【実施例】
【0042】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明は、これらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0043】
(合成例p−1)
<化合物p−1の合成>
攪拌器、温度計を設置した200mL三口フラスコに4−ジメチルアミノアセトフェノン5.00g(0.0368mol)、2−(ブロモメチル)アクリル酸エチル8.52g(0.0441mol)、アセトニトリル25gを入れ、フラスコを遮光状態にして攪拌をしながらp−トルエンスルホン酸銀10.27g(0.0368mol)をアセトニトリル25gに溶解したものを室温にてゆっくり添加した。その後、さらに遮光下で室温24時間撹拌し反応させた。反応終了後、濾過により析出した臭化銀を除去し、溶液を減圧によりアセトニトリルを留去することで結晶を析出させた。この結晶を酢酸エチルで洗浄し、減圧濾過により結晶を取り出し、24時間減圧乾燥することで下記構造式(p−1)で表される化合物p−1の白色結晶12.93gを得た。
【化8】
【0044】
(合成例p−2)
<化合物p−2の合成>
合成例p−1において、4−ジメチルアミノアセトフェノンを4−(ジメチルアミノ)安息香酸エチル7.11g(0.0368mol)とした以外は、合成例p−1と同様にして下記構造式(p−2)で表される化合物p−2の白色結晶13.29gを得た。
【化9】
【0045】
(合成例p−3)
<化合物p−3の合成>
合成例p−1において、4−ジメチルアミノアセトフェノンを4−(ジメチルアミノ)安息香酸2−エチルヘキシル10.21g(0.0368mol)とした以外は、合成例p−1と同様にして下記構造式(p−3)で表される化合物p−3の白色結晶13.44gを得た。
【化10】
【0046】
(合成例p−4)
<化合物p−4の合成>
合成例p−1において、4−ジメチルアミノアセトフェノンを4−(ジメチルアミノ)安息香酸エチル7.11g(0.0368mol)とし、さらに、2−(ブロモメチル)アクリル酸エチルを3−ブロモ−2−メチル−1−プロペン5.95g(0.0441mol)とした以外は、合成例p−1と同様にして下記構造式(p−4)で表される化合物p−4の白色結晶12.20gを得た。
【化11】
【0047】
(合成例p−5)
<化合物p−5の合成>
合成例p−1において、4−ジメチルアミノアセトフェノンを4−(ジメチルアミノ)安息香酸エチル7.11g(0.0368mol)とし、さらに、2−(ブロモメチル)アクリル酸エチルをアリルブロミド5.34g(0.0441mol)とした以外は、合成例p−1と同様にして下記構造式(p−5)で表される化合物p−5の白色結晶10.89gを得た。
【化12】
【0048】
(合成例p−6)
<化合物p−6の合成>
合成例p−1において、4−ジメチルアミノアセトフェノンをN,N−ジメチルアニリン4.46g(0.0368mol)とした以外は、合成例p−1と同様にして下記構造式(p−6)で表される化合物p−6の白色結晶12.39gを得た。
【化13】
【0049】
(合成例p−7)
<化合物p−7の合成>
合成例p−1において、4−ジメチルアミノアセトフェノンをN,N−ジメチルアニリン4.46g(0.0368mol)とし、さらに、2−(ブロモメチル)アクリル酸エチルを3−ブロモ−2−メチル−1−プロペン5.95g(0.0441mol)とした以外は、合成例p−1と同様にして下記構造式(p−7)で表される化合物p−7の白色結晶9.72gを得た。
【化14】
【0050】
(合成例p−8)
<化合物p−8の合成>
合成例p−1において、4−ジメチルアミノアセトフェノンをN,N−ジメチルアニリン4.46g(0.0368mol)とし、さらに、2−(ブロモメチル)アクリル酸エチルをアリルブロミド5.34g(0.0441mol)とした以外は、合成例p−1と同様にして下記構造式(p−8)で表される化合物p−8の白色結晶8.71gを得た。
