【実施例】
【0014】
図2は、本発明の第1の実施例に係るAC/DCコンバータの構成を示す図である。本実施例のAC/DCコンバータ100は、交流電源のL側入力およびN側入力に電気的に接続された整流回路110と、整流回路110に電気的に接続されたPFC回路120とを含んで構成される。整流回路110は、ハイサイド側のダイオードを含まず、ローサイド側に一対のトランジスタとしてQA1、QA2を含んで構成される。すなわち、トランジスタQA1は、N側入力と電源ラインLV2との間に接続され、トランジスタQA2は、L側入力と電源ラインLV2との間に接続される。トランジスタQA1、QA2は、例えば、MOSFET、IGBT、あるいはGAN HEMT等から構成される。第2の電源ラインLV2は、基準電位として、例えばGNDを供給する。トランジスタQA1、QA2のゲートには、ここには図示しない制御部からの制御信号が供給され、入力される交流電圧の半波の極性に同期して交互にスイッチングされる。つまり、トランジスタQA1は、L側入力の電圧がGNDに対して高い電位にあるときオンし、N側入力を第2の電源ラインLV2(GND)に接続し、このときトランジスタQA2はオフである。トランジスタQA2は、N側入力の電圧がGNDに対して高い電位にあるときオンし、L側入力を第2の電源ラインLV2(GND)に接続し、このときトランジスタQA1はオフである。
【0015】
PFC回路120は、L側入力に接続された第1のインダクタL1、N側に接続された第2のインダクタL2、ダイオードD1、D2、トランジスタQB1、QB2、コンデンサCを含んで構成される。直流電圧を出力する電源ラインLV1と基準電位を供給する電源ラインLV2との間には、ダイオードD1とトランジスタQB1が直列に接続され、かつダイオードD2とトランジスタQB2が直列に接続される。ダイオードD1とトランジスタQB1との接続ノードN1とL側入力との間に第1のインダクタL1が接続され、ダイオードD2とトランジスタQB2の接続ノードN2とN側入力との間に第2のインダクタL2が接続される。トランジスタQB1、QB2は、例えば、MOSFET、IGBT、あるいはGAN HEMT等から構成され、そのゲートには、ここには図示しない制御部からの制御信号が供給される。力率改善回路120は、機能的に、第1のインダクタL1、ダイオードD1、トランジスタQB1からなる第1の力率改善回路と、第2のインダクタL2、ダイオードD2、トランジスタQB2からなる第2の力率改善回路とを含み、第1の力率改善回路および第2の力率改善回路は、入力される交流電圧の極性に応じて交互にインターリーブ動作される。
【0016】
図3は、本実施例のAC/DCコンバータの制御部の好ましい構成例を示す図である。AC/DCコンバータの制御部は、
図3に示すように、入力同期整流制御部130、2並列制御部140、およびPFC制御部150を含んで構成される。ここで留意すべきは、入力同期整流部130、2並列制御部140およびPFC制御部150は、既存の入手可能なICによって容易に実現されることである。
【0017】
入力同期整流制御部130は、交流電源のL側入力およびN側入力の電圧を検出するための入力端子IA1、IA2を有する。入力端子IA1は、ノードN3に接続され、GNDを基準とするL側入力の電圧を検出する。入力端子IA2は、ノードN4に接続され、GNDを基準とするN側入力の電圧を検出する。さらに入力同期整流制御部130は、トランジスタQA1、QA2の動作を制御する第1および第2の制御信号を出力する出力端子OA1、OA2を有する。
【0018】
出力端子OA1は、トランジスタQA1のゲートに第1の制御信号を出力し、入力端子IA1により検出された電圧(L側入力の電圧)がGNDに対して高い電位にあるとき、トランジスタQA1をオンさせ、N側入力をGNDに接続させる。また、出力端子OA1からの第1の制御信号は、同時に2並列制御部140の入力端子IB1にも供給される。このとき、出力端子OA2からの第2の制御信号は、トランジスタQB2をオフさせる。
【0019】
他方、出力端子OA2は、入力端子IA2の電圧(N側入力の電圧)がGNDに対して高い電位にあるとき、トランジスタQA2をオンさせ、L側入力をGNDに接続させる。また、出力端子OA1から第2の制御信号は、同時に2並列制御部140の入力端子IB2にも供給される。また、入力同期整流制御部130のGND端子には、GNDに接続される。
【0020】
2並列制御部140は、上記したように、入力同期整流制御部130の出力端子OA1、OA2から出力される第1および第2の制御信号を入力する入力端子IB1、IB2を有する。すなわち、入力端子IB1、IB2には、トランジスタQA1、QA2のオン/オフ動作に同期した信号が入力される。2並列制御部140はさらに、PFC制御部150の出力端子OC1に接続された入力端子IB3を有し、入力端子IB3には、入力される交流電圧の周波数よりも高い周波数のパルス信号が入力される。
【0021】
