【課題を解決するための手段】
【0014】
一態様によれば、本発明は、(a)中細孔、大細孔またはメソ細孔結晶構造を有し、任意に第1金属の約0.01〜約20重量%を含む第1モレキュラーシーブと、小細孔結晶構造を有し、任意に第2金属の約0.01〜約20重量%を含む第2モレキュラーシーブとの組合せを備える触媒成分と、(b)前記触媒成分がその上またはその内部に包含(包摂)されてなるモノリス基材とを含み、第1および第2金属は、置換されるか、前記モレキュラーシーブの結晶構造のフレームワークに対して自由(非置換)であり、Cr、Mn、Fe、Co、Ce、Ni、Cu、Zn、Ga、Mo、Ru、Rh、Pd、Pt、Ag、In、Sn、ReおよびIrからなる群より独立して選択され、第1および第2モレキュラーシーブの組合せは、ブレンド(blend:混合物)、複数の層および複数の区域からなる群より選択される不均一触媒(heterogeneous catalyst)物品を提供する。
【0015】
本発明において、有用な触媒の組合せの形態は、2つ以上の触媒のブレンドと、各層が単一触媒を構成する複数の層と、各領域が1つの触媒を構成する複数の区域とを含む。前記組合せは、組合せに独立して作用するその構成要素のうちの1つによっては得られない性質によって特徴付けられる。
図4aないし
図4bを参照すれば、本発明にかかる他の組合せの特定の実施形態が示されている。
図4aは、基材102上にコーティングされた2つのモレキュラーシーブブレンド104を含むブレンド100を示す。ここで、「ブレンド」という用語は、モレキュラーシーブに関連し、体積全体にわたって互いに対して略同じ比率を有する2つ以上のモレキュラーシーブの体積を意味する。第1モレキュラーシーブ116からなる第1区域と、第2モレキュラーシーブ118からなる第2区域とを含む複数の区域110の一実施形態が示されており、第1区域と第2区域は、基材102上にコーティングされており、互いに隣接し、前記モノリス基材に隣接する。排気ガスの流れ方向114も示されている。
図4cには、第1層116と第2層118とを備える複数の層120の一実施形態が示されており、第2層が第1層および前記基材の両方に隣接し、第1層と前記基材との間に位置する。
図4dは、2つの組合せ130を示すが、第1組合せが2つの区域(モレキュラーシーブ116とブレンド104)であり、第2組合せがブレンド104である。2つ以上の組合せを用いる実施形態について、各組合せのためのモレキュラーシーブは独立して選択される。図示しないが、他の多重組合せが本発明の範囲内で存在することができる。例えば、
図4dの実施形態と類似の構造として、ブレンドの代わりに第2組合せが複数の層になってもよい。他の多重組合せは、1つ以上層のブレンドの使用および1つ以上の区域の層の使用などを含む。多重組合せが用いられる時、触媒成分を通る排気ガス流れに対する組合せの順序は特に限定されない。しかし、中細孔、大細孔またはメソ細孔モレキュラーシーブのうちの少なくとも1つが小細孔モレキュラーシーブの上流側に位置することが非常に好ましい。
【0016】
前記組合せは、第2モレキュラーシーブ要素に対して第1モレキュラーシーブ要素が多数を占めることが好ましい。特定の実施形態において、組合せは、第1モレキュラーシーブと、第1モレキュラーシーブ内の第2モレキュラーシーブとを含むが、第2モレキュラーシーブの重量比は、約0.1(すなわち、1:10)〜約1(すなわち、1:1))である。特定の実施形態において、第2モレキュラーシーブに対する第1モレキュラーシーブの重量比は、約0.25〜約0.50である。特定の実施形態において、第1モレキュラーシーブの第2モレキュラーシーブに対する重量比は、約0.3〜約0.4である。
【0017】
他の態様によれば、組成、流量および温度がそれぞれ臨時的に変化可能な供給ガス内において、窒素含有還元剤を用いて窒素酸化物の変換に対する選択的な触媒作用のための触媒が提供されるが、前記触媒は、第1モレキュラーシーブ要素と第2モレキュラーシーブ要素との組合せを含み、FTP(Federal Test Procedure)75サイクル上でテストされた直接比較において、前記触媒は、単独モレキュラーシーブ要素と同等またはより低いNH
3スリップ(slip)でより高いNO
xの累積変換率を有する。
