【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成26年度、経済産業省、戦略的基盤技術高度化支援事業「低温・短時間硬化プリンテッド・エレクトロニクス用受容層材料の開発」再委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【課題】その上に印刷される導電性ペーストがエレクトロケミカルマイグレーションを生じにくい受容層を形成することのできるアクリレート系共重合体及びそれを含む樹脂組成物を提供する。
アルキル由来のモノマー単位(2)を40〜99mol%と、ジメチルアミノ基又はジエチルアミノ基を含有するモノマー単位(3)を0〜30mol%とを含むアクリレート系共重合体及びそれを含む樹脂組成物である。
【背景技術】
【0002】
近年、電子デバイスの構成部材の製造において、汎用の印刷技術を適用する試みが盛んになっている。このように印刷技術を用いて、電子デバイスの部材を作製する技術をプリンテッド・エレクトロニクスと呼んでいる。プリンテッド・エレクトロニクスは、設備投資のコストが比較的安く、しかも大面積の大量生産に適するというメリットがある。
【0003】
このことから、現在では、タッチパネルやEL電極等の透明導電性フィルムがプリンテッド・エレクトロニクスを利用して製造されている。今後は、上記分野のみならず、大型ディスプレイや太陽電池、電子ペーパー等にもプリンテッド・エレクトロニクスを適用したいというニーズがあり、さらなる用途展開が期待されている。
【0004】
プリンテッド・エレクトロニクスを適用するときの問題として、印刷時のインクの解像度がある。すなわち、電子デバイスの部材を作製するためには、通常50μm程度の太さの配線を緻密に印刷する必要があるが、プリンテッド・エレクトロニクスによってその印刷をすると、インクがかすれてしまったり、インクが滲んでしまったりして、導電性ペーストが均一に塗布されず、電子デバイスの動作に支障をきたすことがある。
【0005】
そこで、プリンテッド・エレクトロニクスにおける解像度を向上させるための試みとして、印刷対象物の表面に無機系材料からなる受容層を形成することが行われている。無機系材料からなる受容層は、インクが付着しやすく、かつ広がりにくいという性質を有するため、緻密な配線を高解像度で印刷することができる。しかも無機系材料は、シリコンやチタンを原料として作製されるため、耐熱性や耐溶剤性に優れるというメリットを有し、電子デバイスの要求性能を満たしている。
【0006】
このようなプリンテッド・エレクトロニクスの先行技術として、例えば特許文献1には、平均粒子径が100nm以下のアルミナ微粒子やシリカ微粒子を含む溶液を被印刷面に塗布してスクリーン印刷用受容層を形成する技術が開示されている。特許文献2には、SiやTiのアルコキシドを基板に塗布し、ゾルゲル法にてスクリーン印刷用受容層を形成する技術が開示されている。
【0007】
一方、有機系材料からなる受容層を形成するものとして、特許文献3には、カチオン系水溶性アクリルポリマーとエポキシ樹脂との混合物からなるインキ受容層を備える基板が開示されている。また、特許文献4には、所定のN含有基を有するモノマー単位を含有するアクリレート系共重合体、及び、エポキシ系樹脂のようなアクリレート系共重合体と架橋反応を起こす樹脂を含む硬化性樹脂組成物からなる受容層を備える基板が開示されている。
【発明を実施するための形態】
【0032】
<アクリレート系共重合体>
本発明のアクリレート系共重合体は、基板上に設ける受容層(アンカー層)を形成するためのコーティング材料として好適な重合体である。「受容層」とは、印刷等によってその上に置かれるインク(ペースト)を受容する(インクに含まれる溶剤成分等を吸収することを含む)層である。このアクリレート系共重合体は、上記式(1)で示されるモノマー単位〔以下、モノマー単位(1)ともいう。〕を1〜30mol%と、上記式(2)で示されるモノマー単位〔以下、モノマー単位(2)ともいう。〕を40〜99mol%と、上記式(3)で示されるモノマー単位〔以下、モノマー単位(3)ともいう。〕を0〜30mol%と、を含む。
【0033】
モノマー単位(1)及び(2)、好ましくはさらにモノマー単位(3)を所定量含む本発明のアクリレート系共重合体は、ラジカル重合開始剤との併用によって比較的低温・短時間であっても硬化が可能であり、また、それを含む受容層上に印刷される導電性ペースト(インク)の印刷特性も良好である。本発明では、スクリーン印刷版の開口部パターンが直線状のものを用いて導電性ペーストを印刷したときに、導電性ペーストのパターンが断線することなく、線幅のばらつきの小さい導電性ペーストのパターンを形成できるとき、印刷特性が良好であるという。
【0034】
〔a〕モノマー単位(1)
モノマー単位(1)は、上記式(1)に示されるとおり、ラジカル重合性二重結合〔(メタ)アクリロイル基〕を側鎖に2個有しており、優れた架橋性を示す。これにより、アクリレート系共重合体は、紫外線や電子線のような活性エネルギー線の照射や加熱により、ラジカル重合開始剤の存在下に3次元架橋反応を起こすことができる。アクリレート系共重合体は、十分に高い架橋密度で硬化することができる。また、このモノマー単位(1)を所定量含み、かつモノマー単位(2)、好ましくはさらにモノマー単位(3)を所定量含むことに起因して、アクリレート系共重合体を含む受容層は、その上に印刷される導電性ペーストのエレクトロケミカルマイグレーションを良好に抑制することができる。
