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特開2016-172813化合物、熱硬化性樹脂組成物、及び熱硬化性シート
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2016-172813(P2016-172813A)
(43)【公開日】2016年9月29日
(54)【発明の名称】化合物、熱硬化性樹脂組成物、及び熱硬化性シート
(51)【国際特許分類】
   C08G 59/68 20060101AFI20160902BHJP
   C08L 63/00 20060101ALI20160902BHJP
   C08L 71/10 20060101ALI20160902BHJP
   C07C 229/30 20060101ALI20160902BHJP
   C07C 229/60 20060101ALI20160902BHJP
   C07C 211/64 20060101ALI20160902BHJP
【FI】
   C08G59/68
   C08L63/00 A
   C08L71/10
   C07C229/30CSP
   C07C229/60
   C07C211/64
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
【全頁数】43
(21)【出願番号】特願2015-53291(P2015-53291)
(22)【出願日】2015年3月17日
(71)【出願人】
【識別番号】000108410
【氏名又は名称】デクセリアルズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107515
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100107733
【弁理士】
【氏名又は名称】流 良広
(74)【代理人】
【識別番号】100115347
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 奈緒子
(74)【代理人】
【識別番号】100163038
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 武志
(72)【発明者】
【氏名】西尾 健
【テーマコード(参考)】
4H006
4J002
4J036
【Fターム(参考)】
4H006AA01
4H006AA03
4H006AB46
4H006BJ50
4H006BT12
4H006BT32
4H006BU50
4J002AA00W
4J002BE04W
4J002CD00W
4J002CD02W
4J002CD03W
4J002CD05W
4J002CD06W
4J002CD14W
4J002CD19W
4J002CH02W
4J002CH08X
4J002EB117
4J002EK008
4J002EK018
4J002EK038
4J002EK048
4J002EK058
4J002EK088
4J002EN136
4J002EN137
4J002EV297
4J002EW177
4J002FD070
4J002FD156
4J002FD157
4J002FD158
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4J002GQ05
4J036AA01
4J036AB17
4J036AD08
4J036AF06
4J036AG00
4J036AJ08
4J036AJ09
4J036AK11
4J036FA10
4J036FB12
4J036GA02
4J036GA03
4J036GA04
4J036GA06
4J036GA21
4J036GA22
4J036GA23
4J036GA24
4J036JA08
(57)【要約】      (修正有)
【課題】低温かつ短時間で硬化でき、かつ硬化前の保存安定性を確保しつつ効果的に硬化できる熱硬化性樹脂組成物の提供。
【解決手段】カチオン硬化成分と、式(1)で表される化合物と、ラジカル発生剤とを含有する熱硬化性樹脂組成物。

【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表されることを特徴とする化合物。
【化1】
ただし、前記一般式(1)中、R及びRは、それぞれ独立して、炭素数1〜2のアルキル基を表す。Rは、水素原子、アルキル基、アルコキシカルボニル基、及びアリールオキシカルボニル基のいずれかを表す。Yは、水素原子、分岐してもよいアルキル基又はアルコキシ基、置換又は無置換のアリール基、及び置換又は無置換のアリールオキシ基のいずれかを表す。Zは、SbF、B(C、C(CFSO、及び[P(R(F)6−a](式中、Rは、それぞれ独立して、水素原子の少なくとも一部がフッ素で置換されてもよいアルキル基を示し、aは0〜5の整数を示す。)のいずれかを表す。
【請求項2】
カチオン硬化成分と、請求項1に記載の前記一般式(1)で表される化合物と、ラジカル発生剤とを含有することを特徴とする熱硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
前記一般式(1)のZが、SbF、B(C、及びC(CFSOのいずれかである請求項2に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
さらに、下記一般式(2)の化合物を含有することを特徴とする請求項2から3のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物。
【化2】
ただし、前記一般式(2)中、RからRのうち、少なくとも2つの基は、置換又は無置換のアリール基であり、残りの基は、炭素数1〜10のアルキル基または置換基を有していてもよいベンジル基を表す。なお、それぞれの基は、同一であっても異なっていてもよい。Xは、カチオンを示す。
【請求項5】
前記ラジカル発生剤が、有機過酸化物である請求項2から4のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項6】
前記カチオン硬化成分が、脂環式エポキシ、オキセタン化合物、及びビニルエーテル化合物の少なくともいずれかを含有する請求項2から5のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項7】
更にフェノキシ樹脂を含有する請求項2から6のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項8】
請求項2から7のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物を含有することを特徴とする熱硬化性シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱硬化性樹脂組成物、及び熱硬化性シート、並びにそれらに使用可能な新規化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子部品あるいは電子基板材料のコストダウン化が顕著であり、そのためにより安価な樹脂を材料とした部材設計が進められている。必然的に部材の耐熱性は劣るようになり、より低温で硬化する部品接合剤の要求が高まっている。また、プロセスタクトタイムの短縮要求も強く、より短時間での硬化も同時に求められている。
