【課題】 本発明は、従来の潤滑油基油であるポリ−α−オレフィン、ポリブテン、鉱物油、ポリアルキレングリコール、アルキルベンゼン、アルキルナフタレン、脂肪族ジエステルよりも粘度指数が高く、高引火点であり、且つ、低温流動性が良好な潤滑油基油を提供することを目的とする。
前記脂肪族飽和アルコールが、炭素数8〜11の脂肪族飽和アルコールであり、該脂肪族飽和アルコール中に80重量%以上の炭素数9の直鎖状脂肪族飽和アルコールと20重量%以下の炭素数9の分岐鎖状脂肪族飽和アルコールを含有し、かつ、該脂肪族飽和アルコールの直鎖率が80%以上である、請求項1に記載の潤滑油基油。
前記脂肪族飽和アルコールが、炭素数8〜11の脂肪族飽和アルコールであり、該脂肪族飽和アルコール中に75〜95重量%の炭素数9の直鎖状脂肪族飽和アルコールと5〜25重量%の炭素数9の分岐鎖状脂肪族飽和アルコールを含有し、かつ、該脂肪族飽和アルコールの直鎖率が75〜95%である、請求項1に記載の潤滑油基油。
前記脂肪族飽和アルコールが、(1)1−オクテン、一酸化炭素と水素とのヒドロホルミル化反応による炭素数9のアルデヒドを製造する工程及び(2)炭素数9のアルデヒドを水素添加してアルコールに還元する工程を具備する製造方法により製造された脂肪族飽和アルコールを含有する、請求項1〜3のいずれかに記載の潤滑油基油。
潤滑油基油が、エンジン油基油、タービン油基油、コンプレッサー油基油、チェーン油基油、油圧作動油基油、ギヤ油基油、軸受油基油又はグリース基油である、請求項1〜4のいずれかに記載の潤滑油基油。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の潤滑油基油は、特定の構造を有するトリメリット酸トリエステルを含有することを特徴とするものである。
【0018】
<トリメリット酸トリエステル>
本発明の潤滑油基油は、特定の脂肪族飽和アルコール(アルコール成分)とトリメリット酸又はその無水物(酸成分)をエステル化反応して得られるトリメリット酸トリエステルを含有することを最大の特徴としている。
本発明に係るトリメリット酸トリエステル(以下、「本エステル」ということがある。)は、所定の酸成分とアルコール成分とを常法に従って、好ましくは窒素等の不活性化ガス雰囲気下において、無触媒又は触媒の存在下でエステル化することにより容易に得られる。
【0019】
[脂肪族飽和アルコール]
本発明に係る脂肪族飽和アルコールは、該脂肪族飽和アルコール中に70重量%以上の炭素数9の直鎖状脂肪族飽和アルコールと30重量%以下の炭素数9の分岐鎖状脂肪族飽和アルコールを含有し、かつ、該脂肪族飽和アルコールの直鎖率が70%以上である炭素数8〜11の脂肪族飽和アルコールであり、好ましくは、80重量%以上の炭素数9の直鎖状脂肪族飽和アルコールと20重量%以下の炭素数9の分岐鎖状脂肪族飽和アルコールを含有し、かつ、直鎖率が80%以上である炭素数8〜11の脂肪族飽和アルコール、特に、75〜95重量%の炭素数9の直鎖状脂肪族飽和アルコールと5〜25重量%の炭素数9の分岐鎖状脂肪族飽和アルコールを含有し、かつ、直鎖率が75〜95%である炭素数8〜11の脂肪族飽和アルコールが推奨される。
【0020】
アルコール成分として、該脂肪族飽和アルコール中に70重量%以上の炭素数9の直鎖状脂肪族飽和アルコールと30重量%以下の炭素数9の分岐鎖状脂肪族飽和アルコールを含有し、かつ、該脂肪族飽和アルコールの直鎖率が70%以上である炭素数8〜11の脂肪族飽和アルコールを用いることにより、トリメリット酸トリエステルの粘度指数が高くなり、低温流動性にも優れる。
【0021】
本明細書及び特許請求の範囲において、「脂肪族飽和アルコールの直鎖率」とは、その炭素数8〜11の脂肪族飽和アルコール中に占める炭素数8〜11の直鎖状脂肪族飽和アルコールの割合(重量比)であり、具体的にはガスクロマトグラフィーで分析する方法により求めることができる。
【0022】
前記炭素数9の直鎖状脂肪族飽和アルコールは1−ノナノールであり、また、炭素数9の分岐鎖状脂肪族飽和アルコールの具体例としては、7−メチル−オクタノール、6−メチル−オクタノール、5−メチル−オクタノール、4−メチル−オクタノール、3−メチル−オクタノール、2−メチル−オクタノール、1−メチル−オクタノール、6,6−ジメチル−ヘプタノール、5,6−ジメチル−ヘプタノール、4,6−ジメチル−ヘプタノール、3,6−ジメチル−ヘプタノール、2,6−ジメチル−ヘプタノール、5,5−ジメチル−ヘプタノール、4,5−ジメチル−ヘプタノール、3,5−ジメチル−ヘプタノール、2,5−ジメチル−ヘプタノール、4,4−ジメチル−ヘプタノール、3,4−ジメチル−ヘプタノール、2,4−ジメチル−ヘプタノール、3,3−ジメチル−ヘプタノール、2,3−ジメチル−ヘプタノール、2,2−ジメチル−ヘプタノール、5−エチル−へプタノール、4−エチル−へプタノール、3−エチル−へプタノール、2−エチル−へプタノール、4,5,5−トリメチル−ヘキサノール、3,5,5−トリメチル−ヘキサノール、2,5,5−トリメチル−ヘキサノール、4,4,5−トリメチル−ヘキサノール、3,4,4−トリメチル−ヘキサノール、2,4,4−トリメチル−ヘキサノール、3,3,5−トリメチル−ヘキサノール、3,3,4−トリメチル−ヘキサノール、2,3,3−トリメチル−ヘキサノール、2,2,5−トリメチル−ヘキサノール、2,2,4−トリメチル−ヘキサノール、2,2,3−トリメチル−ヘキサノール等が例示される。
【0023】
