特開2016-169513(P2016-169513A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特開2016-169513土木工事用袋体及び土木工事用構造体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2016-169513(P2016-169513A)
(43)【公開日】2016年9月23日
(54)【発明の名称】土木工事用袋体及び土木工事用構造体
(51)【国際特許分類】
   E02B 3/04 20060101AFI20160826BHJP
   E02D 17/20 20060101ALI20160826BHJP
【FI】
   E02B3/04 301
   E02D17/20 102A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-49418(P2015-49418)
(22)【出願日】2015年3月12日
(71)【出願人】
【識別番号】000201490
【氏名又は名称】前田工繊株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100082418
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 朔生
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 修二
(72)【発明者】
【氏名】天野 隆幸
(72)【発明者】
【氏名】高垣 勝彦
【テーマコード(参考)】
2D044
2D118
【Fターム(参考)】
2D044DA01
2D118AA28
2D118BA01
2D118BA07
2D118BA14
2D118BA18
2D118GA11
2D118GA46
(57)【要約】
【課題】中詰材の全体を抱持しつつ、直方体の形状を維持できる土木工事用袋体および土木工事用構造体を提供すること。
【解決手段】中央穴21を有方形袋20と、袋体20の一部に基端を固着した複数の抱持バンド30とを具備し、中央穴21を通じて複数の抱持バンド30を方形袋に対して縦向きに巻装して中詰材40の全周に亘って抱持し得るように構成した。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に中詰材を充填して封入する角形リング状の土木工事用袋体であって、
中心部に上下を貫通した中央穴を有し、角形リング状の収容空間を有し、該収容空間に中詰材を封入する方形袋と、
前記方形袋を介して中詰材の全周に亘って抱持し得るように、基端を前記袋体の一部に固着し、前記中央穴を通じて袋体を縦向きに巻装可能な長さを有する複数の抱持バンドとを具備することを特徴とする、
土木工事用袋体。
【請求項2】
前記方形袋が中央穴を有する矩形の底面と、底面の内縁を囲繞する内側面と、底面の外縁を囲繞する外側面と、これらの三面で画成した角型リング状の収容空間の上口を閉じる上蓋とを具備することを特徴とする、請求項1に記載の土木工事用袋体。
【請求項3】
前記抱持バンドの基端を方形袋の内側面に固定し、該抱持バンドの先端側を方形袋の上方へ延出したことを特徴とする、請求項2に記載の土木工事用袋体。
【請求項4】
前記抱持バンドがベルト状物であり、その先端に吊上用のループを形成したことを特徴とする、請求項1乃至3の何れか一項に記載の土木工事用袋体。
【請求項5】
前記抱持バンドの外面に抱持バンド用の位置決め材を付設したことを特徴とする、請求項1乃至3の何れか一項に記載の土木工事用袋体。
【請求項6】
中詰材を充填した土木工事用構造体であって、
前記請求項1乃至5の何れか一項に記載の土木工事用袋体と、
方形袋の角型リング状の収容空間に封入した中詰材とを具備し、
収容空間に封入した中詰材の内外全周を被覆して拘束する方形袋と、中央穴を通して方形袋に巻装して締め付ける複数の抱持バンドとにより、中詰材を全周に亘って抱持することで角形硬質塊を形成したことを特徴とする、
土木工事用構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は海洋又は陸上における各種土木工事に使用可能な土木工事用袋体及び土木工事用構造体に関し、特に中詰材の変位を拘束しつつ直方体の形状を維持できる、土木工事用袋体及び土木工事用構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
巾着状の袋体に中詰材を充填した土木工事用構造体は広く知られている(特許文献1,2)。
