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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2016-17383(P2016-17383A)
(43)【公開日】2016年2月1日
(54)【発明の名称】スラストロック機構及び操作装置
(51)【国際特許分類】
   E03C 1/22 20060101AFI20160105BHJP
   E03C 1/23 20060101ALI20160105BHJP
   A47K 1/14 20060101ALI20160105BHJP
【FI】
   E03C1/22 C
   E03C1/23 Z
   A47K1/14 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2014-142872(P2014-142872)
(22)【出願日】2014年7月11日
(71)【出願人】
【識別番号】392028767
【氏名又は名称】株式会社日本アルファ
(74)【代理人】
【識別番号】100111095
【弁理士】
【氏名又は名称】川口 光男
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 弘貴
【テーマコード(参考)】
2D061
【Fターム(参考)】
2D061DA01
2D061DA02
2D061DA03
2D061DB03
(57)【要約】
【課題】誤組立の発生を確実に防止できるとともに、優れた生産性を得ることができるスラストロック機構、及び、操作装置を提供する。
【解決手段】スラストロック機構8は、筒状の筐体80と、筐体80の内部にて往復移動可能な軸部材84と、軸部材84の外周に設けられた回転リング85とを備える。回転リング85は、被係合突部85Bを有し、筐体80は、係合歯81Aを有する。軸部材84を往動させる度に、係合歯81Aに対する被係合突部85Bの係合と係合解除とが交互に行われる。被係合突部85Bは、軸部材84の往動方向前方側を向く往動側面85Eと、軸部材84の復動方向前方側を向く復動側面85Fとを有する。往動側面85E及び復動側面85Fは、回転リング85の周方向に沿った被係合突部85Bの中心CPを通り、軸部材84の往復移動方向に直交する仮想線VLに対し回転対称の形状とされる。
【選択図】 図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状の筐体と、
前記筐体の内部に配置されるとともに、前記筐体の軸方向に沿って往復移動可能な軸部材と、
前記軸部材の外周に回転可能な状態で設けられるとともに、前記軸部材とともに移動可能な回転リングと、
前記軸部材に対しその復動方向へと付勢する弾性部材とを備え、
前記回転リングは、外周側に突出するとともに、前記軸部材の往動方向前方側に位置する往動側部と、前記軸部材の復動方向前方側に位置する複動側部とを有する被係合突部を具備し、
前記筐体は、
前記軸部材の往復移動方向に対し傾斜する傾斜部を有する案内歯と、
前記軸部材の往復移動方向に沿って前記案内歯と対向状に設けられ、前記復動側部が係合可能な係合歯とを備え、
前記軸部材にその往動方向へと力を加えることで、前記往動側部が前記傾斜部に接触しつつ前記傾斜部を摺動して前記回転リングが回転するとともに、前記軸部材に加えられていた前記往動方向への力を解除することで、前記回転リングが前記弾性部材により復動し、前記係合歯に対し前記被係合突部が係合されることと、
前記軸部材にその往動方向へと力を加えることで、前記往動側部が前記傾斜部に接触しつつ前記傾斜部を摺動して前記回転リングが回転するとともに、前記軸部材に加えられていた前記往動方向への力を解除することで、前記回転リングが前記弾性部材により復動し、前記係合歯に対する前記被係合突部の係合が解除されること
とが交互に行われるように構成されたスラストロック機構であって、
前記往動側部は、前記軸部材の往動方向前方側を向く往動側面を有するとともに、
前記復動側部は、前記軸部材の復動方向前方側を向く復動側面を有し、
前記往動側面及び前記復動側面は、前記回転リングの周方向に沿った前記被係合突部の中心を通り、前記軸部材の往復移動方向と直交する方向に延びる仮想線に対して回転対称の形状とされることを特徴とするスラストロック機構。
【請求項2】
前記往動側面は、前記軸部材の往動方向前方側に向けて膨出する湾曲面状をなし、
前記復動側面は、前記軸部材の復動方向前方側に向けて膨出する湾曲面状をなすことを特徴とする請求項1に記載のスラストロック機構。
【請求項3】
前記被係合突部は、前記回転リングの中心軸を挟むようにして2つ設けられることを特徴とする請求項1又は2に記載のスラストロック機構。
【請求項4】
前記軸部材の外周には、その一端側から他端側に向けて、
窪み状の凹部と、
前記回転リングの内周に挿通される被挿通部と、
外周に突出する環状突部とが、この順序で設けられるとともに、
前記軸部材のうち、前記環状突部よりも一端側に位置する部位の外径は、前記回転リングの内径よりも小さなものとされており、
前記凹部に係止されるとともに、前記環状突部との間で前記回転リングを挟む脱落防止部材が設けられることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のスラストロック機構。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載のスラストロック機構と、
前記軸部材に取付けられるとともに、前記軸部材の往復移動に伴い移動可能に構成され、前記軸部材の変位を槽体の排水口を開閉するための栓蓋側に伝達する伝達部材と、