【0018】
特に、発明者らは、少なくとも1つの実施形態で第1モレキュラーシーブ要素と第2モレキュラーシーブ要素との間のシナジー関係を観察し、これは、小細孔モレキュラーシーブをSCR触媒内の要素として使用するという利点を維持しながら、モレキュラーシーブ(例えば、小細孔モレキュラーシーブ)を含むSCR触媒のNO
x変換に対する過渡応答を改善するのに使用可能である。「窒素含有還元剤による供給ガス内の窒素酸化物の選択的還元触媒作用のための触媒」は、ここで、「選択的触媒還元」(または「SCR」)触媒として言及される。疑う余地をなくすために、3つ以上のモレキュラーシーブの組合せを含むSCR触媒も本発明の範囲に属することを明らかにする。
【0019】
好ましい実施形態において、触媒に入る供給ガスでNO:NO
2の累積モル比が1以下の場合に、触媒は、いずれか1つのモレキュラーシーブ要素単独で使用される時と同等またはより低いNH
3スリップでより高いNO
xの累積変換率を有する。他の好ましい特定の実施形態において、供給排気ガス流におけるNO:NO
2比は、約0.8〜約1.2である。他の好ましい特定の実施形態において、供給排気ガス流におけるNO:NO
2比は、約0.3未満であり、他の好ましい実施形態では、その比が約3より大きい。
【0020】
さらに他の好ましい実施形態において、触媒は、いずれか1つのモレキュラーシーブ要素単独が使用される時と同等またはより低いNH
3スリップでNO
xの二窒素(dinitrogen)へのより高い累積変換率を有する。
【0021】
本発明は、触媒活性度を非常に改善し、現在の最新のSCR触媒に比べてより低いNH
3露出(触媒の飽和貯蔵容量に対して低い露出)でより高い活性度を得るようになる。ゼロアンモニア露出から飽和アンモニア露出までの活性度の増加率が「過渡応答」と言及される。
【0022】
一実施形態において、第1モレキュラーシーブ要素は、第2モレキュラーシーブ要素より選択された条件に対してより低いNH
3充填水準で最大のNO
x変換を達成する。例えば、第1モレキュラーシーブ要素のアンモニア充填水準は、20〜60%または30〜50%のように10〜80%の範囲内であり得る。
【0023】
第1および第2モレキュラーシーブは、ゼオライトおよび非ゼオライトモレキュラーシーブから独立して選択できる。国際ゼオライト協会による「ゼオライト」は、一般的にケイ酸アルミニウムであることが考慮され、「非ゼオライトモレキュラーシーブ」は、対応するゼオライトと同一のフレームワーク形態(または結晶体構造)のモレキュラーシーブであり得、リン、コバルトとリンの両方、銅または鉄のようなその結晶格子に存在する1つ以上の非アルミニウム/非シリコンカチオンを有する。したがって、例えば、SSZ−13がフレームワーク形態コードCHAのゼオライトであり、SAPO−34が同一のCHAフレームワーク形態コードを共有するシリコアルミノホスフェート非ゼオライトモレキュラーシーブである。特に、イオン含有アルミノケイ酸塩ゼオライト(ここで定義されたように非ゼオライトモレキュラーシーブ)が好ましいが、その例としては、WO2009/023202とEP2072128A1に記載されたFe含有ZSM5、ベータ、CHAまたはFERがあり、これらは、熱水的に安定的で相対的に高いSCR活性度を有する。また、利点として、発明者らは、特定の実施形態において、このような鉄含有アルミノケイ酸塩ゼオライトを含む触媒が硝酸アンモニウムをほとんど生成しないか全く生成せず、相対的に高い選択性(例えば、低N
2O)を示すことを見出した。このような物質に対する典型的なSiO
2/Al
2O
3のモル比は30〜100であり、SiO
2/Fe
2O
3の場合、20〜100のような20〜300である。
【0024】
好ましい実施形態において、第1(ゼオライトまたは非ゼオライト)モレキュラーシーブ要素は、最大環サイズが8四面体原子である、表1に記載されたいずれか1つから任意に選択される小細孔モレキュラーシーブであり得る。任意に、第2(ゼオライトまたは非ゼオライト)モレキュラーシーブ要素も、最大環サイズが8四面体原子の第1モレキュラーシーブ要素とは独立して、表1に記載されたいずれか1つから選択される小細孔モレキュラーシーブであり得る。
【0025】
【表1】
【0026】
