(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2016-169767(P2016-169767A)
(43)【公開日】2016年9月23日
(54)【発明の名称】ヒンジ装置及び携帯用情報機器
(51)【国際特許分類】
F16C 11/04 20060101AFI20160826BHJP
F16C 11/10 20060101ALI20160826BHJP
G06F 1/16 20060101ALI20160826BHJP
H04M 1/02 20060101ALI20160826BHJP
H04M 1/03 20060101ALI20160826BHJP
H05K 5/02 20060101ALI20160826BHJP
【FI】
F16C11/04 F
F16C11/10 Z
G06F1/16 312E
G06F1/16 312J
H04M1/02 C
H04M1/03 Z
H05K5/02 V
【審査請求】有
【請求項の数】12
【出願形態】OL
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2015-48438(P2015-48438)
(22)【出願日】2015年3月11日
(71)【出願人】
【識別番号】505205731
【氏名又は名称】レノボ・シンガポール・プライベート・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100089118
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 宏明
(72)【発明者】
【氏名】内山 義治
(72)【発明者】
【氏名】堀内 茂浩
(72)【発明者】
【氏名】野原 良太
(72)【発明者】
【氏名】木下 宏晃
【テーマコード(参考)】
3J105
4E360
5K023
【Fターム(参考)】
3J105AA05
3J105AB02
3J105AB11
3J105AB24
3J105AB50
3J105AC07
3J105BB17
3J105DA06
3J105DA34
3J105DA41
4E360AA02
4E360AB17
4E360EC11
4E360ED03
4E360GA52
4E360GB26
4E360GB46
5K023AA07
5K023BB03
5K023DD08
5K023HH05
5K023LL06
5K023MM25
5K023PP16
(57)【要約】
【課題】所望の回転トルクを発生可能でありながら装置構成を小型化することができるヒンジ装置及び該ヒンジ装置を備えた携帯用情報機器を提供する。
【解決手段】ヒンジ装置10は、携帯用情報機器12を構成する本体筐体16とディスプレイ筐体14との間を開閉可能に連結する装置である。このヒンジ装置10は、本体筐体16に固定される第1軸24と、第1軸24に回転トルクを発生させる第1トルク発生機構40と、ディスプレイ筐体14に固定される第2軸26と、第2軸26に回転トルクを発生させる第2トルク発生機構42とを備え、第1トルク発生機構40を第1軸24の軸線延長線上から外れた位置に配置し、第2トルク発生機構42を第2軸26の軸線延長線上から外れた位置に配置したことで、装置構成を小型化している。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つの筐体間を開閉可能に連結するヒンジ装置であって、
少なくとも一方の筐体に固定される第1軸と、該第1軸に回転トルクを発生させる第1トルク発生機構とを備え、
前記第1トルク発生機構を前記第1軸の軸線延長線上から外れた位置に配置したことを特徴とするヒンジ装置。
【請求項2】
請求項1記載のヒンジ装置において、
前記第1軸の回転を前記第1トルク発生機構に伝達する動力伝達機構を備えることを特徴とするヒンジ装置。
【請求項3】
請求項2記載のヒンジ装置において、
前記第1トルク発生機構は、前記第1軸の回転を受けて前記動力伝達機構を介して従動回転する回転体と、該回転体に対して摺動可能に当接する固定体とを有することを特徴とするヒンジ装置。
【請求項4】
請求項3記載のヒンジ装置において、
前記動力伝達機構は、前記第1軸に設けられた駆動歯車と、前記回転体に設けられ、前記駆動歯車と噛合し且つ前記駆動歯車より歯数が少なく設定された従動歯車とを有することを特徴とするヒンジ装置。