エポキシ樹脂系の熱硬化を低温で行う技術として、カチオン重合を用いることは広く知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、六フッ化アンチモン、六フッ化リンなどを対アニオンとして使用したスルホニウム塩がエポキシ樹脂のカチオン硬化触媒として有用であることを開示されている。特に六フッ化アンチモンを使用したスルホニウム塩は低温硬化触媒として市販されている。
また、特許文献2には、六フッ化アンチモンと同等の活性を有するテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートアニオンを使用したカチオン硬化触媒が開示されている。
これらのカチオン硬化触媒は低温硬化の活性を有するものの、そのままではエポキシ樹脂と配合した場合の保存安定性は極めて不十分であるという問題がある。
【0004】
通常、オニウム塩型の熱カチオン重合触媒は低温硬化活性を上げるために、カチオン解離性を上げる構造設計がなされるが、このことは極性場における自然解離を招くことになり、保存安定性との両立が困難となる。
この点において、カチオン解離を別な方法で促す技術として、ラジカルにより酸発生させる技術が開示されている。例えば、非特許文献1には以下の構造によるラジカルを開始種としたオニウム塩解離及びシクロヘキセンオキシド(CHO)の重合方法について記載されている。かかる技術では、確かにラジカル種を併用することによりオキシラン化合物の重合促進効果が得られるようである。
しかし、かかる技術では、低温硬化活性が充分とはいえず、改良の余地があった。
【化1】
【0005】
また、特許文献3〜5には、硬化促進などの目的で、熱硬化性樹脂組成物にアンモニウム塩系化合物を含有しうることが開示されている。しかしながら、これらの技術でも、低温硬化性と、保存安定性とを両立することはできない。
また、オニウム塩系熱カチオン重合触媒の保存安定性を解決するため、例えば、特許文献6には、特定の鉄芳香族化合物塩若しくは特定のオニウム塩を添加する技術が開示されている。かかる技術を用いると保存安定性は改善するものの、低温硬化活性を著しく低下させる量が必要となるため、低温硬化性との両立は不十分である。
したがって、低温かつ短時間で硬化が可能で、かつ硬化前の保存安定性が確保できる熱硬化性樹脂組成物、及び熱硬化性シートの提供が求められているのが現状である。
また、別途、ラジカル重合性化合物を重合させるために有機ホウ素化合物を用いる技術がいくつか開示されている(例えば特許文献7あるいは特許文献8)。これらは、アクリル樹脂のようなラジカル重合性化合物を重合させるための技術として用いられており、カチオン重合性化合物の重合に用いられている例は無い。また、本発明の本文中に記載のようなカチオン重合を用いた熱硬化性樹脂組成物の保存安定性を向上させる効果については何ら記載がない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平2−1470号公報
【特許文献2】特開平9−176112号公報
【特許文献3】特開2013−91687号公報
【特許文献4】特開2011−132416号公報
【特許文献5】特開2013−185013号公報
【特許文献6】特開平5−5006号公報
【特許文献7】特許第5527395号公報
【特許文献8】特開平8−217813号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Aysen Onen and Yusuf Yagci Macromolecules 2001、34、7608−7612
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、従来における前記諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、低温かつ短時間で硬化でき、かつ硬化前の保存安定性を確保しつつ効果的に硬化できる熱硬化性樹脂組成物、及び熱硬化性シート、並びにそれらに使用可能でカチオン系硬化剤として有用な新規化合物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するための手段としては、以下の通りである。即ち、
<1> 下記一般式(1)で表されることを特徴とする化合物である。
【化2】
ただし、前記一般式(1)中、R及びRは、それぞれ独立して、炭素数1〜2のアルキル基を表す。Rは、水素原子、アルキル基、アルコキシカルボニル基、及びアリールオキシカルボニル基のいずれかを表す。Yは、水素原子、分岐してもよいアルキル基又はアルコキシ基、置換又は無置換のアリール基、及び置換又は無置換のアリールオキシ基のいずれかを表す。Zは、SbF、B(C、C(CFSO、及び[P(R(F)6−a](式中、Rは、それぞれ独立して、水素原子の少なくとも一部がフッ素で置換されてもよいアルキル基を示し、aは0〜5の整数を示す。)のいずれかを表す。
<2> カチオン硬化成分と、前記<1>に記載の前記一般式(1)で表される化合物と、ラジカル発生剤とを含有することを特徴とする熱硬化性樹脂組成物である。
<3> 前記一般式(1)のZが、SbF、B(C、及びC(CFSOのいずれかである前記<2>に記載の熱硬化性樹脂組成物である。
<4> さらに、下記一般式(2)の化合物を含有することを特徴とする前記<2>から<3>のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物である。
【化3】
ただし、前記一般式(2)中、RからRのうち、少なくとも2つの基は、置換又は無置換のアリール基であり、残りの基は、炭素数1〜10のアルキル基または置換基を有していてもよいベンジル基を表す。なお、それぞれの基は、同一であっても異なっていてもよい。Xは、カチオンを示す。
<5> 前記ラジカル発生剤が、有機過酸化物である前記<2>から<4>のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物である。
<6> 前記カチオン硬化成分が、脂環式エポキシ、オキセタン化合物、及びビニルエーテル化合物の少なくともいずれかを含有する前記<2>から<5>のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物である。
<7> 更にフェノキシ樹脂を含有する前記<2>から<6>のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物である。
<8> 前記<2>から<7>のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物を含有することを特徴とする熱硬化性シートである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、従来における前記諸問題を解決し、前記目的を達成することができ、低温かつ短時間で硬化でき、かつ硬化前の保存安定性を確保しつつ効果的に硬化できる熱硬化性樹脂組成物、及び熱硬化性シート、並びにそれらに使用可能でカチオン系硬化剤として有用な新規化合物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(一般式(1)の化合物)
本発明の下記一般式(1)の化合物について説明する。下記一般式(1)化合物は、低温でカチオン硬化する熱硬化性樹脂組成物の保存安定性を向上させるカチオン系硬化触媒として有用である。
【化4】