前記軸部材を往動させるための操作部材とを備えることを特徴とする操作装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、係止状態と係止解除状態とを交互に切換可能であるとともに、各状態を保持可能なスラストロック機構、及び、スラストロック機構を備え、栓蓋を遠隔操作するための操作装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、筒状の筐体と、当該筐体の内部に往復移動可能な状態で配置された軸部材とを有し、前記軸部材を往動させる度に、所定の第1の位置における軸部材のロックと、当該第1の位置とは異なる第2の位置における軸部材のロックとが交互に行われるスラストロック機構が知られている。
【0003】
スラストロック機構の構成についてより詳しく説明すると、スラストロック機構は、操作軸(軸部材)の外周に回転可能に取付けられるとともに、外周に突出する被係合歯を有する回転リングと、前記操作軸に対しその復動方向へと付勢する軸戻し弾機(例えば、バネ)と、前記筐体の内部において操作軸の移動方向に沿って相対するようにして設けられた係合歯、及び、係止歯とを備えている(例えば、特許文献1等参照)。係合歯及び係止歯は、それぞれ筐体の周方向に沿って等間隔に複数設けられている。係合歯は、操作軸側に位置する面が傾斜しており、係止歯は、前記被係合歯のうち操作軸の復動方向前方側に位置する部分(以下、「復動側部」と称することがある)を係止可能な窪みを備えている。そして、前記操作軸を往動させる度に、前記被係合歯のうち前記操作軸の往動方向前方側に位置する部分が、前記係合歯の傾斜面に接触しつつ当該傾斜面上を摺動することで、回転リングが回転するようになっている。また、前記操作軸に加えられていた往動方向への力が解除され、前記軸戻し弾機によって操作軸が復動する度に、係止歯の前記窪みに対する復動側部の係止と係止解除とが交互に行われるようになっている。つまり、操作軸を往動させる度に、係止歯に対する復動側部の係止による、第1の位置における操作軸のロックと、係止歯に対する復動側部の係止解除による、第2の位置における操作軸のロックとが交互に行われるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−307541号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上述の技術において、被係合歯は、正面視略台形状となっている。そのため、スラストロック機構を組立てる際に、操作軸に対して、回転リングを正規の向きとは逆向き(裏表逆)にして取付けてしまうと、スラストロック機構の正常な動作に支障が生じてしまうおそれがある。これに対し、回転リングの逆向きでの取付を防止すべく、所定の治具を用いることが考えられるが、この場合には、組立に多くの時間を要してしまうとともに、組立作業者に大きな負担が生じることとなってしまい、生産性の低下を招いてしまうおそれがある。特に近年では、スラストロック機構の小径化を図るべく、比較的小型(小径)の回転リングを用いることがあり、この場合には、誤組立の発生や生産性の低下がより懸念される。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、誤組立の発生を確実に防止できるとともに、優れた生産性を得ることができるスラストロック機構、及び、操作装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以下、上記目的を解決するのに適した各手段につき、項分けして説明する。なお、必要に応じて対応する手段に特有の作用効果を付記する。
【0008】
手段1.筒状の筐体と、
前記筐体の内部に配置されるとともに、前記筐体の軸方向に沿って往復移動可能な軸部材と、
前記軸部材の外周に回転可能な状態で設けられるとともに、前記軸部材とともに移動可能な回転リングと、
前記軸部材に対しその復動方向へと付勢する弾性部材とを備え、
前記回転リングは、外周側に突出するとともに、前記軸部材の往動方向前方側に位置する往動側部と、前記軸部材の復動方向前方側に位置する複動側部とを有する被係合突部を具備し、
前記筐体は、
前記軸部材の往復移動方向に対し傾斜する傾斜部を有する案内歯と、
前記軸部材の往復移動方向に沿って前記案内歯と対向状に設けられ、前記復動側部が係合可能な係合歯とを備え、
前記軸部材にその往動方向へと力を加えることで、前記往動側部が前記傾斜部に接触しつつ前記傾斜部を摺動して前記回転リングが回転するとともに、前記軸部材に加えられていた前記往動方向への力を解除することで、前記回転リングが前記弾性部材により復動し、前記係合歯に対し前記被係合突部が係合されることと、
前記軸部材にその往動方向へと力を加えることで、前記往動側部が前記傾斜部に接触しつつ前記傾斜部を摺動して前記回転リングが回転するとともに、前記軸部材に加えられていた前記往動方向への力を解除することで、前記回転リングが前記弾性部材により復動し、前記係合歯に対する前記被係合突部の係合が解除されること
とが交互に行われるように構成されたスラストロック機構であって、
前記往動側部は、前記軸部材の往動方向前方側を向く往動側面を有するとともに、
前記復動側部は、前記軸部材の復動方向前方側を向く復動側面を有し、
前記往動側面及び前記復動側面は、前記回転リングの周方向に沿った前記被係合突部の中心を通り、前記軸部材の往復移動方向と直交する方向に延びる仮想線に対して回転対称の形状とされることを特徴とするスラストロック機構。
【0009】