又、特許文献3には袋体の底部から口部を通って中繋材を引き出し、底網と上網との間を中繋材で連結した土木工事用構造体が開示されている。
又、特許文献4には可撓性を有する直方体バックに中詰材を封入した直方体を呈する土木工事用構造体が開示されている。
図8を参照して説明すると、直方体バック80は底面81の中心と底面81の四隅に一端を接続した合計5本の吊りベルト82を有していて、これら全ての吊りベルト82を直方体バック80の中心部でひとまとめにして吊り上げ可能にバック外へ引き出している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平1−141815号公報
【特許文献2】特開平11−131447号公報
【特許文献3】特開2003−129444号公報
【特許文献4】特許第3949156号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した土木工事用構造体には次のような問題点がある。
<1>特許文献1,2に記載された従来の土木工事用構造体は、巾着状の袋体の口を紐等で縛って中詰材を移動可能に封入しただけの構造である。
そのため、外力によって中詰材が繰り返し動くことで袋体が早期に摩耗して破損する。
<2>特許文献3に開示の土木工事用構造体は、不陸に対する追従性を確保するために、ある程度の動きを許容する状態で中詰材を封入していた。
そのため、大きな波力等が作用すると袋体の内部で中詰材が動いてしまい、依然として袋体が破損する問題を抱えている。
<3>特許文献3の土木工事用構造体は、中繋材の締付力が袋体全体に均等に伝わらない。
そのため、袋体による中詰材の拘束力は、中繋材から離れるほど弱くなって、中詰材の拘束効果にバラツキを生じる。
<4>特許文献4の土木工事用構造体は、直方体バック80の底面81の剛性が低いために中詰材83の拘束を十分に得られず、吊り上げると中詰材83の自重で底面81の中心部を中心に周縁部が垂れ下がってしまい、二点鎖線で示した吊り上げ前の直方体の形状を維持することができない。
殊に直方体バック80が横長になるほど土木工事用構造体が変形し易い。
【0005】
本発明は以上の点に鑑みて成されたもので、その目的とするところは、次の少なくともひとつの土木工事用袋体及び土木工事用構造体を提供することにある。
<1>中詰材の全体を抱持しつつ直方体の形状を維持できること。
<2>土木工事用袋体の破損防止効果が向上すること。
<3>土木工事用構造体の製作が容易であること。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、内部に中詰材を充填して封入する角形リング状の土木工事用袋体であって、中心部に上下を貫通した中央穴を有し、角形リング状の収容空間を有し、該収容空間に中詰材を封入する方形袋と、前記方形袋を介して中詰材の全周に亘って抱持し得るように、基端を前記袋体の一部に固着し、前記中央穴を通じて袋体を縦向きに巻装可能な長さを有する複数の抱持バンドとを具備することを特徴とする。
本発明の他の形態において、前記方形袋が中央穴を有する矩形の底面と、底面の内縁を囲繞する内側面と、底面の外縁を囲繞する外側面と、これらの三面で画成した角型リング状の収容空間の上口を閉じる上蓋とを具備する。
本発明の他の形態において、前記抱持バンドの基端を方形袋の内側面に固定し、該抱持バンドの先端側を方形袋の上方へ延出している。
本発明の他の形態において、前記抱持バンドがベルト状物であり、その先端に吊上用のループを形成してある。
本発明の他の形態において、前記抱持バンドの外面に抱持バンド用の位置決め材を付設してもよい。
本発明は、中詰材を充填した土木工事用構造体であって、前記した土木工事用袋体と、方形袋の角型リング状の収容空間に封入した中詰材とを具備し、収容空間に封入した中詰材の内外全周を被覆して拘束する方形袋と、中央穴を通して方形袋に巻装して締め付ける複数の抱持バンドとにより、中詰材を全周に亘って抱持することで角形硬質塊を形成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明は次の効果の少なくともひとつを備える。
<1>中詰材の内外全周を被覆して拘束する方形袋と、中央穴を通して方形袋に巻装して締め付ける複数の抱持バンドとを具備する土木工事用袋体を使用することで、中詰材の全体を抱持しつつ、直方体を呈する土木工事用構造体を製作することができる。
<2>方形袋と複数の抱持バンドが協働して中詰材の全体を拘束することで、中詰材を変形不能な角形硬質塊に形成することができる。