さらに2並列制御部140は、トランジスタQB1、QB2を制御するための第3および第4の制御信号を出力する出力端子OB1、OB2を有する。2並列制御部140は、入力端子IB1に入力された第1の制御信号と入力端子IB3に入力されたパルス信号とのAND(論理積)となる第3の制御信号を出力端子OB1から出力し、かつ、入力端子IB2に入力された第2の制御信号と入力端子IB3に入力されたパルス信号とのAND(論理積)となる第4の制御信号を出力端子OB2から出力する。2並列制御回路140のGND端子もまたGNDに接続される。
【0022】
PFC制御部150は、ノードN5に接続された入力端子IC1と、ノードN6に接続された入力端子IC2と、2並列制御部140の入力端子IB3に接続された出力端子OC1を有する。入力端子IC1は、入力電流を検出し、入力端子IC2は、出力電圧を検出し、これらの検出結果に基づき高い周波数のパルス信号を2並列制御部140の入力端子IB3に出力する。PFC制御部150のGND端子もまたGNDに接続される。なお、PFC制御部150は、汎用のPFCコントロールICを用いることができ、電流の連続モード制御(CCM)でも臨界モード制御(CRM)でも使用可能であり、また、マルチプライヤーの有、無(ワンコントロールタイプ)は問わない。
【0023】
次に、本実施例のAC/DCコンバータの動作について説明する。
図4は、
図3に示す回路の各部の波形図である。時刻T1からT2の期間、交流電源のL側入力には、GNDに対して高い電位を有する正弦波状の電圧が表れる。このとき、入力同期整流制御部130の入力端子IA1には、
図4(A)に示すような正弦波状の電圧が入力される。入力端子IA1を介して、このような電圧が検出されると、入力同期整流制御部130は、
図4(C)に示すように、時刻T1からT2の期間、Hレベルとなる第1の制御信号を出力端子OA1からトランジスタQA1に出力する。これによりトランジスタQA1がオンし、N側入力がGNDに接続される。この間、第2の制御信号は、
図4(D)に示すように、Lレベルであり、トランジスタQA2はオフである。
【0024】
時刻T2からT3の期間、交流電圧の極性が反転する。すなわち、N側入力には、GNDに対して高い電位の正弦波状の電圧が表れ、これが入力端子IA2に入力される。これにより、入力同期整流制御部130は、
図4(D)に示すように、時刻T2からT3の期間、Hレベルとなる第2の制御信号を出力端子OA2からトランジスタQA2に出力する。これにより、トランジスタQA2がオンし、L側入力がGNDに接続される。この間、第1の制御信号は、
図4(C)に示すようにLレベルであり、トランジスタQA1はオフである。このように、入力同期整流制御部130は、交流電圧の入力電圧の極性に同期して、相補的な第1および第2の制御信号をトランジスタQA1、QA2のゲートに出力する。
【0025】
PFC制御部150は、
図4(E)に示すように、入力端子IC1により検出された入力電流および入力端子IC2により検出された出力電圧に基づき、入力される交流電圧の周波数よりも高い周波数のパルス信号を出力端子OC1から出力し、このパルス信号が2並列制御部140の入力端子IB3に入力される。2並列制御部140は、
図4(F)に示すように、入力端子IB1に入力された第1の制御信号と入力端子IB3に入力されたパルス信号の論理積となる第3の制御信号を出力端子OB1から出力し、さらに
図4(G)に示すように、入力端子IB2に入力された第2の制御信号と入力端子IB3に入力されたパルス信号の論理積となる第4の制御信号を出力端子OB2から出力する。トランジスタQB1は、第3の制御信号に基づきスイッチング動作を行い、トランジスタQB2は、第4の制御信号に基づきスイッチング動作を行う。
【0026】
時刻T1からT2の期間、トランジスタQB1は、第3の制御信号がHレベルのときオンし、そのとき、トランジスタQB1のソース/ドレイン間電圧Vdsは、
図4(H)に示すように、入力された交流電圧に応じた正弦波状となり、入力された交流電圧に同期してドレイン電流が流れる。但し、トランジスタQB1は、飽和領域で動作されるので、ドレイン電流はほぼ一定である。時刻T2からT3の期間、トランジスタQBは、第4の制御信号がHレベルのときオンし、そのとき、トランジスタQB2のソース/ドレイン間電圧Vdsは、
図4(I)に示すように、入力された交流電圧に応じた正弦波状となり、入力された交流電圧に同期してドレイン電流が流れる。
図4(J)は、AC/DCコンバータの電源ラインLV1から負荷に供給される直流電圧Voutである。
【0027】
これらの動作により、N側入力に接続されているトランジスタQA1をオンしてGNDと接続するのと同期してL側入力のPFC回路のトランジスタQB1をスイッチング動作させ、L側入力に接続されているトランジスタQA2をオンしてGNDと接続するのと同期してN側入力のPFC回路のトランジスタQB2をスイッチング動作させることにより、交流の極性に応じて2セットのPFC回路が交互にスイッチング動作する。こうして、整流用のダイオードを使用することなく、力率改善のための昇圧直流変換動作をする回路を提供することができる。
【0028】
次に、比較例として、
