(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2016-170911(P2016-170911A)
(43)【公開日】2016年9月23日
(54)【発明の名称】押圧スイッチ
(51)【国際特許分類】
H01H 13/10 20060101AFI20160826BHJP
H01H 13/52 20060101ALI20160826BHJP
【FI】
H01H13/10
H01H13/52 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2015-48710(P2015-48710)
(22)【出願日】2015年3月11日
(71)【出願人】
【識別番号】000102500
【氏名又は名称】SMK株式会社
(72)【発明者】
【氏名】加藤 裕一
【テーマコード(参考)】
5G206
【Fターム(参考)】
5G206AS17N
5G206AS17Z
5G206AS37N
5G206AS37Z
5G206CS04J
5G206HS16
5G206HS17
5G206HS23
5G206HW19
5G206HW43
5G206HW55
5G206KS16
5G206KS38
5G206KS40
5G206NS02
5G206PS08
5G206PS09
(57)【要約】 (修正有)
【課題】押圧スイッチと電気回路基板との半田付けによる実装において、追加の部品、工程および治具を加えることなく、半田から生じるフラックスが押圧スイッチと電気回路基板の隙間へ侵入する範囲を小さく抑え、押圧スイッチの操作の際の異音を低減することが可能であるスイッチを提供する。
【解決手段】押圧スイッチのケース10の外形底面17を、中央電極12から連続し前記外形底面側に露出する中央電極出力端子面20およびサイド電極13から連続し前記外形底面側に露出するサイド電極出力端子面21と同一面に形成される実装面18と、前記実装面より開口部11の開口方向に一定距離の段差を有して形成される逃げ面19と、前記実装面より前記開口部の開口方向とは反対方向に一定距離の段差を有して形成される載置面17とによって、載置面へのフラックスの侵入を防ぐことにより、異音を低減する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
中央電極と該中央電極の外側に位置するサイド電極が露出する内側底面を有する開口部が形成されたケースと、
前記中央電極と前記サイド電極との電気的導通の切り換えを行なうスイッチ機構と、
前記開口部を覆う天面と、該天面からほぼ垂直に開口部へ摺動可能に立設された摺動突出部とを有するステムとからなり、
前記ステムが外部からの力により押圧されることにより前記スイッチ機構がON状態となる押圧スイッチであり、
前記ケースの外形底面は、
前記中央電極から連続し前記外形底面側に露出する中央電極出力端子面および前記サイド電極から連続し前記外形底面側に露出するサイド電極出力端子面と同一面に形成される実装面と、
前記実装面より前記開口部の開口方向に一定距離の段差を有して形成される逃げ面と、
前記実装面より前記開口部の開口方向とは反対方向に一定距離の段差を有して形成される載置面と、からなることを特徴とする押圧スイッチ。
【請求項2】
前記スイッチ機構は、前記サイド電極に載置される外環部と該外環部から延出し前記中央電極に離間して位置する舌片部を有する導電性の薄板金属からなる接触子と、前記外環部に載置される底辺側基部と、前記舌片部に離間し且つ前記中央電極に向けて突起部を有する頂上基部とが傾斜部によって連続した弾性体と、からなる請求項1に記載の押圧スイッチ。
【請求項3】
前記実装面と前記逃げ面との段差は0.02mmから0.03mmの範囲で設定され、前記実装面と前記載置面との段差は0.025mmから0.035mmの範囲で設定されることを特徴とする請求項1または請求項2記載の押圧スイッチ。
【請求項4】
