【解決手段】加工機械100は、ワークの除去加工および付加加工が可能な加工機械である。加工機械100は、加工エリア200内に設けられ、ワークを保持する第1主軸台111および第2主軸台116と、加工エリア200内に設けられ、ワークの除去加工のための工具を保持する工具主軸121および下刃物台131と、ワークの付加加工時に材料を吐出する付加加工用ヘッド61と、加工エリア200の内外の間におけるワークの搬送時にワークを把持するワーク把持部51と、付加加工用ヘッド61およびワーク把持部51を装着可能なロボットアーム31とを備える。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
材料を付着することによってワークに3次元形状を作成するものとして、付加加工法(Additive manufacturing)がある。他方、材料を除去することによってワークに3次元形状を作成するものとして、除去加工法(Subtractive manufacturing)がある。付加加工では、加工前後でワークの質量が増加し、除去加工では、加工前後でワークの質量が減少する。それぞれの加工法の特性を生かして、付加加工および除去加工を組み合わせ、ワークの最終的な形状を得る加工が行われる。
【0006】
しかしながら、付加加工と除去加工とでは、別々の加工用具が用いられるため、ワークの加工工程が付加加工および除去加工の間で移行する際に時間を要する。ワークの加工開始から終了までの全体の加工時間を短縮し、加工機械の生産性を向上させるには、この移行時間を短くすることが求められる。また同時に、そのような加工機械の生産性を向上させるための手段は、新たな設備の追加を抑えて、簡易な構成で実現することが求められる。
【0007】
そこでこの発明の目的は、上記の課題を解決することであり、簡易な構成で、生産性の向上が図られる加工機械を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明に従った加工機械は、ワークの除去加工および付加加工が可能な加工機械である。加工機械は、加工エリア内に設けられ、ワークを保持するワーク保持部と、加工エリア内に設けられ、ワークの除去加工のための工具を保持する工具保持部と、ワークの付加加工時に材料を吐出する付加加工用ヘッドと、加工エリアの内外の間におけるワークの搬送時にワークを把持するワーク把持部と、付加加工用ヘッドおよびワーク把持部を装着可能なロボットアームとを備える。
【0009】
このように構成された加工機械によれば、ワークの付加加工時に材料を吐出する付加加工用ヘッドと、加工エリアの内外の間におけるワークの搬送時にワークを把持するワーク把持部とを装着可能なロボットアームを設けることによって、簡易な構成で、加工機械の生産性の向上を図ることができる。
【0010】
また好ましくは、付加加工用ヘッドおよびワーク把持部は、ロボットアームに着脱可能に設けられる。付加加工用ヘッドは、ワークの付加加工時にロボットアームに装着される。ワーク把持部は、加工エリアの内外の間におけるワークの搬送時にロボットアームに装着される。
【0011】
このように構成された加工機械によれば、ワークの搬送および付加加工に応じて、ロボットアームに付加加工用ヘッドおよびワーク把持部のいずれか一方を装着するため、ロボットアームの体格を小さくすることができる。
【0012】
また好ましくは、加工機械は、加工エリア外に設けられ、付加加工用ヘッドを格納可能なストッカ部をさらに備える。
【0013】
このように構成された加工機械によれば、除去加工時、付加加工用ヘッドを加工エリアから退避させることができる。
【0014】
また好ましくは、付加加工用ヘッドは、ワークに対して材料粉末の吐出とともにレーザ光を照射することにより付加加工を行なう。付加加工用ヘッドは、ロボットアームに装着される本体部と、レーザ光を出射するとともに、ワークにおけるレーザ光の照射領域を規定し、本体部に着脱可能に設けられるレーザ光出射部とを有する。ストッカ部には、規定するレーザ光の照射領域が互いに異なる複数のレーザ光出射部が格納される。
【0015】
このように構成された加工機械によれば、ワークの付加加工に応じて、適当なレーザ光出射部を本体部を介してロボットアームに装着することができる。
【0016】
