【解決手段】重量選別装置1は、秤量部21に作用する物理量を環境データとして計測する環境計測部100と、環境計測部100が計測した環境データを受けて、環境データの変動が計量値に与える影響度を、所定期間での環境データの変動量が大きくなるに連れて影響度が大きくなるように算出する影響度算出部120と、を備える。また、選別部76は、計量値が所定の基準範囲内であるか否かに基づいて良否判定を行う計量判定部と、影響度に基づいて計量判定部の判定に対する影響の有無を判定する影響判定部と、を備え、影響判定部により影響有と判定されたときには、所定の選別方向に選別するように、選別信号を出力する。
前記影響度算出部は、前記所定期間での前記環境データの変動量を前記計量値の増減量としてグラム換算した換算値を、前記影響度として算出することを特徴とする請求項1に記載の重量選別装置。
前記選別部は、前記計量値から前記許容範囲内の前記換算値を減算した影響減算値に基づいて判定した選別方向と前記計量値に基づいて判定した選別方向とが一致しない場合には、不良品とみなして選別方向を判定することを特徴とする請求項2に記載の重量選別装置。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明に係る重量選別装置の実施の形態について図面を参照して説明する。
図1〜
図10は、本発明に係る重量選別装置の一実施の形態を示している。
【0024】
まず、重量選別装置1の概要を説明する。
図1に示すように、重量選別装置1は、装置本体部2と、搬送部3と、搬入センサ4とを備えて構成されている。また、重量選別装置1の後段には振分部5が接続されている。
【0025】
重量選別装置1は、生産ラインの一部を構成するベルトコンベア14の下流側に設置されており、所定の間隔で矢印A方向に順次搬入されてくる肉、魚、加工食品、医薬品などの被計量物Wの重量を測定し、得られた測定値(以下、計量値という)を計量結果として出力している。
【0026】
また、重量選別装置1は、計量値が基準値の範囲内にあるか否か等により、被計量物Wを良品と不良品の何れかに判定している。さらに、重量選別装置1は、得られた計量値に基づいて、複数の基準値に対応して被計量物Wを重量ランク判定している。
【0027】
また、測定結果、良否判定結果や重量ランク判定結果は、表示部10に表示されるとともに、判定結果に基づいた選別信号が重量選別装置1の後段に接続された振分部5に出力されるようになっている。振分部5では、重量選別装置1が出力した選別信号に応じて被計量物Wを振り分けるようになっている。
【0028】
次に、重量選別装置1の詳細な構成を説明する。
図1、
図2に示すように、装置本体部2は、秤量部21と、総合制御部7と、表示部10と、設定部11と、これらの各部を収納する収納筐体2aとにより構成されている。
【0029】
搬送部3は、ベルトコンベア14から矢印A方向に搬入されてくる被計量物Wを所定の搬送条件により搬送している。被計量物Wは、助走コンベア31により測定するのに最適な速度になるよう加速または減速されて搬送され、秤量コンベア32によりさらに搬送され、搬送されている間に重量が秤量部21により計量されるようになっている。
【0030】
秤量コンベア32は、被計量物を所定の搬送条件により搬送している。また、被計量物Wは、計量の後にさらに後段の振分部5に搬送され、振り分けられるようになっている。
【0031】
搬送部3は、助走コンベア31および秤量コンベア32により構成されている。助走コンベア31は、前段のベルトコンベア14から搬送されてきた被計量物Wが秤量コンベア32に移動する前に、被計量物Wの助走を行うものであり、2つのローラ31a、31cと、これらのローラに巻き付けられている無端状の搬送ベルト31bとにより構成されている。
【0032】
秤量コンベア32は、被計量物Wの計量を行う秤量部21の上部に支持されており、2つのローラ32a、32cとこれらのローラに巻き付けられている無端状の搬送ベルト32bと、ローラ32cを駆動する図示しないモータとにより構成されている。ローラ32cは、モータの駆動により回転駆動されるようになっている。
【0033】
搬入センサ4は、助走コンベア31と秤量コンベア32との間に配置されており、一対の投光部4aおよび受光部4bからなる透過形光電センサで構成されている。投光部4aは搬送ベルト32bの装置本体部2側に配置され、受光部4bは搬送ベルト32bの他の側面側で投光部4aに対向するように配置されている。
【0034】