炭素数8〜11の直鎖状脂肪族飽和アルコールとしては、具体的に炭素数の低い順に、1−オクタノール、1−ノナノール、1−デカノール、1−ウンデカノールであり、また、炭素数8〜11の分岐鎖状脂肪族飽和アルコールの具体例(炭素数9の分岐鎖状脂肪族飽和アルコールの具体例は上記と同じ)としては、6−メチル−ヘプタノール、5−メチル−ヘプタノール、4−メチル−ヘプタノール、3−メチル−ヘプタノール、2−メチル−ヘプタノール、1−メチル−ヘプタノール、5,5−ジメチル−ヘキサノール、4,5−ジメチル−ヘキサノール、3,5−ジメチル−ヘキサノール、2,5−ジメチル−ヘキサノール、4,4−ジメチル−ヘキサノール、3,4−ジメチル−ヘキサノール、2,4−ジメチル−ヘキサノール、3,3−ジメチル−ヘキサノール、2,3−ジメチル−ヘキサノール、2,2−ジメチル−ヘキサノール、4−エチル−ヘキサノール、3−エチル−ヘキサノール、2−エチル−ヘキサノール、3−エチル−4−メチル−ペンタノール基、3−エチル−3−メチル−ペンタノール、3−エチル−2−メチル−ペンタノール、2−エチル−4−メチル−ペンタノール、2−エチル−3−メチル−ペンタノール、2−エチル−2−メチル−ペンタノール等の炭素数8の分岐鎖状脂肪族飽和アルコール;8−メチル−ノナノール、7−メチル−ノナノール、6−メチル−ノナノール、5−メチル−ノナノール、4−メチル−ノナノール、3−メチル−ノナノール、2−メチル−ノナノール、1−メチル−ノナノール、7,7−ジメチル−オクタノール、6,7−ジメチル−オクタノール、5,7−ジメチル−オクタノール、4,7−ジメチル−オクタノール、3,7−ジメチル−オクタノール、2,7−ジメチル−オクタノール、6,6−ジメチル−オクタノール、5,6−ジメチル−オクタノール、4,6−ジメチル−オクタノール、3,6−ジメチル−オクタノール、2,6−ジメチル−オクタノール、5,5−ジメチル−オクタノール、4,5−ジメチル−オクタノール、3,5−ジメチル−オクタノール、2,5−ジメチル−オクタノール、4,4−ジメチル−オクタノール、3,4−ジメチル−オクタノール、2,4−ジメチル−オクタノール、3,3−ジメチル−オクタノール、2,3−ジメチル−オクタノール、2,2−ジメチル−オクタノール、6−エチル−オクタノール、5−エチル−オクタノール、4−エチル−オクタノール、3−エチル−オクタノール、2−エチル−オクタノール、5,6,6−トリメチル−ヘプタノール、4,6,6−トリメチル−ヘプタノール、3,6,6−トリメチル−ヘプタノール、2,6,6−トリメチル−ヘプタノール、5,5,6−トリメチル−ヘプタノール、4,5,5−トリメチル−ヘプタノール、3,5,5−トリメチル−ヘプタノール、2,5,5−トリメチル−ヘプタノール、4,4,6−トリメチル−ヘプタノール、4,4,5−トリメチル−ヘプタノール、3,4,4−トリメチル−ヘプタノール、2,4,4−トリメチル−ヘプタノール、3,3,6−トリメチル−ヘプタノール、3,3,5−トリメチル−ヘプタノール、3,3,4−トリメチル−ヘプタノール、2,3,3−トリメチル−ヘプタノール、2,2,6−トリメチル−ヘプタノール、2,2,5−トリメチル−ヘプタノール、2,2,4−トリメチル−ヘプタノール、2,2,3−トリメチル−ヘプタノール等の炭素数10の分岐鎖状脂肪族飽和アルコール;9−メチル−デカノール、8−メチル−デカノール、7−メチル−デカノール、6−メチル−デカノール、5−メチル−デカノール、4−メチル−デカノール、3−メチル−デカノール、2−メチル−デカノール、1−メチル−デカノール等の炭素数11の分岐鎖状脂肪族飽和アルコールなどが例示される。
【0024】
前記の炭素数8〜11の脂肪族飽和アルコールは、市販品、試薬や公知の合成方法で調製したものなどが使用できる。例えば、直鎖状脂肪族飽和アルコールの公知の合成方法としては、脂肪酸(或いはメチルエステル化物)水素還元して製造する方法や、α−オレフィンと一酸化炭素と水素とからヒドロホルミル化反応してアルデヒドとし、そのアルデヒドを水素化してアルコールに還元する方法などが例示される。
【0025】
市販品としては、「コノール 10WS」(製品名,新日本理化社製,1−オクタノール),「コノール 1098」(製品名,新日本理化社製,1−デカノール)などが例示される。また1−ノナノールが主成分である「リネボール9」(製品名,シェルケミカルズ社製,組成:70%以上の直鎖状ノナノール(即ち1−ノナノール)と30%以下の分岐鎖状ノナノール(例えば2−メチル−1−オクタノール等)の混合物)のような混合アルコールは、そのままエステル化反応に供することが可能な市販品である。
例えば、前記「リネボール9」のような炭素数9の直鎖状脂肪族飽和アルコールを主成分とする混合アルコールの製造方法としては、(1)1−オクテン、一酸化炭素と水素とのヒドロホルミル化反応による炭素数9のアルデヒドを製造する工程及び(2)炭素数9のアルデヒドを水素添加してアルコールに還元する工程を具備する製造方法により製造することができる。
前記工程(1)のヒドロホルミル化反応は、例えば、コバルト触媒又はロジウム触媒の存在下、1−オクテン、一酸化炭素及び水素を反応することにより炭素数9のアルデヒドを製造することができる。また工程(2)の水素添加は、例えば、ニッケル触媒又はパラジウム触媒等の貴金属触媒の存在下、炭素数9のアルデヒドを水素加圧化で、水素添加することによりアルコールに還元することができる。前記工程(1)と工程(2)の間や工程(2)の後に、適宜、それぞれ分離処理、吸着処理、蒸留処理等の処理工程を設けることができる。
【0026】
他方、分岐鎖状脂肪族飽和アルコールの公知の製造方法としては、例えば、プロピレンをヒドロホルミル化してブチルアルデヒドとし、それをアルドール縮合反応後に水素化して2−エチルヘキサノールを調製する方法や、イソブチレンを2量体化(2量化反応)して得られるジイソブチレンをヒドロホルミル化した後に水素化して3,5,5−トリメチル−1−ヘキサノールを製造する方法や、プロピレンを3量化反応して得られたものをヒドロホルミル化(オキソ法)した後に水素化して分岐鎖状のデカノールを製造する方法(なお該デカノールは、8−メチル−1−ノナノールを含む、メチル分枝を有する複数の異性体からなる混合物であり、このような混合物の場合には「イソデカノール」と称して分岐鎖状の脂肪族飽和アルコールを表現する。)、など挙げられる。
【0027】