また好ましくは、加工機械は、負圧を発生させる負圧発生源に接続され、ロボットアームに装着可能な吸引ノズルをさらに備える。
【0017】
このように構成された加工機械によれば、吸引ノズルを装着するロボットアームを動作させることにより、付加加工時、加工エリア内で生じた材料屑等を吸引することができる。
【0018】
また好ましくは、ロボットアームは、加工エリアの内外の間で移動可能な移動機構部と、移動機構部に支持される基部と、基部に回動可能に連結され、付加加工用ヘッドおよびワーク把持部を装着可能なアーム部とを有する。
【0019】
このように構成された加工機械によれば、付加加工時、ワークに対して付加加工用ヘッドをアプローチさせる際の自由度を向上させることができる。
【0020】
また好ましくは、ワーク保持部は、ワークを回転させる主軸台またはワークが固定されるテーブルである。
【0021】
このように構成された加工機械によれば、ロボットアームに装着されたワーク把持部により、加工エリア内の主軸台またはテーブルと、加工エリア外との間で、ワークを搬送することができる。
【0022】
また好ましくは、工具保持部は、工具が固定される刃物台または工具を回転させる工具主軸である。
【0023】
このように構成された加工機械によれば、刃物台または工具主軸を備える加工機械において、上述のいずれかに記載の効果を奏することができる。
【発明の効果】
【0024】
以上に説明したように、この発明に従えば、簡易な構成で、生産性の向上が図られる加工機械を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
この発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。なお、以下で参照する図面では、同一またはそれに相当する部材には、同じ番号が付されている。
【0027】
(実施の形態1)
図1は、この発明の実施の形態1における加工機械を示す正面図である。
図1中には、加工機械の外観をなすカバー体を透視することにより、加工機械の内部が示されている。
【0028】
図1を参照して、加工機械100は、ワークの付加加工(AM(Additive manufacturing)加工)と、ワークの除去加工(SM(Subtractive manufacturing)加工)とが可能なAM/SMハイブリッド加工機である。加工機械100は、SM加工の機能として、固定工具を用いた旋削機能と、回転工具を用いたミーリング機能とを有する。
【0029】
まず、加工機械100の全体構造について説明すると、加工機械100は、ベッド141と、第1主軸台111と、第2主軸台116と、工具主軸121と、下刃物台131とを有する。
【0030】
ベッド141は、第1主軸台111、第2主軸台116、工具主軸121および下刃物台131を支持するためのベース部材であり、工場などの据付け面に設置されている。
【0031】
第1主軸台111および第2主軸台116は、水平方向に延びるZ軸方向において、互いに対向して設けられている。第1主軸台111および第2主軸台116は、それぞれ、固定工具を用いた旋削加工時にワークを回転させるための主軸112および主軸117を有する。主軸112は、Z軸に平行な中心軸201を中心に回転可能に設けられ、主軸117は、Z軸に平行な中心軸202を中心に回転可能に設けられている。主軸112および主軸117には、ワークを着脱可能に保持するためのチャック機構が設けられている。
【0032】
工具主軸(上刃物台)121は、回転工具を用いたミーリング加工時に回転工具を回転させる。工具主軸121は、鉛直方向に延びるX軸に平行な中心軸203を中心に回転可能に設けられている。工具主軸121には、回転工具を着脱可能に保持するためのクランプ機構が設けられている。
【0033】
工具主軸121は、図示しないコラム等によりベッド141上に支持されている。工具主軸121は、コラム等に設けられた各種の送り機構や案内機構、サーボモータなどにより、X軸方向、水平方向に延び、Z軸方向に直交するY軸方向、およびZ軸方向に移動可能に設けられている。工具主軸121に装着された回転工具による加工位置は、3次元的に移動する。工具主軸121は、さらに、Y軸に平行な中心軸を中心に旋回可能に設けられている。
【0034】
なお、