【請求項5】
請求項4記載のヒンジ装置において、
前記第1トルク発生機構及び前記動力伝達機構は、前記一方の筐体内に収納されており、
前記駆動歯車と前記従動歯車とは、前記一方の筐体の厚み方向に交差した前後方向に並んで設けられることを特徴とするヒンジ装置。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれか1項に記載のヒンジ装置において、
他方の筐体に固定される第2軸と、該第2軸に回転トルクを発生させる第2トルク発生機構とを備え、
前記第2トルク発生機構を前記第2軸の軸線延長線上から外れた位置に配置したことを特徴とするヒンジ装置。
【請求項7】
請求項6記載のヒンジ装置において、
前記第2軸の回転を前記第2トルク発生機構に伝達する動力伝達機構を備えることを特徴とするヒンジ装置。
【請求項8】
請求項6又は7記載のヒンジ装置において、
前記第1軸及び前記第2軸を回転可能に支持し、前記2つの筐体間に亘って配設されるヒンジブロックを有し、
前記第1トルク発生機構及び前記第2トルク発生機構は、前記ヒンジブロック内に収納されていることを特徴とするヒンジ装置。
【請求項9】
請求項8記載のヒンジ装置において、
前記第1トルク発生機構と前記第2トルク発生機構とは、前記第1軸及び前記第2軸の軸線方向に沿った方向に対して互いに位置ずれして配置されていることを特徴とするヒンジ装置。
【請求項10】
請求項6又は7記載のヒンジ装置において、
前記第1軸及び前記第2軸を回転可能に支持し、前記2つの筐体間に亘って配設されるヒンジブロックを有し、
少なくとも前記第1トルク発生機構又は前記第2トルク発生機構が、前記一方の筐体内又は前記他方の筐体内に収納されていることを特徴とするヒンジ装置。
【請求項11】
請求項1〜4のいずれか1項に記載のヒンジ装置において、
前記第1トルク発生機構は、前記一方の筐体内に収納されていることを特徴とするヒンジ装置。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか1項に記載のヒンジ装置を備えたことを特徴とする携帯用情報機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2つの筐体間を開閉可能に連結するヒンジ装置及び該ヒンジ装置を備えた携帯用情報機器に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話やノートブック型パーソナルコンピュータ(ノート型PC)等の携帯用情報機器では、本体筐体に対してディスプレイ筐体をヒンジ装置によって開閉可能に連結した構成が用いられている。
【0003】
例えば特許文献1には、本体筐体の後端部から起立したヒンジブロックの上端側でディスプレイ筐体の後端部に固定された軸を回転可能に支持する1軸構造のヒンジ装置を備えたノート型PCが開示されている。また特許文献2,3には、ヒンジブロックの上端側でディスプレイ筐体の後端部に固定された軸を回転可能に支持し、ヒンジブロックの下端側で本体筐体の後端部に固定された軸を回転可能に支持する2軸構造のヒンジ装置を備え、ディスプレイ筐体を360度位置まで反転可能なノート型PC(コンバーチブル型PC)が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014−65274号公報
【特許文献2】特開2005−23955号公報
【特許文献3】特開2014−238764号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のような携帯用情報機器では、例えばディスプレイ筐体の安定した開閉操作性を確保し、さらにディスプレイ筐体を所望の角度位置で安定して保持することを可能とするために、ヒンジ装置は十分な回転トルクを発生できる必要がある。そこで、従来の携帯用情報機器のヒンジ装置では、例えばディスプレイ筐体や本体筐体に固定された回転軸と同軸に回転板を設け、この回転板との間で摩擦力を発生する固定板をヒンジブロック側に設けたトルク発生機構が採用されている。
【0006】
ところで、携帯用情報機器の分野では筐体の薄型化が急速に進んでいるため、2つの筐体間を連結するヒンジ装置についても、筐体の厚み方向に沿った寸法を縮小すること、また2軸構造の場合には2軸間距離をより狭小化することで機器の薄型化に対応させる必要が生じている。