上記手段1によれば、被係合突部において、往動側面及び復動側面は、回転リングの周方向に沿った被係合突部の中心を通り、軸部材の往復移動方向と直交する方向に延びる仮想線に対して回転対称の形状とされている。つまり、180度回転させた(裏表逆とした)回転リングと、回転させていない回転リングとを比較したとき、それぞれの往動側面が同一形状であり、また、それぞれの復動側面も同一形状となるように構成されている。従って、組立時において、回転リングの取付向きを別段考慮する必要がなくなり、単に軸部材の外周に回転リングを取付ければよいこととなる。これにより、誤組立の発生を確実に防止することができる。また、組立作業を極めて簡単で手間のかからないものとすることができるため、優れた生産性を得ることができる。
【0010】
手段2.前記往動側面は、前記軸部材の往動方向前方側に向けて膨出する湾曲面状をなし、
前記復動側面は、前記軸部材の復動方向前方側に向けて膨出する湾曲面状をなすことを特徴とする手段1に記載のスラストロック機構。
【0011】
被係合突部を正面視したときにおいて、被係合突部の往動側部や復動側部が角張った形状をしていると、軸部材を往動させて回転リングを回転させる際に、案内歯や係合歯に対して被係合突部の頂部(角部)が引っ掛かってしまうといった事態が、稀にではあるが、生じ得る。このような引っ掛かりが生じてしまうと、軸部材を往動させても、回転リングを回転させることができないおそれがある。つまり、スラストロック機構の誤作動が生じてしまうおそれがある。
【0012】
この点、上記手段2によれば、往動側面及び復動側面がそれぞれ湾曲面状をなすため、回転リングを回転させる際に、被係合突部が案内歯や係合歯に対して引っ掛かりにくくなる。さらに、案内歯や係合歯に対する被係合突部の接触面積を小さくすることができ、案内歯及び係合歯と被係合突部との間で生じる摩擦抵抗を低減することができる。これらが相乗的に作用することで、軸部材を往動させたときに、回転リングをスムーズに回転させることができ、誤作動の発生をより確実に防止することができる。
【0013】
手段3.前記被係合突部は、前記回転リングの中心軸を挟むようにして2つ設けられることを特徴とする手段1又は2に記載のスラストロック機構。
【0014】
上記手段3によれば、被係合突部が2つと少数であるため、回転リングを回転させる際に、案内歯や係合歯に対し被係合突部が引っ掛かってしまうことを一層確実に防止できる。その結果、軸部材を往動させたときに、回転リングをよりスムーズに回転させることができ、誤作動の発生防止を一層確実に図ることができる。
【0015】
また、被係合突部を2つとすることで、案内歯や係合歯の数も少なくすることができる。そのため、案内歯等を有する筐体の小径化、ひいては、スラストロック機構の小型化を図ることができる。スラストロック機構の小型化が図られることで、設置スペースを十分に確保することが難しい箇所にもスラストロック機構を設けることができ、設置自由度を高めることができる。
【0016】
手段4.前記軸部材の外周には、その一端側から他端側に向けて、
窪み状の凹部と、
前記回転リングの内周に挿通される被挿通部と、
外周に突出する環状突部とが、この順序で設けられるとともに、
前記軸部材のうち、前記環状突部よりも一端側に位置する部位の外径は、前記回転リングの内径よりも小さなものとされており、
前記凹部に係止されるとともに、前記環状突部との間で前記回転リングを挟む脱落防止部材が設けられることを特徴とする手段1乃至3のいずれかに記載のスラストロック機構。
【0017】
軸部材からの回転リングの抜けを防止する手法としては、軸部材に回転リングの内径よりも若干大径の大径部を設けるとともに、大径部を回転リングの内周に圧入して、最終的に回転リングの内周を通過させ、その結果、大径部により回転リングの軸方向に沿った移動を規制する手法が考えられる。しかしながら、この手法では、大径部を回転リングの内周へと圧入するときに、回転リングに破損(割れ)が生じてしまうおそれがある。これに対し、回転リングの破損防止を図るべく、大径部を比較的小径とし、大径部の外径と回転リングの内径との寸法差を比較的小さくすることが考えられる。しかしながら、この場合には、回転リングの抜け防止を十分に図ることができないおそれがある。
【0018】
この点、上記手段4によれば、軸部材のうち環状突部よりも一端側に位置する部位を回転リングの内周に挿通し、回転リングが被挿通部の外周に配置された状態で、凹部に脱落防止部材を係止することによって、環状突部と脱落防止部材とにより回転リングを挟み込んで保持することができる。ここで、軸部材のうち環状突部よりも一端側に位置する部位の外径は、回転リングの内径よりも小さいため、当該部位を通して、被挿通部の外周へと回転リングを無理なく容易に配置することができる。従って、軸部材に対する回転リングの取付時に、回転リングに破損が生じてしまうことをより確実に防止できる。また、回転リングは、環状突部と脱落防止部材とで挟み込まれた状態となるため、軸部材からの回転リングの抜けを非常に効果的に防止することができる。
【0019】
手段5.手段1乃至4のいずれかに記載のスラストロック機構と、
前記軸部材に取付けられるとともに、前記軸部材の往復移動に伴い移動可能に構成され、前記軸部材の変位を槽体の排水口を開閉するための栓蓋側に伝達する伝達部材と、
前記軸部材を往動させるための操作部材とを備えることを特徴とする操作装置。
【0020】
上記手段5によれば、上記手段1等と同様の作用効果が奏されることとなる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】(a)は、操作装置の側面図であり、(b)は、操作装置の正面図である。
図2図1(b)のJ−J線断面図である。
図3】(a)は、スラストロック機構の正面図であり、(b)は、図3(a)のK−K線断面図である。