搬入センサ4は、被計量物Wが投光部4aおよび受光部4bの間を通過して被計量物Wにより受光部4bが遮光されることで、被計量物Wの搬入が開始されたことを検出するようになっている。搬入センサ4で検出された搬入開始の信号は、装置本体部2内の総合制御部7に出力されるようになっている。
【0035】
秤量部21は、秤量コンベア32を支持し被計量物Wの荷重に基づいて秤量信号を出力する荷重センサである。秤量部21は、電気抵抗線式秤(ロードセル)の構成を有し、被計量物Wが秤量コンベア32で搬送されている間に、秤量部21に加わる荷重を測定するようになっている。
【0036】
秤量部21は、図示しない金属性の起歪体と、この起歪体の応力集中部に貼り付けた電気抵抗線(ひずみゲージ)からなるブリッジ回路とを有している。秤量部21は、荷重を受けて起歪体の応力集中部が変形することで、電気抵抗線が圧縮されて電気抵抗値が減少するとともに、電気抵抗線が伸張されて電気抵抗値が増加してブリッジ回路の抵抗値が変化するため、この抵抗値の変化を秤量信号として測定するようになっている。
【0037】
起歪体は、固定端と自由端を有しており、固定端が固定ベースに固定される一方、その自由端には秤量コンベア32の荷重を受ける支持部21aの下端部が連結されている。なお、秤量部21としては、電磁平衡式秤(フォースバランス)、または差動トランス式秤を用いてもよい。
【0038】
秤量部21には環境計測部100が設けられており、この環境計測部100は、重量選別装置1の設置環境が秤量部21に及ぼす振動や温度等の物理量を計測し、計測したデータを環境データとして出力するようになっている。環境計測部100の詳しい構成については後述する。
【0039】
総合制御部7は、信号処理部71、計量部72、記憶部73、制御部74、選別部76、モード切換部77を備えている。
【0040】
信号処理部71は、
図3に示すように、増幅器94とA/D変換器96とフィルタ97とを備えており、秤量部21からの秤量信号を増幅器94で増幅し、増幅された信号をA/D変換器96でデジタル変換し、デジタル変換された信号をフィルタ97でフィルタ処理している。
【0041】
詳しくは、信号処理部71は、種類や特性の異なる複数のローパスフィルタから選択したフィルタを用いて、秤量部21からの秤量信号に対してフィルタ処理を行い、秤量信号の低周波成分のみを信号処理済の秤量信号として通過させるようになっている。
【0042】
なお、信号処理部71が選択するローパスフィルタは、1つの場合、または、複数を組み合わせたものの場合がある。このローパスフィルタとしては、FIR(Finite Impulse Response)フィルタと、IIR(Infinite Impulse Response)フィルタとがある。
【0043】
FIRフィルタは、インパルス応答波形が入力された場合に、ある決まった時間(有限時間)だけ出力する有限インパルス応答フィルタであり、IIRフィルタは、無限にインパルス応答波形の減衰波形を出力する無限インパルス応答フィルタである。
【0044】
ここで、FIRフィルタは、A/D変換器96によりデジタル信号に変換された秤量信号に対して、所定の低周波成分を通過するローパスフィルタを構成し、単純平均化処理や公知の窓関数を用いた重み付け平均化処理を行うようになっている。
【0045】
IIRフィルタは、スイッチトキャパシタフィルタのように特性変更が可能なハードウェアを用いて秤量部21からの秤量信号(アナログ秤量信号)を直接受けて処理済信号をA/D変換器96に出力するアナログフィルタで構成してもよいし、A/D変換器96からのデジタル秤量信号を受けるデジタルフィルタで構成してもよい。
【0046】
また、信号処理部71は、補正部78を有しており、この補正部78は、環境計測部100が計測した環境データの変動量に基づいて秤量信号を補正するようになっている。補正部78は、許容範囲としての後述する影響度リミットとなる環境データの変動量より小さい変動量を補正限界として補正を行っている。
【0047】
補正部78は、補正信号生成部78Aと信号合成部78Bとを備えている。補正信号生成部78Aは、環境計測部100から出力された環境データに対する補正信号を生成する。信号合成部78Bは、補正信号を秤量データに合成する。
【0048】
例えば、環境データが振動である場合、補正信号生成部78Aは、振動信号に対する制御対象モデルの応答信号を利用し、秤量部21から出力された秤量信号から振動影響を除去するための補正信号を生成する。
【0049】
