【実施例】
【0013】
図1に示すように、実施例のインストルメントパネル10は、第1部材12と、この第1部材12の表側に設けられる第2部材14とを備える板状体であり、革等の表皮材で覆われた状態を模して意匠面が形成されている。また、インストルメントパネル10の意匠面には、表皮材を糸で縫った際に表側に現れる糸目を表現した疑似的なステッチ模様16が設けられている。ここで、インストルメントパネル10には、助手席側のエアバッグ装置18の配設位置に対応して、ステッチ模様16が助手席の前方位置に設けられている。ステッチ模様16は、ほぼ四辺形状に糸目が並ぶように形成され、エアバッグドア20のドアパネルの外縁となる部位に応じて設けられている。換言すると、実施例では、車両前方側の縁をヒンジ側として、車両前方側へ立ち上がるように開放する1枚の四辺形状のドアパネル22からなるエアバッグドア20に対応して、ステッチ模様16が設けられている。
【0014】
図3に示すように、前記インストルメントパネル10は、第2部材14の表面によって意匠面の大部分が構成され、第1部材12に形成されて第2部材14の表面から露出する突出部24によって、ステッチ模様16の糸目が表されている。そして、インストルメントパネル10では、第2部材14から表側に露出して糸目部として機能する突出部24の突出端と第2部材14の表面とが互いに異なる色で形成されている。すなわち、インストルメントパネル10は、表皮材を縫合する糸を模した突出部24が該糸に合わせて色が設定される一方、表皮材を模した第2部材14の表面が該表皮材に合わせて色が設定される。
【0015】
前記第1部材12は、インストルメントパネル10の裏側全体を構成し、インストルメントパネル10の剛性を担う硬質な板状体である。第1部材12は、表側が第2部材14によって被覆される平板状のベース部12aと、このベース部12aの表側に一体形成された複数の突出部24とを備えている(
図2参照)。各突出部24は、ベース部12aの表面から表側に向けて突出し、インストルメントパネル10の表側に臨む突出端が、インストルメントパネル10の平面視において糸目の1つを模した棒形状に形成される。突出部24は、複数の突出部24の並び方向に前記棒形状の長手が延在するよう形成されている。各突出部24の突出端には、細い筋状の凹凸形状が設けられ、この凹凸形状によりステッチ模様16を構成する糸目部における糸の撚り目が表されている。複数の突出部24は、突出端の長手辺を直列に並べて設けられ、長手辺の延在向きが同じ複数の突出部24により一条のステッチ模様16を構成している。ここで、複数の突出部24は、インストルメントパネル10においてエアバッグドア20のドアパネル22となる部位の外縁を囲うように並べて設けられている。インストルメントパネル10は、ほぼ四辺形のドアパネル22に合わせて、左右方向に長手辺を延在させた突出部24が左右方向に一列に並ぶ前後2条のステッチ模様16,16と、前後方向に長手辺を延在させた突出部24が前後方向に一列に並ぶ左右2条のステッチ模様16,16が設けられている(
図3参照)。
【0016】
前記突出部24は、複数の突出部24の並び方向(以下、糸並び方向という)に延びる両長手側面が、ベース部12aに連なる根元側から突出端側に向かうにつれて互いに近づくように傾いている。突出部24の長手側面は、インストルメントパネル10の表裏方向(厚み方向)を通る仮想線に対して傾いたテーパ面であり、例えば3°程度の傾斜に設定される。実施例では、突出部24が基本的に同じ長さで形成されると共に、隣り合う突出部24,24同士の間隔が基本的に一定になっている。
【0017】
図2,
図3および
図5に示すように、前記第2部材14の表面には、該第2部材14の表側に露出する突出部24の周辺部位に、該突出部24に向かうにつれて凹む陥凹部26が形成されている。第2部材14では、隣り合う突出部24,24に対応した陥凹部26が互いに繋がって、隣り合う突出部24,24の間、および突出部24の両側が凹む溝状に形成されている。そして、ステッチ模様16において、陥凹部26により突出部24がなす糸目によって第2部材14が圧縮された形状が表現される。なお、第2部材14の表面には、必要に応じてシボ加工などの模様が形成される。
【0018】
前記第1部材12および第2部材14をなす素材としては、種々のものを採用し得る。例えば、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、TPO(オレフィン系エラストマー)等のエラストマー、ポリウレタン等の発泡体など、第1部材12と第2部材14とで同じ素材にしたり、異なる素材を組み合わせたりすることができる。なお、実施例では、第1部材12がポリプロピレンからなり、第2部材14がTPOから形成される。また、実施例のインストルメントパネル10は、インジェクション二色成形で成形され、第2部材14をなす素材が硬化する際に第1部材12と接合されて、第1部材12と第2部材14とが成形時に一体化される。
【0019】
前記エアバッグドア20は、インストルメントパネル10に設けられた破断予定部28で破断して、インストルメントパネル10の一部を構成していたドアパネル22が開放するように構成される(
図2参照)。破断予定部28は、第1部材12を部分的に薄肉化することで、元の厚みのままの一般部分よりもインストルメントパネル10を脆弱化した部分である。