換言すると、プロピレン、n−ブチレン、イソブチレンなどの低級オレフィンを出発原料として、2量化反応や3量化反応、ヒドロホルミル化反応(オキソ法)、アルドール縮合反応、水素化反応(オレフィンやアルデヒド基などの還元)等を適宜組み合わせて、比較的総炭素数の多い(炭素数8以上の)分岐鎖状の脂肪族飽和アルコールを製造する方法である。出発物質や反応方法の組み合わせによっては、単一化合物ではなく、前記「イソデカノール」のように、同じ炭素数の分岐状態が異なる分岐鎖状の脂肪族飽和アルコールの異性体の混合物となる場合もある。得られたアルコールが異性体の混合物の場合には、精留などの分離方法により当該異性体を分離して得ることも可能である。
【0028】
主な市販品としては、例えば、3−メチル−1−ヘプタノール、5−メチル−1−ヘプタノール、2−エチル−1−ヘキサノール、「オクタノール」(製品名,KHネオケム社製)、3,5,5−トリメチル−1−ヘキサノール、「ノナノール」(製品名,KHネオケム社製)、7−メチル−1−オクタノール、「オキソコール900」(製品名,KHネオケム社製)、「Diadol 9」(製品名,三菱化学社製)、「イソノナノール」(製品名,三菱化学社製)、「Exaal 9」(製品名,エクソン社製)、2−エチル−1−オクタノール、8−メチル−1−ノナノール、「デカノール」(製品名,KHネオケム社製)、などが挙げられる。
【0029】
[エステル化反応]
上記アルコール成分とトリメリット酸又はその無水物とをエステル化反応するに際し、該アルコール成分は、例えば、トリメリット酸又はその無水物1モルに対して、好ましくは3.05〜4モル、より好ましくは3.1〜3.8モル、特に3.15〜3.6モルを使用することが推奨される。
【0030】
エステル化反応に用いる触媒としては、鉱酸、有機酸、ルイス酸類等が例示される。より具体的には、鉱酸として、硫酸、塩酸、燐酸等が例示され、有機酸としては、p−トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸等が例示され、ルイス酸としては、アルミニウム誘導体、スズ誘導体、チタン誘導体、鉛誘導体、亜鉛誘導体等が例示され、これらの1種で又は2種以上を適宜組み合わせて使用することが可能である。
【0031】
それらの中でも、p−トルエンスルホン酸、炭素数3〜8のテトラアルキルチタネート、酸化チタン、水酸化チタン、炭素数3〜12の脂肪酸スズ、酸化スズ、水酸化スズ、酸化亜鉛、水酸化亜鉛、酸化鉛、水酸化鉛、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウムが特に好ましい。その使用量は、例えば、エステル合成原料である酸成分およびアルコール成分の総重量に対して、好ましくは0.01〜5重量%、より好ましくは0.02〜4重量%、特に0.03〜3重量%を使用することが推奨される。
【0032】
エステル化反応の反応温度としては100〜230℃が例示され、通常、3〜30時間程度でエステル化反応は完結する。
【0033】
本エステルの原料の酸成分である、トリメリット酸又はその無水物は、特に制約はなく、通常使用されている市販品を使用することができる。また、エステル化反応の観点から、上記トリメリット酸無水物を使用することが最も推奨される。
【0034】
またエステル化反応を促進させる為に、反応により生成する水を系外に留出させることが推奨される。当該留出を促進するために、ベンゼン、トルエン、キシレン、シクロヘキサンなどの水同伴剤を使用することが可能である。
【0035】
又、エステル化反応時に原料、生成エステル及び有機溶媒(水同伴剤)の酸化劣化により酸化物、過酸化物、カルボニル化合物などの含酸素有機化合物を生成すると耐熱性、耐候性等に悪影響を与えるため、系内を窒素ガスなどの不活性ガス雰囲気下又は不活性ガス気流下で、常圧ないし減圧下にて反応を行うことが望ましい。エステル化反応終了後、過剰の原料を減圧下または常圧下にて留去することが推奨される。
【0036】
上記エステル化方法により得られた本エステルは、引き続き、必要に応じて塩基処理(中和処理)→水洗処理、液液抽出、蒸留(減圧、脱水処理)、吸着精製処理等により精製してもよい。
【0037】
塩基処理に用いる塩基としては、塩基性の化合物であれば特に制約はなく、例えば、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウムなどが例示される。
【0038】
吸着精製に用いる吸着剤としては、活性炭、活性白土、活性アルミナ、ハイドロタルサイト、シリカゲル、シリカアルミナ、ゼオライト、マグネシア、カルシア、珪藻土などが例示される。それらを1種で又は2種以上を適宜組み合わせて使用することができる。
【0039】
上記処理は、常温で行なっても良いが、40〜90℃程度に加温して行なうこともできる。
【0040】
本エステルの酸価としては、好ましくは0.1mgKOH/g以下、より好ましくは0.05mgKOH/g以下が推奨される。酸価が0.1mgKOH/g以下のときには本エステル自身の耐熱性がより向上する傾向が認められ、このような好ましい範囲では本発明の潤滑油の耐熱酸化安定性の向上にも好影響を与える。酸価を低減する方法としては、反応を十分に進行させる方法や、後処理工程でのアルカリ成分で中和・水洗する方法(上記のアルカリ水溶液による洗浄(中和)及び水による洗浄を行う工程)などが例示される。
【0041】
本エステルの水酸基価としては、好ましくは2mgKOH/g以下、より好ましくは1mgKOH/g以下が推奨される。水酸基価が2mgKOH/g以下のときには本エステル自身の吸湿性がより低くなり、耐熱性もより向上する傾向が認められ、このような好ましい範囲では本発明の潤滑油の耐水性及び耐熱酸化安定性の向上にも好影響を与える。水酸基価を低減する方法としては、反応を十分に進行させる方法や、後処理工程でのモノアルコール成分を減圧留去する方法(上記の蒸留可能な過剰の原料等を減圧下または常圧下にて留去する工程)などが例示される。