そして、信号合成部78Bは、秤量部21が出力する振動成分の混ざった秤量信号(
図4(a)参照)に対して、補正信号生成部78Aにより生成された補正信号(
図4(b)参照)を、逆位相で加算または同位相で減算することにより、秤量部21が出力する秤量信号から振動成分を除去するようになっている。これにより、
図4(c)に示すように、振動影響が除去された秤量信号が得られる。
【0050】
なお、信号処理部71は、温度の変動による秤量信号のドリフトについても、所定の補正限界内の温度変動に対して、所定時間の間隔で、補正を行っている。この場合の補正を行う間隔となる所定時間は、本発明の所定期間に相当する。
【0051】
計量部72は、信号処理部71が出力する信号処理済の秤量信号に基づいて被計量物Wの計量値を算出(グラム換算)するようになっている。計量部72により算出された個々の計量値は、記憶部73に算出データとして記憶される。
【0052】
また、計量部72においては、搬入センサ4によって被計量物Wが秤量コンベア32に搬入されたことが検知されてから、
図5(b)に示すように所定の基準時間Tkが経過した以降に秤量部21から秤量信号が出力された被計量物Wに対して、計量値を算出するようになっている。
【0053】
ここで、基準時間Tkは、搬入センサ4で被計量物Wが秤量コンベア32に搬入を開始したことを検出してから、被計量物Wが秤量コンベア32に完全に乗り移り、さらに秤量部21から出力された秤量信号が安定するまでに必要な時間である。
【0054】
より詳しくは、基準時間Tkは、秤量コンベア32の速度(m/min)、秤量コンベア32の矢印B方向の長さ(mm)および被計量物Wの搬送方向である矢印B方向の長さ(mm)、被計量物Wのサイズやラインの処理能力、その他の条件などに基づいて設定される。
【0055】
また、
図5(b)に示すように、基準時間Tkが経過すると、被計量物Wは、
図5(a)に示すように搬入開始検出位置P0からL1だけ移動して質量測定位置Psに到達し、質量測定位置Ps以降に計量が行われる。
【0056】
また、計量値の算出は、基準時間Tkが経過した以降、被計量物Wが秤量コンベア32から搬出されるまでの測定期間Ts(
図5(b)参照)において行われる。この測定期間Tsは本発明における所定期間に対応する。
【0057】
なお、計量部72においては、被計量物Wの品種(特に、サイズ)に応じて、その測定範囲、測定能力および検査精度などの検査条件(パラメータ)が選択されるようになっており、被計量物Wの品種に応じて、例えば、測定範囲が6g〜600g、測定能力が最大150個/minで選択されるようになっている。
【0058】
この場合、被計量物Wの1個当たりの基準時間Tkは、最小400msecに設定されていることになり、基準時間Tkは400msec以上であればよいが、被計量物Wのサイズ、ラインの処理能力、生産その他の条件により設定されるようになっている。
【0059】
記憶部73は、記憶媒体などから構成されており、秤量コンベア32による被計量物Wの所定の搬送条件、および信号処理部71における所定の信号処理条件を含む条件パラメータを被計量物Wの品種に対応させて記憶するようになっている。
【0060】
記憶部73には、被計量物Wの品種毎に付された各品種番号に対応して、搬送速度、LPF(Low Pass Filter)特性が記憶されている。また、記憶部73には、被計量物Wの良否を判定するための良品範囲として、上限および下限の基準値が記憶されている。
【0061】
ここで、搬送速度は、被計量物Wを搬送する搬送部3の速度であり、LPF特性は、どのような特性のローパスフィルタであるかを示すものであり、良品範囲とは、良品と判定される被計量物Wの重量の範囲である。
【0062】
これらの記憶情報は、設定部11からの設定操作または外部機器との接続により予め記憶されるようになっている。記憶部73は、計量値、良否判定結果等の種々のデータを記憶するようになっている。
【0063】
制御部74は、被計量物Wの品種に応じて記憶部73から所定の搬送条件および所定の信号処理条件を読み出して秤量コンベア32および信号処理部71をそれぞれ制御するようになっている。
【0064】
また、制御部74は、記憶部73に記憶している複数の品種に対応する条件パラメータを順次切り換えて搬送部3および信号処理部71を制御するようになっている。また、制御部74は、図示しないモータの回転速度(rpm)を駆動制御して、搬送部3による被計量物Wの搬送速度を制御するようになっている。
【0065】