ただし、前記一般式(1)中、R及びRは、それぞれ独立して、炭素数1〜2のアルキル基を表す。Rは、水素原子、アルキル基、アルコキシカルボニル基、及びアリールオキシカルボニル基のいずれかを表す。Yは、水素原子、分岐してもよいアルキル基又はアルコキシ基、置換又は無置換のアリール基、及び置換又は無置換のアリールオキシ基のいずれかを表す。Zは、SbF、B(C、C(CFSO、及び[P(R(F)6−a](式中、Rは、それぞれ独立して、水素原子の少なくとも一部がフッ素で置換されてもよいアルキル基を示し、aは0〜5の整数を示す。)のいずれかを表す。
【0012】
前記R及びRの炭素数1〜2のアルキル基としては、メチル基、及びエチル基が挙げられる。
前記Rのアルキル基としては、例えば炭素数1〜4のアルキル基が挙げられ、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基等が挙げられる。
前記Rのアルコキシカルボニル基としては、例えば炭素数1〜8のアルコキシカルボニル基が挙げられ、具体的には、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基、n−ブトキシカルボニル基等が挙げられる。
前記Rのアリールオキシカルボニル基としては、例えば置換、無置換のフェノキシカルボニル基、トリロキシカルボニル基、キシリロキシカルボニル基、ナフトキシカルボニル基等が挙げられ、置換基としては、例えばヒドロキシル基、アルコキシ基、カルボキシル基等が挙げられる。
【0013】
前記Yのアルキル基としては、例えば炭素数1〜20の鎖状若しくは環状の飽和脂肪族炭化水素基、鎖状若しくは環状の不飽和脂肪族炭化水素基が挙げられる。具体例として、メチル基、エチル基、直鎖若しくは分岐のブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基、ペンタデシル基、エイコサニル基等が挙げられる。また、上記炭化水素基には置換基を有していてもよく、アルキル基、シクロアルキル基、ビニル基、アリル基、アリール基、アルコキシ基、ハロゲン基、ヒドロキシ基、アミノ基、イミノ基、ニトロ基又はエステル基等が挙げられる。その中で、原料入手の観点で好ましくはメチル基、エチル基である。
前記Yのアルコキシ基としては、例えば炭素数1〜20のアルコキシ基が挙げられる。アルコキシ基の炭化水素部は前記アルキル基記載と同様である。その中で、原料入手の観点で好ましくはメトキシ基、エトキシ基、2−メチルブトキシ基、3−ブチルブトキシ基である。
前記Yの置換、無置換のアリール基としては、例えば、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等が挙げられ、置換基としては、例えばヒドロキシル基、アルコキシ基、カルボキシル基等が挙げられる。
前記Yの置換、無置換のアリールオキシ基としては、たとえば、フェノキシ基、1−ナフトキシ基、2−ナフトキシ等が挙げられ、置換基としては、例えばメチル基、エチル基、イソプロピル基、t−ブチル基、ヒドロキシル基、アルコキシ基、カルボキシル基等が挙げられる。
【0014】
前記一般式(1)で表される化合物のカチオン部の具体的な構造としては、例えば、以下の構造が挙げられる。
【化5】
【化6】
【0015】
前記一般式(1)におけるXは、アニオンであり、具体的には、SbF、B(C、C(CFSO、及び[P(R(F)6−a(式中、Rは、それぞれ独立して、水素原子の少なくとも一部がフッ素で置換されてもよいアルキル基を示し、aは0〜5の整数を示す。)である。
前記Rのアルキル基としては、炭素数1〜10のアルキル基が挙げられ、特に炭素数1〜4のパーフルオロアルキル基が好ましい。具体的には、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、ヘプタフルオロプロピル基、ノナフルオロブチル基が挙げられる。
この中で、より低温硬化性が得られる点で、SbF、B(C、及びC(CFSOが好ましい。
【0016】
(熱硬化性樹脂組成物)
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、カチオン硬化成分と、カチオン系硬化触媒として作用する上記一般式(1)で表される特定の構造の化合物と、ラジカル発生剤とを少なくとも含有する。
好ましくは、下記一般式(2)で表される化合物や膜形成樹脂を含有し、更に必要に応じてその他の成分を含有する。
上記要件を満たす、本発明の熱硬化性樹脂組成物は、低温短時間硬化性及び保存安定性の両方に優れたものとなる。
【0017】
本発明者は、前記非特許文献1に記載の構造を有する化合物を含有させて熱硬化シートを作製したところ、かかる非特許文献1に記載の化合物では、低温硬化活性が不十分であることがわかった(後述する実施例において、比較化合物例4(非特許文献1中の、上記EADAに相当する化合物)を含有する比較例4の結果参照)。
そこで、本発明者は、種々の実験を行い、熱硬化性樹脂組成物の含有成分について研究を重ねた結果、特定の化合物と熱によりラジカルを発生するラジカル発生剤とを組み合わせて含有させ、カチオン系硬化触媒としての特定の化合物を活性化させることにより、保存安定性を確保しつつ、かつ低温短時間硬化性に優れた熱硬化樹脂組成物が得られることを見出した。
本発明の化合物が非特許文献1記載の化合物に対して低温短時間硬化性が優れる理由は明らかではないが、ラジカル発生剤から発生したラジカルが本発明の化合物に付加した後に生成するアミンのカチオンラジカルの生成速度が非特許文献1記載の構造のものよりも高く、その後のプロトン放出を迅速に行っている結果、より低温でカチオン硬化が進行するものと考えている。
【0018】
<カチオン硬化成分>
前記カチオン硬化成分としては、カチオン系硬化触媒としての特定の化合物の作用により硬化する成分であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、エポキシ化合物、ビニルエーテル化合物、オキセタン化合物、及び環状エーテル化合物などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0019】
前記エポキシ化合物としては、例えば、ビスフェノール型エポキシ樹脂、ポリグリシジルエーテル、ポリグリシジルエステル、芳香族エポキシ化合物、脂環式エポキシ化合物、ノボラック型エポキシ化合物、グリシジルアミン系エポキシ化合物、グリシジルエステル系エポキシ化合物、ビフェニルジグリシジルエーテル、トリグリシジルイソシアヌレート、ポリグリシジルメタクリレート、グリシジルメタクリレートと前記グリシジルメタクリレートと共重合可能なビニル単量体との共重合体などが挙げられる。
【0020】
前記脂環式エポキシ化合物としては、例えば、シクロヘキセンオキシド含有化合物、シクロペンテンオキシド含有化合物などが挙げられる。
【0021】
前記ビニルエーテル化合物としては、例えば、アルキルビニルエーテル化合物、アルケニルビニルエーテル化合物、アルキニルビニルエーテル化合物、アリールビニルエーテル化合物などが挙げられる。
【0022】
前記オキセタン化合物としては、オキセタンアルコール、脂肪族オキセタン化合物、芳香族オキセタン化合物などが挙げられる。
【0023】
前記熱硬化性樹脂組成物における前記カチオン硬化成分の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記熱硬化性樹脂組成物の不揮発分に対して、10質量%〜98質量%が好ましく、20質量%〜90質量%がより好ましい。
【0024】
<一般式(1)の化合物>
前記熱硬化性樹脂組成物に含有される一般式(1)で表される化合物は、前述したとおりである。
前記熱硬化性樹脂組成物における前記一般式(1)で表される化合物の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記熱硬化性樹脂組成物の不揮発分に対して、0.5質量%〜20質量%が好ましく、2質量%〜15質量%がより好ましい。
