(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2016-17625(P2016-17625A)
(43)【公開日】2016年2月1日
(54)【発明の名称】ホイールイン減速装置およびホイールユニット
(51)【国際特許分類】
F16H 13/08 20060101AFI20160105BHJP
B60K 17/14 20060101ALI20160105BHJP
B60K 7/00 20060101ALI20160105BHJP
A61G 5/04 20130101ALI20160105BHJP
F16C 19/36 20060101ALI20160105BHJP
F16C 35/067 20060101ALI20160105BHJP
F16C 35/077 20060101ALI20160105BHJP
F16C 35/063 20060101ALI20160105BHJP
【FI】
F16H13/08 C
B60K17/14
B60K7/00
A61G5/04 505
F16C19/36
F16C35/067
F16C35/077
F16C35/063
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-143101(P2014-143101)
(22)【出願日】2014年7月11日
(71)【出願人】
【識別番号】000107147
【氏名又は名称】日本電産シンポ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】000232302
【氏名又は名称】日本電産株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100135013
【弁理士】
【氏名又は名称】西田 隆美
(72)【発明者】
【氏名】今村 正
【テーマコード(参考)】
3D042
3D235
3J051
3J117
3J701
【Fターム(参考)】
3D042AA08
3D042BE01
3D235AA01
3D235AA22
3D235AA28
3D235CC42
3D235GA04
3D235GA13
3D235GA32
3D235GB02
3J051AA01
3J051BA03
3J051BB08
3J051BC02
3J051BD02
3J051BE03
3J051BE06
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3J051EB04
3J051EC03
3J051EC04
3J051FA01
3J117AA05
3J117CA06
3J117DA01
3J117DB10
3J701AA13
3J701AA26
3J701AA42
3J701AA54
3J701AA62
3J701BA77
3J701FA01
3J701FA53
3J701GA41
3J701GA60
(57)【要約】 (修正有)
【課題】ホイールイン減速装置において、振動を抑えながら、軸方向および径方向の寸法を抑制できる構造を提供する。
【解決手段】ホイールイン減速装置300は、太陽ローラ10、複数の遊星ローラ20、およびインタナルリング30を有する。複数の遊星ローラは、それぞれ、太陽ローラおよびインタナルリングの双方に接触しつつ、太陽ローラから動力を受けることによって、自転しながら公転する。このように、太陽ローラと複数の遊星ローラとの接触により動力を伝達すれば、バックラッシュに起因する振動の問題が生じにくい。また、このホイールイン減速装置では、ハウジング50とホイール70との間に介在する軸受80が、クロスローラベアリングである。このため、ベアリングの数を抑えながら、部材間の剛性を得ることができる。したがって、ホイールイン減速機を軸方向および径方向の双方に小型化できるとともに、振動の問題をさらに抑制できる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホイールイン減速装置であって、
回転軸を中心として回転する太陽ローラと、
前記太陽ローラの周囲に配置された複数の遊星ローラと、
前記複数の遊星ローラに接触する円環状のインタナルリングと、
前記インタナルリングを取り囲むハウジングと、
前記複数の遊星ローラの各々を回転可能に支持する複数のキャリアピンと、
前記複数のキャリアピンの端部に固定されたホイールと、
前記ハウジングと前記ホイールとの間に介在する軸受と、
を有し、