前記ケースは略立方形状であり、前記載置面は少なくとも前記外形底面の四隅に形成され、前記実装面は前記外形底面の対向する一対の側辺のほぼ中央に形成されていることを特徴とする請求項1または請求項2、請求項3記載の押圧スイッチ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、押圧動作により動作するスイッチに関するものであり、特にスイッチを電気回路基板に半田付けにて実装する際において、スイッチの外形底面と電気回路基板との間に侵入するフラックスの範囲を小さくすることが可能であるスイッチ構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図7は従来の押圧スイッチ100の断面を示したものである。従来の押圧スイッチ100はケース101、接触子102、弾性体103、ステム104からなる。ケース101は一方が開口し、開口部底面にはほぼ中央に導電性金属の端子が露出した中央電極と、該中央電極の周囲に配置された導電性金属の端子が露出したサイド電極とが一体成形された開口部105が形成され、各端子の一端は平面である外形底面107に露出し押圧スイッチ100が実装される基板にはんだ付けで接続され、後述するステム104の摺動突出部106が開口部105に摺動することとなる。
【0003】
ケース101の開口部105には、円環の内側に中央方向に延出した舌片を有する導電性の薄板金属からなる接触子102が組み入れられ、接触子102の円環部がサイド電極に載置され、中央部の舌片部先端は中央電極に離間することとなる。この接触子102の上には略円錐形状のラバー等の弾性絶縁材料からなる弾性体103が、弾性体の環状底辺を接触子102の円環に載置して配置される。さらにその上から開口部105を覆う平面状の天面と、天面からほぼ垂直に突出し、開口部105に挿入され摺動可能な摺動突出部106と、ケースの係止部に係止される天面の縁部から突出した係止片とを有するステム104が、係止片をケース101に係合することにより組み入れられ押圧スイッチ100が組み立てられる。
【0004】
こうして組立てられた押圧スイッチ100は、ステム104の天面を押圧することにより、略円錐形状の弾性体103の頂部が押圧され頂部の内側に形成された開口部105の底面方向に突出した凸部が接触子102の舌片を押圧して中央電極に接触することとなり、これによって中央電極とサイド電極とが接触子102を介して電気的に導通し、スイッチがON状態となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−238480号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この種の押圧スイッチ100は、電気回路基板に半田付けにて実装され、電気機器に組み入れることとなるが、押圧スイッチが電気回路基板に半田付けされる際には半田からフラックスが生じ、このフラックスが押圧スイッチの外形底面107と電気回路基板との隙間の広い範囲にわたって入り込み、フラックスが粘着性をもっていることから、押圧スイッチ100に押圧操作を加えると、外形底面107と電気回路基板とがフラックスを介して微動しこれによって異音が発生することとなっていた。また、半田も外形底面107に露出する端子の回りにおいて押圧スイッチ100と電気回路基板との間に侵入し、これによって押圧スイッチ100が傾いた状態で電気回路基板に実装されてしまうといった問題を抱えていた。
【0007】
本発明は上述の問題点に鑑みてなされたもので、押圧スイッチと電気回路基板との半田付けによる実装において、追加の部品、工程および治具を加えることなく、半田から生じるフラックスが押圧スイッチと電気回路基板の隙間へ侵入する範囲を小さく抑え、且つ半田が押圧スイッチと電気回路基板との間に入り込むことによる押圧スイッチの傾きを抑え、押圧スイッチの操作が行われた際に異音なく確実なスイッチの切り換えが得られるスイッチ構造を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この従来の問題を解決するために、請求項1記載の押圧スイッチは、中央電極と該中央電極の外側に位置するサイド電極が露出する内側底面を有する開口部が形成されたケースと、前記中央電極と前記サイド電極との電気的導通の切り換えを行なうスイッチ機構と、前記開口部を覆う天面と、該天面からほぼ垂直に開口部へ摺動可能に立設された摺動突出部とを有するステムとからなり、前記ステムが外部からの力により押圧されることにより前記スイッチ機構がON状態となる押圧スイッチであり、前記ケースの外形底面は、前記中央電極から連続し前記外形底面側に露出する中央電極出力端子面および前記サイド電極から連続し前記外形底面側に露出するサイド電極出力端子面と同一面に形成される実装面と、前記実装面より前記開口部の開口方向に一定距離の段差を有して形成される逃げ面と、