一実施形態において、小細孔モレキュラーシーブは、ACO、AEI、AEN、AFN、AFT、AFX、ANA、APC、APD、ATT、CDO、CHA、DDR、DFT、EAB、EDI、EPI、ERI、GIS、GOO、IHW、ITE、ITW、LEV、KFI、MER、MON、NSI、OWE、PAU、PHI、RHO、RTH、SAT、SAV、SIV、THO、TSC、UEI、UFI、VNI、YUGおよびZONからなるフレームワーク形態コードの群より選択できる。
【0027】
車両排気ガスのような希薄燃焼内燃機関の排気ガスのNO
x処理のための特定の分野における小細孔モレキュラーシーブが表2に記載される。
【0028】
【表2】
【0029】
特定の実施形態において、第2モレキュラーシーブ(ゼオライトまたは非ゼオライトモレキュラーシーブ)要素は、中細孔、大細孔またはメソ細孔サイズのモレキュラーシーブであり得る。
【0030】
特に好ましい実施形態において、第1モレキュラーシーブは、CuCHA物質であり、第2モレキュラーシーブは、FeBEA、FeFER、FeCHAまたはFeMFI(例えば、ZSM−5)であり、Feは、含浸、イオン交換および/またはモレキュラーシーブの結晶格子内に存在して形成される。
【0031】
ここで、「中細孔」は、モレキュラーシーブが10四面体原子の最大環サイズを有し、「大細孔」は、12四面体原子の最大環サイズを有することを意味する。メソ細孔モレキュラーシーブは、12より大きい最大環サイズを有する。
【0032】
本発明で第2モレキュラーシーブとして使用するに適した中細孔モレキュラーシーブは、ZSM−5(MFI)、MCM−22(MWW)、AIPO−11およびSAPO−11(AEL)、AIPO−41およびSAPO−41(AFO)、フェリエライト(FER)、ヒューランダイトまたはクリノプチロライト(HEU)を含む。本発明で使用される大細孔モレキュラーシーブは、ultrastable−Y(またはUSY)のようなゼオライトY、ファージャサイトまたはSAPO−37(FAU)、AIPO−5およびSAPO−5(AFI)、SAPO−40(AFR)、AIPO−31およびSAPO−31(ATO)、Beta(BEA)、グメリナイト(Gmelinite)(GME)、モルデナイト(MOR)およびオフレタイト(OFF)を含む。
【0033】
WO2008/132452によれば、ZSM−5ゼオライトまたはベータゼオライトのようなある中細孔および大細孔モレキュラーシーブは、触媒コーキングをもたらすことがある。ある中細孔および大細孔モレキュラーシーブ要素の選択は、ある面で適切でないこともある。基本的に、一方で改善された過渡応答と他方で発生したコーキングとの間で均衡が破れる。しかし、このようなコーキング問題は、適切な排気システム設計で低減または解消することができるが、このような設計の例としては、供給ガス内の炭化水素を変換(そうでなければ、中細孔、大細孔またはメソ細孔モレキュラーシーブ要素をコーキングさせ得る)可能なSCR触媒を酸化触媒の上流に位置させることである。また、小細孔モレキュラーシーブが中細孔、大細孔またはメソ細孔モレキュラーシーブと混合されたある実施形態において、小細孔モレキュラーシーブの存在が中細孔、大細孔またはメソ細孔モレキュラーシーブでのコーキングを低減させることができる。このような構造の他の利点は、触媒と接触する供給ガスにおけるNO:NO
2の比が調整され、SCR触媒における全体のNO
x変換を改善させることができることである。
【0034】
本発明で使用するためのモレキュラーシーブは、1次元、2次元および3次元モレキュラーシーブから独立して選択できる。3次元の次元数を示すモレキュラーシーブは、すべての3結晶学的次元で互いに連結された空隙構造を有し、2次元の次元数を有するモレキュラーシーブは、2結晶学的次元でのみ互いに連結された空隙を有する。1次元の次元数を有するモレキュラーシーブは、2結晶学的次元で互いに連結されたいずれの空隙も有さない。
【0035】
