【解決手段】ホイールローダ100などの作業機械のエンジン6を冷却するための作業機械の冷却構造1が、作業機械の車体10の外面の一部分を形成する、多数の通気用開口部を有するカバー(例えば、リアカバー2)と、車体10にカバー2と対向して配置されたラジエータ7と、カバー2とラジエータ7との間においてカバー2から通気用開口部の寸法に応じた間隔をおいて近接して配置され、車体10に対して回動不能に設けられた冷却ファン81とを備える。
前記ロック装置が、前記カバーが開放された状態で前記錠の鍵穴から前記鍵が抜けないように構成された抜き差しロック装置を有する、請求項2又は3に記載の作業機械の冷却構造。
前記カバーは、回転数計測器によって前記カバーを閉じた状態で前記冷却ファンの回転数を計測するための、少なくとも1つのセンシング用開口部を有する、請求項1〜5のいずれか一項に記載の作業機械の冷却構造。
前記カバーが前記車体に固定された固定部材と前記車体に対し可動な可動部材とから成り、前記少なくとも1つのセンシング用開口部が前記固定部材に設けられている、請求項6に記載の作業機械の冷却構造。
前記固定部材が、一対のサイド部と、前記一対のサイド部の間であって当該一対のサイド部よりも前記冷却ファンの近くに位置する中央部とを有し、前記中央部に前記少なくとも1つのセンシング用開口部が設けられている、請求項7に記載の作業機械の冷却構造。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のような従来の作業機械の冷却構造では、冷却ファンの周囲にはファンガードとグリルとの各々が設けられており、それらが配置される空間を確保するために冷却構造のコンパクト化が妨げられたり、冷却構造の部品点数が多くなったりしていた。また、ファンガードとグリルとが近接していると、風切音の発生や通風抵抗の悪化を生じることがあった。
【0006】
本発明は以上の事情に鑑みてされたものであり、その目的は、従来の作業機械の冷却構造の課題の少なくとも一つ以上を軽減することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係る作業機械の冷却構造は、作業機械のエンジン室を冷却するための作業機械の冷却構造であって、
前記作業機械の車体の外面の一部分を形成する、多数の通気用開口部を有するカバーと、
前記車体に前記カバーと対向して配置されたラジエータと、
前記カバーと前記ラジエータとの間において前記カバーから前記通気用開口部の寸法に応じた間隔をおいて近接して配置され、前記車体に対して回動不能に設けられた冷却ファンとを備えることを特徴としている。
【0008】
上記構成の作業機械の冷却構造では、カバーが、ファンガード及びグリルとして機能する。よって、作業機械にファンガードとグリルとが夫々独立して設けられる場合と比較して、部品点数を削減したり冷却構造の構造を簡易化したりすることが可能であり、従来のファンガードのための空間を省略することができる。また、ファンガードを備えないことから、冷却器のメンテナンスを冷却ファン越しに容易に行うことができる。更に、従来のファンガードとグリルが近接していることに起因する風切音や通風抵抗などが生じない。
【0009】
上記作業機械の冷却構造において、前記カバーが開閉可能となるように、前記カバーの一部又は全体が前記作業機械の車体に回動可能に連結されており、前記カバーを前記車体に固定する錠と、前記錠を施錠及び解錠操作する鍵とを有するロック装置を更に備えることが望ましい。上記構成によれば、開閉可能なカバーを閉じられた状態でロックさせることができる。
【0010】
上記作業機械の冷却構造において、前記鍵が前記作業機械のエンジンを始動させるためのイグニッションキーであることが更に望ましい。上記構成によれば、作業機械のエンジンが掛かって冷却ファンが稼働している間にカバーを開くことができなくなり、逆に、カバーが開いている間は作業機械のエンジンを掛けることができなくなるので、安全性を高めることができる。
【0011】
上記作業機械の冷却構造において、前記ロック装置が、前記カバーが開放された状態で前記錠の鍵穴から前記鍵が抜けないように構成された抜き差しロック装置を有することが望ましい。上記構成によれば、カバーが開いている間は鍵が鍵穴から抜けないので、カバーが開いたままで放置されることを防止できる。また、特に、鍵がイグニッションキーの場合は、カバーが開いたまま作業機のエンジンが始動することがないので、安全性を高めることができる。
