特開2016-171606(P2016-171606A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特開2016-171606熱電変換器及びこの熱電変換器を用いた発電方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2016-171606(P2016-171606A)
(43)【公開日】2016年9月23日
(54)【発明の名称】熱電変換器及びこの熱電変換器を用いた発電方法
(51)【国際特許分類】
   H02N 11/00 20060101AFI20160826BHJP
   H01L 35/32 20060101ALI20160826BHJP
【FI】
   H02N11/00 A
   H01L35/32 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2015-47775(P2015-47775)
(22)【出願日】2015年3月11日
(71)【出願人】
【識別番号】591150432
【氏名又は名称】伊原電子工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】500433225
【氏名又は名称】学校法人中部大学
(74)【代理人】
【識別番号】100129676
【弁理士】
【氏名又は名称】▲高▼荒 新一
(74)【代理人】
【識別番号】100158067
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 基
(72)【発明者】
【氏名】川島 信
(57)【要約】
【課題】人体に装着することで、人体から発生した汗を利用し、バイタルセンサを使用するために必要とされる電力を十分に供給することができる熱電変換器を提供することが可能となる。
【解決手段】熱電変換器20は、布部材22を人体の一部に巻き付け、人間の不感蒸泄や発汗によって蒸発した汗が布部材22に吸湿又は吸収され布部材22の方面から蒸発することにより、布部材22と基部材24を介して連接する熱電変換素子26の外側面を冷却すると共に、熱電変換素子26の内側面が体温で暖められることで熱電変換素子26の両面側で温度差を作りだし、発電することができる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
人体に装着して使用される熱電変換器であって、
前記人体の肌の少なくとも一部を覆い、吸湿性及び吸水性の少なくとも1つを有する布部材と、
前記布部材の前記人体側に連接し、熱伝導性を有し、かつ、前記布部材の表面積以下の表面積を有する基部材と、
前記基部材の前記人体側に設けられた熱電変換素子と、
を備えたことを特徴とする、
熱電変換器。
【請求項2】
前記熱電変換素子は、互いに間隔を有する状態で複数備えられていることを特徴とする、
請求項1に記載の熱電変換器。
【請求項3】
前記基部材は、柔軟性及び水透過性を有することを特徴とする、
請求項1又は2に記載の熱電変換器。
【請求項4】
前記基部材と前記布部材とは、前記布部材の一部に前記基部材の一部を編み込むことにより連接していることを特徴とする、
請求項1から3のいずれか1項に記載の熱電変換器。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の熱電変換器を用いて発電する方法であって、
前記布部材の表面に水分が供給されるステップ、
を含むことを特徴とする、
熱電変換器を用いて発電する発電方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱電変換器及びこの熱電変換器を用いた発電方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、体温と外気との温度差で発電する熱電変換モジュールが知られている。例えば、特許文献1では、透水性及び熱伝導性を有する金属製の第1の基板と、前記第1の基板上に配設された熱電変換素子と、前記第一の基板の上で、前記熱電変換素子周囲の少なくとも一部の領域に配設された、透水性を有する断熱体と、前記熱変換素子及び前記断熱体上に配設され、透水性及び熱伝導性を有する第2の基板とを含み、皮膚表面からの水分を第1の基板から気化させて、その気化熱により第2の基板表面の温度を低下させることによって、大きな発電量を得る熱電変換モジュールが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012−174940号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、この熱電変換モジュールでは、第1の基板に直径が約50マイクロメートルの微細な貫通孔を形成することで、第1の基板から水分の蒸発を促し、気化熱により第2の基板表面の温度を低下させているが、継続的に十分な量の発電を行うことができないという課題がある。
