【課題】通常の入力操作の入力操作位置を高速に高精度に検出し、マルチタッチ操作を検出した場合には、入力操作体が入力操作面に触れる前に、ゴースト発生の問題がない相互容量方式の入力操作に切り替える静電容量式タッチパネルを提供する。
【解決手段】通常の入力操作は、第1検出回路を動作させて検出電極に表れる第1交流検出信号の受信レベルViから直接検出電極と入力操作体間の距離dを求めて入力操作位置を検出し、第1検出回路でマルチタッチ操作を検出した場合には、相互容量方式の第2検出回路を動作させて入力操作位置を検出するので、ゴースト発生の問題がなく、マルチタッチ操作の各入力操作位置を検出できる。
判定手段は、第1検出回路が入力操作面上の入力操作体の入力操作位置を検出する前に、2以上の入力操作体による入力操作位置を検出した場合に、マルチタッチ操作と判定することを特徴とする請求項1記載の静電容量式タッチパネル装置。
切替制御回路は、判定手段がマルチタッチ操作と判定した場合には、第1検出回路から第2検出回路へ動作を切り替え、第2検出回路が入力操作面上のいずれの入力操作体の入力操作位置も検出しない場合に、第2検出回路から第1検出回路へ動作を切り替えることを特徴とする請求項1又は請求項2のいずれか1項に記載の静電容量式タッチパネル装置。
絶縁基板の入力操作面に沿って第1方向に配線される複数の第1検出電極と第1方向と交差する第2方向に配線される複数の第2検出電極の各検出電極に、入力操作体との相対電位が変動する第1交流検出信号を発信し、
前記各検出電極と入力操作体間の静電容量を介して、前記各検出電極に表れる第1交流検出信号の受信レベルを検出し、
前記各検出電極毎に検出した第1交流検出信号の受信レベルをもとにその検出電極と入力操作体間の距離を求め、各検出電極の入力操作体との距離を比較して入力操作体の入力操作位置を検出し、
検出した入力操作位置が入力操作面に達するまで、単一の入力操作体による入力操作位置を検出した場合には、その入力操作面上の入力操作体の入力操作位置を検出し、
検出した入力操作位置が入力操作面に達する前に、2以上の入力操作体による入力操作位置を検出した場合に、第1交流検出信号の発信を停止するとともに、複数の第1検出電極へ順に第2交流検出信号を発信し、
第1検出電極と第2検出電極間の静電容量を介して、第2交流検出信号を発信した第1検出電極に交差する複数の各第2検出電極に表れる第2交流検出信号の受信レベルを検出し、
入力操作体が接近し受信レベルが変化する第1検出電極と第2検出電極の絶縁基板上の交差位置から、入力操作面上の入力操作体の入力操作位置を検出することを特徴とする静電容量式タッチパネルの入力操作位置検出方法。
【背景技術】
【0002】
静電容量式タッチパネルの入力操作位置の検出方式には、例えば、特表2013−534343号公報(特許文献1)にみられるように、入力操作体が接近することにより浮遊容量が増大する検出電極を検出し、複数の検出電極についての浮遊容量の変化量を比較する重心から入力操作位置を検出する自己容量方式(1線式)と、特表2012−502397号公報(特許文献2)にみられるように、駆動電極へ所定電圧レベルの交流検出信号を加え、駆動電極と入力操作体が接近することにより交流検出信号の受信レベルが低下する検出電極との交差位置から入力操作位置を検出する相互容量方式(2線式)とに分けられる。
【0003】
自己容量方式では、入力操作面に沿った第1方向と第2方向に、それぞれ互いに絶縁された複数の検出電極を配線するだけで、駆動電極を配線しないので構造が簡略化され、また、各検出電極の配線数だけ走査すれば第1方向と第2方向の入力操作位置を検出できるのでスキャン時間が短く、消費電力が小さいというメリットがあるが、検出した自己容量から入力操作体の入力操作位置を一カ所に絞ることが困難で、入力操作面の二カ所以上の位置を同時に入力操作するマルチタッチ操作では、実際の入力操作位置の他に、第1方向と第2方向の異なる位置を入力操作位置と誤検出する「ゴースト発生」の問題が生じる。
【0004】
一方、相互容量方式は、第1方向に配線される複数の第1検出電極と第2方向に配線される第2検出電極を互いに絶縁して絶縁パネルの入力操作面に沿って配線し、その一方を交流検出信号を加える駆動電極、他方を交流検出信号の受信レベルを検出する検出電極とする走査を、駆動電極と検出電極の交差位置の全てについて行い、受信レベルが低下した検出電極と駆動電極の交差位置から第1方向と第2方向での入力操作位置を検出する。従って、マルチタッチ操作があっても、それぞれの入力操作位置を正確に検出し、ゴースト発生の問題はないが、第1検出電極と第2検出電極の交差位置の全てについて走査するので、スキャン時間が長くなり入力操作の応答速度が低下するとともに消費電力も増大する。
【0005】
そこで、自己容量方式と相互容量方式を検出の目的によって切り替え可能とした静電容量センサも知られている(特開2015−31552号公報(特許文献3))。以下、この従来の静電容量センサ100の動作を
図6と
図7を用いて説明する。
図6と
図7において、101は、交流検出信号を発信する送信回路、102は、電圧計からなり、交流検出信号の受信レベルを検出する受信回路、103は、入力操作面に配置された駆動電極と検出電極を兼ねた送信電極、104は、入力操作面の送信電極103の近傍に配置された検出電極となる受信電極、107は、送信回路101から送信電極103の方向を順方向としてその間に接続されたダイオード、108は、相互容量方式で受信電極104の電位を検出するための接地容量である。
【0006】
静電容量センサ100を自己容量方式で動作させて、被検知物(入力操作体)110を検出する場合には、
図6に示すように、送信電極103と受信回路102間の開閉器105をON、受信電極104と受信回路102間の開閉器106をOFFとする。送信回路101から送信電極103へ交流検出信号を発信し、送信電極103に被検知物110が接近していると、その間の自己容量(静電容量)120が交流検出信号によって充電される。送信電極103の電位は、この静電容量が充電されることにより徐々に上昇し、開閉器105がONとなり送信電極103に接続する受信回路102は、上昇する送信電極103の電位が一定電位に達するまでの経過時間を検出する。