前記複数の遊星ローラは、それぞれ、前記太陽ローラおよび前記インタナルリングの双方に接触しつつ、前記太陽ローラから動力を受けることによって、自転しながら前記回転軸を中心として公転し、
前記軸受は、クロスローラベアリングである、ホイールイン減速装置。
【請求項2】
請求項1に記載のホイールイン減速装置において、
前記ホイールは、
前記ハウジングよりも径方向外側に位置する円筒状の外筒部と、
前記ハウジングよりも径方向内側に位置し、円筒状の外周面をもつ中央部と、
を有し、
前記クロスローラベアリングは、前記中央部の外周面と、前記ハウジングとの間に介在する、ホイールイン減速装置。
【請求項3】
請求項2に記載のホイールイン減速装置において、
前記クロスローラベアリングの外輪が、前記ハウジングと、前記インタナルリングとの間に、直接または他の部材を介して挟まれる、ホイールイン減速装置。
【請求項4】
請求項3に記載のホイールイン減速装置において、
前記インタナルリングに前記外輪側へ向かう圧力を与える加圧機構
をさらに有する、ホイールイン減速装置。
【請求項5】
請求項2乃至請求項4のいずれか1項に記載のホイールイン減速装置において、
前記外筒部の外周面または前記外筒部に取り付けられるタイヤの外周面が、接地面となる、ホイールイン減速装置。
【請求項6】
請求項2乃至請求項5のいずれか1項に記載のホイールイン減速装置において、
前記ホイールは、2つのホイール部材を有し、
前記クロスローラベアリングの内輪が、前記2つのホイール部材によって、軸方向に挟まれる、ホイールイン減速装置。
【請求項7】
請求項2乃至請求項5のいずれか1項に記載のホイールイン減速装置において、
前記ホイールは、前記外筒部と前記中央部とを含む単一の部材である、ホイールイン減速装置。
【請求項8】
請求項2乃至請求項7のいずれか1項に記載のホイールイン減速装置において、
前記ホイールは、前記中央部の前記遊星ローラとは反対側の面に、凹部を有する、ホイールイン減速装置。
【請求項9】
請求項1乃至請求項8のいずれか1項に記載のホイールイン減速装置において、
前記クロスローラベアリングの径方向内側に、前記複数のキャリアピンが位置し、
前記クロスローラベアリングの一部分と、前記複数のキャリアピンの各々の一部分とが、径方向に重なる、ホイールイン減速装置。
【請求項10】
請求項1乃至請求項9のいずれか1項に記載のホイールイン減速装置において、
前記クロスローラベアリングの径方向外側の端縁は、前記遊星ローラの径方向外側の端縁よりも、径方向内側に位置する、ホイールイン減速装置。
【請求項11】
請求項1乃至請求項10のいずれか1項に記載のホイールイン減速装置において、
前記遊星ローラは、
前記太陽ローラの外周面に接触する大径面と、
前記大径面よりも前記キャリアピンに近く、前記インタナルリングに接触する小径面と、
を有する、ホイールイン減速装置。
【請求項12】
請求項1乃至請求項11のいずれか1項に記載のホイールイン減速装置と、
前記太陽ローラを回転させるモータと、
を有する、ホイールユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホイールイン減速装置およびホイールユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
車椅子や無人搬送車等の機器では、モータから得られる回転運動を減速させることによりトルクを増加させて、車輪を回転させる。これらの機器においては、従来、ホイールの内側に減速機を配置したホイールイン減速装置を用いることが、知られている。ホイールイン減速装置の一例については、例えば、特開2008−17588号公報に記載されている。
【0003】
特開2008−17588号公報の減速機では、太陽歯車と遊星歯車とを有する遊星歯車機構を用いて、動力を伝達している(段落0027等参照)。また、当該公報の減速機では、複数のベアリングによって、各部材が回動自在に支持されている(段落0029〜0033等参照)。
【特許文献1】特開2008−17588号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、遊星歯車機構においては、太陽歯車と遊星歯車とをスムーズに回転させるために、かみ合わせ部に機械的な隙間(バックラッシュ)を設ける。このため、バックラッシュに起因する振動が生じる場合がある。また、遊星歯車機構における減速比は、構造上10倍程度が限界であるため、より大きな減速比を得たい場合には、複数の減速機構を多段に配置する必要がある。そうすると、ホイールイン減速装置の小型化が困難となる。