【0005】
本発明はこの課題に鑑みなされたものであり、人体に装着することで、人体から発生した汗を利用し、バイタルセンサを使用するために必要とされる電力を継続的に十分に供給することができる熱電変換器を提供することを主目的とする。また、バイタルセンサを使用するために必要とされる電力を継続的に十分に供給することができる熱電変換器を用いた発電方法を提供することも目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の主目的を達成するために以下の手段を採った。
【0007】
本発明の熱電変換器は、
人体に装着して使用される熱電変換器であって、
前記人体の肌の少なくとも一部を覆い、吸湿性及び吸水性の少なくとも1つを有する布部材と、
前記布部材の前記人体側に連接し、熱伝導性を有し、かつ、前記布部材の表面積以下の表面積を有する基部材と、
前記基部材の前記人体側に設けられた熱電変換素子と、
を備えたことを特徴とする、
ものである。
【0008】
この熱電変換器は、人体の肌の少なくとも一部を覆う布部材によって、肌の表面に配置して使用される。この熱電変換器が布部材によって肌の表面に配置されると、布部材の人体側に基部材が、基部材の人体側に熱電変換素子が、それぞれ配置される。こうすることにより、熱電変換素子の人体側は人体から発生する熱により暖められ、熱電変換素子の人体側と反対側とで生じた温度差により、電圧を得ることができるが、これだけでは、体温によって徐々に熱電変換素子の全体が暖まってしまい、温度差が無くなる。一方、人は不感蒸泄又は発汗により、肌の表面から断続的に水分を蒸発させている。布部材は吸湿性又は吸水性を有しているため、不感蒸泄又は発汗により肌の表面から放出された水分は、布部材に吸湿される。その後、布部材から徐々に気化する際の気化熱により布部材から熱が奪われることになるが、このとき、布部材と基部材とは連接しており、基部材の人体側には熱電変換素子が設けられているため、熱電変換素子の反対側を冷やすことができる。言い換えると、熱電変換素子の人体側と反対側との温度差を維持することができる。熱電変換素子の両面側の温度差を維持することで持続的に電圧を得ることができる。このような効果は、特に、人体に長期間装着して使用するバイオセンサの電源として使用した場合には、その効果が大きい。このようなバイタルセンサは、人体に装着して使用されるため、人体の体温及び人体の不感蒸泄や発汗を利用することができると共に、バイタルセンサで必要とされる電力は1.5から2.0ミリワット程度であるため、熱電変換素子によって得られる電力で十分にまかなうことができる。
【0009】
本発明の熱電変換器において、前記熱電変換素子は、互いに間隔を有する状態で複数備えられていることを特徴としてもよい。こうすれば、人体からの不感蒸泄や発汗が熱電変換素子と隣接する熱電変換素子との間を通過することができるため、布部材によって容易に吸湿又は吸収されることができる。言い換えると、布部材から気化する水分量を増大させることができるため、布部材が気化熱によって奪われる熱が大きくなり、熱電素子の反対側から奪う熱も大きくなる。こうすることにより、熱電変換素子の人体側と反対側との温度差を増大させることができ、熱電変換素子で発生する電力量を増大させることができる。
【0010】
本発明の熱電変換器において、前記基部材は、柔軟性及び水透過性を有することを特徴としてもよい。こうすることにより、例えば、基部材に金属製の板材を用いた場合には、堅い金属製の板材が人体の肌に当たると、不快や痛みを感じる可能性があるが、柔軟性を有することにより、堅い基部材が肌に当たることによる不快感を未然に低減することができる。加えて、水透過性を有することで、不感蒸泄や発汗による水分が基部材の人体側の表面に付着し、この基部材の表面が肌に当接することによって感じる不快感を未然に低減することができる。
【0011】
本発明の熱電変換器において、前記基部材と前記布部材とは、前記布部材の一部に前記基部材の一部が編み込まれることにより連接していることを特徴としてもよい。こうすることにより、布部材と基部材とが当接する当接面積が大きくなるため、基部材の熱が布部材に伝いやすくなる。このため、布部材の表面から水分が蒸発する際の気化熱により、熱電変換素子の反対側から奪う熱量も大きくなり、熱電変換素子の反対側と人体側との温度差を大きくすることができる。言い換えると、熱電変換素子で発生する電力量を増大させることができる。
【0012】
本発明の熱電変換器を用いて発電する発電方法は、
上述したいずれかの熱電変換器を用いて発電する方法であって、
