【解決手段】アルコールと、式(2)で表されるビニルエーテルとを、エーテル交換反応させる、式(3)で表されるビニルエーテルの製造方法。配位性有機溶媒を含む溶媒中で遷移金属化合物を加熱することにより得られる金属ナノクラスターと含窒素複素環化合物からなる触媒。
前記遷移金属化合物が、第8族から第11族遷移金属からなる群より選択された少なくとも1種の遷移金属元素を含む化合物である請求項1〜7のいずれか1項に記載のビニルエーテルの製造方法。
パラジウムを含む遷移金属化合物を、配位性有機溶媒を含む溶媒中で加熱することにより得られる金属ナノクラスター、及び含窒素複素環化合物を含むエーテル交換反応用触媒。
【発明を実施するための形態】
【0021】
<ビニルエーテルの製造方法>
本発明のビニルエーテルの製造方法は、後述の特定の金属ナノクラスター及び含窒素複素環化合物の存在下で、アルコールとビニルエーテルとを原料としてビニルエーテルを生成させる反応(「エーテル交換反応」と称する場合がある)を行う工程を必須の工程として含むビニルエーテルの製造方法である。
なお、本明細書におけるビニルエーテルの「ビニル」には、ビニル基及びビニル基の水素原子の1以上が1価の有機基で置換された基(即ち、式(2)中の「R
bR
cC=CR
a−」の意味が含まれるものとする。
【0022】
[金属ナノクラスター]
本発明のビニルエーテルの製造方法において使用される金属ナノクラスターは、配位性有機溶媒を含む溶媒中で遷移金属化合物を加熱することにより得られる金属ナノクラスター(「本発明の金属ナノクラスター」と称する場合がある)である。本発明の金属ナノクラスターは、遷移金属を含む集合体であって、その平均粒子径がナノサイズの粒子(遷移金属含有ナノ粒子)である。
【0023】
(配位性有機溶媒を含む溶媒)
上記配位性有機溶媒は、遷移金属に対して配位することが可能なヘテロ原子(酸素原子、窒素原子、硫黄原子など)を分子内に1以上有する化合物であって、なおかつ有機溶媒として使用することが可能な化合物である。上記配位性有機溶媒としては、例えば、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMA)、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン(DMI)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、N−メチルホルムアミド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジブチルホルムアミド、N,N−ジブチルアセトアミドなどのカルボン酸アミド(カルボン酸アミド系溶媒);ヘキサメチルホスホリックトリアミド(HMPA)などのリン酸アミド(リン酸アミド系溶媒);トリエチルアミン、ピリジン、エタノールアミンなどのアミン(アミン系溶媒);イソプロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコールなどのアルコール(アルコール系溶媒);ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン(THF)などのエーテル(エーテル系溶媒);アセトン、2−ブタノンなどのケトン(ケトン系溶媒);酢酸エチル、酢酸メチルなどのエステル(エステル系溶媒);アセトニトリルなどのニトリル(ニトリル系溶媒);ニトロメタンなどのニトロ化合物(ニトロ系溶媒);ジメチルスルホキシド(DMSO)などのスルホキシド(スルホキシド系溶媒)などが挙げられる。なお、上記配位性有機溶媒は1種を単独で使用することもできるし、2種以上を組み合わせて使用することもできる。
【0024】
中でも、上記配位性有機溶媒としては、下記式(a)で表される化合物、下記式(b)で表される化合物、下記式(c)で表される化合物、下記式(d)で表される化合物、及び下記式(e)で表される化合物からなる群より選択された少なくとも1種の化合物が好ましい。
【化14】
【化15】
【化16】
【化17】
【化18】
【0025】
上記式(a)中のR
3は、水素原子又はアルキル基を示す。上記アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、デシル基、ドデシル基などの炭素数1〜20(好ましくは1〜10、さらに好ましくは1〜3)のアルキル基などが挙げられる。また、上記式(a)中のR
4、R
5は、同一又は異なって、水素原子又はアルキル基を示す。上記R
4、R
5におけるアルキル基としては、上記R
3におけるアルキル基と同様の基が挙げられる。上記式(a)で表される化合物としては、具体的には、例えば、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMA)、N−メチルホルムアミド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジブチルホルムアミド、N−ブチルホルムアミド、N,N−ジブチルアセトアミド、N−ブチルアセトアミド等が挙げられる。
【0026】
上記式(b)中のR
6は、水素原子又はアルキル基を示す。また、上記式(b)中のR
7、R
8は、同一又は異なって、水素原子又はアルキル基を示す。上記R
6〜R
8におけるアルキル基としては、上記R
3におけるアルキル基と同様の基が挙げられる。また、上記式(b)中のlは、2〜6の整数を示す。なお、lが2以上の整数の場合、それぞれの括弧内(lが付された括弧内)におけるR
7、R
8は、同一であってもよいし、異なっていてもよい。上記式(b)で表される化合物としては、具体的には、例えば、N−メチル−2−ピロリドン、2−ピロリドン、5−エチル−2−ピロリドン、N−メチル−2−ピペリドン、δ−バレロラクタム、ε−カプロラクタム、N−メチルカプロラクタム、1−アザ−2−シクロオクタノンなどが挙げられる。
【0027】
上記式(c)中のR
9、R
10は、同一又は異なって、水素原子又はアルキル基を示す。また、上記式(c)中のR
11、R
12は、同一又は異なって、水素原子又はアルキル基を示す。上記R
9〜R
12におけるアルキル基としては、上記R
3におけるアルキル基と同様の基が挙げられる。また、上記式(c)中のmは、1〜5の整数を示す。mが2以上の整数の場合、それぞれの括弧内(mが付された括弧内)におけるR
11、R
12は、同一であってもよいし、異なっていてもよい。上記式(c)で表される化合物としては、具体的には、例えば、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、2−イミダゾリジノン、1−メチル−2−イミダゾリジノン、1,3−ジエチル−2−イミダゾリジノン、1−エチル−2−イミダゾリジノン、1−イソプロピル−2−イミダゾリジノン、1,3−ジメチルテトラヒドロ−2(1H)−ピリミジノン、テトラヒドロ−2(1H)−ピリミジノン、1−イソプロピルテトラヒドロ−2(1H)−ピリミジノンなどが挙げられる。
【0028】
上記式(d)中のR
13、R
14は、同一又は異なって、水素原子又はアルキル基を示す。上記R
13、R
14におけるアルキル基としては、上記R
3におけるアルキル基と同様の基が挙げられる。なお、それぞれの括弧内(3が付された括弧内)におけるR
13、R
14は、同一であってもよいし、異なっていてもよい。上記式(d)で表される化合物としては、具体的には、例えば、ヘキサメチルホスホリックトリアミド、ヘキサエチルホスホリックトリアミド、ヘキサプロピルホスホリックトリアミドなどが挙げられる。
【0029】
上記式(e)中のR
15、R
16は、同一又は異なって、アルキレン基を示す。上記アルキレン基としては、例えば、メチレン基、メチルメチレン基、ジメチルメチレン基、エチレン基、プロピレン基、トリメチレン基などが挙げられる。また、上記式(e)中のnは0〜20の整数を示す。なお、nが2以上の整数の場合、それぞれの括弧内(nが付された括弧内)におけるR
16は、同一であってもよいし、異なっていてもよい。上記式(e)で表される化合物としては、具体的には、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール(1,2−プロパンジオール)、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール(オリゴエチレングリコール)、ポリプロピレングリコール(オリゴプロピレングリコール)などが挙げられる。
【0030】
中でも、上記配位性有機溶媒としては、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジブチルホルムアミド、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、N−メチル−2−ピロリドン、エチレングリコール、及びヘキサメチルホスホリックトリアミドからなる群より選択された少なくとも1種の化合物が好ましく、より好ましくはN,N−ジメチルホルムアミドである。
【0031】
本発明の金属ナノクラスターを製造する際の溶媒として使用する「配位性有機溶媒を含む溶媒」は、少なくとも上記配位性有機溶媒を含んでいればよく、上記配位性有機溶媒のみで構成された溶媒であってもよいし、上記配位性有機溶媒と該配位性有機溶媒以外の溶媒(「その他の溶媒」と称する場合がある)を含む溶媒であってもよい。上記配位性有機溶媒を含む溶媒(100重量%)における配位性有機溶媒の含有量は、特に限定されないが、60重量%以上(例えば、60〜100重量%)が好ましく、より好ましくは90重量%以上である。上記その他の溶媒としては、上記配位性有機溶媒以外の公知乃至慣用の溶媒を使用することができ、特に限定されないが、例えば、水;ペンタン、ヘキサン、ヘプタンなどの脂肪族炭化水素;シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンなどの脂環式炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素などが挙げられる。なお、上記その他の溶媒は1種を単独で使用することもできるし、2種以上を組み合わせて使用することもできる。
