【解決手段】表示装置(100)は、自発光型の表示パネル(10)を備え、複数の画素(P)を有する。各画素は、赤サブ画素(R)、緑サブ画素(G)および青サブ画素(B)を含む複数のサブ画素によって構成される。表示パネルは、赤色発光素子(1r)と、緑色発光素子(1g)と、青色発光素子(1b)とを有する。赤色発光素子、緑色発光素子および青色発光素子が発する赤色光、緑色光および青色光のスペクトル半値幅は、それぞれ10nm以下である。各画素を構成する複数のサブ画素は、黄サブ画素(Ye)をさらに含み、表示パネルは、黄サブ画素に対応する領域に設けられ、主波長が550nm以上600nm以下の黄色光を発する黄色発光素子(1y)をさらに有する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の実施形態による表示装置100を模式的に示す平面図である。
【
図2】表示装置100の赤色発光素子1r、緑色発光素子1g、青色発光素子1bおよび黄色発光素子1yが発する赤色光、緑色光、青色光および黄色光のスペクトルを示すグラフである。
【
図4】(a)、(b)および(c)は、CIEの等色関数、観察者V1の等色関数および観察者V2の等色関数を示すグラフであり、(a)はX(λ)を示しており、(b)はY(λ)を示しており、(c)はZ(λ)を示している。
【
図5】(a)、(b)および(c)は、CIEの等色関数、観察者V1の等色関数および観察者V2の等色関数を示すグラフであり、(a)はX(λ)を示しており、(b)はY(λ)を示しており、(c)はZ(λ)を示している。
【
図6】(a)、(b)および(c)は、CIEの等色関数、観察者V1の等色関数および観察者V2の等色関数を示すグラフであり、(a)はX(λ)を示しており、(b)はY(λ)を示しており、(c)はZ(λ)を示している。
【
図7】51人分の等色関数から算出された、波長ごとの標準偏差を示すグラフである。
【
図8】表示装置100の赤色発光素子1r、緑色発光素子1g、青色発光素子1bおよび黄色発光素子1yが発する赤色光、緑色光、青色光および黄色光のスペクトルを示すグラフであり、51人分の等色関数から算出された等色関数の標準偏差も併せて示している。
【
図9】三原色のスペクトル半値幅が6.83nmである場合、26.28nmである場合および124.51nmである場合について、色再現範囲を示すu’v’色度図である。
【
図10】#1、#2および#3の3つの場合における赤、緑および青のスペクトルを示すグラフである。
【
図11】比較例1の表示装置と、表示装置100とについて、色再現範囲を示すu’v’色度図である。
【
図12】比較例1の表示装置と、表示装置100とについて、個人差ΔEを計算した結果を示すグラフである。
【
図13】表示装置100の赤色発光素子1r、緑色発光素子1g、青色発光素子1bおよび黄色発光素子1yが発する赤色光、緑色光、青色光および黄色光のスペクトルを示すグラフである。
【
図14】表示装置100の赤色発光素子1r、緑色発光素子1g、青色発光素子1bおよび黄色発光素子1yが発する赤色光、緑色光、青色光および黄色光のスペクトルを示すグラフであり、51人分の等色関数から算出された等色関数の標準偏差も併せて示している。
【
図15】比較例1の表示装置と、表示装置100とについて、色再現範囲を示すu’v’色度図である。
【
図16】比較例1の表示装置と、表示装置100とについて、個人差ΔEを計算した結果を示すグラフである。
【
図17】SOCSデータベースから抜粋された15色(色番号1〜15)のスペクトルを示すグラフである。
【
図18】SOCSデータベースから抜粋された15色の色度を示すu’v’色度図である。
【
図20】本発明の実施形態による表示装置200を模式的に示す平面図である。
【
図21】表示装置200の赤色発光素子1r、緑色発光素子1gおよび青色発光素子1bが発する赤色光、緑色光および青色光のスペクトルを示すグラフである。
【
図22】表示装置200の赤色発光素子1r、緑色発光素子1gおよび青色発光素子1bが発する赤色光、緑色光および青色光のスペクトルを示すグラフであり、51人分の等色関数から算出された等色関数の標準偏差も併せて示している。
【
図23】比較例2の表示装置と、表示装置200とについて、色再現範囲を示すu’v’色度図である。
【
図24】比較例2の表示装置と、表示装置200とについて、個人差ΔEを計算した結果を示すグラフである。
【
図25】比較例2の表示装置の赤、緑および青のスペクトルを示すグラフである。
【
図26】本発明の実施形態による表示装置200Aを模式的に示す平面図である。
【
図27】#4、#5および#6の3つの場合について、色再現範囲を示すu’v’色度図である。
【
図28】#4、#5および#6の3つの場合における赤、緑および青のスペクトルを示すグラフである。
【
図29】#7、#8および#9の3つの場合について、色再現範囲を示すu’v’色度図である。
【
図30】#7、#8および#9の3つの場合における赤、緑および青のスペクトルを示すグラフである。
【
図31】本発明の実施形態による表示装置300を模式的に示す平面図である。
【
図32】表示装置300の赤色発光素子1r、緑色発光素子1g、第1青色発光素子1baおよび第2青色発光素子1bbが発する赤色光、緑色光および青色光のスペクトルを示すグラフである。
【
図33】比較例2の表示装置と、表示装置300とについて、色再現範囲を示すu’v’色度図である。
【
図34】比較例2の表示装置と、表示装置300とについて、個人差ΔEを計算した結果を示すグラフである。
【
図35】本発明の実施形態による表示装置300Aを模式的に示す平面図である。
【
図36】本発明の実施形態による表示装置300Bを模式的に示す平面図である。
【
図37】本発明の実施形態による表示装置400を模式的に示す平面図である。
【
図38】表示装置400を模式的に示す断面図である。
【
図39】表示装置400の赤色光源21r、緑色光源21g、青色光源21bおよび黄色光源21yが発する赤色光、緑色光、青色光および黄色光のスペクトルを示すグラフである。
【
図40】表示装置400の赤カラーフィルタ14r、緑カラーフィルタ14g、青カラーフィルタ14bおよび黄カラーフィルタ14yの分光透過特性を示すグラフである。
【
図41】表示装置400の赤サブ画素R、緑サブ画素G、青サブ画素Bおよび黄サブ画素Yeによって表示される赤、緑、青および黄(つまり表示に用いられる原色)のスペクトルを示すグラフである。