【0012】
上記作業機械の冷却構造において、前記カバーが整風部を有することが望ましい。上記構成によれば、カバーによって冷却構造からの排気を整風することができる。
【0013】
上記作業機械の冷却構造において、前記カバーが、回転数計測器によって前記カバーを閉じた状態で前記冷却ファンの回転数を計測するための、少なくとも1つのセンシング用開口部を有していてもよい。上記構成によれば、カバーを閉じたまま、センシング用開口部を通じて、例えば、検出光を被検出部へ照射することにより、冷却ファンの回転数の測定を行うことができる。
【0014】
上記作業機械の冷却構造において、前記カバーが前記車体に固定された固定部材と前記車体に対し可動な可動部材とから成り、前記少なくとも1つのセンシング用開口部が前記固定部材に設けられていることが望ましい。
【0015】
上記構成によれば、センシング用開口部がカバーのうち固定部材側に設けられているので、センシング用開口部と冷却ファンの被検出部との位置関係の変動が抑えられ、安定した計測を行うことができる。
【0016】
上記作業機械の冷却構造において、前記固定部材が、一対のサイド部と、前記一対のサイド部の間であって当該一対のサイド部よりも前記冷却ファンの近くに位置する中央部とを有し、前記中央部に前記少なくとも1つのセンシング用開口部が設けられていることが望ましい。
【0017】
上記構成によれば、センシング用開口部をカバーの他の部分よりも冷却ファンに近づけることができる。これにより、被検出部に対しより近い位置から検出光を照射できるようになり、計測精度を向上させることができる。
【0018】
また、本発明の一態様に係る作業機械は、車体と、前記車体に搭載されたエンジンと、前述の作業機械の冷却構造とを備えており、前記カバーが前記車体の後部を覆うリアカバーであるものである。
【0019】
上記構成の作業機械では、カバーが、ファンガード及びグリルとして機能する。よって、作業機械にファンガードとグリルとが夫々独立して設けられる場合と比較して、部品点数を削減したり冷却構造の構造を簡易化したりすることが可能であり、また、従来のファンガードのための空間を省略することができる。特に、カバーがリアカバーであることによって、少なくとも従来のファンガードの分だけ、作業機械の全長を短くすることが可能となる。また、省略されたファンガードのための空間を利用して、作業機械の全長の増大を抑えつつ、エンジンとラジエータの間に排ガス浄化装置などの機器を配設することが可能となる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、作業機械の車体の外面の一部分を形成しているカバーが、ファンガード及びグリルとして機能する。よって、作業機械にファンガードとグリルと夫々独立して設ける場合と比較して、作業機械の冷却構造の部品点数を削減したり構造を簡易化したり、ファンガードのための空間を省いたりすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
次に、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。以下では、作業機械の一例としてホイールローダに本発明を適用させた態様を説明する。但し、本発明が適用される作業機械はホイールローダに限定されず、本発明をホイールローダの他、ロードローラやパワーショベルなどの作業機械に広く適用させることができる。
【0023】
図1は本発明の一実施形態に係るホイールローダ100の概略構成を示す側面図である。
図1に示すように、ホイールローダ100は、車輪18を有し、エンジン6が搭載された走行可能な車体10を備えている。車体10は、回動自在に連結された前部車体101及び後部車体102により構成されている。以下では、説明の便宜を図って、車体10の走行方向を前後方向とし、車体10から見て前方を「前」といい、前と反対側を「後」といい、前後方向と直交する水平方向を左右方向という。
【0024】