したがって、土木工事用構造体の全長に亘って、曲げ強度、圧縮強度、及びせん断強度が非常に高くなる。
<3>方形袋に封入した中詰材の移動を拘束できるので、土木工事用袋体の破損防止効果が向上する。
<4>方形袋の一部に固定した抱持バンドを方形袋に巻き掛けして吊り上げるだけの簡単な作業で以て変形不能な土木工事用構造体を製作することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】一部を省略した土木工事用袋体の斜視図
図2】一部を破断した土木工事用袋体の底面中心部を下方から見上げた斜視図
図3】上蓋の形態が異なる土木工事用袋体の説明図
図4】一部を破断した土木工事用構造体の斜視図
図5】抱持バンドの締付け前における土木工事用構造体の斜視図
図6】吊り上げ時における土木工事用構造体の断面図
図7】他の実施例の説明図で、抱持バンドの一部を省略した土木工事用構造体の平面図
図8】本発明が前提とする土木工事用袋体の断面モデル図
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に図面を参照しながら本発明の実施例について説明する。
【0010】
<1>土木工事用袋体(図1
土木工事用袋体10は、中央穴21を有する方形袋20と、方形袋20の中央穴21に面する内側面22に一端を固着した複数の抱持バンド40とを具備する。
【0011】
<2>土木工事用構造体(図3,4)
土木工事用構造体Aは土木工事用袋体10と、方形袋20の収容空間26内に収容する中詰材40とを具備する。
【0012】
<3>方形袋(図1,2)
方形袋20は、中央に角形の中央穴21を有する矩形の底面23と、底面23の内縁を囲繞する内側面22と、底面23の外縁を囲繞する外側面24と、外側面24の各側面上縁から延びる4つの上蓋25とを具備し、その内部に角型リング状の収容空間26を形成している。
内側面22の高さは外側面24の高さと等しい。
外側面24の各外側面には抱持バンド40を挿通して横移動を規制する単数又は複数の位置決め材28を有している。
本例では内側面24で囲繞された中央穴21内に柱状の硬質キーパ27を収容した形態を示すが、硬質キーパ27は方形袋20内に中詰材40を投入するときに中央穴21を確保するための型材に過ぎないから、必須ではなく省略してもよい。
【0013】
<3.1>方形袋の平面形状
本例では方形袋20の平面形状が正方形である場合について示すが、長方形であってもよい。
【0014】
<3.2>方形袋の寸法
本例では方形袋20の高さが方形袋20の一辺の長さより小さい寸法関係にある場合を示すが、方形袋20の高さは方形袋20の一辺の長さと同じかそれ以上であってもよい。方形袋20の縦横高さの各寸法は土木工事用構造体Aの使途や中詰材40の種類に応じて適宜選択する。
内側面24の各側面の一辺の長さは、土木工事用構造体Aの使途に応じて適宜選択する。
【0015】
<3.3>方形袋の素材
方形袋20は可撓性及び耐久性に優れた合成繊維製の網体、シート状物、又はこれらの組み合せでもよい。透水性又は非透水性(遮水性)の素材、或いは伸縮性又は非伸縮性の素材でもよい。
方形袋20の素材は土木工事用構造体Aの使途や中詰材40の種類に応じて適宜選択する。
【0016】
<3.4>上蓋
上蓋25は収容空間26の上口を閉鎖できればよいから、図3の(a)に示すように中央に窓穴25aを有する一枚の上蓋25や、図3の(b)に示すように対向辺の中央に切欠25bを形成した二枚の枚の上蓋25であってもよい。
【0017】
<4>抱持バンド
抱持バンド40は中央穴21を介して土木工事用構造体Aの全周を縦方向に巻装して抱持可能な部材であって、方形袋20の上蓋25のロック機能、方形袋20を介した中詰材40の抱持機能、及び土木工事用構造体Aの吊り機能を有する。
各抱持バンド40の基端は方形袋20の内側面22の各側面に縫合、融着、又は接着等により一体に固着されている。
各抱持バンド40の先端部には吊上用のループ31が形成してある。
【0018】
<4.1>抱持バンドの素材
抱持バンド40は可撓性を有する繊維、樹脂等からなり、その形態は図示したベルト状物に限定されずロープ状物又は紐状物であってもよい。
【0019】
<4.2>抱持バンドの全長
抱持バンド40は中央穴21を介して土木工事用構造体Aの全周を一周、又は複数周を巻装可能な全長を有する。
【0020】
<4.3>抱持バンドの基端の固定位置
本例では、各抱持バンド40の基端を方形袋20の内側面22に固着した形態について説明するが、各抱持バンド40の基端の固定位置はこの形態に限定されない。