図4】スラストロック機構の分解斜視図である。
図5】係止歯及び案内歯等が展開された状態を示す拡大展開図である。
図6】(a)は、リング部材の斜視図であり、(b)は、リング部材の平面図であり、(c)は、図6(b)のM−M線断面図であり、(d)は、図6(b)のN−N線断面図である。
図7】(a)〜(d)は、被係合突部の移動態様などを説明するための拡大展開模式図である。
図8】係合歯に被係合突部が係合された状態におけるスラストロック機構を示す断面図である。
図9】(a)〜(c)は、別の実施形態における被係合突部の構成を示すリング部材の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に、一実施形態について図面を参照しつつ説明する。操作装置1は、図1(a),(b)及び図2に示すように、槽体としての洗面化粧台100に設けられた立壁状のバックガード101に対し、当該バックガード101の表面から表側に突出した状態で取付けられている。操作装置1は、機構保持部2、取付部材3、支持軸4、ガイド部材5、操作部材としての操作ボタン6、伝達部材7、及び、スラストロック機構8を備えている。尚、本実施形態では、バックガード101の背面(裏面)からバックガード101の背後に位置する壁面部103までの奥行きが比較的小さなものとされている。つまり、操作装置1は、設置スペースの比較的小さな箇所に対し取付けられている。
【0023】
機構保持部2は、所定の樹脂により筒状に形成されており、自身の内周において前記スラストロック機構8を保持している。より詳しくは、機構保持部2は、その一端部に比較的小径の小径部21を有するとともに、その他端側内周に、径方向内側に突出する係止部22を有している。そして、機構保持部2の内周にスラストロック機構8が挿入され、係止部22がスラストロック機構8の外周に設けられた後述する被係止部82Fに係止されることによって、機構保持部2は、スラストロック機構8を小径部21と係止部22とで挟み込むようにして保持している。尚、機構保持部2には、その長手方向に沿って延びるスリット(図示せず)が形成されており、当該スリットを拡幅させることで機構保持部2の他端側が拡径可能となっている。機構保持部2の内周に対するスラストロック機構8の挿入は、機構保持部2の他端側を拡径させた上で行われるようになっている。
【0024】
また、機構保持部2は、前記バックガード101に設けられた貫通孔102に対して水平状態で挿設されている。加えて、機構保持部2の外周には、雄ねじ部23と、当該雄ねじ部23よりも一端側に配置された鍔状部24とが設けられている。雄ねじ部23の外径は、貫通孔102の内径よりも若干小さい程度に設定され、鍔状部24の外径は、貫通孔102の内径よりも大きなものに設定されている。
【0025】
取付部材3は、筒状をなすとともに、内周に前記雄ねじ部23を螺合可能な雌ねじ部31を備えている。そして、雌ねじ部31に対し前記雄ねじ部23が螺合され、取付部材3と前記鍔状部24との間で前記バックガード101を挟み込むことで、機構保持部2がバックガード101に取付けられている。
【0026】
尚、バックガード101に取付けられた機構保持部2は、取付部材3により、自身の他端側の拡径が規制された状態となる。従って、機構保持部2をバックガード101に取付けた状態では、操作ボタン6を過度に強い力で押圧した場合等、スラストロック機構8に対し他端側に向けた大きな力が加わった場合であっても、機構保持部2の他端側開口からのスラストロック機構8の抜けが防止されるようになっている。一方で、機構保持部2をバックガード101から取外した状態において、スラストロック機構8は、機構保持部2に対し着脱自在である。そのため、スラストロック機構8の交換や修理などを容易に行うことができ、良好なメンテナンス性を得ることができるようになっている。
【0027】
加えて、バックガード101に取付けられた機構保持部2は、その一端部がバックガード101の表面から表側に突出した状態とされている。
【0028】
支持軸4は、棒状をなすとともに、ガイド部材5の内周側に配置されている。また、支持軸4の少なくとも他端部は、機構保持部2の内周及びスラストロック機構8の後述する筐体80の内周に挿通されている。そして、支持軸4は、機構保持部2等の内周面に沿って水平方向に往復移動可能となっている。さらに、支持軸4の他端部には、外周に突出形成された鍔状の張出部41が形成されており、当該張出部41によって、機構保持部2からの支持軸4の抜けが防止されるようになっている。また、支持軸4の他端部は、スラストロック機構8の後述する軸部材84と接触可能に構成されており、支持軸4に対し、その移動方向に加えられた力は、軸部材84へと伝達されるようになっている。
【0029】
ガイド部材5は、外周面が一端側から他端側に向けて徐々に拡径するテーパ状をなす一方で、内周面のうち他端部を除いた部位がほぼ一定の内径を有する筒状をなしている。さらに、ガイド部材5の他端部内周には、内側に突出する突起部51が設けられている。そして、雄ねじ部23に螺合された取付部材3と前記鍔状部24とにより突起部51を挟み込むことで、ガイド部材5は、バックガード101に対し、その表面から表側に突出した状態で取付けられている。このような取付構造とすることで、バックガード101に対し、ガイド部材5を非常に簡素な構成をもって極めて容易に取付けることができ、操作装置1の簡素化ひいては製造コストの低減を図ることができるようになっている。また、操作装置1をバックガード101に取付ける際の作業性向上も図られることとなる。さらに、ガイド部材5をバックガード101に取付けるための構造(突起部51)が、ガイド部材5の内側に設けられており、ガイド部材5の外側には表れないため、外観品質、及び、意匠デザインの自由度(特にガイド部材5の外側における)の向上を図ることができる。