選別部76は、判定回路などから構成されており、計量部72が算出した計量値と良否判定基準値との比較に基づく良否判定結果、および影響度算出部120が算出した影響度に基づく影響有無判定結果の双方に基づいて、被計量物Wを選別する方向を判定して選別信号を出力するようになっている。また、選別信号は、重量選別装置1の後段に接続された振分部5に出力され、被計量物Wが計量による良品と不良品、環境変動を受けた計量品として選別されるようになっている。さらに、これら判定結果は、記憶部73に出力され、各被計量物Wについての判定結果が記憶されるようになっている。選別部76の詳しい構成については後述する。なお、計量部72が算出した計量値を用いた良否判定の他に、複数の区切りでランク分けする重量ランクのランク判定結果に基づいて選別信号を出力するようにしてもよい。
【0066】
モード切換部77は、制御部74に指令を出し、重量選別装置1の動作モードを、本稼働モードと設定モードとの間で切り換えるものである。ここで、本稼働モードとは、重量選別装置1が被計量物Wの計量、重量の算出および良否判定を行う通常の動作モードのことであり、設定モードとは、運転モードの動作のための各種パラメータの設定をしたり、運転モードの動作を正常に行うことができるか否かの動作確認のための動作モードである。
【0067】
表示部10は、
図1に示すように、装置本体部2の搬送部3側の上端部に設けられ、液晶ディスプレイなどの表示デバイスで構成される。表示部10は、重量選別装置1の動作状態、被計量物Wの計量値、判定結果を表示したり、パラメータの設定や動作確認に関する表示をするようになっている。なお、表示部10と設定部11とを一体化してタッチパネルとして構成し、表示部10に表示された数字、文字などが設定部11からタッチ操作で入力される構成にしてもよい。
【0068】
振分部5は、重量選別装置1の後段に接続されており、振分機構部5aおよび搬送ベルト5bにより構成されている。振分機構部5aは、3方向に振分け可能なフリッパ機構により構成されている。
【0069】
振分機構部5aは、計量による良品と不良品、環境変動を受けた計量品との3方向に振分け可能であればよく、例えば、ドロップアウト機構、エアジェット機構、押出し機構などを複数段用いた振分機構で構成してもよい。
【0070】
また、搬送ベルト5bは、ローラ5cおよびローラ5cに対向して配置されるローラ(不図示)と、これらのローラに巻き付けられている無端状の搬送ベルトとして構成されており、測定を終了した被計量物Wを所定の速度で下流側に搬送するようになっている。
【0071】
本実施の形態では、
図1に示すように、重量選別装置1は、環境計測部100と、影響度算出部120と、を備える。
【0072】
図6に示すように、環境計測部100は、秤量部21に作用する物理量を計測して環境データとして出力するようになっている。環境計測部100は、振動センサ101、気圧センサ102、温度センサ103および湿度センサ104を有している。
【0073】
ここで、重量選別装置1には、他の装置や車両で発生した振動や、設置された部屋のドアの開閉により生じる気圧変動や、他の装置や自機の発熱による温度変動および湿度変動が作用する。このような振動、気圧変動、温度変動、湿度変動は、秤量部21による被計量物Wの荷重の計測に悪影響を及ぼすことがある。
【0074】
具体的には、信号処理部71で秤量信号の補正が行われていても、これらの環境の変動が突発的であったり、補正範囲を超える大きさであった場合、補正後の秤量信号に環境の変動の影響が残ってしまう。このため、本来であれば不良品と判定されるべき被計量物Wが、良品と判定されてしまう。そこで、重量選別装置1は、環境計測部100により計測した振動、気圧変動、温度変動、湿度変動に基づいて、選別部76が環境変動の影響を受けて計量された被計量物Wを選別するための選別信号を出力できるようにしている。
【0075】
振動センサ101は、秤量部21の起歪体の固定端に設けられており、秤量部21に作用する振動(変位)を計測するようになっている。振動センサ101は、秤量部21と周波数特性が等しい1軸以上の加速度センサから構成されている。
【0076】
本実施形態では、振動センサ101は、X軸、Y軸、Z軸の3軸の加速度を検出する1つの3軸加速度センサから構成されており、起歪体の固定端における振動のX軸方向、Y軸方向、Z軸方向の各方向の振動成分を検出して出力するようになっている。
【0077】