【0005】
また、ボールベアリングは、単独で用いると、内輪と外輪との間に僅かながたつきが生じる。当該がたつきは、振動の要因となり得る。このため、ボールベアリングを用いる場合には、特開2008−17588号公報の
図1のように、減速機内に、複数のボールベアリングを配置して、予圧により各ボールベアリングのがたつきを抑える構造が採られる。しかしながら、減速機内に複数のボールベアリングを配置すると、減速機の軸方向の寸法または径方向の寸法が大きくなる。したがって、減速機の小型化が困難となる。
【0006】
つまり、従来のホイールイン減速装置の構造では、振動の低減と小型化とを両立することができなかった。
【0007】
本発明の目的は、ホイールイン減速装置において、振動を抑えながら、軸方向および径方向の寸法を抑制できる構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願の例示的な第1発明は、ホイールイン減速装置であって、回転軸を中心として回転する太陽ローラと、前記太陽ローラの周囲に配置された複数の遊星ローラと、前記複数の遊星ローラに接触する円環状のインタナルリングと、前記インタナルリングを取り囲むハウジングと、前記複数の遊星ローラの各々を回転可能に支持する複数のキャリアピンと、前記複数のキャリアピンの端部に固定されたホイールと、前記ハウジングと前記ホイールとの間に介在する軸受と、を有し、前記複数の遊星ローラは、それぞれ、前記太陽ローラおよび前記インタナルリングの双方に接触しつつ、前記太陽ローラから動力を受けることによって、自転しながら前記回転軸を中心として公転し、前記軸受は、クロスローラベアリングである。
【発明の効果】
【0009】
本願の例示的な第1発明によれば、太陽ローラと複数の遊星ローラとを、互いに接触させながら回転させることで、動力を伝達する。このため、バックラッシュに起因する振動の問題が生じにくい。また、クロスローラベアリングを用いるため、ベアリングの数を抑えながら、部材間の剛性を得ることができる。したがって、ホイールイン減速機を軸方向および径方向の双方に小型化できるとともに、振動の問題をさらに抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、第1実施形態に係るホイールユニットの縦断面図である。
【
図2】
図2は、太陽ローラ、複数の遊星ローラ、インタナルリング、およびハウジングを、
図1中のA−A位置から見た図である。
【
図3】
図3は、ホイールイン減速装置の部分断面図である。
【
図4】
図4は、変形例に係るホイールユニットの縦断面図である。
【
図5】
図4は、変形例に係るホイールイン減速装置の部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の例示的な実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、本願では、太陽ローラの回転軸と平行な方向を「軸方向」、回転軸に直交する方向を「径方向」、回転軸を中心とする円弧に沿う方向を「周方向」、とそれぞれ称する。ただし、上記の「平行な方向」は、略平行な方向も含む。また、上記の「直交する方向」は、略直交する方向も含む。また、以下では、説明の便宜上、
図1中の右側を「入力側」、
図1中の左側を「出力側」、とそれぞれ称する。
【0012】
<1.第1実施形態>
図1は、本発明の第1実施形態に係るホイールイン減速装置300を含むホイールユニット1の縦断面図である。このホイールユニット1は、モータ100から得られる第1回転数の回転運動を、第1回転数よりも低い第2回転数の回転運動に変換して、ホイール70を回転させるユニットである。ホイールユニット1は、例えば、車椅子、無人搬送車、電動立ち乗り二輪車、電動歩行アシストカー、椅子型電動車等の車輪に組み込まれて使用される。ただし、本発明のホイールイン減速装置およびホイールユニットは、他の用途に使用されるものであってもよい。
【0013】
図1に示すように、本実施形態のホイールユニット1は、モータ100と、取付板200と、ホイールイン減速装置300とを有する。
【0014】
モータ100は、ホイールユニット1の動力源となる電動機である。
図1に示すように、モータ100は、モータケーシング101とシャフト102とを有する。モータケーシング101の内部には、複数のコイルを有するステータと、マグネットを有するロータとが、設けられている。シャフト102は、回転軸9に沿って配置され、その出力側の端部が、モータケーシング101から突出している。コイルに通電すると、ステータとロータとの間に生じる磁力によって、ロータおよびシャフト102が、回転軸9を中心として回転する。