【0032】
(遷移金属化合物)
上記遷移金属化合物は、本発明の金属ナノクラスターの原料である。上記遷移金属化合物としては、公知乃至慣用の遷移金属元素を含有する化合物(遷移金属元素の単体も含まれるものとする)を使用することができ、特に限定されないが、例えば、ランタン、セリウムなどの第3族遷移金属(特にランタノイド元素);チタン、ジルコニウムなどの第4族遷移金属;バナジウムなどの第5族遷移金属;クロム、モリブデン、タングステンなどの第6族遷移金属;マンガンなどの第7族遷移金属;鉄、ルテニウム、オスミウムなどの第8族遷移金属;コバルト、ロジウム、イリジウムなどの第9族遷移金属;ニッケル、パラジウム、白金などの第10族遷移金属;銅、銀などの第11族遷移金属などの遷移金属元素を含有する化合物などが挙げられる。中でも、エーテル交換反応に対する触媒活性の観点で、第8族から第11族遷移金属からなる群より選択された少なくとも1種の遷移金属元素を含む化合物が好ましく、より好ましくは、パラジウムを含む化合物である。
【0033】
上記遷移金属化合物としては、具体的には、上述の遷移金属の単体(金属)、上記遷移金属を含む酸化物、硫化物、水酸化物、ハロゲン化物(フッ化物、塩化物、臭化物、ヨウ化物など)、硫酸塩、オキソ酸又はその塩、無機錯体などの無機化合物;上記遷移金属元素を含むシアン化物、有機酸塩(酢酸塩など)、有機錯体などの有機化合物などが挙げられる。上記遷移金属化合物における遷移金属元素の価数は、特に限定されないが、0〜6価が好ましく、より好ましくは0〜3価である。中でも、上記遷移金属化合物が後述のパラジウム化合物の場合には、パラジウムの価数は0価乃至2価が好ましい。中でも、上記遷移金属化合物としては、金属ナノクラスターを生成させやすい点で、ハロゲン化物が好ましく、より好ましくは塩化物である。
【0034】
即ち、上記遷移金属化合物としては、第8族から第11族遷移金属からなる群より選択された少なくとも1種の遷移金属元素のハロゲン化物(特に、塩化物)が好ましく、より好ましくは、パラジウムのハロゲン化物(特に、塩化物)である。なお、上記遷移金属化合物は1種を単独で使用することもできるし、2種以上を組み合わせて使用することもできる。
【0035】
上記遷移金属化合物の一例であるパラジウム化合物の具体例としては、例えば、金属パラジウム(パラジウムブラックなど)、硝酸パラジウム、塩化パラジウム、酢酸パラジウム、アセチルアセトナトパラジウム(II)、テトラアンミンパラジウム(II)塩化物、ビス(エチレンジアミン)パラジウム(II)塩化物、テトラクロロパラジウム(II)酸カリウム、テトラニトロパラジウム(II)酸カリウム、ジクロロビス(トリアルキルホスフィン)パラジウム(II)、ジメチルビス(トリエチルホスフィン)パラジウム(II)、ビスシクロペンタジエニルパラジウム(II)、トリカルボニルシクロペンタジエニルパラジウム(I)、ジクロロ−μ−ビス[ビス(ジメチルホスフィノ)メタン]二パラジウム(I)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)、ビス(トリシクロヘキシルホスフィン)パラジウム(0)、テトラキス(トリエチルホスフィト)パラジウム(0)、カルボニルトリス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)、ビス(シクロオクタ−1,5−ジエン)パラジウム(0)、トリス(ジベンジリデンアセトン)二パラジウム(0)、トリフルオロ酢酸パラジウム(II)などが挙げられ、塩化パラジウム(II)が金属ナノクラスターを製造するのに好ましい。
【0036】
(金属ナノクラスターの製造方法)
本発明の金属ナノクラスターは、上述のように、配位性有機溶媒を含む溶媒中で遷移金属化合物を加熱することにより製造できる。
【0037】
本発明の金属ナノクラスターの製造方法において使用する配位性有機溶媒、その他の溶媒、遷移金属化合物の量(使用量)は、適宜調整可能であり、特に限定されない。例えば、上記遷移金属化合物の使用量は、特に限定されないが、配位性有機溶媒100重量部に対して、0.001〜5重量部が好ましく、より好ましくは0.01〜1重量部、さらに好ましくは0.03〜0.3重量部である。遷移金属化合物の使用量が0.001重量部未満であると、生産性が低下する場合がある。一方、遷移金属化合物の使用量が5重量部を超えると、金属ナノクラスターの一部が凝集する場合がある。
【0038】
上記配位性有機溶媒を含む溶媒中で遷移金属化合物を加熱する際の温度(加熱温度)は、特に限定されないが、使用する配位性有機溶媒(2種以上の配位性有機溶媒を使用する場合には、最も沸点が高い配位性有機溶媒)の沸点付近の温度で加熱し、当該配位性有機溶媒を還流させることが好ましい。加熱の手順としては、特に、反応容器に配位性有機溶媒を含む溶媒を入れた後、これを加熱して還流状態とした段階で、遷移金属化合物を一度に(急峻に)添加して加熱還流させることが好ましい。これにより、平均粒子径がより制御された金属ナノクラスターを生成させやすくなる傾向がある。
【0039】
より具体的には、上記加熱温度は、例えば、40〜220℃が好ましく、より好ましくは60〜200℃、さらに好ましくは100〜180℃である。加熱温度が40℃未満であると、金属ナノクラスターを効率良く生成させることが困難となる場合がある。一方、加熱温度が220℃を超えると、コスト面で不利となる場合がある。なお、加熱温度は、加熱の間一定(実質的に一定)となるように制御されてもよいし、連続的又は段階的に変動するように制御されてもよい。なお、加熱は、公知乃至慣用の手段により実施することができる。
【0040】
上記配位性有機溶媒を含む溶媒中で遷移金属化合物を加熱する時間(加熱時間)は、特に限定されないが、2〜24時間が好ましく、より好ましくは4〜10時間である。加熱時間が2時間未満であると、金属ナノクラスターの収率が高くならず、生産性が低下する場合がある。一方、加熱時間が24時間を超えると、省エネルギーの観点で不利となったり、生産性に悪影響が及ぶ場合がある。なお、加熱の終了は、例えば、生成した金属ナノクラスターの平均粒子径が目的の値に到達した時点とすることができる。
【0041】
上記加熱は、攪拌しながら実施することが好ましい。攪拌の条件は、特に限定されないが、例えば、攪拌の回転数を100〜3000rpmとすることが好ましく、より好ましくは500〜2500rpmである。回転数が100rpm未満であると、金属ナノクラスターの生成が不十分となる場合がある。一方、回転数が3000rpmを超えると、コスト面で不利となる場合がある。なお、上記攪拌は、公知乃至慣用の手段(攪拌機など)により実施することができる。
【0042】
なお、上記加熱は、一段階で実施することもできるし、二段階以上に分けて実施することもできる。また、上記加熱は、空気雰囲気下などの酸素存在下で実施することもできるし、窒素雰囲気下、アルゴン雰囲気下などの不活性ガス雰囲気下で実施することもできる。また、上記加熱は、常圧下で実施することもできるし、加圧下又は減圧下で実施することもできる。
【0043】
上記加熱の際には、加熱と同時にマイクロ波を照射してもよい。マイクロ波を照射することにより、金属ナノクラスターをいっそう効率良く生成させることができる傾向がある。上記マイクロ波の照射条件は、特に限定されないが、周波数としては2.45GHz程度が好ましく、照射量としては100〜300W程度が好ましい。
【0044】
本発明の金属ナノクラスターの製造方法は、回分方式(バッチ式)、半回分方式、連続流通方式などのいずれの方式によっても実施することができる。例えば、本発明の金属ナノクラスターの製造方法を回分方式で実施する場合には、例えば、回分式の反応容器に配位性有機溶媒を含む溶媒を入れ加熱した後、ここに遷移金属化合物を一括で投入し、攪拌しながら加熱を続ける方法などにより実施することができる。
【0045】
上記配位性有機溶媒中で遷移金属化合物を加熱することによって、本発明の金属ナノクラスターが生成する。上記加熱を終了した段階では、通常、配位性有機溶媒を含む溶媒中に本発明の金属ナノクラスターが含まれた溶液又は分散液が得られる。本発明の金属ナノクラスターは、上記溶媒又は分散液から配位性有機溶媒などの成分を除いた上で使用することもできるし、上記溶媒や分散液の状態で使用することもできる。なお、上記溶媒又は分散液から配位性有機溶媒などの成分を除く方法は、特に限定されず、例えば、減圧留去などの公知乃至慣用の方法を利用できる。
【0046】
本発明の金属ナノクラスターの平均粒子径は、特に限定されないが、0.5〜4nmが好ましく、より好ましくは0.5〜3nm、さらに好ましくは0.5〜2nmである。平均粒子径が0.5nm未満であると、金属ナノクラスターの回収が困難となる場合がある。一方、平均粒子径が4nmを超えると、エーテル交換反応を促進する効果が不十分となる場合がある。なお、上記金属ナノクラスターの平均粒子径は、例えば、透過型電子顕微鏡(TEM)、高分解能透過型電子顕微鏡(HRTEM)などの電子顕微鏡、動的散乱法(DLS)等を使用して求めることができる。
【0047】
本発明の金属ナノクラスターは、上述のように、配位性有機溶媒を含む溶媒中で遷移金属化合物を加熱することにより得られる金属ナノクラスターであるため、遷移金属化合物を構成する遷移金属を含む粒子が配位性有機溶媒(特に、DMF)によって保護された構造を有するナノ粒子(溶媒保護化物)であると考えられる。溶媒保護化物であることは、例えば、NMRスペクトル測定により確認可能である(例えば、Nanoscale,2012,4,4148参照)。このため、本発明の金属ナノクラスターは特殊な表面処理剤、保護剤、ポリマーなどを使用しなくても、凝集しにくく、各種溶媒への分散性が高い。
【0048】
[含窒素複素環化合物]
含窒素複素環化合物としては、分子内に含窒素複素環に由来する窒素原子を2個以上有し、これら窒素原子が遷移金属との間に配位結合を形成し得る化合物が好ましく、さらには、含窒素複素環に由来する2個の窒素原子が遷移金属との間に配位結合を形成して二座配位し得る化合物がより好ましい。このような含窒素複素環化合物の好ましい具体例としては、1,10−フェナントロリン化合物、ビピリジン化合物、メチレンビスオキサゾリン化合物等が挙げられる。
