きさに依存して、後傾する角度が大きくなりすぎ、乗員の着座姿勢が変化して着座感が損なわれる虞があるという問題点があった。
したがって、上記のように、衝撃荷重が加わった際にシートバックフレーム(シート)が撓み変形して後傾する車両用シートにおいて、通常使用時剛性確保及び衝撃荷重付加時変形容易性のバランスを確保するとともに、撓み量を規制し、シートバックフレーム(シート)の変形量(後傾する角度)を制御することが可能な技術が求められていた。
【0009】
本発明の目的は、衝突時、特に後面衝突時の衝撃エネルギーが加わった際、シートが撓み変形することにより衝撃エネルギーを吸収する車両用シートにおいて、通常使用時に高い剛性を確保するとともに、衝撃荷重付加時にはシートを変形させてこの衝撃荷重を緩和することが容易である車両用シートを提供することにある。
また、本発明の他の目的は、衝突時、特に後面衝突時の衝撃エネルギーが加わった際、シートの変形量(後傾する角度)を規制してシートの撓み変形量を制御することにより、乗員の着座姿勢に与える影響が軽減される車両用シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題は、本発明の車両用シートによれば、シートバックフレームの左右側方に位置して上下方向に延びるフレーム側部を備える車両シートであって、該フレーム側部には、衝撃荷重が加わった際に変形する脆弱部が形成されており、該脆弱部は、前記フレーム側部の後端から前方に延出するように形成された第1脆弱部と、前記フレーム側部において前記第1脆弱部から離れた位置に形成された第2脆弱部と、を有して構成され、前記第1脆弱部は、前記第2脆弱部の形成位置に向かって延出していることにより解決される(請求項1)。
【0011】
このように、車両用シートにおいて、本発明においては、衝撃荷重が加わった際に変形する脆弱部を備えることにより、車両用シートに後面衝突時等の衝撃荷重が加わった際、脆弱部を起点として車両用シートの一部が変形し、衝撃エネルギーを吸収することができる。
そして、本発明における脆弱部は、第1脆弱部と第2脆弱部を有して構成され、第1脆弱部は、第2脆弱部の形成位置に向かって延出している。
このことにより、通常使用時における剛性を確保した状態で、第1脆弱部及び第2脆弱部に衝撃荷重が伝わり変形する際に、第1脆弱部と第2脆弱部との間の力の伝播を効率化することができる。
【0012】
このとき、請求項2のように、前記シートバックフレームには、前記フレーム側部から左右方向の内側に向かって延出するフレーム延出部が備えられており、前記第1脆弱部は、前記フレーム側部と前記フレーム延出部との境界部を跨ぐように形成されており、前記第1脆弱部のうち、前記フレーム側部に形成された部分は、前記境界部から前方に延出し、前記フレーム延出部に形成された部分は、前記境界部から左右方向の内側に延出すると好適である。
【0013】
このように構成されていると、所謂「角部」を跨いで(切り欠いて)第1脆弱部が形成されることとなるため、衝撃荷重が加わった際に、当該部分を効率的に変形させることができる。
【0014】
具体的な構成としては、請求項3のように、前記第1脆弱部及び前記第2脆弱部の双方は、貫通孔であると好適である。
このように構成されていると、衝撃荷重が加わった際に、当該部分を効率的に変形させることができる。
【0015】
また、このとき、請求項4のように、前記第1脆弱部及び前記第2脆弱部の双方は、該双方が上下方向において同じ位置に位置するように形成されていると好適である。
このように、例えば、通常のシートであれば、車体フロアからの高さが同じとなる位置に第1脆弱部及び第2脆弱部を形成することができる。
よって、衝撃荷重が加わった際のフレーム側部の変形位置制御が容易となる。
【0016】
また、具体的には、請求項5のように、前記第2脆弱部は、前記車両用シートの組み立て時に、他部材が挿入される貫通孔であると好適である。
この他部材が挿入される貫通孔としては、更に具体的には、請求項6のように、前記第2脆弱部は、前記車両用シートの組み立て時に、前記シートバックフレームを固定する固定治具が挿入される貫通孔であると好適である。
【0017】
このように構成されていることにより、第2脆弱部を形成するための特別な加工が不要となり、元々、存在する貫通孔を使用することができる。
よって、第2脆弱部を形成するためのコストを軽減することが可能となるとともに、第2脆弱部を形成するための工数もまたカットすることができる。