前記実装面より前記開口部の開口方向とは反対方向に一定距離の段差を有して形成される載置面と、からなることを特徴とするものである。
【0009】
請求項2記載のスイッチは、請求項1の構成に加え、前記スイッチ機構は、前記サイド電極に載置される外環部と該外環部から延出し前記中央電極に離間して位置する舌片部を有する導電性の薄板金属からなる接触子と、前記外環部に載置される底辺側基部と、前記舌片部に離間し且つ前記中央電極に向けて突起部を有する頂上基部とが傾斜部によって連続した弾性体と、からなることを特徴とするものである。
【0010】
請求項3記載のスイッチは、請求項1又は請求項2の構成に加え、前記実装面と前記逃げ面との段差は0.02mmから0.03mmの範囲で設定され、前記実装面と前記載置面との段差は0.025mmから0.035mmの範囲で設定されることを特徴とするものである。
【0011】
請求項4記載のスイッチは、請求項1又は請求項2、請求項3の構成に加え、前記ケースは略立方形状であり、前記載置面は少なくとも前記外形底面の四隅に形成され、前記実装面は前記外形底面の対向する一対の側辺のほぼ中央に形成されていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0012】
請求項1の発明によると、ケースの外形底面が段差を有する実装面、載置面、逃げ面にて構成されることにより、押圧スイッチが電気回路基板に半田により実装される際、半田接合がなされる中央電極出力端子面、サイド電極出力端子面、およびそれらの周囲に形成された実装面と、実装面との段差がある載置面とによって形成される空間に余分な半田が入り込むこととなり、またフラックスは逃げ面の表面を伝わり載置面との段差を越えて載置面に進入することがなく、これによってフラックスの侵入範囲は逃げ面の範囲内に留まることとなり、逃げ面と載置面とは大きな段差があることから押圧操作が行われた際にもフラックスによる異音の発生がなくなる。
【0013】
請求項2の発明によると、スイッチ機構部が導電性の薄板金属からなる接触子と、弾性体とから構成されているため、スイッチの荷重特性が弾性体によって決定され、中央電極とサイド電極との導通が導電性金属からなる接触子によって行われるため、荷重特性にバリエーションをもたせることが可能であり、且つ確実な接触を可能とし大きな動作ストロークで安定したスイッチの切り換えが行なえることとなる。
【0014】
請求項3の発明によると、実装面と逃げ面との段差を0.02mmから0.03mmの範囲で設定することによりケースの成形に支障をきたすことなくフラックスの載置面への侵入を防止でき、実装面と載置面との段差を0.025mmから0.035mmの範囲で設定することにより電気回路基板と中央電極出力端子面およびサイド電極出力端子面との半田接続が適切に行われることとなる。
【0015】
請求項4の発明によると、ケースは略立方形状であり、載置面は前記外形底面の四隅に形成されている、つまり載置面が形成されている場所は押圧操作による押圧スイッチの傾きが最も大きくなり得る箇所であるため、その場所に載置面を形成し電気回路基板に載置することにより、電気回路基板と実装面および逃げ面との空間が確保され、フラックス、半田の侵入による傾き、異音の発生が抑えられ、安定したスイッチの切り換えが行えることとなる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図4】本発明に係る押圧スイッチを、半田ペーストを塗布した電気回路基板に実装した際の
