【解決手段】フィールドに設置されたフィールド機器(V1)に不具合が発生した不具合発生時点に関する情報を取得する不具合時点情報取得部(21)と、前記フィールド内で発生したイベントのうち、前記不具合発生時点よりも前の所定の時間範囲内で発生したイベントおよび前記イベントの発生したイベント発生時点に関するイベント情報を取得するイベント情報取得部(22)と、前記イベント情報取得部(22)が取得したイベント情報を不具合要因候補として出力する不具合要因候補出力部(23)とを備えるようにする。
前記不具合要因候補出力部は、前記イベント情報取得部が複数の前記イベント情報を取得した場合、前記不具合発生時点と前記イベント発生時点との時間的な近さに基づいて前記不具合要因候補の優先順位を決定する候補順位決定部と、
前記優先順位を表す情報を付加した前記不具合要因候補を出力する出力部と
を更に備えることを特徴とする請求項1に記載の不具合要因特定支援装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、フィールド機器の不具合には、例えば、フィールド機器自身の老朽化に伴って徐々に進行する不具合と、バルブ開度異常のような突発的に発生する不具合とがある。このうち、突発的に発生する不具合は、オペレータが容易に認識できるので、フィールド機器自体の故障として認識され易い。
【0007】
しかしながら、実際には、突発的に発生した不具合の中には、その不具合が認識されたフィールド機器自体の故障によって発生したものではないケースも存在する。例えば、配管に取り付けられたバルブの位置よりも上流側の位置に取り付けられた上流側機器に対するオペレータの操作ミス、人為的な過失がフィールド機器の不具合を引き起こす要因となることも考えられる。
【0008】
このように、フィールド機器の不具合の要因を特定することは容易ではない。しかし、一般的には、フィールド機器を製造したメーカーと、それらのフィールド機器を利用するユーザとは異なる企業であるため、不具合の要因が曖昧となると、責任者を特定できず、フィールド機器の不具合からメーカーとユーザとの間のビジネストラブルに発展するおそれもある。
【0009】
そこで、本発明は、フィールド機器の不具合の要因を特定する作業を支援する不具合要因特定支援装置および不具合要因特定支援方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この目的を達成するために、本発明にかかる不具合要因特定支援装置は、フィールドに設置されたフィールド機器(V1)に不具合が発生した不具合発生時点に関する情報を取得する不具合時点情報取得部(21)と、前記フィールド内で発生したイベントのうち、前記不具合発生時点よりも前の所定の時間範囲内で発生したイベントおよび前記イベントの発生したイベント発生時点に関するイベント情報を取得するイベント情報取得部(22)と、前記イベント情報取得部(22)が取得したイベント情報を不具合要因候補として出力する不具合要因候補出力部(23、28)とを備えるようにする。
【0011】
本発明において、前記不具合要因候補出力部(23)は、前記イベント情報取得部(22)が複数の前記イベント情報を取得した場合、前記不具合発生時点と前記イベント発生時点との時間的な近さに基づいて前記不具合要因候補の優先順位を決定する優先順位決定部(24)と、前記優先順位を表す情報を付加した前記不具合要因候補を出力する出力部(30)とを更に備えるようにする。
【0012】
本発明において、前記不具合が発生した前記フィールド機器(V1)の位置を示す不具合機器位置情報を取得する不具合機器位置情報取得部(26)と、前記イベントが発生した位置を示すイベント発生位置情報を取得するイベント発生位置情報取得部(27)とを更に備え、前記候補順位決定部(29)は、前記不具合発生時点と前記イベント発生時点との時間的な近さ、および、前記不具合が発生した前記フィールド機器の位置と前記イベント発生位置との位置的な近さに応じて、前記不具合要因候補の優先順位を決定するようにする。
【0013】