本発明で使用するための小細孔モレキュラーシーブ、特に、アルミノケイ酸塩は、2〜300、任意に8〜150(例えば、15〜50または25〜40)のような4〜200のシリカ−アルミナ比(SAR)を有することができる。より高いSARは、熱安定性(特に、熱水エージング後、低温での高い触媒活性度)を改善するのに好適であるが、これは、遷移金属の交換に否定的な影響を及ぼすことがある。したがって、好ましい物質の選択において、SARの選択によっては2つの性質の間で均衡が破れることもある。鉄が存在するフレームワーク(iron−in−framework)モレキュラーシーブ用SARは、本明細書の他の部分で説明される。
【0036】
好ましい実施形態において、第1モレキュラーシーブ、第2モレキュラーシーブまたはこれら両方とも、Cr、Mn、Fe、Co、Ce、Ni、Cu、Zn、Ga、Mo、Ru、Rh、Pd、Ag、In、Sn、Re、IrおよびPtからなる群より独立して選択された1種以上の金属を含む。第1モレキュラーシーブに含有された金属は、第2モレキュラーシーブに含有されたものと同じであっても異なっていてもよい。したがって、例えば、第1モレキュラーシーブは、銅を含むことができ、第2モレキュラーシーブは、鉄を含むことができる。一実施形態において、2つのモレキュラーシーブは、ともにイオン交換可能である。
【0037】
前述した表1のように、ここで、「1種以上の遷移金属を含むモレキュラーシーブ」によってモレキュラーシーブがカバーされ、アルミニウムとシリコン以外の要素がモレキュラーシーブのフレームワーク内に置換される。このようなモレキュラーシーブは、「非ゼオライトモレキュラーシーブ」として知られており、1種以上の金属で置換される「SAPO」、「MeAPO」、「FeAPO」、「AIPO
4」、「TAPO」、「ELAPO」、「MeAPSO」および「MeAIPO」を含む。適切な置換金属は、限定されず、As、B、Be、Co、Fe、Ga、Ge、Li、Mg、Mn、Ti、ZnおよびZrのうちの1種以上を含む。このような非ゼオライトモレキュラーシーブは、前述した適切な金属、すなわち、Cr、Mn、Fe、Coなどによって順次に含浸され得る。第1モレキュラーシーブおよび第2モレキュラーシーブのうちの少なくとも1つは、置換フレームワーク金属を含むことができる。第1モレキュラーシーブと第2モレキュラーシーブが置換フレームワーク金属を含む場合、各置換金属は、前記リストから独立して選択される。
【0038】
特定の実施形態において、本発明で使用するための小細孔ゼオライトと非ゼオライトモレキュラーシーブは、アルミノケイ酸塩ゼオライト、好ましい鉄含有アルミノケイ酸塩ゼオライトとリン酸アルミニウムモレキュラーシーブのような金属置換アルミノケイ酸塩モレキュラーシーブからなる群より選択できる。
【0039】
本発明に適用されるリン酸アルミニウムモレキュラーシーブは、リン酸アルミニウム(AIPO
4)モレキュラーシーブと、金属置換リン酸アルミニウムモレキュラーシーブ(MeAIPO)と、シリカ−リン酸アルミニウム(SAPO)モレキュラーシーブと、金属置換シリコ−リン酸アルミニウム(MeAPSO)モレキュラーシーブとを含む。
【0040】
第1または第2モレキュラーシーブ要素として使用するのに特に興味深いモレキュラーシーブ要素の群は、鉄置換アルミノケイ酸塩であり、鉄はモレキュラーシーブのフレームワークに存在する。本発明の使用のための、すなわち、移動型NO
x発生源からの排気ガスを処理するためのSCR触媒の好ましい適用において、鉄置換アルミノケイ酸塩は、強力な「温室」ガスであるN
2Oを相対的に低く発生させるか全く発生させないことから、特に興味深い。
【0041】
一実施形態において、少なくとも1種の遷移金属が、Cr、Ce、Mn、Fe、Co、NiおよびCuからなる群より選択される。好ましい実施形態において、少なくとも1種の遷移金属は、Cu、FeおよびCeからなる群より選択される。特定の実施形態において、少なくとも1種の遷移金属は、Cuからなる。他の特定の実施形態において、少なくとも1種の遷移金属は、Feからなる。さらに他の特定の実施形態において、少なくとも1種の遷移金属は、Cuおよび/またはFeである。
【0042】
前記少なくとも1種の遷移金属含有モレキュラーシーブに含有可能な前記少なくとも1種の遷移金属の総和は、少なくとも1種の遷移金属を含む前記モレキュラーシーブ触媒の総重量に対して0.01〜20.00重量%であり得る。一実施形態において、含有可能な前記少なくとも1種の遷移金属の総和は、0.1〜10.0重量%であり得る。特定の実施形態において、含有可能な前記少なくとも1種の遷移金属の総和は、0.5〜5.0重量%であり得る。好ましい実施形態において、仮に、鉄が存在するフレームワークモレキュラーシーブのためにSiO