【0007】
送信電極103と被検知物110間の静電容量120は、その間の距離に反比例するので、被検知物110が送信電極103に接近するほど大きくなり、交流検出信号により静電容量120を充電して上昇する送信電極103の電位の上昇速度も遅くなり、受信回路102が検出する経過時間が長くなる。従って、静電容量センサ100は、受信回路102が検出する経過時間が長くなることから送信電極103へ被検知物110が接近したことを検知する。
【0008】
また、静電容量センサ100を相互容量方式で動作させて、被検知物(入力操作体)110を検出する場合には、
図7に示すように、送信電極103と受信回路102間の開閉器105をOFF、受信電極104と受信回路102間の開閉器106をONとする。送信回路101から送信電極103へ交流検出信号を発信すると、直列に接続された送信電極103と受信電極104の間の相互容量(静電容量)130と接地容量108からなる合成容量を充電し、受信電極104若しくは接地容量108の高圧側の電位は充電により徐々に上昇し、接地容量108の高圧側に接続する受信回路102は、この上昇する電位が一定電位に達するまでの経過時間を検出する。
【0009】
送信電極103と受信電極104の間に被検知物110が存在していない場合には、交流検出信号による電流が直列に接続する相互容量(静電容量)130と接地容量108との合成容量を充電するが、被検知物110が電極103、104間に接近すると、その一部が送信電極103から被検知物110に流れ、相互容量(静電容量)130が減少するので、接地容量108との合成容量も減少し、充電速度が増して、受信回路102で検出する経過時間が短くなる。従って、静電容量センサ100は、受信回路102が検出する経過時間が短縮することから、送信電極103と受信電極104に被検知物110が接近したことを検出し、その送信電極103と受信電極104の配置位置から被検知物110の位置を検出する。
【0010】
この静電容量センサ100の自己容量方式は、入力操作面の送信電極103に被検知物110が達する前の接近した状態を検出できるが、受信回路102が検出する経過時間が長くなることから被検知物110の接近を検出するので、検出時間が長い。一方、相互容量方式は、送信電極103と受信電極104の間に被検知物110が接近するまで被検知物110を検出できないが、受信回路102が検出する経過時間が短くなることから被検知物110の接近を検出するので、検出時間が短く、高速に移動する被検知物110を検知できる。そこで、静電容量センサ100は、自己容量方式と相互容量方式の動作を切り替えて、通常は自己容量方式で被検知物110の接近を検出し、被検知物110の接近が検出された後は、相互容量方式の動作に切り替えて高速に移動する被検知物の移動を検出している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
自己容量方式で二次元の2方向の入力操作位置を検出する場合には、上述した「ゴースト発生」の問題が生じるので、特許文献1の静電容量式タッチパネルでは、前記2方向の他に更に異なる方向に多数の補助検出電極を配線し、2以上の入力操作位置を検出した場合には、各補助検出電極についての静電容量の変化から、実際にマルチタッチした入力操作位置を判別している。しかしながら、この方法は、2方向の検出電極の他に更に異なる方向の複数の補助検出電極を全ての検出電極が互いに絶縁するように配線しなければならず、静電容量式タッチパネルの構造が極めて複雑化するので実用的ではない。
【0013】
相互容量方式で入力操作位置を検出すれば、ゴースト発生の問題がなく、マルチタッチ操作による各入力操作位置を検出できるので、自己容量方式と相互容量方式を検出用途に応じて切り替える特許文献3に記載の発明と組み合わせて、マルチタッチ操作を検出した場合にのみ自己容量方式から相互容量方式へ切り替える静電容量式タッチパネルが検討された。
【0014】
しかしながら、特許文献1と特許文献3に開示されているように、従来の自己容量方式で入力操作体の入力操作位置を検出する場合には、入力操作体と交流検出信号を印加する検出電極間の静電容量の変化量に応じて変化する所定の充電電位に達するまでの経過時間から、検出電極と入力操作体間の距離を求めるので、入力操作体と検出電極間の距離は、入力操作体と検出電極間の静電容量に反比例するものの、実際に検出する経過時間との線形性がなく、経過時間から高精度に検出電極と入力操作体間の距離を検出することができない。
【0015】
特に、特許文献1に記載のように二次元の2方向の入力操作位置を検出する場合には、2方向にそれぞれ配線される各検出電極についての静電容量の変化量の重心から入力操作体の2方向の入力操作位置を検出することとなり、各検出電極についての静電容量の変化量を表す経過時間には入力操作体との距離と線形性がないので、その重心から求める入力操作位置の精度は悪化する。従って、マルチタッチ操作を検出した場合にのみ自己容量方式から相互容量方式へ切り替えるとしても、マルチタッチ操作を検出しない通常の入力操作位置の検出に、自己容量方式を採用することはできない。
【0016】
更に、自己容量方式の静電容量式タッチパネルでは、上述のように入力操作位置の検出精度が悪いので、マルチタッチ操作自体を検出することが困難で、少なくとも2以上の入力操作体が入力操作面に接触する程度まで接近しなければ、2以上の独立した入力操作位置を検出することができず、マルチタッチ操作を検出した場合にのみ自己容量方式から相互容量方式へ切り替えるとしても、ゴースト発生の問題が生じない相互容量方式への切り替えが遅れるものとなる。
【0017】
一方、特許文献2に示される相互容量方式によれば、ゴースト発生の問題がなく、高い精度で入力操作位置を検出することができるが、二次元の2方向の入力操作位置を検出する場合には、第1方向に配線される複数の駆動電極と第2方向に配線される複数の検出電極の全ての交差位置について、静電容量の変化を検出する走査を行う必要があり、二次元の入力操作位置を高速に検出することができない。この問題は、タッチパネルの入力操作面が拡大し、多数の駆動電極と検出電極を配線する必要がある場合により顕著となるので、マルチタッチ操作の検出有無にかかわらず、常に相互容量方式を採用することにも問題がある。