【
図42】比較例3の表示装置と、表示装置400とについて、色再現範囲を示すu’v’色度図である。
【
図43】比較例3の表示装置と、表示装置400とについて、個人差ΔEを計算した結果を示すグラフである。
【
図44】比較例3の表示装置の赤色光源、緑色光源および青色光源が発する赤色光、緑色光および青色光のスペクトルを示すグラフである。
【
図45】比較例3の表示装置の赤カラーフィルタ、緑カラーフィルタおよび青カラーフィルタの分光透過特性を示すグラフである。
【
図46】比較例3の表示装置の赤サブ画素、緑サブ画素および青サブ画素によって表示される赤、緑および青(つまり表示に用いられる原色)のスペクトルを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態を説明する。なお、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0020】
(実施形態1)
図1に、本実施形態における表示装置100を示す。
図1は、表示装置100を模式的に示す平面図である。
【0021】
表示装置100は、
図1に示すように、自発光型の表示パネル10を備える。また、表示装置100は、複数の画素Pを有する。
【0022】
複数の画素Pは、行および列を有するマトリクス状に配列されている。複数の画素Pのそれぞれは、赤サブ画素R、緑サブ画素Gおよび青サブ画素Bを含む複数のサブ画素によって構成される。
【0023】
表示パネル10は、赤サブ画素Rに対応する領域に設けられた赤色発光素子1rと、緑サブ画素Gに対応する領域に設けられた緑色発光素子1gと、青サブ画素Bに対応する領域に設けられた青色発光素子1bとを有する。赤色発光素子1r、緑色発光素子1gおよび青色発光素子1bは、例えば有機EL素子である。勿論、赤色発光素子1r、緑色発光素子1gおよび青色発光素子1bとしては、有機EL素子に限定されず、公知の種々の自発光素子(例えば無機EL素子)を用いることができる。
【0024】
本実施形態の表示装置100では、
図2に示すように、赤色発光素子1r、緑色発光素子1gおよび青色発光素子1bが発する赤色光、緑色光および青色光のスペクトル半値幅(半値全幅)は、それぞれ10nm以下である。また、各画素Pを構成する複数のサブ画素は、
図1に示すように、黄サブ画素Yeをさらに含んでおり、表示パネル10は、黄サブ画素Yeに対応する領域に設けられた黄色発光素子1yをさらに有する。黄色発光素子1yが発する黄色光の主波長は、550nm以上600nm以下である。黄色発光素子1yは、例えば有機EL素子である。勿論、黄色発光素子1yとしては、有機EL素子に限定されず、公知の種々の自発光素子(例えば無機EL素子)を用いることができる。
【0025】
上述したように、本実施形態では、赤色発光素子1r、緑色発光素子1gおよび青色発光素子1bが発する赤色光、緑色光および青色光のスペクトル半値幅がそれぞれ10nm以下であり、一般的な自発光型の表示装置よりも狭い。そのため、本実施形態の表示装置100は、色再現範囲が広い。
【0026】
また、本実施形態の表示装置100では、表示パネル10が、主波長が550nm以上600nm以下の黄色光を発する黄色発光素子1yを有している(つまり各画素Pを構成する複数のサブ画素が黄サブ画素Yeを含んでいる)ことにより、観察者に認識される色のばらつきが軽減される。以下、この理由を詳しく説明する。
【0027】
図3は、CIE(国際照明委員会)によって規定されたXYZ表色系の等色関数X(λ)、Y(λ)およびZ(λ)を示すグラフである。
図3に示されているCIEの等色関数は、等色関数が策定された当時における等色実験の被験者の平均値から求めた関数であり、本来、等色関数には個人差が存在する。そのため、ある色を表示している表示装置を複数の観察者が観察した場合、表示されている色は同じであるにもかかわらず、各観察者に認識される色は異なり得る。また、三原色のスペクトルが狭帯域になるほど、等色関数の個人差の影響が大きくなる。
【0028】
図4を参照しながら、等色関数の個人差をより詳しく説明する。
【0029】
図4(a)、(b)および(c)は、CIEの等色関数、観察者V1の等色関数および観察者V2の等色関数を示すグラフである。
図4(a)はX(λ)を示しており、
図4(b)はY(λ)を示しており、
図4(c)はZ(λ)を示している。
【0030】
図4(a)、(b)および(c)に示されているように、CIEの等色関数、観察者V1の等色関数および観察者V2の等色関数は、互いに異なっている。このことから、等色関数に個人差が存在していることがわかる。
【0031】
また、
図4(a)および(b)から、等色関数X(λ)およびY(λ)については、550nm付近から630nm付近までの波長範囲で個人差が大きいことがわかる。さらに、
図4(c)から、等色関数Z(λ)については、400nm付近から500nm付近までの波長範囲で個人差が大きいことがわかる。
【0032】
ここで、
図5を参照しながら、非常に急峻なスペクトルの(つまりほぼ単波長の)赤および緑を発光させ、それらの加法混色によって黄を作る場合を考える。具体的には、波長630nmの赤および波長530nmの緑の加法混色によって波長590nmの黄を作る場合を考える。
図5(a)、(b)および(c)には、
図4(a)、(b)および(c)に示したのと同じ等色関数が示されており、さらに、発光させる赤および緑と、加法混色によって作られる黄とが実線および破線のバーで模式的に示されている。図中に示されているように、波長630nmで発光強度が1.85の赤と、波長530nmで発光強度が0.5の緑とを加法混色すると、波長590nm、発光強度1.1に相当する黄を作り出すことができる。
【0033】
例えば、
図5(a)に示されている等色関数X(λ)に着目する。
図5(a)からわかるように、波長530nmおよび630nm付近では、等色関数X(λ)の個人差は非常に小さい。これに対し、既に説明したことからわかるように、波長590nm付近では、等色関数X(λ)の個人差は大きい。なお、
図5(a)中に赤および緑を示すものとして表されているバーの近くに付された「0.6」および「0.2」という数値は、波長630nmで発光強度1の赤を観察したとき、および波長530nmで発光強度1の緑を観察したときのXの値である(
図5(b)中の「0.2」および「0.8」も同様である)。
【0034】
