(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2016-176049(P2016-176049A)
(43)【公開日】2016年10月6日
(54)【発明の名称】ポリウレタンフォーム
(51)【国際特許分類】
C08G 18/00 20060101AFI20160909BHJP
C08G 18/42 20060101ALI20160909BHJP
C08G 18/76 20060101ALI20160909BHJP
C08G 18/48 20060101ALI20160909BHJP
B60R 13/02 20060101ALI20160909BHJP
C08G 101/00 20060101ALN20160909BHJP
【FI】
C08G18/00 J
C08G18/42 F
C08G18/76 Z
C08G18/48 F
B60R13/02 B
C08G101:00
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-130667(P2015-130667)
(22)【出願日】2015年6月30日
(31)【優先権主張番号】特願2015-57921(P2015-57921)
(32)【優先日】2015年3月20日
(33)【優先権主張国】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000119232
【氏名又は名称】株式会社イノアックコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100098752
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 吏規夫
(72)【発明者】
【氏名】高山 諭之
(72)【発明者】
【氏名】原 孝暢
【テーマコード(参考)】
3D023
4J034
【Fターム(参考)】
3D023BA02
3D023BA05
3D023BB01
3D023BB30
3D023BC01
3D023BE04
4J034BA03
4J034BA07
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4J034QC01
4J034QC03
4J034RA05
4J034RA12
(57)【要約】
【課題】耐熱性、耐湿熱性及び難燃性が良好なポリウレタンフォームの提供を目的とする。
【解決手段】ポリオール、ポリイソシアネート、発泡剤、触媒及び難燃剤を含むポリウレタン発泡原料から得られるポリウレタンフォームにおいて、ポリオールは、アルキル基の側鎖を1以上持つポリエステルポリオールを含み、ポリイソシアネートは、ジフェニルメタンジイソシアネート系イソシアネート、難燃剤は、膨張黒鉛またはリン系粉体難燃剤の何れか一方又は両方の粉体難燃剤からなり、添加量が前記ポリオール100質量部に対して20〜40質量部で、ポリウレタンフォームの密度(JIS K7222:2005)が、80〜120kg/m
3である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオール、ポリイソシアネート、発泡剤、触媒及び難燃剤を含むポリウレタン発泡原料から得られるポリウレタンフォームにおいて、
前記ポリオールは、ポリエステルポリオールを含み、
前記ポリイソシアネートは、ジフェニルメタンジイソシアネート系イソシアネートであり、
前記難燃剤は、膨張黒鉛またはリン系粉体難燃剤の何れか一方又は両方の粉体難燃剤からなり、添加量が前記ポリオール100質量部に対して20質量部以上であり、
ポリウレタンフォームの密度(JIS K7222:2005)は、80〜120kg/m3であることを特徴とするポリウレタンフォーム。
【請求項2】
前記ポリエステルポリオールは、アルキル基の側鎖を1以上持つことを特徴とする請求項1に記載のポリウレタンフォーム。
【請求項3】
前記ポリオールは、アルキル基の側鎖を1以上持つポリエステルポリオールと、ポリエーテルポリオールとを含むことを特徴とする請求項1または2に記載のポリウレタンフォーム。
【請求項4】
前記難燃剤の添加量が前記ポリオール100質量部に対して20〜40質量部であることを特徴とする請求項1から3の何れか一項に記載のポリウレタンフォーム。
【請求項5】
前記ポリウレタンフォームがスラブ発泡品からなることを特徴とする請求項1から4の何れか一項に記載のポリウレタンフォーム。
【請求項6】