図1のa−a線における断面図
【
図5】本発明に係る押圧スイッチを、半田ぺ−ストを塗布していない電気回路基板に載置した際の
図1のb−b線における断面図
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下本発明の実施の形態を図面を参照して詳細に説明する。
図1乃至
図5は本発明の実施の形態を示したものであり、
図1は本発明に係る押圧スイッチの正面斜視図、
図2は本発明に係る押圧スイッチの底面斜視図、
図3は本発明に係る押圧スイッチの分解斜視図、
図4は本発明に係る押圧スイッチを、半田ペーストを塗布した電気回路基板に実装した際の
図1のa−a線における断面図、
図5は本発明に係る押圧スイッチを、半田ぺ−ストを塗布していない電気回路基板に載置した際の
図1のb−b線における断面図、
図6は
図5のc範囲を拡大した断面図である。押圧スイッチ01は、中央電極12およびサイド電極13を一体成形したケース10、接触子50、弾性体30、ステム40からなる。なお本発明を説明するにあたり、
図4の紙面における上下方向を本発明の押圧スイッチにおける上下方向とする。
【0018】
ケース10は絶縁材料からなる略立方体であり、ほぼ中央に導電性金属からなり表面を露出させた中央電極12を配置し中央電極12の周囲には同じく導電性金属からなる複数のサイド電極13を配置した略円状の内側底面14を有する一方側(上方側)に開口15を有する略直方状の開口部11が形成され、一対の側面には後述するステム40の係止片43が係止されることとなる凹部22が形成される。また、
図2、
図5、
図6に示すように外形底面16は、開口15方向への異なる高さで形成された互いに段差を有する3種類の平面で構成されており、その内の一つの面は実装面18であり、この実装面18には中央電極12から連続し外部の電気回路基板Bに半田にて実装される中央電極出力端子の半田実装面がこの実装面18と同一面で外部に露出する。同様に、この実装面18にはサイド電極13から連続し外部の電気回路基板Bに半田にて実装されるサイド電極出力端子の半田実装面がこの実装面18と同一面で外部に露出する。なお本説明においてはそれぞれの半田実装面を中央電極出力端子面20、サイド電極出力端子面21とする。次にもう一つの面は逃げ面19であり、実装面18より開口部11の開口15方向に一定距離の段差を有して形成される。さらにもう一つの面は載置面17であり、実装面18より開口部11の開口15方向とは反対方向に一定距離の段差を有して形成され、外部の電気回路基板Bに押圧スイッチ01を実装する際に電気回路基板Bに載置されることとなる面である。また高さの異なる実装面18、載置面17、逃げ面19は外形底面16に垂直な段差壁によって区画され、本説明においては実装面18と逃げ面19とを区画する段差壁を実装面段差壁25とし、載置面17と逃げ面19とを区画する段差壁を載置面段差壁26とする。
【0019】
接触子50は薄板状の導電性金属からなり、環状の外環部51と、外環部51の内側縁から中央部分に向けて外環部51に対して厚み方向に一定角度を有して延出した舌片部52とからなり、舌片部52の先端53は円板状に形成され外環部51のほぼ中央部に位置して形成されたものである。
【0020】
弾性体30は絶縁材料であるラバーからなる内側が中空の略円錐形状に形成されており、底辺側にはほぼ垂直に切り立ち、円錐のテーパー部よりも厚く形成された底辺側基部31を有し、そして頂上部にも厚く形成された頂上基部32が形成され、頂上部より中空な内部に向かって押圧突起部34が突出している。
【0021】
ステム40は絶縁材料からなりケース10の開口部11を覆う略正方形状の天面41と天面41の四箇所の隅から延出する四個の摺動突出部42とからなる。摺動突出部42は、開口部11の四隅の摺接部27に挿入され摺動可能であり水平方向の断面は略二等辺三角形状に形成されており、後述する組み立てにより、摺動突出部42が開口部11に挿入された際には、前記二等辺三角形の等しい二辺が開口部11の角部の二つの側面に摺動することとなる。また、天面41の一対の側辺の各々の中央辺りからは天面に垂直に摺動突出部と同じ方向に係止片43が形成されており、係止片43の先端にはケース10の凹部22に係止されるよう外側に突出した係止部が形成されている。