2/Fe
2O
3比を満足すれば(存在するSiO
2/Fe
2O
3が50〜200、好ましくは50〜100)、前記遷移金属の荷重は、2.0〜4.0重量%であり、前記SARは、25〜50または>40または>60、例えば、40<60、40<70または60<100である。
【0043】
遷移金属は、液相交換または固体イオン交換または初期湿式工程(incipient wetness process)のような当該分野において公知の技術を利用して、モレキュラーシーブ内に混合(結合)できる。鉄含有アルミノケイ酸塩ゼオライトの製造のために、Journal of Catalysis(232(2)318−334(2005))、EP2072128およびWO2009/023202と、参照文献や引用文献を参照することができる。
【0044】
特に好ましい実施形態において、触媒成分は、大細孔モレキュラーシーブの第1モレキュラーシーブと小細孔モレキュラーシーブの第2モレキュラーシーブとの組合せからなるか、これらを含む。ある好ましい実施形態において、小細孔モレキュラーシーブは、CHAフレームワーク、より好ましくはSSZ−13フレームワークを備え、銅を含む。ある好ましい実施形態において、このような小細孔モレキュラーシーブは、BEAフレームワークを備える大細孔モレキュラーシーブと混合される。好ましくは、BEAフレームワークは、交換または遊離する鉄を含むか、鉄同形(isomorphous:イソモルファス)のBEA分子構造(BEA型フェロシリケート(ferrosilicate)として言及される)を含むが、鉄同形のBEA分子構造であることが特に好ましい。
【0045】
ある好ましい実施形態において、鉄同形のBEA分子構造は、(1)約20〜約300のSiO
2/Fe
2O
3のモル比を有する鉄含有BEAフレームワーク構造を含む結晶質ケイ酸塩であり、(2)含有された鉄の少なくとも80%が新鮮な状態で鉄イオンFe
3+に分離および/またはモルでlog(SiO
2/Al
2O
3)が少なくとも2になる。本発明で有用な好ましいBEA型フェロシリケートは、次の式で表される組成物を含み、
(x+y)M
(2/n)O・xFe
2O
3・yAl
2O
3・zSiO
2・wH
2O
ここで、nはカチオンMの原子値で、x、yおよびzはFe
2O
3、Al
2O
3およびSiO
2それぞれのモル分率で、x+y+z=1で、wは少なくとも0の数字で、z/xは20〜300、yは0であり得、任意に、z/yは少なくとも100である。
【0046】
好ましくは、鉄含有BEAフレーム構造は、モル比約25〜約300、約20〜150、約24〜約150、約25〜約100、約50〜約80のSiO
2/Fe
2O
3を備える。仮に、モルとしてlog(SiO
2/Al
2O
3)が少なくとも2(すなわち、モルとしてSiO
2/Al
2O
3比が少なくとも100)であれば、モルとしてlog(SiO
2/Al
2O
3)の上限は、特に限定されない。モルとしてlog(SiO
2/Al
2O
3)は、好ましくは少なくとも2.5(すなわち、モルとしてSiO
2/Al
2O
3比が少なくとも310)、より好ましくは少なくとも3(すなわち、モルとしてSiO
2/Al
2O
3比が少なくとも1,000)である。モルとしてlog(SiO
2/Al
2O
3)が4を超過(すなわち、モルとしてSiO
2/Al
2O
3比が少なくとも10,000)する時、窒素酸化物の還元性能は最高水準で一定である。
【0047】
ある好ましい実施形態において、CHAモレキュラーシーブは、約1ミクロンより大きい、好ましくは約1〜約5ミクロン、最も好ましくは約2〜約4ミクロンの平均結晶サイズを有することを特徴とする。BEA型フェロシリケートにおいて、窒素酸化物の還元のための触媒活性度を最も顕著に示す鉄成分はFe
2O
3として合されず、フレームワーク構造内で分離された鉄イオンFe
3+に分散する(すなわち、ケイ酸塩フレーム構造またはイオン交換サイトで分離されて分散する)。分離された鉄イオンFe