本発明において、前記候補順位決定部(29)は、前記時間的な近さ、および、前記位置的な近さに対して重み付けすることにより前記イベント毎の評価値を算出し、前記評価値に基づいて前記不具合要因候補の優先順位を決定するようにしてもよい。
【0014】
本発明において、前記候補順位決定部(29)は、前記時間的な近さを予め規定された正規化指標に基づいて定量化する第1定量化部(29aa)、前記位置的な近さを予め規定された正規化指標に基づいて定量化する第2定量化部(29ab)と、前記時間的な近さの定量化値と前記位置的な近さの定量化値を加算することにより前記イベント毎の評価値を算出する評価値算出部(29b)とを備えるようにしてもよい。
【0015】
本発明において、前記フィールド機器(V1)は、流体の流れる流路系の何れかの位置に設置され、前記イベントは、前記流路系における前記フィールド機器(V1)とは異なる任意の位置で発生し、前記不具合機器位置は、前記流路系の任意の起点からの距離により規定され、前記イベント発生位置は、前記任意の起点からの距離により規定されるようにしてもよい。
【0016】
本発明において、前記フィールド機器(301)は、温度を制御する温度制御系(300a)の何れかの位置に設置され、前記イベントは、前記温度制御系の近傍に存在する他の温度制御系(300b〜300d)の何れかの位置で発生し、前記不具合機器位置は、前記温度制御系(300a)における任意の基準位置からの距離により規定され、前記イベント発生位置は、前記温度制御系(300a)の前記基準位置から前記他の温度制御系(300b〜300d)までの空間的な距離により規定されるようにしてもよい。
【0017】
本発明にかかる不具合要因特定支援方法は、フィールドに設置されたフィールド機器(V1)に不具合が発生した不具合発生時点に関する情報を不具合時点情報取得部(21)により取得する不具合時点情報取得ステップと、前記フィールド内で発生したイベントのうち、前記不具合発生時点よりも前の所定の時間範囲内で発生したイベントおよび前記イベントの発生したイベント発生時点に関するイベント情報をイベント情報取得部(22)により取得するイベント情報取得ステップと、前記イベント情報取得ステップにおいて取得したイベント情報を不具合要因候補として不具合要因候補出力部(23、28)により出力する候補出力ステップとを有するようにする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、不具合発生時点よりも前の所定の時間範囲内で発生したイベントおよびイベントの発生したイベント発生時点に関するイベント情報を不具合要因候補として提供することにより、フィールド機器(50)の不具合要因となったイベントを効率良く特定する支援を行うことができる。
【0019】
本発明によれば、複数のイベント情報を取得した場合、不具合発生時点とイベント発生時点との時間的な近さに基づいて不具合要因候補の優先順位を決定するので、効率的に不具合要因を特定する支援を行うことが可能となる。
【0020】
本発明によれば、不具合発生時点とイベント発生時点との時間的な近さに加えて、不具合機器位置とイベント発生位置との位置的な近さを考慮して不具合要因候補の優先順位を決定するので、効率的かつ高精度に不具合要因を特定する支援を行うことが可能となる。
【0021】
本発明によれば、候補順位決定部(29)は、時間的な近さを表す値、および、位置的な近さを表す値に対してそれぞれ重み付けしたイベント毎の評価値を算出し、この評価値に基づいて不具合要因候補の優先順位を決定するので、時間的な近さを重要視して不具合要因候補の優先順位を決定したり、位置的な近さを重要視して不具合要因候補の優先順位を決定することが可能となる。
【0022】
本発明によれば、候補順位決定部(29)は、第1定量化部(29aa)により時間的な近さを表す値を定量化し、第2定量化部(29ab)により位置的な近さを表す値を定量化し、時間的な近さの定量化値と位置的な近さの定量化値を加算することによりイベント毎の評価値を算出するので、時間、位置という概念の異なるパラメータであっても定量化した値から求めた評価値に基づいて不具合要因候補の優先順位を決定することが可能となる。
【0023】