図1中には示されていないが、第1主軸台111の周辺には、工具主軸121に装着された工具を自動交換するための自動工具交換装置と、工具主軸121に装着する交換用の工具を収容する工具マガジンとが設けられている。
【0035】
下刃物台131は、旋削加工のための複数の固定工具を装着する。下刃物台131は、いわゆるタレット形であり、複数の固定工具が放射状に取り付けられ、旋回割り出しを行なう。
【0036】
より具体的には、下刃物台131は、旋回部132を有する。旋回部132は、Z軸に平行な中心軸204を中心に旋回可能に設けられている。中心軸204を中心にその周方向に間隔を隔てた位置(本実施の形態では、10箇所)には、固定工具を保持するための工具ホルダが取り付けられている。旋回部132が中心軸204を中心に旋回することによって、工具ホルダに保持された固定工具が周方向に移動し、旋削加工に用いられる固定工具が割り出される。
【0037】
下刃物台131は、図示しないサドル等によりベッド141上に支持されている。下刃物台131は、サドル等に設けられた各種の送り機構や案内機構、サーボモータなどにより、X軸方向およびZ軸方向に移動可能に設けられている。
【0038】
加工機械100は、側面カバー142をさらに有する。側面カバー142は、第2主軸台116に対して第1主軸台111の反対側に設けられている。側面カバー142により、加工エリア200と外部エリア205との間が隔てられている。加工エリア200には、第1主軸台111、第2主軸台116、工具主軸121および下刃物台131が配置されている。側面カバー142には、開閉可能なシャッタ143が設けられている。
【0039】
図2は、
図1中の加工機械において、ストッカ部に格納されたワーク、ワーク把持部および付加加工用ヘッドを示す斜視図である。
図1および
図2を参照して、加工機械100は、ストッカ部156と、ワーク把持部51と、付加加工用ヘッド61とをさらに有する。
【0040】
ストッカ部156は、外部エリア205に配置されている。ストッカ部156は、ワーク41、ワーク把持部51および付加加工用ヘッド61を格納可能なテーブルとして設けられている。なお、ストッカ部156は、ワーク41、ワーク把持部51および付加加工用ヘッド61を格納可能なものであれば特に限定されず、たとえば、車輪を備えたワゴンや、棚であってもよい。
【0041】
ワーク把持部51は、加工エリア200および外部エリア205の間におけるワークの搬送時にワークを把持する。
図2中に示されるワーク把持部51は、同時に1つのワークを把持可能なシングルアームタイプである。付加加工用ヘッド61は、ワークに対して材料粉末の吐出とともにレーザ光を照射することにより付加加工を行なう(指向性エネルギ堆積法(Directed Energy Deposition))。
【0042】
加工機械100は、付加加工用ヘッド61およびワーク把持部51が装着可能なロボットアーム31をさらに有する。本実施の形態では、付加加工用ヘッド61およびワーク把持部51が、ロボットアーム31に着脱可能に設けられている。
【0043】
ワーク把持部51の構造について具体的に説明すると、ワーク把持部51は、一対の把持用爪部52と、ベース部53と、連結部54とを有する。
【0044】
連結部54は、ワーク把持部51と、後述するロボットアーム31の連結部36との接点をなす連結機構として設けられている。連結部54は、ベース部53に設けられている。ワーク把持部51は、連結部54によってロボットアーム31に着脱可能に設けられている。
【0045】
ベース部53には、一対の把持用爪部52が設けられている。一対の把持用爪部52は、ベース部53に対して連結部54の反対側に設けられている。一対の把持用爪部52は、互いに対向して設けられ、互いが近接する方向に移動することによってワーク41を把持する。ベース部53は、一対の把持用爪部52を、これらの近接方向および離間方向にスライド可能なように支持している。
【0046】
付加加工用ヘッド61の構造について具体的に説明すると、付加加工用ヘッド61は、本体部62と、レーザ光出射部65と、連結部63と、接続部64とを有する。
【0047】
連結部63は、付加加工用ヘッド61と、後述するロボットアーム31の連結部36との接点をなす連結機構として設けられている。連結部63は、本体部62に設けられている。付加加工用ヘッド61(本体部62)は、連結部63によってロボットアーム31に着脱可能に設けられている。