ホイールローダ100は、前部車体101に設けられたアーム11及びバケット12と、後部車体102に設けられた運転室13、エンジン室14及び冷却器室15とを更に備えている。エンジン室14及び冷却器室15の周囲は、ホイールローダ100の車体10の外面の一部分を形成する外装体16で覆われている。外装体16はエンジン室14を覆う部分と冷却器室15を覆う部分とに分かれていてもよい。外装体16には、多数の通気用開口部が設けられている。また、エンジン室14と冷却器室15との間は、不図示の隔壁によって前後に仕切られている。これらの外装体16及び隔壁によって、エンジン室14と冷却器室15とが形作られている。
【0025】
エンジン室14にはエンジン6が配設され、冷却器室15にはラジエータ7などの冷却器と冷却ファンユニット8とが配設されている。ラジエータ7は、後部車体102に固定された不図示のラジエータフレームに取り付けられている。冷却器室15には、エンジン6の冷却水を冷却するラジエータ7の他に、不図示のトルクコンバータの作動油を冷却するオイルクーラ、エンジン6の過給器で加圧された空気を冷却するインタークーラ、バケットシリンダ等の油圧アクチュエータ駆動用の作動油を冷却する作動油クーラなどの各種冷却器(いずれも不図示)の少なくとも1つ以上が配設されていてよい。
【0026】
ラジエータ7に対し、空気流の下流側に冷却ファンユニット8が配置されている。冷却ファンユニット8は、冷却ファン81と、冷却ファン81を回転駆動するファンモータ82と、冷却ファン81の周囲に設けられたシュラウド83とから構成されている。本実施形態においては、リアカバー2の前方にラジエータ7が配設され、リアカバー2とラジエータ7との前後方向間に冷却ファンユニット8が配置されている。その結果、ラジエータ7、冷却ファン81及びリアカバー2の順に前から後へ且つ空気の流れに沿って直列に並んでいる。本実施形態では、これらのラジエータ7、冷却ファン81及びリアカバー2により作業機械の冷却構造1が構成されている。
【0027】
冷却ファンユニット8は、後部車体102に固定された不図示のファンフレームに取り付けられている。但し、ファンフレームとラジエータフレームとが共用されてもよい。このように、冷却ファン81は車体10に対し回動不能に設けられている。車体10に回動可能に設けられた従来の冷却ファンでは、冷却器のメンテナンス時に冷却ファンを車体10に対して回動させて作業を行うが、その際に冷却ファンのブレードから作業者を保護するために、冷却ファンの吸入側と送風側の両面を覆うファンガードが設けられている。これに対し、本実施形態では冷却ファン81の周りには従来のようなファンガードを設けていないため、冷却ファン81越しに冷却器のメンテナンスを行うことができる。ファンモータ82により冷却ファン81が回転駆動されると、外装体16において冷却器室15の側方や上方に設けられた通気用開口部から冷却器室15内へ空気が吸い込まれ、冷却器室15内へ吸い込まれた空気は、ラジエータ7等の熱交換器で冷媒として利用されてから、外装体16において冷却器室15の後部の周囲に設けられた通気用開口部より排出される。
【0028】
上記構成のホイールローダ100において、外装体16のうち冷却器室15の後部を覆う部分はリアカバー2(カバーの一例)で構成されている。以下、リアカバー2について詳細に説明する。
図2はリアカバー2を後方から見た図であり、
図3はリアカバー2を前方から見た図である。
図2及び
図3に示すように、後部車体102の外面(外表面)の一部分を形成しているリアカバー2は、左右方向中央上部に設けられたトップカバー20と、左右方向中央後部に設けられたセンターカバー21と、トップカバー20及びセンターカバー21の左右方向両側に設けられたサイドカバー22とで構成されている。
【0029】
サイドカバー22は、一体的に形成された側面221、上面222、及び後面223を有しており、後部車体102に固定されている。サイドカバー22の側面221には、多数の通気用開口部が形成された開口領域22aが設けられている。本実施形態においては、開口領域22aがパンチングメタルによって形成されており、パンチングメタルの開口が多数の通気用開口部として機能している。
【0030】
トップカバー20は、左右のサイドカバー22の上部に架設されており、左右のサイドカバー22を繋いでいる。そして、左右のサイドカバー22とトップカバー20とにより形成された後面視門型の空間に、センターカバー21が配設されている。
【0031】