【化15】
【0051】
(実施例1(合成例1−A))
<一般式(1)化合物1−Aの合成>
攪拌器を設置した500mL三口フラスコに合成例p−1で合成した化合物(p−1)3g(0.00670mol)と純水100gを入れ、室温で撹拌し溶解させた。そこに、攪拌しながらテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートナトリウムの3質量%水溶液156.79g(0.00670mol)をゆっくり添加し、白色結晶を析出させた。さらに2時間、室温にて攪拌を行い、その後減圧濾過にて結晶を取り出し、純水にて洗浄を行った後、24時間減圧乾燥することで、構造式(1−A)で表される一般式(1)化合物1−Aの白色結晶6.21g(収率97.0%)を得た。
【化16】
【0052】
<化合物分析結果>
<<
1H−NMR分析>>
測定装置:Varian製 Mercury plus300
溶媒:アセトン
[結果(δ値)]
1.15(3H、t、(a))、2.64(3H、s、(b))、3.98(6H、s、(c))、4.03(2H、q、(d))、5.00(2H,s、(e))、6.14&6.71(1H、s、(f))、8.15〜8.24(4H、m、(g)、(h))
【化17】
<<MS分析>>
測定装置:ACQUITY ULPCシステム WATERS社
[結果]
276(ESCI+)(アンモニウムカチオン)
679(ESCI−)(ボレートアニオン)
<<IR分析>>
[結果(cm
−1)]
3064、2996、2967、2908、1695、1644、1513、1459、1270、1081、973、900、775、755、682、661
【0053】
(実施例2(合成例2−A)
<一般式(1)化合物2−Aの合成>
実施例1において、化合物p−1を化合物p−2 3.2g(0.00670mol)に代えた以外は、実施例1と同様にして、構造式(2−A)で表される一般式(1)化合物2−Aの白色結晶6.29g(収率95.3%)を得た。
【化18】
【0054】
<化合物分析結果>
<<
1H−NMR分析>>
溶媒:アセトン
[結果(δ値)]
1.16(3H、t、(a))、1.37(3H、t、(b))、3.99(6H、s、(c))、4.04(2H、q、(d))、4.39(2H、q、(e))、5.01(2H、s、(f))、6.15&6.72(1H、s、(g))、8.15〜8.25(4H、m、(h)、(i))
【化19】
<<MS分析>>
[結果]
306(ESCI+)(アンモニウムカチオン)
679(ESCI−)(ボレートアニオン)
<<IR分析>>
[結果(cm
−1)]
3064、3000、2906、1772、1697、1644、1513、1459、1371、1288、1081、973、902、769、755、698、682、661
【0055】
(実施例3(合成例3−A)
<一般式(1)化合物3−Aの合成>
実施例1において、化合物p−1を化合物p−3 3.76g(0.00670mol)に代えた以外は、実施例1と同様にして、構造式(3−A)で表される一般式(1)化合物3−Aの白色結晶7.06g(収率98.5%)を得た。
【化20】
【0056】
<化合物分析結果>
<<
1H−NMR分析>>
溶媒:アセトン
[結果(δ値)]
0.84〜0.97(6H、m、(b)、(c))、1.15(3H、t、(a))、1.19〜1.51(8H、m、(d)、(e)、(f)、(g))、1.71〜1.79(1H、m、(h))、3.99(6H、s、(i))、4.03(2H、q、(j))、4.30(2H、q、(k))、5.01(2H、s、(l))、6.17&6.71(2H、s、(m))、8.16〜8.25(4H、m、(n)、(o))
【化21】
<<MS分析>>
[結果]
390(ESCI+)(アンモニウムカチオン)
679(ESCI−)(ボレートアニオン)
<<IR分析>>
[結果(cm
−1)]