ここで、X軸方向は、ベルトコンベア14による被計量物Wの搬送方向であり、Y軸方向は、水平面上における被計量物Wの搬送方向と直交する方向(ベルトコンベア14の幅方向)であり、Z軸方向は鉛直方向である。また、振動センサ101としては、起歪体の固有振動数よりも高い固有振動数を持つ加速度センサが用いられている。
【0078】
気圧センサ102は、秤量部21に作用する気圧を計測するものであり、気圧の絶対圧を計測する絶対圧センサから構成されている。温度センサ103は、秤量部21に作用する温度を計測するものであり、湿度センサ104は、秤量部21に作用する湿度を計測するものである。
【0079】
なお、振動センサ101、気圧センサ102、温度センサ103および湿度センサ104はそれぞれ図示しないA/D変換器と感度補正部とを備えている。A/D変換器は、検出した信号をA/D変換器によりアナログ信号からデジタル信号に変換している。感度補正部は、検出した信号に対して所定の感度比によりそれぞれ振幅補正を行っている。
【0080】
影響度算出部120は、環境計測部100が計測した環境データを受けて、環境データの変動が計量値に与える影響度を算出するようになっている。影響度算出部120は、所定期間での環境データの変動量が大きくなるに連れて影響度が大きくなるように影響度を算出する。
【0081】
ここで、環境データの変動量は、振動センサ101からの変位の変動量、気圧センサ102からの圧力の変動量、温度センサ103からの温度の変動量、および湿度センサ104からの湿度の変動量である。
【0082】
影響度算出部120が算出する影響度は、例えば、所定期間での環境データの変動量を段階的に評価した影響レベルである。影響度算出部120は、例えば、
図7(b)の右側に示すように、環境データの変動量を影響レベル1から影響レベル5の5段階に評価する。
図7(a)、
図7(b)のグラフは、環境データとして温度変動があったときの秤量信号と影響度を示しており、この場合、
図7(b)の影響レベルはある時点の温度を基準にしてその変動率(%)といった指標で表される。具体的には、レベル1が±2%、レベル2が±3%、レベル3が±5%、レベル4が±8%といった値が対応付けられていて、運転開始時の温度を基準値として温度の変動レベルが設定される。
【0083】
また、影響度算出部120が算出する影響度は、例えば、所定期間での環境データの変動量を計量値の増減としてグラム換算した換算値である。
【0084】
影響度算出部120が算出する影響度としての換算値は、例えば、
図7(b)に示す影響度のグラフとなる。
図7(b)において、グラム換算された換算値としての影響度を縦軸に示し、時間を横軸に示している。このグラフでは、影響度が許容範囲から外れる部分が2つあることを示している。
【0085】
図7(b)では、所定期間としての測定期間Tsに、影響度が許容範囲から外れる部分がある。このような、測定期間Ts内に許容範囲から外れる程度の影響度があると、計量部72で算出される計量値は、正しく算出されていないことになる。
【0086】
なお、影響度が振動から算出されたものである場合、ある時点の影響度における換算値は振動センサ101が計測した変位量に対応する。したがって、振動の影響度は、温度や湿度の影響度と比較して、短い期間に一方向と他方向に変動を繰り返す。気圧の影響度も、ドアの開閉による気圧変動は、短い期間に一方向と他方向に変動を繰り返す。
【0087】
選別部76は、
図8に示すように、計量値が所定の基準範囲内であるか否かに基づいて良否判定を行う計量判定部81と、影響度が所定の許容範囲内であるか否かに基づいて計量判定部81の判定に対する影響の有無判定を行う影響判定部82を備える。
【0088】
選別部76は、影響判定部82の結果が影響有のときには、計量判定部81の判定が環境変動の影響を受けた計量値で行われたものとして、環境変動の影響を受けた計量値で良否判定が行われた被計量物Wを所定の選別方向に選別するための選別信号を出力し、影響判定部82の判定結果が影響無のときには、計量判定部81の判定結果に応じて、環境変動の影響を受けた計量値で良否判定が行われた被計量物Wの選別方向と異なる他の良否判定に応じた選別方向に選別するための選別信号を出力するようになっている。
【0089】
すなわち、計量判定部81の判定結果より影響判定部82の影響有無判定結果が優先され、影響有のときには、計量判定部81の判定結果に左右されないで、環境変動を受けた計量値で良否判定された被計量物Wを選別するための選別信号が出力される。
【0090】