センターカバー21は、回転している冷却ファン81に作業者が接触しないように冷却ファンユニット8及び作業者を保護するファンガードとしての機能と、石や砂などが冷却器室15内へ侵入することを防止したり冷却器室15からの排気を整流したりホイールローダ100の外観意匠を高めたりするリアグリル(ラジエータグリル)としての機能とを、併せ備えている。センターカバー21は、ホイールローダ100の後面の外観において比較的大きな領域を占めており、ホイールローダ100の意匠上でも重要な役割を果たしている。このように、リアカバー2(そのうち特にセンターカバー21)がファンガードとしての機能とリアグリルとしての機能を併せ備える、換言すれば、ファンガードとリアグリルとがリアカバー2として一体化されていることによって、冷却構造1の部品点数を削減したり、冷却器室15の内部構成を簡略化することが可能である。また、従来のファンガードのためのスペースを省くことができる。更に、従来の近接して配置されたファンガードとグリルに起因する風切音や通風抵抗の悪化などが生じない。
【0032】
センターカバー21は、上カバー25と下カバー26とから構成されている。上カバー25は、後部車体102(より精確には、後部車体102に固定されたサイドカバー22)にヒンジ33を介して固定されており、後部車体102に対し可動な可動部材である。一方、下カバー26は後部車体102に固定された固定部材である。上カバー25と下カバー26の上下方向の合わせ目は、上カバー25の下端部が下カバー26の上端部に覆いかぶさるように形成されている。
【0033】
下カバー26は、通気用開口がほぼ全面的に形成された一体的な多孔板状部材(又は網状部材)と、その周囲を囲むフレームとで概ね構成されている。本実施形態において、下カバー26の多孔板状部材は六角形の開口部が千鳥状に配置されたパンチングメタル(ハニカムメッシュとも呼ばれる)から成る。下カバー26は、左右一対のサイド部26R,26Lと、一対のサイド部26R,26Lの間であって当該一対のサイド部26R,26Lよりも冷却ファン81の近くに位置する中央部26Cとを有している。つまり、中央部26Cに対し、サイド部26R,26Lは後方へ突出している。
【0034】
下カバー26のうち中央部26Cの上端縁はサイド部26R,26Lの上端縁と比較して高く形成されており、この中央部26Cの上部に少なくとも1つのセンシング用開口部31が形成されている。センシング用開口部31は、左右方向に延びる長穴であって、本実施形態では上下2本設けられている。センシング用開口部31は、後面視において、冷却ファン81のハブ又はブレードの基部と重複し得る位置に設けられている。
【0035】
センシング用開口部31は、リアカバー2の外から冷却ファン81の回転数を計測する際に用いられる。冷却ファン81の回転数を計測する際には、冷却ファン81のハブ又はブレードの基部に、例えば反射材を貼り付けることにより、被検出部(又は被検出部材)を設け、センシング用開口部31を通じて光学式回転センサ(回転数計測器の一例)の検出光が被検出部へ照射される。光学式回転センサは、被検出部に向けて検出光を放つとともに、検出光の被検出部での反射光を検出して、冷却ファン81の回転数を計測するように構成されている。このような光学式回転センサは、例えば、赤外線センサであってよい。
【0036】
センシング用開口部31が中央部26Cに設けられているので、センシング用開口部31を下カバー26の他の部分よりも冷却ファン81に近づけることが可能となっている。これにより、被検出部に対しより近い位置から検出光を照射できるようになり、計測精度を向上させることができる。更に、センシング用開口部31がリアカバー2のうち固定部材である下カバー26に設けられているので、センシング用開口部31と冷却ファン81の被検出部との位置関係の変動が抑えられている。これにより、安定した計測を行うことができる。
【0037】
上カバー25は、通気用開口部が形成された多孔板状部材(又は網状部材)と、その周囲を囲むフレームとで概ね構成されている。本実施形態において、上カバー25の多孔板状部材は六角形の開口部が千鳥状に配置されたパンチングメタルから成る。
【0038】