【0025】
<ラジカル発生剤>
前記ラジカル発生剤としては、熱によりラジカルを発生するものであれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アゾ系化合物、有機及び無機過酸化物などが挙げられる。これらの中でも、保存安定性が得やすい点で、有機過酸化物が好ましい。
前記有機過酸化物としては、例えば、ジアシルパーオキサイド、パーオキシジカーボネート、パーオキシエステル、パーオキシケタール、ジアルキルパーオキサイド、ハイドロパーオキサイド、シリルパーオキサイドが挙げられる。これらのうち、低温活性が得やすい点で、ジアシルパーオキサイド、パーオキシエステル、パーオキシジカーボネート、パーオキシケタールが好ましい。
また、これら熱によりラジカルを発生する化合物は複数を併用して用いることができる。
【0026】
前記熱硬化性樹脂組成物における前記ラジカル発生剤の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記熱硬化性樹脂組成物の不揮発分に対して、0.3質量%〜20質量%が好ましく、0.5質量%〜15質量%がより好ましい。
【0027】
<一般式(2)の化合物>
本発明の熱硬化性樹脂組成物には、下記一般式(2)の化合物を含有することが好ましい場合がある。
特に、反応活性の高い脂環式エポキシ、オキセタン化合物、及びビニルエーテル化合物のいずれかを含むカチオン硬化成分を含む熱硬化性樹脂組成物に含有させると、下記一般式(2)の化合物は有効な保存性良化剤として作用する。
【化7】
ただし、前記一般式(2)中、RからRのうち、少なくとも2つの基は、置換又は無置換のアリール基であり、残りの基は、炭素数1〜10のアルキル基または置換基を有していてもよいベンジル基を表す。なお、それぞれの基は、同一であっても異なっていてもよい。
【0028】
前記アリール基としては、フェニル基、ナフチル基等が挙げられ、これらに置換され得る基としては、メチル基、エチル基、n−ブチル基、t−ブチル基等のアルキル基、メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基、ハロゲン、トリフルオロメチル基、ニトロ基、シアノ基、カルボキシル基等が挙げられる。
前記炭素数1〜10のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−ブチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等が挙げられ、置換基を有してもよいベンジル基としては、ベンジル基、p−シアノベンジル基、p−ニトロベンジル基、p−メチルベンジル基、p−t−ブチルベンジル基等が挙げられる。
前記一般式(2)の化合物の少なくとも2つは置換又は無置換のアリール基であるが、アリール基の数が少なくなるとその構造自体の安定性が得られなくなる傾向があり、3つおよび4つが置換又は無置換のアリール基であることが好ましい。
【0029】
本発明において、有効に機能するのはボレートアニオンであり、その対カチオンであるXはあらゆる構造が使用可能である。例えば、4級アンモニウムカチオン、4級ピリジニウムカチオン、ホスホニウムカチオン、スルホニウムカチオン、ヨードニウムカチオン、ビスムトニウムカチオン、イミダゾリウムカチオン等のオニウムカチオン、ナトリウム、カリウム、リチウム等のアルカリ金属イオン、マグネシウム、カルシウム等のアルカリ土類金属イオン等が挙げられる。
これらのうち、熱硬化性樹脂組成物への溶解性あるいは相溶性を考慮すると、オニウムカチオンが好ましい。
【0030】
前記一般式(2)の化合物を含有することにより、本発明の熱硬化性樹脂組成物の保存性良化に有効に働くことは前述したが、その理由としては、本発明の前記一般式(1)の化合物が微量解離することにより生じたカチオンおよびプロトンを前記一般式(2)の化合物のボレートアニオンが効果的にトラップし保存安定性を得るものと考える。
本発明の特異性として、通常はカチオン硬化時にカチオントラップ作用を有する化合物を含有させることはカチオン硬化の遅延を招くのであるが、本発明の前記一般式(1)の化合物と前記一般式(2)の化合物の組み合わせでは、硬化遅延が起こりにくいことが判明した。この理由は明らかではないが、本発明の前記一般式(1)の化合物のラジカル解離時に生成するカチオンラジカルに、前記一般式(2)の化合物のボレートアニオンが電子供与する結果、ボレートアニオンが分解し、カチオントラップ能力を失い、カチオン硬化の遅延がなくなるものと考えている。
【0031】
前記熱硬化性樹脂組成物に前記一般式(2)の化合物を含有させる場合のその含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、前記した反応活性の高い脂環エポキシ、オキセタン化合物、ビニルエーテル化合物を多く含む場合はそれに応じて含有量を増やすことで保存性を確保できる。前述したように、前記一般式(2)の化合物は前記一般式(1)の化合物との組み合わせにおいて、添加量を増やすことで保存性は良化するが、低温硬化性は特異的に維持する。尚、反応活性の低いビス-Aあるいはビス−F型エポキシ樹脂の含有量が多い場合は必ずしも添加を必要としない。上記の通りであるが、前記一般式(2)の化合物の含有量の目安としては、前記一般式(1)で表される化合物に対して、1mol%〜90mol%が好ましく、2mol%〜80mol%がより好ましい。前記含有量が1mol%未満であると、安定化の効果を十分発現できない場合がある。前記含有量が、90mol%を超えると、低温での硬化を短時間で行うことが困難になる場合がある。
【0032】
<膜形成樹脂>
本発明の熱硬化性樹脂組成物では、必要に応じて膜形成樹脂を含有することができる。膜形成樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリアクリル樹脂、フェノキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステルウレタン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、製膜性、加工性の点からフェノキシ樹脂が特に好ましい。
【0033】
前記フェノキシ樹脂としては、例えば、2官能フェノール類とエピクロルヒドリンとを反応させ高分子量化したもの、あるいは2官能エポキシ樹脂と2官能フェノール類とを重付加することにより得られる樹脂などが挙げられる。
使用される2官能エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビフェニルジグリシジルエーテル、メチル置換ビフェニルジグリシジルエーテルなどが挙げられる。
また、2官能フェノール類としては、例えば、ハイドロキノン類、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールAD、ビスフェノールS、ビスフェノールフルオレン、メチル置換ビスフェノールフルオレン、ジヒドロキシビフェニル、メチル置換ジヒドロキシビフェニル等のビスフェノール類などが挙げられる。
【0034】
前記熱硬化性樹脂組成物における前記膜形成樹脂の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記熱硬化性樹脂組成物の不揮発分に対して、10質量%〜90質量%が好ましく、20質量%〜80質量%がより好ましく、30質量%〜60質量%が特に好ましい。