なお、上記1,10−フェナントロリン化合物とは、1,10−フェナントロリン骨格を有する化合物を意味し、例えば、1,10−フェナントロリン、置換基を有する1,10−フェナントロリンなどが含まれる。上記ビピリジン化合物とは、ビピリジン骨格を有する化合物を意味し、例えば、2,2'−ビピリジン、置換基を有する2,2'−ビピリジン等が含まれる。上記メチレンビスオキサゾリン化合物とは、メチレンビスオキサゾリン骨格を有する化合物を意味し、例えば、2,2'−メチレンビスオキサゾリン、置換基を有する2,2'−メチレンビスオキサゾリンなどが含まれる。
【0049】
1,10−フェナントロリン、2,2'−ビピリジン又は2,2'−メチレンビスオキサゾリンが有していてもよい置換基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、デシル基、ドデシル基などの炭素数1〜20(好ましくは1〜10、さらに好ましくは1〜3)のアルキル基;ビニル基、アリル基、1−ブテニルなどの炭素数2〜20(好ましくは2〜10、さらに好ましくは2〜3)のアルケニル基;エチニル基、プロピニル基などの炭素数2〜20(好ましくは2〜10、さらに好ましくは2〜3)のアルキニル基;シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基などの3〜20員(好ましくは3〜15員、さらに好ましくは5〜8員)のシクロアルキル基;シクロペンテニル基、シクロへキセニル基などの3〜20員(好ましくは3〜15員、さらに好ましくは5〜8員)のシクロアルケニル基;パーヒドロナフタレン−1−イル基、ノルボルニル基、アダマンチル基、テトラシクロ[4.4.0.1
2,5.1
7,10]ドデカン−3−イル基などの橋かけ環式炭化水素基;フェニル基、ナフチル基などの炭素数6〜14(好ましくは6〜10)の芳香族炭化水素基;シクロペンチルメチル基、シクロヘキシルメチル基、2−シクロヘキシルエチル基などのシクロアルキル−アルキル基(例えば、C
3-20シクロアルキル−C
1-4アルキル基など);ベンジル基などのアラルキル基(例えば、C
7-18アラルキル基など);フッ素原子、塩素原子、臭素原子などのハロゲン原子;ヒドロキシ基;オキソ基;置換オキシ基(例えば、C
1-20アルコキシ基、C
6-14アリールオキシ基、C
7-18アラルキルオキシ基、C
1-20アシルオキシ基など);カルボキシル基;置換オキシカルボニル基(C
1-20アルコキシカルボニル基、C
6-14アリールオキシカルボニル基、C
7-18アラルキルオキシカルボニル基など);置換又は無置換カルバモイル基、シアノ基、ニトロ基、置換又は無置換アミノ基;スルホ基等が挙げられる。上記置換基の数は特に限定されず、例えば、1〜4個、好ましくは1又は2個である。置換基が複数個ある場合は、それらは同一であっても異なっていてもよい。
【0050】
上記置換又は無置換カルバモイル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基等の炭素数1〜20(好ましくは1〜10、さらに好ましくは1〜3)のアルキル基、若しくはアセチル基、ベンゾイル基等の炭素数1〜20(好ましくは1〜10、さらに好ましくは1〜3)のアシル基等を有するカルバモイル基、又は無置換カルバモイル基などが挙げられる。また、上記置換又は無置換アミノ基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基等の炭素数1〜20(好ましくは1〜10、さらに好ましくは1〜3)のアルキル基、アセチル基、ベンゾイル基等の炭素数1〜20(好ましくは1〜10、さらに好ましくは1〜3)のアシル基等を有するアミノ基、若しくは、無置換アミノ基等が挙げられる。
【0051】
上記1,10−フェナントロリン化合物としては、例えば、1,10−フェナントロリン、4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン(バソフェナントロリン)、2−ヒドロキシ−1,10−フェナントロリン、3−ヒドロキシ−1,10−フェナントロリン、4−ヒドロキシ−1,10−フェナントロリン、5−ヒドロキシ−1,10−フェナントロリンなどが挙げられる。
上記ビピリジン化合物としては、例えば、2,2'−ビピリジン、2,2'−(4,4'−ジメチル)ビピリジン、2,2'−(4,4'−ジ−t−ブチル)ビピリジン、2,2'−(4,4'−ジ−n−ノニル)ビピリジンなどが挙げられる。
上記メチレンビスオキサゾリン化合物としては、例えば、2,2'−メチレンビスオキサゾリン、2,2'−イソプロピリデンビス(4−フェニル−2−オキサゾリン)、2,2'−イソプロピリデンビス(4−フェニル−2−オキサゾリン)、2,2'−イソプロピリデンビス(4−tert−ブチル−2−オキサゾリン)などが挙げられる。
【0052】
上記含窒素複素環化合物は、1,10−フェナントロリン化合物、又はビピリジン化合物が好ましく、より好ましくは、1,10−フェナントロリン、4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン(バソフェナントロリン)、2,2'−ビピリジンが好ましく、4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン(バソフェナントロリン)が特に好ましい。
【0053】
[本発明のビニルエーテルの製造方法]
本発明のビニルエーテルの製造方法は、下記式(1)で表されるアルコールと、下記式(2)で表されるビニルエーテルとを、本発明の金属ナノクラスター及び含窒素複素環化合物の存在下で反応(ビニルエーテル交換反応)させ、下記式(3)で表されるビニルエーテルを生成させる工程(「エーテル交換反応工程」と称する場合がある)を必須の工程として含む。
【化19】
【化20】
【化21】
【0054】
なお、本発明のビニルエーテルの製造方法においては、特に、上記式(2)で表されるビニルエーテルを「原料ビニルエーテル」、上記式(3)で表されるビニルエーテルを「生成ビニルエーテル」と区別して称する場合がある。
【0055】
(アルコール)
上記式(1)中のR
1は、式中に示される酸素原子との結合部位に炭素原子を有する有機基(1価の有機基)(単に「有機基」と称する場合がある)を示す。上記1価の有機基としては、公知乃至慣用の有機基が挙げられ、特に限定されないが、例えば、炭化水素基及び/又は複素環式基(炭化水素基及び複素環式基のいずれか一方又は両方)を含有する有機基などが挙げられる。
【0056】
上記炭化水素基及び複素環式基には、置換基を有する炭化水素基及び複素環式基も含まれる。上記炭化水素基には、脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基及びこれらの基が結合した基などが含まれる。
【0057】
上記脂肪族炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、デシル基、ドデシル基などの炭素数1〜20(好ましくは1〜10、さらに好ましくは1〜3)のアルキル基;ビニル基、アリル基、1−ブテニルなどの炭素数2〜20(好ましくは2〜10、さらに好ましくは2〜3)のアルケニル基;エチニル基、プロピニル基などの炭素数2〜20(好ましくは2〜10、さらに好ましくは2〜3)のアルキニル基などが挙げられる。上記脂環式炭化水素基としては、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロオクチル基などの3〜20員(好ましくは3〜15員、さらに好ましくは5〜8員)のシクロアルキル基;シクロペンテニル基、シクロへキセニル基などの3〜20員(好ましくは3〜15員、さらに好ましくは5〜8員)のシクロアルケニル基;パーヒドロナフタレン−1−イル基、ノルボルニル基、アダマンチル基、テトラシクロ[4.4.0.1
2,5.1
7,10]ドデカン−3−イル基などの橋かけ環式炭化水素基などが挙げられる。上記芳香族炭化水素基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基などの炭素数6〜14(好ましくは6〜10)の芳香族炭化水素基が挙げられる。上記脂肪族炭化水素基と脂環式炭化水素基とが結合した基としては、例えば、シクロペンチルメチル基、シクロヘキシルメチル基、2−シクロヘキシルエチル基などのシクロアルキル−アルキル基(例えば、C
3-20シクロアルキル−C
1-4アルキル基など)などが挙げられる。また、脂肪族炭化水素基と芳香族炭化水素基とが結合した基には、例えば、アラルキル基(例えば、C
7-18アラルキル基など)、アルキル置換アリール基(例えば、1〜4個程度のC
1-4アルキル基が置換したフェニル基又はナフチル基など)などが挙げられる。
【0058】
上記炭化水素基は、種々の置換基、例えば、ハロゲン原子、オキソ基、置換オキシ基(例えば、C
1-20アルコキシ基、C
6-14アリールオキシ基、C
7-18アラルキルオキシ基、C
1-20アシルオキシ基など)、カルボキシル基、置換オキシカルボニル基(C
1-20アルコキシカルボニル基、C
6-14アリールオキシカルボニル基、C
7-18アラルキルオキシカルボニル基など)、置換又は無置換カルバモイル基、シアノ基、ニトロ基、置換又は無置換アミノ基、スルホ基、複素環式基などを有していてもよい。
また、炭化水素基の置換基には、炭化水素基自身、例えば、炭素数1〜20のアルキル基;炭素数2〜20のアルケニル基;炭素数2〜20のアルキニル基;3〜20員のシクロアルキル基;3〜20員のシクロアルケニル基;橋かけ環式炭化水素基;炭素数6〜14の芳香族炭化水素基;C
3-20シクロアルキル−C
1-4アルキル基;C
7-18アラルキル基なども含まれる。
また、上記炭化水素基はヒドロキシル基を有していてもよい。即ち、上記式(1)で表されるアルコールは、式(1)で表されるヒドロキシル基以外のヒドロキシル基を有していてもよい(言い換えれば、式(1)で表されるアルコールは、分子内に2個以上のヒドロキシル基を有する多価アルコールであってもよい)。式(1)で表されるアルコールが分子内に2個以上のヒドロキシル基を有する多価アルコールである場合、本発明のビニルエーテルの製造方法は、そのうちの少なくとも1個のヒドロキシル基がビニル化されればよく、また、1部のヒドロキシル基がビニル化された化合物と全てのヒドロキシル基がビニル化された化合物の混合物が得られる態様も本発明のビニルエーテルの製造方法に含まれる。