図5に示すように、破断予定部28は、突出部24に対応して第1部材12に形成された第1破断凹部30と、第1破断凹部30に繋がるように第1部材12に形成された第2破断凹部32とを備えている。第1破断凹部30は、突出部24の形成位置に対応して設けられ、インストルメントパネル10の裏側に開放する凹状に形成されている。また、第1破断凹部30は、第1部材12の裏面から突出部24まで達する深さで形成されている。すなわち、第1破断凹部30は、第1部材12のベース部12aにおける第2部材14に覆われる表面を越えて、表側へ突出する突出部24の内側まで凹んでいる。第1破断凹部30は、突出部24の長手側面の傾斜に合わせて壁が斜めに形成され、開口から閉塞端へ向かうにつれて細くなっている。
【0020】
図2および
図5に示すように、前記第2破断凹部32は、糸並び方向に延びる突出部24の一方の長手側面(一側面)と陥凹部26とが接する位置を該一方の長手側面に沿ってインストルメントパネル10の表裏方向へ通るライン(以下、破断ラインという)L上に設けられている。第2破断凹部32は、突出部24の一方の長手側面にだけ対応して設けられ、第1部材12における破断ラインLが通る部分を薄肉としている。そして、第1部材12は、突出部24の他方の長手側面と陥凹部26とが接する位置を該他方の側面に沿ってインストルメントパネル10の表裏方向へ通るライン上が、脆弱化されていない一般部分のままになっている。第2破断凹部32は、突出部24の根元とベース部12aの表面が交差する部位よりも底が突出部24より離れるよう、該ベース部12aの表面に沿って延在し、側壁が前記破断ラインLに沿って延在するように形成されている。また、第2破断凹部32は、側壁が前記破断ラインLから離れるように形成されている。
【0021】
図4に示すように、第1破断凹部30およびこの第1破断凹部30に繋がる第2破断凹部32は、突出部24ごとに形成され、隣り合う突出部24,24の間が薄肉化されていない一般部分となっている。すなわち、破断予定部28は、糸並び方向に互いに離間して並ぶ複数の凹部30,32によりミシン目状に構成されている。ここで、糸並び方向に並ぶ複数の第2破断凹部32は、突出部24に対して同じ側に設けられている。実施例では、第2破断凹部32がドアパネル22の内側を向く突出部24の一方の長手側面に対応して、第1部材12に設けられている。
【0022】
図2に示すように、エアバッグドア20は、インストルメントパネル10の裏面に振動溶着等で取り付けられた補強部材34により補強されている。補強部材34は、例えばTPO等の靭性が高く柔軟性に富んだ合成樹脂素材からインジェクション成形されたものが用いられる。補強部材34は、角筒状に形成されて、エアバッグドア20となる部位の外周を囲うように第1部材12の裏面に接合される本体部36と、第1部材12におけるドアパネル22となる部位の裏面に接合されるパネル支持部38とを備えている。本体部36とパネル支持部38との間には、ヒンジ部40が架設され、ドアパネル22がパネル支持部38を介してヒンジ部40で支持されたもとで開放するようになっている。また、補強部材34には、エアバッグ装置18が配設される。
【0023】
次に、実施例に係るインストルメントパネル10の製造方法について、
図6を参照して説明する。実施例では、インストルメントパネル10が、第1部材12の裏面を規定する共通型52を共用する所謂二色成形によって製造される。実施例で用いられる成形装置50は、第1位置と第2位置との間で移動可能に設けられた共通型52と、第1位置にある共通型52に相対するように配置され、該共通型52に対して進退移動する第1型54と、第2位置にある共通型52に相対するように配置され、該共通型52に対して進退移動する第2型56とを備えている。共通型52の成形面には、第1破断凹部30および第2破断凹部32に合わせて凸状部52aが設けられている。また、第1型54の成形面には、突出部24に合わせて凹状部54aが設けられている。なお、凹状部54aの閉塞端には、細かい筋状の凹凸(図示せず)が設けられて、第1部材12の成形と同時に突出部24の突出端に糸の撚り目を模した凹凸形状を付すようになっている。共通型52と第1型54とを型閉めすることで、共通型52と第1型54との間に前記第1部材12に合わせた第1キャビティ58が画成される(
図6(a))。第1キャビティ58に第1部材12の素になる第1樹脂原料を圧力をかけつつ注入するインジェクション成形を行う。これにより、第1部材12の裏側が共通型52の成形面で規定される一方、第1部材12の表側が第1型54で規定され、複数の突出部24が表側に形成されると共に第1破断凹部30および第2破断凹部32が裏側に形成された第1部材12が得られる。
【0024】
前記共通型52において凸状部52aを破断凹部30,32に嵌め合わせて保持した状態で、共通型52に第1部材12が残った状態になるように第1型54を外す(
図6(b))。共通型52を移動して第2型56に対向配置し(
図6(c))、共通型52と第2型56とを型閉めすることで、共通型52と第2型56との間に前記第2部材14に合わせた第2キャビティ60が画成される(