【0042】
<潤滑油基油>
上述の通り、本発明の潤滑油基油には本エステルを含むことが必須である。
【0043】
本発明の潤滑油基油の粘度指数は、好ましくは110以上、より好ましくは120以上が推奨される。
【0044】
本発明の潤滑油基油の引火点は、好ましくは260℃以上、より好ましくは270℃以上が推奨される。
【0045】
本発明の潤滑油基油の流動点は、好ましくは−10℃以下、より好ましくは−15℃以下、特に−20℃以下が推奨される。
【0046】
本発明の潤滑油基油は、エンジン油基油、タービン油基油、コンプレッサー油基油、チェーン油基油、油圧作動油基油、ギヤ油基油、軸受油基油又はグリース基油として好適に使用できる。
【0047】
本発明の潤滑油基油は、併用基油として鉱物油(石油の精製によって得られる炭化水素油)、ポリ−α−オレフィン、ポリブテン、アルキルベンゼン、アルキルナフタレン、脂環式炭化水素油、フィッシャートロプシュ法によって得られる合成炭化水素の異性化油などの合成炭化水素油、動植物油、本エステル以外の有機酸エステル、ポリアルキレングリコール、ポリビニルエーテル、ポリフェニルエーテル、アルキルフェニルエーテル、シリコーン油などの併用基油の少なくとも1種を適宜併用することができる。
【0048】
鉱物油としては、溶剤精製鉱油、水素化精製鉱油、ワックス異性化油が挙げられるが、通常、100℃における動粘度が1.0〜25mm
2/s、好ましくは2.0〜20.0mm
2/sの範囲にあるものが用いられる。
【0049】
ポリ−α−オレフィンとしては、炭素数2〜16のα−オレフィン(例えばエチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1ーヘキサデセン等)の重合体又は共重合体であって、100℃における動粘度が1.0〜25mm
2/s、粘度指数が100以上のものが例示され、特に100℃における動粘度が1.5〜20.0mm
2/sで、粘度指数が120以上のものが好ましい。
【0050】
ポリブテンとしては、イソブチレンを重合したもの、イソブチレンをノルマルブチレンと共重合したものがあり、一般に100℃の動粘度が2.0〜40mm
2/sの広範囲のものが挙げられる。
【0051】
アルキルベンゼンとしては、炭素数1〜40の直鎖又は分岐のアルキル基で置換された、分子量が200〜450であるモノアルキルベンゼン、ジアルキルベンゼン、トリアルキルベンゼン、テトラアルキルベンゼン等が例示される。
【0052】
アルキルナフタレンとしては、炭素数1〜30の直鎖又は分岐のアルキル基で置換されたモノアルキルナフタレン、ジアルキルナフタレン等が例示される。
【0053】
動植物油としては、牛脂、豚脂、パーム油、ヤシ油、ナタネ油、ヒマシ油、ヒマワリ油等が例示される。
【0054】
有機酸エステルとしては、脂肪酸モノエステル、脂肪族二塩基酸ジエステル、脂肪族二価アルコールジエステル、ポリオールエステルなどが例示される。
【0055】
脂肪酸モノエステルとしては、炭素数5〜22の脂肪族直鎖状又は分岐鎖状モノカルボン酸と炭素数3〜22の直鎖状又は分岐鎖状の飽和若しくは不飽和の脂肪族アルコールとのエステルが挙げられる。
【0056】
脂肪族二塩基酸ジエステルとしては、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、1,9−ノナメチレンジカルボン酸、1,10−デカメチレンジカルボン酸等脂肪族二塩基酸若しくはその無水物と炭素数3〜22の直鎖状又は分岐鎖状の飽和若しくは不飽和の脂肪族アルコールとのフルエステルが挙げられる。
【0057】
脂肪族二価アルコールジエステルやポリオールエステルとしては、ネオペンチルグリコール、2,2−ジエチルプロパンジオール、2−ブチル2−エチルプロパンンジオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジトリメチロールプロパン、ジペンタエリスリトール等のネオペンチル型構造のポリオールと炭素数3〜22の直鎖状及び/又は分岐鎖状の飽和又は不飽和の脂肪酸とのフルエステル、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,2−プロパンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、2−メチル−1,4−ブタンジオール、1,4−ペンタンジオール、2−メチル−1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,5−ヘキサンジオール、2−メチル−1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,6−ヘキサンジオール、1,6−ヘプタンジオール、2−メチル−1,7−ヘプタンジオール、3−メチル−1,7−ヘプタンジオール、4−メチル−1,7−ヘプタンジオール、1,7−オクタンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、3−メチル−1,8−オクタンジオール、4−メチル−1,8−オクタンジオール、1,8−ノナンジオール、2−メチル−1,9−ノナンジオール、3−メチル−1,9−ノナンジオール、4−メチル−1,9−ノナンジオール、5−メチル−1,9−ノナンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオール、グリセリン、ポリグリセリン、ソルビトール等の非ネオペンチル型構造のポリオールと炭素数3〜22の直鎖状及び/又は分岐鎖状の飽和又は不飽和の脂肪酸とのフルエステルなどが例示される。
【0058】
その他のエステルとしては、ダイマー酸、水添ダイマー酸などの重合脂肪酸、或いは、縮合ヒマシ油脂肪酸、水添縮合ヒマシ油脂肪酸などのヒドロキシ脂肪酸と炭素数3〜22の直鎖状若しくは分岐鎖状の飽和又は不飽和の脂肪族アルコールとのエステルなども挙げられる。
【0059】