【0035】
さらに、このような硬化性の良好なアクリレート系共重合体を含む受容層を硬化させると、受容層、ひいては受容層上に導電性ペーストのパターン(配線パターン)が形成された基板の耐溶剤性や耐熱性を向上させることができる。
【0036】
上記式(1)においてR
1、R
2、R
3、R
4はそれぞれ独立してH又はCH
3である。Zは2価の連結基であり、通常は、N、O等のヘテロ原子の1個以上含んでいてもよい2価の炭化水素基である。モノマー単位(1)の好適な例は、上記式(1−1)で示されるモノマー単位及び式(1−2)で示されるモノマー単位である〔以下、それぞれモノマー単位(1−1)、モノマー単位(1−2)ともいう。〕。式(1−1)及び式(1−2)におけるR
1、R
2、R
3、R
4の意味は、式(1)と同じである。アクリレート系共重合体は、モノマー単位(1)を1種又は2種以上含むことができる。
【0037】
ラジカル重合性二重結合を2個有する側鎖構造がポリマー主鎖に結合してなるモノマー単位(1)の構造は、アクリレート系共重合体のポリマー主鎖骨格を形成してアクリレート系共重合体の前駆体となる共重合体を調製し、この共重合体に所定の側鎖構造を形成する方法によって得ることができる。
【0038】
例えば、モノマー単位(1−1)は、上記前駆体となる共重合体の側鎖に水酸基を導入しておき、この水酸基に(メタ)アクリロイル基を2個有するイソシアナート化合物を付加させる方法によって形成することができる。(メタ)アクリロイル基を2個有するイソシアナート化合物の具体例は、1,1−(ビスメタクリロイルオキシメチル)エチルイソシアネート、1,1−(ビスアクリロイルオキシメチル)エチルイソシアネートを含む。(メタ)アクリロイル基を2個有するイソシアナート化合物は、1種のみを用いてもよいし、2種以上併用してもよい。
【0039】
また、モノマー単位(1−2)は、上記前駆体となる共重合体の側鎖にグリシジル基を導入しておき、このグリシジル基に、水酸基及び2個の(メタ)アクリロイル基を有する化合物と無水コハク酸との反応物を付加させる方法によって形成することができる。水酸基及び2個の(メタ)アクリロイル基を有する化合物の具体例は、2−ヒドロキシ−1−(メタ)アクリロイルオキシ−3−(メタ)アクリロイルオキシプロパンを含む。水酸基及び2個の(メタ)アクリロイル基を有する化合物は、1種のみを用いてもよいし、2種以上併用してもよい。
【0040】
アクリレート系共重合体に含まれる全モノマー単位中、モノマー単位(1)の含有量は、1〜30mol%であり、好ましくは5〜28mol%である。モノマー単位(1)の含有量が1mol%未満であると、硬化して得られる受容層が不十分な架橋のために高温高湿環境下で吸水しやすく、導電性ペーストのエレクトロケミカルマイグレーションを良好に抑制することができない。また、硬化して得られる受容層に対して、十分な耐溶剤性及び耐熱性を付与することができない。一方、モノマー単位(1)の含有量が30mol%を超えると、印刷特性が悪くなり、設計通りの導電性ペーストのパターン(配線パターン)を形成することが困難となる。アクリレート系共重合体におけるモノマー単位(1)の重合度は、例えば1〜2000であることができる。モノマー単位(1)の重合度とは、アクリレート系共重合体に含まれるモノマー単位(1)の全数である。以下で説明する他のモノマー単位についても同様である。
【0041】
〔b〕モノマー単位(2)
モノマー単位(2)は、(メタ)アクリレートモノマー由来の単位であり、上記式(2)においてR
5はH又はCH
3であり、R
6はC
1〜C
12のアルキル基である。R
6のアルキル基は、直鎖状、分岐状、環状のいずれであってよいが、好ましくは直鎖状又は分岐状である。当該アルキル基の炭素数は、好ましくは1〜6であり、より好ましくは1〜4である。アクリレート系共重合体は、モノマー単位(2)を1種又は2種以上含むことができる。
【0042】
アクリレート系共重合体にモノマー単位(2)を所定量含有させることにより、受容層の上に形成される導電性ペーストの印刷特性を向上させることができる。より具体的には、モノマー単位(2)を所定量含有するアクリレート系共重合体を用いて受容層を形成することにより、導電性ペースト中の溶剤の吸収性を高めることができる。これにより、導電性ペーストの溶剤の滲みを抑制することができるため、導電性ペーストの印刷特性を向上させることができる。
【0043】
モノマー単位(2)を形成する(メタ)アクリレートモノマーとしては、例えば、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、メタクリル酸n−プロピル、アクリル酸i−プロピル、メタクリル酸i−プロピル、アクリル酸n−ブチル、メタクリル酸n−ブチル、アクリル酸i−ブチル、メタクリル酸i−ブチル、アクリル酸sec−ブチル、メタクリル酸sec−ブチル、アクリル酸t−ブチル、メタクリル酸t−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸デシル、メタクリル酸デシル、アクリル酸ラウリル、メタクリル酸ラウリル、アクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、等が挙げられる。なかでも、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸i−ブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ラウリルが好ましい。(メタ)アクリレートモノマーは、1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0044】