【0018】
本発明は、このような従来の問題点を考慮してなされたものであり、マルチタッチ操作ではない通常の入力操作の入力操作位置を高速に高精度に検出する静電容量式タッチパネルを提供することを目的とする。
【0019】
また、マルチタッチ操作を検出した場合には、入力操作体が入力操作面に触れる前に、ゴースト発生の問題がない相互容量方式に切り替える静電容量式タッチパネルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
上述の目的を達成するため、請求項1の静電容量式タッチパネルは、絶縁基板の入力操作面に沿って第1方向に配線される複数の第1検出電極と、入力操作面に沿って第1方向と交差する第2方向に配線される複数の第2検出電極と、第1検出電極と第2検出電極の各検出電極と入力操作体との相対電位が変動する第1交流検出信号を発信する第1発信手段と、各検出電極と入力操作体間の静電容量を介して、各検出電極に表れる第1交流検出信号の受信レベルを検出する第1信号検出手段とを有し、各検出電極毎に検出した第1交流検出信号の受信レベルをもとにその検出電極と入力操作体間の距離を求め、各検出電極の入力操作体との距離を比較して入力操作体の入力操作位置を検出する第1検出回路と、複数の第1検出電極へ順に第2交流検出信号を発信する第2発信手段と、第1検出電極と第2検出電極間の静電容量を介して、第2交流検出信号を発信した第1検出電極に交差する複数の各第2検出電極に表れる第2交流検出信号の受信レベルを検出する第2信号検出手段とを有し、入力操作体が接近し受信レベルが変化する第1検出電極と第2検出電極の絶縁基板上の交差位置から、入力操作面上の入力操作体の入力操作位置を検出する第2検出回路と、第1検出回路が2以上の入力操作体による入力操作位置を検出した場合にマルチタッチ操作と判定する判定手段と、判定手段の判定結果によって第1検出回路と第2検出回路のいずれかの動作に切り替える切替制御回路とを備え、
判定手段がマルチタッチ操作と判定しない場合には、第1検出回路を動作させて入力操作面上の入力操作体の入力操作位置を検出し、判定手段がマルチタッチ操作と判定した場合には、第2検出回路を動作させて入力操作面上の2以上の入力操作体の入力操作位置をそれぞれ検出することを特徴とする。
【0021】
検出電極と入力操作体間の静電容量をCm、検出電極と入力操作体間の距離をd、第1交流検出信号の出力レベルをVs、kを定数として、第1検出回路の検出電極に表れる受信レベルViは、Vi=Vs/(d・k)で表され、検出電極と入力操作体間の距離dに反比例する。従って、第1検出回路は、第1方向に沿って配線される第1検出電極が検出した第1交流検出信号の受信レベルViから、第1方向に直交する方向の第1検出電極と入力操作体間の距離が、第2方向に沿って配線される第2検出電極が検出した第1交流検出信号の受信レベルViから、第2方向に直交する方向の第2検出電極と入力操作体間の距離がそれぞれ得られ、入力操作面に沿った二次元の入力操作位置を検出できる。
【0022】
判定手段でマルチタッチ操作と判定されない通常の入力操作は、第1検出回路が動作してその入力操作位置を検出する。第1検出回路が各検出電極について検出する受信レベルViの逆数は、検出電極と入力操作体間の距離dと線形性があるので、受信レベルViから入力操作体の入力操作位置を精度良く検出でき、第1検出電極と第2検出電極の総電極数について受信レベルViを検出するだけで入力操作面上の二次元の入力操作位置を検出できる。
【0023】
第2検出回路は、第2交流検出信号を印加する複数の第1検出電極と第2交流検出信号の受信レベルを検出する複数の第2検出電極の全ての交差位置について、交差位置毎に第2交流検出信号の受信レベルが低下した交差位置で交差する第1検出電極と第2検出電極の配線位置から入力操作面の二次元の入力操作位置を入力操作位置を検出する。第2検出回路によれば、全ての交差位置について入力操作体の接近による第2交流検出信号の受信レベルを検出するので、マルチタッチ操作があってもゴースト発生の問題なく、各入力操作位置を正確に検出できる。
【0024】
第1検出回路と第2検出回路は、複数の第1検出電極と複数の第2検出電極を兼用するので,構造を大幅に変更することなく、異なる検出方式で入力操作位置を検出できる。
【0025】
請求項2の静電容量式タッチパネルは、判定手段が、第1検出回路が入力操作面上の入力操作体の入力操作位置を検出する前に、2以上の入力操作体による入力操作位置を検出した場合に、マルチタッチ操作と判定することを特徴とする。
【0026】
第1検出回路によれば、高精度に入力操作位置を検出できるので、判定手段は、複数の入力操作体が入力操作面から離れていてもマルチタッチ操作と判定することができ、入力操作面をタッチ操作する前に、第2検出回路を起動させて高速にマルチタッチ操作の各入力操作位置を検出できる。
【0027】
請求項3の静電容量式タッチパネルは、切替制御回路が、判定手段がマルチタッチ操作と判定した場合には、第1検出回路から第2検出回路へ動作を切り替え、第2検出回路が入力操作面上のいずれの入力操作体の入力操作位置も検出しない場合に、第2検出回路から第1検出回路へ動作を切り替えることを特徴とする。
【0028】
マルチタッチ操作は、第2検出回路が動作して入力操作位置を検出し、マルチタッチ操作の入力操作が終わると第1検出回路が動作するので、入力操作の待機状態では第1検出回路が動作する。
【0029】
請求項4の静電容量式タッチパネルは、第1検出回路が、更に、一方を接地若しくは定電位とした低圧基準電源線と高圧基準電源線との間に直流電圧を出力する一次直流電源回路と、低圧振動電源線と高圧振動電源線との間から直流電圧を出力する二次直流電源回路と、低圧基準電源線と低圧振動電源線間に接続され、第1交流検出信号に対してハイインピーダンスとなる第1インダクタと、高圧基準電源線と高圧振動電源線間に接続され、第1交流検出信号に対してハイインピーダンスとなる第2インダクタと、二次直流電源回路で動作する第1発信手段と高圧基準電源線及び低圧基準電源線間にそれぞれ接続される第1キャパシタ及び第2キャパシタとを備え、