【0015】
取付板200は、モータ100にホイールイン減速装置300を取り付けるための板状の部材である。取付板200は、回転軸9に対して略垂直に配置されている。取付板200は、径方向内側の端部付近において、モータケーシング101に固定される。
図1の例では、モータケーシング101の出力側の面に、取付板200がねじ止めされている。ただし、モータケーシング101に対する取付板200の固定方法は、ねじ止め以外の方法であってもよい。また、取付板200は、径方向外側の端部付近において、後述するハウジング50に固定される。これにより、モータケーシング101とハウジング50とが、同軸に配置される。
【0016】
ホイールイン減速装置300は、シャフト102の回転運動を、減速させながらホイール70に伝達する装置である。このホイールイン減速装置300には、太陽ローラ10の表面と複数の遊星ローラ20の表面とを、互いに接触させながら回転させることで動力を伝達する、いわゆるトラクション型の遊星減速機構が用いられている。
図1に示すように、本実施形態のホイールイン減速装置300は、1つの太陽ローラ10、複数の遊星ローラ20、インタナルリング30、加圧機構40、ハウジング50、複数のキャリアピン60、ホイール70、およびクロスローラベアリング80を有する。
【0017】
図2は、太陽ローラ10、複数の遊星ローラ20、インタナルリング30、およびハウジング50を、
図1中のA−A位置から見た図である。
図3は、インタナルリング30、加圧機構40、ハウジング50、およびクロスローラベアリング80を含むホイールイン減速装置300の部分断面図である。以下では、
図1〜
図3を参照しながら、ホイールイン減速装置300の詳細について説明する。
【0018】
太陽ローラ10は、回転軸9と同軸に配置された、円筒状の部材である。モータ100のシャフト102は、太陽ローラ10の中央の円孔に圧入される。これにより、太陽ローラ10が、シャフト102の外周面に固定される。モータ100を駆動させると、シャフト102とともに太陽ローラ10も、回転軸9を中心として第1回転数で回転する。
【0019】
複数の遊星ローラ20は、太陽ローラ10の周囲に配置された、円板状の部材である。
図2に示すように、本実施形態では、太陽ローラ10の周囲に、3個の遊星ローラ20が等間隔に配置されている。ただし、ホイールイン減速装置300が有する遊星ローラ20の数は、2個であってもよく、4個以上であってもよい。各遊星ローラ20は、中央にピン孔21を有する。当該ピン孔21には、後述するキャリアピン60が挿入される。各遊星ローラ20は、このキャリアピン60によって、回転自在に支持される。
【0020】
図1および
図3に示すように、本実施形態の遊星ローラ20は、ピン孔21を取り囲む円環状の肉厚部22と、肉厚部22のさらに外側を取り囲む円環状の肉薄部23と、を有する。肉薄部23の軸方向の厚みは、肉厚部22の軸方向の厚みよりも、薄い。肉薄部23の外周面は、太陽ローラ10の外周面に接触する大径面24となっている。また、肉厚部22と肉薄部23との境界には、後述するインタナルリング30に接触する一対の段差面である小径面25が、設けられている。各小径面25は、肉薄部23から軸方向に遠ざかるにつれて縮径するように、傾斜している。
【0021】
このように、本実施形態の遊星ローラ20は、太陽ローラ10とインタナルリング30とに、異なる面で接触する。そして、インタナルリング30に接触する面は、太陽ローラ10に接触する面よりも、キャリアピン60に近い。このようにすれば、インタナルリング30に沿う遊星ローラ20の公転速度が遅くなる。その結果、太陽ローラおよびインタナルリングに遊星ローラの同じ面が接触する場合と比べて、ホイールイン減速装置300の減速比を高めることができる。
【0022】
インタナルリング30は、肉薄部23の入力側に配置された第1リング部材31と、肉薄部23の出力側に配置された第2リング部材32と、を有する。第1リング部材31および第2リング部材32は、それぞれ、回転軸9を中心とする円環状の部材である。