【0018】
このとき、更に具体的には、請求項7のように、前記シートバックフレームの左右方向の両端部に備えられた一対のサイドフレームには、それぞれ、前記フレーム側部と、前記フレーム側部から左右方向の内側に向かって延出するフレーム延出部とが設けられ、前記シートバックフレームには、前記サイドフレーム間を連結する連結フレームが備えられ、該連結フレームの左右方向の各端部は、各前記サイドフレームに設けられた前記フレーム側部及び前記フレーム延出部のいずれとも重ね合わせられており、前記第1脆弱部は、前記サイドフレームのうち、前記連結フレームが重ね合わせられている領域と沿うように形成されていると好適である。
【0019】
このように構成されていると、第1脆弱部は、連結フレームとサイドフレームとが重ね合わされた領域と沿って形成されるため、通常使用時における剛性を高く保持することができる。
また、通常は、サイドフレームを構成するフレーム延出部は、連結フレームの(溶接端側)端部を受けるため、内側方向に緩やかに延出し、下方に下りるに従い、その左右方向の幅が大きくなるように構成されている。
よって、第1脆弱部が形成されるこの位置は、通常、左右方向の幅が大きくなっている位置であり、このため、車両シートの通常使用状態における剛性を高く保持できる。
なお、より具体的には、変形の効率を考慮した第1脆弱部の形成位置として、連結フレームが重ね合わせられている領域の上部に近接した位置とすると好適である。
【0020】
また、このとき、請求項8のように、前記第1脆弱部は、貫通孔であり、前記第1脆弱部である前記貫通孔を囲う淵部が折り曲げられていると好適である。
また、具体的には、請求項9にように、前記第1脆弱部である前記貫通孔は、前記車両用シートに対して後方から衝撃荷重が加わった際に上下方向に押し潰れるように変形し、前記淵部のうち、上下方向に並んで互いに対向する2つの領域は、前記貫通孔の変形量が所定量に達した際に当接して前記貫通孔の更なる変形を規制するよう構成されていると好適である。
【0021】
このように貫通孔を囲う淵部が折り曲げられていると、第1脆弱部の変形量を規制するように、第1脆弱部を挟み込む位置に対向する淵部が形成されるので、一定の位置(形状)まで第1脆弱部が変形すると、対向する淵部が接触し、これにより第1脆弱部がさらに大きく変形しないように押し止められる。
したがって、第1脆弱部の変形量が一定値よりも大きくなることなく、その結果、シートの変形量が一定値以下になるように規制(制御)することができる。
また、上記のように、衝撃荷重が加わった際、シートの変形量が大きくなりすぎることがないように規制されるため、乗員の着座姿勢に与える影響が軽減される。
更に、特殊な規制部材を使用することなく、貫通孔の周囲を折り曲げて淵部とすることにより、規制部材の機能を果たすこととなるため、規制部材を付加するコストを削減することができる。
【発明の効果】
【0022】
請求項1の発明によれば、車両用シートにおいて衝撃荷重が加わった際に変形する第1脆弱部及び第2脆弱部を備えているため、衝撃荷重が加わった際に、乗員の衝撃を軽減するようにサイドフレームを変形させることができる。
また、脆弱部を、第1脆弱部と第2脆弱部とに分割したことにより、通常使用時の剛性を確保することができるとともに、第1脆弱部が前記第2脆弱部の形成位置に向かって延出しているため、第1脆弱部及び第2脆弱部に衝撃荷重が伝わり変形する際に、第1脆弱部と第2脆弱部との間の力の伝播を効率化することができる。
請求項2の発明によれば、衝撃荷重が加わった際に、第1脆弱部の形成部分を効率的に変形させることができる。
請求項3の発明によれば、衝撃荷重が加わった際に、第1脆弱部及び第2脆弱部の形成部分を効率的に変形させることができる。
請求項4の発明によれば、衝撃荷重が加わった際のフレーム側部の変形位置制御が容易となる。
請求項5及び請求項6の発明によれば、第2脆弱部を形成するためのコストを軽減することが可能となるとともに、第2脆弱部を形成するための工数もまた有効に削減することができる。
請求項7の発明によれば、通常使用時における剛性を高く保持することができる。
請求項8及び請求項9の発明によれば、衝撃荷重が加わった際、シートの変形量が大きくなりすぎることがないように規制されるため、乗員の着座姿勢に与える影響が軽減される。