3+は電子スピン共鳴測定によって検出できる。BEA型フェロシリケートの組成を限定するために使用されるもので、SiO
2/Al
2O
3のモル比は、BEA型フェロシリケート内の分離された鉄イオンFe
3+を含む全体の鉄含有量を規定するための1つの便利な表現であり得る。
【0048】
小細孔/大細孔ゼオライトブレンド、特に、銅交換SSZ−13/Fe−BEA組合せの使用は、構成要素に比べてN
2Oの形成を増加させることができる。したがって、このような組合せの使用は、特定の適用においては有害であり得る。しかし、銅交換SSZ−13/BEA型フェロシリケート組合せの使用は、このような問題を顕著に克服することができ、窒素への改善された選択性を提供する。区域化されて層状化されたSCR触媒は、特に、排気ガスが約50/50のNO、NO
2比を有する時、特に追加された改善点を提供する。このような触媒は、等価のブレンドに対してN
2Oの排出を約75%まで低減し、低いNO/NO
2ガス混合物で優れた過渡応答と優れた変換率を維持する。
【0049】
驚くべきことに、銅交換SSZ−13/プリエージング(pre−aging)Fe−BEAの組合せは、従来のFe−BEAを有する組合せより概してより優れた結果を生むことができる。したがって、500℃で1時間という従来の処理の代わりに、Fe−BEA物質が、600〜900℃、好ましくは650〜850℃、より好ましくは700〜800℃、さらに好ましくは725〜775℃で、3〜8時間、好ましくは4〜6時間、より好ましくは4.5〜5.5時間、さらに好ましくは4.75〜5.25時間好ましくエージングされる。銅交換SSZ−13/プリエージングされたFe−BEA組合せを用いた実施形態は、N
2Oの形成が望ましくない分野で有利である。Fe−BEAに対するCu:SSZ−13の比およびBEA−フェロシリケートに対するCu:SSZ−13の比と類似のプリエージングされたFe−BEAに対するCu:SAZ−13の比は、本発明の範囲に含まれる。また、Fe−BEAに対するCu:SSZ−13の組合せおよびBEA−フェロシリケートに対するCu:SSZ−13の組合せと類似のプリエージングされたFe−BEAに対するCu:SSZ−13の組合せも、本発明の範囲に含まれる。
【0050】
第1モレキュラーシーブおよび第2モレキュラーシーブとも同一の触媒コーティング内に存在、すなわち、適切な基材モノリス上のウォッシュコート(washcoat)内にコーティングされ得るか、第1モレキュラーシーブおよび第2モレキュラーシーブ要素のそれぞれは、1つの上の他の1つのウォッシュコート層で分離されてもよく、第2モレキュラーシーブ要素上の一層内の第1モレキュラーシーブ要素またはその逆も可能である。あるいは、第1モレキュラーシーブおよび第2モレキュラーシーブの両方は、押出形態の基材モノリスを形成するための組成に混合可能である。任意に、押出されたモノリスは、追加的に第1モレキュラーシーブおよび第2モレキュラーシーブ要素の一方または両方を含むウォッシュコートでコーティングされ得る。あるいは、第1モレキュラーシーブ要素および第2モレキュラーシーブ要素のうちのいずれか1つのみを含む、押出された基材モノリスが形成され、押出された基材モノリスが押出物に存在しない他のモレキュラーシーブ要素を含むウォッシュコートでコーティングされるか、ウォッシュコートが第1モレキュラーシーブと第2モレキュラーシーブをすべて含むことができる。押出されてコーティングされた基材モノリスを組合せるすべての構造において、第1および/または第2モレキュラーシーブ要素は、押出物および触媒コーティングともに存在する箇所で、第1モレキュラーシーブ要素は押出物とコーティングにおいて同一であっても異なっていてもよい。したがって、例えば、ウォッシュコートは、SSZ−13ゼオライトを含むことができ、押出物は、SAPO−34を含むことができる。同一の事項が第2モレキュラーシーブ要素に適用されるが、すなわち、ウォッシュコートがZSM−5ゼオライトを含むことができ、押出物がベータゼオライトを含むことができるということである。
【0051】
モノリス基材上にコーティングしたり押出形態の基材モノリスを製造するために本発明で使用するためのモレキュラーシーブを含むウォッシュコート組成物は、アルミナ、シリカ、(非ゼオライト)シリカ−アルミナ、自然発生クレー(clay)、TiO