図3に示すように、第1リング部材31の内周部には、円環状の第1加圧面311が設けられている。第1加圧面311は、遊星ローラ20の入力側の小径面25に対向するとともに、当該小径面25に向かって突出するように湾曲している。また、第2リング部材32の内周部には、円環状の第2加圧面321が設けられている。第2加圧面321は、遊星ローラ20の出力側の小径面25に対向するとともに、当該小径面25に向かって突出するように湾曲している。各遊星ローラ20の一対の小径面25は、第1加圧面311および第2加圧面321に、それぞれ接触する。
【0023】
加圧機構40は、インタナルリング30を出力側へ加圧する機構である。本実施形態の加圧機構40は、複数のコイルばね41を有する。複数のコイルばね41は、第1リング部材31と取付板200との間に、周方向に等間隔に配置される。各コイルばね41は、自然長よりも軸方向に圧縮されている。このため、コイルばね41の反発力によって、第1リング部材31が、出力側へ加圧される。
【0024】
第1リング部材31が出力側へ加圧されると、第1リング部材31の第1加圧面311と第2リング部材32の第2加圧面321との間に、遊星ローラ20が挟まれる。そして、第1加圧面311が遊星ローラ20の入力側の小径面25を押圧するとともに、第2加圧面321が遊星ローラ20の出力側の小径面25を押圧する。これにより、遊星ローラ20が径方向内側へ加圧される。その結果、遊星ローラ20と太陽ローラ10とが、互いに接触した状態に維持される。
【0025】
なお、加圧機構40に、コイルばね41に代えて、板ばね等の他の弾性部材が用いられていてもよい。
【0026】
このように、複数の遊星ローラ20は、それぞれ、太陽ローラ10およびインタナルリング30の双方と、常に接触する。このため、太陽ローラ10が回転すると、複数の遊星ローラ20は、太陽ローラ10からの動力を受け、太陽ローラ10との間の摩擦によって自転する。また、複数の遊星ローラ20は、インタナルリング30との間の摩擦により、インタナルリング30に沿って、回転軸9の周囲を公転する。このとき、遊星ローラ20の公転の回転数は、第1回転数よりも低い第2回転数となる。
【0027】
ハウジング50は、複数の遊星ローラ20、インタナルリング30、および後述するクロスローラベアリング80の周囲を取り囲む、略円筒状の部材である。本実施形態のハウジング50は、大径部51と、大径部51よりも出力側に位置し、大径部51よりも径が小さい小径部52と、を有する。大径部51は、複数の遊星ローラ20およびインタナルリング30の径方向外側に位置する。小径部52は、後述するクロスローラベアリング80の径方向外側に位置する。ハウジング50は、大径部51の入力側の端部において、取付板200に固定される。
【0028】
複数のキャリアピン60は、複数の遊星ローラ20を、それぞれ回転可能に支持する。各キャリアピン60は、円柱状の部材であり、回転軸9と平行に配置される。各キャリアピン60の入力側の端部は、遊星ローラ20のピン孔21に挿入される。また、各キャリアピン60の出力側の端部は、後述する第1ホイール部材71に、圧入等で固定される。
【0029】
ホイール70は、第1ホイール部材71と第2ホイール部材72とを有する。第1ホイール部材71は、ホイール70の中央部を構成する、軸方向に見て円形の部材である。第1ホイール部材71は、太陽ローラ10および複数の遊星ローラ20よりも出力側、かつ、ハウジング50よりも径方向内側に位置する。第1ホイール部材71の入力側の面には、複数のキャリアピン60が、それぞれ固定される。また、第1ホイール部材71の出力側の面には、円形の凹部711が設けられている。これにより、本実施形態のホイール70は、凹部711が無い場合と比べて、軽量化されている。
【0030】
第2ホイール部材72は、第1ホイール部材71の径方向外側に位置する環状の部材である。第2ホイール部材72は、環状板部721と外筒部722とを有する。環状板部721は、第1ホイール部材71の周囲において、環状に広がる。環状板部721の径方向内側の端縁は、第1ホイール部材71に、例えばボルト止め等で固定される。外筒部722は、環状板部721の径方向外側の端部から、入力側へ向けて円筒状に延びる。外筒部722は、ハウジング50よりも径方向外側に位置する。
【0031】
ホイールユニット1の使用時には、例えば、外筒部722の外周面に、ゴム製のタイヤが取り付けられる。その場合、ホイール70に取り付けられた当該タイヤの外周面が、接地面となる。ただし、タイヤを省略して、外筒部722の外周面を、地面に直接接触させるようにしてもよい。また、ホイール70を、車輪の中央で複数のスポークを繋ぐハブとして用いてもよい。
【0032】