本発明によれば、不具合機器位置は、流路系における任意の起点からの距離により規定され、イベント発生位置は、任意の起点からの距離により規定されるため、一つの流路系の中での不具合機器位置とイベント発生位置との位置的な近さを考慮し、機器の不具合要因と関連性の高いイベントのイベント情報を不具合要因候補として提供することが可能となる。
【0024】
本発明によれば、不具合機器位置は、温度制御系(300a)における任意の基準位置からの距離により規定され、イベント発生位置は、温度制御系(300a)の基準位置から他の温度制御系(300b〜300d)までの空間的な距離により規定されるため、温度制御系(300a)の他の温度制御系(300b〜300d)との間に系としての連続性が無い場合でも、不具合機器位置とイベント発生位置との空間的な位置の近さを考慮し、機器の不具合要因と関連性の高いイベントのイベント情報を不具合要因候補として出力することができる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
<実施の形態>
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態について説明する。
【0027】
<第1の実施の形態>
<不具合要因特定支援システムの構成>
図1に示すように、本発明の第1の実施の形態にかかる不具合要因特定支援システム100は、監視装置10、不具合要因特定支援装置20および表示装置31を備えており、流路系に設けられたフィールド機器に対して生じた不具合の要因を特定する支援を行うものである。ここで、流路系とは、流体の流れる配管、その配管に設置されるバルブV1〜V3、センサS1〜S3等のフィールド機器を含む系のことである。この流路系は、コントローラ12、13とネットワークNWを介して監視装置10によって監視されている。
【0028】
この場合のフィールド機器は、例えばバルブV1〜V3およびセンサS1〜S3であり、バルブV1〜V3およびセンサS1〜S3はそれぞれ同一構造を有している。また、第1の実施の形態においては、バルブV1に不具合が発生したものとして以下説明する。
【0029】
バルブV1は、
図2に示すように、バルブ本体51の上流側流路51aから下流側流路51bに流れる流体の流量を弁座51cに対する弁体52の鉛直上下方向の位置に応じたバルブ開度に応じて制御するものである。また、バルブV1は、検出レバー53を介して検出した弁体52の鉛直上下方向の位置をポジショナ54により検出し、それをバルブ開度情報として出力する。
【0030】
<監視装置の構成>
図3に示すように、監視装置10は、機器監視部10a、不具合検出部10b、不具合記録部10c、不具合通知部10d、および、イベント記録部10eを備えている。
【0031】
機器監視部10aは、コントローラ12からバルブV1〜V3に対するバルブ開度量を表す指令、および、バルブV1〜V3のポジショナ54からの実際のバルブ開度量を表すバルブ開度情報を監視するものである。
【0032】
不具合検出部10bは、機器監視部10aにおいて監視しているバルブ開度量の指令およびバルブ開度情報に基づいてバルブV1の不具合を検出するものである。具体的には、不具合検出部10bは、コントローラ12からのバルブ開度量の指令に対して実際のバルブV1のバルブ開度量が一致しておらず、大きな差異がある場合にバルブV1に不具合があると検出する。バルブV1の不具合とは、バルブ開度異常等の動作不良や、バルブ破損等の故障のようなバルブV1が正常に動作できない状態にあることをいう。
【0033】
図4は、コントローラ12からのバルブV1に対するバルブ開度量の指令と、その指令に応じて実際にバルブV1が動作したときのバルブ開度情報とのずれを表したグラフである。
【0034】
コントローラ12からバルブV1に対するバルブ開度量の指令が与えられているとき、不具合検出部10bは、その指令のバルブ開度量とバルブV1の実際のバルブ開度量との差分Δを求める。そして不具合検出部10bは、差分Δが所定の閾値thを超えている場合、バルブV1に突発的なバルブ開度異常が発生していると判断する。
【0035】