3122、2965、1710,1643、1513、1454、1274、1081、971、854,773,684,661
【0057】
(実施例4(合成例4−A)
<一般式(1)化合物4−Aの合成>
実施例1において、化合物p−1を化合物p−4 2.81g(0.00670mol)に代えた以外は、実施例1と同様にして、構造式(4−A)で表される一般式(1)化合物4−Aの白色結晶5.98g(収率96.3%)を得た。
【化22】
【0058】
<化合物分析結果>
<<
1H−NMR分析>>
溶媒:DMSO
[結果(δ値)]
1.27(3H、s、(a))、1.32(3H、t、(b))、3.62(6H、s、(c))、4.34(2H、q、(d))、4.52(2H、s、(e))、5.12&5.30(1H、s、(f))、8.09〜8.17(4H、m、(g)、(h))
【化23】
<<MS分析>>
[結果]
248(ESCI+)(アンモニウムカチオン)
679(ESCI−)(ボレートアニオン)
<<IR分析>>
[結果(cm
−1)]
3126、2991、1712、1644、1511、1455、1276、1081、971、769、755、684、661
【0059】
(実施例5(合成例5−A)
<一般式(1)化合物5−Aの合成>
実施例1において、化合物p−1を化合物p−5 2.72g(0.00670mol)に代えた以外は、実施例1と同様にして、構造式(5−A)で表される一般式(1)化合物5−Aの白色結晶5.75g(収率93.9%)を得た。
【化24】
【0060】
<化合物分析結果>
<<
1H−NMR分析>>
溶媒:DMSO
[結果(δ値)]
1.32(3H、t、(a))、3.60(6H、s、(b))、4.34(2H、q、(c))、4.55(2H、d、(d))、5.42〜5.48(2H、m、(e))、5.57〜5.70(1H、m、(f))8.03〜8.16(4H、m、(g)、(h))
【化25】
<<MS分析>>
[結果]
234(ESCI+)(アンモニウムカチオン)
679(ESCI−)(ボレートアニオン)
<<IR分析>>
[結果(cm
−1)]
3124、2998、1714、1643、1608、1513、1455、1419、1371、1276、1199、1083、1016、973、889、854、769、755、698、684、661
【0061】
(実施例6(合成例2−B)
<一般式(1)化合物2−Bの合成>
実施例1において、化合物p−1を化合物p−2 3.2g(0.00670mol)に代え、さらに、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートナトリウムの3質量%水溶液をヘキサフルオロアンチモン酸ナトリウム3質量%水溶液57.80g(0.00670mol)に代えた以外は、実施例1と同様にして、構造式(2−B)で表される一般式(1)化合物2−Bの白色結晶2.74g(収率87.1%)を得た。
【化26】
【0062】
<化合物分析結果>
<<
1H−NMR分析>>
溶媒:アセトン
[結果(δ値)]
1.16(3H、t、(a))、1.38(3H、t、(b))、4.00(6H、s、(c))、4.04(2H、q、(d))、4.40(2H、q、(e))、5.01(2H、s、(f))、6.16&6.73(1H、s、(g))、8.16〜8.26(4H、m、(h)、(i))
【化27】
<<MS分析>>
[結果]
306(ESCI+)(アンモニウムカチオン)
235(ESCI−)(アンチモナートアニオン)
【0063】
(実施例7(合成例4−B)
<一般式(1)化合物4−Bの合成>
実施例1において、化合物p−1を化合物p−4 2.81g(0.00670mol)に代え、さらにテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートナトリウムの3質量%水溶液をヘキサフルオロアンチモン酸ナトリウム3質量%水溶液57.80g(0.00670mol)に代えた以外は、実施例1と同様にして、構造式(4−B)で表される一般式(1)化合物4−Bの白色結晶2.37g(収率85.9%)を得た。