【0030】
操作ボタン6は、円柱状をなす本体部61と、当該本体部61の他端部外周側から他端側に向けて延びる円筒状の被挿通部62とを備えている。
【0031】
本体部61は、その背面(他端側面)中央に取付凹部63を備えており、当該取付凹部63に支持軸4の他端部が嵌合されている。これにより、操作ボタン6は、支持軸4によって水平方向に往復移動可能な状態で支持されており、操作ボタン6を押動することで、支持軸4を移動させることができるようになっている。
【0032】
被挿通部62は、常にガイド部材5の内周に配置されるように構成されている。そして、操作ボタン6の移動時には、被挿通部62の外周面がガイド部材5の内周面に沿って移動する。つまり、操作ボタン6は、ガイド部材5によってその移動がガイドされるようになっている。これにより、操作ボタン6の移動時に、操作ボタン6をより円滑に、かつ、ガタの少ない状態で移動させることができ、良好な操作性を得ることができる。
【0033】
さらに、本実施形態では、操作ボタン6の押動時に、被挿通部62の内周に、機構保持部2の一端部(バックガード101の表面から突出する部位)が配置されるようになっている。そのため、操作ボタン6のストローク量を十分に確保しつつ、操作ボタン6がバックガード101の表面から過度に突出してしまうことをより確実に防止可能となっている。その結果、外観品質の向上を一層図ることができるとともに、良好な使い勝手を得ることができる。
【0034】
伝達部材7は、屈曲可能なワイヤー等により形成されており、弾性変形可能な樹脂等により形成された円筒状のチューブ71内に配置されている。伝達部材7は、チューブ71の内周において往復移動可能に構成されている。
【0035】
さらに、伝達部材7の一端部は、スラストロック機構8の軸部材84に取付けられており、伝達部材7は、軸部材84の移動に伴いチューブ71内を移動するようになっている。また、伝達部材7の他端部は、洗面化粧台100の洗面器に設けられた排水口(図示せず)を開閉するための栓蓋(図示せず)側に延びており、前記栓蓋を上下動可能に支持する部材(図示せず)と接触可能に構成されている。従って、操作ボタン6の押動により軸部材84を移動させることで、伝達部材7を介して軸部材84の変位が前記栓蓋側に伝達され、ひいては前記栓蓋を上下動(つまり、排水口を開閉)させることができるようになっている。
【0036】
スラストロック機構8は、自身の一端部がバックガード101の表面から表側に突出した状態で設けられている。そして、スラストロック機構8のうちバックガード101の表面から突出する部位、及び、機構保持部2のうちバックガード101の表面から突出する部位は、ガイド部材5の内側に配置されている。つまり、両者は、ガイド部材5によって隠れた状態となっている。そのため、機構保持部2等がバックガード101の表面から突出することによる外観品質の低下をより確実に防止できるようになっている。
【0037】
また、スラストロック機構8は、図3(a),(b)及び図4に示すように、筐体80、弾性部材83、軸部材84及び回転リング85を備えている。尚、図3〜5、図7及び図8では、図面における上側を一端側とし、下側を他端側とし、上側から下側に向けた方向を往動方向とし、下側から上側に向けた方向を復動方向として説明する。
【0038】
筐体80は、全体として筒状をなし、直列的に接続された第1構成部81及び第2構成部82とを備えている。
【0039】
第1構成部81は、筒状をなし、その内周には、周方向に沿って等間隔に複数(本実施形態では、2つ)の係合歯81Aが設けられている。各係合歯81Aは、図5に示すように、筐体80の軸方向に沿って延びており、係合歯81Aの他端面(第2構成部82側を向く面)には、その周方向一端から他端に向けて第1斜面部81B、平面部81C、直交面部81D及び第2斜面部81Eがこの順序で設けられている。
【0040】
第1斜面部81Bは、係合歯81Aの他端面の周方向一端から、平面部81C側に向けて一端側に傾斜している。平面部81Cは、係合歯81Aの他端面中央に位置し、第1構成部81の周方向に沿って延びる平坦状をなしている。直交面部81Dは、第1斜面部81Bとの間で前記平面部81Cを挟むようにして設けられ、平面部81Cに対し直交するようにして他端側に向けて延びている。第2斜面部81Eは、直交面部81Dの他端から係合歯81Aの他端面の周方向他端に向けて第1斜面部81Bと同じ傾斜方向で傾斜している。
【0041】
さらに、両係合歯81Aの間には、筐体80の軸方向に延びる溝部81Fが形成されている。
【0042】
また、図3(a)及び図4に示すように、第1構成部81の他端部には、筐体80の軸方向に沿って延び、他端側に開口する切欠部81Gと、第1構成部81の内部から外部に貫通する取付窓部81Hとが設けられている。
【0043】
第2構成部82は、筒状をなすとともに、その一端部に、案内歯82Aを備えている。案内歯82Aは、周方向に沿って等間隔に複数(本実施形態では、4つ)設けられており、一端側に向けて突出する形状とされている。さらに、図5に示すように、案内歯82Aの一端面(第1構成部81側を向く面)は、前記第1斜面部81B及び第2斜面部81Eの傾斜方向とは逆向きに傾斜する傾斜部82Bとされている。
【0044】
加えて、各案内歯82Aの間には、筐体80の軸方向に延びる隙間部82Cが形成されている。
【0045】
そして、第1構成部81及び第2構成部82を接続した状態では、第1斜面部81Bが隙間部82Cと対向し、平面部81Cが傾斜部82Bと対向し、第2斜面部81Eが隙間部82Cと対向するように係合歯81A及び案内歯82Aの相対位置関係が設定されている。