【0007】
これに対し、トルク発生機構で所望の回転トルクを発生させるためには、回転板と固定板との間である程度の接触面積を確保しておく必要があり、その小型化には限界がある。すなわち、トルク発生機構が障害となってヒンジ装置全体の小型化が難しいという問題がある。
【0008】
本発明は、上記従来技術の課題を考慮してなされたものであり、所望の回転トルクを発生可能でありながら装置構成を小型化することができるヒンジ装置及び該ヒンジ装置を備えた携帯用情報機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係るヒンジ装置は、2つの筐体間を開閉可能に連結するヒンジ装置であって、少なくとも一方の筐体に固定される第1軸と、該第1軸に回転トルクを発生させる第1トルク発生機構とを備え、前記第1トルク発生機構を前記第1軸の軸線延長線上から外れた位置に配置したことを特徴とする。
【0010】
このような構成によれば、第1トルク発生機構を設けたことにより第1軸を所定の回転トルクで回転させることができる。このため、2つの筐体間を安定して開閉動作させることができ、また両者を所望の開度で安定して保持することができる。しかも第1トルク発生機構を第1軸の軸線延長線上から外れた位置に配置しているため、第1トルク発生機構を高い自由度で配置でき、第1トルク発生機構の干渉を回避した状態でその装置構成を小型化することができる。
【0011】
前記第1軸の回転を前記第1トルク発生機構に伝達する動力伝達機構を備えると、第1軸の軸線延長線上から外れた位置に配置した第1トルク発生機構と第1軸との間での動力伝達を確実に行うことができると共に、第1トルク発生機構の設置自由度が一層向上する。
【0012】
前記第1トルク発生機構は、前記第1軸の回転を受けて前記動力伝達機構を介して従動回転する回転体と、該回転体に対して摺動可能に当接する固定体とを有する構成であってもよい。
【0013】
前記動力伝達機構は、前記第1軸に設けられた駆動歯車と、前記回転体に設けられ、前記駆動歯車と噛合し且つ前記駆動歯車より歯数が少なく設定された従動歯車とを有する構成であってもよい。そうすると、第1軸の回転数よりも第1トルク発生機構の回転体の回転数が大きくなるため、第1トルク発生機構で摩擦力を発生する回転体と固定板との間の接触面積を小さくした場合であっても、回転数の増大によって大きな摩擦力を発生することができる。このため、第1トルク発生機構の小型化とヒンジ装置のさらなる小型化が可能となる。
【0014】
前記第1トルク発生機構及び前記動力伝達機構は、前記一方の筐体内に収納されており、前記駆動歯車と前記従動歯車とは、前記一方の筐体の厚み方向に交差した前後方向に並んで設けられた構成であってもよい。これにより、薄型化がなされた筐体内に第1トルク発生機構及び動力伝達機構を容易に収容できる。
【0015】
他方の筐体に固定される第2軸と、該第2軸に回転トルクを発生させる第2トルク発生機構とを備え、前記第2トルク発生機構を前記第2軸の軸線延長線上から外れた位置に配置してもよい。そうすると、2軸構造のヒンジ装置であっても、第2トルク発生機構の設置自由度が向上し、第2軸や第1トルク発生機構と干渉することを回避できるため、装置構成の小型化が可能となる。
【0016】
前記第2軸の回転を前記第2トルク発生機構に伝達する動力伝達機構を備えると、第2軸の軸線延長線上から外れた位置に配置した第2トルク発生機構と第2軸との間での動力伝達を確実に行うことができると共に、第2トルク発生機構の設置自由度が一層向上する。
【0017】
前記第1軸及び前記第2軸を回転可能に支持し、前記2つの筐体間に亘って配設されるヒンジブロックを有し、前記第1トルク発生機構及び前記第2トルク発生機構は、前記ヒンジブロック内に収納された構成であってもよい。そうすると、第1トルク発生機構及び第2トルク発生機構をヒンジブロック内で所望の位置に配置できるため、ヒンジブロックの小型化が可能となる。
【0018】
前記第1トルク発生機構と前記第2トルク発生機構とは、前記第1軸及び前記第2軸の軸線方向に沿った方向に対して互いに位置ずれして配置されていると、前記第1トルク発生機構と前記第2トルク発生機構とが互いに干渉することを確実に回避して装置構成を小型化することができる。