他の形態としては、各抱持バンド40の基端を方形袋20の底面23と内側面22の二面に跨って固定するか、又は方形袋20の外側面24、底面23、及び内側面22の三面に跨って固定することも可能である。
要は、各抱持バンド40の基端が上蓋25を除いた方形袋20の一部に固定してあり、抱持バンド40の先端(遊端)側が中央穴21を通じて上向きに延出できる構成であればよい。
【0021】
<5>中詰材
中詰材40は圧縮変形しない硬質粒体であり、例えば、砕石や玉石等の骨材、軽量骨材、コンクリートガラ、焼却灰の造粒物、土砂等を使用できる。
中詰材40の素材、比重、サイズ等は、土木工事用構造体Aの使途に応じて適宜選択する。
【0022】
[土木工事用構造体の製作方法]
つぎに土木工事用構造体Aの製作方法の一例について説明する。
【0023】
<1>中詰材の充填(図5
方形袋20の上口を開放した状態で収容空間26の全域に満杯になるまで中詰材40を充填する。
中詰材40の充填作業の際に、作業の邪魔にならないように、抱持バンド30や上蓋25は除けておく。
又、図示しない製作枠を使用して方形袋20の立体形状を保持すると、中詰材40の充填作業を円滑に行える。
【0024】
<2>上蓋の閉鎖(図5
つぎに方形袋20の上蓋25を被せて収容空間26を閉じる。
最終的に抱持バンド30が閉じた上蓋25をロックするため、上蓋25を固定するための専用ロック手段は不要である。
【0025】
<3>抱持バンドの巻装(図3,4)
つぎに方形袋20の中央穴21から上方へ延出した各抱持バンド30を方形袋20の外周面に縦向きに一周、又は複数周を巻き掛け、各抱持バンド30の先端を中央穴21から上方へ向けて引き出す。
この際、方形袋20の外側面に設けた位置決め材28に抱持バンド40を挿通させて抱持バンド40の横移動を規制する。
又、方形袋20の底面23を支持する製作枠の支持面に予めスペーサを設けておくか、又は製作枠の支持面に予め帯状の切欠を設けておくことで、底面23と支持面との間に形成した帯状の挿通空間を利用して抱持バンド40を容易に巻き付けることが可能である。
【0026】
<4>抱持バンドの締付け(図6
中央穴21から上方に延出する各抱持バンド30のループ31をクレーン車のフックに係留して吊り上げて土木工事用構造体Aの製作を完了する。
各抱持バンド30のループ31を吊り上げると、中詰材40の自重により各抱持バンド30が滑動しながら方形袋20を介して内部の中詰材40を面的に締め付けていく。
そのため、方形袋20及び複数の抱持バンド30を介して締め付けられた中詰材40は、変形不能な角形硬質塊40aに変質する。
自重を利用して中詰材40の締め付けできるので、専用の締付装置は不要である。
【0027】
このようにして製作した土木工事用構造体Aは、そのまま設置現場へ運搬するか、ストックヤードに仮置きし、海洋又は陸上における所望の土木工事に使用する。
【0028】
<5>中詰材の拘束効果が高い理由
本発明は、従来の土木工事用構造体のような中詰材の外周のみを袋体で被覆する構造ではなく、又、袋体の底面をベルト部材で吊り上げて支持する構造でもない。
本発明では、角型リング状に封入した中詰材40の内外全周を被覆して拘束する方形袋20と、中央穴21を通して方形袋20に縦向きに巻き付けて締め付ける複数の抱持バンド30との組み合せによって、中詰材40の拘束効果を高めたものである。
すなわち、抱持バンド30は方形袋20の内側面22、上蓋25、外側面24、及び底面23の四面に跨って包囲し、これらの四面を均等な力で締め付けることが可能である。抱持バンド30による締付力は方形袋20を介して中詰材40の全体へ伝えられる。
そのため、中詰材40の表層だけでなくその中心部においても中詰材40の粒子が互いに噛み合って(インターロッキング効果)角形硬質塊40aを形成するため、方形の全体形状を保持できるだけでなく、角形硬質塊40aの全長に亘って、曲げ強度、圧縮強度、及びせん断強度が非常に高くなる。
【0029】
<6>抱持バンドを土木工事用構造体の中心部から引き出した理由
抱持袋20の中心穴21を通過させた抱持バンド30の巻付け方向を逆にして、複数の抱持バンド30の先端を抱持袋20の外方(外側面24)側から引き出して吊り上げることも可能である。
この状態で吊り上げると、大きな曲げモーメントがはたらき土木工事用構造体Aが皿状に反り返ってしまう。
土木工事用構造体Aの反り返りは、平らな設置場所に土木工事用構造体Aを据え付けたときに抱持力が緩む原因となる。