【0048】
本体部62は、L字に折れ曲がった形状を有する。本体部62には、レーザ光出射部65および接続部64が設けられている。レーザ光出射部65および接続部64は、それぞれ、L字形状の本体部62の一方端および他方端に設けられている。本体部63には、コリメーションレンズや反射鏡等が内蔵されており、接続部64からレーザ光出射部65に向けてレーザ光が導かれる。レーザ光出射部65には、開口部66が形成されており、その開口部66を通じてレーザ光が出射され、材料粉末が吐出される。レーザ光出射部65には、光学部品68が内蔵されている。光学部品68は、レーザ光をワーク上に集光するための部品(集光レンズやミラー等)であり、ワークにおけるレーザ光の照射領域を定めている。開口部66は、光学部品68からワークに向かうレーザ光が通過可能な開口形状を有する。
【0049】
図1中に示すように、加工機械100は、材料粉末供給装置70と、レーザ発振装置76と、管部材73とをさらに有する。材料粉末供給装置70およびレーザ発振装置76は、外部エリア205に配置されている。材料粉末供給装置70は、付加加工に用いられる材料粉末を貯留する材料粉末タンク72と、材料粉末とキャリアガスとを混合する混合部71とを有する。レーザ発振装置76は、付加加工に用いられるレーザ光を発振する。管部材73には、レーザ発振装置76からのレーザ光を付加加工用ヘッド61に向けて導くための光ファイバと、材料粉末供給装置70より供給された材料粉末を付加加工用ヘッド61に向けて導くための配管とが収容されている。
【0050】
管部材73は、材料粉末供給装置70およびレーザ発振装置76から付加加工用ヘッド61まで配索されており、その先端で付加加工用ヘッド61の接続部64に接続されている。材料粉末供給装置70およびレーザ発振装置76からの材料粉末およびレーザ光は、管部材73を通じて付加加工用ヘッド61に導入される。なお、図示されていないが、エア供給源からロボットアーム31に向けてエア供給用のチューブが配索されている。
【0051】
なお、加工機械100によって実行される付加加工は、上述の指向性エネルギ堆積法に限られず、たとえば、ワークに溶融した熱可塑性樹脂を積層して3次元形状を作成する材料押出法や、粉末床の表面付近を熱により選択的に溶融・固化して積層する粉末床溶融結合法であってもよい。
【0052】
図3は、
図1中の加工機械が備えるロボットアームを示す斜視図である。
図1から
図3を参照して、ロボットアーム31の構造について具体的に説明すると、ロボットアーム31は、移動機構部21と、基部32と、アーム部33と、連結部36とを有する。
【0053】
移動機構部21は、加工エリア200および外部エリア205の間で移動可能に設けられている。移動機構部21は、ロボットアーム31を、加工エリア内位置31Aと、加工エリア外位置31Bとの間で移動させる。ロボットアーム31は、開状態とされたシャッタ143を通じて、加工エリア内位置31Aおよび加工エリア外位置31Bの間を移動する。
【0054】
移動機構部21は、ロボットアーム31を直線往復移動させるための機構として、ベース部材23、リニアガイド22、ラックピニオン25、サーボモータ(不図示)および支柱24を有する。
【0055】
ベース部材23は、プレート材からなり、基部32およびサーボモータが取り付けられている。リニアガイド22およびラックピニオン25は、支柱24によって、加工機械100の据え付け面から一定の高さに設けられている。リニアガイド22は、ベース部材23をZ軸に平行な方向に案内する案内機構として設けられている。ラックピニオン25は、サーボモータから出力された回転を直線運動に変換して、ベース部材23をZ軸方向に移動させる。
【0056】
基部32は、移動機構部21により支持されている。基部32は、移動機構部21から鉛直下方向に突出する形状を有する。アーム部33は、基部32に対して、回動軸211を中心に回動可能に連結されている。
図3中において、回動軸211は、Y軸に平行な方向に延びる。連結部36は、アーム部33の先端に設けられている。
【0057】
アーム部33は、基部32から連結部36に向けてアーム状に延出する形状を有する。アーム部33の一方端および他方端には、それぞれ、基部32および連結部36が設けられている。アーム部33は、回動軸211に直交する平面内でアーム状に延出する形状を有する。アーム部33は、