アクリレート系共重合体に含まれる全モノマー単位中、モノマー単位(2)の含有量は、40〜99mol%であり、好ましくは45〜98mol%であり、より好ましくは50〜89mol%である。モノマー単位(2)の含有量が40mol%未満であると、良好な印刷特性を得ることができない。一方、99mol%を超えると、モノマー単位(1)及び/又は(3)の含有量が所定量を下回るため、印刷特性が低下したり、導電性ペーストのエレクトロケミカルマイグレーションの抑制が不十分になったりする。アクリレート系共重合体におけるモノマー単位(2)の重合度は、例えば1〜2000であることができる。
【0045】
〔c〕モノマー単位(3)
モノマー単位(3)は、アクリレート系共重合体に含まれ得る任意の単位である。モノマー単位(3)は、置換基Xであるジメチルアミノ基又はジエチルアミノ基を有するため、塩基性を示す。このようなモノマー単位(3)を含有するアクリレート系共重合体を用いて受容層を基板上に形成すると、受容層中のアクリレート系共重合体が導電性ペーストに含まれる酸性成分と相互作用し、導電性ペースト中の溶剤以外の成分を受容層上に固着させることができる。これにより、導電性ペーストの溶剤成分が分離し、導電性ペーストの溶剤以外の成分が滲みにくくなるため、導電性ペーストの印刷特性を向上させることができる。従って、アクリレート系共重合体はモノマー単位(3)を含むことが好ましい。上記式(3)においてR
7は、H又はCH
3である。アクリレート系共重合体は、モノマー単位(3)を1種又は2種以上含むことができる。
【0046】
モノマー単位(3)を形成するモノマーを具体的に例示すれば、アクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、アクリル酸ジエチルアミノエチル、メタクリル酸ジエチルアミノエチルである。アクリレート系共重合体は、モノマー単位(3)を形成するモノマーを1種のみ用いてもよいし、2種以上併用してもよい。
【0047】
アクリレート系共重合体に含まれる全モノマー単位中、モノマー単位(3)の含有量は、0〜30mol%であり、好ましくは1〜25mol%、より好ましくは2〜15mol%である。モノマー単位(3)の含有量が1mol%未満であると、モノマー単位(3)を含有させることによる印刷特性向上効果が不十分となる。一方、30mol%を超えると、導電性ペーストの酸性成分との相互作用が必要以上に強くなり、スクリーン印刷特有の不均一な印刷となったり、導電性ペーストのパターンに断線が生じやすくなったりする。アクリレート系共重合体におけるモノマー単位(3)の重合度は、例えば1〜2000であることができる。
【0048】
〔d〕その他のモノマー単位
本発明のアクリレート系共重合体は、モノマー単位(1)、(2)及び(3)以外の他のモノマー単位を含むことができる。当該他のモノマー単位を含有させることにより、受容層の硬度、屈折率、基板との密着性等の制御を容易にしたり、受容層に柔軟性、透明性、耐候性、添加物との相溶性等を付与又は向上させたり、受容層上に形成される導電性ペースト(配線)の腐食防止性を付与又は向上させたり、導電性ペースト(配線)の導電性の制御を容易にしたりすることが可能となることがある。アクリレート系共重合体は、他のモノマー単位を1種又は2種以上含むことができる。
【0049】
モノマー単位(1)、(2)及び(3)以外の他のモノマー単位を形成するモノマーとしては、例えば、アクリル酸2−テトラヒドロピラニル、メタクリル酸2−テトラヒドロピラニル、スチレン、アクリル酸ベンジル、メタクリル酸ベンジル、アクリル酸フェノキシエチル、メタクリル酸フェノキシエチル、アクリル酸フェノキシポリエチレングリコール、メタクリル酸フェノキシポリエチレングリコール、アクリル酸ノニルフェノキシポリエチレングリコール、メタクリル酸ノニルフェノキシポリエチレングリコール、アクリル酸ノニルフェノキシポリプロピレン、メタクリル酸ノニルフェノキシポリプロピレン、アクリル酸2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル、メタクリル酸2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル、2−アクリロイロキシエチルフタレート、2−アクリロイロキシエチル−2−ヒドロキシエチルフタレート、2−メタクリロイロキシエチル−2−ヒドロキシプロピルフタレート、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸2−ヒドロキシプロピル、アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸3−ヒドロキシプロピル、アクリル酸2−ヒドロキシブチル、メタクリル酸2−ヒドロキシブチル、アクリル酸3−ヒドロキシブチル、メタクリル酸3−ヒドロキシブチル、アクリル酸4−ヒドロキシブチル、メタクリル酸4−ヒドロキシブチル、アクリル酸ポリエチレングリコール、メタクリル酸ポリエチレングリコール、アクリル酸グリセロール、メタクリル酸グリセロール、アクリル酸グリセリン、メタクリル酸グリセリン、アクリル酸テトラヒドロフルフリル、メタクリル酸テトラヒドロフルフリル、アクリルアミドやメタクリルアミドやアクリロイルモルホリンなどのアミド類、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、ケイ皮酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、無水イタコン酸、シトラコン酸、無水シトラコン酸等を挙げることができる。