図5にダイオードブリッジレスの整流回路を有するAC/DCコンバータの構成を示す。このAC/DCコンバータは、インターリーブPFC用IC(例えば、TI社製UCC28070等)により構成されたブリッジレスPFC回路である。同図に示すAC/DCコンバータは、高効率を目的とするため、整流回路30は、ダイオードブリッジレスの構成である。このような回路には、次のような欠点が有る。GND側の電流経路が単一では無いので、CT(カレントトランス)等が必要になり、それ故、電流検出制御が複雑になる。また、インターリーブ制御PFC用であり、かつ特定のICでしか回路を構成することができず、汎用性がない。さらに、電流経路内に2度コイルを通過するため、コイルの抵抗成分による電圧降下による損失が多く、また、コイル、FETに常に電流が流れ、熱分散が不完全になる。
【0029】
これに対して本実施例のAC/DCコンバータでは、インターリーブPFC用ICにより構成されたブリッジレスPFC回路の欠点を下記のように解決することができる。すなわち、GND側の電流経路が単一で有るため、電流検出制御が従来の抵抗を使ったシンプルな回路となり、また汎用のPFC制御用のICで回路を構成することが可能となる。また、PFCの主要部品が完全に2つに並列化することができ、発熱を分散することができる。
【0030】
次に、本発明の第2の実施例について説明する。第1の実施例では、PFC回路内にダイオードD1、D2を用いているが、AC100/240V系ではSiC(シリーコンカーバイト)系のトランジスタ素子を使用する等により低ロス化を図ることが可能である。また、AC24V系などの低電圧大電流に対応するためには、ダイオードD1、D2も同期整流化することによりさらに、高効率な整流およびPFC改善回路を構成することができる。以下に、その第2の実施例のAC/DCコンバータを
図6に示す。
【0031】
同図に示すように、第2の実施例に係るAC/DCコンバータ100Aは、PFC回路のダイオードD1、D2を、トランジスタQB3、QB4に置換している。それ以外の構成は、第1の実施例と同じであり、それらについては同一参照番号を付し、重複説明を省略する。
【0032】
2並列制御部140はさらに、トランジスタQB3、QB4を制御するための第5および第6の制御信号を出力端子OB3、OB4から出力する。2並列制御部140は、入力端子IB1に入力された第1の制御信号と入力端子IB3に入力されたパルス信号との論理積である第5の制御信号を出力端子OB3から出力し、また入力端子IB3に入力された第2の制御信号と入力端子IB3に入力されたパルス信号との論理積である第6の制御信号を出力端子OB4から出力するが、好ましい態様では、トランジスタQB1とトランジスタQB3とが同時にオンすることを避け、トランジスタQB2とトランジスタQB4とが同時にオンすることを避けるようにする。
【0033】
第1の実施例のダイオードD1、D2は、トランジスタQB1、QB2のターンオフ後に、インダクタL1、L2に蓄積されたエネルギー(電流)を負荷側に導通させる。従って、トランジスタQB3、QB4は、トランジスタQB1、QB2のターンオン後、次に、トランジスタQB1、QB2がオンするタイミングまでの間、オンされるように制御されれば、第1の実施例と同じシーケンスでの動作が可能になる。
【0034】
図7は、第3ないし第6の制御信号と、入力端子IB3に入力されるパルス信号との関係を示すタイミングチャートである。出力端子OB1、OB2から出力される第3の制御信号および第4の制御信号がHレベルに立ち上がるタイミングを時間Tdaだけ遅延させ、出力端子OB3、OB4から出力される第5の制御信号および第6の制御信号がHレベルに立ち上がるタイミングを時間Tdbだけ遅延させる。遅延時間Tda、Tdbは、トランジスタQB1がオンする期間(第3の制御信号がHレベルの期間)、トランジスタQB3がオフするように(第5の制御信号がLレベル)、同様に、トランジスタQB2がオンする期間(第4の制御信号がHレベルの期間)、トランジスタQB4がオンするように(第6の制御信号がLレベル)、調整される。
【0035】
図8は、第2の実施例によるAC/DCコンバータの各部の波形図である。出力端子OB3、OB4から出力される第5の制御信号および第6の制御信号は、出力端子OB1、OB2から出力される第3の制御信号および第4の制御信号と同期するが、遅延Tda、Tdbにより、一方がHレベルのとき他方がLレベルとなるようにタイミングが調整される。
【0036】
このように第2の実施例によれば、第1の実施例のPFC回路120においてダイオードD1、D2で発生していた電圧降下Vfによる損出を削減してさらに高効率なAC/DCコンバータを構成することができる。なお、上記の制御信号の遅延方法は、一例であり、他の遅延方法により、第3の制御信号(第4の制御信号)と第5の制御信号(第6の制御信号)とのHレベルが重複しないようにしてもよい。
【0037】
以上、本発明の好ましい態様について説明したが、本発明は、特定の実施形態に限定されるものではなく、本発明は、特許請求の範囲に基づき本発明の要旨を逸脱しない範囲で変形、変更が可能である。