図3中の矢印221に示すように、回動軸211を支点にして揺動する。アーム部33の揺動に伴って、連結部36の位置が回動軸211に直交する平面内で移動する。
【0058】
連結部36は、ロボットアーム31と、前述のワーク把持部51の連結部54および付加加工用ヘッド61の連結部63との接点をなす連結機構として設けられている。
【0059】
アーム部33は、第1可動部33L、第2可動部33Mおよび第3可動部33Nから構成されている。
【0060】
第1可動部33Lは、基部32に対して、回動軸211(第1回動軸)を中心に回動可能に連結されている。第1可動部33Lは、基部32から、回動軸211に直交する方向にアーム状に延出する形状を有する。第1可動部33Lは、
図3中の矢印221に示すように、回動軸211を支点にして揺動する。
【0061】
第2可動部33Mは、第1可動部33Lに対して、回動軸212(第2回動軸)を中心に回動可能に連結されている。回動軸212は、回動軸211に平行な方向に延びる。第2可動部33Mは、基部32からアーム状に延出する第1可動部33Lの先端に連結されている。第2可動部33Mは、第1可動部33Lから、回動軸212に直交する方向にアーム状に延出する。第2可動部33Mは、
図3中の矢印222に示すように、回動軸212を支点にして揺動する。
【0062】
第3可動部33Nは、第2可動部33Mに対して、回動軸213(第3回動軸)を中心に回動可能に連結されている。回動軸213は、回動軸211および回動軸212に平行な方向に延びる。第3可動部33Nは、第1可動部33Lからアーム状に延出する第2可動部33Mの先端に連結されている。第3可動部33Nは、第2可動部33Mから、回動軸213に直交する方向にアーム状に延出する。第3可動部33Nは、
図3中の矢印223に示すように、回動軸213を支点にして揺動する。
【0063】
基部32は、
図3中の矢印224に示すように、回転軸214(第1回転軸)を中心に回転可能に設けられている。回転軸214は、回動軸211に直交する方向に延びる。回転軸214は、鉛直方向に延びる。
【0064】
第2可動部33Mは、回転軸215(第2回転軸)の軸線方向に沿ってアーム状に延びている。第2可動部33Mは、
図3中の矢印225に示すように、回転軸215を中心に回転可能に設けられている。回転軸215は、回動軸212に直交する方向に延びる。第3可動部33Nは、回転軸216(第3回転軸)の軸線方向に沿ってアーム状に延びている。第3可動部33Nは、
図3中の矢印226に示すように、回転軸216を中心に回転可能に設けられている。回転軸216は、回動軸213に直交する方向に延びる。
【0065】
このような構成により、ロボットアーム31は、6軸(回動軸211〜213および回転軸214〜216)を互いに独立して制御可能なロボットアームとして設けられている。
【0066】
なお、本実施の形態では、6軸制御可能なロボットアーム31について説明したが、6軸以外の多軸制御可能なロボットアームであってもよい。また、本実施の形態では、ロボットアーム31が直動機構(移動機構部21)を備えるが、このような直動機構を備えないロボットアームであってもよいし、複数軸(代表的には、3軸)の直動機構のみから構成されるロボットアームであってもよい。
【0067】
図1および
図2を参照して、本実施の形態では、加工エリア200および外部エリア205の間におけるワークの搬送時に、ワーク把持部51がロボットアーム31に装着される。たとえば、ストッカ部156に格納されたワーク41を外部エリア205から加工エリア200に搬送し、第1主軸台111に装着する場合を想定する。
【0068】
まず、ロボットアーム31を動作させることによって、ストッカ部156に格納されたワーク把持部51をロボットアーム31に装着する。ロボットアーム31を動作させることによって、ストッカ部156に格納されたワーク41を、ワーク把持部51により把持する。
【0069】
次に、ロボットアーム31を外部エリア205から加工エリア200に移動させることにより、ワーク41を加工エリア200に進入させる。ロボットアーム31を動作させることによって、把持したワーク41を第1主軸台111の主軸112に接近させる。ワーク41が主軸112に対して所定位置に位置決めされたら、ワーク41を主軸112にチャッキングする。ワーク41がチャッキングされたタイミングで、ワーク把持部51によるワーク41の把持を解除する。最後に、ロボットアーム31を加工エリア200から外部エリア205に退避させる。