第1検出回路を動作させる間は、第2発信手段の動作を停止し、第1発信手段から、第1キャパシタと第2キャパシタを介して、一次直流電源回路へ第1交流検出信号を出力するとともに、各検出電極を、二次直流電源回路の低圧振動電源線と高圧振動電源線のいずれかに接続して第1交流検出信号の周波数で振動させ、
第2検出回路を動作させる間は、第2発信手段から複数の第1検出電極へ順に第2交流検出信号を出力するとともに、第1発信手段の第1キャパシタと第2キャパシタからみた出力インピーダンスを低インピーダンスとして第1発信手段の第1交流検出信号の出力を停止することを特徴とする。
【0030】
第1検出回路を動作させる間は、一次直流電源回路が、低圧基準電源線と高圧基準電源線の一方は接地若しくは定電位に接続して定電位であるので、二次直流電源回路で動作する第1発信手段から第1キャパシタと第2キャパシタを介して一次直流電源回路に第1交流検出信号が出力すると、二次直流電源回路は、第1交流検出信号の周波数fで相対的に変動する。各検出電極は、二次直流電源回路の低圧振動電源線と高圧振動電源線のいずれかに接続するので、定電位の入力操作体に対して第1交流検出信号の周波数fで相対的に電位を変動する。
【0031】
第2検出回路を動作させる間は、一次直流電源回路と二次直流電源回路間に、第1インダクタと第1キャパシタ若しくは第2インダクタと第2キャパシタとからローパスフィルタが形成されるので、一次直流電源回路の高周波ノイズが二次直流電源回路に接続する各回路に流れることがなく、また、二次直流電源回路に接続する各回路で発生する高周波ノイズが一次直流電源回路側に流れない。
【0032】
請求項5の静電容量式タッチパネルの入力操作位置検出方法は、絶縁基板の入力操作面に沿って第1方向に配線される複数の第1検出電極と第1方向と交差する第2方向に配線される複数の第2検出電極の各検出電極に、入力操作体との相対電位が変動する第1交流検出信号を発信し、各検出電極と入力操作体間の静電容量を介して、前記各検出電極に表れる第1交流検出信号の受信レベルを検出し、各検出電極毎に検出した第1交流検出信号の受信レベルをもとにその検出電極と入力操作体間の距離を求め、各検出電極の入力操作体との距離を比較して入力操作体の入力操作位置を検出し、検出した入力操作位置が入力操作面に達するまで、単一の入力操作体による入力操作位置を検出した場合には、その入力操作面上の入力操作体の入力操作位置を検出し、検出した入力操作位置が入力操作面に達する前に、2以上の入力操作体による入力操作位置を検出した場合に、第1交流検出信号の発信を停止するとともに、複数の第1検出電極へ順に第2交流検出信号を発信し、第1検出電極と第2検出電極間の静電容量を介して、第2交流検出信号を発信した第1検出電極に交差する複数の各第2検出電極に表れる第2交流検出信号の受信レベルを検出し、入力操作体が接近し受信レベルが変化する第1検出電極と第2検出電極の絶縁基板上の交差位置から、入力操作面上の入力操作体の入力操作位置を検出することを特徴とする。
【0033】
検出電極と入力操作体間の静電容量をCm、検出電極と入力操作体間の距離をd、第1交流検出信号の出力レベルをVs、kを定数として、第1検出回路の検出電極に表れる受信レベルViは、Vi=Vs/(d・k)で表され、検出電極と入力操作体間の距離dに反比例する。従って、第1方向に沿って配線される第1検出電極が検出した第1交流検出信号の受信レベルViから、第1方向に直交する方向の第1検出電極と入力操作体間の距離が、第2方向に沿って配線される第2検出電極が検出した第1交流検出信号の受信レベルViから、第2方向に直交する方向の第2検出電極と入力操作体間の距離がそれぞれ得られ、入力操作面に沿った二次元の入力操作位置を検出できる。
【0034】
検出した入力操作位置が入力操作面に達するまで、単一の入力操作体による入力操作位置である場合には、同じ方法で第1交流検出信号の受信レベルViから入力操作位置を検出する。各検出電極について検出する受信レベルViの逆数は、検出電極と入力操作体間の距離dと線形性があるので、受信レベルViから入力操作体の入力操作位置を精度良く検出でき、第1検出電極と第2検出電極の総電極数について受信レベルViを検出するだけで入力操作面上の二次元の入力操作位置を検出できる。
【0035】
検出した入力操作位置が入力操作面に達する前に、2以上の入力操作体による入力操作位置を検出した場合には、第1検出電極と第2検出電極の絶縁基板上の交差位置毎に第2交流検出信号の受信レベルを検出し、その受信レベルが変化する交差位置から、入力操作面上の入力操作体の入力操作位置を検出するので、マルチタッチ操作があってもゴースト発生の問題なく、各入力操作位置を正確に検出できる。複数の入力操作体が入力操作面から離れていてもマルチタッチ操作と判定することができ、入力操作面をタッチ操作する前に、異なる入力操作位置の検出方法に切り替えて高速にマルチタッチ操作の各入力操作位置を検出できる。
【発明の効果】
【0036】
請求項1の発明によれば、マルチタッチ操作ではない通常の入力操作の入力操作位置を高速に、かつ高精度に検出することができる。
【0037】
マルチタッチ操作を検出した場合には、第2検出回路を動作させて、ゴースト発生の問題がない相互容量方式で入力操作位置を検出するので、マルチタッチ操作であっても各入力操作位置を正確に検出できる。
【0038】
また、第1検出回路と第2検出回路による異なる入力操作位置の検出方式に、共通の第1検出電極と第2検出電極を用いるので、大幅に構造を変更することなく、第1検出回路と第2検出回路の動作を切り替える静電容量式タッチパネルとすることができる。
【0039】
請求項2の発明によれば、入力操作体が入力操作面に触れる前にマルチタッチ操作を検出し、ゴースト発生の問題がない相互容量方式に切り替えることができる。
【0040】
請求項3の発明よれば、マルチタッチ操作は、第2検出回路が動作して入力操作位置を検出するので、ゴースト発生の問題がなく、各入力操作位置が検出される。入力操作を待機している状態では、第1検出回路が動作するので、入力操作体が入力操作面から離れたホバー操作の入力操作位置を検出できる。
【0041】