【0050】
また、他のモノマー単位として、下記式(4):
【0052】
〔式中、R
8、R
9はそれぞれ独立してH又はCH
3を表す。〕
で示されるモノマー単位〔以下、モノマー単位(4)ともいう。〕を含むことができる。このモノマー単位(4)は、ラジカル重合性二重結合〔(メタ)アクリロイル基〕を側鎖に1個有するモノマー単位である。
【0053】
上記式(4)に示される、ラジカル重合性二重結合を含む特定の側鎖構造は、アクリレート系共重合体の前駆体となる共重合体に水酸基を導入しておき、この水酸基に(メタ)アクリロイル基を1個有するイソシアナート化合物を付加させる方法によって形成することができる。(メタ)アクリロイル基を1個有するイソシアナート化合物を具体的に例示すれば、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアナート、2−アクリロイルオキシエチルイソシアナートである。(メタ)アクリロイル基を1個有するイソシアナート化合物は、1種のみを用いてもよいし、2種以上併用してもよい。
【0054】
アクリレート系共重合体に含まれる全モノマー単位中、モノマー単位(1)、(2)及び(3)以外の他のモノマー単位の含有量は、1〜58mol%であり、好ましくは10〜30mol%である。他のモノマー単位の含有量が1mol%未満であると、他のモノマー単位を含有させることによって得られ得る上述の効果を十分に得ることができない。一方、58mol%を超えると、相対的にモノマー単位(1)、(2)及び/又は(3)の含有量が所定量を下回るため、印刷特性が低下したり、導電性ペーストのエレクトロケミカルマイグレーションの抑制が不十分になったりする。
【0055】
アクリレート系共重合体がモノマー単位(4)を含有する場合、その含有量は、モノマー単位(1)100mol%に対して、50mol%以下であることが好ましく、30mol%以下であることがより好ましく、20mol%以下であることがさらに好ましい。モノマー単位(4)の含有量があまりに多いと、導電性ペーストのエレクトロケミカルマイグレーションの抑制が不十分となる。
【0056】
アクリレート系共重合体は、次の工程:
I.モノマー単位(2)を構成するモノマー、及びモノマー単位(1)を形成するモノマー単位である水酸基又はグリシジル基含有(メタ)アクリル系モノマー、さらに任意で導入されるその他のモノマー単位〔モノマー単位(3)など〕を構成するモノマーからなるモノマー組成物を、溶液重合法等の公知の方法を用いてラジカル重合させる工程、並びに
II.上記水酸基又はグリシジル基に、上述の(メタ)アクリロイル基を2個有するイソシアナート化合物、又は上述の水酸基及び2個の(メタ)アクリロイル基を有する化合物と無水コハク酸との反応物を付加させる工程
によって製造することができる。
【0057】
アクリレート系共重合体の重量平均分子量(Mw)は、80000以上であることが好ましい。アクリレート系共重合体が上述のモノマー単位(1)及び(2)、好ましくはさらにモノマー単位(3)をそれぞれ所定量含み、かつそのMwが80000以上であることにより、受容層上に印刷される導電性ペーストのエレクトロケミカルマイグレーションをより良好に抑制することができ、印刷特性にもより優れるアクリレート系共重合体を実現することができる。また、アクリレート系共重合体のMwが80000未満であると、十分な印刷特性を得ることができない傾向にある。アクリレート系共重合体のMwは、より好ましくは100000以上である。また、アクリレート系共重合体のMwは、通常500000以下であり、好ましくは400000以下である。アクリレート系共重合体のMwは、後述の実施例の項に記載の測定方法に従う。
【0058】
<樹脂組成物>
本発明の樹脂組成物は、上記アクリレート系共重合体の1種又は2種以上と、ラジカル重合開始剤とを含む硬化性の樹脂組成物である。ラジカル重合開始剤としては、光ラジカル重合開始剤、熱ラジカル重合開始剤を挙げることができ、これらの双方を含むこともできる。本発明の樹脂組成物は、紫外線や電子線のような活性エネルギー線の照射、加熱、又は活性エネルギー線の照射と加熱との双方によって硬化し、架橋反応を起こし得る。当該樹脂組成物を含む受容層の硬化物、ひいては当該硬化物層上に導電性ペーストのパターン(配線パターン)が形成された基板は、耐溶剤性及び耐熱性に優れる。また、本発明の樹脂組成物を含む受容層によれば、その上に印刷される導電性ペーストのエレクトロケミカルマイグレーションを良好に抑制することができる。
【0059】
例えば本発明の樹脂組成物が熱硬化性であり、加熱によって受容層を硬化させる場合、その上に形成される導電性ペーストの焼成における熱処理によって受容層を硬化させることができる。このように導電性ペーストの焼成と受容層の硬化とを同時に行うことは、導電性ペースト(配線)の割れを回避するうえで有利である。