更に、特殊な規制部材を使用することなく、貫通孔の周囲を折り曲げて淵部とすることにより、規制部材の機能を果たすこととなるため、規制部材を付加するコストを削減することができる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の一実施形態について、図を参照して説明する。なお、以下に説明する部材、配置等は、本発明を限定するものではなく、本発明の趣旨に沿って各種改変することができることはもちろんである。また、本明細書において、乗物とは、自動車・鉄道など車輪を有する地上走行用乗物、地上以外を移動する航空機や船舶など、シートを装着できる移動用のものをいうものとする。また通常の着座荷重とは、着座するときに生じる着座衝撃、乗物の急発進によって生じる加速時の荷重などを含むものである。また、後面衝突時の衝撃エネルギーとは、後面衝突時に生じる大きな荷重によるエネルギーであって、後方側からの乗物による大きな追突、後退走行時における大きな衝突等に伴うものであり、通常の着座時に生じる荷重と同様な荷重領域の荷重によるエネルギーは含まないものである。
また、左右方向とは、車両前方を向いた状態での左右方向を意味し、後述するシートバックフレーム1の幅方向と一致する方向である。また、前後方向とは、乗員が着座した状態での前後方向を意味する物である。
【0025】
図1乃至
図8は本発明の実施形態に係るものであり、これらを参照して以下、本発明の実施形態について説明する。
【0026】
<<車両用シートSの基礎構成>>
図1乃至
図4を参照して、実施形態に係る車両用シートSについて説明する。
車両用シートSは、
図1で示すように、シートバックS1(背部)、着座部S2、ヘッドレストS3より構成されており、シートバックS1(背部)及び着座部S2はシートフレームFにクッションパッド1a,2aを載置して、表皮材1b,2bで被覆されている。なお、ヘッドレストS3は、頭部の芯材(不図示)にクッションパッド材3aを配して、表皮材3bで被覆して形成される。また符号19は、ヘッドレストS3を支持するヘッドレストピラーである。
【0027】
車両用シートSのシートフレームFは、
図2で示すように、シートバックS1を構成するシートバックフレーム1、着座部S2を構成する着座フレーム2から構成されている。
着座フレーム2は、上述のようにクッションパッド2aを載置して、クッションパッド2aの上から表皮材2bによって覆われており、乗員を下部から支持する構成となっている。着座フレーム2は脚部(不図示)で支持されており、この脚部には、図示しないインナレールが取り付けられ、車体フロアに設置されるアウタレールとの間で、前後に位置調整可能なスライド式に組み立てられている。
また着座フレーム2の後端部は、リクライニング機構11を介してシートバックフレーム1と連結されている。
【0028】
リクライニング機構11は、公知の機構が採用されており、少なくともリクライニング機構11の回動軸に沿ったリクライニングシャフト11aを備え、リクライニングシャフト11aは、シートバックフレーム1(より詳細には、一対のサイドフレーム15)の下方に延設された一対のサイドフレーム15に設けられるサイドフレーム側シャフト貫通孔17cと着座フレーム2の後端部に形成されたシャフト挿通孔11cの連通孔からシートフレームFの側部に突出するように嵌通して配設されている。
【0029】
また、リクライニング機構11に接合されたシートバックフレーム1の下端部と着座フレーム2の後端部には、
図2に示すように、渦巻きバネPが掛けられている。
この渦巻きバネPは、シートバックフレーム1の状態がアンロック状態にあり、かつ、シートバックS1が後傾状態にあるときに、シートバックフレーム1を前方に回動させるように付勢するものであり、その一端部P1は、シートバックフレーム1側に設けられた係止部K1に係止されている。
【0030】
ここで、係止部K1は、例えば、シートバックフレーム1のサイドフレーム15に固定された板金部材により構成され、幅方向外側に延出するように折れ曲った部分に渦巻きバネPの一端部P1が引っ掛けられて係止されるようになる。
【0031】
なお、渦巻きバネPの他端部P2は、着座フレーム2側に設けられた着座側係止部K2に係止されており、当該着座側係止部K2についても、幅方向外側に延出した部分を有し、当該部分に渦巻きバネPの他端部P2を引っ掛けることで渦巻きバネPの他端部P2を係止する。
【0032】
シートバックS1は、シートバックフレーム1に、上述のようにクッションパッド1aを載置して、クッションパッド1aの上から表皮材1bにより覆われており、乗員の背中を後方から支持するものである。本実施の形態において、シートバックフレーム1は、