上述した赤および緑の加法混色によって作られる黄色は、CIEにおける標準的な色であるといえる。しかしながら、この黄を、観察者V1は本来よりも明るく感じ、観察者V2は本来よりも暗く感じる。
【0035】
図6を参照しながら、これとは逆に、波長590nmの黄を発光させる場合を考える。
図6(a)、(b)および(c)には、
図4(a)、(b)および(c)に示したのと同じ等色関数が示されており、さらに、発光させる黄が実線のバーで模式的に示されている。
【0036】
ここでも、
図6(a)に示されている等色関数X(λ)に着目する。なお、
図6(a)中に黄を示すものとして表されているバーの近くに付された「1.1」、「1.0」および「1.4」という数値は、波長590nmで発光強度1の黄を、CIEの等色関数X(λ)、観察者V1の等色関数X(λ)および観察者V2の等色関数X(λ)で観察したときのXの値である(
図6(b)中の「0.6」および「0.7」も同様である)。
【0037】
上述した黄の発光を、観察者V1は自身の等色関数で認識し、観察者V2も自身の等色関数で認識する。そのため、観察者V1および観察者V2は、この黄色を本来の明るさで感じるので、等色関数の個人差に起因した色のばらつきが発生しない。このことから、等色関数の個人差に起因した色のばらつきを軽減するためには、等色関数の個人差が大きな波長域で発光を行うことが好ましいことがわかる。
【0038】
図7に、51人分の等色関数から算出された、波長ごとの標準偏差を示す。標準偏差の値が高いほど、個人差が大きい。
図7から、X(λ)およびY(λ)については、550nmから650nmまでの波長範囲で等色関数の個人差が大きいことがわかる。
【0039】
そのため、本実施形態のように、表示パネル10が、主波長が550nm以上600nm以下の黄色光を発する黄色発光素子1yを有していると、
図8からもわかるように、等色関数の個人差が大きい波長範囲で黄の発光が行われるので、観察者に認識される色のばらつきが軽減される。なお、黄色光の主波長が600nmを超える必要がないのは、600nmから650nmまでの波長範囲については、赤色光によってカバーし得るからである。
【0040】
続いて、上述したような黄色発光素子1yを設けることによる色のばらつきの軽減効果を検証した結果を説明するが、それに先立ち、三原色(赤、緑および青)のスペクトル半値幅と、色再現範囲と、観察者に認識される色のばらつき(個人差ΔE)との関係を説明する。
【0041】
図9に、三原色のスペクトル半値幅が6.83nmである場合、26.28nmである場合および124.51nmである場合について、色再現範囲を示す。
図9からわかるように、三原色のスペクトル半値幅が狭くなるほど、色再現範囲は広くなる。そのため、三原色のスペクトル半値幅を狭くすることによって、広色域化を実現することができる。
【0042】
ただし、三原色のスペクトル半値幅を狭くすると、等色関数の個人差に起因した色のばらつきが大きくなってしまう。下記表1に、三原色のスペクトル半値幅が異なる3つの場合(#1、#2および#3)について、個人差ΔEを計算した結果を示す。なお、#1は、赤、緑および青のスペクトル半値幅がそれぞれ10nmの場合であり、#2は、赤、緑および青のスペクトル半値幅がそれぞれ30nmの場合であり、#3は、赤、緑および青のスペクトル半値幅が50nm、75nmおよび50nmの場合である。#1、#2および#3のそれぞれの場合における赤、緑および青のスペクトルは、
図10に示す通りである。また、個人差ΔEとしては、色再現評価用標準物体色分光(SOCS)データベースから抜粋した15色分の個人差ΔEと、それらの平均とが示されている。個人差ΔEの計算方法については後に詳述する。
【0044】
表1からわかるように、#3では個人差ΔEの平均が0.91であったのに対し、#2では個人差ΔEの平均は1.50であり、#1では個人差ΔEの平均は2.00であった。このように、三原色のスペクトル半値幅を狭くするほど、個人差ΔEが大きくなってしまう。特に、三原色のスペクトル半値幅が10nm以下となると、個人差ΔEの平均が2.00以上となってしまう。
【0045】
図11に、比較例1の表示装置と、本実施形態の表示装置100とについて、色再現範囲を示す。また、下記表2および
図12に、比較例1の表示装置と、本実施形態の表示装置100とについて、個人差ΔEを計算した結果を示す。比較例1の表示装置では、各画素は、赤サブ画素、緑サブ画素および青サブ画素から構成されており、赤、緑および青のスペクトル半値幅はそれぞれ10nmである(つまり上述した#1に対応する)。
図12には、15色分の個人差ΔEが示されており、表2には、15色分の個人差ΔEに加え、平均の個人差ΔEおよび最大の個人差ΔEが示されている。
【0047】
図11からわかるように、比較例1の表示装置と、本実施形態の表示装置100とで、色再現範囲はほぼ同じである。また、表2および
図12からわかるように、本実施形態の表示装置100では、15色分の個人差ΔE、平均の個人差ΔEおよび最大の個人差ΔEのいずれもが、比較例1の表示装置よりも小さい。
【0048】
このように、本実施形態の表示装置100では、色再現範囲を狭くすることなく、個人差ΔEを小さくすることができる。従って、観察者に認識される色が等色関数の個人差に起因してばらつくことが軽減される。
【0049】
なお、黄色発光素子1yが発する黄色光のスペクトルは、
図2などに例示したものに限定されない。
図2に示した例では、黄色光のスペクトル半値幅は20nmであるが、例えば
図13に示すような、よりブロードなスペクトルの黄色光を発する黄色発光素子1yを設けてもよい。その場合でも、
図14に示すように、等色関数の個人差が大きい波長範囲で黄の発光が行われるので、観察者に認識される色のばらつきが軽減される。
【0050】
図15に、比較例1の表示装置と、本実施形態の表示装置100において
図13に示したスペクトルの黄色光を発する黄色発光素子1yを用いた場合とについて、色再現範囲を示す。また、下記表3および
図16に、比較例1の表示装置と、本実施形態の表示装置100において
図13に示したスペクトルの黄色光を発する黄色発光素子1yを用いた場合とについて、個人差ΔEを計算した結果を示す。なお、
図15には、参考のため、本実施形態の表示装置100において
図2に示したスペクトルの黄色光を発する黄色発光素子1yを用いた場合の色再現範囲も示している。
【0052】