【0022】
そして、以上の部品を用いて以下のように組み立てることにより押圧スイッチ01は完成する。まず、ケース10の開口部11に接触子50を組み入れる。この際、接触子50の外環部51がサイド電極13に載置され、且つ舌片部52の先端53が中央電極12に離間するよう位置される。そして、この接触子50の外環部51に弾性体30が底辺側基部31を載置して組み入れられ、これによって弾性体30の押圧突起部34が接触子50の先端53に離間して位置することとなる。
【0023】
このように開口部11に接触子50と弾性体30を入れた状態で最後にステム40を組み込む。ステム40の四箇所の摺動突出部42を開口部11の摺接部27に挿入させ、ステム40の係止片43をケース10の凹部22に係止させることによって組立は完了し、開口部11がステム40の天面41で覆われ、さらに天面41が弾性体30の頂上基部32を僅かに押圧した状態で押圧スイッチの初期状態となる。
【0024】
そして、この完成された押圧スイッチ01は電気回路基板Bに実装される。まず、表面に形成された図示しない導電パターンに半田ペーストAが塗布された電気回路基板Bに対して、押圧スイッチ01の中央電極出力端子面20、サイド電極出力端子面21の各々を対応する導電パターンに位置決めする状態で、押圧スイッチ01を電気回路基板Bに載置し、その後、リフロー半田槽にて中央電極出力端子面20、サイド電極出力端子面21と導電パターンとの半田接合を行い、押圧スイッチ01と電気回路基板Bとを電気的に接続する。
【0025】
半田接合の際の押圧スイッチ01の状況を詳しく述べると、
図4、
図5、
図6に示すように、まず押圧スイッチ01を電気回路基板Bに載置した際、押圧スイッチ01の外形底面16を構成する載置面17が電気回路基板Bに接触し押圧スイッチ01が載置されることとなる。載置面17は、実装面18より開口部11の開口15方向とは反対方向に一定距離の段差を有して形成されているため、押圧スイッチ01を電気回路基板Bに載置した状態においては、載置面17よりも開口部11の開口15方向に一定距離の段差を有して実装面18が電気回路基板Bの表面に対向することとなり、
図4に示すように実装面18と同一面である中央電極出力端子面20、サイド電極出力端子面21は対応する導電パターンの半田ペーストAに接する、もしくは半田ペーストAを若干押し潰す状態で位置することとなる。なお、
図6に示すように載置面17と実装面18との段差をここでは実装段差28とし、本実施例においては0.03mmに設定されている。この段差0.03mmは半田ペ−ストの厚みに対応して設定したものである。
【0026】
次に、逃げ面19と実装面18および載置面17との関係について述べると、
図6に示すように、逃げ面19は実装面18から開口部11の開口15方向に一定距離の段差で形成された面であり、よって載置面17と逃げ面19との段差は、逃げ面19と実装面18との段差に実装段差28を加えた段差であり、本実施例においては0.05mmに設定されている。なお、ここでは載置面17と逃げ面19との段差を逃げ段差29とする。
【0027】
つまり外形底面16は、載置面17と、載置面17から開口15方向に0.03mmの実装段差28で形成された実装面18と、載置面17から開口15方向に0.05mmの逃げ段差29で形成された逃げ面19から構成され、押圧スイッチ01が電気回路基板Bに実装され半田接続される際には、実装面18と同一面の中央電極出力端子面20およびサイド電極出力端子面21が半田を介して各々の対応する導電パターンに接続されこととなる。
【0028】
この際、半田は中央電極出力端子面20およびサイド電極出力端子面21の範囲のみに止まらず、中央電極出力端子面20およびサイド電極出力端子面21の範囲を超えて押圧スイッチ01の外形底面16と電気回路基板Bの間に広がる場合もあり得る。しかしながら本発明においては、実装面18が中央電極出力端子面20およびサイド電極出力端子面21よりも大きな範囲で形成されており電気回路基板Bとの間に