図2で示すように、略矩形状の枠体となっており、一対のサイドフレーム15,15と、上部フレーム16と、連結フレーム18とを備えている。
なお、サイドフレーム15の下端側と連結フレーム18とは一体として構成されていてもよい。
【0033】
2本(一対)のサイドフレーム15は、シートバック幅を構成するため、左右方向に離間して配設され、上下方向に延在するように配設されている。そして、一対のサイドフレーム15の上端部側を連結する上部フレーム16が、サイドフレーム15から上方に延出している。
【0034】
本実施形態に係る上部フレーム16は、一方のサイドフレーム15から上方に延設された後、屈曲し、他方のサイドフレーム15まで延設された略U字形状の部材であり、本実施形態においては、鋼製のパイプを屈曲されたものが使用されている。
なお、この上部フレーム16を構成する鋼製のパイプは、閉断面形状であればよく、例えば、断面形状が円形、矩形等のパイプが使用される。
本実施形態では、断面形状が円形のパイプを使用する。
【0035】
換言すれば、上部フレーム16は、サイドフレーム15から延出するように左右方向に離隔して配設される部分(以下、「上部フレーム立上部16A」と記す)と、この左右方向に配置される上部フレーム立上部16A,16Aの上端側(着座フレーム2が配設される側と逆側)を架橋するように屈曲して延設されるピラー取付部16Bにより略U字形状に構成されている。
【0036】
そして、上部フレーム16の上部フレーム立上部16Aは、サイドフレーム15の側板15aに対して上下方向に沿って一端部側(下端側:ピラー取付部16Bが延設される側と逆側)が重なるように配設され、この重なり部分においてサイドフレーム15に固着接合される。なお、本実施形態では上部フレーム16は断面円形の管状部材によって形成されているが、断面が矩形の管状部材としても良い。
【0037】
また、この上部フレーム立上部16A,16Aの中央より若干下方となる位置を架橋するように、上部連結フレーム16Cが取付けられている。
更に、上部フレーム16の上方には、ヘッドレストS3が配設されている。ヘッドレストS3は、前述のように芯材(不図示)の外周部にクッションパッド3aを設け、クッションパッド3aの外周に表皮材3bを被覆して構成している。
【0038】
そして、上部フレーム16には、ピラー支持部19aが配設されている。このピラー支持部19aには、ヘッドレストS3を支持するヘッドレストピラー19(
図1参照)がガイドロック(不図示)を介して取り付けられて、ヘッドレストS3が取り付けられるようになっている。なお、本実施形態ではシートバックS1とヘッドレストS3が別体となって形成されている例を示したが、シートバックS1とヘッドレストS3が一体となって形成されたバケットタイプとしても良い。
【0039】
シートバックフレーム1の一部を構成するサイドフレーム15は、
図2で示すように、シートバックフレーム1の側面を構成する延伸部材であり、平板状の側板15aと、この側板15aの前端部(乗物前方側に位置する端部)からU字型に内側へ屈曲し、折り返した前縁部15bと、後端部からL字型に内側へ屈曲した後縁部15cとを有している。
この側板15aが、特許請求の範囲の「フレーム側部」に相当し、後縁部15cが、特許請求の範囲の「フレーム延出部」に相当する。
【0040】
本実施形態の前縁部15bには、後縁部15c側へ張り出した突起部15dが形成されており、この突起部15dには、引張りコイルばね35を係止するための係止孔が形成されている。
【0041】
サイドフレーム15下方(側板15a下方)は、連結フレーム18によって架橋されている。
連結フレーム18(メンバーセンター)は、左右方向に離間して配設された一対のサイドフレーム15の下方(側板15a下方)を架橋連結するように形成されている。
連結フレーム18の両端部は、同方向に略90°各々屈曲している(この屈曲して延在する部分を「屈曲溶接部18A」と記す)。
この連結フレーム18は、両端に形成された屈曲部分が、側板15a(下部)と後縁部15c(下部)とで形成される内隅に沿うように配設され、この状態で、屈曲溶接部18A,18Aが側板15a,15a下部の内壁(シート内側を向く面)に溶接固定される。
【0042】
なお、屈曲溶接部18Aにおいて、連結フレーム18が側板15a,15aに溶接された状態でリクライニングシャフト11aが配設される位置には、その配置の障害とならぬようリクライニングシャフト貫通孔18aが形成されている。