ポリアルキレングリコールとしては、アルコールと炭素数2〜4の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキレンオキシドの開環重合体が例示される。アルキレンオキシドとしてはエチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシドが挙げられ、これらの1種を用いた重合体、若しくは2種以上の混合物を用いた共重合体が使用可能である。又、片端又は両端の水酸基部分がエーテル化した化合物も使用可能である。重合体の動粘度としては、好ましくは5.0〜1,000mm
2/s(40℃)、より好ましくは5.0〜500mm
2/s(40℃)が推奨される。
【0060】
ポリビニルエーテルとしては、ビニルエーテルモノマーの重合によって得られる化合物であり、モノマーとしてはメチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、sec−ブチルビニルエーテル、tert−ブチルビニルエーテル、n−ペンチルビニルエーテル、n−ヘキシルビニルエーテル、2−メトキシエチルビニルエーテル、2−エトキシエチルビニルエーテル等が挙げられる。重合体の動粘度としては、好ましくは5.0〜1,000mm
2/s(40℃)、より好ましくは5.0〜500mm
2/s(40℃)が推奨される。
【0061】
ポリフェニルエーテルとしては、2個以上の芳香環のメタ位をエーテル結合又はチオエーテル結合でつないだ構造を有する化合物が挙げられ、具体的には、ビス(m−フェノキシフェニル)エーテル、m−ビス(m−フェノキシフェノキシ)ベンゼン、及びそれらの酸素の1個若しくは2個以上を硫黄に置換したチオエーテル類(通称C−エーテル)等が例示される。
【0062】
アルキルフェニルエーテルとしては、ポリフェニルエーテルを炭素数6〜18の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基で置換した化合物が挙げられ、特に1個以上のアルキル基で置換したアルキルジフェニルエーテルが好ましい。
【0063】
シリコーン油としては、ジメチルシリコーン、メチルフェニルシリコーンのほか、長鎖アルキルシリコーン、フルオロシリコーン等の変性シリコーンが挙げられる。
【0064】
本発明の潤滑油基油中における本エステルの含有量としては、好ましくは50重量%以上、より好ましくは70重量%以上、特に90重量%以上が好ましい。
他方、本発明の潤滑油基油中における併用基油の含有量としては、50重量%以下が推奨され、好ましくは30重量%以下、特に10重量%以下が好ましい。
【0065】
本発明の潤滑油基油には、その性能を向上させるために、潤滑油基油(即ち、本エステル単独又は本エステルと併用基油との混合物)に加えて、酸化防止剤、金属清浄剤、無灰分散剤、油性剤、摩耗防止剤、極圧剤、金属不活性剤、防錆剤、粘度指数向上剤、流動点降下剤、消泡剤、加水分解抑制剤、増ちょう剤、腐食防止剤、色相安定剤等の添加剤の少なくとも1種を適宜配合することも可能で、潤滑油基油に当該添加剤等を配合したものを潤滑油組成物ということがある。これらの配合量は、本発明の効果を奏する限り特に限定されるものではないが、その具体的な例を以下に示す。
【0066】
酸化防止剤としては、2,6−ジ−tert−ブチルフェノール、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール、4,4’−メチレンビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−イソプロピリデンビスフェノール、2,4−ジメチル−6−tert−ブチルフェノール、テトラキス[メチレン−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、2,2’−ジヒドロキシ−3,3’−ジ(α−メチルシクロヘキシル)−5,5’−ジメチル−ジフェニルメタン、2,2’−イソブチリデンビス(4,6−ジメチルフェノール)、2,6−ビス(2’−ヒドロキシ−3’−tert−ブチル−5’−メチルベンジル)−4−メチルフェノール、1,1’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、2,5−ジ−tert−アミルヒドロキノン、2,5−ジ−tert−ブチルヒドロキノン、1,4−ジヒドロキシアントラキノン、3−tert−ブチル−4−ヒドロキシアニソール、2−tert−ブチル−4−ヒドロキシアニソール、2,4−ジベンゾイルレゾルシノール、4−tert−ブチルカテコール、2,6−ジ−tert−ブチル−4−エチルフェノール、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,4,5−トリヒドロキシベンゾフェノン、α−トコフェロール、ビス[2−(2−ヒドロキシ−5−メチル−3−tert−ブチルベンジル)−4−メチル−6−tert−ブチルフェニル]テレフタレート、トリエチレングリコールビス[3−(3−tert−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,6−ヘキサンジオール−ビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、ジフェニルアミン、モノブチル(直鎖及び分岐鎖を含む)ジフェニルアミン、モノペンチル(直鎖及び分岐鎖を含む)ジフェニルアミン、モノヘキシル(直鎖及び分岐鎖を含む)ジフェニルアミン、モノヘプチル(直鎖及び分岐鎖を含む)ジフェニルアミン、モノオクチル(直鎖及び分岐鎖を含む)ジフェニルアミン等のモノアルキルジフェニルアミン、特にモノ(C4−C9アルキル)ジフェニルアミン(即ち、ジフェニルアミンの二つのベンゼン環の一方が、アルキル基、特にC4−C9アルキル基でモノ置換されているもの、即ち、モノアルキル置換されたジフェニルアミン)、p,p’−ジブチル(直鎖及び分岐鎖を含む)ジフェニルアミン、p,p’−ジペンチル(直鎖及び分岐鎖を含む)ジフェニルアミン、p,p’−ジヘキシル(直鎖及び分岐鎖を含む)ジフェニルアミン、p,p’−ジヘプチル(直鎖及び分岐鎖を含む)ジフェニルアミン、p,p’−ジオクチル(直鎖及び分岐鎖を含む)ジフェニルアミン、p,p’−ジノニル(直鎖及び分岐鎖を含む)ジフェニルアミン等のジ(アルキルフェニル)アミン、特にp,p’−ジ(C4−C9アルキルフェニル)アミン(即ち、ジフェニルアミンの二つのベンゼン環の各々が、アルキル基、特にC4−C9アルキル基でモノ置換されているジアルキル置換のジフェニルアミンであって、二つのアルキル基が同一であるもの)、ジ(モノC4−C9アルキルフェニル)アミンであって、一方のベンゼン環上のアルキル基が他方のベンゼン環上のアルキル基と異なるもの、ジ(ジ−C4−C9アルキルフェニル)アミンであって、二つのベンゼン環上の4つのアルキル基のうちの少なくとも1つが残りのアルキル基と異なるもの等のジフェニルアミン類;N−フェニル−1−ナフチルアミン、N−フェニル−2−ナフチルアミン、4−オクチルフェニル−1−ナフチルアミン、4−オクチルフェニル−2−ナフチルアミン等のナフチルアミン類;p−フェニレンジアミン、N−フェニル−N’−イソプロピル−p−フェニレンジアミン、N−フェニル−N’−(1,3−ジメチルブチル)−p−フェニレンジアミン等のフェニレンジアミン類等が例示される。この中でも、特に、p,p’−ジオクチル(直鎖及び分岐鎖を含む)ジフェニルアミン、p,p’−ジノニル(直鎖及び分岐鎖を含む)ジフェニルアミン、N−フェニル−1−ナフチルアミン、チオジプロピオン酸ジ(n−ドデシル)、チオジプロピオン酸ジ(n−オクタデシル)等のチオジプロピオン酸エステル、フェノチアジン等の硫黄系化合物等が例示される。これらの酸化防止剤は、単独で又は適宜2種以上組み合わせて用いることができる。酸化防止剤を使用する場合、通常、潤滑油基油に対して0.01〜5重量%、好ましくは0.05〜3重量%程度添加することが望ましい。
【0067】
ここで、本明細書及び特許請求の範囲において、「潤滑油基油に対して0.01〜5重量%」のように、「潤滑油基油に対して」との表現を用いて、添加剤の配合量の範囲を規定している場合がある。この場合に用いる「潤滑油基油」は、本発明に係る本エステルのみからなる潤滑油基油又は本エステルと併用基油との混合物からなる潤滑油基油の何れかの意味で用いている。そしてまた、「潤滑油基油に対して0.01〜5重量%」の例で言えば、潤滑油基油100重量部に対して、0.01〜5重量部という意味と同義である。
【0068】
金属清浄剤としては、Ca−石油スルフォネート、過塩基性Ca−石油スルフォネート、Ca−アルキルベンゼンスルフォネート、過塩基性Ca−アルキルベンゼンスルフォネート、Ba−アルキルベンゼンスルフォネート、過塩基性Ba−アルキルベンゼンスルフォネート、Mg−アルキルベンゼンスルフォネート、過塩基性Mg−アルキルベンゼンスルフォネート、Na−アルキルベンゼンスルフォネート、過塩基性Na−アルキルベンゼンスルフォネート、Ca−アルキルナフタレンスルフォネート、過塩基性Ca−アルキルナフタレンスルフォネート等の金属スルフォネート、Ca−フェネート、過塩基性Ca−フェネート、Ba−フェネート、過塩基性Ba−フェネート等の金属フェネート、Ca−サリシレート、過塩基性Ca−サリシレート等の金属サリシレート、Ca−フォスフォネート、過塩基性Ca−フォスフォネート、Ba−フォスフォネート、過塩基性Ba−フォスフォネート等の金属フォスフォネート、過塩基性Ca−カルボキシレート等が使用可能である。金属清浄剤を使用する場合、通常、潤滑油基油に対して1〜10重量%程度、好ましくは2〜7重量%程度添加することが望ましい。
【0069】
無灰分散剤としては、ポリアルケニルコハク酸イミド、ポリアルケニルコハク酸アミド、ポリアルケニルベンジルアミン、ポリアルケニルコハク酸エステル等が例示される。これらの無灰分散剤は、単独で又は適宜組み合わせて用いることができる。無灰分散剤を使用する場合、その配合量は、通常、潤滑油基油に対して1〜10重量%、好ましくは2〜7重量%程度添加することが望ましい。
【0070】
油性剤としては、ステアリン酸、オレイン酸などの脂肪族飽和及び不飽和モノカルボン酸、ダイマー酸、水添ダイマー酸などの重合脂肪酸、リシノレイン酸、12−ヒドロキシステアリン酸などのヒドロキシ脂肪酸、ラウリルアルコール、オレイルアルコールなどの脂肪族飽和及び不飽和モノアルコール、ステアリルアミン、オレイルアミンなどの脂肪族飽和及び不飽和モノアミン、ラウリン酸アミド、オレイン酸アミドなどの脂肪族飽和及び不飽和モノカルボン酸アミド、バチルアルコール、キミルアルコール、セラキルアルコールなどのグリセリンエーテル、ラウリルポリグリセリンエーテル、オレイルポリグリセリルエーテルなどのアルキル若しくはアルケニルポリグリセリルエーテル、ジ(2−エチルヘキシル)モノエタノールアミン、ジイソトリデシルモノエタノールアミンなどのアルキル若しくはアルケニルアミンのポリ(アルキレンオキサイド)付加物等が例示される。これらの油性剤は、単独で又は適宜組み合わせて用いることができる。油性剤を使用する場合、、通常、潤滑油基油に対して0.01〜5重量%、好ましくは0.1〜3重量%程度添加することが望ましい。
【0071】
摩耗防止剤・極圧剤としては、トリクレジルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、アルキルフェニルホスフェート類、トリブチルホスフェート、ジブチルホスフェート等のリン酸エステル類、トリブチルホスファイト、ジブチルホスファイト、トリイソプロピルホスファイト等の亜リン酸エステル類及びこれらのアミン塩等のリン系、硫化油脂、硫化オレイン酸などの硫化脂肪酸、ジベンジルジスルフィド、硫化オレフィン、ジアルキルジスルフィドなどの硫黄系、Zn−ジアルキルジチオフォスフェート、Zn−ジアルキルジチオフォスフェート、Mo−ジアルキルジチオフォスフェート、Mo−ジアルキルジチオカルバメートなどの有機金属系化合物等が例示される。これらの摩耗防止剤・極圧剤は、単独で又は適宜組み合わせて用いることができる。摩耗防止剤・極圧剤を使用する場合、通常、潤滑油基油に対して0.01〜10重量%、好ましくは0.1〜5重量%程度添加することが望ましい。