【0035】
<その他の成分>
前記その他の成分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、チキソトロピー剤、充填剤、レベリング剤、酸化防止剤、重合禁止剤、光安定剤、着色剤、導電性付与剤、接着付与剤などが挙げられる。
特に、重合禁止剤、あるいは酸化防止剤を含有することは、本発明の熱硬化性樹脂組成物の保存中のラジカルトラップとして機能し、保存安定性を向上させる場合があり好ましい。
【0036】
重合禁止剤あるいは酸化防止剤としては、ラジカル重合の重合禁止剤である限り特に限定はなく、例として、フェノール系重合禁止剤、アミン系重合禁止剤、スピントラップ剤などが挙げられる。
フェノール系重合禁止剤の例としては、ハイドロキノン、2−t−ブチルハイドロキノン、2−t−ブチル−4−メトキシフェノール、2,3−ジ−t−ブチル−4−メトキシフェノール、p−メトキシフェノール、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、4−アリル−2−メトキシフェノール、4−t−ブチルカテコール、4,4’チオビス(6−t−ブチル−m−クレゾール)、2,5−ジ−t−ブチルヒドロキノン、2,5−ジ−t−アミルヒドロキノン、2,6−ジ−t−ブチル−4−エチルフェノール、ステアリル−β−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネ−ト、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、3,9−ビス〔1,1−ジメチル−2−〔β−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ〕エチル〕−2,4,8,10−テトラオキサスピロ〔5,5〕ウンデカン、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、テトラキス−〔メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネ−ト〕メタン、ビス〔3,3’−ビス(4’−ヒドロキシ−3’−ブチルフェニル)ブチリックアシッド〕グリコールエステル、1,3,5−トリス(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシベンジル)−2−トリアジン−2,4,6−(1H,3H,5H)トリオン、α−トコフェノール等が挙げられる。
【0037】
アミン系重合禁止剤の例としては、2−フェニルインドール、N,N’−ジフェニルエチレンジアミン、N,N’−ジサリシラールプロピレンジアミン、フェノチアジン等が挙げられる。
スピントラップ剤の例としては、ジフェニルピクリルヒドラジルラジカル、2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジニルオキシラジカル、1,1,3,3−テトラメチルイソインドール−2−オキシラジカル等が挙げられる。
これらのうち、酸性環境でも機能するという観点でフェノール系重合禁止剤が好ましい。
上記重合禁止剤あるいは酸化防止剤の熱硬化性樹脂組成物への含有量としては、前記一般式(1)の化合物に対して、0.1mol%から3mol%が好ましい。
【0038】
(熱硬化性シート)
本発明の前記熱硬化性シートは、本発明の前記熱硬化性樹脂組成物を含有し、更に必要に応じて、その他の成分を含有する。
【0039】
前記熱硬化性シートは、例えば、基材フィルム(剥離基材)上に前記熱硬化性樹脂組成物からなる熱硬化性接着層が形成されてなるものである。前記基材フィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリイミドフィルムなどが挙げられる。
前記熱硬化性シートは、保管性、使用時のハンドリング性などの観点から、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリイミドフィルム等に必要に応じてシリコーン等で剥離処理した基材フィルムに、前記熱硬化性樹脂組成物からなる熱硬化性接着層が5μm〜50μmの平均厚みで形成されていることが好ましい。
【0040】
前記熱硬化性樹脂組成物、及び前記熱硬化性シートは、電子部品分野に好ましく適用できる。特に、前記熱硬化性シートは、フレキシブルプリント配線板の端子部等と、その裏打ちするためのポリエチレンテレフタレート、ポリイミド、ガラスエポキシ、ステンレス、アルミニウム等の厚み50μm〜2mmの補強用シートとを接着固定するために好ましく適用でき、その適用により、フレキシブルプリント配線板の端子部と補強用シートとが、本発明の熱硬化性シートの基材フィルムを除いた熱硬化性接着層の熱硬化物で接着固定されてなる補強フレキシブルプリント配線板が得られる。
【0041】
熱硬化性シートを接着シートとして使用する場合、組成中には熱可塑性樹脂が含有されていることが好ましい。使用される熱可塑性樹脂としては、前記<膜形成樹脂>の欄でも記載のポリアクリル樹脂、フェノキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステルウレタン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、及びエポキシ樹脂等が挙げられる。この中でも、上述したように成膜性、相溶性、耐熱性の観点でフェノキシ樹脂が含有されていることが好ましい。
金属を接着する接着シートとして使用される場合、組成中にシランカップリング剤を含有することが好ましい。シランカップリング剤の種類としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えばエポキシ系シランカップリング剤、アクリル系シランカップリング剤、チオール系シランカップリング剤、アミン系シランカップリング剤などが挙げられる。
導電性を付与する接着シートとして使用される場合、組成中に導電性粒子を含有することが好ましい。導電粒子の種類は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば金、銀、銅、スズ、ニッケル等の金属粒子、金属酸化物あるいはシリカ等の無機粒子に金属メッキあるいは蒸着等により金属を被覆した粒子、樹脂粒子に金属メッキあるいは蒸着等により金属を被覆した粒子などが挙げられる。粒子の形状も特に制限はなく、球状、針状、不定形、細かい突起を有する形状等が挙げられる。
【実施例】
【0042】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明は、これらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0043】
(合成例p−1)
<化合物p−1の合成>
攪拌器、温度計を設置した200mL三口フラスコに4−ジメチルアミノアセトフェノン5.00g(0.0368mol)、2−(ブロモメチル)アクリル酸エチル8.52g(0.0441mol)、アセトニトリル25gを入れ、フラスコを遮光状態にして攪拌をしながらp−トルエンスルホン酸銀10.27g(0.0368mol)をアセトニトリル25gに溶解したものを室温にてゆっくり添加した。その後、さらに遮光下で室温24時間撹拌し反応させた。反応終了後、濾過により析出した臭化銀を除去し、溶液を減圧によりアセトニトリルを留去することで結晶を析出させた。この結晶を酢酸エチルで洗浄し、減圧濾過により結晶を取り出し、24時間減圧乾燥することで下記構造式(p−1)で表される化合物p−1の白色結晶12.93gを得た。
【化8】