なお、本実施形態における後縁部15cは、連結フレーム18の溶接側端部を受けるため(補強するため)、内側方向に緩やかに延出している。
つまり、後縁部15cは、下方に下りるに従い、その左右方向の幅が大きくなるように構成されている。
このように構成されているため、連結フレーム18の接合剛性が高まる。
【0043】
またなお、本実施形態のシートバックフレーム1は、サイドフレーム15(側板15a下方)と連結フレーム18がそれぞれ別部材として形成された例を示すが、一体に形成された構成としても良い。
【0044】
また、サイドフレーム15(側板15a下方)の下方には、リクライニングシャフト11aが挿通されるサイドフレーム側シャフト貫通孔17cが形成されており、この下方には着座フレーム2がリクライニング機構11を介して配設されている。
なお、本実施形態においては、サイドフレーム15の側板15aを一枚の板で構成した。
この構成に限らず、シートバックフレームの側方をサイドフレームと、サイドフレーム下端部に連結された下部フレーム基礎部とに分けた構成としてもよいが、本例のようにこれらを一体とした構成とすることによって、部品点数を削減することができ、コストを低減することができる。
【0045】
更に、左右方向に配置されるサイドフレーム15,15には、衝撃荷重が加わったときに変形する脆弱部150,150が各々形成されている。
なお、この脆弱部150とは、孔部、凹部等により形成されたものである。
本実施形態において、脆弱部150,150は、水平面を基準に同じ高さとなる位置に形成されている。
以下、脆弱部150の構成と機能について説明する。
【0046】
(脆弱部150について)
本発明の車両用シートSには、衝撃荷重が加わったときに変形する脆弱部(以下で説明する脆弱部150)が備えられている。
以下では、サイドフレーム15,15の下方に脆弱部150,150が各々形成された構成を説明する。
なお、本明細書中において、「脆弱部」とは、後面衝突時等の所定以上の大きさの衝撃荷重が加わった際に変形する脆弱性を備えた部分を示すものであり、孔部、凹部等により形成されたものである。
【0047】
本実施形態においては、脆弱部150,150は、水平面を基準に同じ高さとなる位置に形成されている。
つまり、本実施形態においては、一方のサイドフレーム15とリクライニングシャフト11aとの連結部(サイドフレーム側シャフト貫通孔17cの位置)と一方のサイドフレーム15下部に形成された脆弱部150の位置との距離が、他方のサイドフレーム15とリクライニングシャフト11aとの連結部(サイドフレーム側シャフト貫通孔17cの位置)と他方のサイドフレーム15下部に形成された脆弱部150の位置との距離と、同じになるように構成されている。
換言すると、本実施系形態においては、脆弱部150,150は、シートバックフレーム1の上下方向に延びる中心線Nに対して対照となる位置に各々形成されている(
図3参照)。
【0048】
このように構成すると、衝撃荷重が加わった際のサイドフレーム15,15の変形位置制御が容易になるという効果があり、好適に車両シートに適用することができる。
ただし、これに限られることはなく、サイドフレーム15,15の下部に形成されていれば、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、どのような位置に形成することも可能である。
【0049】
なお、
図3に示すように、本実施形態においては、脆弱部150,150は、サイドフレーム15,15の下方に各々形成されるが、左右同様の構成であるため、一方のみを例にとって説明する。
まず、脆弱部150の形成位置を説明する。
【0050】
図3及び
図4に示すように、本実施形態に係る第1脆弱部150Aは、連結フレーム18を構成する屈曲溶接部18Aと側板15aとの溶接連結地点より上方の近接する位置に形成されている。
つまり、脆弱部150は、屈曲溶接部18Aと側板15aとの溶接連結地点の上方に沿って形成される。
また、脆弱部150は、渦巻きバネPの一端部P1を係止する係止部K1が配設される位置よりも上方に形成される。
つまり、脆弱部150は、屈曲溶接部18Aと側板15aとの溶接連結地点及び係止部K1よりも上方であって、これらの位置と近接する位置(沿う位置)に形成される。
【0051】
なお、前述の通り、後縁部15cは、連結フレーム18の溶接側端部を受けるため(補強するため)、内側方向に緩やかに延出し、下方に下りるに従い、その左右方向の幅が大きくなるように構成されている。