【0046】
さらに、第2構成部82の一端部外周には、筐体80の軸方向に沿って延びる突条部82Dと、外周側に突出するとともに、周方向に沿って弾性変形可能に構成された爪部82Eとが設けられている〔図3(a)及び図4参照〕。そして、第2構成部82は、自身の比較的小径の一端部が第1構成部81の内周に挿入され、切欠部81Gに突条部82Dが配置されるとともに、取付窓部81Hに爪部82Eが嵌合された状態で、第1構成部81に接続されている。これにより、第1構成部81及び第2構成部82を接続した状態では、第1構成部81に対する第2構成部82の周方向に沿った相対位置が常に一定の位置に決定され、ひいては係合歯81A及び案内歯82Aの相対位置関係が常に上述の位置関係を満たすようになっている。
【0047】
また、第2構成部82の外周には、周方向に沿って延びる溝状の被係止部82Fが設けられている。さらに、第2構成部82の内周には、中心に軸方向に沿って延びる孔部82Gを有するリング状部82Hが形成されている〔図3(b)参照〕。そして、前記リング状部82Hと、第2構成部82の他端部内周に挿入・固定された筒状のチューブ取付部材86とによってチューブ71の一端部鍔状部分を挟み込むことにより、筐体80にチューブ71が取付けられている。尚、チューブ71の一端部から露出する伝達部材7の一端部は、孔部82Gを通過して弾性部材83の内周に挿通されている。
【0048】
弾性部材83は、例えば、バネ等の軸方向に弾性変形可能な部材により構成されており、筐体80の内部において、前記リング状部82Hと軸部材84の後述する環状突部84Cとで挟み込まれた状態とされている。
【0049】
軸部材84は、筐体80の内部に配置されており、筐体80の軸方向に沿って往復移動可能に構成されている。また、軸部材84は、弾性部材83により復動方向(一端側)に向けて付勢された状態となっている。そして、軸部材84は、操作ボタン6の押動に伴い往動し、弾性部材83からの付勢力により復動するようになっている。
【0050】
加えて、図3(b)及び図4に示すように、軸部材84の外周には、その軸方向に沿って一端側から他端側に、凹部84A、被挿通部84B、環状突部84C及び筒状部84Dがこの順序で設けられている。尚、軸部材84のうち、環状突部84Cよりも一端側に位置する部位の外径は、回転リング85の内径よりも小さなものとされている。
【0051】
凹部84Aは、周方向に沿って延びる環状の窪みである。そして、当該凹部84Aに対し、樹脂等の弾性変形可能な材料からなるC字状の脱落防止部材87が嵌め込まれるようにして係止されている。
【0052】
被挿通部84Bは、円柱状をなしており、凹部84A及び環状突部84Cに隣接している。また、被挿通部84Bは、回転リング85の内周に挿通されている。
【0053】
環状突部84Cは、外周に突出する鍔状をなしている。そして、操作ボタン6の押動時には、環状突部84Cによって弾性部材83がリング状部82H側へと押し込まれるようになっている。
【0054】
筒状部84Dは、円筒状をなし、弾性部材83の一端部に挿通された状態となっている。また、筒状部84Dの内周には伝達部材7が固定(例えば、加締め固定)されている。
【0055】
回転リング85は、環状をなし、被挿通部84Bの外周に回転可能な状態で設けられている。また、回転リング85は、脱落防止部材87及び環状突部84Cにより挟まれた状態となっており、軸部材84の移動時には、軸部材84とともに移動する。
【0056】
さらに、回転リング85は、図6(a)〜(d)に示すように、環状本体部85Aと、当該環状本体部85Aの外周面から外側に突出する被係合突部85Bとを備えている。
【0057】
環状本体部85Aは、軸部材84の往復移動時において、その外周面が筐体80の内周面に沿って移動するようになっている。また、環状本体部85Aの外周面は外側に膨出する湾曲面状をなしている。このため、環状本体部85Aの外周面と筐体80の内周面との接触面積を比較的小さくすることができ、ひいては軸部材84をスムーズに往復移動させることができるようになっている。
【0058】
被係合突部85Bは、回転リング85(環状本体部85A)の中心軸を挟むようにして2つ(一対)設けられている。さらに、被係合突部85Bは、軸部材84の往動方向前方側(後述する中心CPよりも他端側)に位置する往動側部85Cと、軸部材84の復動方向前方側(中心CPよりも一端側)に位置する復動側部85Dとを具備している。
【0059】
往動側部85Cは、軸部材84の往動方向前方側(他端側)を向く往動側面85Eを有し、復動側部85Dは、軸部材84の復動方向前方側(一端側)を向く復動側面85Fを有している。さらに、往動側面85E及び復動側面85Fは、回転リング85の周方向に沿った被係合突部85Bの中心CPを通り、軸部材84の往復移動方向と直交する方向(回転リング85の径方向)に延びる仮想線VLに対し、回転対称の形状とされている。
【0060】
加えて、往動側面85Eは、軸部材84の往動方向前方側に向けて膨出する湾曲面状をなし、復動側面85Fは、軸部材84の復動方向前方側に向けて膨出する湾曲面状をなしている。本実施形態において、往動側面85E及び復動側面85Fは、前記仮想線VL方向から見たときに、ともに半円形状をなすように形成されている。
【0061】
次いで、操作ボタン6の押動により軸部材84を往動させたときにおける、被係合突部85Bの動作や状態、及び、軸部材84や伝達部材7の位置等について、図7(a)〜(d)及び図8を参照しつつ説明する。
【0062】