【0044】
(合成例p−2)
<化合物p−2の合成>
合成例p−1において、4−ジメチルアミノアセトフェノンを4−(ジメチルアミノ)安息香酸エチル7.11g(0.0368mol)とした以外は、合成例p−1と同様にして下記構造式(p−2)で表される化合物p−2の白色結晶13.29gを得た。
【化9】
【0045】
(合成例p−3)
<化合物p−3の合成>
合成例p−1において、4−ジメチルアミノアセトフェノンを4−(ジメチルアミノ)安息香酸2−エチルヘキシル10.21g(0.0368mol)とした以外は、合成例p−1と同様にして下記構造式(p−3)で表される化合物p−3の白色結晶13.44gを得た。
【化10】
【0046】
(合成例p−4)
<化合物p−4の合成>
合成例p−1において、4−ジメチルアミノアセトフェノンを4−(ジメチルアミノ)安息香酸エチル7.11g(0.0368mol)とし、さらに、2−(ブロモメチル)アクリル酸エチルを3−ブロモ−2−メチル−1−プロペン5.95g(0.0441mol)とした以外は、合成例p−1と同様にして下記構造式(p−4)で表される化合物p−4の白色結晶12.20gを得た。
【化11】
【0047】
(合成例p−5)
<化合物p−5の合成>
合成例p−1において、4−ジメチルアミノアセトフェノンを4−(ジメチルアミノ)安息香酸エチル7.11g(0.0368mol)とし、さらに、2−(ブロモメチル)アクリル酸エチルをアリルブロミド5.34g(0.0441mol)とした以外は、合成例p−1と同様にして下記構造式(p−5)で表される化合物p−5の白色結晶10.89gを得た。
【化12】
【0048】
(合成例p−6)
<化合物p−6の合成>
合成例p−1において、4−ジメチルアミノアセトフェノンをN,N−ジメチルアニリン4.46g(0.0368mol)とした以外は、合成例p−1と同様にして下記構造式(p−6)で表される化合物p−6の白色結晶12.39gを得た。
【化13】
【0049】
(合成例p−7)
<化合物p−7の合成>
合成例p−1において、4−ジメチルアミノアセトフェノンをN,N−ジメチルアニリン4.46g(0.0368mol)とし、さらに、2−(ブロモメチル)アクリル酸エチルを3−ブロモ−2−メチル−1−プロペン5.95g(0.0441mol)とした以外は、合成例p−1と同様にして下記構造式(p−7)で表される化合物p−7の白色結晶9.72gを得た。
【化14】
【0050】
(合成例p−8)
<化合物p−8の合成>
合成例p−1において、4−ジメチルアミノアセトフェノンをN,N−ジメチルアニリン4.46g(0.0368mol)とし、さらに、2−(ブロモメチル)アクリル酸エチルをアリルブロミド5.34g(0.0441mol)とした以外は、合成例p−1と同様にして下記構造式(p−8)で表される化合物p−8の白色結晶8.71gを得た。
【化15】
【0051】
(実施例1(合成例1−A))
<一般式(1)化合物1−Aの合成>
攪拌器を設置した500mL三口フラスコに合成例p−1で合成した化合物(p−1)3g(0.00670mol)と純水100gを入れ、室温で撹拌し溶解させた。そこに、攪拌しながらテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートナトリウムの3質量%水溶液156.79g(0.00670mol)をゆっくり添加し、白色結晶を析出させた。さらに2時間、室温にて攪拌を行い、その後減圧濾過にて結晶を取り出し、純水にて洗浄を行った後、24時間減圧乾燥することで、構造式(1−A)で表される一般式(1)化合物1−Aの白色結晶6.21g(収率97.0%)を得た。
【化16】
【0052】
<化合物分析結果>
<<H−NMR分析>>
測定装置:Varian製 Mercury plus300
溶媒:アセトン
[結果(δ値)]
1.15(3H、t、(a))、2.64(3H、s、(b))、3.98(6H、s、(c))、4.03(2H、q、(d))、5.00(2H,s、(e))、6.14&6.71(1H、s、(f))、8.15〜8.24(4H、m、(g)、(h))
【化17】
<<MS分析>>
測定装置:ACQUITY ULPCシステム WATERS社
[結果]
276(ESCI+)(アンモニウムカチオン)
679(ESCI−)(ボレートアニオン)
<<IR分析>>
[結果(cm−1)]
3064、2996、2967、2908、1695、1644、1513、1459、1270、1081、973、900、775、755、682、661
【0053】
(実施例2(合成例2−A)
<一般式(1)化合物2−Aの合成>
実施例1において、化合物p−1を化合物p−2 3.2g(0.00670mol)に代えた以外は、実施例1と同様にして、構造式(2−A)で表される一般式(1)化合物2−Aの白色結晶6.29g(収率95.3%)を得た。
【化18】
【0054】
<化合物分析結果>
<<H−NMR分析>>
溶媒:アセトン
[結果(δ値)]
1.16(3H、t、(a))、1.37(3H、t、(b))、3.99(6H、s、(c))、4.04(2H、q、(d))、4.39(2H、q、(e))、5.01(2H、s、(f))、6.15&6.72(1H、s、(g))、8.15〜8.25(4H、m、(h)、(i))
【化19】
<<MS分析>>
[結果]
306(ESCI+)(アンモニウムカチオン)
679(ESCI−)(ボレートアニオン)
<<IR分析>>
[結果(cm−1)]
3064、3000、2906、1772、1697、1644、1513、1459、1371、1288、1081、973、902、769、755、698、682、661
【0055】
(実施例3(合成例3−A)
<一般式(1)化合物3−Aの合成>
実施例1において、化合物p−1を化合物p−3 3.76g(0.00670mol)に代えた以外は、実施例1と同様にして、構造式(3−A)で表される一般式(1)化合物3−Aの白色結晶7.06g(収率98.5%)を得た。
【化20】
【0056】
<化合物分析結果>
<<H−NMR分析>>
溶媒:アセトン
[結果(δ値)]
0.84〜0.97(6H、m、(b)、(c))、1.15(3H、t、(a))、1.19〜1.51(8H、m、(d)、(e)、(f)、(g))、1.71〜1.79(1H、m、(h))、3.99(6H、s、(i))、4.03(2H、q、(j))、4.30(2H、q、(k))、5.01(2H、s、(l))、6.17&6.71(2H、s、(m))、8.16〜8.25(4H、m、(n)、(o))
【化21】
<<MS分析>>
[結果]
390(ESCI+)(アンモニウムカチオン)
679(ESCI−)(ボレートアニオン)
<<IR分析>>
[結果(cm−1)]
3122、2965、1710,1643、1513、1454、1274、1081、971、854,773,684,661
【0057】
(実施例4(合成例4−A)
<一般式(1)化合物4−Aの合成>
実施例1において、化合物p−1を化合物p−4 2.81g(0.00670mol)に代えた以外は、実施例1と同様にして、構造式(4−A)で表される一般式(1)化合物4−Aの白色結晶5.98g(収率96.3%)を得た。
【化22】
【0058】
<化合物分析結果>
<<H−NMR分析>>
溶媒:DMSO
[結果(δ値)]
1.27(3H、s、(a))、1.32(3H、t、(b))、3.62(6H、s、(c))、4.34(2H、q、(d))、4.52(2H、s、(e))、5.12&5.30(1H、s、(f))、8.09〜8.17(4H、m、(g)、(h))
【化23】