前記布部材の表面に水分が供給されるステップ、
を含むことを特徴とするものである。
【0013】
この熱電変換器を用いて発電する発電方法は、布部材の表面に水分が供給することにより、布部材に水分が吸収され、布部材の表面から蒸発する際に布部材から気化熱を奪う。こうすることにより、例えば、人体に装着された場合には、不感蒸泄や発汗によって生じた水分が吸収され、布部材の表面からく気化することで熱電変換素子の反対側から素早く熱を奪うことができる。言い換えると、熱電変換素子の人体側と反対側との温度差を増大させ、熱電変換素子で発生する電力量を増大させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、熱電変換器20の構成の概略を示す模式図である。
図2図2は、熱電変換器20を用いた発電実験の構成の概略を示す模式図である。
図3図3は、熱電変換器20を用いた発電実験の結果を示すグラフである。
図4図4は、比較実験の結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に、本発明の実施の形態の一例として、熱電変換器20について詳しく説明する。以下に説明する実施の形態及び図面は、本発明の実施形態の一部を例示するものであり、これらの構成に限定する目的に使用されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において適宜変更することができる。なお、各図において対応する構成要素には同一又は類似の符号を付す。また、熱電変換器20の使用方法及び熱電変換器20を用いて行った発電実験の一例を示すことで、本発明の熱電変換器20の使用方法の一例も明らかにする。
【0016】
本発明の実施の形態の一例である熱電変換器20は、図1に示すように、主に、人体の一部を覆うことが可能な布部材22と、布部材22の人体側(図1中、下側)に連接された基部材24と、基部材24の人体側に設けられた熱電変換素子26と、を備えている。
【0017】
布部材22は、人体の一部を覆う布製の部材であり、芯成分がポリエチレンテレフタラート、鞘成分がエチレンビニルアルコール共重合体である芯鞘型複合ステープル繊維と天然繊維とによって布状に加工された部材である。こうすることにより、高い吸湿性・吸水性と速乾性を有するため、周囲の水分を吸湿したり、表面に付着した水分を吸収したりし、表面から蒸発させて気化熱により布部材22を冷やすことができる。言い換えると、この布部材22は、熱を奪いやすい性質を有する布部材であるといえる。このため、布部材22を用いることにより、基部材24を介して熱電変換素子24の表面温度を十分に冷やすことができる。
【0018】
この布部材22の両端側には、雄ボタン23aと雌ボタン23bがそれぞれ備えられており、この雄ボタン23aと雌ボタン23bとを嵌合することで、輪状にし、人体の一部(例えば、腕や腹部)に巻き付けて使用する。上述した通り、布部材22は高温多湿の環境下でも使用することができるため、人体の一部に巻き付けて使用する場合、特に、この熱電変換器20の上に、更に服等を着て使用する場合であっても、熱電変換素子26の両面側に十分な温度差を保つことができる。また、この布部材22の材質は、人体に巻き付けることができるものであれば特に限定されるものではないが、吸湿性・吸水性が高いものが好ましく、また、速乾性が高い繊維によるものが好ましい。吸湿性・吸水性が高い繊維としては、例えば、木綿や麻、リンネル等の植物繊維、絹やカシミヤ、羊毛等の動物繊維を含む天然繊維やレーヨン等の再生繊維を使用することができる。また、吸湿性・吸水性の高い材質に限定されるものではなく、例えば、ガーゼやメリヤス、タオル等のように、繊維と繊維との間に隙間が多く存在する方法で布を成しても良い。更に、速乾性が高い繊維としては、例えば、ソフィスタ(株式会社クラレ社の登録商標)が利用できる。
【0019】
基部材24は、厚さが300マイクロメートルと極めて薄く形成された銅製の板状部材であり、微細な貫通孔が複数設けられている。銅製の板状部材を極めて薄く形成することにより、柔軟性と熱伝導性を両立することができるため、熱電変換素子26の表面の熱を速やかに布部材に伝えると共に、人体の肌に基部材24が触れた場合であっても、装着者が感じる不快感を低減することができる。加えて、微細な貫通孔が複数設けられているため、水や空気等が一面側から他面側に通過することができる。また、この基部材24は布部材22の一部に縫い込まれている。こうすることにより、熱電変換素子26の熱が基部材24を介して効率よく布部材22に伝達される。なお、ここで基部材24の厚さは、50マイクロメートル以上1ミリメートル以下であってもよいし、100マイクロメートル以上500マイクロメートル以下であってもよい。