車両用防音材として使用されるものであることを特徴とする請求項1から5の何れか一項に記載のポリウレタンフォーム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリウレタンフォームに関し、特には耐熱性、耐湿熱性が良好でかつ難燃性に優れるポリウレタンフォームに関する。
【背景技術】
【0002】
ポリウレタンフォームは防音材としても使用されているが、一般的なポリウレタンフォーム、特にエーテル系ポリウレタンフォームは酸化劣化しやすく、耐熱性が悪いため、使用場所によっては適さないことがある。例えば、車両においては、騒音を抑えるため、種々の部位に防音材が用いられているが、エンジン付近などに使用される場合、耐熱性が要求される。
【0003】
ポリウレタンフォームの耐熱性及び難燃性を高めたものとして、アスファルトを含浸させたポリウレタンフォーム(特許文献1)や、イソシアヌレートフォーム(特許文献2)や、ポリカーボネート系ポリウレタンフォーム(特許文献3)がある。
【0004】
アスファルトを含浸させたポリウレタンフォームは、ポリオール、ポリイソシアネート、触媒、難燃剤、発泡剤及びアスファルト等からなる組成物を型内に注入し、発泡成形することで製造される。
イソシアヌレートフォームは、イソシアネートの三量体であるイソシアヌレート環を含む発泡体である。イソシアヌレート環は、ウレタン結合に比べて結合の安定性が高いため、耐熱性及び難燃性に優れる。
ポリカーボネート系ポリウレタンフォームは、ポリカーボネート基を主鎖に持つポリカーボネートポリオールを使用したポリウレタンフォームであり、一般的なエーテル系ポリウレタンフォームやエステル系ポリウレタンフォームと比べて、耐熱性や耐加水分解性に優れる。
【0005】
しかしながら、アスファルトを含浸させたポリウレタンフォームは、含浸させたアスファルトによって重くなると共に燃焼しやすくなり、また、高温時にべたつきが出る問題がある。
一方、イソシアヌレートフォームは、ポリウレタンフォームの配合中にイソシアヌレートを大量に含むため、フォームが脆くなりやすく、またフォームの硬度が高くなり、車両の防音材等には適さなかった。
また、ポリカーボネート系ポリウレタンフォームは、原料粘度が極めて高いため、製造時の取り扱いに難があり、かつ低温特性に劣り、さらには原料のコストが高い問題がある。
なお、難燃剤としてメラミン難燃剤を使用したポリウレタンフォームも提案されているが、添加量を多くしても難燃性の向上効果がそれほどではない問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特公昭61−50965号公報
【特許文献2】特開平9−195415号公報
【特許文献3】特開2005−60643号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は前記の点に鑑みなされたものであって、耐熱性、耐湿熱性及び難燃性が良好なポリウレタンフォームの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1の発明は、ポリオール、ポリイソシアネート、発泡剤、触媒及び難燃剤を含むポリウレタン発泡原料から得られるポリウレタンフォームにおいて、前記ポリオールは、ポリエステルポリオールを含み、前記ポリイソシアネートは、ジフェニルメタンジイソシアネート系イソシアネートであり、前記難燃剤は、膨張黒鉛またはリン系粉体難燃剤の何れか一方又は両方の粉体難燃剤からなり、添加量が前記ポリオール100質量部に対して20質量部以上であり、ポリウレタンフォームの密度(JIS K7222:2005)は、80〜120kg/m
3であることを特徴とする。
【0009】
請求項2の発明は、請求項1において、前記ポリエステルポリオールは、アルキル基の側鎖を1以上持つことを特徴とする。
【0010】
請求項3の発明は、請求項1または2において、前記ポリオールは、アルキル基の側鎖を1以上持つポリエステルポリオールと、ポリエーテルポリオールとを含むことを特徴とする。
請求項4の発明は、請求項1から3の何れか一項において、前記難燃剤の添加量が前記ポリオール100質量部に対して20〜40質量部であることを特徴とする。
【0011】
請求項5の発明は、請求項1から4の何れか一項において、前記ポリウレタンフォームがスラブ発泡品からなることを特徴とする。
請求項6の発明は、請求項1から5の何れか一項において、車両用防音材として使用されるものであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1の発明によれば、ポリエステルポリオールとジフェニルメタンジイソシアネート系イソシアネートとの反応により耐熱性及び難燃性が良好なポリウレタンフォームが得られる。特に、軟質ポリウレタンフォームの単体では合格が難しいUL−94垂直燃焼試験V0に常態(23℃・50%RH×48時間)のみならず、150℃×600時間経過による厳しい熱老化試験後においても合格することができる。