図15からわかるように、ブロードなスペクトルの黄色光を発する黄色発光素子1yを設けた場合でも、色再現範囲は比較例1の表示装置とほぼ同じである。また、表3および
図16からわかるように、ブロードなスペクトルの黄色光を発する黄色発光素子1yを設けた場合でも、15色分の個人差ΔE、平均の個人差ΔEおよび最大の個人差ΔEのいずれもが、比較例1の表示装置よりも小さい。
【0053】
また、
図1には、画素P内で左側から右側に向かって赤サブ画素R、緑サブ画素G、青サブ画素Bおよび黄サブ画素Yeがこの順で配置されている構成を例示したが、画素P内における複数のサブ画素の配置は、
図1に例示したものに限定されない。画素P内で赤サブ画素R、緑サブ画素G、青サブ画素Bおよび黄サブ画素Yeは、任意の順番で配置され得る。
【0054】
さらに、
図1には、画素P内で複数のサブ画素が1行複数列に配置されている構成を例示したが、複数のサブ画素は、画素P内で複数行1列に配置されていてもよい。あるいは、複数のサブ画素は、画素P内で複数行複数列に(つまりマトリクス状に)配置されていてもよい。
【0055】
また、本実施形態では、各画素Pが4つのサブ画素(赤サブ画素R、緑サブ画素G、青サブ画素Bおよび黄サブ画素Ye)から構成されている構成を例示したが、各画素Pは5つ以上のサブ画素から構成されてもよい。例えば、各画素Pを構成する複数のサブ画素は、赤サブ画素R、緑サブ画素G、青サブ画素Bおよび黄サブ画素Yeに加えて、シアンサブ画素を含んでもよい。その場合、表示パネル10のシアンサブ画素に対応する領域には、シアン色光を発するシアン色発光素子が設けられる。
【0056】
なお、
図11に示した例では、黄サブ画素Yeによって表示される黄の色度は、色度図上で赤サブ画素R、緑サブ画素Gおよび青サブ画素Bによって表示される赤、緑および青の色度を頂点とする三角形の辺上に位置しているが、黄の色度は、この三角形の内側または外側に位置してもよい。黄サブ画素Yeによって表示される黄の色度が、色度図上で上述した三角形の外側に位置していると、色再現範囲をさらに広くすることができる。勿論、観察者に認識される色のばらつきを軽減することもできる。一方、黄サブ画素Yeによって表示される黄の色度が、色度図上で上述した三角形の辺上または内側に位置していると、色再現範囲をさらに広くすることはできないものの、観察者に認識される色のばらつきを軽減することはできる。また、パネル全体の発光効率が向上するという利点が得られる。
【0057】
ここで、観察者に認識される色のばらつきの評価方法(つまり個人差ΔEの計算方法)を説明する。
【0058】
各画素が3つのサブ画素(赤サブ画素、緑サブ画素および青サブ画素)から構成されている場合(比較例1の表示装置に対応)、以下のようにして評価を行うことができる。
【0059】
(1)加法混色によりD65標準光源と同じ白となるように赤、緑および青の係数(強度)Rw、GwおよびBwを調整・決定する。
【0060】
(2)SOCSデータベースから抜粋した15色のうちからさらに1色(ここではC1とする)をピックアップし、加法混色によりこの色C1となるように赤、緑および青の係数(強度)Rc1、Gc1およびBc1を調整・決定する。SOCSデータベースから抜粋された15色(色番号1〜15)のスペクトルは
図17に示す通りであり、これら15色の色度は
図18に示す通りである。
【0061】
(3)D65標準光源およびピックアップされた色C1について、51人分の等色関数を用いて各自に知覚される色(Xwi, Ywi, Zwi)、(Xi, Yi, Zi)を算出する(i=1〜51)。51人分の等色関数は、
図19に示す通りである。
【0062】
(4)D65標準光源およびピックアップされた色C1について、CIEの標準等色関数を用い、標準等色関数で観察が行われた場合に知覚されるであろう色(Xwcie, Ywcie, Zwcie)、(Xcie, Ycie, Zcie)を算出する。
【0063】
(5)上記工程(3)で算出された(Xwi, Ywi, Zwi)、(Xi, Yi, Zi)から、(L
*i, a
*i, b
*i)を算出する。(L
*i, a
*i, b
*i)は、下記式(1)〜(3)により算出される。
L
*i=116f(Yi/Ywi)-16 ・・・(1)
a
*i=500[f(Xi/Xwi)-f(Yi/Ywi)] ・・・(2)
b
*i=200[f(Yi/Ywi)-f(Zi/Zwi)] ・・・(3)
【0064】
ここで、t>(6/29)
3の場合、f(t)=t
-3であり、それ以外の場合には、f(t)=(1/3)(29/6)
2t+(4/29)である。
【0065】
(6)同様にして、上記工程(4)で算出された(Xwcie, Ywcie, Zwcie)、(Xcie, Ycie, Zcie)から、(L
*cie, a
*cie, b
*cie)を算出する。
【0066】
(7)上記工程(5)および(6)で算出された(L
*i, a
*i, b
*i)および(L
*cie, a
*cie, b
*cie)から、一人ひとりのΔEを算出する。ΔEは、下記式(4)により算出される。
ΔE=[(L
*cie-L
*i)
2+(a
*cie-a
*i)
2+(b
*cie-b
*i)
2]
1/2 ・・・(4)
【0067】
(8)51人分のΔEを平均することによって、色C1についての個人差ΔEを求める。
【0068】
(9)同様にして、残りの14色についても個人差ΔEを求め、さらに、15色の平均の個人差ΔEも求める。
【0069】
各画素Pが4つのサブ画素(赤サブ画素R、緑サブ画素G、青サブ画素Bおよび黄サブ画素Ye)から構成されている場合(本実施形態の表示装置100に対応)も、基本的には同様にして評価を行うことができる。ただし、表示に用いられる原色の数が4の場合に特有の色の冗長性(同じ色を作るための原色強度の組み合わせが複数存在すること)のために、計算がさらに複雑になる。具体的には、原色の数が4の場合、評価工程(2)〜(5)の間で係数を最適化手法を用いて決定する点が、原色の数が3の場合と異なっている。
【0070】
原色の数が4の場合、ある色を表示する(加法混色により作る)ための原色の強度の組み合わせが複数存在する。そのため、工程(2)において4色の係数(強度)Rc1、Gc1、Bc1およびYc1を変数で仮置きした上で、ΔEが最小となるように、GRG(Generalized Reduced Gradient)法などの最適化手法を用いて、4色の係数を求めればよい。
【0071】