図6(d))。第2型56の成形面には、突出部24に合わせて該突出部24の突出端をシールする凹状のシール面56aが設けられると共に、このシール面56aの周りに陥凹部26をなす突起部56bが設けられている。なお、シール面56aには、細かい筋状の凹凸(図示せず)が設けられて、第1部材12の成形と同時に形成された突出部24の突出端の凹凸に噛み合うようになっている。そして、第2部材14の表側を第2型56で規定すると共に、突出部24の突出端部をシール面56aでシールした状態で、第2キャビティ60に第2樹脂原料を注入し、第2部材14をインジェクション成形する(
図6(c))。第2樹脂原料を第2キャビティ60内で硬化させることで、陥凹部26を備えた第2部材14が成形される。このように、二色成形により、意匠面に突出部24が露出すると共に、突出部24に合わせて破断予定部28が形成されたインストルメントパネル10が得られる。
【0025】
〔実施例の作用〕
次に、実施例に係るエアバッグドア20の作用について説明する。エアバッグ装置18が作動すると膨張するエアバッグ42にインストルメントパネル10が裏側から押し上げられ、破断予定部28に力がかかる。ここで、インストルメントパネル10は、該インストルメントパネル10における第1部材12の突出部24と第2部材14の陥凹部26とが接する位置を通る破断ラインLにおいて、第1破断凹部30に繋がる第2破断凹部32により第1部材12を破断する距離が短くなっている。すなわち、破断予定部28の中で最も脆弱な第2破断凹部32からインストルメントパネル10(第1部材12)の破断を開始させることができる。また、第2破断凹部32は、突出部24の一方の長手側面と陥凹部26とが接する位置を該一方の長手側面に沿って通る破断ラインL上に設けられているので、エアバッグ装置18が作動した際にインストルメントパネル10にかかる力を突出部24の一方の長手側面に沿って作用させることができる。これにより、インストルメントパネル10を突出部24の一方の長手側面に沿って破断して、ドアパネル22をスムーズに開放することができる。しかも、第2部材14は、突出部24に向かうにつれて凹む陥凹部26により、突出部24と接する位置が脆弱化されているので、インストルメントパネル10の破断に際する第2部材14の影響をより小さくすることができる。インジェクション二色成形によって破断予定部28を構成する第1破断凹部30および第2破断凹部32を形成することで、第1破断凹部30および第2破断凹部32が第1部材12だけに設けられる。第1破断凹部30および第2破断凹部32が第1部材12だけに設けられていても、前述のようにエアバッグドア20は、エアバッグ装置18の作動時にドアパネル22をスムーズに開放できるので、エアバッグドア20に求められる所定の展開性能を確保することができる。すなわち、インジェクション二色成形時に第1破断凹部30および第2破断凹部32を併せて形成して、ミリング加工やレーザー加工などのように第1部材12を成形した後の加工を省くことができ、破断予定部28の加工工数の増加を抑えることができる。
【0026】
前記突出部24の一方の長手側面は傾斜形成されているので、エアバッグ装置18の作動に伴う第1部材12における破断予定部28での破断の伝播をより安定させることができ、ドアパネル22の開放をよりスムーズにできる。また、第2破断凹部32は、突出部24においてドアパネル22の内側を向く長手側面に対応して設けられているので、突出部24をインストルメントパネル10側に残してドアパネル22を開放させることができる。これにより、第1部材12において破断を予定していない部位に亀裂が入るなどを防止でき、破断予定部28においてより安定した破断を達成できる。
【0027】
前記エアバッグドア20は、該エアバッグドア20の外縁部に設けられて、突出部24と陥凹部26とにより表現される疑似的なステッチ模様16の部分を破断予定部28とすることができる。そして、エアバッグドア20は、第1部材12に糸目を表現する突出部24が設けられていても、第1破断凹部30と第2破断凹部32とによりドアパネル22の開放をスムーズに行うことができる。
【0028】
(変更例)
前述した構成に限定されず、例えば以下のようにも変更することができる。
(1)実施例では、シングルステッチを模したステッチ模様を示したが、ダブルステッチを模したステッチ模様のアウトステッチまたはインステッチに対応して破断予定部を設けてもよい。
(2)実施例では、突出部におけるドアパネルの内側を向く側面に対応して第2破断凹部を設けたが、突出部におけるドアパネルの外側を向く側面に対応して第2破断凹部を設ける構成であってもよい。
(3)実施例では、2層構造のインストルメントパネルを示したが、3層以上の層構造の車両内装部材にも、本発明に係るエアバッグドアを適用できる。なお、3層以上の層構造であっても、第1部材の裏面を規定する共通型を共通とする多色成形によって、車両内装部材を製造することができる。
(4)実施例では、車両内装部材としてインストルメントパネルを挙げたが、ドアトリム、ピラー、グローブボックスなどのその他のものに本発明に係るエアバッグドアを適用できる。
(5)実施例では、1枚のドアパネルからなるエアバッグドアを示したが、破断予定部により2枚のドアパネルが開放する態様や、破断予定部により4枚のドアパネルが開放する態様など、その他の態様であってもよい。
(6)実施例では、第2破断凹部が第1破断凹部に合わせて断続的に設けられているが、第2破断凹部を突出部の並び方向に連続的に設けてもよい。