よって、脆弱部150が形成されるこの位置は、後縁部15cの左右方向の幅が大きくなっている位置であり、このため、車両用シートSの通常使用状態における剛性を高く保持できる。
【0052】
本実施形態に係る脆弱部150は、第1脆弱部150Aと、第2脆弱部150Bとを有して構成されている。
第1脆弱部150Aは、側板15a(下部)と後縁部15c(下部)とで形成される内隅部分を切り欠いて形成される長孔である。
つまり、第1脆弱部150Aは、側板15a(下部)と後縁部15c(下部)との境界部(以下、「境界部L」と記す)を跨ぐように形成され(切り欠かれ)た、左右方向に長軸を有する略楕円形状の長孔として形成されている。
【0053】
この第1脆弱部150Aのうち、側板15aに形成された部分は、境界部Lから前方に延出しており(以下、当該部分を「側面側延出部150a」と記す)、後縁部15cに形成された部分は、境界部Lから左右方向の内側に延出している(以下、当該部分を「後面側延出部150b」と記す)。
そして、この第1脆弱部150Aの淵部分は、内側に向けて折り曲げられて、フランジ状の部分が形成されている。
【0054】
以下、第1脆弱部150Aの下方側のエッジが折り曲げられて形成されたフランジ状部分を「下側規制部150c」、上方側のエッジが折り曲げられて形成されたフランジ状部分を「上側規制部150d」、側方側の両エッジが折り曲げられて形成されてフランジ状部分を各々「側方規制部150e」と記す。
【0055】
後面衝突時等の衝撃荷重がシートバックフレーム1に加わった際、第1脆弱部150Aが上下方向に潰れるようにして、サイドフレーム15の上方(具体的には、第1脆弱部150Aが形成されている箇所よりも上方部)が後方へ屈曲するが、下側規制部150c及び上側規制部150dは、
図8に示すように、第1脆弱部150Aの潰れる量(すなわち、サイドフレーム15の後傾角度)が一定値以上に大きくならないように規制するために備えられる。
【0056】
すなわち、第1脆弱部150Aを介して対向して備えられる一対の下側規制部150c及び上側規制部150dは、サイドフレーム15に設けられた第1脆弱部150Aの屈曲が大きくなると、下側規制部150cと上側規制部150dとが接触し、下方に備えられた下側規制部150cが上方に備えられた上側規制部150dを押し止めるように配設される。
【0057】
このとき、具体的適用としては、下側規制部150c及び上側規制部150dは、その面積が大きいほど、第1脆弱部150Aの屈曲時、これらが接触しやすくなるため、シートバックフレーム1の変形量(後傾量)を規制することができる。
【0058】
本実施形態においては、下側規制部150c及び上側規制部150dのいずれにおいても平面状の当接面が形成された例を示したが、少なくとも一方において、当接面が平面状に形成されていてもよい。
すなわち、下側規制部150c及び上側規制部150dのうち少なくとも一方に備えられた当接面は、平面状に形成されている。
【0059】
このように、下側規制部150c及び上側規制部150dのうち、少なくとも一方の当接面を平面状とすることにより、第1脆弱部150Aが屈曲した際、これらが接触しやすくなる。その結果、第1脆弱部150Aの屈曲量が制限され、サイドフレーム15の変形量が規定値よりも大きくなることがない。
【0060】
また、
図5に示すように、本実施形態に係る第1脆弱部150Aにおいては、後面側延出部150bの長手方向の距離(左右方向の距離)をd1とし、側面側延出部150aの長手方向の距離(前後方向の距離)をd2とすると、d1>d2となるように構成されている。
【0061】
これは、側面側延出部150aの延長上には後述する第2脆弱部150Bが形成されるため、この第2脆弱部150Bのアシストもうけて側面側延出部150a側(側板15a側)は撓むことができる。よって、側面側延出部150a側を小さく切り欠くこととし、荷重付加時の変形バランスと、通常使用時の剛性を考慮した構成である。
【0062】
なお、本実施形態においては、第1脆弱部150Aを貫通孔として構成したが、これに限られることはなく、断面略半円弧状で、前方へ凹んだ凹部(溝)により形成されていてもよい。
この場合、凹部内壁自体が、各規制部(側方規制部150e・上側規制部150d・下側規制部150c)の機能を果たし得る。
また、第1脆弱部150Aを凹部(溝)として形成した場合、境界部Lを跨ぐ位置のみ貫通孔を形成し、荷重付加時の力の伝達の効率化を図ってもよい。
【0063】
また、本実施形態においては、側板15aに孔として形成された第2脆弱部150Bが備えられている。
第2脆弱部150Bは、側板15aにおいて第1脆弱部150Aから離れた位置(つまり、第1脆弱部150Aとは連続していない)に形成されているが、この位置は、第1脆弱部150Aを構成する側面側延出部150aの延長上に形成される。
【0064】
換言すれば、第1脆弱部150Aを構成する側面側延出部150aは、第2脆弱部150Bの形成位置に向かって延出するよう構成されている(
図3矢印参照)。
これは、第1脆弱部150Aと第2脆弱部150Bとの間の力の伝播を効率化するためである。
【0065】
また、第2脆弱部150Bは、車両用シートSの組み立て時に、他部材が挿入される貫通孔を利用したものである。
具体的には、この第2脆弱部150Bは、車両用シートSの組み立て時に、シートバックフレーム1を固定する固定治具が挿入される貫通孔である。
このように、本実施形態においては、特別に加工を施すことなく、第2脆弱部150Bが形成される。
【0066】
そして、前述の通り、第1脆弱部150Aを構成する側面側延出部150aを、この第2脆弱部150Bに向けて延出するように穿った。
よって、特別な加工を最小限に抑えてコストを低減させることができるとともに、作業性もまた向上する。
【0067】
これら第1脆弱部150A及び第2脆弱部150Bは、後面衝突等、シートバックフレーム1に対して所定の衝撃荷重(通常の着座時以上の大きな衝撃荷重)が加わった際に、撓むことができ、上下方向に潰れるように変形する(
図7及び
図8参照)。その結果、後傾荷重を安定して効率よく吸収することができる。
【0068】
後面衝突時等、乗員が急激に後方へ移動する際、その衝撃荷重を受けることにより、第1脆弱部150A及び第2脆弱部150Bが上下方向に押しつぶされる。このように、第1脆弱部150A及び第2脆弱部150Bが押しつぶされると、サイドフレーム15は、その上方部(具体的には、第1脆弱部150A及び第2脆弱部150Bが形成されている箇所よりも上方部)が車両後方へ折曲するように変形し、この変形に伴い、サイドフレーム15が後傾する。
【0069】
なお、通常の着座荷重に耐えられる強度を備えていれば、第1脆弱部150A及び第2脆弱部150Bを変形しやすくするため、第1脆弱部150A及び第2脆弱部150Bを構成する部分の肉厚みのみを薄く形成しても良い。
【0070】
(サイドフレーム15の作用効果)
後面衝突時の衝撃荷重が加わった際にサイドフレーム15が変形する様子について、図を参照して、以下説明する。
図6は通常時であり、
図7は後面衝突時の衝撃荷重がサイドフレーム15にかかった場合の変形の様子である。後面衝突時、シートバックフレーム1に対して、主として後傾する方向の荷重が加わる。
【0071】
そして、
図7に示すように、サイドフレーム15に荷重が伝達されると、これに形成された脆弱部150が上下方向に押しつぶされるように変形し、その結果、サイドフレーム15上方部(具体的には、脆弱部150の形成位置よりも上方部)が後傾し、シートバックフレーム1が変形する。
【0072】
そして、上記のように脆弱部150が屈曲する際、第1脆弱部150Aに備えられた上側規制部150d及び下側規制部150cにより、脆弱部150の屈曲量が大きくなりすぎることがないように規制される(
図8参照)。
つまり、
図8の白抜矢印に示すように、後面衝突時の衝撃荷重が加わった際、脆弱部150が上下方向に押しつぶされるように屈曲してサイドフレーム15(さらには、シートバックフレーム1)が後傾するが、脆弱部150(第1脆弱部150A)が一定の範囲まで屈曲すると、上側規制部150dと下側規制部150cとが互いに接触し、脆弱部150(第1脆弱部150A)の屈曲量を規制する。したがって、上側規制部150d及び下側規制部150cを備えることにより、シートバックフレーム1の後傾量が大きくなりすぎることなく、後傾量を適当な大きさに設定することができる。
【0073】
さらに、第1脆弱部150Aには、側方規制部150eが形成されており、この側方規制部150eは、第1脆弱部150Aの水平方向両端部において、潰れる力に抗うこととなる。
よって、この側方規制部150eもまた、脆弱部150の屈曲量が大きくなりすぎることがないように規制するために寄与するものとなる。
また、通常使用時においても、第1脆弱部150A付近の剛性を高める役割を果たす。