上記ヒドロキシル基やカルボキシル基は有機合成の分野で慣用の保護基(例えば、アシル基、アルコキシカルボニル基、有機シリル基、アルコキシアルキル基、オキサシクロアルキル基など)で保護されていてもよい。また、脂環式炭化水素基や芳香族炭化水素基の環には芳香族性又は非芳香族性の複素環が縮合していてもよい。なお、上記置換基の数は特に限定されない。
【0059】
上記置換又は無置換カルバモイル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基等の炭素数1〜20(好ましくは1〜10、さらに好ましくは1〜3)のアルキル基、若しくはアセチル基、ベンゾイル基等の炭素数1〜20(好ましくは1〜10、さらに好ましくは1〜3)のアシル基等を有するカルバモイル基、又は無置換カルバモイル基などが挙げられる。また、上記置換又は無置換アミノ基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基等の炭素数1〜20(好ましくは1〜10、さらに好ましくは1〜3)のアルキル基、アセチル基、ベンゾイル基等の炭素数1〜20(好ましくは1〜10、さらに好ましくは1〜3)のアシル基等を有するアミノ基、若しくは、無置換アミノ基等が挙げられる。
【0060】
上記複素環式基を構成する複素環には、芳香族性複素環及び非芳香族性複素環が含まれる。このような複素環としては、例えば、ヘテロ原子として酸素原子を含む複素環(例えば、オキシラン環などの3員環、オキセタン環などの4員環、フラン、テトラヒドロフラン、オキサゾール、γ−ブチロラクトン環などの5員環、4−オキソ−4H−ピラン、テトラヒドロピラン、モルホリン環などの6員環、ベンゾフラン、4−オキソ−4H−クロメン、クロマン環、2,3,3a,5,6,6a−ヘキサヒドロフロ[3,2−b]フランなどの縮合環、3−オキサトリシクロ[4.3.1.1
4,8]ウンデカン−2−オン環、3−オキサトリシクロ[4.2.1.0
4,8]ノナン−2−オン環などの橋かけ環など)、ヘテロ原子として硫黄原子を含む複素環(例えば、チオフェン、チアゾール、チアジアゾール環などの5員環、4−オキソ−4H−チオピラン環などの6員環、ベンゾチオフェン環などの縮合環など)、ヘテロ原子として窒素原子を含む複素環(例えば、ピロール、ピロリジン、ピラゾール、イミダゾール、トリアゾール環などの5員環、ピリジン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、ピペリジン、ピペラジン環などの6員環、インドール、インドリン、キノリン、アクリジン、ナフチリジン、キナゾリン、プリン環などの縮合環など)などが挙げられる。上記複素環式基には、上記炭化水素基が有していてもよい置換基と同様の置換基を有していてもよい。また、複素環を構成する窒素原子は、慣用の保護基(例えば、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アルケニルオキシカルボニル基、アラルキルオキシカルボニル基、アラルキル基、アシル基、アリールスルホニル基、アルキルスルホニル基など)により保護されていてもよい。
【0061】
上記式(1)中のR
1は、1又は2以上の炭化水素基及び/又は複素環式基と、1又は2以上の連結基とで構成された有機基であってもよい。上記連結基としては、例えば、エーテル結合(−O−)、チオエーテル結合(−S−)、エステル結合(−COO−)、アミド結合(−CONH−)、カルボニル基(−CO−)、これらの2以上が結合した基などの2価の基などが挙げられる。
【0062】
上記式(1)で表されるアルコールとしては、具体的には、例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、i−プロパノール、n−ブタノール、s−ブタノール、t−ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、へプタノール、オクタノール、アリルアルコール、フェノール、ベンジルアルコール、4−メチルベンジルアルコール、1−フェニルエタノール、3−メチルオキセタン−2−イルメタノール、3−エチルオキセタン−2−イルメタノール等の分子内にヒドロキシル基を1個有するアルコール;エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、3,3−ビス(ヒドロキシメチル)オキセタン、オキセタンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、2−ヒドロキシ−6−ヒドロキシメチル−7−オキサビシクロ〔2.2.1〕ヘプタンと3−ヒドロキシ−6−ヒドロキシメチル−7−オキサビシクロ〔2.2.1〕ヘプタンの混合物(ONB)、1,6−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1,3−アダマンタンジオール、2,3,3a,5,6,6a−ヘキサヒドロフロ[3,2−b]フラン−3,6−ジオール(イソソルビド)等の分子内に2個以上のヒドロキシル基を有するアルコールなどが挙げられる。
【0063】
(原料ビニルエーテル)
上記式(2)中のR
2は、式中に示される酸素原子との結合部位に炭素原子を有する有機基(1価の有機基)を示す。上記式(2)中のR
2としては、具体的には、上記式(1)中のR
1と同様の基が挙げられる。なお、上記エーテル交換反応における反応物(反応基質)としての原料ビニルエーテルと、生成物である生成ビニルエーテルとは、通常、異なる化合物(ビニルエーテル)であるため、上記式(2)中のR
2と上記式(1)中のR
1とは、通常、異なる基である。
【0064】
上記式(2)中のR
a〜R
cは、同一又は異なって、水素原子若しくは式中に示される炭素原子との結合部位に炭素原子を有する有機基(1価の有機基)を示す。上記有機基としては、エーテル交換反応を阻害せず、なおかつ式中に示される炭素原子との結合部位に炭素原子を有する有機基であればよく、特に限定されない。上記R
a〜R
cとしては、上記式(1)中のR
1と同様の基が挙げられ、より具体的には、例えば、メチル基、エチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ブチル基(n−ブチル基)、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基などのアルキル基;ビニル基、アリル基、ブテニル基、ヘキセニル基、デセニル基、シクロヘキセニル基などのアルケニル基;フェニル基、ナフチル基、トリル基、キシリル基、エチルフェニル基などのアリール基等が挙げられる。中でも、R
a〜R
cとしては水素原子が好ましく、特に、R
a〜R
cがいずれも水素原子であることが好ましい。
【0065】
上記式(2)で表されるビニルエーテルとしては、具体的には、例えば、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、s−ブチルビニルエーテル、ペンチルビニルエーテル、ヘキシルビニルエーテル、ヒドロキシエチルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールモノビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテルなどが挙げられる。
【0066】
(エーテル交換反応)
上記式(1)で表されるアルコールと上記式(2)で表されるビニルエーテル(原料ビニルエーテル)とのエーテル交換反応は、溶媒の存在下で進行させることもできるし、溶媒の非存在下で進行させることもできる。上記溶媒としては、特に限定されないが、例えば、ヘキサン、テトラヒドロフラン、アセトン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、アセトニトリル、トルエンなどが挙げられる。なお、上記溶媒は、1種を単独で使用することもできるし、2種以上を組み合わせて(即ち、混合溶媒として)使用することもできる。また、上記式(1)で表されるアルコールや式(2)で表されるビニルエーテルを溶媒(溶媒兼基質)として使用することもできる。
【0067】
上記溶媒の使用量は、上記式(1)で表されるアルコールの種類、上記式(2)で表されるビニルエーテルの種類、溶媒の種類等に応じて適宜調整でき、特に限定されないが、上記式(1)で表されるアルコール100重量部に対して、10〜5000重量部が好ましく、より好ましくは100〜3000重量部である。
【0068】
上記エーテル交換反応に付す式(1)で表されるアルコールと上記式(2)で表されるビニルエーテル(原料ビニルエーテル)の量論比は、反応基質の種類や反応条件等により異なり適宜調整可能であり、特に限定されない。通常、式(1)で表されるアルコールが有するヒドロキシル基に対して、式(2)で表されるビニルエーテルが有するビニル基が等量又は過剰量となるように設定する。具体的には、上記式(2)で表されるビニルエーテルの使用量は、上記式(1)で表されるアルコールが有するヒドロキシル基1当量に対して、式(2)で表されるビニルエーテルが有するビニル基が0.8〜10当量となる量が好ましく、より好ましくは1〜8当量、さらに好ましくは1.5〜5当量である。
【0069】
上記エーテル交換反応は、本発明の金属ナノクラスター及び含窒素複素環化合物の存在下で進行させる。
上記エーテル交換反応において反応物(反応基質)と共存させる本発明の金属ナノクラスターの量(使用量;金属ナノクラスターを構成する金属原子換算)は、特に限定されないが、上記式(1)で表されるアルコールが有するヒドロキシル基100モルに対して、10
-7〜1モルが好ましく、より好ましくは10
-7〜10
-1モル、さらに好ましくは10
-7〜10
-2モルである。本発明の金属ナノクラスターの使用量が10