【0070】
また、本実施の形態では、ワークの付加加工時に、付加加工用ヘッド61がロボットアーム31に装着される。たとえば、第1主軸台111に装着されたワーク41に対して付加加工を実施する場合を想定する。
【0071】
図4は、
図1中の加工機械において、付加加工時の加工エリア内の様子を示す斜視図である。
図1、
図2および
図4を参照して、まず、ロボットアーム31を動作させることによって、ストッカ部156に格納された付加加工用ヘッド61をロボットアーム31に装着する。
【0072】
次に、ロボットアーム31を外部エリア205から加工エリア200に移動させることにより、付加加工用ヘッド61を加工エリア200に進入させる。ロボットアーム31を動作させることによって、付加加工用ヘッド61を第1主軸台111に装着されたワーク41に接近させる。
【0073】
図5は、
図4中の2点鎖線Vで囲まれた範囲を拡大して示す断面図である。
図4および
図5を参照して、ロボットアーム31の動作および/または主軸112の回転によって、開口部66の開口面をワーク41の表面に対面させたまま、付加加工用ヘッド61をワーク41に対して走査する。このとき、付加加工用ヘッド61の開口部66からワーク41に向けて、レーザ光311と、材料粉末312と、シールドおよびキャリア用のガス313とが吐出される。これにより、ワーク41の表面に溶融点314が形成され、その結果、材料粉末312が溶着する。
【0074】
具体的には、ワーク41の表面に肉盛層316が形成される。肉盛層316上には、肉盛素材315が盛られる。肉盛素材315が冷却されると、ワーク41の表面に加工可能な層が形成された状態となる。なお、レーザ光311に替えて、電子ビームが用いられてもよい。材料粉末としては、アルミニウム合金およびマグネシウム合金等の金属粉末や、セラミック粉末を利用することができる。
【0075】
付加加工の終了後、ロボットアーム31を加工エリア200から外部エリア205に退避させる。
【0076】
図1から
図5を参照して、ワークの付加加工および除去加工が可能なAM/SMハイブリッド加工機を実現する手段として、付加加工用ヘッド61を工具主軸121に装着して付加加工を実施する構成が考えられる。しかしながら、このような構成では、付加加工時、工具主軸121に付加加工用ヘッド61を装着し、除去加工時、工具主軸121に除去加工用の回転工具を装着する必要がある。このため、ワークの加工工程が付加加工および除去加工の間で移行する際の時間が長くなる。
【0077】
これに対して、本実施の形態における加工機械100では、ロボットアーム31に付加加工用ヘッド61を装着してワークの付加加工を行なうため、付加加工から直ちに除去加工に移行することが可能であり、除去加工から直ちに付加加工に移行することが可能である。この際、付加加工用ヘッド61の装着に、ワーク搬送用に設備されたロボットアーム31が利用されるため、簡易な構成で、上記移行時間の短縮を図ることができる。
【0078】
なお、本実施の形態では、付加加工用ヘッド61およびワーク把持部51のいずれか一方が選択的に装着されるロボットアーム31の構成について説明したが、ロボットアーム31は、付加加工用ヘッド61およびワーク把持部51の双方が装着される構造を有してもよい。この場合、付加加工用ヘッド61およびワーク把持部51は、ロボットアーム31に対して着脱可能に設けられなくてもよい。
【0079】
図6は、
図3中のロボットアームの利用に関する第1展開例を示す斜視図である。
図6を参照して、ロボットアーム31には、付加加工により加工エリア200に生じた材料粉末の屑を回収するための吸引ノズル81が装着されてもよい。
【0080】
吸引ノズル81は、ホース部82および連結部83を有する。ホース部82は、負圧を発生させる負圧発生源(不図示)に接続されている。連結部83は、吸引ノズル81と、ロボットアーム31の連結部36との接点をなす連結機構として設けられている。
【0081】
図7は、
図3中のロボットアームの利用に関する第2展開例を示す斜視図である。