【0013】
請求項2の発明によれば、ポリエステルポリオールが、アルキル基の側鎖を1以上持つため、耐湿熱性も良好なポリウレタンフォームが得られる。
請求項3の発明によれば、ポリエーテルポリオールを併用することにより、物性の低下を許容範囲にとどめたうえで、コストを下げることが可能となる。
【0014】
請求項4の発明によれば、難燃剤を多く添加するとポリウレタンフォームの伸びが低下するが、所定の添加量のため伸びの低下が抑えられ、使用時に柔軟性を失うことがなく、車両等の防音が求められる空間に隙間を埋めるときなど相手物に対する追従性不足を防ぐことができる。
【0015】
請求項5の発明によれば、用途に応じた形状に加工可能なスラブ発泡体において、耐熱性、耐湿熱性及び難燃性が良好なポリウレタンフォームが得られるため、用途が拡がる。
なお、ポリウレタンフォームにはスラブ発泡体とモールド発泡体がある。スラブ発泡体は、ポリウレタン発泡原料をコンベア上に吐出し、常温及び大気圧下でポリオールとポリイソシアネートを反応させて上方へ膨らんだ蒲鉾状に連続発泡成形するスラブ発泡により形成されたものであり、発泡後に裁断等によって適宜の寸法・形状にされる。
一方、モールド発泡体は、製品形状のキャビティを有する金型にポリウレタン原料を充填して製品形状に発泡するモールド発泡により形成されたものである。
請求項6の発明によれば、耐熱性、耐湿熱性、強度、軽量な車両用防音材が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明におけるポリウレタンフォームは、ポリオール、ポリイソシアネート、触媒、発泡剤及び難燃剤を含む発泡原料から発泡形成されたものであり、密度(JIS K7222:2005)が80〜120kg/m
3である。
【0017】
本発明において使用されるポリオールは、ポリエステルポリオールであり、より好ましくは、アルキル基の側鎖を1以上持つポリエステルポリオールの単独使用である。アルキル基の側鎖を1以上持つポリエステルポリオールは、複数種類を併用してもよい。なお、ポリエーテルポリオールを単独で使用すると、酸化劣化し易くなり、耐熱性及び耐湿熱性と難燃性が劣るようになるが、アルキル基の側鎖を1以上持つポリエステルポリオールと共にポリエーテルポリオールを併用することにより、耐熱性及び耐湿熱性の低下を抑えてコストを低下させることができる。ポリエーテルポリオールの配合量は40質量部以下が好ましく、より好ましくは20質量部以下である。
【0018】
アルキル基の側鎖を1以上持つポリエステルポリオールは、脂肪族分岐グリコールと脂肪族ジカルボン酸を構成単位とする重合物である。
前記脂肪族分岐グリコールは、具体的には、1,2−プロピレングリコール、1−メチル−1,3−ブチレングリコール、2−メチル−1,3−ブチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1−メチルー1,4−ペンチレングリコール、2−メチル−1,4−ペンチレングリコール、1,2−ジメチル−ネオペンチルグリコール、2,3−ジメチルーネオペンチルグリコール、1−メチルー1,5−ペンチレングリコール、2−メチル−1,5−ペンチレングリコール、3−メチル−1,5−ペンチレングリコール、1,2−ジメチルブチレングリコール、1,3−ジメチルブチレングリコール、2,3−ジメチルブチレングリコール、1,4−ジメチルブチレングリコール等を例示することができる。これらの脂肪族分岐グリコールは単独、または2種類以上併用して用いられる。
前記脂肪族ジカルボン酸の具体例としては、シュウ酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、セバシン酸及びドデカン二酸、1,6−シクロヘキサンジカルボン酸等が挙げられる。また、これらの低級アルキルエステル等の誘導体及び酸無水物等も挙げられる。これらは単独でも2種以上混合して使用することもできる。
また、アルキル基の側鎖を1以上持つポリエステルポリオールである、脂肪族二塩基酸と脂肪族分岐2価アルコールとから得られる脂肪族ポリエステルポリオールの平均分子量(数平均分子量)が1000〜5000(より好ましくは2000〜3000)の脂肪族ポリエステルポリオールが好ましい。
また、官能基数は、2〜4が、柔軟さと強靭さを両立させるためには好ましい。
【0019】
ポリエーテルポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ブチレングリコール、ネオペンチルグリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン、ソルビトール、シュークロース等の多価アルコールにエチレンオキサイド(EO)、プロピレンオキサイド(PO)等のアルキレンオキサイドを付加したポリエーテルポリオールを挙げることができる。特に、分子量2000〜7000、官能基数2〜6のポリエーテルポリオールが好ましい。
【0020】
発泡剤としては、水、あるいはペンタンなどの炭化水素を、単独または組み合わせて使用できる。水の場合は、ポリオールとポリイソシアネートの反応時に炭酸ガスを発生し、その炭酸ガスによって発泡がなされる。発泡剤の量は適宜とされるが、水の場合、ポリオール100質量部に対して1.0〜3.5質量部が好ましい。
【0021】
触媒としては、ウレタンフォーム用の公知のものを使用することができる。例えば、トリエチルアミンやテトラメチルグアニジン等のアミン系触媒や、スタナスオクトエート等のスズ系触媒やフェニル水銀プロピオン酸塩あるいはオクテン酸鉛等の金属触媒(有機金属触媒とも称される。)を挙げることができる。触媒の一般的な量は、ポリオール100質量部に対して0.1〜2.0質量部である。
【0022】
難燃剤としては、膨張黒鉛またはリン系粉体難燃剤の何れか一方又は両方の粉体難燃剤が使用される。
膨張黒鉛は、天然黒鉛を硫酸、硝酸等の混合液に浸漬し、過酸化水素や塩酸等の酸化剤を添加したものなど、公知の膨張黒鉛を使用することができる。特には、膨張開始温度が130〜300℃程度、膨張容積が50〜300cc/g程度、膨張前の平均粒径が50〜500μmのものが好ましい。
【0023】
リン系粉体難燃剤としては、粉体状の難燃剤であって、脂肪族リン酸エステル、芳香族リン酸エステル、芳香族縮合リン酸エステル、ハロゲンリン酸エステル、含ハロゲン縮合リン酸エステルなどのリン酸エステル系難燃剤が挙げられる。例えば、市販のリン系粉体難燃剤として、大八化学工業社製の製品名「SH−850」、「CR−900」、「DAIGUARD−1000」、「PX−200」などがある。
【0024】
前記膨張黒鉛とリン系粉体難燃剤は何れか一方の単独使用でもよいが、より良好な耐熱性及び耐湿熱性を得るには両者の併用が好ましい。前記難燃剤の添加量は、ポリオール100質量部に対して20質量部以上が好ましい。添加量が少ない場合には、難燃性効果が劣るようになり、逆に添加量が多すぎる場合には伸びが低下するようになる。より好ましい難燃剤の添加量は、ポリオール100質量部に対して20〜40質量部である。
【0025】
なお、粉末難燃剤としてはメラミン難燃剤が存在するが、メラミン難燃剤を使用すると、UL−94垂直燃焼試験V0に常態(23℃・50%RH×48時間)及び150℃×600時間後の熱老化試験後において不合格になる。
また、液体難燃剤を使用すると、UL−94垂直燃焼試験V0において150℃×600時間後の熱老化試験後に不合格となる。
【0026】
ポリイソシアネートとしては、ジフェニルメタンジイソシアネート系イソシアネートが単独使用される。ジフェニルメタンジイソシアネート系イソシアネートとしては、モノリックMDI(ピュアMDI)、ポリメリックMDIおよびポリメリックMDIのプレポリマーの複数種類を併用してもよい。
【0027】
ジフェニルメタンジイソシアネート系イソシアネートとして具体的には、2,2’−ジフェニルメタンジイソシアネート(2,2’−MDI)、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(2,4’−MDI)、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(4,4’−MDI)、ジフェニルメタンジイソシアネートとポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネートの混合物であるポリメリックMDI、ジフェニルメタンジイソシアネートとポリオール類を反応させて得られるMDIプレポリマー等を挙げることができる。
【0028】
イソシアネートインデックスは85〜115が好ましい。イソシアネートインデックスが85未満になると、良好なフォームができなくなる。一方、イソシアネートインデックスが115を超えると、フォームが硬くなりすぎたり、良好なフォームができなくなったりする。イソシアネートインデックスは、ポリイソシアネートにおけるイソシアネート基のモル数をポリオールの水酸基や発泡剤としての水などの活性水素基の合計モル数で割った値に100を掛けた値であり、[ポリイソシアネートのNCO当量/活性水素当量×100]で計算される。