<<MS分析>>
[結果]
248(ESCI+)(アンモニウムカチオン)
679(ESCI−)(ボレートアニオン)
<<IR分析>>
[結果(cm−1)]
3126、2991、1712、1644、1511、1455、1276、1081、971、769、755、684、661
【0059】
(実施例5(合成例5−A)
<一般式(1)化合物5−Aの合成>
実施例1において、化合物p−1を化合物p−5 2.72g(0.00670mol)に代えた以外は、実施例1と同様にして、構造式(5−A)で表される一般式(1)化合物5−Aの白色結晶5.75g(収率93.9%)を得た。
【化24】
【0060】
<化合物分析結果>
<<H−NMR分析>>
溶媒:DMSO
[結果(δ値)]
1.32(3H、t、(a))、3.60(6H、s、(b))、4.34(2H、q、(c))、4.55(2H、d、(d))、5.42〜5.48(2H、m、(e))、5.57〜5.70(1H、m、(f))8.03〜8.16(4H、m、(g)、(h))
【化25】
<<MS分析>>
[結果]
234(ESCI+)(アンモニウムカチオン)
679(ESCI−)(ボレートアニオン)
<<IR分析>>
[結果(cm−1)]
3124、2998、1714、1643、1608、1513、1455、1419、1371、1276、1199、1083、1016、973、889、854、769、755、698、684、661
【0061】
(実施例6(合成例2−B)
<一般式(1)化合物2−Bの合成>
実施例1において、化合物p−1を化合物p−2 3.2g(0.00670mol)に代え、さらに、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートナトリウムの3質量%水溶液をヘキサフルオロアンチモン酸ナトリウム3質量%水溶液57.80g(0.00670mol)に代えた以外は、実施例1と同様にして、構造式(2−B)で表される一般式(1)化合物2−Bの白色結晶2.74g(収率87.1%)を得た。
【化26】
【0062】
<化合物分析結果>
<<H−NMR分析>>
溶媒:アセトン
[結果(δ値)]
1.16(3H、t、(a))、1.38(3H、t、(b))、4.00(6H、s、(c))、4.04(2H、q、(d))、4.40(2H、q、(e))、5.01(2H、s、(f))、6.16&6.73(1H、s、(g))、8.16〜8.26(4H、m、(h)、(i))
【化27】
<<MS分析>>
[結果]
306(ESCI+)(アンモニウムカチオン)
235(ESCI−)(アンチモナートアニオン)
【0063】
(実施例7(合成例4−B)
<一般式(1)化合物4−Bの合成>
実施例1において、化合物p−1を化合物p−4 2.81g(0.00670mol)に代え、さらにテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートナトリウムの3質量%水溶液をヘキサフルオロアンチモン酸ナトリウム3質量%水溶液57.80g(0.00670mol)に代えた以外は、実施例1と同様にして、構造式(4−B)で表される一般式(1)化合物4−Bの白色結晶2.37g(収率85.9%)を得た。
【化28】
【0064】
<化合物分析結果>
<<H−NMR分析>>
溶媒:DMSO
[結果(δ値)]
1.27(3H、s、(a))、1.31(3H、t、(b))、3.62(6H、s、(c))、4.34(2H、q、(d))、4.53(2H、s、(e))、5.12&5.30(1H、s、(f))、8.09〜8.18(4H、m、(g)、(h))
【化29】
<<MS分析>>
[結果]
248(ESCI+)(アンモニウムカチオン)
235(ESCI−)(アンチモナートアニオン)
【0065】
(比較化合物例1(合成例6−A))
<比較化合物6−Aの合成>
実施例1において、化合物p−1を化合物p−6 2.72g(0.00670mol)に代えた以外は、実施例1と同様にして、構造式(6−A)で表される比較化合物6−Aの白色結晶5.95g(収率97.3%)を得た。
【化30】
【0066】
(比較化合物例2(合成例7−A))
<比較化合物7−Aの合成>
実施例1において、化合物p−1を化合物p−7 2.33g(0.00670mol)に代えた以外は、実施例1と同様にして、構造式(7−A)で表される比較化合物7−Aの白色結晶5.39g(収率94.1%)を得た。
【化31】
【0067】
(比較化合物例3(合成例8−A))
<比較化合物8−Aの合成>
実施例1において、化合物p−1を化合物p−8 2.23g(0.00670mol)に代えた以外は、実施例1と同様にして、構造式(8−A)で表される比較化合物8−Aの白色結晶5.46g(収率96.8%)を得た。
【化32】
【0068】
(比較化合物例4(合成例6−B))
<比較化合物6−Bの合成>
実施例1において、化合物p−1を化合物p−6 2.72g(0.00670mol)に代え、さらに、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートナトリウムの3質量%水溶液をヘキサフルオロアンチモン酸ナトリウム3質量%水溶液57.80g(0.00670mol)に代えた以外は、実施例1と同様にして、構造式(6−B)で表される比較化合物6−Bの白色結晶2.76g(収率87.5%)を得た。
【化33】
【0069】
(一般式(2)化合物の合成例1)
<一般式(2)化合物101の合成>
攪拌器を設置した200mL三口フラスコにトリメチルアニリニウムクロライド1g(0.00583mol)と純水20gを入れ、室温で撹拌し溶解させた。そこに、攪拌しながらn−ブチルトリフェニルボレートリチウムの3質量%水溶液59.5g(0.00583mol)をゆっくり添加し、白色結晶を析出させた。さらに4時間、室温にて攪拌を行い、その後減圧濾過にて結晶を取り出し、純水にて洗浄を行った後、24時間減圧乾燥することで、構造式(101)で表される一般式(2)化合物101の白色結晶2.09g(収率82.3%)を得た。
【化34】
【0070】
(一般式(2)化合物の合成例2)
<一般式(2)化合物102の合成>
一般式(2)化合物の合成例1において、トリメチルアニリニウムクロライドを1−メチルピリジニウムクロライド0.755g(0.00583mol)に代えた以外は、一般式(2)化合物の合成例1と同様にして、構造式(102)で表される一般式(2)化合物102の白色結晶2.16g(収率77.8%)を得た。
【化35】
【0071】
(一般式(2)化合物の合成例3)
<一般式(2)化合物103の合成>
一般式(2)化合物の合成例1において、トリメチルアニリニウムクロライドをジフェニルヨードニウムクロライド1.85g(0.00583mol)に代えた以外は、一般式(2)化合物の合成例1と同様にして、構造式(103)で表される一般式(2)化合物103の白色結晶3.06g(収率90.5%)を得た。
【化36】
【0072】
(一般式(2)化合物の合成例4)
<一般式(2)化合物104の合成>
一般式(2)化合物の合成例1において、トリメチルアニリニウムクロライドをトリフェニルスルホニウムブロミド2.00g(0.00583mol)に代えた以外は、一般式(2)化合物の合成例1と同様にして、構造式(104)で表される一般式(2)化合物104の白色結晶3.07g(収率93.5%)を得た。
【化37】
【0073】
<一般式(2)の化合物105>
東京化成工業株式会社製 テトラフェニルホスホニウム=テトラフェニルボレートを用意した。
【0074】
<一般式(2)の化合物106>