-7モル未満であると、エーテル交換反応が進行しないか、その進行が不十分となり、ビニルエーテルの生産性が低下する場合がある。一方、本発明の金属ナノクラスターの使用量が1モルを超えると、コスト面で不利となる場合がある。なお、上記エーテル交換反応において本発明の金属ナノクラスターは、1種を単独で使用することもできるし、2種以上を組み合わせて使用することもできる。
【0070】
上記エーテル交換反応において反応物(反応基質)と共存させる本発明の含窒素複素環化合物は、複素環を構成する窒素原子が金属ナノクラスターの表面の遷移金属に配位して安定化させることにより触媒活性を向上させると考えられる。従って、含窒素複素環化合物は金属ナノクラスターを十分に安定化・活性化させる量を使用することが好ましい。
上記金属ナノクラスターと上記含窒素複素環化合物の量論比は、通常、金属ナノクラスター(金属ナノクラスターを構成する金属原子換算)に対して含窒素複素環化合物が等量又は過剰量となるように設定する。具体的には、金属ナノクラスター1当量に対して、含窒素複素環化合物を1〜500当量(より好ましくは1〜200当量が、さらに好ましくは50〜100当量)使用することが好ましい。本発明の含窒素複素環化合物の使用量がこの範囲より少ない場合には、エーテル交換反応が進行しないか、その進行が不十分となり、ビニルエーテルの生産性が低下する場合がある。一方、本発明の含窒素複素環化合物の使用量がこの範囲を超えると、コスト面で不利となる場合がある。なお、上記エーテル交換反応において本発明の含窒素複素環化合物は、1種を単独で使用することもできるし、2種以上を組み合わせて使用することもできる。
但し、式(1)で表されるアルコールが分子内に2個以上のヒドロキシル基を有するジオール化合物である場合には、当該ジオール化合物自体がナノクラスターの保護剤としてはたらくため、含窒素複素環化合物を必ずしも添加する必要はない。
【0071】
上記エーテル交換反応は、さらに、塩基を共存させて進行させることが好ましい。塩基を共存させることにより、エーテル交換反応が加速する傾向がある。上記塩基としては、公知乃至慣用の塩基を使用することができ、特に限定されないが、例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化セシウムなどのアルカリ金属の水酸化物;水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウムなどのアルカリ土類金属の水酸化物;炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウムなどのアルカリ金属の炭酸塩;炭酸マグネシウムなどのアルカリ土類金属の炭酸塩;炭酸水素リチウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素セシウムなどのアルカリ金属の炭酸水素塩などの無機塩基が挙げられる。また、上記塩基としては、例えば、酢酸リチウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸セシウムなどのアルカリ金属の有機酸塩(例えば、酢酸塩);酢酸マグネシウムなどのアルカリ土類金属の有機酸塩(例えば、酢酸塩);リチウムメトキシド、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、ナトリウムイソプロポキシド、カリウムエトキシド、カリウムt−ブトキシド等のアルカリ金属のアルコキシド;ナトリウムフェノキシドなどのアルカリ金属のフェノキシド;トリエチルアミン、N−メチルピペリジン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ−5−エンなどのアミン類(第3級アミンなど)などの有機塩基も例示される。なお、上記エーテル交換反応において塩基は、1種を単独で使用することもできるし、2種以上を組み合わせて使用することもできる。中でも、無機塩基が好ましく、より好ましくはアルカリ金属又はアルカリ土類金属の酢酸塩、さらに好ましくは酢酸ナトリウムである。
【0072】
上記エーテル交換反応において共存させる塩基の量(使用量)は、特に限定されないが、上記式(1)で表されるアルコールが有するヒドロキシル基100モルに対して、5〜1000モルが好ましく、より好ましくは10〜500モル、さらに好ましくは40〜200モルである。塩基の量が5モル未満であると、式(3)で表されるビニルエーテルの生産性が低下する場合がある。一方、塩基の量が1000モルを超えると、コスト面で不利となる場合がある。
【0073】
上記エーテル交換反応は、さらに、金属塩を共存させて進行させることが好ましい。金属塩を共存させることにより、エーテル交換反応の収率が向上する傾向がある。
上記金属塩を構成する金属元素としては、特に限定されないが、例えば、ランタン、セリウムなどの第3族遷移金属(特にランタノイド元素);チタン、ジルコニウムなどの第4族遷移金属;バナジウムなどの第5族遷移金属;クロム、モリブデン、タングステンなどの第6族遷移金属;マンガンなどの第7族遷移金属;鉄、ルテニウム、オスミウムなどの第8族遷移金属;コバルト、ロジウム、イリジウムなどの第9族遷移金属;ニッケル、パラジウム、白金などの第10族遷移金属;銅、銀などの第11族遷移金属などの遷移金属元素などが挙げられる。中でも、エーテル交換反応の収率がより向上する観点で、第11族遷移金属が好ましく、より好ましくは、銅又は銀である。
【0074】
上記金属塩としては、具体的には、上述の金属元素を含む硫化物、水酸化物、ハロゲン化物(フッ化物、塩化物、臭化物、ヨウ化物など)、硫酸塩、オキソ酸又はその塩、無機錯体などの無機金属塩;上記金属元素を含むシアン化物、有機酸塩(酢酸塩など)、有機錯体などの有機金属塩などが挙げられる。上記金属塩における金属元素の価数は、特に限定されないが、1〜6価が好ましく、より好ましくは1〜3価である。中でも、上記金属塩が銅塩の場合には、銅の価数は2価が好ましく、銀塩の場合は、銀の価数は1価が好ましい。中でも、上記金属塩としては、エーテル交換反応の収率がより向上する観点で、ハロゲン化物、有機酸塩(酢酸塩など)が好ましく、より好ましくは塩化物、ヨウ化物、酢酸塩である。
【0075】
即ち、上記金属塩としては、第11族遷移金属(特に、銅又は銀)の有機酸塩(酢酸塩など)又はハロゲン化物(特に、塩化物、ヨウ化物)が好ましく、より好ましくは、2価の銅のハロゲン化物(特に、塩化銅(II)、ヨウ化銅(II))、2価の銅の有機酸塩(特に、酢酸銅(II)、プロピオン酸銅(II))、1価の銀のハロゲン化物(特に、塩化銀(I)、ヨウ化銀(I))、1価の銀の有機酸塩(特に、酢酸銀(I))である。なお、上記金属塩は1種を単独で使用することもできるし、2種以上を組み合わせて使用することもできる。
【0076】
上記エーテル交換反応において共存させる金属塩の量(使用量)は、特に限定されないが、上記式(1)で表されるアルコールが有するヒドロキシル基100モルに対して、0.01〜20モルが好ましく、より好ましくは0.1〜10モル、さらに好ましくは1〜5モルである。金属塩の量がこの範囲外であると、式(3)で表されるビニルエーテルの生産性が低下する場合がある。
【0077】
上記エーテル交換反応を進行させる際の温度(反応温度)は、特に限定されないが、30〜250℃が好ましく、より好ましくは80〜200℃である。反応温度が30℃未満であると、反応速度が遅く、式(3)で表されるビニルエーテルの生産性が低下する場合がある。一方、反応温度が250℃を超えると、反応基質の分解反応等が併発しやすく、式(3)で表されるビニルエーテルの生産性が低下する場合がある。なお、反応温度は、一定(実質的に一定)となるように制御することもできるし、段階的又は連続的に変動するよう制御することもできる。
【0078】
また、上記エーテル交換反応の反応時間は、反応基質や反応温度等に応じて適宜調整することができ、特に限定されないが、1〜48時間が好ましく、より好ましくは3〜30時間である。反応時間が1時間未満であると、式(3)で表されるビニルエーテルを十分に生成させることが困難となる場合がある。一方、反応時間が48時間を超えると、式(3)で表されるビニルエーテルの生産性が低下し、コスト面で不利となる場合がある。
【0079】
なお、上記エーテル交換反応を進行させる雰囲気は、特に限定されず、空気雰囲気下や酸素雰囲気下などであってもよいし、窒素雰囲気下、アルゴン雰囲気下などの不活性ガス雰囲気下であってもよい。中でも、上記エーテル交換反応は、上記金属塩を共存させない場合は、不活性ガス雰囲気下で進行させることが好ましく、上記金属塩を共存させる場合は、空気雰囲気などの酸素を含む雰囲気下で進行させることが好ましい。酸素を含む雰囲気下で記エーテル交換反応を進行させる場合、純酸素を使用してもよいし、窒素、ヘリウム、アルゴンなどの酸素以外のガスで希釈された混合ガス(空気を含む)を使用してもよい。酸素を含む雰囲気下の態様は特に限定されず、酸素を含むガスを反応液にバブリングさせたり、反応容器の気相部に酸素を存在させる態様も含まれる。
また、上記エーテル交換反応は、常圧下で進行させることもできるし、加圧下又は減圧下で進行させることもできる。
【0080】
上記エーテル交換反応は、回分方式(バッチ式)、半回分方式、連続流通方式などのいずれの方式によっても実施することができる。例えば、上記エーテル交換反応を回分方式で実施する場合には、例えば、回分式の反応容器に、式(1)で表されるアルコール、式(2)で表されるビニルエーテル、本発明の金属ナノクラスター、本発明の含窒素複素環化合物及び溶媒等を仕込み、さらに必要に応じて加熱し、攪拌する方法等により実施することができる。一方、上記エーテル交換反応を連続流通方式で実施する場合には、例えば、連続流通方式の反応容器中に本発明の金属ナノクラスター及び本発明の含窒素複素環化合物を保持させ、当該反応容器に、上記式(1)で表されるアルコール及び上記式(2)で表されるビニルエーテルを含む溶液を流通させる方法等により実施することができる。
【0081】
上記エーテル交換反応工程により、上記式(1)で表されるアルコールの水酸基の少なくとも1つの水素原子が、式(2)で表されるビニルエステルのビニル基(R
bR
cC=CR