実装段差28による実装空間60が形成されるため、余分に広がった半田はこの実装空間60に収まることとなり、余分に広がった半田によって押圧スイッチ01が電気回路基板Bに対して傾くという現象を防ぐことが可能となる。
【0029】
また、半田からはフラックスが生じるが、押圧スイッチ01においては、実装面18の範囲を超えて逃げ面19に広がったフラックスは逃げ面19の表面を伝わった後、逃げ面19と載置面17とに垂直に立設する逃げ段差29を構成する壁によってフラックスの載置面17への侵入が抑えられる。この際、逃げ面19と載置面17つまり電気回路基板Bの表面との距離は逃げ段差29である0.05mmが確保されており、逃げ面19の表面に付着したフラックスの厚みが0.05mmよりも小さいため、逃げ面19の範囲およびフラックスの侵入が抑えられる載置面17の範囲においては電気回路基板Bと押圧スイッチ01とがフラックスを介して接着されることがなくなり、外形底面16と電気回路基板Bとの隙間に介在し両者に接着するフラックスの範囲が小さく抑えられることとなる。これによって押圧スイッチ01に押圧動作を加えた際に発生するフラックスの粘着性が原因で発生する異音を低減することが可能となる。
【0030】
さらに、本実施例においては押圧スイッチ01の外形底面16は略正方形であり、載置面17は略正方形の四隅と略正方形の一対の側辺のほぼ中央に形成されているために、押圧動作による押圧スイッチ01の電気回路基板Bに対する傾きをほぼ最大に抑制することが可能であり、これによって逃げ面19に付着したフラックスが逃げ段差29の許容を超えて電気回路基板Bに接着する現象をより確実に防止することが可能となる。
【0031】
そして、このように実装された押圧スイッチ01は以下のように動作することとなる。まず初期状態から押圧スイッチ01は、ステム40の天面41のほぼ中央を押圧されることにより天面41はほぼ水平を保った状態で下方向に移動し、弾性体30の頂上基部32が押圧され、押圧突起部34が接触子50の先端53に接触し、更なる押圧操作を受けて先端53が中央電極12に接触することとなり、これによって中央電極12とサイド電極13が接触子50を介して導通し、押圧スイッチ01がON状態となる。そして、この押圧動作の過程において弾性体30が円錐形状であることから、ある一定の押圧ストロークにおいて円錐形状が略反転され、これによってクリック感を伴った押圧操作がなされることとなる。
【0032】
以上のように、押圧スイッチ01は、電気回路基板Bへの半田による実装によって起こり得る傾きが防止され、且つ押圧動作の際のフラックスによる異音の発生が低減されることとなる。また本実施例においては外形底面を略正方形とし、載置面を先に述べたように四隅に配置し、実装面を略正方形の一対の側辺のほぼ中央に配置し、残りの範囲を逃げ面とした形態で示したが、これに限るものではなく、載置面、実装面、逃げ面のレイアウトは上記の効果が得られるものであれば自由に配置することが可能である。
【0033】
さらに載置面、実装面、逃げ面における段差であるが、本実施例では実装段差を0.03mm、逃げ段差を0.05mmとしたが、これに限るものではなく、実装段差は0.02mmから0.04mmの範囲、逃げ段差は0.05mm以上、であってもよい。
【符号の説明】
【0034】
01 押圧スイッチ 10 ケース 11 開口部 12 中央電極 13 サイド電極 14 内側底面 15 開口 16 外形底面 17 載置面 18 実装面 19 逃げ面 20 中央電極出力端子面 21 サイド電極出力端子面 22 凹部 24 外形側面 25 実装面段差壁 26 載置面段差壁 27 摺接部 28 実装段差 29 逃げ段差30 弾性体 31 底辺側基部 32 頂上基部 33 傾斜部 34 押圧突起部 40 ステム 41 天面 42 摺動突出部 43 係止片 50 接触子 51 外環部 52 舌片部 53 先端 60 実装空間 100 従来の押圧スイッチ 101 ケース 102 接触子 103 弾性体 104 ステム 105 開口部 106 摺動突出部 107 外形底面 A 半田ペ−ストB 電気回路基板