【0060】
〔a〕光ラジカル重合開始剤
光ラジカル重合開始剤は、樹脂組成物を活性エネルギー線硬化性樹脂組成物とする場合に使用される。使用し得る光ラジカル重開始剤の例を挙げれば、例えば、アセトフェノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、p−ジメチルアセトフェノン、p−ジメチルアミノプロピオフェノン、ジクロロアセトフェノン、トリクロロアセトフェノン、p−tert−ブチルアセトフェノン等のアセトフェノン類;ベンゾフェノン、2−クロロベンゾフェノン、p,p−ビスジメチルアミノベンゾフェノン等のベンゾフェノン類;ベンジル、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル等のベンゾインエ−テル類;ベンジルジメチルケタール、チオキサンテン、2−クロロチオキサンテン、2,4−ジエチルチオキサンテン、2−メチルチオキサンテン、2−イソプロピルチオキサンテン等のイオウ化合物;2−エチルアントラキノン、オクタメチルアントラキノン、1,2−ベンズアントラキノン、2,3−ジフェニルアントラキノン等のアントラキノン類;2−メルカプトベンゾイミダール、2−メルカプトベンゾオキサゾール、2−メルカプトベンゾチアゾール等のチオール化合物;2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジ(m−メトキシフェニル)−イミダゾリル二量体等のイミダゾリル化合物;p−メトキシトリアジン等のトリアジン化合物;2,4,6−トリス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−メチル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−[2−(5−メチルフラン−2−イル)エテニル]−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−[2−(フラン−2−イル)エテニル]−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−[2−(4−ジエチルアミノ−2−メチルフェニル)エテニル]−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−[2−(3,4−ジメトキシフェニル)エテニル]−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4−メトキシフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4−エトキシスチリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4−n−ブトキシフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン等のハロメチル基を有するトリアジン化合物;2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1オン等のアミノケトン化合物などである。光ラジカル重合開始剤は、1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0061】
樹脂組成物における光ラジカル重合開始剤の含有量は、硬化性樹脂(アクリレート系共重合体、並びに任意で使用される後述の多官能アクリル系モノマー及び多官能アクリル系オリゴマーの合計)100重量部に対して、通常0.1〜10重量部であり、好ましくは1〜5重量部である。
【0062】
〔b〕熱ラジカル重合開始剤
熱ラジカル重合開始剤は、樹脂組成物を熱硬化性樹脂組成物とする場合に使用される。使用し得る熱ラジカル重開始剤の例を挙げれば、例えば、2,2'−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス−(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)等のニトリル系アゾ化合物(ニトリル系アゾ系重合開始剤);ジメチル−2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、2,2’−アゾビス(2,4,4−トリメチルペンタン)等の非ニトリル系アゾ化合物(非ニトリル系アゾ系重合開始剤);tert−ヘキシルペルオキシピバレート、tert−ブチルペルオキシピバレート、3,5,5−トリメチルヘキサノイルペルオキシド、オクタノイルペルオキシド、ラウロイルペルオキシド、ステアロイルペルオキシド、1,1,3,3−テトラメチルブチルペルオキシ−2−エチルヘキサノエート、サクシニックペルオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(2−エチルヘキサノイルペルオキシ)ヘキサン、1−シクロヘキシル−1−メチルエチルペルオキシ−2−エチルヘキサノエート、tert−ヘキシルペルオキシ−2−エチルヘキサノエート、4−メチルベンゾイルペルオキシド、ベンゾイルペルオキシド、1,1’−ビス−(tert−ブチルペルオキシ)シクロヘキサン等の有機過酸化物(パーオキサイド系重合開始剤);及び過酸化水素などである。
【0063】