上カバー25には、上下方向に並ぶ複数の突条が一体的に形成されており、各突条は左右方向に延びている。この突条により上カバー25の曲げ剛性が高められているとともに、上カバー25の意匠性が高められている。突条は、斜め上方向きの面、後ろ向きの面、斜め下方向きの下面により形作られている。この突条の3面のうち下面を除く2面にはほぼ全面的に通風用開口部が設けられており、下面には通風用開口部が設けられていない。このように上カバー25に形成された突条及び通風用開口部はリアカバー2に整風機能を与えるための整風部として機能する。そして、リアカバー2(センターカバー21)の整風機能によって、冷却器室15からの排気は、上カバー25から後方及び後上方へ吹き出すが、後下方へは吹き出さないように整流される。
【0039】
なお、リアカバー2の整風部は上記構成に限定されない。例えば、上カバー25に少なくとも1つの風向板を設けることや、上カバー25にほぼ全面的に通気用開口部を形成しその一部を塞ぐように少なくとも1つの閉塞板を設けることなどによって、リアカバー2に整風部が設けられていてもよい。
【0040】
上カバー25の下端縁は下カバー26の中央部26Cよりも後方に位置しており、上カバー25に設けられた突条のうち最も下方に位置する突条は、下カバー26の中央部26Cに設けられたセンシング用開口部31の上方を庇のように覆っている。このように、上カバー25によって、センシング用開口部31を通じて冷却器室15への雨や砂などの侵入が防がれている。また、上カバー25でセンシング用開口部31が外観から隠されることによって、センシング用開口部31によって意匠性が損なわれないようにしている。
【0041】
図4に示すように、センターカバー21と冷却ファン81は、これらの間に排気の流れを阻害する物体を挟むことなく、前後方向に近接して配置されている。センターカバー21のうち上カバー25と冷却ファン81とは、上カバー25の通気用開口部の寸法に応じた間隔D1をおいて近接して配置されている。間隔D1の値は、上カバー25の通気用開口部の寸法と間隔D1の数値範囲との関係を予め定めた開口部寸法−間隔情報を利用して、決定される。具体的には、上カバー25の通気用開口部の寸法から、開口部寸法−間隔情報を利用して間隔D1の数値範囲を導き出し、その数値範囲のなかから選択された値を間隔D1と決定する。間隔D1は、例えば、作業者の指や手がセンシング用開口部31に入った場合に、その指や手が回転体である冷却ファン81に届かない大きさとなるように定められている。
【0042】
なお、間隔D1は導き出された数値範囲に含まれる値のうち、より小さな値であることが望ましい。間隔D1が小さいほど、後部車体102の前後長を短縮することが可能となり、また、ラジエータ7を隔壁から前後方向に大きく隔てることができる。ラジエータ7と隔壁との間隙が広くなると、より温度の低い空気をラジエータ7に導くことが可能となり、また、周囲温度の上昇を抑制できる空間となるため、図示されない選択触媒還元装置(排気ガス後処理装置)の一部である尿素水配管等の熱害を受けやすい部品の設置に有利となる。
【0043】
また、センシング用開口部31と冷却ファン81との前後方向の間隔D2は、センシング用開口部31の寸法に応じた大きさとなっている。間隔D2の大きさは、前述した間隔D1と同様に決定される。即ち、センシング用開口部31の寸法から、開口部寸法−間隔情報を利用して間隔D2の数値範囲を導き出し、その数値範囲のなかから選択された値を間隔D2と決定する。なお、間隔D2は数値範囲に含まれる値のうちより小さな値であることが望ましい。間隔D2が小さいほど、後部車体102の前後長を短縮することが可能となり、また、ラジエータ7を隔壁から前後方向に大きく隔てることができる。
【0044】
上カバー25の左右方向の側端縁のうち一方は、ヒンジ33を介してサイドカバー22と回動可能に連結されている。サイドカバー22は後部車体102に固定されていることから、上カバー25は車体10に水平方向に回動可能に連結されている。このようにして、上カバー25は開閉可能な扉として構成されている。上カバー25を冷却器室15の外側へ向けて開くことにより、冷却器室15が外部へ向けて開放され、冷却ファンユニット8が外部に露出する。また、上カバー25を閉じることにより、冷却ファンユニット8がリアカバー2に覆われる。
【0045】
上カバー25の左右方向の側端縁のうち他方は、サイドカバー22に設けられたナット付アーム36とボルト34により締結されている。ナット付アーム36はサイドカバー22からセンター側へ突出した部材であり、ナット付アーム36の基部はサイドカバー22に固定され先端部にはナットが形成されている。上カバー25が開放される際には、ボルト34による上カバー25とナット付アーム36との締結が解除される。