計量判定部81は、計量部72から出力された被計量物Wの重量として計量値を受けると、記憶部73に予め記憶されている重量の上限値および下限値を読み出し、算出した被計量物Wの重量と上限値および下限値とをそれぞれ比較し、上限値および下限値で決定される重量の許容範囲に被計量物Wの重量が入っているか否かの良否を判定するようになっている。
【0091】
影響判定部82は、影響度が所定の許容範囲から外れた場合、影響有と判定するようになっている。例えば、ある被計量物Wにおいて、
図7(b)に示すように、測定期間Tsの間に影響度が許容範囲から外れた場合、
図7(c)に示すように測定期間Tsの終了のタイミングで影響有と判定する。なお、測定期間Ts外で許容範囲から外れる影響度については判定対象外の期間で判定は行われない。
【0092】
ここで、計量部72から出力された被計量物Wの計量値が、
図9のようにg1であったとする。この場合に環境変動の影響を受けたとすると、本来の計量値はg2であり、環境変動によって計量値が基準範囲外から基準範囲内のg1に変化したことになり、本来は不良品として判定されるべき被計量物Wが良品として良品判定されてしまう。このような場合、影響度が所定の許容範囲から外れていたら、影響判定部82は環境変動を受けた計量品として選別するための選別信号を出力する。また、影響度が所定の許容範囲内であれば前述の補正部78で影響度が補正されて本来の被計量物Wの計量値g2が計量値として計量部72から出力され、計量判定部81によって不良品として判定されることになる。
【0093】
なお、補正部78が無い構成とした場合には、計量値から換算値を減算した影響減算値に基づいて判定した選別方向と計量値に基づいて判定した選別方向とが一致しない場合には、不良品とみなして選別方向を判定するようにしてもよい。
図9の場合、計量値がg1、計量値から換算値を減算した影響減算値がg2であり、g1に基づいて判定した選別方向は良品方向、g2に基づいて判定した選別方向は不良品方向となって選別方向が一致せず不良品とみなして選別される。このように判定することで、不良品が良品として誤選別されることを防止することができる。
【0094】
選別部76で判定された良否判定結果は表示部10に出力され、良品または不良品として表示されるようになっている。また、影響無と判定したとき、良否判定結果に対応する選別信号が重量選別装置1の後段に接続された振分部5に出力され、被計量物Wが良品または不良品として選別されるようになっている。さらに、この良否判定結果は、記憶部73に出力され、各被計量物Wについての良否判定結果が記憶されるようになっている。
【0095】
また、記憶部73には、検査済の被計量物Wの影響度が記憶されるようになっている。記憶部73に記憶された影響度は、その許容範囲を示す影響度リミットとともに
図10に示すような態様で表示部10に表示されるようになっている。
【0096】
図10において、表示部10の左側半分にはデータ表示領域10iが設けられており、このデータ表示領域10iには、環境計測部100により計測された環境データまたは計量波形が表示される。
図10では、データ表示領域10iには環境データとして振動のデータが表示されている。
【0097】
表示部10の下部には、表示切替ボタン10aが設けられており、この表示切替ボタン10aを操作することで、データ表示領域10iに表示するデータを、振動、温度、計量波形の何れかに切り替えたり、または、振動と温度の一方に切り替えたり、または、所定の環境データと計量波形の一方に切り替え可能になっている。
【0098】
また、表示部10の下部には、重ね合わせボタン10bが設けられており、この重ね合わせボタン10bを操作することで、データ表示領域10iに2つ以上のデータを重ね合わせることができる。例えば、振動と温度と計量波形とを重ね合わせたり、振動と計量波形とを重ね合わせたり、温度と計量波形とを重ね合わせることができる。
【0099】
また、表示部10の下部には、拡大/縮小ボタン10cが設けられており、この拡大/縮小ボタン10cを操作することで、データ表示領域10iにおける表示内容の表示倍率を変更することができる。
【0100】
また、表示部10の下部には、戻るボタン10dが設けられており、この戻るボタン10dを操作することで、データ表示領域10iに環境データを表示する設置環境モニタ機能を終了することができる。
【0101】