図7を参照して、材料粉末供給装置70の材料粉末タンク72は、混合部71から上方に延出し、その先端で開口する筒形状を有する。材料粉末タンク72は、その開口部を通じて材料粉末を補充可能な構成とされている。
【0082】
ロボットアーム31に装着されたワーク把持部51を用いて、材料粉末タンク72への材料粉末の補充を行なってもよい。具体的には、ロボットアーム31に装着されたワーク把持部51により、材料粉末が収められた容器86を把持する。ロボットアーム31を動作させることによって、容器86から材料粉末タンク72に材料粉末を補充する。
【0083】
図8は、
図2中の付加加工用ヘッドの変形例を示す斜視図である。
図8を参照して、本変形例では、レーザ光出射部65が、本体部62に着脱可能に設けられている。ストッカ部156(
図1を参照のこと)には、互いに異なる種類の光学部品68を内蔵する複数のレーザ光出射部65(65A,65B,65C,65D)が格納されている。光学部品68の種類によって、ワークにおけるレーザ光の照射領域の形状(たとえば、円領域または矩形領域)や、大きさ(たとえば、φ2mmまたはφ4mm)が異なる。付加加工用ヘッド61が装着されたロボットアーム31を動作させることによって、本体部62に、実行する付加加工に適した光学部品68を内蔵するレーザ光出射部65を装着する。
【0084】
以上に説明した、この発明の実施の形態1における加工機械100の構造についてまとめて説明すると、本実施の形態における加工機械100は、ワークの除去加工および付加加工が可能な加工機械である。加工機械100は、加工エリア200内に設けられ、ワークを保持するワーク保持部としての第1主軸台111および第2主軸台116と、加工エリア200内に設けられ、ワークの除去加工のための工具を保持する工具保持部としての工具主軸121および下刃物台131と、ワークの付加加工時に材料を吐出する付加加工用ヘッド61と、加工エリア200の内外の間におけるワークの搬送時にワークを把持するワーク把持部51と、付加加工用ヘッド61およびワーク把持部51を装着可能なロボットアーム31とを備える。
【0085】
このように構成された、この発明の実施の形態1における加工機械100によれば、簡易な構成で、ワークの加工工程が付加加工および除去加工の間で移行する際に要する時間の短縮化し、生産性の向上を図ることができる。
【0086】
本実施の形態では、旋削機能とミーリング機能とを有する複合加工機をベースにAM/SMハイブリッド加工機を構成した場合について説明したが、このような構成に限られず、旋削機能を有する旋盤またはミーリング機能を有するマシニングセンタをベースにAM/SMハイブリッド加工機を構成してもよい。マシニングセンタをベースにAM/SMハイブリッド加工機を構成する場合、加工エリア内でワークを保持するワーク保持部として、テーブルが用いられる。
【0087】
(実施の形態2)
本実施の形態では、実施の形態1における加工機械100を用いて、ワークの付加加工および除去加工を行なう加工方法の一例について説明する。
【0088】
図9は、付加加工および除去加工に伴って変化するワークの形態を示す図である。
図9を参照して、まず、母材42を準備する。母材42は、円盤形状を有する。次に、付加加工により、母材42の端面上に肉盛部43が形成された中間加工物46を得る。肉盛部43は、円柱形状を有する。次に、除去加工により、肉盛部43の外周面にネジ部44を形成する。最後に、母材42および肉盛部43の間を分離することにより、ネジ部44が形成された最終製品47を得る。
【0089】
図10から
図18は、この発明の実施の形態2における加工方法の工程を模式的に表す図である。
【0090】
図10を参照して、加工エリア200において、第1主軸台111には、母材42が装着されている。外部エリア205において、ストッカ部156には、先の工程で準備された中間加工物46Aと、ワーク把持部51と、付加加工用ヘッド61とが格納されている。本実施の形態では、ワーク把持部51が、同時に2つのワークを把持可能なダブルアームタイプであり、一対の把持用爪部52Pおよび一対の把持用爪部52Qを有する。
【0091】
まず、ロボットアーム31を動作させることによって、ストッカ部156に格納された付加加工用ヘッド61をロボットアーム31に装着する。
【0092】