(実施形態2)
図20に、本実施形態における表示装置200を示す。
図20は、表示装置200を模式的に示す平面図である。
【0072】
表示装置200は、
図20に示すように、自発光型の表示パネル10を備える。また、表示装置200は、複数の画素Pを有する。
【0073】
複数の画素Pは、行および列を有するマトリクス状に配列されている。複数の画素Pのそれぞれは、赤サブ画素R、緑サブ画素Gおよび青サブ画素Bから構成されている。つまり、各画素Pを構成する複数のサブ画素は、黄サブ画素を含んでいない。
【0074】
表示パネル10は、赤サブ画素Rに対応する領域に設けられた赤色発光素子1rと、緑サブ画素Gに対応する領域に設けられた緑色発光素子1gと、青サブ画素Bに対応する領域に設けられた青色発光素子1bとを有する。赤色発光素子1r、緑色発光素子1gおよび青色発光素子1bは、例えば、有機EL素子である。勿論、赤色発光素子1r、緑色発光素子1gおよび青色発光素子1bとしては、有機EL素子に限定されず、公知の種々の自発光素子(例えば無機EL素子)を用いることができる。
【0075】
図21に、赤色発光素子1r、緑色発光素子1gおよび青色発光素子1bが発する赤色光、緑色光および青色光のスペクトルを示す。
図21に示すように、青色発光素子1bが発する青色光は、波長が525nmを超える成分を実質的に含まず、且つ、そのスペクトル半値幅が20nm超である。つまり、青色光のスペクトルは、波長525nm以下の範囲で広帯域化されている。
【0076】
ここで、再び
図7を参照されたい。
図7から、400nmから500nmまでの波長範囲で等色関数(特にZ(λ))の個人差が大きいことがわかる。
【0077】
本実施形態の表示装置200では、上述したように、青色発光素子1bが発する青色光のスペクトルが、波長525nm以下の範囲で広帯域化されており、
図22からもわかるように、等色関数の個人差が大きい波長範囲(400nm〜500nm)を広くカバーするように青の発光が行われるので、観察者に認識される色のばらつきが軽減される。
【0078】
また、青色光のスペクトルを、波長525nm以下の範囲で広帯域化(つまりスペクトル半値幅を大きく)しても、青の色度はほとんど変化せず、色再現範囲にはほとんど影響しない。そのため、本実施形態の表示装置200では、色再現範囲を狭くすることなく、等色関数の個人差に起因した色のばらつきを軽減することができる。
【0079】
図23に、比較例2の表示装置と、本実施形態の表示装置200とについて、色再現範囲を示す。また、下記表4に、比較例2の表示装置と、本実施形態の表示装置200とについて、赤、緑および青の色度u’、v’を示す。さらに、下記表5および
図24に、比較例2の表示装置と、本実施形態の表示装置200とについて、個人差ΔEを計算した結果を示す。比較例2の表示装置では、各画素は、赤サブ画素、緑サブ画素および青サブ画素から構成されており、赤、緑および青のスペクトルは、
図25に示す通りである。
図25に示されているように、比較例2の表示装置では、青のスペクトル半値幅が20nmである。つまり、比較例2の表示装置では、青のスペクトルは広帯域化されていない。
【0082】
図23からわかるように、比較例2の表示装置と、本実施形態の表示装置200とで、色再現範囲はほぼ同じである。これは、表3からわかるように、青の色度がほとんど同じだからである。また、表5および
図24からわかるように、本実施形態の表示装置200では、15色分の個人差ΔE、平均の個人差ΔEおよび最大の個人差ΔEのいずれもが、比較例2の表示装置よりも小さい。
【0083】
なお、表1を参照しながら説明したように、個人差ΔEは、三原色のスペクトル半値幅を狭くするほど大きくなる。具体的には、三原色のスペクトル半値幅が30nm以下となると、個人差ΔEの平均が1.50以上となり、三原色のスペクトル半値幅が10nm以下となると、個人差ΔEの平均が2.00以上となる。従って、青色光のスペクトルを波長525nm以下の範囲で広帯域化することによる効果(等色関数の個人差に起因した色のばらつきを軽減する効果)は、赤および緑のスペクトル半値幅が狭くなるほど高くなるといえる。より具体的には、上記の効果は、赤色発光素子1rおよび緑色発光素子1gが発する赤色光および緑色光のスペクトル半値幅がそれぞれ30nm以下であるときにより高く、赤色光および緑色光のスペクトル半値幅がそれぞれ10nm以下であるときにいっそう高いといえる。
【0084】
また、等色関数の個人差に起因した色のばらつきをより確実に軽減する観点からは、青色発光素子1bが発する青色光のスペクトル半値幅は、30nm以上であることが好ましく、50nm以上であることがより好ましい。
【0085】
また、
図20には、各画素Pが赤サブ画素R、緑サブ画素Gおよび青サブ画素Bから構成されている構成を例示したが、
図26に示す表示装置200Aのように、各画素Pを構成する複数のサブ画素が、赤サブ画素R、緑サブ画素Gおよび青サブ画素Bに加え、黄サブ画素Yeを含んでいてもよい。黄サブ画素Yeに対応する領域に設けられた黄色発光素子1yは、主波長が550nm以上600nm以下の黄色光を発することが好ましい。
【0086】
図26に示した構成を採用することにより、Z(λ)の個人差が大きい波長範囲(400nm〜500nm)だけでなく、X(λ)およびY(λ)の個人差が大きい波長範囲(550nm〜600nm)でも発光が行われるので、観察者に認識される色のばらつきをいっそう軽減することができる。
【0087】
なお、本実施形態では、上述したように青色光のスペクトルを広帯域化するが、赤色光や緑色光のスペクトルを広帯域化することによっても、等色関数の個人差に起因した色のばらつきを軽減することができると考えられる。しかしながら、赤色光や緑色光のスペクトルを広帯域化すると、以下に説明するように、色再現範囲が狭くなってしまう。
【0088】
下記表6に、赤のスペクトル半値幅が異なる3つの場合(#4、#5および#6)について、個人差ΔEを計算した結果を示す。また、
図27に、#4、#5および#6の3つの場合について、色再現範囲を示す。#4は、赤のスペクトル半値幅が20nmの場合であり、#5は、赤のスペクトル半値幅が40nmの場合であり、#6は、赤のスペクトル半値幅が80nmの場合である。#4、#5および#6のそれぞれの場合における赤、緑および青のスペクトルは、
図28に示す通りである。
【0090】