2、ZrO
2およびSnO
2からなる群より選択されたバインダーを含むことができる。
【0052】
適切な基材モノリスは、コーディエライト(cordierite)またはフェクラロイ(fecralloy)のような材質の金属基材からなる、いわゆる、フロースルー基材モノリス(すなわち、全体の部分にわたって軸方向に延びる多くの小さく平行なチャネルを有するハニカムモノリス触媒支持構造)を含む。基材モノリスは、コーディエライト、チタン酸アルミニウム、炭化ケイ素またはムライト材質のウォールフローフィルタ、セラミック発泡体、焼結された金属フィルタ、またはEP1057519もしくはWO01/080978に開示されたような、いわゆる、部分フィルタを含むフィルタであり得る。
【0053】
他の態様によれば、本発明は、移動型発生源から排出された窒素酸化物を含む流動排気ガスを処理するための排出システムを提供するが、このシステムは、本発明にかかる、SCR触媒から流れ方向に沿って上流に位置する窒素含有還元剤のソースを含む。
【0054】
窒素含有還元剤のソースは、所望の程度にNO
xを変換するために、還元剤またはその前駆体(適切な容器またはタンクに貯蔵される)の適切な量を伝達するための適切にプログラムされた電子制御ユニットの制御によって作動する適切な注入手段を含むことができる。液体または固体アンモニア前駆体は、例えば、尿素((NH
2)
2CO)、炭酸アンモニウム、カルバミン酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウムまたはギ酸アンモニウムであり得る。あるいは、アンモニアそのものまたはヒドラジンが使用可能である。
【0055】
他の実施形態において、窒素含有還元剤のソースは、少なくとも1つのエンジンシリンダが、例えば、残りのエンジンシリンダで正常な作動条件(例えば、理論的に均衡の取れた酸化還元(redox)組成、または濃厚な酸化還元組成を有する排気ガスを発生させる)よりも濃厚に作動するように構成されたエンジンと組み合わせたNO
x吸収材(NO
xトラップ、希薄NO
xトラップまたはNO
x吸収触媒(NAC)として知られる)および/または炭化水素を流動排気ガスに注入するために、NO
x吸収材の上流に位置する、分離された炭化水素の注入手段である。NO
x吸収材に吸収されたNO
xは、吸収されたNO
xを還元環境と接触させてアンモニアに還元される。本発明にかかるSCR触媒をNO
x吸収材の下流に位置させることにより、インサイチューで発生したアンモニアは、NO
x吸収材がエンジンによって発生した濃厚な排気ガスなどと接触することで再生される時、SCR触媒におけるNO
x還元のために使用可能である。
【0056】
あるいは、窒素含有還元剤のソースは、正常より間欠的にまたは連続的により濃厚に作動するように構成された少なくとも1つのエンジンそれぞれの排気マニホールドに位置するNO
xトラップまたは改質触媒のような分離触媒であり得る。
【0057】
他の実施形態において、排気ガス内の一酸化窒素を二酸化窒素に酸化させるための酸化触媒が、排気ガスとSCR触媒内に入る窒素含有還元剤を測定する地点の上流に位置することができる。
【0058】
酸化触媒は、フロースルーモノリス基材にコーティングされた少なくとも1種の貴金属、好ましくは、白金、パラジウムまたはロジウムのような白金族元素(またはその組合せ)を含むことができる。一実施形態において、少なくとも1種の貴金属は、白金、パラジウム、または白金とパラジウムとの組合せ、またはPd−Auの合金、任意にPt−Pdの組合せである。前記貴金属は、アルミナ、アルミノケイ酸塩ゼオライト、シリカ、非ゼオライトシリカアルミナ、セリア、ジルコニア、チタニア、またはセリアとジルコニアとを含む混合物、または組成酸化物のような高表面領域のウォッシュコート要素上に支持可能である。
【0059】
他の実施形態において、適切なフィルタ基材は、酸化触媒と、本発明にかかる触媒との間に位置する。フィルタ基材は、ウォールフローフィルタのような前述したものから選択できる。フィルタが前記論議された種類の酸化触媒で触媒作用を受ける箇所、好ましくは、窒素含有還元剤の計測地点が、フィルタと、本発明にかかる触媒との間に位置する。このような配置は、WO99/39809に記載されている。あるいは、仮にフィルタが触媒作用を受けなければ、還元剤を計測する手段は、酸化触媒とフィルタとの間に位置することができる。