東京化成工業株式会社製 テトラフェニルホスホニウム=テトラp-トリルボレートを用意した。
【0075】
(実施例8〜74及び比較例1〜36)
表1−1から表1−10に示す配合にしたがって熱硬化性樹脂組成物を作製した。
作製した熱硬化性樹脂組成物をシリコーン系離型処理された剥離PET(ポリエチレンテレフタレート)にコーティングし、60℃に設定された熱風循環オーブン中で5分間乾燥することにより、平均厚み15μmの熱硬化性シートを作製した。
【0076】
【表1-1】
【0077】
【表1-2】
【0078】
【表1-3】
【0079】
【表1-4】
【0080】
【表1-5】
【0081】
【表1-6】
【0082】
【表1-7】
【0083】
【表1-8】
【0084】
【表1-9】
【0085】
【表1-10】
【0086】
表1−1から表1−10における数値は、溶剤分を除いた配合量であり、単位は、質量部である。一般式(1)化合物及び比較化合物の数値は、構造式(1−A)の一般式(1)の化合物の5質量部を基準とし、同一のモル量となるようにした。ただし、実施例17〜19及び実施例70から71は例外である。
なお、表1−1から表1−10における各材料は、以下のとおりである。
YP−70:新日鐵住金化学株式会社製、ビスフェノールA/ビスフェノールF共重合型フェノキシ樹脂
FX−316:新日鐵住金化学株式会社製、ビスフェノールF型フェノキシ樹脂
YL980:三菱化学株式会社製、ビスフェノールAタイプエポキシ樹脂
YL983U:三菱化学株式会社製、ビスフェノールFタイプエポキシ樹脂
CEL2021P:ダイセル化学工業株式会社製 脂環式エポキシ
OXT−121:東亞合成株式会社製 キシリレンビスオキセタン
パーロイルL:日油株式会社製、ジラウロイルパーオキサイド
パーヘキサHC:日油株式会社製 1,1−ジ(t−ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン
AO−80:株式会社ADEKA製 商品名:アデカスタブAO−80(セミヒンダー
ド型酸化防止剤)
P3B:昭和電工株式会社製、テトラブチルアンモニウム=n―ブチルトリフェニルボレート
BP3B:昭和電工株式会社製、テトラブチルアンモニウム=n―ブチルトリス−tert−ブチルフェニルボレート
N3B:昭和電工株式会社製、テトラブチルアンモニウム=n―ブチルトリナフチルボレート
【0087】
なお、配合する際、YP−70及びFX−316は、メチルエチルケトンの45質量%固形分溶液を用い、YL980、YL983U、CEL2021P、OXT−121は、原液を用いた。パーロイルLは、トルエンの30質量%固形分溶液を用いた。パーヘキサHCはMEKの30質量%溶液を用いた。一般式(1)化合物及び比較化合物は、メチルエチルケトンの30質量%固形分溶液を用いた。一般式(2)の化合物のうち構造式(105)と(106)以外はメチルエチルケトンの4質量%固形分溶液を用いた。構造式(105)と(106)は溶剤に対し難溶であったため、あらかじめYP−70のMEK溶液に分散させて用いた。
【0088】
(実施例8〜74及び比較例1〜36の熱硬化性シートの低温短時間硬化性及び保存安定性評価)
作製した実施例8〜74及び比較例1〜36の熱硬化性シート(平均厚み15μm)の低温短時間硬化性及び保存安定性を、エスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社製の示差走査熱量測定装置DSC6200を用いて評価した。
【0089】
<低温短時間硬化性の評価>
各熱硬化性シート1.5mgをDSC6200用の直径5mmのアルミ容器に入れ、クランプカバーをして、評価用サンプルを作製した。本サンプルをヒーター板に各々5秒間押し付けた後、示差走査熱量測定を行い、その発熱量と押し付ける前の発熱量から反応率を算出した。ヒーター板の温度は120℃及び130℃とした。
示差走査熱量測定による発熱挙動はエポキシ樹脂の硬化反応挙動を反映していることが当業界ではよく知られている。よって、ヒーター板による加熱前後の発熱量の比率は熱硬化性シート中のエポキシ樹脂の反応率を反映していると言える。
実用的な観点では、低温短時間硬化性としては、130℃で65%を超えていることが目安となる。
結果を表2−1から表2−10に示す。
−測定条件−
昇温速度 10℃/min(25℃〜300℃)
ガス 100mL/min
サンプル重量 約1.5mg
【0090】
<保存安定性の評価>
保存安定性は、25℃/65%Rhの暗所環境下にて1週間放置前後の示差走査熱量測定における発熱量変化から減少率を算出することで評価した。先に記載した通り、示差走査熱量測定による発熱挙動はエポキシ樹脂の硬化反応挙動を反映しているので、放置前後の発熱量の変化量は放置中でのエポキシの反応進行量を反映する。放置前後で発熱量の変化が少ないほど保存安定性が高いと言える。実用的な観点では、具体的には、10%以下の減少に抑えることで熱硬化性シートとしての機能は維持できる。保存安定性の評価結果を表2−1〜表2−10に示す。
−測定条件−
昇温速度 10℃/min(25℃〜300℃)
ガス 100mL/min
サンプル重量 約5mg
【0091】
【表2-1】
【0092】
【表2-2】
【0093】
【表2-3】
【0094】
【表2-4】
【0095】
【表2-5】
【0096】
【表2-6】
【0097】
【表2-7】
【0098】
【表2-8】
【0099】
【表2-9】
【0100】
【表2-10】
【0101】
表2−1〜表2−10の結果より、本発明の一般式(1)で表される特定の構造を有する化合物、及びラジカル発生剤を含有した実施例8〜21及び実施例29〜35の熱硬化性樹脂組成物及び熱硬化性シートは、低温短時間硬化性、及び保存安定性に優れていることが確認できた。
一般式(1)以外の比較化合物を使用した比較例1〜4及び比較例20〜23は、低温硬化性が劣っていた。また、本発明の一般式(1)の化合物はラジカル発生剤を含有することで顕著に低温短時間硬化性が発現する(比較例5〜11と実施例8〜14参照)が、比較化合物を使用したものはラジカル発生剤を含有させても低温短時間硬化性が顕著に発現しない(比較例1〜4と比較例12〜15参照)ことがわかる。
従って、低温硬化性と保存安定性の両立を図るうえで、本発明の一般式(1)で表される特定の構造を有する化合物、及びラジカル発生剤を含有させることが有効であることがわかった。
また、本発明の一般式(1)で表される特定の構造を有する化合物、及びラジカル発生剤を含有したものは低温硬化性および保存性が優れる(実施例8〜14および29〜35)が、さらに一般式(2)の化合物を含有することで低温短時間硬化性を維持しつつ保存安定性を向上させることがわかる(実施例22〜28および36〜71および74)。
一方、一般式(1)以外の比較化合物と一般式(2)の化合物を使用した比較例16〜19及び比較例24〜36は低温硬化性が劣っていた。
また、実施例51と実施例72および73の比較より、重合禁止剤の含有は保存安定性を向上させる好ましい態様であることもわかる。
以上より、低温硬化性と保存安定性の両立、特により優れた保存安定性を確保するうえで、本発明の一般式(1)で表される特定の構造を有する化合物及びラジカル発生剤に対し、さらに一般式(2)の化合物を含有させることは有効であった。
【産業上の利用可能性】
【0102】
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、低温かつ短時間で硬化が可能で、かつ硬化前の保存安定性が確保できるため、電子部品を接合する接着剤として、好適に用いることができる。