表6からわかるように、#4では個人差ΔEの平均が1.41であったのに対し、#5では個人差ΔEの平均は1.22であり、#6では個人差ΔEの平均は1.07であった。このように、赤のスペクトル半値幅を広くするほど、個人差ΔEは小さくなる。
【0091】
しかしながら、
図27からわかるように、#5の場合の色再現範囲は、#4の場合の色再現範囲よりも狭く、また、#6の場合の色再現範囲はさらに狭い。つまり、赤のスペクトル半値幅を広くするほど、色再現範囲は狭くなってしまう。
【0092】
下記表7に、緑のスペクトル半値幅が異なる3つの場合(#7、#8および#9)について、個人差ΔEを計算した結果を示す。また、
図29に、#7、#8および#9の3つの場合について、色再現範囲を示す。#7は、緑のスペクトル半値幅が40nmの場合であり、#8は、緑のスペクトル半値幅が60nmの場合であり、#9は、緑のスペクトル半値幅が80nmの場合である。#7、#8および#9のそれぞれの場合における赤、緑および青のスペクトルは、
図30に示す通りである。
【0094】
表7からわかるように、#7では個人差ΔEの平均が1.52であったのに対し、#8では個人差ΔEの平均は1.34であり、#9では個人差ΔEの平均は1.18であった。このように、緑のスペクトル半値幅を広くするほど、個人差ΔEは小さくなる。
【0095】
しかしながら、
図29からわかるように、#8の場合の色再現範囲は、#7の場合の色再現範囲よりも狭く、また、#9の場合の色再現範囲はさらに狭い。つまり、緑のスペクトル半値幅を広くするほど、色再現範囲は狭くなってしまう。
【0096】
このように、赤色光や緑色光のスペクトルを広帯域化すると、等色関数の個人差に起因した色のばらつきを軽減し得るものの、色再現範囲が狭くなってしまう。
【0097】
これに対し、本実施形態のように、青色光のスペクトルを波長525nm以下の範囲で広帯域化する(あるいは、実施形態1のように黄サブ画素Ye(黄色発光素子1y)を設ける)ことにより、色再現範囲を狭くすることなく、等色関数の個人差に起因した色のばらつきを軽減することができる。
【0098】
(実施形態3)
図31に、本実施形態における表示装置300を示す。
図31は、表示装置300を模式的に示す平面図である。
【0099】
表示装置300は、
図31に示すように、自発光型の表示パネル10を備える。また、表示装置300は、複数の画素Pを有する。
【0100】
複数の画素Pは、行および列を有するマトリクス状に配列されている。複数の画素Pのそれぞれは、赤サブ画素R、緑サブ画素Gおよび青サブ画素Bから構成されている。つまり、各画素Pを構成する複数のサブ画素は、黄サブ画素を含んでいない。
【0101】
表示パネル10は、赤色光を発する赤色発光素子1rと、緑色光を発する緑色発光素子1gと、互いに異なるスペクトルの青色光を発する第1青色発光素子1baおよび第2青色発光素子1bbとを有する。
【0102】
赤色発光素子1rは、表示パネル10の赤サブ画素Rに対応する領域に設けられており、緑色発光素子1gは、表示パネル10の緑サブ画素gに対応する領域に設けられている。また、表示パネル10の青サブ画素Bに対応する領域に、第1青色発光素子1baおよび第2青色発光素子1bbの両方が設けられている。つまり、1つの青サブ画素Bに対応して2つの青色発光素子1baおよび1bbが配置されている。
【0103】
赤色発光素子1r、緑色発光素子1g、第1青色発光素子1baおよび第2青色発光素子1bbは、例えば有機EL素子である。勿論、赤色発光素子1r、緑色発光素子1g、第1青色発光素子1baおよび第2青色発光素子1bbとしては、有機EL素子に限定されず、公知の種々の自発光素子(例えば無機EL素子)を用いることができる。
【0104】
図32に、赤色発光素子1r、緑色発光素子1g、第1青色発光素子1baおよび第2青色発光素子1bbが発する赤色光、緑色光および青色光のスペクトルを示す。
図32に示すように、第1青色発光素子1baが発する青色光のスペクトル(
図32中の「B1」)と、第2青色発光素子1bbが発する青色光のスペクトル(
図32中の「B2」)とは、互いに異なっている。
図32に示している例では、第1青色発光素子1baが発する青色光の主波長は419nmであり、第2青色発光素子1bbが発する青色光の主波長は464nmである。また、第1青色発光素子1baが発する青色光および第2青色発光素子1bbが発する青色光は、いずれも波長が525nmを超える成分を実質的に含まない。
【0105】
本実施形態の表示装置300では、上述したように、表示パネル10が、互いに異なるスペクトルの青色光を発する第1青色発光素子1baおよび第2青色発光素子1bbを有する。そのため、等色関数の個人差が大きい波長範囲(400nm〜500nm)を広くカバーするように青の発光が行われるので、観察者に認識される色のばらつきが軽減される。
【0106】
また、2種類の青色発光素子(第1青色発光素子1baおよび第2青色発光素子1bb)が設けられる場合、原色の1つとしての青は、これら2種類の青色発光素子1baおよび1bbが発する青色光の加法混色により作られることになる。2種類の青色発光素子1baおよび1bbの発光スペクトルを適切に設定することにより、青の色度をほとんど変化させず、色再現範囲への影響をほぼなくすことができる。そのため、本実施形態の表示装置300では、色再現範囲を狭くすることなく、等色関数の個人差に起因した色のばらつきを軽減することができる。
【0107】
図33に、比較例2の表示装置(実施形態2で言及したものである)と、本実施形態の表示装置300とについて、色再現範囲を示す。また、下記表8および
図34に、比較例2の表示装置と、本実施形態の表示装置300とについて、個人差ΔEを計算した結果を示す。
【0109】
図33からわかるように、比較例2の表示装置と、本実施形態の表示装置300とで、色再現範囲はほぼ同じである。また、表8および
図34からわかるように、本実施形態の表示装置300では、15色分の個人差ΔEおよび平均の個人差ΔEのいずれもが、比較例2の表示装置よりも小さい。
【0110】
上述したように、本実施形態の表示装置300では、色再現範囲を狭くすることなく、等色関数の個人差に起因した色のばらつきを軽減することができる。
【0111】
なお、等色関数の個人差に起因した色のばらつきをより確実に軽減する観点からは、第1青色発光素子1baが発する青色光の主波長は400nm以上450nm未満で、且つ、第2青色発光素子1bbが発する青色光の主波長は450nm超515nm以下であることが好ましい。