請求項4の発明によれば、第1検出回路を動作させて入力操作位置を検出する際に、入力操作体側に第1発信手段を設けることなく、受信レベルを検出する検出電極毎に第1交流検出信号を出力させる必要もない。従って、各検出電極の受信レベルを検出する走査のみで二次元の入力操作位置を検出できるので、検出周期を更に短縮させることができる。
【0042】
また、第1検出回路を動作して各検出電極と入力操作体との電位を変動させる第1インダクタと第1キャパシタ若しくは第2インダクタと第2キャパシタとを利用して、一次直流電源回路と二次直流電源回路間の高周波ノイズを遮断するローパスフィルタを形成できる。
【0043】
請求項5の発明よれば、マルチタッチ操作ではない単一の入力操作体による入力操作の入力操作位置を高速に、かつ高精度に検出することができる。
【0044】
マルチタッチ操作を検出した場合には、検出電極の交差位置毎に受信レベルを検出するので、ゴースト発生の問題がなくマルチタッチ操作の各入力操作位置を正確に検出できる。
【0045】
また、入力操作体が入力操作面に触れる前にマルチタッチ操作を検出し、ゴースト発生の問題がない入力操作位置の検出方法に速やかに切り替えることができる。
【発明を実施するための形態】
【0047】
本発明の一実施の形態に係る静電容量式タッチパネル(以下、タッチパネルという)1の構成を、
図1乃至
図4を用いて説明する。
図1に示すように、タッチパネル1を構成する主要回路部品は、接地電位とした低圧基準電源線GNDと高圧基準電源線VCCからなる基準電源回路4に直流電圧Vccを印加するDC電源16と、低圧基準電源線GNDと高圧基準電源線VCCに接続するコンデンサ17、18等のその他の回路部品からなる非振動回路部品と、接地電位に対して電位が変動する
図1で破線で示す振動側回路基板2に搭載される振動回路部品に分けられる。
【0048】
また、振動側回路基板2には、低圧振動電源線SGNDと高圧振動電源線SVCCとからなる振動電源回路3が配線されている。低圧振動電源線SGNDは低圧基準電源線GNDと、高圧振動電源線SVCCは高圧基準電源線VCCと、それぞれコイル5、6を介して接続している。コイル5とコイル6のインダクタンスは、いずれも後述する固有周波数fの第1交流検出信号SGに対してハイインピーダンスとなる値に設定され、ここでは、同一のインダクタンスLのコイル5、6を用いている。これにより、
図1に示すように、基準電源回路4の低圧基準電源線GNDと高圧基準電源線VCCへ、固有周波数fの第1交流検出信号SGを同期させて出力すると、基準電源回路4の低圧基準電源線GNDが接地されて安定した電位にあるので、振動電源回路3の低圧振動電源線SGNDと高圧振動電源線SVCCの電位が、同期して固有周波数fで変動し、両者間の電圧は基準電源回路4と同じ直流出力電圧Vccを維持しながら振動する。
【0049】
振動電源回路3が配線された振動側回路基板2には、
図2に示すように、Y方向に配線された多数のX検出電極10X(10)とX方向に配線された多数のY検出電極10Y(10)とが、ダイオード7を介して振動電源回路3の低圧振動電源線SGNDと高圧振動電源線SVCCのいずれかの、ここでは低圧振動電源線SGNDに接続している。多数のX検出電極10XとY検出電極10Yは、振動側回路基板2若しくは別に設ける絶縁パネルの入力操作面となる表面に沿って互いに絶縁して配置され、操作者が入力操作体である指20を入力操作面に向けて入力操作を行うと、1又は2以上の検出電極10XとY検出電極10Yが指20に対向若しくは接近するように入力操作面の全面に配置されている。
【0050】
振動側回路基板2には、更に、X検出電極10Xの接続を切り替えるX側アナログマルチプレクサXMUX、Y検出電極10Yの接続を切り替えるY側アナログマルチプレクサYMUX、マルチプレクサMUXの出力側に増幅回路8を介して接続するA/DコンバータADC、
図1に示すように第1交流検出信号SGを発信する発信回路11、アナログマルチプレクサの接続を切り替え制御する切り替え制御回路12、X検出電極10Xへ第2交流検出信号SG’を発信する電極駆動回路13、座標演算回路14、インタフェース回路15等を内蔵するCPU9が実装され、いずれも振動電源回路3の低圧振動電源線SGNDと高圧振動電源線SVCCに接続し、DC電源16から出力電圧Vccを受けて動作している。
【0051】
発信回路11の出力側は、二股に分岐してそれぞれコンデンサ17、18を介して低圧基準電源線GNDと高圧基準電源線VCCに接続している。コンデンサ17とコンデンサ18は、接続する電源線GND、VCCとの直流電圧を遮断する目的で介在させるので、それぞれのキャパシタンスは任意であるが、ここでは、同一のキャパシタンスCのコンデンサ17、18を用いている。
【0052】
本実施の形態に係るタッチパネル1は、発信回路11から第1交流検出信号SGを発信する第1検出回路と、電極駆動回路13から第2交流検出信号SG’を発信する第2検出回路のいずれかを選択的に動作させ、入力操作体20の入力操作位置を検出する。
【0053】
(第1検出回路の動作)
第1検出回路を動作させる場合には、振動電源回路3側の発信回路11から第1交流検出信号SGを二股に分岐するコンデンサ17、18を介して基準電源回路4の低圧基準電源線GNDと高圧基準電源線VCCに出力する。固有周波数fの固有発振信号SGが基準電源回路4と振動電源回路7に流れる場合に、低圧基準電源線GNDと高圧基準電源線VCC間及び低圧振動電源線SGNDと高圧振動電源線SVCC間が近接して配線され、固有周波数fの帯域でこれらの電源線間は短絡しているとすれば、
図1の基準電源回路4と振動電源回路3は、
図3の等価回路図で示される。
【0054】
図3に示すように、振動電源回路3側の発信回路11の出力SGと基準電源回路4間には、並列にキャパシタンスCのコンデンサ17、18が接続されているので、その合成キャパシタンスは、2Cであり、また、基準電源回路4と振動電源回路3間に並列に接続されるコイル5、6の合成インダクタンスは、L/2となる。これらのキャパシタとインダクタは、固有周波数fの第1交流検出信号SGが流れる閉回路において直列に接続され、第1交流検出信号SGの振幅(レベル)をVi、コイル5、6両端の基準電源回路4と振動電源回路3間の電圧をVs、2πfで表される角速度をω(rad/sec)とすれば、