図7(a)に示すように、被係合突部85Bが溝部81Fに配置されている状態では、弾性部材83からの付勢力により、軸部材84は、比較的一端側にて保持されることとなる。そのため、伝達部材7は所定の第1の位置にて保持されることとなり、前記排水口は前記栓蓋によって閉鎖された状態とされる。
【0063】
この状態において、操作ボタン6を押動し、軸部材84にその往動方向へと力を加えると、被係合突部85Bの往動側面85Eが案内歯82Aの傾斜部82Bに接触しつつ傾斜部82Bを摺動し、最大で被係合突部85Bが隙間部82Cに入り込むまで回転リング85が回転する。
【0064】
その後、操作ボタン6に対する押圧力(軸部材84に加えられていた往動方向への力)が解除されると、弾性部材83からの付勢力により、回転リング85等が復動する。そして、図7(b)に示すように、被係合突部85Bの復動側面85Fが係合歯81Aの第1斜面部81Bに接触しつつ第1斜面部81Bを摺動し、復動側部85Dが直交面部81Dと接触するまで、回転リング85が回転する。これにより、係合歯81Aに対し復動側部85Dが係止され、図8に示すように、軸部材84は比較的他端側にて保持される。また、伝達部材7は前記第1の位置よりも他端側の第2の位置にて保持され、その結果、前記栓蓋が押し上げられた状態となり、ひいては前記排水口が開放されることとなる。
【0065】
この状態において、操作ボタン6を再度押動し、軸部材84にその往動方向へと力を加えると、図7(c)に示すように、被係合突部85Bの往動側面85Eが案内歯82Aの傾斜部82Bに接触しつつ傾斜部82Bを摺動し、最大で被係合突部85Bが隙間部82Cに入り込むまで回転リング85が回転する。
【0066】
その後、操作ボタン6に対する押圧力(軸部材84に加えられていた往動方向への力)が解除されると、弾性部材83からの付勢力により、回転リング85等が復動する。そして、図7(d)に示すように、被係合突部85Bの復動側面85Fが係合歯81Aの第2斜面部81Eに接触しつつ第2斜面部81Eを摺動し、被係合突部85Bが溝部81Fに入り込むまで回転リング85が回転する。これにより、係合歯81Aに対する復動側部85Dの係止が解除され、伝達部材7が前記第1の位置にて保持される。そして、前記栓蓋によって前記排水口が閉鎖されることとなる。
【0067】
以降、操作ボタン6を押動する度に、上述した、係合歯81Aに対する被係合突部85Bの係止と、係合歯81Aに対する被係合突部85Bの係合の解除とが交互に行われることとなる。つまり、操作ボタン6を押動する度に、排水口の開閉が交互に行われることとなる。
【0068】
次いで、上述したスラストロック機構8の組立手法について説明する。
【0069】
まず、チューブ取付部材86によってチューブ71を第2構成部82に取付けるとともに、孔部82Gを通して伝達部材7の一端部を第2構成部82の一端側へと引き出しておく。次いで、弾性部材83を、伝達部材7と第2構成部82の内周との間に配置し、リング状部82Hに載置する。その上で、伝達部材7の一端部に軸部材84を取付け、軸部材84の環状突部84Cとリング状部82Hとで弾性部材83を挟み込んだ状態とする。
【0070】
尚、本実施形態では、軸部材84に対する伝達部材7の取付前に、軸部材84の外周には、回転リング85が予め取付けられている。回転リング85は、まず、軸部材84のうち環状突部84Cよりも一端側に位置する部位を通して、被挿通部84Bの外周に配置される。その上で、軸部材84の凹部84Aに脱落防止部材87を係止することにより、回転リング85は、環状突部84Cと脱落防止部材87とにより挟み込まれた状態で軸部材84に取付けられる。尚、軸部材84に対する伝達部材7の取付後に、軸部材84に対し回転リング85を取付けてもよい。
【0071】
そして最後に、第1構成部81及び第2構成部82に接続することで、上述のスラストロック機構8が得られる。
【0072】
以上詳述したように、本実施形態によれば、被係合突部85Bにおいて、往動側面85E及び復動側面85Fは、前記仮想線VLに対して回転対称の形状とされている。つまり、180度回転させた(裏表逆とした)回転リング85と、回転させていない回転リング85とを比較したとき、それぞれの往動側面85Eが同一形状であり、また、それぞれの復動側面85Fも同一形状となるように構成されている。従って、スラストロック機構8の組立時において、回転リング85の取付向きを別段考慮する必要がなくなり、単に軸部材84の外周に回転リング85を取付ければよいこととなる。これにより、誤組立の発生を確実に防止することができる。また、組立作業を極めて簡単で手間のかからないものとすることができるため、優れた生産性を得ることができる。
【0073】
さらに、往動側面85E及び復動側面85Fがそれぞれ湾曲面状をなすため、回転リング85を回転させる際に、被係合突部85Bが案内歯82Aや係合歯81Aに対して引っ掛かりにくくなる。さらに、案内歯82Aや係合歯81Aに対する被係合突部85Bの接触面積を小さくすることができ、案内歯82A及び係合歯81Aと被係合突部85Bとの間で生じる摩擦抵抗を低減することができる。これらが相乗的に作用することで、操作ボタン6を押動した(軸部材84を往動させた)ときに、回転リング85をスムーズに回転させることができ、誤作動の発生をより確実に防止することができる。
【0074】
加えて、被係合突部85Bが2つと少数であるため、回転リング85を回転させる際に、案内歯82Aや係合歯81Aに対し被係合突部85Bが引っ掛かってしまうことを一層確実に防止できる。その結果、軸部材84を往動させたときに、回転リング85をよりスムーズに回転させることができ、誤作動の発生防止を一層確実に図ることができる。
【0075】