【0072】
金属不活性剤としては、ベンゾトリアゾール系、チアジアゾール系、没食子酸エステル系の化合物等が例示される。これらの金属不活性剤は、単独で又は適宜組み合わせて用いることができる。金属不活性剤を使用する場合、通常、潤滑油基油に対して0.01〜0.4重量%、好ましくは0.01〜0.2重量%程度添加することが望ましい。
【0073】
防錆剤としては、ドデセニルコハク酸ハーフエステル、オクタデセニルコハク酸無水物、ドデセニルコハク酸アミドなどのアルキル又はアルケニルコハク酸誘導体、ソルビタンモノオレエート、グリセリンモノオレエート、ペンタエリスリトールモノオレエートなどの多価アルコール部分エステル、Ca−石油スルフォネート、Ca−アルキルベンゼンスルフォネート、Ba−アルキルベンゼンスルフォネート、Mg−アルキルベンゼンスルフォネート、Na−アルキルベンゼンスルフォネート、Zn−アルキルベンゼンスルフォネート、Ca−アルキルナフタレンスルフォネートなどの金属スルフォネート、ロジンアミン、N−オレイルザルコシンなどのアミン類、ジアルキルホスファイトアミン塩等が例示される。これらの防錆剤は、単独で又は適宜組み合わせて用いることができる。防錆剤を使用する場合、通常、潤滑油基油に対して0.01〜5重量%、好ましくは0.05〜2重量%程度添加することが望ましい。
【0074】
粘度指数向上剤としては、ポリアルキルメタクリレート、ポリアルキルスチレン、ポリブテン、エチレン−プロピレン共重合体、スチレン−ジエン共重合体、スチレン−無水マレイン酸エステル共重合体などのオレフィン共重合体が例示される。これらの粘度指数向上剤は、単独で又は適宜組み合わせて用いることができる。粘度指数向上剤を使用する場合、通常、潤滑油基油に対して0.1〜15重量%、好ましくは0.5〜7重量%程度添加することが望ましい。
【0075】
流動点降下剤としては、塩素化パラフィンとアルキルナフタレンの縮合物、塩素化パラフィンとフェノールの縮合物、既述の粘度指数向上剤であるポリアルキルメタクリレート、ポリアルキルスチレン、ポリブテン等が例示される。これらの流動点降下剤は、単独で又は適宜組み合わせて用いることができる。流動点降下剤を使用する場合、通常、潤滑油基油に対して0.01〜5重量%、好ましくは0.1〜3重量%程度添加することが望ましい。
【0076】
消泡剤としては、液状シリコーンが適しており、消泡剤を使用する場合、その添加量は、通常、潤滑油基油に対して0.0005〜0.01重量%程度である。
【0077】
加水分解抑制剤としては、アルキルグリシジルエーテル類、アルキルグリシジルエステル類、アルキレングリコールグリシジルエーテル類、脂環式エポキシ類、フェニルグリシジルエーテルなどのエポキシ化合物、ジ−tert−ブチルカルボジイミド、1,3−ジ−p−トリルカルボジイミドなどのカルボジイミド化合物などが使用可能である。加水分解抑制剤を使用する場合、その添加量は、通常、潤滑油基油に対して0.05〜2重量%程度である。
【0078】
本発明の潤滑油基油に増ちょう剤を適宜組み合わせることにより、所謂「グリース基油」とすることができる。
【0079】
増ちょう剤としては、ナトリウム石鹸、リチウム石鹸、カルシウム石鹸、カルシウムコンプレックス石鹸、アルミニウムコンプレックス石鹸、リチウムコンプレックス石鹸等の石鹸系や、ベントナイト、シリカエアロゲル、ナトリウムテレフタラメート、ウレア化合物、ポリテトラフルオロエチレン、窒化ホウ素等の非石鹸系が挙げられる。
【0080】
金属石けん系増ちょう剤としては、リチウム−12−ヒドロキシステアレート等の水酸基を有する脂肪族カルボン酸リチウム塩、リチウムステアレート等の脂肪族カルボン酸リチウム塩またはそれらの混合物などが例示される。
【0081】
複合体金属石けん系増ちょう剤としては、水酸基を有する1価の脂肪族カルボン酸金属塩と2価の脂肪族カルボン酸金属塩とのコンプレックス等が挙げられ、具体的には複合体リチウム石けんや複合体アルミニウム石けんが例示される。
【0082】
ウレア化合物としては、脂環族、芳香族、脂肪族、ジウレア、トリウレア、テトラウレア、ウレア・ウレタン化合物等が例示される。
【0083】
上記の中でも、増ちょう剤として、リチウム石鹸、リチウムコンプレックス石鹸、ウレア化合物が好ましく、耐熱性の点から特にウレア化合物が好ましい。
【0084】
これらの増ちょう剤は1種でまたは適宜2種以上を組み合わせて用いることができる。増ちょう剤を使用する場合、その添加量は、通常、潤滑油基油に対して2〜40重量%程度である。
【0085】
腐食防止剤としては、ナトリウムスルホネートやソルビタンエステルが例示され、腐食防止剤を使用する場合、通常、潤滑油基油に対して0.1〜3.0重量%程度添加される。
【0086】
色相安定剤としては、置換ハイドロキノン、フルフラールアジン等が例示され、色相安定剤を使用する場合、通常、潤滑油基油に対して0.01〜0.1重量%程度添加される。
【0087】
上述の通り、潤滑油基油がエンジン油基油、タービン油基油、コンプレッサー油基油、チェーン油基油、油圧作動油基油、ギヤ油基油、軸受油基油又はグリース基油に好適で使用できることは勿論のこと、該潤滑油基油に添加剤等を配合した潤滑油組成物も、エンジン油、タービン油、コンプレッサー油、チェーン油、油圧作動油、ギヤ油、軸受油又はグリースとして好適に使用できる。
【実施例】
【0088】
以下に実施例を掲げて本発明を詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、本実施例及び比較例において、エステル化合物の諸性状は以下の方法により測定又は評価した。特に言及していない化合物は試薬を使用した。