Vs=[ω
2LC/(ω
2LC−1)]Vi・・・(1)式
で表される。
ここで、
図3に示す回路は、ω
2LC=1で直列共振し、そのときの周波数f
0は、
f
0=1/[2π(LC)
1/2]・・・(2)式
となる。
【0055】
つまり、(2)式関係から得られる共振周波数f
0を、第1交流検出信号SGの固有周波数fとすれば、第1交流検出信号SGの出力レベルVsに対して、(1)式から理論上振動電源回路3の電位が無限大で振動し、振動電源回路3に接続する検出電極10の電位も無限大に振動させることができる。その結果、検出電極10と指20との静電容量が10pF程度と微小であっても、検出電極10と指20間に発生する電圧が無限大に拡大するので、後述するようにCPU9の座標演算回路14に入力される第1交流検出信号SGの受信レベルViは増大し、その検出が容易となる。
【0056】
実際のタッチパネル1では、基準電源回路4と振動電源回路3のインダクタンス、浮遊容量などの影響から、(2)式から得る周波数f
0で共振せず、また、基準電源回路4と振動電源回路3に第1交流検出信号SGが流れる際のエネルギーロス等により、振動電源回路3は、第1交流検出信号SGの出力レベルVsに対して有限倍率に拡大された振幅で電位が振動する。一方、操作者の指20が触れることのある検出電極10に大電圧を加えることはできないので、第1交流検出信号SGの固有周波数fを共振周波数f
0を中心にずらしたり、第1交流検出信号SGの振幅を調整して、CPU9の座標演算回路14で入力操作が確実に検出できる範囲で、検出電極10の電圧振動の振幅を制限している。
【0057】
全ての検出電極10が低圧振動電源線SGNDに接続することによって、その電位は固有周波数fで振動する一方、足下などの一部が接地している操作者の指(入力操作体)20の電位は定電位であるので、指20が接近して指20との静電容量Cfが増大する検出電極10では、検出電極10から指20へ静電容量Cfを介して固有周波数fの電圧信号が出力される。これを、固有周波数fで振動する振動電源回路3からみれば、入力操作により、指20が接近した検出電極10の電位が相対的に固有周波数fで振動することとなり、振動電源回路3で駆動するCPU9において、固有周波数fの電位変動信号、すなわち第1交流検出信号を検出でき、指20が接近する検出電極10で検出する第1交流検出信号の受信レベルViから入力操作を検出できる。
【0058】
各検出電極10と入力操作体20間の静電容量Cmは、検出電極と入力操作体間の距離をd、真空の誘電率をε0、空気の比誘電率εを約1、入力操作体20と検出電極10の対向面積をsとして、Cm=ε0・εr・s/dで表され、この静電容量Cmの交流検出信号に対するリアクタンスXcは、交流検出信号の固有周波数がfであるので、Xc=1/(2π・f・Cm)から、Xc=d/(ω・ε0・εr・s)で表される。
【0059】
図4は、入力操作体20と検出電極10間の電位Vsと検出電極10に表れる交流検出信号SGの受信レベルViの関係を表す第1検出回路の等価回路図であり、図中、Vsは、交流検出信号SGの出力レベル、すなわち検出電極10と入力操作体20間の電位、Cpは、検出電極10と低圧振動電源線SGND間の浮遊容量、rpは、検出電極10の内部抵抗値、R4は、出力抵抗の抵抗値である。図中の等価回路図では、
i1=i2+i3 ・・・(3)式
Vs=i1/(jω・Cm)+i2/(jω・Cp) ・・・(4)式
−i2/(jω・Cp)+i3・rp+i3・R4=0 ・・・(5)式
i3・R4=Vi ・・・(6)式
の関係が成り立ち、(3)式乃至(6)式から、
Vi=[jω・Cm/{1/R4+jω(Cm+Cp)(rp/R4+1)}]・Vs ・・・(7)式
の関係が得られる。
【0060】
内部抵抗rpを0とし、R4がマルチプレクサMUXを介して後段の積分用オペアンプ8に接続されるので無限大とすれば、(7)式は、
Vi=Cm/(Cp+Cm)・Vs
と置き換えられ、更に
数10pFの浮遊容量Cpに比べて静電容量Cmは数10fFと極めて小さいので、(7)式は、更に
Vi=(Cm/Cp)・Vs ・・・(8)式
で表される。
【0061】
上述の通り、入力操作体20と検出電極10のCmは、Cm=ε0・εr・s/dで表されるので、これを(8)式に代入して変形すれば、
Vi={ε0・εr・s/(d・Cp)}Vs ・・・(9)式
となり、入力操作中に指20と検出電極10との対向面積sがほぼ変化しないものとして、(9)式中の(ε0・εr・s/Cp)は、定数であるので、これを1/kとおけば、検出電極10に表れる第1交流検出信号SGの受信レベルViは、
Vi=Vs/(d・k) ・・・(10)式
で表され、指20との距離dが近い検出電極10ほど、受信レベルViが第1交流検出信号SGの出力レベルVsに近づく大きな値となる。ただし、指20が検出電極10に近接し、その間の静電容量Cmが数10pFの浮遊容量Cpに比べて無視できない程度に大きくなった場合には(10)式を適用できず、受信レベルViは最大で出力レベルVsとなる。
【0062】
(10)式を用いれば、複数の各検出電極10に表れる第1交流検出信号の受信レベルViから、各検出電極10と指20の間の距離dを直接求めることができ、本実施の形態では、マルチプレクサMUXで切り替える全ての検出電極10(X検出電極10X、Y検出電極10Y)の配置位置と、各検出電極10から検出する受信レベルViとから、入力操作面に平行なXY方向の入力操作位置(x、y)と入力操作面に直交するZ方向の入力操作位置zの3次元の入力操作位置を検出する。
【0063】
この入力操作位置(x、y、z)を検出するために、CPU9の切り替え制御回路12は、X側アナログマルチプレクサXMUXとY側アナログマルチプレクサYMUXを切り替え制御し、一走査周期で全てのX検出電極10XとY検出電極10Yを各検出電極10毎に順に積分用オペアンプからなる増幅回路8へ接続する。これにより、全ての検出電極10に表れる第1交流検出信号の受信レベルViは、増幅回路8で増幅された後、A/DコンバータADCに入力される。
【0064】
A/DコンバータADCは、第1交流検出信号SGの固有周波数fの少なくとも2倍以上の周波数でサンプリングし、第1交流検出信号SGの受信レベルViを量子化してCPU9の座標演算回路14へ出力する。