また、表示部10の下部には、前ボタン10eおよび次ボタン10fが設けられており、前ボタン10eを操作することで1つ前の被計量物Wに対する環境データまたは計量波形データがデータ表示領域10iに表示され、次ボタン10fを操作することで次の被計量物Wに対する環境データまたは計量波形データがデータ表示領域10iに表示されるようになっている。
【0102】
また、表示部10の右上には、判定結果表示領域10gが設けられており、この判定結果表示領域10gには、良否判定結果が表示される。
図10は、判定結果表示領域10gに"NG"の文字が表示され、良否判定結果が不良であったことを示している。
【0103】
以上説明したように、本実施の形態に係る重量選別装置1は、秤量部に作用し、秤量信号を変動させうる物理量を環境データとして計測する環境計測部100と、環境計測部100が計測した環境データを受けて、所定期間における環境データの変動に応じて計量値に与える影響度を算出する影響度算出部120と、影響度が所定の許容範囲内であるか否かに基づいて選別部76の判定に対する影響の有無を判定する影響判定部82と、を備える。
【0104】
そして、選別部76は、影響判定部82の判定結果が影響有のときには一の選別方向に選別するための選別信号を出力し、影響判定部82の判定結果が影響無のときには計量部72からの計量値による判定に応じて他の選別方向に選別するための選別信号を出力する。
【0105】
この構成により、選別部76は、影響判定部82の判定結果が影響有のときには一の選別方向に選別するための選別信号を出力し、影響判定部82の判定結果が影響無のときには計量値に応じて他の選別方向に選別する選別信号を出力するので、計量に影響を与える環境変動によって不良品が良品として誤選別されるのを防止することができる。
【0106】
また、本実施の形態に係る重量選別装置1において、影響度算出部120は、所定期間での環境データの変動量を計量値の増減量としてグラム換算した換算値を、影響度として算出する。
【0107】
この構成により、影響度算出部120により、所定期間での環境データの変動量を計量値の増減量としてグラム換算した換算値が影響度として算出されることで、ユーザーは、計量値の増減量としてグラム換算された換算値として影響度を把握できるので、影響判定部82が用いる許容範囲を適切に設定できる。このため、影響判定部82の判定が不要に厳格化するのを防止することができる。
【0108】
また、本実施の形態に係る重量選別装置1において、選別部76は、計量値から許容範囲内の換算値を減算した影響減算値に基づいて判定した選別方向と計量値に基づいて判定した選別方向とが一致しない場合には、不良品とみなして選別方向を判定する。
【0109】
この構成により、影響減算値に基づいて判定した選別方向と計量値に基づいて判定した選別方向とが一致しない場合には、たとえ小さな影響であっても選別方向の判定が変わってしまう可能性があることから、その被計量物Wを不良品とみなして選別方向を判定することにより、環境変動によって不良品が良品として誤選別されることをより確実に防止することができる。
【0110】
また、本実施の形態に係る重量選別装置1において、秤量部21は、被計量物Wを搬送する搬送部3を有し、影響度算出部120は、環境計測部100が計測する被計量物Wが搬送部3上にある期間の環境データの変動量に基づいて換算値を算出し、許容範囲内の換算値を用いて計量値を補正して選別部76に出力する補正部78を有する。
【0111】
この構成により、環境データの変動量に基づいて算出された換算値が、計量値の誤差と強い相関があるときに、この換算値を用いて計量値を補正することができ、不良品が良品として誤選別されることを防止した上で、計量値の精度を向上することができるようになる。
【0112】
また、本実施の形態に係る重量選別装置1において、影響度算出部120は、段階的なレベル値で表される影響レベルを影響度として算出し、影響判定部82は、影響レベルのうち所定のレベル値を許容範囲として設定する。
【0113】
この構成により、ユーザーは、計測された環境データの変動率といった指標を用いて、段階的な影響レベル値(レベル1〜レベル4など)を記憶しておき、このレベル値を選択することによって簡単に許容範囲を設定することができる。
【0114】
また、本実施の形態に係る重量選別装置1は、影響度を所定タイミングで記憶する記憶部73と、記憶部に記憶された影響度を許容範囲とともに表示する表示部10と、を備える。
【0115】
この構成により、ユーザーは、影響度と許容範囲とを表示部10において確認することで、影響度が許容範囲を超えた原因を特定し、重量選別装置1が設置されている製造設備を改善することができる。