複数の遊星ローラ20が減速後の第2回転数で公転すると、それに伴い、複数のキャリアピン60も、回転軸9を中心として、第2回転数で回転する。また、複数のキャリアピン60が回転すると、キャリアピン60に固定されたホイール70も、回転軸9を中心として、第2回転数で回転する。これにより、車輪が駆動される。
【0033】
クロスローラベアリング80は、ハウジング50とホイール70との間に介在する軸受である。本実施形態では、ハウジング50の小径部52の内周面と、第1ホイール部材71の円筒状の外周面との間に、クロスローラベアリング80が配置される。
図3に示すように、クロスローラベアリング80は、内輪81と外輪82との間に、複数の円筒ころ83を有する。複数の円筒ころ83は、内輪81に設けられた環状のV溝と、外輪82に設けられた環状のV溝との間に、向きを交互に変えながら配置される。これにより、内輪81と外輪82との間に、高い剛性を得ることができる。
【0034】
したがって、クロスローラベアリング80は、ボールベアリングのように一対で用いずとも、軸方向および径方向に、必要な剛性を得ることができる。すなわち、クロスローラベアリング34を用いることで、ホイールイン減速装置300内の軸受の数を減らすことができる。その結果、ホイールイン減速装置300を軸方向および径方向の双方に小型化できるとともに、ホイールイン減速装置300を軽量化できる。
【0035】
特に、本実施形態では、ホイール70の外筒部722とハウジング50との間ではなく、ホイール70の中央部である第1ホイール部材71とハウジング50との間に、クロスローラベアリング80が配置されている。このようにすれば、クロスローラベアリング80を小径化できる。したがって、クロスローラベアリング80自体の重量を低減できる。また、ホイール70の外筒部722とハウジング50との間には、軸受が介在しないので、ホイール70の外径を、より小さくすることができる。
【0036】
また、本実施形態では、クロスローラベアリング80の径方向外側の端縁が、遊星ローラ20の径方向外側の端縁よりも、径方向内側に位置する。このようにすれば、クロスローラベアリング80をより小型化できる。したがって、クロスローラベアリング80自体の重量を、より低減できる。その結果、ホイールイン減速装置300を、より軽量化できる。
【0037】
また、本実施形態では、クロスローラベアリング80の径方向内側に、複数のキャリアピン60が位置する。そして、クロスローラベアリング80の一部分と、第1ホイール部材71に埋め込まれたキャリアピン60の一部分とが、径方向に重なる。このようにすれば、クロスローラベアリング80とキャリアピン60とを、異なる軸方向位置に配置する場合と比べて、クロスローラベアリング80およびキャリアピン60の全体としての軸方向の寸法を、抑えることができる。したがって、ホイールイン減速装置300を、軸方向により薄型化できる。
【0038】
図3に示すように、本実施形態では、クロスローラベアリング80の内輪81が、第1ホイール部材71と第2ホイール部材72との間に、軸方向に挟まれている。すなわち、第1ホイール部材71と第2ホイール部材72とを利用して、内輪81が軸方向に固定されている。このようにすれば、内輪81を固定するための部品点数を低減できる。その結果、ホイールイン減速装置300をより小型化できる。また、第1ホイール部材71と第2ホイール部材72とを固定するときに、内輪81の軸方向の位置決めを、同時に行うことができる。
【0039】
なお、内輪81と第1ホイール部材71との間、または、内輪81と第2ホイール部材72との間に、他の部材が介挿されていてもよい。
【0040】
また、
図3に示すように、本実施形態では、インタナルリング30の第2リング部材32と、クロスローラベアリング80の外輪82との間に、環状の部材であるリングベース84が設けられている。そして、クロスローラベアリング80の外輪82が、ハウジング50とリングベース84との間に、軸方向に挟まれている。加圧機構40が第1リング部材31を加圧すると、第1リング部材31、遊星ローラ20、第2リング部材32、およびリングベース84を介して、外輪82に、出力側へ向かう圧力が与えられる。これにより、外輪82がハウジング50に押し付けられて、軸方向に固定される。
【0041】
このように、本実施形態では、加圧機構40が、遊星ローラ20を太陽ローラ10に接触させる役割と、クロスローラベアリング80の外輪82を軸方向に固定する役割と、の双方を果たす。このようにすれば、加圧機構の数を低減できる。その結果、ホイールイン減速装置300をより小型化できる。なお、リングベース84と外輪82との間に、さらに他の部材を介在させてもよい。また、リングベース84を省略し、第2リング部材32の出力側の面を、クロスローラベアリング80の外輪82に、直接接触させてもよい。