図11を参照して、次に、ロボットアーム31を外部エリア205から加工エリア200に移動させる。ロボットアーム31を動作させることによって、付加加工用ヘッド61を第1主軸台111に装着された母材42に接近させる。付加加工用ヘッド61によって、母材42の端面上に肉盛部43を形成する。これにより、中間加工物46Bを得る。
【0093】
図12を参照して、次に、ロボットアーム31を加工エリア200から外部エリア205に移動させる。ロボットアーム31を動作させることによって、付加加工用ヘッド61をストッカ部156に格納し、替わりに、ストッカ部156に格納されたワーク把持部51をロボットアーム31に装着する。
【0094】
図13を参照して、次に、ロボットアーム31を動作させることによって、ワーク把持部51の把持用爪部52Pにより中間加工物46Aを把持する。
【0095】
図14を参照して、次に、ロボットアーム31を外部エリア205から加工エリア200に移動させる。ロボットアーム31を動作させることによって、ワーク把持部51を第1主軸台111に装着された中間加工物46Bに接近させつつ、ワーク把持部51の把持用爪部52Qにより中間加工物46Bを把持する。把持用爪部52Pおよび把持用爪部52Qを反転させることにより、第1主軸台111に装着されるワークを、中間加工物46Bから中間加工物46Aに入れ替える。
【0096】
図15を参照して、次に、ロボットアーム31を加工エリア200から外部エリア205に移動させる。ロボットアーム31を動作させることによって、中間加工物46Bをストッカ部156に格納する。
図11において説明した付加加工により高温となった中間加工物46Bは、
図14において説明した次回のワーク交換工程までストッカ部156において冷却される。ロボットアーム31をシャッタ143手前の位置(
図16中に示す位置)に待機させておく。
【0097】
一方、加工エリア200においては、ロボットアーム31が外部エリア205に退避し、シャッタ143が閉じられたら、中間加工物46Aの肉盛部43にネジ部44を形成するための除去加工を開始する。本実施の形態では、ロボットアーム31に付加加工用ヘッド61を装着してワークの付加加工を行なう。このため、予め除去加工用の工具を装着した状態で下刃物台131または工具主軸121を待機させておくことが可能であり、付加加工から除去加工に移行する時間を短縮することができる。
【0098】
図16を参照して、主軸112および主軸117の回転を同期させながら、第1主軸台111および第2主軸台116を接近させる。主軸117により、中間加工物46Aの肉盛部43の端部をチャッキングする。中間加工物46Aの両端が第1主軸台111および第2主軸台116により保持された状態で、母材42および肉盛部43の間を分離するための除去加工(突っ切り加工)を行なう。これにより、第1主軸台111に母材42が残り、第2主軸台116に最終製品47が残る。
【0099】
除去加工時、加工エリア200は、切削油の雰囲気下に置かれる。本実施の形態では、除去加工の間、付加加工用ヘッド61が外部エリア205にあるため、光学部品を備えた付加加工用ヘッド61が切削油に晒されることを防止できる。また、万が一、付加加工用ヘッド61を装着したロボットアーム31の制御に支障が生じることがあっても、その影響が加工エリア200内に及ぶことを防止できる。
【0100】
図17を参照して、次に、ロボットアーム31を外部エリア205から加工エリア200に移動させる。ロボットアーム31を動作させることによって、ワーク把持部51を第2主軸台116に装着された最終製品47に接近させつつ、ワーク把持部51により最終製品47を把持する。
【0101】
図18を参照して、次に、ロボットアーム31を加工エリア200から外部エリア205に移動させる。ロボットアーム31を動作させることによって、最終製品47をストッカ部156に格納する。ロボットアーム31を動作させることにより、ワーク把持部51をストッカ部156に格納することで、
図10において説明した工程に戻る。
【0102】
このように構成された、この発明の実施の形態2における加工機械100および加工方法によれば、実施の形態1に記載の効果を同様に奏することができる。
【0103】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。