熱ラジカル重合開始剤は、1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。また、本発明の樹脂組成物は、光ラジカル重合開始剤及び熱ラジカル重合開始剤を含み、デュアル硬化型とすることもできる。
【0064】
樹脂組成物における熱ラジカル重合開始剤の含有量は、硬化性樹脂(アクリレート系共重合体、並びに任意で使用される後述の多官能アクリル系モノマー及び多官能アクリル系オリゴマーの合計)100重量部に対して、通常0.1〜10重量部であり、好ましくは1〜5重量部である。
【0065】
〔c〕多官能アクリル系モノマー、多官能アクリル系オリゴマー
本発明の樹脂組成物は、硬化物の特性を制御したり、向上させたりする目的で、多官能アクリル系モノマー及び/又は多官能アクリル系オリゴマーをさらに含むことができる。アクリル系モノマー、多官能アクリル系オリゴマーは、光ラジカル重合開始剤又は熱ラジカル重合開始剤によって発生したラジカルの作用によりアクリレート系共重合体とラジカル共重合して架橋し得る化合物であることができる。具体的には、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロポキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトール(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート(DPHA)、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート(DPPA)、エトキシ化ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、プロポキシ化ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートのような、多価アルコールの(メタ)アクリレートやこれらのオリゴマーを挙げることができる。多価アルコールは、その分子内にエーテル結合、エステル結合、ウレタン結合を有していてもよい。多官能アクリル系モノマー、多官能アクリル系オリゴマーは、1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0066】
樹脂組成物における多官能アクリル系モノマー及び多官能アクリル系オリゴマーの合計含有量は、印刷特性の悪化を防止する観点から、アクリレート系共重合体100重量部に対して、通常0.1〜10重量部であり、好ましくは0.1〜5重量部である。
【0067】
〔d〕溶剤
本発明の樹脂組成物は、溶剤を含むことができる。使用し得る溶剤の例を挙げれば、例えば、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、芳香族石油ナフタ、テトラリン、テレビン油、ソルベッソ(登録商標)#100〔エクソン化学(株)〕、ソルベッソ(登録商標)#150〔エクソン化学(株)〕等の芳香族炭化水素;ジオキサン、テトラヒドロフラン、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル類;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n−プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸n−ブチル、酢酸i−ブチル、酢酸sec−ブチル、酢酸アミル、酢酸メトキシブチル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、3−メトキシブチルアセテート等のエステル及びエーテルエステル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルアミルケトン、シクロヘキサノン、イソホロン、メシチルオキサイド、メチルイソアミルケトン、エチル−n−ブチルケトン、エチルアミルケトン、ジイソブチルケトン、ジエチルケトン、メチルプロピルケトン、ジイソブチルケトン等のケトン類;トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、ジメチルスルホキシド等を挙げることができる。なかでも、塗膜の乾燥速度や樹脂組成物の均一分散性の観点から、3−メトキシブチルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、メチルイソブチルケトン、酢酸エチル、メチルエチルケトン等が好ましい。溶剤は、1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0068】
上記のほか、本発明の樹脂組成物は、例えばシリカなどの無機物や、カップリング剤などの密着性向上成分のような添加剤を必要に応じて含むことができる。
【0069】
<受容層付き基板>
図1は、本発明に係る受容層付き基板の表面に導電性ペーストのパターン(配線パターン)を形成したときの状態を示す模式的な断面図である。
図1に示されるように、本発明の受容層付き基板は、基板10と、基板10の表面上に形成される受容層11とを含む。この受容層11の表面上に導電性ペースト12によるパターンを印刷することにより、配線基板を得ることができる。本発明の受容層付き基板は、受容層11が上述のアクリレート系共重合体又はこれを含む樹脂組成物からなるので、受容層11の上に導電性ペースト12を印刷しても導電性ペースト12がかすれにくく、かつ滲みにくく、印刷特性に優れており、また、受容層11の上に印刷される導電性ペースト12のエレクトロケミカルマイグレーションを良好に抑制することができる。また受容層11は、硬化性に優れており、その硬化物は、耐溶剤性及び耐熱性に優れている。