a−)で置換された、上記式(3)で表されるビニルエーテルが得られる。即ち、上記式(3)中のR
1、R
a〜R
cは前記に同じ(式(1)及び式(2)におけるものと同じ)である。
【0082】
本発明のビニルエーテルの製造方法は、上記エーテル交換反応工程の後、生成させた上記式(3)で表されるビニルエーテルを精製するための減圧留去、蒸留、再結晶、クロマトグラフィーなどを行うための精製工程などのその他の工程を含んでいてもよい。
【0083】
本発明のビニルエーテルの製造方法により生成物として得られる式(3)で表されるビニルエーテルは、例えば、医薬品や農薬等の精密化学品の原料、機能性樹脂(例えば、レジスト用樹脂、光学樹脂、透明樹脂、架橋樹脂等)の原料、カチオン重合用硬化剤、界面活性剤、反応希釈剤等に適用することができる。
【0084】
本発明のビニルエーテルの製造方法においては、ビニルエーテルを生成させるための反応(エーテル交換反応)用の触媒として、触媒活性に優れる本発明の金属ナノクラスター及び本発明の含窒素複素環化合物を含む本発明のエーテル交換反応用触媒を使用しているため、極微量の触媒量でも収率が飛躍的に向上し、ビニルエーテルを優れた生産性で生成させることが可能となる。さらに、加熱を伴う精製工程においても本発明の金属ナノクラスター及び本発明の含窒素複素環化合物を含む本発明のエーテル交換反応用触媒は失活しにくいため、ビニルエーテルの精製・回収操作や金属ナノクラスターの回収操作等の作業性にも優れ、触媒の再使用も容易である。
これに対して、従来のエーテル交換反応の触媒として使用されている金属錯体(例えば、パラジウム錯体、イリジウム錯体など)は、本発明の金属ナノクラスターに比べて耐熱性に劣るため、従来のビニルエーテルの製造方法においては反応温度を比較的低い範囲に設定しなければならず、また、エーテル交換反応における反応基質として使用できる化合物は限定されていた。また、上記金属錯体は耐熱性に劣るため、加熱を伴う精製工程等において失活しやすく、その回収及び再使用は困難であった。
【0085】
<エーテル交換反応用触媒>
本発明の金属ナノクラスターは、本発明の含窒素複素環化合物と組み合わせることにより、その活性(触媒活性)が飛躍的に向上して、極微量の触媒量であっても目的物であるビニルエーテルの収率を大幅に改善することができる。即ち、本発明のエーテル交換反応用触媒は、本発明の金属ナノクラスター及び本発明の含窒素複素環化合物を含むことを特徴とする。
金属ナノクラスターの活性が含窒素複素環化合物により向上する理由は明らかでないが、金属ナノクラスターの表面付近の金属原子に含窒素複素環化合物の1個以上の窒素原子が配位結合して金属ナノクラスターをより安定化させることにより触媒活性が向上させていると推定される。なお、この推測は、本発明を何ら限定するものではない。
なお、本発明のエーテル交換反応用触媒において、上記金属ナノクラスターは、1種を単独で使用することもできるし、2種以上を組み合わせて使用することもでき、また、上記含窒素複素環化合物も1種を単独で使用することもできるし、2種以上を組み合わせて使用することもできる。
【0086】
本発明のエーテル交換反応用触媒を構成する金属ナノクラスターは特に限定されるものではなく、上記「金属ナノクラスターの製造方法」により得られる金属ナノクラスターを制限なく使用可能であるが、好ましくは、パラジウムを含む遷移金属化合物を、配位性有機溶媒を含む溶媒中で加熱することにより得られるものである。
【0087】
本発明のエーテル交換反応用触媒の形態は、本発明の金属ナノクラスターと本発明の窒素複素環化合物が組み合わされている限り特に限定されるものではなく、例えば、本発明の金属ナノクラスターと本発明の含窒素複素環化合物を溶媒中または無溶媒で混合した溶液又は分散液を触媒として用いてもよい。また、溶媒中で混合した場合には、減圧留去などの公知乃至慣用の方法で溶媒を除いた混合物を触媒として用いてもよい。あるいは、反応基質(例えば、式(1)で表されるアルコール及び/又は式(2)で表されるビニルエーテル)に上記金属ナノクラスター及び上記含窒素複素環化合物を順次又は同時に添加して、反応系中で本発明のエーテル交換反応用触媒を生成させる形態であってもよい。
【0088】
本発明のエーテル交換反応用触媒における本発明の金属ナノクラスターと本発明の含窒素複素環化合物の量論比は特に限定されないが、通常、金属ナノクラスター(金属ナノクラスターを構成する金属原子換算)に対して含窒素複素環化合物が等量又は過剰量となるように設定する。具体的には、金属ナノクラスター1当量に対して、含窒素複素環化合物を1〜1000当量(より好ましくは1〜500当量が、さらに好ましくは50〜200当量)使用することが好ましい。本発明の含窒素複素環化合物の使用量がこの範囲より少ない場合には、触媒活性が十分ではなく、エーテル交換反応が進行しないか、その進行が不十分となり、ビニルエーテルの生産性が低下する場合がある。一方、本発明の含窒素複素環化合物の使用量がこの範囲を超えると、コスト面で不利となる場合がある。
【0089】
本発明のエーテル交換反応用触媒は、熱などに対する安定性が高いので、エーテル交換反応終了後に容易に回収して再利用することができる。本発明のエーテル交換反応用触媒を回収・再利用の方法は、本技術分野で公知の方法を限定することなく採用することができ、例えば、遠心分離やろ過など公知の方法で触媒を回収した後、上記配位性溶媒などで洗浄、再分散又は溶解させることなどにより回収することができる。回収した本発明のエーテル交換反応用触媒は、必要に応じて、さらに本発明の金属ナノクラスター及び/又は本発明の含窒素複素環化合物を追加して使用してもよい。
【実施例】
【0090】
以下に、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0091】
製造例1
[金属ナノクラスター(パラジウムナノクラスター)の製造]
パラジウムナノクラスターは、特開2012−000593に記載の方法に準じて調製した。
具体的には、三口フラスコに回転子を入れ、DMFで共洗いしたのちに、DMF(15mL)を入れ、空気雰囲気下、140℃で6分間、三口フラスコを予備加熱した。その後、0.1Mの塩化パラジウム水溶液を150μL加え、140℃、6時間加熱環流し合成を行った。パラジウム超微粒子溶液は、1mMの溶液(1mM Pd超微粒子(ナノ粒子)(NCs)/DMF)として得られた。
上記Pd NCs溶液(1.0mM Pd NCs in DMF)について、動的散乱(DLS)スペクトル測定、HRTEM(高分解能透過型電子顕微鏡)観察により分析した結果、直径が約1〜2nmの粒子(パラジウムナノクラスター)の生成が確認された。
図1は上記Pd NCs溶液のDLSスペクトルのチャートであり、
図2は上記Pd NCs溶液におけるパラジウムナノクラスターの透過型電子顕微鏡像である。
【0092】
(パラジウムナノクラスターのDLSスペクトル測定)
製造例1で得られたPd NCs溶液(1.0mM Pd NCs in DMF)について、DLSスペクトルを測定した。得られたDLSスペクトルのチャートを
図1に示す。1〜2nm付近にモード径を有する粒度分布を示すチャートが得られた。
なお、DLSスペクトルは、「動的光散乱装置 HORIBA SZ-100」(堀場製作所製)を使用して測定した。
【0093】
(パラジウムナノクラスターのHRTEM測定)
製造例1で得られたPd NCs溶液(1.0mM Pd NCs in DMF)について、高分解能透過型電子顕微鏡(HRTEM)観察を行った。
図2に示すように、直径が1〜2nmのPd NCsの生成が確認された。
【0094】
なお、HRTEMは、「電界放射型透過型電子顕微鏡 JEM‐2010F」(日本電子製)を使用して測定した。
【0095】
実施例1
[ビニルエーテルの製造(エーテル交換反応)]
製造例1で得られたパラジウムナノクラスターのDMF溶液(1mM Pd NCs in DMF,1mL,1.0mmol)からDMFをエバポレーターを用いて留去した後、メタノール(MeOH)1mLを加えてパラジウムナノクラスターを再分散させ、パラジウムナノクラスターのメタノール溶液(1mM Pd NCs in MeOH)を得た。
プレッシャーチューブに撹拌子を入れ、上記で溶媒置換を行ったPd NCsをシリンジを用いて加え、セプタムを取り付け、真空引きによりメタノールを飛ばし、アルゴン置換を数回行った。4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン(33.2mg,0.1mmol)、酢酸ナトリウム(164.0mg,2.0mmol)をプレッシャーチューブにスパチュラを用いて加えた。そのとき、プレッシャーチューブ上部のセプタムを外し、すばやく目的の化合物を入れた。その後、再びプレッシャーチューブのセプタム部分からアルゴン置換を行った。その後、シリンジを用いてセプタム部分よりブチルビニルエーテル(1.0mL,7.7mmol)を加え若干撹拌した。ベンジルアルコール(103.3mg,1.0mmol)をシリンジを用いて加えた。その後、アルゴンを吹かしながらプレッシャーチューブ上部のセプタムと専用の蓋を付け替えた。その後、100℃のオイルバスにプレッシャーチューブを浸け、スターラーで24時間撹拌させた。撹拌後、反応の粗熱をとり、氷浴で冷却し反応を止めた。内部基準物質として任意の直鎖アルカンを加え、THFでクエンチを行った。溶液をフィルターに通し、ガスクロマトグラフィーで分析を行った。その際、内部基準法により収率等を求めた。結果を表1に示す。なお、上記ブチルビニルエーテルは、反応溶媒であるのと同時に反応基質でもある。
ベンジルアルコールの転化率は57%、ベンジルビニルエーテルの収率は39%、生成したベンジルビニルエーテルの量(mol)と触媒として使用したPd NCsの量(mol)から算出されるターンオーバー数(TON)[ベンジルビニルエーテル(mol)/Pd NCs(mol)]は、390であった。
化合物はガスクロマトグラフ質量分析計(GC−MS)を用いて同定を行った。以下にMSスペクトルを示す。
ベンジルビニルエーテル:[M]
+ (relative intensity),134(1),106(5),91(100),77(4),65(16).