【0112】
また、表1を参照しながら説明したように、個人差ΔEは、三原色のスペクトル半値幅を狭くするほど大きくなる。具体的には、三原色のスペクトル半値幅が30nm以下となると、個人差ΔEの平均が1.50以上となり、三原色のスペクトル半値幅が10nm以下となると、個人差ΔEの平均が2.00以上となる。従って、2種類の青色発光素子1baおよび1bbを設けることによる効果(等色関数の個人差に起因した色のばらつきを軽減する効果)は、赤および緑のスペクトル半値幅が狭くなるほど高くなるといえる。より具体的には、上記の効果は、赤色発光素子1rおよび緑色発光素子1gが発する赤色光および緑色光のスペクトル半値幅がそれぞれ30nm以下であるときにより高く、赤色光および緑色光のスペクトル半値幅がそれぞれ10nm以下であるときにいっそう高いといえる。
【0113】
また、
図31には、各画素Pが赤サブ画素R、緑サブ画素Gおよび青サブ画素Bから構成されている構成を例示したが、
図35に示す表示装置300Aのように、各画素Pを構成する複数のサブ画素が、赤サブ画素R、緑サブ画素Gおよび青サブ画素Bに加え、黄サブ画素Yeを含んでいてもよい。黄サブ画素Yeに対応する領域に設けられた黄色発光素子1yは、主波長が550nm以上600nm以下の黄色光を発することが好ましい。
【0114】
図35に示した構成を採用することにより、Z(λ)の個人差が大きい波長範囲(400nm〜500nm)だけでなく、X(λ)およびY(λ)の個人差が大きい波長範囲(550nm〜600nm)でも発光が行われるので、観察者に認識される色のばらつきをいっそう軽減することができる。
【0115】
また、
図31には、表示パネル10の青サブ画素Bに対応する領域に、第1青色発光素子1baおよび第2青色発光素子1bbの両方が設けられている構成を例示したが、必ずしも1つの青サブ画素Bに対応して2つの青色発光素子1baおよび1bbが配置されている必要はない。
図36に示す表示装置300Bのように、複数の画素Pが、表示パネル10の青サブ画素Bに対応する領域に第1青色発光素子1baが設けられ、且つ、第2青色発光素子1bbは設けられていない画素P1と、表示パネル10の青サブ画素Bに対応する領域に第2青色発光素子1bbが設けられ、且つ、第1青色発光素子1baは設けられていない画素P2とを含んでいてもよい。つまり、第1青色発光素子1baおよび第2青色発光素子1bbの一方のみが設けられている画素と、他方のみが設けられている画素とが混在していてもよい。なお、青色発光素子として第1青色発光素子1baのみを含む画素P1は、行方向および列方向の少なくとも一方について、青色発光素子として第2青色発光素子1bbのみを含む画素P2に隣接していることが好ましい。
【0116】
図31に示したように、1つの青サブ画素Bに対応して2つ(2種類)の青色発光素子1baおよび1bbが配置されている構成を採用すると、画素構造がシンプルなため低コストで実現できるという利点が得られる。一方、
図36に示したように、第1青色発光素子1baおよび第2青色発光素子1bbの一方のみが設けられている画素と、他方のみが設けられている画素とが混在する構成を採用すると、それぞれの色度点を独立に駆動ができるため色域が広がるという利点が得られる。
【0117】
(実施形態4)
図37および
図38に、本実施形態における表示装置400を示す。
図37は、表示装置400を模式的に示す平面図であり、
図38は、表示装置400を模式的に示す断面図である。
【0118】
表示装置400は、
図37および
図38に示すように、液晶表示パネル10Lと、液晶表示パネル10Lに光を照射する照明装置(バックライト)20とを備える。また、表示装置400は、複数の画素Pを有する。
【0119】
液晶表示パネル10Lは、背面側(照明装置20側)に配置された第1基板(アクティブマトリクス基板)11と、観察者側に配置された第2基板(対向基板)12と、これらの間に設けられた液晶層13とを含む。
【0120】
複数の画素Pは、行および列を有するマトリクス状に配列されている。複数の画素Pのそれぞれは、赤サブ画素R、緑サブ画素G、青サブ画素Bおよび黄サブ画素Yeから構成されている。
【0121】
液晶表示パネル10Lの第1基板11および第2基板12は、それぞれ不図示の電極や配向膜を含んでおり、第2基板12は、さらに、赤サブ画素R、緑サブ画素G、青サブ画素Bおよび黄サブ画素Yeに対応して設けられた赤カラーフィルタ14r、緑カラーフィルタ14g、青カラーフィルタ14bおよび黄カラーフィルタ14yを含んでいる。
【0122】
照明装置20は、赤色光を発する赤色光源21rと、緑色光を発する緑色光源21gと、青色光を発する青色光源21bとを有する。また、照明装置20は、黄色光を発する黄色光源21yをさらに有する。赤色光源21r、緑色光源21g、青色光源21bおよび黄色光源21yは、例えば、発光ダイオード(LED)である。勿論、赤色光源21r、緑色光源21g、青色光源21bおよび黄色光源21yとしては、公知の種々の光源を用いることができる。
【0123】
図39に、赤色光源21r、緑色光源21g、青色光源21bおよび黄色光源21yが発する赤色光、緑色光、青色光および黄色光のスペクトルを示す。
図39からわかるように、黄色光源21yが発する黄色光の主波長は、550nm以上600nm以下である。
【0124】
また、赤カラーフィルタ14r、緑カラーフィルタ14g、青カラーフィルタ14bおよび黄カラーフィルタ14yの分光透過特性は、
図40に示す通りであり、赤サブ画素R、緑サブ画素G、青サブ画素Bおよび黄サブ画素Yeによって表示される赤、緑、青および黄(つまり表示に用いられる原色)のスペクトルは、
図41に示す通りである。
【0125】
本実施形態の表示装置400では、照明装置20が、主波長が550nm以上600nm以下の黄色光を発する黄色光源21yを有しているので、
図41からもわかるように、等色関数の個人差が大きい波長範囲(550nm以上600nm以下)で黄の発光が行われる。そのため、観察者に認識される色のばらつきが軽減される。
【0126】
図42に、比較例3の表示装置と、本実施形態の表示装置400とについて、色再現範囲を示す。また、下記表9および