【0070】
受容層11は、上述のアクリレート系共重合体又は樹脂組成物を、例えばバーコーター法、ロールコーター法、スクリーン印刷法のようなコーティング法で塗布することにより形成できる。受容層11を形成する前に、放電処理や紫外線照射によって基板10を表面処理してもよいし、基板10の表面にシランカップリング剤を塗布することによってプライマーを形成して表面処理を行ってもよい。
【0071】
受容層11の厚みは特に制限されないが、通常0.1〜20μm程度である。本発明に係る受容層11が示す優れた印刷特性、及びエレクトロケミカルマイグレーション抑制性は、十分に小さい膜厚でも発揮されるので受容層11は十分に小さい厚みを有することができる。これにより、基板10自体の特性を阻害することなく、基板10上に受容層11を形成することができる。
【0072】
基板10としては、アクリレート系共重合体を弾くことなくコーティングできる材料であれば、特に限定されず、例えばポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム等のポリエステルフィルムや、ポリイミドフィルム、ガラスエポキシ基板、紙フェノール基板などを挙げることができる。金属箔を基板として用いることもできる。
【0073】
導電性ペースト12は、金属成分等の導電性成分、有機成分及び溶剤を含むインク組成物であることが好ましい。導電性成分としては、Ag、Cu、Pd、Au及びPtからなる群より選択される1種以上の金属;炭素粉末;前述した金属の酸化物や有機金属化合物を用いることができる。
【0074】
有機成分としては、フェノール系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂のような樹脂の他、低分子量化合物を用いることも可能である。有機成分は、カルボキシル基又はフェノール性水酸基のような酸性官能基を有するものであることが好ましく、有機成分が樹脂である場合、当該樹脂は、ポリマー主鎖や側鎖の末端に酸性官能基を有することができる。
【0075】
カルボキシル基を有する有機成分の具体例は、酸無水物、脂肪酸、(メタ)アクリル酸、末端にカルボキシル基を有するポリエステル系樹脂及びアクリル系樹脂を含む。フェノール性水酸基を有する有機成分の具体例は、ノボラック型フェノール樹脂、レゾール型フェノール樹脂、クレゾールノボラック樹脂、レゾルシノール誘導体、ナフトール誘導体を含む。
【0076】
導電性ペースト12に含まれる溶剤は、極性の低い溶剤を主に含むものであることが好ましい。極性の低い溶剤とは、エステル基、エーテル基、ケトン基等の官能基を有する溶剤であり、例えばトルエン、キシレン、ブチルカルビトールアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等を挙げることができる。
【0077】
本発明の受容層付き基板は、上記の導電性ペーストのみに適用されるものではなく、例えばインクジェットプリンタによって塗布されるインク等の他、従来公知のインクに対しても有効に効果を発揮する。
【実施例】
【0078】
以下、実施例を示して本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。
【0079】
<実施例1〜8:アクリレート系共重合体の製造>
温度計、攪拌機、滴下ロート、及び還流冷却機を備えたフラスコに、表1に示されるモノマーうち、1,1−(ビスアクリロイルオキシメチル)エチルイソシアネート以外のモノマーを表1に示されるモル比で仕込み、溶媒としてプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ラジカル重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリルを入れ、窒素雰囲気下、80℃で6時間、次いで105℃で1時間攪拌した。次に、表1に示されるモル比で、1,1−(ビスアクリロイルオキシメチル)エチルイソシアネートを加え、さらにジブチルヒドロキシトルエン(BHT)及びジオクチル錫〔日東化成(株)製「ネオスタン U−810」〕を加えた後、75℃で表1に示される時間(表1に示される「反応時間」)、撹拌して、アクリレート系共重合体溶液を得た。反応の進行はIR(赤外線吸収スペクトル)によりモニターしつつ、2200cm
-1のイソシアネート基由来のピークが消失した時点とした。表1は、使用した各モノマーのモル比を示している。
【0080】
<実施例9:アクリレート系共重合体の製造>
温度計、攪拌機、滴下ロート、及び還流冷却機を備えたフラスコに、2−ヒドロキシ−1−アクリロイルオキシ−3−メタクリロイルオキシプロパンと無水コハク酸とを80:20のモル比で仕込み、触媒としてトリエチルアミンを入れ、80℃で6時間撹拌し、反応物Aを得た。反応の進行はIR(赤外線吸収スペクトル)によりモニターしつつ、1785cm
-1の無水カルボキシル基由来のピークが消失した時点とした。
【0081】