これに対し、抱持袋20の中心穴21から複数の抱持バンド30を引き出して吊り上げると、曲げモーメントが小さくなって土木工事用構造体Aが皿状に反り返えることを効果的に抑制できる。
【0030】
[土木工事用構造体の機能]
<1>方形袋の破損防止(図3
既述した土木工事用構造体Aは、従来と比べて方形袋20による中詰材40の抱持面積を大きく確保できるから、中詰材40の自由な動きを確実、かつ効果的に拘束することができる。
したがって、中詰材40の自由な動きに起因した方形袋20の摩耗を防止して、方形袋20の耐久性が格段に向上する。
【0031】
例えば、単なる袋体に中詰材を満杯に詰め込み、袋体の上口を閉じることで中詰材の外周面を拘束可能であるが、袋詰めした中詰材と袋体との接触面積を大きく確保できない。そのために、中詰材の表層と中心部で拘束力にバラツキを生じる。
【0032】
これに対して本発明では、中詰材40と袋体の接触面積に着目し、中央穴21を有する方形袋20と、複数の抱持バンド30を併用することで、中詰材40の抱持面積(拘束面積)を大きく確保するようにした。
本発明の土木工事用構造体Aと、巾着状の袋体に中詰材を詰め込んだ従来の土木工事用構造体とを比較した場合、両構造体の中詰材40が同量であれば、本発明の土木工事用構造体Aは従来と比べて中詰材40との抱持面積が格段に大きくなる。
したがって、土木工事用構造体Aでは、中詰材40の表層と中心部で抱持力にバラツキを生じないだけでなく、土木工事用構造体Aを海洋に設置した場合でも中詰材40の自由な変位を確実に拘束できるから、方形袋20の摩耗による破損を長期間に亘って防止することができる。
【0033】
<2>土木工事用構造体の変形防止
既述したように土木工事用袋体10による中詰材40の抱持(拘束)作用は、方形袋20に封入した中詰材40の表層だけでなく、中心部にも伝わって、中詰材40を面的に抱持(拘束)して角形硬質塊40aを形成する。
したがって、土木工事用構造体Aはその断面形状が変形し難くなるだけでなく、土木工事用構造体Aの全体形状も変形し難くなるため、例えば大きな波浪が作用する現場へ設置した場合でも、土木工事用構造体Aが設置場所から移動し難くなる。
【0034】
[他の実施例]
以降に他の実施例について説明するが、その説明に際し、前記した実施例と同一の部位は同一の符号を付してその詳しい説明を省略する。
【0035】
<1>方形袋の一辺に複数の抱持バンドを巻装した実施例(図7
先の実施例では、角型リング状を呈する方形袋20の各辺にそれぞれ一つの抱持バンド40を巻装した形態について説明したが、方形袋20の各辺にそれぞれ複数の抱持バンド40を横列させて巻装することも可能である。
図7では方形袋20の各辺に間隔を隔てて2つの抱持バンド40を巻装した形態を示すが、3つ以上であってもよい。
又、方形袋20の平面形状が長方形を呈する場合は、各辺における抱持バンド40の巻装数を変えてもよい。
尚、各抱持バンド40の基端を内側面22に固定することは先の実施例と同様である。
【0036】
本例にあっては、中詰材40の抱持範囲が横方向に拡張するので、土木工事用構造体Aが大型化した場合に好適である。
複数本のを固着してもよい。
【0037】
<2>抱持バンドの緩みを防止した実施例
方形袋20及び複数の抱持バンド30を介して締め付けられた角形硬質塊40aは、抱持バンド30が多少緩んでもその形状保持性能は急激に落ちることはないが、土木工事用構造体Aの形状保持効果を持続するため、中詰材40の締め付けを終えた抱持バンド30を固定して抱持バンド30の締付力を保持するようにしてもよい。
抱持バンド30の固定手段としては、例えば、中詰材40に図外の固定ピンを打ち込んで抱持バンド30を固定したり、抱持バンド30の重合部を公知のベルト固定具で摺動不能に把持したりして抱持バンド30の緩みを防止することができる。
【0038】
本例にあっては、製作済の土木工事用構造体Aを運搬移動する場合や、波力や振動等の外力が繰り返し作用する現場へ設置した場合に、抱持バンド30の緩みを確実に防止することができる。
【符号の説明】
【0039】
A・・・・・・土木工事用構造体
10・・・・・土木工事用袋体
20・・・・・方形袋
21・・・・・方形袋の中央穴
22・・・・・方形袋の内側面
23・・・・・方形袋の底面
24・・・・・方形袋の外側面
25・・・・・方形袋の上蓋
26・・・・・方形袋の収容空間
28・・・・・抱持バンドの位置決め材
30・・・・・抱持バンド
40・・・・・中詰材
40a・・・・角形硬質塊
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8