【0020】
熱電変換素子26は、ゼーベック効果やペルティエ効果を利用した素子であり、公知の種々の熱電変換素子を使用することができる。この熱電変換素子26は、熱電変換器20が布部材22によって人体に装着された際、基部材24の人体側の表面に所定の間隔で複数設けられている。こうすることにより、人体から不感蒸泄や発汗によって生じた水分が、熱電変換素子26によって布部材22に吸収することを妨げることを低減することができる。また、この熱電変換素子26は、図示しない導線によって図示しないバイオセンサに電気的に接続されている。このため、熱電変換素子26で発電した電力を図示しないバイオセンサに供給することができる。
【0021】
次に、熱電変換器20の使用方法について説明する。この熱電変換器20を使用する際には、例えば、腹部や腕等の人体の一部に布部材22を巻き付け、両端側に設けられた雄ボタン23aと雌ボタン23bとを嵌合することで、人体に装着する。人体では不感蒸泄や発汗が行われているため、不感蒸泄や発汗によって蒸発した汗が布部材22に吸湿又は吸収されることで、布部材22の表面に水分が供給される。そして、この水分が蒸発する際に気化熱によって布部材22の熱を奪うことになる。このとき、布部材22と基部材24、基部材24と熱電変換素子26はそれぞれ連接しているため、熱電変換素子の基部材24側の表面の温度を低下させる一方、熱電変換素子26の人体側は、人間の体温により暖められるため、熱電変換素子26の両面側で温度差が生まれ、電力が発生する。こうすることにより、熱電変換器20を使用することができる。
【0022】
ここで、熱電変換素子26を用いて発電した発電実験の結果を示す。この発電実験では、布部材22として消防隊員用作業服布地(株式会社クラレ社製、BT−970 クラレソフィスタ半袖Tシャツ)を、基部材24として厚さ0.5ミリメートルの銅板を、熱電変換素子26としてペルティエ素子(秋月電子社製、品番:TEC1−12706)を、それぞれ用い、電圧昇圧LSI素子(リニアテクノロジー社製、品番:LTC−3108、LTC−3109)を用いて昇圧した電圧を測定した。また、実験系では、人体を実験的に再現するために、フレキシブルヒータを厚さ5ミリメートルの銅板で挟み、この銅板の上に熱電変換素子26を積置することで、実験を行った。また、このときの室温、肌表面の温度に相当するフレキシブルヒータを挟み混んだ銅板の温度、基部材24の温度を温度センサ(ナショナルセミコンダクタージャパン株式会社製、品番:LM35)を用いて測定し、室温が約19℃、フレキシブルヒータを挟み混んだ銅板の温度が36.5℃となるように保った。なお、この実験系における各部材の位置関係を図2に示す。ここで、図2は、実験系の各部材の位置関係を示す模式図である。
【0023】
この結果を図3に示す。ここで、図3は、横軸に時間(分)、縦軸に温度(℃)及び電圧(V)をそれぞれ示したグラフである。グラフ中、実線は電圧(V)を、一点鎖線は布部材22の表面温度(℃)を、二点鎖線はフレキシブルヒータを挟んだ銅板の表面温度(℃)を、点線は外気温(℃)をそれぞれ示している。また、図3中の矢印は、布部材22に水を印加したことを示し、具体的には、布部材22の表面に霧吹きを用いて水を噴霧した。なお、このとき噴霧した水の量は、概ね0.1ミリリットル未満と推定される。この結果から分かるように、1回水を噴霧することで、3.3ボルト以上の電圧を約20分間維持することができた。この3.3ボルトという電圧は、一般的にバイタルセンサに用いられる小型のMPU(Micro−processing unit)の消費電流量が最小で300マイクロアンペア程度であることから考えると、バイタルセンサに電力を供給するために十分な電力であり、この電圧を1回の噴霧で20分程度維持することができたという結果から、人間の不感蒸泄や発汗により、十分な電力を維持し続けることができると言える。
【0024】
次に、比較実験の結果を図4に示す。ここで、図4は、横軸に時間(分)、縦軸に温度(℃)及び電圧(V)をそれぞれ示したグラフであり、実験条件は、布部材22を有していないこと以外は図3で結果を示した実験系と同様である。グラフ中、実線は電圧(V)を、一点鎖線は銅板の表面温度(℃)を、二点鎖線はフレキシブルヒータを挟んだ銅板の表面温度(℃)を、点線は外気温(℃)をそれぞれ示している。また、図4中の矢印は、概ね0.1ミリリットル未満の水を噴霧した時間を示す。この結果から明らかなように、水を噴霧することで一時的に3.3ボルト以上の電圧を得ることができるが、5分程度で電圧が下がりはじめ、この電圧を長期間維持することができないことは明らかである。言い換えると、持続的に水を加えない限り、バイタルセンサのように長期間使用するセンサに電力を供給し続けることはできないと言える。