【化28】
【0064】
<化合物分析結果>
<<
1H−NMR分析>>
溶媒:DMSO
[結果(δ値)]
1.27(3H、s、(a))、1.31(3H、t、(b))、3.62(6H、s、(c))、4.34(2H、q、(d))、4.53(2H、s、(e))、5.12&5.30(1H、s、(f))、8.09〜8.18(4H、m、(g)、(h))
【化29】
<<MS分析>>
[結果]
248(ESCI+)(アンモニウムカチオン)
235(ESCI−)(アンチモナートアニオン)
【0065】
(比較化合物例1(合成例6−A))
<比較化合物6−Aの合成>
実施例1において、化合物p−1を化合物p−6 2.72g(0.00670mol)に代えた以外は、実施例1と同様にして、構造式(6−A)で表される比較化合物6−Aの白色結晶5.95g(収率97.3%)を得た。
【化30】
【0066】
(比較化合物例2(合成例7−A))
<比較化合物7−Aの合成>
実施例1において、化合物p−1を化合物p−7 2.33g(0.00670mol)に代えた以外は、実施例1と同様にして、構造式(7−A)で表される比較化合物7−Aの白色結晶5.39g(収率94.1%)を得た。
【化31】
【0067】
(比較化合物例3(合成例8−A))
<比較化合物8−Aの合成>
実施例1において、化合物p−1を化合物p−8 2.23g(0.00670mol)に代えた以外は、実施例1と同様にして、構造式(8−A)で表される比較化合物8−Aの白色結晶5.46g(収率96.8%)を得た。
【化32】
【0068】
(比較化合物例4(合成例6−B))
<比較化合物6−Bの合成>
実施例1において、化合物p−1を化合物p−6 2.72g(0.00670mol)に代え、さらに、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートナトリウムの3質量%水溶液をヘキサフルオロアンチモン酸ナトリウム3質量%水溶液57.80g(0.00670mol)に代えた以外は、実施例1と同様にして、構造式(6−B)で表される比較化合物6−Bの白色結晶2.76g(収率87.5%)を得た。
【化33】
【0069】
(一般式(2)化合物の合成例1)
<一般式(2)化合物101の合成>
攪拌器を設置した200mL三口フラスコにトリメチルアニリニウムクロライド1g(0.00583mol)と純水20gを入れ、室温で撹拌し溶解させた。そこに、攪拌しながらn−ブチルトリフェニルボレートリチウムの3質量%水溶液59.5g(0.00583mol)をゆっくり添加し、白色結晶を析出させた。さらに4時間、室温にて攪拌を行い、その後減圧濾過にて結晶を取り出し、純水にて洗浄を行った後、24時間減圧乾燥することで、構造式(101)で表される一般式(2)化合物101の白色結晶2.09g(収率82.3%)を得た。
【化34】
【0070】
(一般式(2)化合物の合成例2)
<一般式(2)化合物102の合成>
一般式(2)化合物の合成例1において、トリメチルアニリニウムクロライドを1−メチルピリジニウムクロライド0.755g(0.00583mol)に代えた以外は、一般式(2)化合物の合成例1と同様にして、構造式(102)で表される一般式(2)化合物102の白色結晶2.16g(収率77.8%)を得た。
【化35】
【0071】
(一般式(2)化合物の合成例3)
<一般式(2)化合物103の合成>
一般式(2)化合物の合成例1において、トリメチルアニリニウムクロライドをジフェニルヨードニウムクロライド1.85g(0.00583mol)に代えた以外は、一般式(2)化合物の合成例1と同様にして、構造式(103)で表される一般式(2)化合物103の白色結晶3.06g(収率90.5%)を得た。
【化36】
【0072】
(一般式(2)化合物の合成例4)