【0096】
実施例2
4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリンの代わりに1,10−フェナントロリンを用いたこと以外は、実施例1と同様にエーテル交換反応を行った。結果を表1に示す。
【0097】
実施例3
4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリンの代わりに2,2'−ビピリジンを用いたこと以外は、実施例1と同様にエーテル交換反応を行った。結果を表1に示す。
【0098】
比較例1
4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリンを用いなかったこと以外は、実施例1と同様にエーテル交換反応を行った。結果を表1に示す。
【0099】
比較例2
4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリンの代わりにトリフェニルホスフィンを用いたこと以外は、実施例1と同様にエーテル交換反応を行った。結果を表1に示す。
【0100】
実施例4
4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリンを16.1mg(0.05mmol)用いたこと以外は、実施例1と同様にエーテル交換反応を行った。結果を表1に示す。
【0101】
実施例5
4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリンを66.4mg(0.2mmol)用いたこと以外は、実施例1と同様にエーテル交換反応を行った。結果を表1に示す。
【0102】
実施例6
酢酸ナトリウムの代わりにトリエチルアミン用いたこと以外は、実施例1と同様にエーテル交換反応を行った。結果を表1に示す。
【0103】
実施例7
酢酸ナトリウムを82.0mg(1.0mmol)用いたこと以外は、実施例1と同様にエーテル交換反応を行った。結果を表1に示す。
【0104】
実施例8
酢酸ナトリウムを246.0mg(3.0mmol)用いたこと以外は、実施例1と同様にエーテル交換反応を行った。結果を表1に示す。
【0105】
実施例9
ブチルビニルエーテルを0.5mL(3.4mmol)用いたこと以外は、実施例1と同様にエーテル交換反応を行った。結果を表1に示す。
【0106】
実施例10
ブチルビニルエーテルを2.0mL(15.4mmol)用いたこと以外は、実施例1と同様にエーテル交換反応を行った。結果を表1に示す。
【0107】
実施例11
反応温度を75℃としたこと以外は、実施例1と同様にエーテル交換反応を行った。結果を表1に示す。
【0108】
実施例12
反応温度を120℃としたこと以外は、実施例1と同様にエーテル交換反応を行った。結果を表1に示す。
【0109】
実施例13
反応時間を48時間としたこと以外は、実施例1と同様にエーテル交換反応を行った。結果を表1に示す。
【0110】
実施例14
パラジウムナノクラスターのDMF溶液(1mM Pd NCs in DMF)を2mL(2.0mmol)使用したこと以外は、実施例1と同様にエーテル交換反応を行った。結果を表1に示す。
【0111】
【表1】
【0112】
含窒素複素環化合物を用いない比較例1および含窒素複素環化合物の代わりにトリフェニルホスフィンを用いた比較例2では、ベンジルビニルエーテルは得られなかった。一方、含窒素複素環化合物を用いた実施例では、エーテル交換反応が進行し、特に、4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリンを用いた場合に収率が大幅に向上した。
【0113】
実施例15
[ビニルエーテルの製造(エーテル交換反応)]
製造例1で得られたパラジウムナノクラスターのDMF溶液(1mM Pd NCs in DMF,1mL,1.0mmol)からDMFをエバポレーターを用いて留去した後、メタノール(MeOH)1mLを加えてパラジウムナノクラスターを再分散させ、パラジウムナノクラスターのメタノール溶液(1mM Pd NCs in MeOH)を得た。
プレッシャーチューブに撹拌子を入れ、上記で溶媒置換を行ったPd NCsをシリンジを用いて加え、セプタムを取り付け、真空引きによりメタノールを飛ばし、アルゴン置換を数回行った。1,6−ヘキサンジオール(118.1mg,1mmol)、4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン(33.2mg,0.1mmol)、酢酸ナトリウム(164.0mg,2.0mmol)をプレッシャーチューブにスパチュラを用いて加えた。そのとき、プレッシャーチューブ上部のセプタムを外し、すばやく目的の化合物を入れた。その後、再びプレッシャーチューブのセプタム部分からアルゴン置換を行った。その後、シリンジを用いてセプタム部分よりブチルビニルエーテル(1.0mL,7.7mmol)を加え若干撹拌した。その後、アルゴンを吹かしながらプレッシャーチューブ上部のセプタムと専用の蓋を付け替えた。その後、100℃のオイルバスにプレッシャーチューブを浸け、スターラーで24時間撹拌させた。撹拌後、反応の粗熱をとり、氷浴で冷却し反応を止めた。内部基準物質として任意の直鎖アルカンを加え、THFでクエンチを行った。溶液をフィルターに通し、ガスクロマトグラフィーで分析を行った。その際、内部基準法により収率等を求めた。結果を表2に示す。なお、上記ブチルビニルエーテルは、反応溶媒であるのと同時に反応基質でもある。
1,6−ヘキサンジオールの転化率は84%、6−ビニルオキシヘキサノール(モノビニル化合物)の収率は28%、1,6−ビス(ビニルオキシ)ヘキサン(ジビニル化合物)の収率は8%、合計の収率は36%、生成したモノビニル化合物とジビニル化合物の合計のビニル化量(mol)と触媒として使用したPd NCsの量(mol)から算出されるターンオーバー数(TON)[モノビニル化合物(mol)+ジビニル化合物(mol)×2/Pd NCs(mol)]は、440であった。
化合物はガスクロマトグラフ質量分析計(GC−MS)を用いて同定を行った。以下にMSスペクトルを示す。
6−ビニルオキシヘキサノール(モノビニル化合物):[M]
+ (relative intensity),144(0.1),129(4),99(3),83(17),55(100),41(40).
1,6−ビス(ビニルオキシ)ヘキサン(ジビニル化合物):[M]
+ (relative intensity),170(0.04),155(0.1),127(7),83(21),55(100),41(34)
【0114】
実施例16
反応時間を48時間としたこと以外は、実施例15と同様にエーテル交換反応を行った。結果を表2に示す。
【0115】
【表2】
【0116】
実施例17
反応容器としてシュレンク管を用い、反応温度を80℃としたこと以外は、実施例1と同様にエーテル交換反応を行った。結果を表3に示す。
【0117】
実施例18
製造例1で得られたパラジウムナノクラスターのDMF溶液(1mM Pd NCs in DMF,1mL,1.0mmol)からDMFをエバポレーターを用いて留去した後、メタノール(MeOH)1mLを加えてパラジウムナノクラスターを再分散させ、パラジウムナノクラスターのメタノール溶液(1mM Pd NCs in MeOH)を得た。
シュレンク管に撹拌子を入れ、上記で溶媒置換を行ったPd NCsをシリンジを用いて加え、セプタムを取り付け、真空引きによりメタノールを飛ばし、酸素置換を数回行った。4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン(33.2mg,0.1mmol)、酢酸ナトリウム(164.0mg,2.0mmol)をシュレンク管にスパチュラを用いて加えた。そのとき、シュレンク管上部のセプタムを外し、すばやく目的の化合物を入れた。その後、再びシュレンク管のセプタム部分から酸素置換を行った。その後、シリンジを用いてセプタム部分よりブチルビニルエーテル(1.0mL,7.7mmol)を加え若干撹拌した。ベンジルアルコール(103.3mg,1.0mmol)をシリンジを用いて加えた。その後、酸素を吹かしながらシュレンク管上部のセプタムと専用の蓋を付け替えた。その後、80℃のオイルバスにシュレンク管を浸け、スターラーで24時間撹拌させた。撹拌後、反応の粗熱をとり、氷浴で冷却し反応を止めた。内部基準物質として任意の直鎖アルカンを加え、THFでクエンチを行った。溶液をフィルターに通し、ガスクロマトグラフィーで分析を行った。その際、内部基準法により収率等を求めた。結果を表3に示す。
【0118】
実施例19
製造例1で得られたパラジウムナノクラスターのDMF溶液(1mM Pd NCs in DMF,1mL,1.0mmol)からDMFをエバポレーターを用いて留去した後、メタノール(MeOH)1mLを加えてパラジウムナノクラスターを再分散させ、パラジウムナノクラスターのメタノール溶液(1mM Pd NCs in MeOH)を得た。
シュレンク管に撹拌子を入れ、上記で溶媒置換を行ったPd NCsをシリンジを用いて加え、セプタムを取り付け、真空引きによりメタノールを飛ばし、アルゴン置換を数回行った。4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン(33.2mg,0.1mmol)、酢酸ナトリウム(164.0mg,2.0mmol)、及び酢酸銅(18.2mg,0.1mmol)をシュレンク管にスパチュラを用いて加えた。そのとき、シュレンク管上部のセプタムを外し、すばやく目的の化合物を入れた。その後、再びシュレンク管のセプタム部分からアルゴン置換を行った。その後、シリンジを用いてセプタム部分よりブチルビニルエーテル(1.0mL,7.7mmol)を加え若干撹拌した。ベンジルアルコール(103.3mg,1.0mmol)をシリンジを用いて加えた。その後、アルゴンを吹かしながらシュレンク管上部のセプタムと専用の蓋を付け替えた。その後、80℃のオイルバスにシュレンク管を浸け、スターラーで24時間撹拌させた。撹拌後、反応の粗熱をとり、氷浴で冷却し反応を止めた。内部基準物質として任意の直鎖アルカンを加え、THFでクエンチを行った。溶液をフィルターに通し、ガスクロマトグラフィーで分析を行った。その際、内部基準法により収率等を求めた。結果を表3に示す。