【0042】
また、上述の通り、このホイールイン減速装置300では、太陽ローラ10の表面と複数の遊星ローラ20の表面とを、互いに接触させながら回転させることで、動力を伝達する。このため、歯車同士の噛み合わせによって動力を伝達する場合と比べて、噛み合わせ部の機械的隙間(バックラッシュ)に起因する振動の問題が、生じにくい。また、このホイールイン減速装置300では、高剛性のクロスローラベアリング80を用いることで、ハウジング50とホイール70との間のがたつきが、抑制されている。すなわち、本実施形態の構造を採れば、振動の極めて少ないホイールイン減速装置300を実現できる。
【0043】
特に、近年では、電動立ち乗り二輪車、電動歩行アシストカー、椅子型電動車等の新しいタイプの二輪車の開発が活発に進められている。これらの二輪車では、二輪のみでバランスを制御しながら静止することが求められる。もし、ホイールユニットに細かな振動があると、静止時において利用者に不安感を与えることとなる。そこで、これらの二輪車に、本実施形態のホイールユニット1を組み込めば、静止時における二輪車の振動を、大幅に減らせると考えられる。本発明のホイールイン減速装置およびホイールユニットは、このような用途に、特に適していると言える。
【0044】
<2.変形例>
以上、本発明の例示的な実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではない。
【0045】
図4は、一変形例に係るホイールイン減速装置300Aを含むホイールユニット1Aの縦断面図である。
図4の例では、ホイール70Aが一部材で形成されている。すなわち、ホイール70Aの中央部71Aから外筒部722Aまでが、単一の部材となっている。このようにすれば、ホイール70Aの部品点数が低減される。また、ホイール70Aの小型化も、よりしやすくなる。
【0046】
図5は、他の変形例に係るホイールイン減速装置300Bの部分断面図である。
図5の例では、クロスローラベアリング80Bの外輪82Bと、リングベース84Bとの間に、ばね等の弾性体85Bが設けられている。弾性体85Bは、自然長よりも軸方向に圧縮された状態で、外輪82Bとリングベース84Bとの間に介挿される。このようにすれば、ハウジング50Bに対して、クロスローラベアリング80Bの外輪82Bを、より安定して押し付けることができる。したがって、外輪82Bの軸方向の位置を、よりしっかりと固定できる。
【0047】
また、上記の実施形態では、遊星ローラ20が、太陽ローラ10とインタナルリング30とに、異なる面で接触していた。しかしながら、本発明のホイールイン減速装置は、太陽ローラとインタナルリングとに、遊星ローラの同じ面が接触する構造であってもよい。
【0048】
ホイールイン減速装置を構成する各部材の材料には、例えば、高強度の金属を用いればよい。ただし、各部材の材料は、使用時の負荷に耐え得るものであればよく、必ずしも金属には限定されない。
【0049】
また、ホイールイン減速装置およびホイールユニットの細部の形状については、本願の各図に示された形状と相違していてもよい。また、上記の実施形態や変形例に登場した各要素を、矛盾が生じない範囲で、適宜に組み合わせてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明は、ホイールイン減速装置およびホイールユニットに利用できる。
【符号の説明】
【0051】
1,1A ホイールユニット
9 回転軸
10 太陽ローラ
20 遊星ローラ
21 ピン孔
22 肉厚部
23 肉薄部
24 大径面
25 小径面
30 インタナルリング
31 第1リング部材
32 第2リング部材
40 加圧機構
41 コイルばね
50,50B ハウジング
51 大径部
52 小径部
60 キャリアピン
70,70A ホイール
71 第1ホイール部材
71A 中央部
72 第2ホイール部材
80,80B クロスローラベアリング
81 内輪
82,82B 外輪
83 円筒ころ
84,84B リングベース
85B 弾性体
100 モータ
101 モータケーシング
102 シャフト
200 取付板
300,300A,300B ホイールイン減速装置
311 第1加圧面
321 第2加圧面
711 凹部
721 環状板部
722 外筒部