【0019】
前記第1軸及び前記第2軸を回転可能に支持し、前記2つの筐体間に亘って配設されるヒンジブロックを有し、少なくとも前記第1トルク発生機構又は前記第2トルク発生機構が、前記一方の筐体内又は前記他方の筐体内に収納された構成であってもよい。そうすると、少なくとも一方のトルク発生機構をヒンジブロック外に配置できるため、装置構成を一層小型化することができる。
【0020】
前記第1トルク発生機構は、前記一方の筐体内に収納されていると、ヒンジ装置の装置構成を一層小型化することができる。
【0021】
また、本発明に係る携帯用情報機器は、上記構成のヒンジ装置を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、第1トルク発生機構を設けたことにより第1軸を所定の回転トルクで回転させることができ、2つの筐体間を安定して開閉動作させることができる。また第1トルク発生機構を第1軸の軸線延長線上から外れた位置に配置しているため、第1トルク発生機構を高い自由度で配置でき、第1トルク発生機構の干渉を回避した状態でその装置構成を小型化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】
図1は、本発明の第1の実施形態に係るヒンジ装置を備えた携帯用情報機器の斜視図である。
【
図2】
図2は、本発明の第1の実施形態に係るヒンジ装置の構成を模式的に示した正面断面図である。
【
図3】
図3は、
図2に示すヒンジ装置の構成を模式的に示した側面断面図であり、
図3(A)は、
図2中のIIIA−IIIAに沿う断面図であり、
図3(B)は、
図2中のIIIB−IIIBに沿う断面図である。
【
図4】
図4は、本発明の第2の実施形態に係るヒンジ装置の構成を模式的に示した正面断面図である。
【
図6】
図6は、本発明の第3の実施形態に係るヒンジ装置の構成を模式的に示した正面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明に係るヒンジ装置について、この装置を備えた携帯用情報機器を例示して好適な実施の形態を挙げ、添付の図面を参照しながら詳細に説明する。
【0025】
図1は、本発明の第1の実施形態に係るヒンジ装置10を備えた携帯用情報機器12の斜視図である。本実施形態に係る携帯用情報機器12は、2軸構造のヒンジ装置10を備えることにより、ディスプレイ筐体14を本体筐体16に対して90度前後の角度位置に回動させた状態ではノート型PCとして好適に使用でき(
図1参照)、ディスプレイ筐体14を本体筐体16に対して360度位置まで回動させて反転させた状態ではタブレット型PCとして好適に使用できる、いわゆるコンバーチブル型PCである。本発明は、このようなコンバーチブル型PC以外、例えばディスプレイ筐体14が180度位置程度までしか回動しない一般的なノート型PC、携帯電話、スマートフォン又は電子手帳等、2つの筐体を開閉可能に連結した構成の電子機器であれば好適に適用できる。
【0026】
以下、
図1に示す状態からディスプレイ筐体14を本体筐体16に対して閉じた状態(0度位置)での形態を基準とし、ディスプレイ筐体14及び本体筐体16のヒンジ装置10側の端部を後端(後方)、その反対側の端部を前端(前方)、厚み方向を上下方向、幅方向を左右方向と呼んで説明する。
【0027】
図1に示すように、携帯用情報機器12は、内面14aにディスプレイ18を有するディスプレイ筐体14の後端部と、上面16aにキーボード20を有する本体筐体16の後端部とを、左右一対のヒンジ装置10,10によって回動可能に連結したものである。
【0028】
ディスプレイ筐体14は、本体筐体16よりも薄い平板状に構成されている。ディスプレイ筐体14は、その後端部に設けられたヒンジ装置10によって本体筐体16と連結されると共に、ヒンジ装置10を通過したケーブル22(
図2参照)により本体筐体16と電気的に接続されている。ディスプレイ18は、例えばタッチパネル式の液晶表示装置によって構成される。
【0029】