【0029】
適宜添加される助剤として、整泡剤、酸化防止剤、着色等を挙げることができる。
整泡剤は、ウレタンフォーム用として公知のものを使用することができる。例えば、シリコーン系整泡剤、含フッ素化合物系整泡剤および公知の界面活性剤を挙げることができる。整泡剤の一般的な量は、ポリオール100質量部に対して0.1〜3.0質量部である。
酸化防止剤としては、フェノール系、リン系、ジフェニルアミン系等を挙げることができ、特にリン系酸化防止剤及びジフェニルアミン系酸化防止剤の何れか一方、あるいは併用が好ましい。酸化防止剤の量はポリオール100質量部に対して0.5〜3質量部が好ましい。
【0030】
ポリウレタンフォームの密度(JIS K7222:2005)は、80〜120kg/m
3が好ましい。密度が低くなると難燃性が低下し、逆に密度が高くなると、重くなって用途が制限されると共にコストが大になる。
また、本発明のポリウレタンフォームは、スラブ発泡体あるいはモールド発泡体のいずれでもよいが、好ましくはスラブ発泡体である。
本発明のポリウレタンフォームは、単独で使用され、あるいは金属板やプラスチック板等に積層されたりして使用される。本発明のポリウレタンフォームは、幅広い分野において使用可能である。また、車両用防音材として使用される場合、耐熱性が要求される部材に好適で有り、例えば、エンジンフード裏面の防音シートや、エンジンカバーや、オイルパンカバー等の用途に好適である。
【実施例】
【0031】
以下の原料を用いて表1及び表2の配合に調製したポリウレタン原料を、ミキサーで混合してスラブ発泡し、実施例及び比較例のポリウレタンフォームを製造した。
・ポリエステルポリオール:ポリ(3−メチル−1,5ペンタンジオール;トリメチロールプロパン)アルト−アジピン酸、分子量3000、官能基数3、品名「ポリライトOD−X−2518」(大日本インキ化学工業株式会社製)
・ポリエーテルポリオール: 分子量3000、官能基数3、品名「サンニックスGP−3050NS」(三洋化成工業株式会社製)
・発泡剤:水
・触媒:トリエチレンジアミン
・整泡剤:シリコーン整泡剤、品名「BJ−100」(花王株式会社製)
・イソシアネート(MDI):ポリメリックMDI、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート、品名「フォームライト2803B」(BASF INOAC ポリウレタン株式会社製)
・イソシアネート(TDI):T−80
・膨張黒鉛:品名「SYZR 502FP」(三洋貿易株式会社製)、膨張開始温度180℃〜200℃
・リン系粉体難燃剤:品名「SH−850」(大八化学工業社製)
・メラミン:品名「メラミン」三井化学社製、融点345℃以上、引火点287℃
・液体難燃剤1:含ハロゲン縮合リン酸エステル、品名「CR504L」(大八化学工業社製)、引火点236℃
・液体難燃剤2:ノンハロゲン系リン酸エステル、品名「DAIGUARD−880」(大八化学工業社製)、引火点217℃、分解温度251℃
【0032】
【表1】
【0033】
【表2】
【0034】
実施例1と実施例2は、難燃剤として膨張黒鉛とリン系粉体難燃剤を併用し、その添加量を変化させた例、実施例3は難燃剤として膨張黒鉛のみを使用した例、実施例4は難燃剤としてリン系粉体難燃剤のみを使用した例、実施例5は難燃剤を膨張黒鉛とリン系粉体難燃剤として難燃剤の量を多くした例である。実施例6と7はポリエステルポリオールとポリエーテルポリオールを併用した例であり、実施例6はポリエーテルポリオールを20質量部、実施例7はポリエーテルポリオールを40質量部使用した例である。
【0035】
比較例1は難燃剤としてメラミンのみを使用した例、比較例2は難燃剤として液体難燃剤1のみを使用した例、比較例3は難燃剤として液体難燃剤2のみを使用した例である。
【0036】
比較例4は難燃剤を添加せず、かつイソシアネートが実施例と同一のMDIの例であり、比較例5は難燃剤を添加せず、かつイソシアネートをTDIとした例である。比較例6は、ポリオールとしてポリエーテルポリオールのみを使用すると共に難燃剤を添加せず、かつイソシアネートしてTDIを使用した例である。
【0037】
比較例7は難燃剤を膨張黒鉛とリン系粉体難燃剤として難燃剤を本発明の範囲よりも少なくした例である。比較例8は難燃剤として膨張黒鉛のみを使用し、かつその添加量を本発明の範囲よりも少なくした例、比較例9は難燃剤としてリン系粉体難燃剤のみを使用し、かつその添加量を本発明の範囲よりも少なくした例である。