図43に、比較例3の表示装置と、本実施形態の表示装置400とについて、個人差ΔEを計算した結果を示す。比較例3の表示装置は、液晶表示パネルと、照明装置とを備えている。比較例3の表示装置では、各画素は、赤サブ画素、緑サブ画素および青サブ画素から構成されている。また、照明装置は、赤色光源、緑色光源および青色光源を有し、液晶表示パネルは、赤カラーフィルタ、緑カラーフィルタおよび青カラーフィルタを含む。比較例3の表示装置について、赤色光源、緑色光源および青色光源が発する赤色光、緑色光および青色光のスペクトルは、
図44に示す通りであり、赤カラーフィルタ、緑カラーフィルタおよび青カラーフィルタの分光透過特性は、
図45に示す通りであり、赤サブ画素、緑サブ画素および青サブ画素によって表示される赤、緑および青(つまり表示に用いられる原色)のスペクトルは、
図46に示す通りである。
【0128】
図42からわかるように、比較例3の表示装置と、本実施形態の表示装置400とでは、原色の色度がやや異なるものの、ほぼ同じ色再現性能が実現されている。また、表9および
図43からわかるように、本実施形態の表示装置400では、15色分の個人差ΔE、平均の個人差ΔEおよび最大の個人差ΔEのいずれもが、比較例3の表示装置よりも小さい。
【0129】
上述したように、本実施形態の表示装置400では、色再現性能を低下させることなく、等色関数の個人差に起因した色のばらつきを軽減することができる。
【0130】
なお、本実施形態では、各画素Pが4つのサブ画素(赤サブ画素R、緑サブ画素G、青サブ画素Bおよび黄サブ画素Ye)から構成されている構成を例示したが、各画素Pは5つ以上のサブ画素から構成されてもよい。例えば、各画素Pを構成する複数のサブ画素は、赤サブ画素R、緑サブ画素G、青サブ画素Bおよび黄サブ画素Yeに加えて、シアンサブ画素を含んでもよい。その場合、液晶表示パネル10Lには、シアンサブ画素に対応するシアンカラーフィルタが設けられる。
【0131】
本明細書は、以下の項目に記載の表示装置を開示している。
【0132】
[項目1]
自発光型の表示パネルを備え、
複数の画素を有する表示装置であって、
前記複数の画素のそれぞれは、赤サブ画素、緑サブ画素および青サブ画素を含む複数のサブ画素によって構成され、
前記表示パネルは、前記赤サブ画素に対応する領域に設けられた赤色発光素子と、前記緑サブ画素に対応する領域に設けられた緑色発光素子と、前記青サブ画素に対応する領域に設けられた青色発光素子とを有し、
前記赤色発光素子、前記緑色発光素子および前記青色発光素子が発する赤色光、緑色光および青色光のスペクトル半値幅は、それぞれ10nm以下であり、
前記複数のサブ画素は、黄サブ画素をさらに含み、
前記表示パネルは、前記黄サブ画素に対応する領域に設けられ、主波長が550nm以上600nm以下の黄色光を発する黄色発光素子をさらに有する表示装置。
【0133】
項目1に記載の表示装置によると、観察者に認識される色が等色関数の個人差に起因してばらつくことが軽減される。
【0134】
[項目2]
前記黄サブ画素によって表示される黄の色度は、色度図上で前記赤サブ画素、前記緑サブ画素および前記青サブ画素によって表示される赤、緑および青の色度を頂点とする三角形の辺上または内側に位置する項目1に記載の表示装置。
【0135】
[項目3]
自発光型の表示パネルを備え、
複数の画素を有する表示装置であって、
前記複数の画素のそれぞれは、赤サブ画素、緑サブ画素および青サブ画素を含む複数のサブ画素によって構成され、
前記表示パネルは、前記赤サブ画素に対応する領域に設けられた赤色発光素子と、前記緑サブ画素に対応する領域に設けられた緑色発光素子と、前記青サブ画素に対応する領域に設けられた青色発光素子とを有し、
前記青色発光素子が発する青色光は、波長が525nmを超える成分を実質的に含まず、且つ、そのスペクトル半値幅が20nm超である表示装置。
【0136】
項目3に記載の表示装置によると、観察者に認識される色が等色関数の個人差に起因してばらつくことが軽減される。
【0137】
[項目4]
自発光型の表示パネルを備え、
複数の画素を有する表示装置であって、
前記表示パネルは、赤色光を発する赤色発光素子と、緑色光を発する緑色発光素子と、互いに異なるスペクトルの青色光を発する第1青色発光素子および第2青色発光素子とを有する表示装置。
【0138】
項目4に記載の表示装置によると、観察者に認識される色が等色関数の個人差に起因してばらつくことが軽減される。
【0139】
[項目5]
前記複数の画素のそれぞれは、赤サブ画素、緑サブ画素および青サブ画素を含む複数のサブ画素によって構成され、
前記表示パネルの前記青サブ画素に対応する領域に、前記第1青色発光素子および前記第2青色発光素子の両方が設けられている項目4に記載の表示装置。
【0140】
[項目6]
前記複数の画素のそれぞれは、赤サブ画素、緑サブ画素および青サブ画素を含む複数のサブ画素によって構成され、
前記複数の画素は、前記表示パネルの前記青サブ画素に対応する領域に前記第1青色発光素子が設けられ、且つ、前記第2青色発光素子は設けられていない画素と、前記表示パネルの前記青サブ画素に対応する領域に前記第2青色発光素子が設けられ、且つ、前記第1青色発光素子は設けられていない画素とを含む項目4に記載の表示装置。
【0141】
[項目7]
前記複数のサブ画素は、黄サブ画素をさらに含み、
前記表示パネルは、前記黄サブ画素に対応する領域に設けられ、主波長が550nm以上600nm以下の黄色光を発する黄色発光素子をさらに有する項目3、5および6のいずれかに記載の表示装置。
【0142】
[項目8]
前記赤色発光素子および前記緑色発光素子が発する赤色光および緑色光のスペクトル半値幅は、それぞれ30nm以下である項目3から7のいずれかに記載の表示装置。
【0143】
[項目9]
前記赤色発光素子および前記緑色発光素子が発する赤色光および緑色光のスペクトル半値幅は、それぞれ10nm以下である項目3から7のいずれかに記載の表示装置。
【0144】
[項目10]
液晶層を含む液晶表示パネルと、
前記液晶表示パネルに光を照射する照明装置と、を備え、
複数の画素を有する表示装置であって、
前記照明装置は、赤色光を発する赤色光源と、緑色光を発する緑色光源と、青色光を発する青色光源とを有し、
前記複数の画素のそれぞれは、赤サブ画素、緑サブ画素、青サブ画素および黄サブ画素を含む複数のサブ画素によって構成され、
前記照明装置は、主波長が550nm以上600nm以下の黄色光を発する黄色光源をさらに有する表示装置。
【0145】
項目10に記載の表示装置によると、観察者に認識される色が等色関数の個人差に起因してばらつくことが軽減される。