また、被係合突部85Bが2つであるため、案内歯82Aや係合歯81Aの数も少なくすることができる。そのため、筐体80の小径化、ひいては、スラストロック機構8の小型化を図ることができる。このようにスラストロック機構8の小型化が図られることで、本実施形態のように設置スペースを十分に確保することが難しい箇所にもスラストロック機構8を設けることができ、スラストロック機構8の設置自由度を高めることができる。
【0076】
さらに、本実施形態では、スラストロック機構8及び機構保持部2は、それぞれ少なくとも一部がバックガード101の表面から突出するようにして設けられている。従って、バックガード101へと操作装置1を取付けた状態において、操作装置1がバックガード101の裏側(奥側)へと大きく突出した状態となってしまうことをより確実に防止できる。その結果、スラストロック機構8の小型化が図られることと相俟って、設置スペースのより小さい箇所へと操作装置1を取付けることができ、操作装置1の設置自由度を飛躍的に高めることができる。
【0077】
加えて、軸部材84のうち環状突部84Cよりも一端側に位置する部位の外径は、回転リング85の内径よりも小さいため、スラストロック機構8の組立時において、被挿通部84Bの外周へと回転リング85を無理なく容易に配置することができる。従って、軸部材84に対する回転リング85の取付時に、回転リング85に破損が生じてしまうことをより確実に防止できる。また、回転リング85は、環状突部84Cと脱落防止部材87とで挟み込まれた状態となるため、軸部材84からの回転リング85の抜けを非常に効果的に防止することができる。
【0078】
尚、上記実施形態の記載内容に限定されず、例えば次のように実施してもよい。勿論、以下において例示しない他の応用例、変更例も当然可能である。
【0079】
(a)上記実施形態において、被係合突部85Bは2つ設けられているが、被係合突部85Bの数はこれに限定されるものではない。また、係合歯81Aや案内歯82Aの数についても、被係合突部85Bの数に応じて適宜変更してもよい。
【0080】
(b)上記実施形態において、往動側面85E及び復動側面85Fは、それぞれ湾曲面状をなしているが、両面85E,85Fは、前記仮想線VLに対して回転対称の形状であればよく、必ずしも湾曲面状でなくてもよい。従って、往動側面85E及び復動側面85Fは、例えば、図9(a)に示すように、2つの傾斜面が正面視略L字状をなすように連接されてなる角張った突起状であってもよいし、例えば、図9(b)に示すように、回転リング85の周方向に延びる平坦面状であってもよい。
【0081】
さらに、図9(c)に示すように、往動側面85E及び復動側面85Fを同一方向に傾斜する傾斜面状とし、往動側面85Eが案内歯82Aの傾斜部82Bの傾斜方向とは逆に傾斜し、復動側面85Fが第1斜面部81Bや第2斜面部81Eの傾斜方向と同一方向に傾斜するように構成してもよい。この場合には、操作ボタン6を押動したときに、操作ボタン6の押し込み量が比較的少なくても、案内歯82A(傾斜部82B)へと往動側面85Eを接触させることができ、ひいては回転リング85をより確実に回転させることができる。さらに、操作ボタン6の押し込み量が比較的少なく、回転リング85の回転量が比較的小さい場合であっても、弾性部材83により回転リング85が復動したときには、復動側面85Fを第1斜面部81Bや第2斜面部81Eに対してより確実に引っ掛けることができ、回転リング85をより確実に回転させることができる。つまり、前記構成とすることで、軸部材84の往動時及び復動時の双方において、回転リング85をより確実に回転させることができ、スラストロック機構8における誤作動の発生をより確実に防止することができる。
【0082】
(c)上記実施形態において、操作装置1は、槽体として洗面化粧台100のバックガード101に設けられているが、操作装置1を、その他の槽体(例えば、浴槽や流し台等)や槽体の周辺に設けられた構造物に設けることとしてもよい。
【0083】
(d)上記実施形態において、弾性部材83は筐体80の内部に設けられているが、弾性部材83を筐体80の外部に設けることとしてもよい。
【0084】
(e)上記実施形態では、操作ボタン6の押動時において、被挿通部62の外周面がガイド部材5の内周面に沿って移動することで、操作ボタン6の移動がガイドされるように構成されているが、操作ボタン6の押動時において、被挿通部62の内周面が機構保持部2の外周面に沿って移動することで、操作ボタン6の移動がガイドされるように構成してもよい。この場合にも、操作ボタン6をより円滑に、かつ、ガタの少ない状態で移動させることができ、良好な操作性を得ることができる。
【0085】
(f)上記実施形態において、スラストロック機構8は操作装置1に設けられているが、必ずしも操作装置1に設ける必要はなく、栓蓋(排水口)側に設けることとしてもよい。従って、例えば、排水が流れる流路内に設置され、栓蓋を押動する度に、栓蓋の上方位置におけるロック(排水口の開放)と、栓蓋の下方位置におけるロック(排水口の閉鎖)とを交互に繰り返す機構(いわゆるダイレクトプッシュ)に、スラストロック機構8を利用することとしてもよい。この場合、操作ボタンや伝達部材等は不要である。
【符号の説明】
【0086】
1…操作装置、6…操作ボタン(操作部材)、7…伝達部材、8…スラストロック機構、80…筐体、81A…係合歯、82A…案内歯、82B…傾斜部、83…弾性部材、84…軸部材、84A…凹部、84B…被挿通部、84C…環状突部、85…回転リング、85B…被係合突部、85C…往動側部、85D…復動側部、85E…往動側面、85F…復動側面、87…脱落防止部材、CP…中心、VL…仮想線。
図1
図2
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