【0065】
A/Dコンバータ14から出力される量子化データは、その時にアナログマルチプレクサMUXが選択接続した検出電極10に表れる第1交流検出信号SGの受信レベルViを表すので、入力操作位置を検出する座標演算回路14では、その検出電極10が増幅回路8に接続する接続期間中にA/DコンバータADCから入力された量子化データの総和を所定の閾値と比較し、所定の閾値以上である場合に入力操作体20が接近した検出電極10と判定する。判定された検出電極10から検出した第1交流検出信号SGの受信レベルViを用いて、(10)式からその検出電極10の配置位置と入力操作体20との距離dが得られるので、同様に判定された複数の各検出電極10の入力操作面上のX方向若しくはY方向の配設位置と受信レベルViとから入力操作面上の二次元の入力操作位置及び/又は入力操作面上のZ方向の高さを含む三次元の入力操作位置を検出する。
【0066】
CPU9は、座標演算回路14が一走査周期中に、入力操作位置が入力操作面上にあるか否かにかかわらず、複数の入力操作位置を検出した場合には、発信回路11からの第1交流検出信号SGを発信を停止して、第1検出回路から相互容量方式で入力操作位置を検出する第2検出回路に動作を切り替える。一方、複数の入力操作位置を検出しない限り、単一の入力操作体20による入力操作であるとして、座標演算回路14が検出した二次元若しくは三次元の入力操作位置を、インターフェース回路15から直流が絶縁された信号線19を介して、USB通信、I
2C通信等で入力操作位置を利用する上位機器に出力される。
【0067】
この第1検出回路では、いずれかの検出電極10と入力操作体20との距離dが、その検出電極10で検出した第1交流検出信号SGの受信レベルViの逆数に比例する((10)式参照)ので、XY方向で交差配置されるX検出電極10XとY検出電極10Yで検出する受信レベルViから、入力操作面上のZ方向の高さを含む三次元の入力操作位置を精度良く検出できる。
【0068】
また、一走査周期に、検出電極10(X検出電極10XとY検出電極10Y)の配線数に相当する走査で各検出電極10の受信レベルViを検出するだけで、入力操作面上の二次元の入力操作位置を検出できるので、検出電極の全ての交点について走査する相互容量方式に比べて高速にかつ低消費電力で入力操作位置を検出できる。
【0069】
(第2検出回路の動作)
第2検出回路を動作させる場合には、発信回路11からの第1交流検出信号SGの発信を停止し、CPU9に内蔵の第2発信手段となる電極駆動回路13から第2交流検出信号SG’を発信し、相互容量方式で入力操作体20の二次元の入力操作位置を検出する。
【0070】
第1交流検出信号SGの発信が停止することにより、振動電源回路3の電位振動も停止するが、振動側回路基板2に搭載された各回路部品は、コイル5、6を介したDC電源16の電源で動作する。第2検出回路では、複数のX検出電極10X若しくは複数のY検出電極10Yの一方を第2交流検出信号SG’を印加する駆動電極D(n)、他方を第2交流検出信号SG’の受信レベルViを検出する検出電極S(m)とし、入力操作面上の全ての駆動電極D(n)と検出電極S(m)の交点(n、m)について第2交流検出信号SG’の受信レベルViを検出する。
【0071】
特定の交点(n、m)に入力操作体20が接近すると、その交点(n、m)の駆動電極D(n)に第2交流検出信号SG’を印加しているタイミングで、交点(n、m)の検出電極S(m)に表れる受信レベルViは、第2交流検出信号SG’の一部が入力操作体20に流れて減少するので、受信レベルViが所定の閾値未満となる全ての交点(n、m)で交差する駆動電極D(n)と検出電極S(m)のXY方向の配線位置から入力操作体20の二次元の入力操作位置を検出する。
【0072】
本実施の形態では、複数のX検出電極10Xを駆動電極D(n)として、切り替え制御回路12は、X側アナログマルチプレクサXMUXを切り替え制御して、電極駆動回路13を各X検出電極10Xに切り替え接続し、各X検出電極10Xへ順に第2交流検出信号SG’を印加する。第2交流検出信号SG’の出力レベルVsや交流周波数は任意であるが、ここでは受信レベルViの検出に第1検出回路の検出回路を共用するので、第1交流検出信号SGの出力レベルVs及び周波数fと同一とする。しかしながら、第1交流検出信号SGと第2交流検出信号SG’の出力レベルVsを必ずしも一致させる必要はないので、電極駆動回路13を発信回路11で代用し、第1交流検出信号SGを第2交流検出信号SG’として各X検出電極10Xへ印加させてもよい。
【0073】
いずれかのX検出電極10X(駆動電極D(n))に第2交流検出信号SG’を印加している間、切り替え制御回路12はY側アナログマルチプレクサYMUXを切り替え制御して、その駆動電極D(n)に絶縁して交差する全てのY検出電極10Yを順に増幅回路8へ接続し、第2交流検出信号SG’の受信レベルViを検出する検出電極S(m)とする。これにより、全ての交点(n、m)について、検出電極S(m)に表れる第2交流検出信号SG’受信レベルViは、増幅回路8で増幅された後、A/DコンバータADCに入力され、A/DコンバータADCは、第2交流検出信号SG’の固有周波数fの少なくとも2倍以上の周波数でサンプリングし、第2交流検出信号SG’の受信レベルViを量子化してCPU9の座標演算回路14へ出力する。
【0074】
CPU9の切り替え制御回路12は、一走査期間中に同様の切り替え制御を繰り返し、全てのX検出電極10XとY検出電極10Yの交点(n、m)について検出された受信レベルViを順に座標演算回路14へ出力する。
【0075】
ここで、各交点(n、m)について検出された受信レベルViは、交点(n、m)で交差する駆動電極D(n)と検出電極S(m)間の相互容量の変化量を表し、入力操作体20と交点(n、m)との距離が接近するほど低下する。そこで、座標演算回路14は、全ての交点(n、m)について検出された受信レベルViを、X検出電極10Xの配置順であるX方向と、Y検出電極10Yの配置順であるY方向に沿って比較し、極小値が検出された交点(n、m)の近傍に入力操作があったとものとし、その交点(n、m)を含む周囲の交点(n、m)について検出された受信レベルViのXY方向の重心からXY方向の二次元の入力操作位置を検出する。