【0025】
布部材の有無によってこのような結果が出た理由は明らかでは無いが、銅板に水を噴霧した際には、銅板の表面に複数の水滴が観察された。布部材に水を噴霧した際には、噴霧した水は布部材に吸収され徐々に蒸発していくことで気化熱により布部材が冷却されたと考えられるが、銅板に水を噴霧した際は、噴霧直後の極微量の状態では蒸発したが、銅板の表面の水が徐々に集まり、水滴を形成した後には蒸発することができず、気化熱による冷却が少なかったと考えられる。このため、図4に示すように、一時的に表面が冷却されたことにより電力が得られたが、短時間で電力が低下したと考えられる。
【0026】
この結果から考えると、布部材を有しない熱電変換装置を人体に取り付けて使用した場合、取り付けた直後は一時的に電力が得られるが、人体表面、特に、衣服に覆われた体表面付近は高温多湿の環境であることから、その後は不感蒸泄や発汗によって銅板表面に水分が供給されたとしても、供給された水分が銅板表面から蒸発することができず、十分な電力を持続的に得ることができないことは明らかである。一方、本発明の実施の形態の一例である熱電変換装置20を用いた場合には、布部材22の繊維によって吸湿又は吸収され、布部材22の表面から蒸発することにより、十分な電力を持続的に得ることができると言える。
【0027】
以上詳述された実施の形態の熱電変換器20は、布部材22を人体の一部に巻き付け、人間の不感蒸泄や発汗によって蒸発した汗が布部材22に吸湿又は吸収され布部材22の方面から蒸発することにより、布部材22と基部材24を介して連接する熱電変換素子26の外側面を冷却すると共に、熱電変換素子26の内側面が体温で暖められることで熱電変換素子26の両面側で温度差を作りだし、持続的に発電することができる。
【0028】
また、熱電変換素子26は、基部材24に互いに間隔を有する状態で複数設けられているため、人体から不感蒸泄や発汗によって生じた水分が、熱電変換素子26によって布部材22に吸収することを妨げることを低減することができる。こうすることにより、不感蒸泄や発汗によって生じた水分を十分に布部材22が吸湿又は吸収することができるため、布部材22の表面から蒸発する気化熱により十分に熱を布部材22から奪い続けることができる。つまり、熱電変換素子26の外側面を十分に冷却し続けることができる。
【0029】
更に、基部材24は、厚さが300マイクロメートルに形成された極めて薄く形成された銅製の板状部材であり、微細な貫通孔を複数備えているため、柔軟性及び水透過性を両立することができる。こうすることにより、不感蒸泄や発汗によって生じた水分を十分に布部材22が吸湿又は吸収することができるため、布部材22の表面から蒸発する気化熱により十分に熱を布部材22から奪うことができる。つまり、熱電変換素子26の外側面を十分に冷却することができる。加えて、人体に装着した際、肌に触れた際の不快感を低減することができる。
【0030】
更にまた、布部材22の一部に基部材24が編み込まれているため、布部材22と基部材24とが互いに当接する当接面積を大きくすることができる。こうすることにより、布部材22の表面から蒸発する気化熱により十分に熱を布部材22から奪われた際、熱電変換素子26の外側面を十分に冷却することができる。
【0031】
なお、本発明は上述した実施の形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施し得ることはいうまでもない。
【0032】
例えば、上述した実施の形態において、基部材24は布部材22に縫い込まれているものとしたが、基部材と布部材22とは互いに連接するものであればこの方法に限定されるものではなく、例えば、一部又は全面が貼着されていても良い。このとき、貼着方法については特に限定されるものではなく、接着剤や粘着剤等で貼着面全体又は一部が貼着されていても良いし、熱伝導性の高い潤滑剤等を介して貼着してもよい。いずれの場合であっても、上述した実施の形態と同様の効果が得られるが、基部材24と布部材22とは、隙間無く密着されることが好ましい。基部材24から布部材22に熱が伝わりやすくするためである。
【0033】
上述した実施の形態では、基部材24は銅製であるものとしたが、材質は熱伝導性を有するものであれば銅に限定されるものではなく、例えば、金属製であっても良いし樹脂製であってもよい。いずれの場合であっても、上述した実施の形態と同様の効果が得られる。
【産業上の利用可能性】
【0034】
上述した実施の形態で示すように、発電分野、特に、バイタルセンサ用の給電器として利用することができる。
【符号の説明】
【0035】
20…熱電変換器、22…布部材、23a…雄ボタン、23b…雌ボタン、24…基部材、26…熱電変換素子。

図1
図2
図3
図4