【0119】
実施例20
製造例1で得られたパラジウムナノクラスターのDMF溶液(1mM Pd NCs in DMF,1mL,1.0mmol)からDMFをエバポレーターを用いて留去した後、メタノール(MeOH)1mLを加えてパラジウムナノクラスターを再分散させ、パラジウムナノクラスターのメタノール溶液(1mM Pd NCs in MeOH)を得た。
シュレンク管に撹拌子を入れ、上記で溶媒置換を行ったPd NCsをシリンジを用いて加え、セプタムを取り付け、真空引きによりメタノールを飛ばし、酸素置換を数回行った。4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン(33.2mg,0.1mmol)、酢酸ナトリウム(164.0mg,2.0mmol)、及び酢酸銅(18.2mg,0.1mmol)をシュレンク管にスパチュラを用いて加えた。そのとき、シュレンク管上部のセプタムを外し、すばやく目的の化合物を入れた。その後、再びシュレンク管のセプタム部分から酸素置換を行った。その後、シリンジを用いてセプタム部分よりブチルビニルエーテル(1.0mL,7.7mmol)を加え若干撹拌した。ベンジルアルコール(103.3mg,1.0mmol)をシリンジを用いて加えた。その後、酸素を吹かしながらシュレンク管上部のセプタムと専用の蓋を付け替えた。その後、80℃のオイルバスにシュレンク管を浸け、スターラーで24時間撹拌させた。撹拌後、反応の粗熱をとり、氷浴で冷却し反応を止めた。内部基準物質として任意の直鎖アルカンを加え、THFでクエンチを行った。溶液をフィルターに通し、ガスクロマトグラフィーで分析を行った。その際、内部基準法により収率等を求めた。結果を表3に示す。
【0120】
比較例3
4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリンを添加しなかったこと以外は、実施例20と同様にエーテル交換反応を行った。結果を表3に示す。
【0121】
【表3】
【0122】
含窒素複素環化合物を用いるエーテル交換反応(実施例17)を金属塩(酢酸銅(II))共存下で行うと(実施例19)、転化率、収率が向上する傾向があった。
また、金属塩(酢酸銅(II))非共存下で含窒素複素環化合物を用いてエーテル交換反応を酸素雰囲気下で行った場合(実施例18)、アルゴン雰囲気下で行った場合(実施例17)よりも収率が低下する傾向がある一方、金属塩(酢酸銅(II))共存下で含窒素複素環化合物を用いてエーテル交換反応を酸素雰囲気下で行った場合(実施例20)は、アルゴン雰囲気下で行った場合(実施例19)よりも収率が向上した。
金属塩(酢酸銅(II))を使用するが、含窒素複素環化合物を用いない場合(比較例3)、エーテル交換反応は進行しなかった。
【0123】
実施例21
反応温度を100℃としたこと以外は、実施例20と同様にエーテル交換反応を行った。結果を実施例20と共に表4に示す。
【0124】
実施例22
反応温度を120℃としたこと以外は、実施例20と同様にエーテル交換反応を行った。結果を実施例20と共に表4に示す。
【0125】
【表4】
【0126】
金属塩(酢酸銅(II))共存下で含窒素複素環化合物を用いてエーテル交換反応を酸素雰囲気下で行った場合、温度の上昇と共に転化率、収率が向上し、120℃で最も高い転化率、収率を示した。
【0127】
実施例23
酢酸銅(II)の使用量を(9.1mg,0.05mmol)としたこと以外は、実施例22と同様にエーテル交換反応を行った。結果を実施例22と共に表5に示す。
【0128】
実施例24
酢酸銅(II)の使用量を(36.3mg,0.2mmol)としたこと以外は、実施例22と同様にエーテル交換反応を行った。結果を実施例22と共に表5に示す。
【0129】
実施例25
酢酸銅(II)の使用量を(9.1mg,0.05mmol)し、アルゴン雰囲気下で行ったこと以外は、実施例22と同様にエーテル交換反応を行った。結果を実施例22と共に表5に示す。
【0130】
【表5】
【0131】
金属塩(酢酸銅(II))共存下で含窒素複素環化合物を用いてエーテル交換反応を酸素雰囲気下で行った場合、金属塩(酢酸銅(II))の使用量が増加するに従い、転化率は上昇するが、収率が低下する傾向があった。
金属塩(酢酸銅(II))共存下で含窒素複素環化合物を用いてエーテル交換反応をアルゴン雰囲気下で行った場合、酸素雰囲気下の場合と比較して、収率が低下する傾向があった。
【0132】
実施例26
酢酸銅(II)の代わりに、ヨウ化銅(I)(9.5mg,0.05mmol)を使用したこと以外は、実施例23と同様にエーテル交換反応を行った。結果を実施例23と共に表6に示す。
【0133】
実施例27
酢酸銅(II)の代わりに、塩化銅(II)(6.7mg,0.05mmol)を使用したこと以外は、実施例23と同様にエーテル交換反応を行った。結果を実施例23と共に表6に示す。
【0134】
実施例28
酢酸銅(II)の代わりに、酢酸銀(I)(8.3mg,0.05mmol)を使用したこと以外は、実施例23と同様にエーテル交換反応を行った。結果を実施例23と共に表6に示す。
【0135】
【表6】
【0136】
実施例29
ベンジルアルコールの代わりに、4−メチルベンジルアルコール(122.2mg,1.0mmol)を使用したこと以外は、実施例23と同様にエーテル交換反応を行った。結果を表7に示す。
化合物はガスクロマトグラフ質量分析計(GC−MS)を用いて同定を行った。以下にMSスペクトルを示す。
4−メチルベンジルビニルエーテル:[M]
+ (relative intensity),148(2.5),105(100),91(3.4),77(15),57(0.03).
【0137】
実施例30
ベンジルアルコールの代わりに、1−フェニルエタノール(122.2mg,1.0mmol)を使用したこと以外は、実施例23と同様にエーテル交換反応を行った。結果を表7に示す。
化合物はガスクロマトグラフ質量分析計(GC−MS)を用いて同定を行った。以下にMSスペクトルを示す。
1−フェニルエチルビニルエーテル:[M]
+ (relative intensity),148(2.2),121(0.12),105(100),91(1.2),77(20).
【0138】
実施例31
ベンジルアルコールの代わりに、n−ヘキサノール(102.2mg,1.0mmol)を使用したこと以外は、実施例23と同様にエーテル交換反応を行った。結果を表7に示す。
化合物はガスクロマトグラフ質量分析計(GC−MS)を用いて同定を行った。以下にMSスペクトルを示す。
ヘキシルビニルエーテル:[M]
+ (relative intensity),144(0.1),129(4),99(3),83(17),55(100),41(40).
【0139】
【表7】
【0140】
実施例32
[ビニルエーテルの製造(エーテル交換反応)]
製造例1で得られたパラジウムナノクラスターのDMF溶液(1mM Pd NCs in DMF,1mL,1.0mmol)からDMFをエバポレーターを用いて留去した後、メタノール(MeOH)1mLを加えてパラジウムナノクラスターを再分散させ、パラジウムナノクラスターのメタノール溶液(1mM Pd NCs in MeOH)を得た。
シュレンク管に撹拌子を入れ、上記で溶媒置換を行ったPd NCsをシリンジを用いて加え、セプタムを取り付け、真空引きによりメタノールを飛ばし、酸素置換を数回行った。1,6−ヘキサンジオール(118.1mg,1mmol)、4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン(33.2mg,0.1mmol)、酢酸ナトリウム(164.0mg,2.0mmol)、及び酢酸銅(9.1mg,0.05mmol)をシュレンク管にスパチュラを用いて加えた。そのとき、シュレンク管上部のセプタムを外し、すばやく目的の化合物を入れた。その後、再びシュレンク管のセプタム部分から酸素置換を行った。その後、シリンジを用いてセプタム部分よりブチルビニルエーテル(1.0mL,7.7mmol)を加え若干撹拌した。その後、酸素を吹かしながらシュレンク管上部のセプタムと専用の蓋を付け替えた。その後、120℃のオイルバスにシュレンク管を浸け、スターラーで24時間撹拌させた。撹拌後、反応の粗熱をとり、氷浴で冷却し反応を止めた。内部基準物質として任意の直鎖アルカンを加え、THFでクエンチを行った。溶液をフィルターに通し、ガスクロマトグラフィーで分析を行った。その際、内部基準法により収率等を求めた。
1,6−ヘキサンジオールの転化率は98%、6−ビニルオキシヘキサノール(モノビニル化合物)の収率は33%、1,6−ビス(ビニルオキシ)ヘキサン(ジビニル化合物)の収率は19%、合計の収率は52%、生成したモノビニル化合物とジビニル化合物の合計のビニル化量(mol)と触媒として使用したPd NCsの量(mol)から算出されるターンオーバー数(TON)[モノビニル化合物(mol)+ジビニル化合物(mol)×2/Pd NCs(mol)]は、710であった。