<一般式(2)化合物104の合成>
一般式(2)化合物の合成例1において、トリメチルアニリニウムクロライドをトリフェニルスルホニウムブロミド2.00g(0.00583mol)に代えた以外は、一般式(2)化合物の合成例1と同様にして、構造式(104)で表される一般式(2)化合物104の白色結晶3.07g(収率93.5%)を得た。
【化37】
【0073】
<一般式(2)の化合物105>
東京化成工業株式会社製 テトラフェニルホスホニウム=テトラフェニルボレートを用意した。
【0074】
<一般式(2)の化合物106>
東京化成工業株式会社製 テトラフェニルホスホニウム=テトラp-トリルボレートを用意した。
【0075】
(実施例8〜74及び比較例1〜36)
表1−1から表1−10に示す配合にしたがって熱硬化性樹脂組成物を作製した。
作製した熱硬化性樹脂組成物をシリコーン系離型処理された剥離PET(ポリエチレンテレフタレート)にコーティングし、60℃に設定された熱風循環オーブン中で5分間乾燥することにより、平均厚み15μmの熱硬化性シートを作製した。
【0076】
【表1-1】
【0077】
【表1-2】
【0078】
【表1-3】
【0079】
【表1-4】
【0080】
【表1-5】
【0081】
【表1-6】
【0082】
【表1-7】
【0083】
【表1-8】
【0084】
【表1-9】
【0085】
【表1-10】
【0086】
表1−1から表1−10における数値は、溶剤分を除いた配合量であり、単位は、質量部である。一般式(1)化合物及び比較化合物の数値は、構造式(1−A)の一般式(1)の化合物の5質量部を基準とし、同一のモル量となるようにした。ただし、実施例17〜19及び実施例70から71は例外である。
なお、表1−1から表1−10における各材料は、以下のとおりである。
YP−70:新日鐵住金化学株式会社製、ビスフェノールA/ビスフェノールF共重合型フェノキシ樹脂
FX−316:新日鐵住金化学株式会社製、ビスフェノールF型フェノキシ樹脂
YL980:三菱化学株式会社製、ビスフェノールAタイプエポキシ樹脂
YL983U:三菱化学株式会社製、ビスフェノールFタイプエポキシ樹脂
CEL2021P:ダイセル化学工業株式会社製 脂環式エポキシ
OXT−121:東亞合成株式会社製 キシリレンビスオキセタン
パーロイルL:日油株式会社製、ジラウロイルパーオキサイド
パーヘキサHC:日油株式会社製 1,1−ジ(t−ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン
AO−80:株式会社ADEKA製 商品名:アデカスタブAO−80(セミヒンダー
ド型酸化防止剤)
P3B:昭和電工株式会社製、テトラブチルアンモニウム=n―ブチルトリフェニルボレート
BP3B:昭和電工株式会社製、テトラブチルアンモニウム=n―ブチルトリス−tert−ブチルフェニルボレート
N3B:昭和電工株式会社製、テトラブチルアンモニウム=n―ブチルトリナフチルボレート
【0087】
なお、配合する際、YP−70及びFX−316は、メチルエチルケトンの45質量%固形分溶液を用い、YL980、YL983U、CEL2021P、OXT−121は、原液を用いた。パーロイルLは、トルエンの30質量%固形分溶液を用いた。パーヘキサHCはMEKの30質量%溶液を用いた。一般式(1)化合物及び比較化合物は、メチルエチルケトンの30質量%固形分溶液を用いた。一般式(2)の化合物のうち構造式(105)と(106)以外はメチルエチルケトンの4質量%固形分溶液を用いた。構造式(105)と(106)は溶剤に対し難溶であったため、あらかじめYP−70のMEK溶液に分散させて用いた。
【0088】
(実施例8〜74及び比較例1〜36の熱硬化性シートの低温短時間硬化性及び保存安定性評価)
作製した実施例8〜74及び比較例1〜36の熱硬化性シート(平均厚み15μm)の低温短時間硬化性及び保存安定性を、エスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社製の示差走査熱量測定装置DSC6200を用いて評価した。