本体筐体16は、平板状に構成された箱体である。本体筐体16は、その後端部に設けられたヒンジ装置10によってディスプレイ筐体14と連結されている。本体筐体16の上面16aにはキーボード20等の入力手段が設けられ、本体筐体16の内部には図示しない基板、演算装置、及びメモリ等の各種電子部品が設けられている。キーボード20は、本体筐体16の上面16aに設けられた図示しないタッチパネル式のディスプレイに表示される方式で構成されてもよい。
【0030】
図2は、本発明の第1の実施形態に係るヒンジ装置10の構成を模式的に示した正面断面図であり、ディスプレイ筐体14を本体筐体16に対して閉じて0度位置とした状態でヒンジ装置10を正面側から見た断面図である。
図3は、
図2に示すヒンジ装置10の構成を模式的に示した側面断面図であり、
図3(A)は、
図2中のIIIA−IIIAに沿う断面図であり、
図3(B)は、
図2中のIIIB−IIIBに沿う断面図である。
【0031】
図2、
図3(A)及び
図3(B)に示すように、ヒンジ装置10は、2軸構造によりディスプレイ筐体14の本体筐体16に対する0度位置から360度位置までの回動を可能とするものである。ヒンジ装置10は、本体筐体16に対して回転不能に連結され、左右方向に延びた第1軸(回転軸)24と、ディスプレイ筐体14に対して回転不能に連結され、左右方向に延びた第2軸(回転軸)26と、これら第1軸24及び第2軸26を回転可能に保持する箱状のヒンジブロック(ヒンジ筐体)28とを備える。ヒンジブロック28は、ディスプレイ筐体14及び本体筐体16の後端部に設けられた切欠部14b,16b間に亘って配置される。
【0032】
第1軸24は、その一端部が本体筐体16に挿入固定されることで該本体筐体16と一体的に回転する。第2軸26は、その一端部がディスプレイ筐体14に挿入固定されることで該ディスプレイ筐体14と一体的に回転する。第1軸24はヒンジブロック28内部に左右方向に並んで設けられた支持板30,31,32,33のうちの支持板30〜32によって回転可能に保持され、第2軸26は支持板30,31によって回転可能に保持されている。これら第1軸24及び第2軸26はヒンジブロック28の一側面から突出してそれぞれ本体筐体16及びディスプレイ筐体14に連結される。これにより、本体筐体16は第1軸24と共にヒンジブロック28に対して回転可能に支持され、ディスプレイ筐体14は第2軸26と共にヒンジブロック28に対して回転可能に支持される。第1軸24及び第2軸26は、その両端部がヒンジブロック28から突出して本体筐体16及びディスプレイ筐体14に連結される構成であってもよい。
【0033】
図2及び
図3(A)に示すように、ヒンジ装置10では、支持板30,31間で第1軸24に外嵌固定された第1円板34と、支持板30,31間で第2軸26に外嵌固定された第2円板36とに挟まれる位置に、第1円板34と第2円板36の間を往復移動可能且つ回転可能に支持されたフロートピン38が設けられている。
【0034】
フロートピン38は、ディスプレイ筐体14の本体筐体16に対する開き角度位置に応じて第1円板34の外周面に形成された溝部34a又は第2円板36の外周面に形成された溝部36aに選択的に嵌合する。これにより、フロートピン38が嵌合している軸(第1軸24又は第2軸26)の回転が規制され、各軸24,26はディスプレイ筐体14の開き角度位置に応じていずれかが選択的に回転可能となる。例えば、ディスプレイ筐体14が本体筐体16に対して0度位置から90度位置までの間にある場合は第2軸26のみが回転し、90度位置から270度位置までの間にある場合は第1軸24のみが回転し、270度位置から360度位置までの間にある場合は第2軸26のみが回転することで、ディスプレイ筐体14の円滑な開閉動作が可能となっている。
【0035】
このようなフロートピン38による回転軸選択機能は省略してもよく、例えば第1軸24と第2軸26との間に図示しない歯車列を介在させ、両軸24,26が同期回転するように構成してもよい。
【0036】
図2及び
図3(B)に示すように、ヒンジ装置10は、第1軸24に回転トルクを発生させる第1トルク発生機構40と、第2軸26に回転トルクを発生させる第2トルク発生機構42と、各トルク発生機構40,42に各軸24,26の回転を伝達する動力伝達機構44,46とを備える。
【0037】