【0060】
他の実施形態において、本発明で使用するためのSCR触媒は、フィルタ上にコーティングされたり酸化触媒の下流に位置する押出型触媒内に形成される。フィルタが本発明で使用するためのSCR触媒を含む場合に、窒素含有還元剤を計測する地点は、酸化触媒とフィルタとの間に位置することが好ましい。
【0061】
他の態様によれば、本発明は、本発明にかかる排気システムを備える希薄燃焼内燃機関を提供する。ある実施形態において、エンジンは、圧縮点火エンジンまたは強制点火(positive ignition)エンジンであり得る。強制点火エンジンは、ガソリン燃料、メタノールおよび/またはエタノールを含む酸素と混合されたガソリン燃料、LPGまたはCNGを含む多様な燃料を使用することができる。圧縮点火エンジンは、ディーゼル燃料、ガス−液体方法によって製造された合成炭化水素を含む非ディーゼル炭化水素とともに混合されたディーゼル燃料またはバイオ要素を使用することができる。
【0062】
さらに他の態様において、本発明は、本発明にかかる希薄燃焼内燃機関を備える車両を提供する。
【0063】
さらなる態様において、本発明は、その組成、流量および温度が一時的にそれぞれ変化する移動型発生源の排気ガス内の窒素酸化物(NO
x)の変換方法を提供するが、前記方法は、第1モレキュラーシーブ要素と第2モレキュラーシーブ要素との組合せを含む選択的触媒還元のための触媒の存在下でNO
xを窒素含有還元剤と接触させるステップを含み、FTP(Federal Test Procedure)75サイクル上でテストされた直接比較において、触媒は、1つのモレキュラーシーブ要素のみを使用する場合と同等またはより低いNH
3スリップでNO
xのより高い累積変換率を有する。
【0064】
一実施形態において、触媒に入る供給ガス内のNO:NO
2の累積モル比が1以下の時、触媒は、1つのモレキュラーシーブ要素のみを使用する場合と同等またはより低いNH
3スリップでNO
xのより高い累積変換率を有する。
【0065】
他の実施形態において、触媒は、1つのモレキュラーシーブ要素のみを使用する場合と同等またはより低いNH
3スリップでNO
xの二窒素へのより高い累積変換率を有する。
【0066】
さらなる実施形態において、窒素酸化物は、少なくとも100℃の温度で窒素含有還元剤で還元される。他の実施形態において、窒素酸化物は、約150℃〜750℃の温度で還元剤で還元される。後者の実施形態は、大型および小型車両用ディーゼルエンジン、例えば、特に、炭化水素をフィルタの上流の排気システム内に注入することで活動的に再生される(任意に触媒作用を受ける)ディーゼル微粒子フィルタを含む排気システムを備えるエンジンから排出される排気ガスを処理するのに特に有用であるが、本発明にかかる前記触媒は、フィルタの下流に位置する。
【0067】
特定の実施形態において、前記温度範囲は、175〜550℃である。他の実施形態において、前記温度範囲は、175〜400℃である。
【0068】
他の実施形態において、窒素酸化物の還元は、酸素の存在下で行われる。これとは異なる実施形態において、窒素酸化物の還元は、酸素が存在しない条件で行われる。
【0069】
窒素酸化物を含むガスは、本発明にかかる触媒と、5,000hr
−1〜500,000hr
−1、任意に10,000hr
−1〜200,000hr
−1のガス空間速度で接触することができる。
【0070】
SCR触媒と接触する窒素含有還元剤の計測器が配置され、理論的アンモニアの60%〜200%が、1:1のNH
3/NOおよび4:3のNH
3/NO
2で計算されたSCR触媒に入る排気ガス内に存在することができる。
【0071】
さらなる実施形態において、排気ガス内の一酸化窒素を二酸化窒素に酸化させるステップが、窒素含有還元剤の導入前に実施できる。このようなNO酸化ステップは、適切な酸化触媒を用いて実施できる。一実施形態において、酸化触媒は、例えば、酸化触媒入口で250℃〜450℃の温度を有する排気ガスにおいて、約4:1〜約1:3のNO対NO
2の体積比を有するSCR触媒に入るガス流を生産するのに好適である。