【0089】
<低温短時間硬化性の評価>
各熱硬化性シート1.5mgをDSC6200用の直径5mmのアルミ容器に入れ、クランプカバーをして、評価用サンプルを作製した。本サンプルをヒーター板に各々5秒間押し付けた後、示差走査熱量測定を行い、その発熱量と押し付ける前の発熱量から反応率を算出した。ヒーター板の温度は120℃及び130℃とした。
示差走査熱量測定による発熱挙動はエポキシ樹脂の硬化反応挙動を反映していることが当業界ではよく知られている。よって、ヒーター板による加熱前後の発熱量の比率は熱硬化性シート中のエポキシ樹脂の反応率を反映していると言える。
実用的な観点では、低温短時間硬化性としては、130℃で65%を超えていることが目安となる。
結果を表2−1から表2−10に示す。
−測定条件−
昇温速度 10℃/min(25℃〜300℃)
N
2ガス 100mL/min
サンプル重量 約1.5mg
【0090】
<保存安定性の評価>
保存安定性は、25℃/65%Rhの暗所環境下にて1週間放置前後の示差走査熱量測定における発熱量変化から減少率を算出することで評価した。先に記載した通り、示差走査熱量測定による発熱挙動はエポキシ樹脂の硬化反応挙動を反映しているので、放置前後の発熱量の変化量は放置中でのエポキシの反応進行量を反映する。放置前後で発熱量の変化が少ないほど保存安定性が高いと言える。実用的な観点では、具体的には、10%以下の減少に抑えることで熱硬化性シートとしての機能は維持できる。保存安定性の評価結果を表2−1〜表2−10に示す。
−測定条件−
昇温速度 10℃/min(25℃〜300℃)
N
2ガス 100mL/min
サンプル重量 約5mg
【0091】
【表2-1】
【0092】
【表2-2】
【0093】
【表2-3】
【0094】
【表2-4】
【0095】
【表2-5】
【0096】
【表2-6】
【0097】
【表2-7】
【0098】
【表2-8】
【0099】
【表2-9】
【0100】
【表2-10】
【0101】
表2−1〜表2−10の結果より、本発明の一般式(1)で表される特定の構造を有する化合物、及びラジカル発生剤を含有した実施例8〜21及び実施例29〜35の熱硬化性樹脂組成物及び熱硬化性シートは、低温短時間硬化性、及び保存安定性に優れていることが確認できた。
一般式(1)以外の比較化合物を使用した比較例1〜4及び比較例20〜23は、低温硬化性が劣っていた。また、本発明の一般式(1)の化合物はラジカル発生剤を含有することで顕著に低温短時間硬化性が発現する(比較例5〜11と実施例8〜14参照)が、比較化合物を使用したものはラジカル発生剤を含有させても低温短時間硬化性が顕著に発現しない(比較例1〜4と比較例12〜15参照)ことがわかる。
従って、低温硬化性と保存安定性の両立を図るうえで、本発明の一般式(1)で表される特定の構造を有する化合物、及びラジカル発生剤を含有させることが有効であることがわかった。
また、本発明の一般式(1)で表される特定の構造を有する化合物、及びラジカル発生剤を含有したものは低温硬化性および保存性が優れる(実施例8〜14および29〜35)が、さらに一般式(2)の化合物を含有することで低温短時間硬化性を維持しつつ保存安定性を向上させることがわかる(実施例22〜28および36〜71および74)。
一方、一般式(1)以外の比較化合物と一般式(2)の化合物を使用した比較例16〜19及び比較例24〜36は低温硬化性が劣っていた。
また、実施例51と実施例72および73の比較より、重合禁止剤の含有は保存安定性を向上させる好ましい態様であることもわかる。
以上より、低温硬化性と保存安定性の両立、特により優れた保存安定性を確保するうえで、本発明の一般式(1)で表される特定の構造を有する化合物及びラジカル発生剤に対し、さらに一般式(2)の化合物を含有させることは有効であった。