【0076】
この第2検出回路では、2本の指20を同時に入力操作面に触れて入力操作を行ういわゆるマルチタッチ操作であっても、全ての交点(n、m)について受信レベルViを検出するので、指20の入力操作により受信レベルViが極小値となる交点(n、m)のみを検出することができ、ゴースト発生の問題がなく、複数の二次元の各入力操作位置を正確に検出できる。
【0077】
CPU9は、第2検出回路を動作させて検出した複数の入力操作位置についても、インターフェース回路15から直流が絶縁された信号線19を介して、USB通信、I
2C通信等で入力操作位置を利用する上位機器に出力する。
【0078】
第2検出回路が動作している間に、発信回路11は第1交流検出信号SGの発信を停止し、コンデンサ17、18側からみた発信回路11の出力インピーダンスを低インピーダンスとしている。従って、振動電源回路3と基準電源回路4の間には、コイル5、6とコンデンサ17、18からなるローパスフィルタが形成され、DC電源16側と振動側回路基板2に実装された各回路部品との間で互いに相手側に高周波ノイズが伝達されない。
【0079】
以下、このように構成された静電容量式タッチパネル1の動作を、
図5のフローチャートで説明する。入力操作が行われていない待機状態では、第1検出回路が動作している(ステップS1)。第1検出回路の動作では、振動電源回路3の電位を振動させるだけで、高圧振動電源線SVCCと低圧振動電源線SGND間や高圧基準電源線VCCと低圧基準電源線GND間に電流が流れないので、極めて少ない消費電力で入力操作を検出できる。
【0080】
特定の検出電極10について検出した受信レベルViを表す量子化データの総和が所定の閾値以上となった場合には、入力操作面に接近する入力操作があったものと推測して、一走査期間中に量子化データの総和が所定の閾値を超えた複数の検出電極10の受信レベルViから二次元若しくは入力操作面から離れたZ方向を含む三次元の入力操作位置を検出する(ステップS2)。
【0081】
ステップS2の一走査期間中に、量子化データの総和が所定の閾値を超える検出電極10が1未満である場合には、入力操作の誤検出若しくは入力操作が終了したものとして、入力操作の待機状態(ステップS1)に戻る。
【0082】
続いて、ステップS2で検出した入力操作位置が1カ所であるか複数箇所であるかを判定し(ステップS3)、複数の入力操作位置が検出された場合には、複数の指(入力操作体)20を入力操作面に接触させるマルチタップ操作が試みられていると推測して第2検出回路を起動し(ステップS4)、単一の入力操作位置である場合には、その検出した入力操作位置を上位装置へ出力した後(ステップS5)、ステップS2に戻り、第1検出回路を動作させた入力操作位置の検出を繰り返す。
【0083】
つまり、第1検出回路を動作させて入力操作位置を検出するステップS2では、入力操作体20を入力操作面から離れた状態のまま操作するいわゆるホバー操作であっても、入力操作位置を検出することができ、マルチタッチ操作をホバー操作の段階で検出し、入力操作体20が入力操作面に接触する前に第2検出回路を起動させることができる。一方、マルチタッチ操作が検出されない限り、入力操作体20が入力操作面に接触した後も第1検出回路が動作して入力操作位置を検出するので、高速にかつ高精度に2次元の入力操作位置を検出できる。
【0084】
ステップS4で第2検出回路を起動させた場合には、第2検出回路で所定時間内に1又は2以上の入力操作位置を検出したかどうかを判定し(ステップS6)、複数の走査周期を繰り返す所定時間内に入力操作位置が検出されなかった場合には、入力操作が終了したとして入力操作の待機状態(ステップS1)に戻る。ここで、所定時間は、第1検出回路でホバー操作が検出されてから入力操作面に触れるまでの操作時間よりわずかに長い時間に設定する。これにより、入力操作体20が、第2検出回路で検出可能な入力操作面に達する前の入力操作位置にあっても、入力操作が終了したものと誤判定されることがない。
【0085】
第2検出回路で1又は2以上の入力操作位置を検出した場合には、その検出数にかかわらず、全ての検出した入力操作位置を上位装置へ出力した後(ステップS7)、ステップS6に戻り、第2検出回路を動作させた入力操作位置の検出を繰り返す。
【0086】
本実施の形態によれば、マルチタッチ操作を意図した複数の入力操作体20が入力操作面に接触する前に、ゴースト問題が発生しない相互容量方式の第2検出回路を起動させるので、検出方式の切り替えによる時間の遅れがなく、すみやかに二次元の入力操作位置を検出できる。
【0087】
また、本実施の形態によれば、2種類の検出方式の第1検出回路と第2検出回路で入力操作面に沿って配線された同一の検出電極10を兼用するとともに、各検出電極10に表れる受信レベルViの検出手段として、Y側アナログマルチプレクサYMUX、増幅回路8、A/DコンバータADC、切り替え制御回路12等の回路を兼用するので、大幅な構造変更や回路部品を追加することなく、第1検出回路と第2検出回路を選択的に動作させることができる。
【0088】
更に、本実施の形態によれば、第1検出回路により入力操作位置を検出する際に、全ての検出電極10を振動電源回路3に接続して、一括して入力操作体20に対し第1交流検出信号SGの出力レベルVsで振動させるので、受信レベルViを検出する検出電極10毎に第1交流検出信号SGを印加する駆動制御の必要がなく、一走査周期が短縮し、より高速に入力操作位置を検出できる。しかしながら、検出電極10と入力操作体20の間に相対電位が変動する第1交流検出信号SGを発生させるものであれば、受信レベルViを検出する検出電極10毎に第1交流検出信号SGを印加してもよく、又、入力操作体20側を第1交流検出信号SGで電位変動させてもよい。
【0089】
また、上述の実施の形態では、マルチタッチ操作ではない通常の入力操作の入力操作位置は、第1検出回路を動作させて検出しているが、入力操作体20が入力操作面に接触する入力操作操作位置は、マルチタッチ操作であるかにかかわらず、第2検出回路を動作させて検出してもよい。