温度計、攪拌機、滴下ロート、及び還流冷却機を備えた上記とは別のフラスコに、表1に示されるモノマーうち、上記の反応物A以外のモノマーを表1に示されるモル比で仕込み、溶媒としてプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ラジカル重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリルを入れ、窒素雰囲気下、80℃で6時間、次いで105℃で1時間攪拌した。次に、表1に示されるモル比で、反応物A及びp−メトキシフェノールを加えた後、90℃で表1に示される時間(表1に示される「反応時間」)、撹拌して、アクリレート系共重合体溶液を得た。
【0082】
<比較例1:アクリレート系共重合体の製造>
温度計、攪拌機、滴下ロート、及び還流冷却機を備えたフラスコに、表1に示されるモノマーうち、メタクリル酸2−イソシアナトエチル以外のモノマーを表1に示されるモル比で仕込み、溶媒として水、分散剤としてポリビニルアルコール、ラジカル重合開始剤としてラウリルパーオキサイドを入れ、窒素雰囲気下、70℃で4時間、次いで80℃で2時間攪拌した。冷却後、濾別することにより樹脂固体を得た。この樹脂固体を酢酸エチルとトルエンの混合溶媒に加熱溶解して、樹脂溶液を得た。この樹脂溶液に、表1に示されるモル比で、メタクリル酸2−イソシアナトエチルを加え、さらにジブチルヒドロキシトルエン(BHT)及びジオクチル錫〔日東化成(株)製「ネオスタン U−810」〕を加えた後、75℃で表1に示される時間(表1に示される「反応時間」)、撹拌して、アクリレート系共重合体溶液を得た。反応の進行はIR(赤外線吸収スペクトル)によりモニターしつつ、2200cm
-1のイソシアネート基由来のピークが消失した時点とした。
【0083】
【表1】
【0084】
得られたアクリレート系共重合体におけるモノマー単位(1)〜(4)及びその他のモノマー単位の含有量(mol%)、アクリレート系共重合体の重量平均分子量(Mw)、並びに得られたアクリレート系共重合体溶液の固形分濃度(重量%)を表2に示す。
【0085】
【表2】
【0086】
重量平均分子量は、ポンプ〔製品名:ポンプPU−2080plus(JASCO製)〕、検出器〔製品名:RI−2030plus(JASCO製)〕、デガッサー〔製品名:DG−2080−53(JASCO製)〕、恒温槽〔製品名:CO-2065plus(JASCO製)〕で構成したSEC(サイズ排除クロマトグラフィー)測定装置により測定した。なお、SEC測定のカラムとしては、Shodex(登録商標)のKF−805L(昭和電工株式会社製)を用いた。
【0087】
<実施例10〜18、比較例2:樹脂組成物の調製>
上で得られたアクリレート系共重合体溶液を用いて、表3に示される配合組成に従って硬化性の樹脂組成物を調製した。重合開始剤の配合量は、アクリレート系共重合体溶液の固形分100重量部に対する重量部である。表3に示される重合開始剤の詳細は次のとおりである。
【0088】
a:熱ラジカル重合開始剤「パーヘキサHC」(1,1−ジ(t−ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン、株式会社日油製)、
b:光ラジカル重合開始剤「ダロキュア1173」(2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、BASF社製)、
c:熱ラジカル重合開始剤「パーブチルO」(t−ブチルペルオキシ−2−エチルヘキサノアート、株式会社日油製)。
【0089】
<性能評価試験>
得られた樹脂組成物について、次のエレクトロケミカルマイグレーション試験を行った。まず、熱ラジカル重合開始剤を含有する実施例10〜17及び比較例2については、樹脂組成物をPETフィルムからなる基板上に塗布した後、45℃で30分間放置し、基板上に受容層を形成した。光ラジカル開始剤と熱ラジカル重合開始剤とを含有する実施例18については、高圧水銀ランプの紫外光を照度50mW/cm
2、積算光量520mJ/cm
2で照射した後、100℃で2分間放置し、基板上に受容層を形成した。次いで、スクリーン印刷版として、SUS304製、線径16μm、平織りカレンダー加工・黒染め有り・500番メッシュ(20μm厚)に10μmの厚みの樹脂を塗布したものを準備した。
【0090】
このスクリーン印刷版を用い、スクリーン印刷機〔製品名:LS−150(ニューロング精密工業株式会社製)〕によって、スキージ幅170mm、スキージ速度30mm/s、スキージ角度85°、印圧0.15MPa、背圧0.1MPa、クリアランス1.5mmというスキージ条件で導電性ペーストを塗布することにより、導体幅/導体間隔=100μm/100μmのJPCA規格(JPCA−BU01−2007)に準拠した導電性ペーストのくし型パターンを印刷した。導電性ペーストには、金属成分としてAgを含む導電性ペースト〔製品名:RA FS 045(トーヨーケム株式会社製)〕を用いた。次いで、大気中、150℃で30分間加熱することにより、受容層とくし形に印刷した導電性ペーストとを硬化させた。
【0091】
イオンマイグレーション評価システム〔製品名:AMI−075−U−5(エスペック株式会社製)〕及び小型環境試験器〔製品名:SH−261(エスペック株式会社製)〕を用い、硬化後のくし形パターンの両端に直流15Vの電圧を負荷させながら60℃/90%RHの環境で500時間保持するエレクトロケミカルマイグレーション試験を行った。試験後も絶縁抵抗値が10
7Ω以上である場合をA(良好)、試験後の絶縁抵抗値が10
7Ω未満である場合をB(不良)とした。結果を表3に示す。
【0092】
【表3】