第1トルク発生機構40は、ヒンジブロック28内で支持板32,33間に設けられている。第1トルク発生機構40は、支持板33に固着された円板状の固定板(固体体)40aと、固定板40aに対して摺接可能な円板状の回転板(回転体)40bとを備え、回転板40b(及び固定板40a)の軸中心が第1軸24の軸線延長線上から外れた位置、ここでは上方にオフセットした位置に配置されている。固定板40a及び回転板40bは、軸周りに相対回転してその摺接面間に所定の摩擦力を発生することで、動力伝達機構44を介して第1軸24に所定の回転トルクを付与するものである。固定板40a及び回転板40bは、例えば2枚又はそれ以上に重ねたスプリングワッシャや所定の摩擦板で構成される。また、例えば固定板40aを筒状の固定筒体として構成し、回転板40bを該固定筒体の内部で摺動回転可能に挿入される円柱状の回転棒体として構成してもよい。
【0038】
動力伝達機構44は、第1トルク発生機構40と共に支持板32,33間に設けられている。動力伝達機構44は、第1軸24の端部に外嵌固定された駆動歯車44aと、駆動歯車44aと噛合し、回転板40bに同軸固定された従動歯車44bとを備える。本実施形態の場合、従動歯車44bの歯数を駆動歯車44aの歯数よりも少なく設定している。これにより、駆動歯車44aが1回転する間に従動歯車44bが1回転より多く、例えば1.5回転するため、両者は加速機構を構成している。本実施形態の場合、従動歯車44bを駆動歯車44aの上方に配置している(
図3(B)参照)。
【0039】
第2トルク発生機構42及び動力伝達機構46は、支持板31,32間に設けられている以外は第1トルク発生機構40及び動力伝達機構44と同様な構造である。すなわち、第2トルク発生機構42は、支持板32に固着された円板状の固定板40aと、固定板40aに対して摺接可能な円板状の回転板40bとを備え、回転板40b(及び固定板40a)の軸中心が第2軸26の軸線延長線上から外れた位置、ここでは下方にオフセットした位置に配置されている。また、動力伝達機構46は、第2軸26の端部に外嵌固定された駆動歯車44aと、駆動歯車44aより少ない歯数で該駆動歯車44aと噛合し、回転板40bに同軸固定された従動歯車44bとを備える。この動力伝達機構46では、従動歯車44bを駆動歯車44aの下方に配置している(
図2参照)。
【0040】
次に、ヒンジ装置10の動作及び作用について説明する。
【0041】
本実施形態に係るヒンジ装置10を備えた携帯用情報機器12では、ディスプレイ筐体14を本体筐体16に対して開き操作すると、上記したフロートピン38による回転軸選択機能によってディスプレイ筐体14の開き角度位置に応じて第1軸24又は第2軸26が適宜回転する。
【0042】
例えば第1軸24が回転すると、その回転が動力伝達機構44の駆動歯車44aから従動歯車44bに伝達され、第1トルク発生機構40の回転板40bが回転すると同時に固定板40aに摺接するため、第1軸24が所定の回転トルクで回転する。また、例えば第2軸26が回転すると、その回転が動力伝達機構46の駆動歯車44aから従動歯車44bに伝達され、第2トルク発生機構42の回転板40bが回転すると同時に固定板40aに摺接するため、第2軸26が所定の回転トルクで回転する。これにより、ディスプレイ筐体14の安定した開閉操作性が確保されると共に、ディスプレイ筐体14を所望の角度位置で安定して保持することができ、例えば90度位置でのノート型PCでの使用形態でディスプレイ筐体14ががたつくこともない。
【0043】
この場合、ヒンジ装置10では、第1トルク発生機構40を第1軸24の軸線延長線上から外れた位置に配置し、さらに第2トルク発生機構42を第2軸26の軸線延長線上から外れた位置に配置している。このため、第1トルク発生機構40及び第2トルク発生機構42をヒンジブロック28内で高い自由度で配置でき、さらに両軸24,26の軸間距離を狭く構成した場合であっても第1トルク発生機構40と第2トルク発生機構42とが干渉することが回避される。その結果、ヒンジブロック28の高さ寸法を可及的に小型化することができ、ヒンジ装置10の小型化とこれを適用する携帯用情報機器12の薄型化を図ることができる。また、各軸24,26と各トルク発生機構40,42との間に動力伝達機構44,46を設けたことで、各トルク発生機構40,42の設置自由度が一層向上する。
【0044】