【0089】
<使用化合物>
[脂肪族飽和アルコール]
・炭素数9の脂肪族飽和アルコール:シェルケミカルズ社製 製品名「リネボール9」(直鎖率87%,炭素数9の直鎖状脂肪族飽和アルコール含有量;85.1重量%,炭素数9の分岐鎖状脂肪族飽和アルコール含有量;11.7重量%)
・2−エチルヘキサノール:東京化成工業株式会社製(直鎖率0%,炭素数9の脂肪族飽和アルコール含有量;0重量%)
・1−デカノール:新日本理化株式会社製 製品名「コノール 1098」(直鎖率100%,炭素数9の脂肪族飽和アルコール含有量;0重量%)
・イソデカノール:KHネオケム製 製品名「デカノール」(直鎖率0%,炭素数9の脂肪族飽和アルコール含有量;0重量%)
[潤滑油基油]
・PAO:ポリ−α−オレフィン シェブロンフィリップス社製 製品名「Synfluid 601」
・鉱物油:SKルブリカンツ社製 製品名「YUBESE 6」
・DOS:セバチン酸ジ(2−エチルヘキシル) 新日本理化株式会社製 製品名「サンソサイザー DOS」
【0090】
(a)脂肪族飽和アルコールの直鎖率並びに炭素数9の直鎖状脂肪族飽和アルコール及び炭素数9の分岐鎖状脂肪族飽和アルコールの含有量
本発明の実施例及び比較例で用いる脂肪族飽和アルコールの直鎖率並びに炭素数9の直鎖状脂肪族飽和アルコール及び炭素数9の分岐鎖状脂肪族飽和アルコールの含有量はガスクロマトグラフィー(以下GCと略記)によって測定した。GCによる脂肪族飽和アルコールの測定方法は次のとおりである。
<GCの測定条件>
機種:ガスクロマトグラフ GC−17A(島津製作所製)
検出器:FID
カラム:キャピラリーカラム DB−1 30m
カラム温度:60℃から290℃まで昇温。昇温速度=13℃/分
キャリアガス:ヘリウム
試料:50重量%アセトン溶液
注入量:1μl
定量:1−ヘキサノールを内部標準物質として用い定量した。
なお内部標準物質の選定に当たっては、原料のアルコール成分に1−ヘキサノールがGCで検出限界以下であったことを予め確認した。
【0091】
(b)酸価、水酸基価、エステル価
エステル価はJIS K0070(1992)、酸価はJIS K2501(2003)、水酸基価はJIS K0070(1992)に準拠して測定を実施した。
【0092】
(c)動粘度
JIS K2283(2000)に準拠して40℃、100℃における動粘度を測定した。但し、0℃動粘度はJIS K2283(2000)に規定される粘度−温度関係式より算出した。
【0093】
(d)粘度指数
JIS K2283(2000)に準拠して算出した。
(e)流動点
JIS K2269(1987)に準拠して測定をした。
【0094】
(f)引火点
JIS K2265−4(クリーブランド開放式)(2007)に準拠して測定した。
【0095】
[実施例1]
温度計、デカンター、攪拌羽、還流冷却管を備えた1L四ツ口フラスコに、トリメリット酸無水物96g(0.5モル)、炭素数9の脂肪族飽和アルコール(「リネボール9」)259g(1.8モル)、及びエステル化触媒としてテトライソプロピルチタネート0.13gを加え、フラスコ内を窒素置換した後、徐々に反応温度を190℃まで昇温しエステル化反応を実施した。減圧下脂肪族飽和アルコールを還流させて生成水を系外へ除去しながら、反応溶液の酸価が0.5mgKOH/gになるまで反応を行った。反応終了後、未反応脂肪族飽和アルコールを減圧下で系外へ留去した後、常法に従って中和、水洗、脱水して目的とするトリメリット酸トリエステル(以下、「TME1」という。)245gを得た。得られたTME1は、エステル価:284mgKOH/g、酸価:0.02mgKOH/g、水酸基価1mgKOH/gであった。
【0096】
TME1を本発明の潤滑油基油とし、動粘度、粘度指数、流動点及び引火点の結果を表1に示した。
【0097】
[比較例1]
リネボール9を2−エチルヘキサノール234g(1.8モル)に変更した以外は実施例1と同様の方法で実施して、トリメリット酸トリエステル(以下、「TME2」という。)232gを得た。得られたTME2は、エステル価:306mgKOH/g、酸価:0.01mgKOH/g、水酸基価1mgKOH/gであった。
【0098】
TME2を本発明外の潤滑油基油とし、動粘度、粘度指数、流動点及び引火点の結果を表1に示した。
【0099】
[比較例2]
リネボール9を1−デカノール284g(1.8モル)に変更した以外は実施例1と同様の方法で実施して、トリメリット酸トリエステル(以下、「TME3」という。)268gを得た。得られたTME3は、エステル価:265mgKOH/g、酸価:0.01mgKOH/g、水酸基価1mgKOH/gであった。
【0100】
TME3を本発明外の潤滑油基油とし、動粘度、粘度指数、流動点及び引火点の結果を表1に示した。
【0101】
[比較例3]
リネボール9をイソデカノール284g(1.8モル)に変更した以外は実施例1と同様の方法で実施して、トリメリット酸トリエステル(以下、「TME4」という。)265gを得た。得られたTME2は、エステル価:265mgKOH/g、酸価:0.01mgKOH/g、水酸基価1mgKOH/gであった。
【0102】
TME4を本発明外の潤滑油基油とし、動粘度、粘度指数、流動点及び引火点の結果を表1に示した。
【0103】
[比較例4]
PAOを本発明外の潤滑油基油とし、動粘度、粘度指数、流動点及び引火点の結果を表1に示した。
【0104】
[比較例5]
鉱物油を本発明外の潤滑油基油とし、動粘度、粘度指数、流動点及び引火点の結果を表1に示した。
【0105】
[比較例6]
DOSを本発明外の潤滑油基油とし、動粘度、粘度指数、流動点及び引火点の結果を表1に示した。
【0106】
【表1】
【0107】
表1より、本発明の潤滑油基油は、粘度指数が高く、高引火点であり、且つ、低温流動性が良好なことは明らかである。