【0046】
また、上カバー25の左右方向の側端縁のうち他方と、サイドカバー22との間には、ロック装置5が設けられている。ロック装置5は、上カバー25が閉じられた状態で後部車体102(より詳細にはサイドカバー22)に対し固定されるようにカギを掛けたり、そのカギを解除したりするための装置である。ロック装置5は、上カバー25を後部車体102に対し固定する錠51と、錠51を施錠及び解錠操作する鍵52(
図2)とで構成されている。
【0047】
ロック装置5の鍵52は、ホイールローダ100のエンジン6を始動させるためのイグニッションキーである。このように、ロック装置5を操作する鍵52としてイグニッションキーが用いられることで、エンジン6が掛かって冷却ファン81が回転している間はロック装置5を操作することができなくなる。また、ロック装置5は、錠51が施錠されているときにのみ錠51から鍵52を抜くことができるように、換言すれば、錠51が解錠されて上カバー25が開放されている間は鍵52を錠51の鍵穴711から抜くことができないように、鍵52の鍵穴711への抜き差しを規制する抜き差しロック機構4(抜き差しロック装置)を備えている。このように、イグニッションキーである鍵52と、抜き差しロック機構4とにより、冷却ファン81の稼働時に上カバー25を開放させないためのロック構成がロック装置5に備わっており、作業者の安全性が高められている。
【0048】
ここで、ロック装置5の構成について詳細に説明する。
図5は前方から見たロック装置5の概略構成を示す図、
図6は施錠されたロック装置5の様子を示す斜視図、
図7は解錠されたロック装置5の様子を示す斜視図である。
図5から
図7は、ロック装置5を前方から即ち車体10内から見た図であり、ロック装置5のうち鍵52及びロック装置5を覆うカバーは省略されている。
【0049】
ロック装置5の錠51は、上カバー25側に設けられたキーシリンダ71、操作アーム72、カムプレート73、取付部材74、下ストッパ41、及び上ストッパ42と、サイドカバー22側に設けられた係止片75及び当接片76とから概ね構成されている。そして、これらの構成要素のうち、主に、カムプレート73、下ストッパ41、上ストッパ42、及び当接片76によって抜き差しロック機構4が構成されている。
【0050】
キーシリンダ71は、例えば、上カバー25に固定された不図示の外筒と、外筒に内挿された不図示の内筒とを有する一般的構造のキーシリンダであって、鍵穴711に鍵52が差し込まれた状態でのみ外筒に対し内筒が鍵52と一体的に回動することができるように構成されている。また、鍵52が抜き差しできる位置は、鍵52の回動角度により設定されている。キーシリンダ71の内筒は操作アーム72の基部と連結されている。この操作アーム72の先端部は、連結ピン79によってカムプレート73とピン結合されている。このような構成により、キーシリンダ71の鍵穴711に差し込まれた鍵52の回動に伴って操作アーム72が回動(揺動)し、操作アーム72の回動によってカムプレート73が回動操作される。なお、キーシリンダ71の内筒とカムプレート73とを操作アーム72を介さずに直接的に連結させることもできるが、本実施形態のようにキーシリンダ71とカムプレート73との間に操作アーム72を介設することによって、例えば、施錠状態で無理に開ける等の意図しない開閉動作による負荷がキーシリンダ71に直接的に作用しないようにしている。
【0051】
取付部材74は、カムプレート73の回転中心がキーシリンダ71の軸線上に位置するように、且つ、カムプレート73が上カバー25に対し回転可能となるように、カムプレート73を上カバー25へ取り付けるための台座である。取付部材74は上カバー25にボルトによって固定されており、この取付部材74にカムプレート73が支承されている。つまり、カムプレート73は取付部材74を介して上カバー25に支持されている。
【0052】
カムプレート73には、係止部73aと、連結ピン79が挿通される連結孔73bと、ストッパ部73cとが形成されている。係止部73aとストッパ部73cが成す中心角は90°より大きく180°より小さい。錠51が施錠されている状態(