【0038】
前記各実施例及び各比較例のポリウレタンフォームに対し、密度、耐熱性、耐湿熱性、難燃性を測定した。測定結果は表1及び表2の中段以下に示す。
密度は、JIS K7222:2005に基づいて測定した。
耐熱性は、試験片を恒温槽に収容して150℃で600時間維持した後に測定した引張強度と伸び(常態時の引張強度及び伸びの測定方法(JIS K6400−5 5)に準じて測定する。)によって判断し、主に引張強度のみで判断し、より好ましくは伸びも考慮して判断する。すなわち、耐熱性の引張強度が68kPa未満では耐熱性に劣り(×)、68kPa以上90kPa未満が好ましく(△)、より好ましくは90kPa以上(○)が耐熱性に優れると判断できる。耐熱性の伸びは、15%未満では、低(×)、15%以上20%未満では、良(△)、20%以上では優秀(○)と判断できる。
【0039】
耐湿熱性は、試験片を恒温恒湿槽に収容して80℃、湿度95%で600時間維持した後に測定した引張強度と伸び(常態時の引張強度及び伸びの測定方法(JIS K6400−5 5)に準じて測定する。)によって判断し、主に引張強度のみで判断し、より好ましくは伸びも考慮して判断する。すなわち、耐湿熱性の引張強度が68kPa未満では耐湿熱性が劣り(×)、68kPa以上90kPa未満が好ましく(△)、より好ましくは90kPa以上(○)が耐湿熱性に優れると判断できる。耐湿熱性の伸びは、15%未満では、低(×)、15%以上20%未満では、良(△)、20%以上では、優秀(○)と判断できる。
【0040】
難燃性は、常態(23℃・50%RH×48時間経過後)でのUL−94垂直燃焼試験V0と、150℃×600時間経過による熱老化試験後のUL−94垂直燃焼試験V0によって判断した。試験方法及び判断は、それぞれUL−94垂直燃焼試験に基づく。
【0041】
実施例1〜7は、何れも耐熱性及び耐湿熱が良好であり、かつ常態及び熱老化後のUL94垂直燃焼試験V0に合格し、難燃性に優れるものであった。特にポリエステルポリオールを100質量部使用する実施例において、難燃剤として膨張黒鉛とリン系粉体難燃剤を併用する実施例1と、膨張黒鉛のみを使用する実施例3及びリン系粉体難燃剤のみを使用する実施例4とを比較すると、膨張黒鉛とリン系粉体難燃剤を併用する実施例1の方が、膨張黒鉛のみの実施例3及びリン系粉体難燃性のみの実施例4よりも耐熱性及び耐湿熱性において良好であり、膨張黒鉛とリン系粉体難燃剤の併用が好ましい。なお、難燃剤の添加量が多い実施例5は、耐熱性及び耐湿熱性の判断に補助的に利用される伸びの測定値が、他の実施例1〜4よりも低い値を示した。また、ポリエステルポリオールとポリエーテルポリオールを併用する実施例6と7は、ポリエステルポリオールを100質量部使用する実施例1と比べて耐熱性が若干低下するが、それでも十分に良好な耐熱性を有するものであった。
【0042】
次に、比較例1〜9の試験結果について示す。
比較例1は、難燃剤としてメラミンのみを使用する例であり、常態及び熱老化後のUL94垂直燃焼試験V0の何れにも不合格であり、難燃性に劣っていた。
比較例2及び比較例3は、難燃剤として液体難燃剤1のみを使用する例と液体難燃剤2のみを使用する例であり、何れも熱老化後のUL94垂直燃焼試験V0に不合格であり、耐湿熱性(引張強度、伸び)が劣っていた。
【0043】
比較例4は、難燃剤を添加しない例であり、常態及び熱老化後のUL94垂直燃焼試験V0の何れも不合格であり、難燃性に劣っていた。
比較例5は難燃剤を添加せず、かつイソシアネートをTDIとした例であり、常態及び熱老化後のUL94垂直燃焼試験V0の何れも不合格であり、難燃性に劣っていた。
比較例6は、ポリオールとしてポリエーテルポリオールを使用すると共に難燃剤を添加せず、かつイソシアネートしてTDIを使用した例であり、常態及び熱老化後のUL94垂直燃焼試験V0の何れも不合格であり、難燃性に劣っていた。また、耐熱性(引張強度)が劣っていた。
【0044】
比較例7は、難燃剤の量を本発明の範囲よりも少なくした例であり、常態及び熱老化後のUL94垂直燃焼試験V0の何れも不合格であり、難燃性に劣っていた。
比較例8は難燃剤として膨張黒鉛のみを使用し、かつその添加量を本発明の範囲よりも少なくした例、比較例9は難燃剤としてリン系粉体難燃剤のみを使用し、かつその添加量を本発明の範囲よりも少なくした例であり、常態及び熱老化後のUL94垂直燃焼試験V0の何れも不合格であり、難燃性に劣っていた。
【0045】
このように、本発明のポリウレタンフォームは、耐熱性、耐湿熱性及び難燃性が良好であり、耐熱性、耐湿熱性及び難燃性が求められる種々の分野において使用可能である。