しかも、動力伝達機構44,46では、駆動歯車44aよりも従動歯車44bの歯数を少なく設定しているため、各軸24,26の回転数よりも第1トルク発生機構40及び第2トルク発生機構42の回転板40bの回転数が大きくなる。このため、回転板40b及び固定板40aの外径を小さくしてその接触面積を小さくした場合であっても、回転数の増大によって大きな摩擦力を発生することができ、第1トルク発生機構40及び第2トルク発生機構42の小型化とヒンジ装置10のさらなる小型化が可能となる。換言すれば、各種仕様の携帯用情報機器に対し、共通の外径を持った回転板40b及び固定板40aからなる第1トルク発生機構40及び第2トルク発生機構42を準備しておけば、動力伝達機構44,46での駆動歯車44aと従動歯車44bとの間の歯車比を調整するだけでディスプレイ筐体14の重量等の仕様に応じた所望の回転トルクが得られるため、部品共通化による低コスト化と汎用性の向上とが可能となる。
【0045】
図4は、本発明の第2の実施形態に係るヒンジ装置10Aの構成を模式的に示した正面断面図であり、ディスプレイ筐体14を本体筐体16に対して閉じて0度位置とした状態でヒンジ装置10Aを正面側から見た断面図である。
図5は、
図4中のV−V線に沿う断面図であり、ヒンジ装置10Aの構成を模式的に示した側面断面図である。
【0046】
図4及び
図5に示すように、本実施形態に係るヒンジ装置10Aは、上記第1の実施形態に係るヒンジ装置10と比べて、一方の軸、ここでは第1軸24に作用する第1トルク発生機構40及び動力伝達機構44をヒンジブロック28内ではなく一方の筐体、ここでは本体筐体16内に配置している点が相違する。
【0047】
第1トルク発生機構40は、本体筐体16内にねじ止め固定された支持ブラケット50に対して固定板40aが固着されている。本実施形態の場合、従動歯車44bを駆動歯車44aの前方に配置している(
図5参照)。
【0048】
図4に示すように、ヒンジ装置10Aの第2軸26は、その端部がディスプレイ筐体14内にねじ止め固定された支持ブラケット52に対して嵌合固定されている。なお、支持ブラケット52による第2軸26の固定構造は、上記第1の実施形態に係るヒンジ装置10の第1軸24及び第2軸26の固定構造として用いてもよい。
【0049】
従って、このようなヒンジ装置10Aを備えた携帯用情報機器12においても、ディスプレイ筐体14を本体筐体16に対して開き操作し、例えば第1軸24が回転すると、その回転が動力伝達機構44から第1トルク発生機構40に伝達されるため、第1軸24が所定の回転トルクで回転する。また、例えば第2軸26が回転すると、その回転が動力伝達機構46から第2トルク発生機構42に伝達されるため、第2軸26が所定の回転トルクで回転する。これにより、ディスプレイ筐体14の安定した開閉操作性が確保されると共に、さらにディスプレイ筐体14を所望の角度位置で安定して保持することができる。
【0050】
さらにヒンジ装置10Aにおいても、第1トルク発生機構40を第1軸24の軸線延長線上から外れた位置に配置し、さらに第2トルク発生機構42を第2軸26の軸線延長線上から外れた位置に配置しているため、ヒンジブロック28の高さ寸法を小型化することができ、ヒンジ装置10Aの小型化とこれを適用する携帯用情報機器12の薄型化を図ることができる。また、トルク発生機構40,42を各軸24,26の軸線延長線上から外してその設置自由度を高めたことで、例えば第1トルク発生機構40を本体筐体16内に設置することが可能となっている。
【0051】
しかもヒンジ装置10Aでは、第1軸24に作用する第1トルク発生機構40及び動力伝達機構44をヒンジブロック28内ではなく本体筐体16内に収容しているため、ヒンジブロック28のさらなる小型化が可能となる。この際、ヒンジ装置10Aでは、動力伝達機構44を構成する駆動歯車44aと従動歯車44bとを、本体筐体16内でその厚み方向と交差した前後方向に並べて配置しているため、薄型化がなされた本体筐体16内であっても容易に収容できる。また十分な摩擦力の確保のために動力伝達機構44を構成する駆動歯車44aや従動歯車44bよりも大径に構成することが望まれる第1トルク発生機構40(回転板40b及び固定板40a)を駆動歯車44aの前方に配置している(
図5参照)。これにより、
図5に示すように後端側が一層薄型化された本体筐体16に対しても第1トルク発生機構40を円滑に収容できるという利点がある。
【0052】
なお、