図5,6)では、カムプレート73の係止部73aの後面が係止片75の前面と当接しており、カムプレート73が設けられた上カバー25は前方へ回動することができない。これにより、上カバー25は閉じられた状態で固定される。なお、本実施形態に係る係止片75は、サイドカバー22から左右方向に突出したナット付アーム36の上部に一体的に設けられているが、係止片75はナット付アーム36から独立した部材であってもよい。
【0053】
上記のように錠51が施錠されている状態から、解錠する方向に鍵52が回転すると、
図7に示すように、カムプレート73のストッパ部73cが下ストッパ41と当接する。これにより、カムプレート73のストッパ部73cのそれ以上下方への回動が制限される。下ストッパ41は、上カバー25から前方へ突出した部材である。カムプレート73のストッパ部73cが下ストッパ41と当接している状態では、カムプレート73の係止部73aと係止片75との係合は解除されており、錠51は解錠されている。
【0054】
錠51が解錠された状態で上カバー25が開くと、上ストッパ42が当接片76に当接して、上ストッパ42は後方へ突出した姿勢に変化する。上ストッパ42は不図示のバネの作用によって、下ストッパ41の上方に位置し、カムプレート73のストッパ部73cの軌道と干渉するように後方へ突出した姿勢(
図7)と、カムプレート73のストッパ部73cの軌道と干渉しないように側方へ突出した姿勢(
図6)との間で、姿勢を変化させることができる。下ストッパ41の姿勢変化の引き金は当接片76との当接であり、下ストッパ41が当接片76に対し前方から当接するとき、即ち、上カバー25が開くときは、下ストッパ41は側方へ突出した姿勢から後方へ突出した姿勢へ変化する。また、下ストッパ41が当接片76に対し後方から当接するとき、即ち、上カバー25を閉じるときは、下ストッパ41は後方へ突出した姿勢から側方へ突出した姿勢へ変化する。
【0055】
上ストッパ42が後方へ突出した姿勢のときは、下ストッパ41と上ストッパ42によってカムプレート73のストッパ部73cが上下から挟み込まれるので、カムプレート73の回動が制限される。これにより、鍵52はキーシリンダ71の鍵穴711から抜けない位置でその回動が制限される。このようにして、ロック装置5は上カバー25が開いた状態で錠51の鍵穴711から鍵52が抜けないように構成されている。
【0056】
開いている上カバー25が閉じると、上ストッパ42が当接片76に当接して、上ストッパ42は側方へ突出した姿勢に変化する。これにより、上ストッパ42によるカムプレート73のストッパ部73cの回動の制限が解除され、鍵52を施錠方向へ操作することが可能となる。
【0057】
以上に本発明の好適な一実施形態として、車体10の後部を覆うリアカバー2と、ラジエータ7と、冷却ファン81とを含む作業機械の冷却構造1について説明した。冷却構造1に含まれるカバーがリアカバー2であることにより、少なくとも従来のファンガードの分だけ、ホイールローダ100の全長(車長)を短くすることが可能となる。また、省略された従来のファンガードのための空間を利用して、ホイールローダ100の全長の増大を抑えつつ、エンジン6とラジエータ7の間に、例えば、尿素SCR(Selective Catalytic Reduction)システムなどの排ガス浄化装置(図示せず)やその他の機器を配設することが可能となる。
【0058】
本発明が適用される作業機械の冷却構造1に含まれるカバーがリアカバー2であれば上記の点で有利であるが、作業機械の冷却構造1に含まれるカバーはリアカバー2に限定されない。例えば、本発明の別態様に係る作業機械の冷却構造1が、車体10の側部に装着されたカバーと、カバーと対向して配置されたラジエータ7と、カバーとラジエータ7との間に配置された冷却ファン81(冷却ファンユニット8)とにより構成されていてもよい。
【0059】
また、上記実施形態においては、リアカバー2の一部分であるセンターカバー21の上カバー25が開閉可能となるように、上カバー25が車体10に回動可能に連結されているが、リアカバー2のうちセンターカバー21の全体又はリアカバー2の全体が車体10に回動可能に連結されていてもよい。なお、センターカバー21の全体が車体10に回動可能に連結される場合には、センターカバー21は上カバー25と下カバー26とに分割されず、これらが一体的に形成されていてもよい。