図4ではヒンジ装置10Aとして、本体筐体16側の第1トルク発生機構40及び動力伝達機構44を本体筐体16内に収容した構成を例示したが、ディスプレイ筐体14側の第2トルク発生機構42及び動力伝達機構46をディスプレイ筐体14内に収容した構成としてもよく、各トルク発生機構40,42及び動力伝達機構44,46をそれぞれ本体筐体16内及びディスプレイ筐体14内に収容してもよい。
【0053】
図6は、本発明の第3の実施形態に係るヒンジ装置10Bの構成を模式的に示した正面断面図であり、ディスプレイ筐体14を本体筐体16に対して閉じて0度位置とした状態でヒンジ装置10Bを正面側から見た断面図である。
【0054】
図6に示すように、本実施形態に係るヒンジ装置10Bは、上記第2の実施形態に係るヒンジ装置10Aと比べて、他方の軸、ここでは第2軸26及びこれに作用する第2トルク発生機構42及び動力伝達機構46を省略した1軸構造としている点が相違する。なお、このヒンジ装置10Bにおいても、第1トルク発生機構40は、本体筐体16内にねじ止め固定された支持ブラケット50に対して固定板40aが固着され、動力伝達機構44は、従動歯車44bが駆動歯車44aの前方に配置されている。
【0055】
ヒンジ装置10Bでは、ヒンジブロック28を省略し、本体筐体16の切欠部16bにディスプレイ筐体14の突出部14cを介在させることで、この突出部14cを実質的にヒンジブロックとして機能させている。
【0056】
従って、このようなヒンジ装置10Bを備えた携帯用情報機器12では、ディスプレイ筐体14を本体筐体16に対して開き操作し、第1軸24が回転すると、その回転が動力伝達機構44から第1トルク発生機構40に伝達されるため、第1軸24が所定の回転トルクで回転する。これにより、ディスプレイ筐体14の安定した開閉操作性が確保されると共に、さらにディスプレイ筐体14を所望の角度位置で安定して保持することができる。
【0057】
またヒンジ装置10Bにおいても、第1トルク発生機構40を第1軸24の軸線延長線上から外れた位置に配置しているため、ヒンジ装置10Bの小型化とこれを適用する携帯用情報機器12の薄型化を図ることができる。さらにヒンジ装置10Bでは、第1トルク発生機構40及び動力伝達機構44をヒンジブロック28内ではなく本体筐体16内に収容しているため、ヒンジ装置10Bのさらなる小型化が可能となる。この際、駆動歯車44aと従動歯車44bと本体筐体16内で前後方向に並べて配置しているため、薄型化がなされた本体筐体16内であっても容易に収容できる。
【0058】
なお、
図6ではヒンジ装置10Bとして、本体筐体16側に第1軸24、第1トルク発生機構40及び動力伝達機構44を設けた構成を例示したが、これら第1軸24、第1トルク発生機構40及び動力伝達機構44に代えて、ディスプレイ筐体14側に第2軸26、第2トルク発生機構42及び動力伝達機構46を設けた構成としてもよい。この場合には、ディスプレイ筐体14の切欠部14bに、前記突出部14cと同様な本体筐体16の突出部を介在させる構成とするとよい。また、ヒンジ装置10Bにおいても上記したヒンジ装置10,10Aのようにヒンジブロック28を設け、第1トルク発生機構40及び動力伝達機構44(第2トルク発生機構42及び動力伝達機構46)をその内部に収容してもよい。
【0059】
なお、本発明は、上記した実施形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で自由に変更できることは勿論である。
【0060】
例えば上記実施形態では、各軸24,26と各トルク発生機構40,42との間を連結する動力伝達機構44,46として歯車列(駆動歯車44a、従動歯車44b)を用いた構成を例示したが、歯車列に代えてベルトプーリ機構等を用いてもよい。
【符号の説明】
【0061】
10,10A,10B ヒンジ装置
12 携帯用情報機器
14 ディスプレイ筐体
14b,16b 切欠部
16 本体筐体
18 ディスプレイ
20 キーボード
24 第1軸
26 第2軸
28 ヒンジブロック
30〜33 支持板
34 第1円板
36 第2円板
38 フロートピン
40 第1トルク発生機構
40a 固体板
40b 回転板
42 第2トルク発生機構
44,46 動力伝達機構
44a 駆動歯車
44b 従動歯車
50,52 支持ブラケット