図5は、バルブV1の時系列(日時)に沿ったバルブ開度分布を示すヒストグラムであり、バルブV1に対するバルブ開度量の指令に対して規定時間(例えば24時間)内に実測されるバルブ開度別頻度の分布を1時間毎に示したものである。すなわち、バルブV1が理想的に正常な動作状態であれば、バルブ開度量の指令と一致するバルブ開度量(この場合、50%〜60%)の範囲内のみにバルブ開度分布が集中する。
【0036】
ここで、バルブV1のバルブ開度異常が突発的(急激)に発生するということは、コントローラ12から指令されたバルブ開度量(50%〜60%)のみにバルブ開度分布が集中している状態から、その指令から乖離したバルブ開度量が頻繁に実測される状態へと急激に移行することである。
【0037】
2月18日7時の時点では、バルブ開度量(50%〜60%)の領域に9割程度分布しているが、バルブ開度量(40%〜50%)の領域にも1割程度分布しているように、コントローラ12からの指令とは乖離したバルブV1のバルブ開度量が実測されている。したがって、不具合検出部10bは、バルブV1に「バルブ開度異常」という突発的な不具合が発生している時点が「2月18日7時」であると判断する。
【0038】
不具合検出部10bは、「バルブ開度異常」という不具合の具体的内容を示す情報(以下、これを「不具合内容情報」と呼ぶ。)と、「2月18日7時」という不具合が発生した時点の不具合発生日時を示す情報(以下、これを「不具合時点情報」と呼ぶ。)とを含む不具合情報を生成する。
【0039】
不具合記録部10cは、不具合検出10bにより生成されたバルブV1の不具合情報(不具合内容情報および不具合時点情報)をデータベース11に記録する。この場合、不具合記録部10cは、不具合時点情報で示される日時(2月18日7時)と不具合内容情報とを対応付けたテーブルの状態でデータベース11に記録する。
【0040】
不具合通知部10dは、不具合検出部10bによりバルブV1に突発的な不具合が発生していることが検出されると、そのことを意味する不具合検出信号を不具合要因特定支援装置20へ通知するものである。
【0041】
イベント記録部10eは、フィールド内の流路系においてオペレータにより何らかのイベントが行われた場合の当該イベントの内容を表す情報(以下、これを「イベント情報」と呼ぶ。)をデータベース11に記録するものである。ここで、イベントとは、不具合発生対象であるバルブV1以外の他のフィールド機器に対するオペレータのメンテナンス作業、部品交換や修理等のオペレータによる何らかの作業や、コントローラ12、13により他のフィールド機器を動作させたときの事象のことである。
【0042】
このイベント情報には、オペレータによるメンテナンス作業や修理等のイベントの具体的内容を示す情報(以下、これを「イベント内容情報」と呼ぶ。)、および、イベントが発生した時点のイベント発生日時を示す情報(以下、これを「イベント時点情報」と呼ぶ。)が含まれている。
【0043】
イベント記録部10eは、イベントを実行したオペレータにより入力されたイベント情報のイベント内容情報とイベント時点情報とを互いに対応付けたテーブルの状態でデータベース11に記憶する。なお、このイベント記録部10eによるイベント情報の記録は、不具合情報のデータベース11に対する記録とは別個独立して行われる。
【0044】
このような監視装置10は、CPU(Central Processing Unit)、メモリ、インタフェース等からなるコンピュータ(ハードウェア)にコンピュータプログラム(ソフトウェア)をインストールすることによって各部の機能が実現される。すなわち、監視装置10における機器監視部10a、不具合検出部10b、不具合記録部10c、不具合通知部10d、および、イベント記録部10eの機能は、コンピュータの各種ハードウェア資源とコンピュータプログラムとが協働することによって実現される。
【0045】
<不具合要因特定支援装置の構成>
不具合要因特定支援装置20は、不具合情報取得部21、イベント情報取得部22、および不具合要因候補出力部23を備えている。不具合要因候補出力部23は、時点照合部24および出力部30を備えている。
【0046】
不具合情報取得部21は、監視装置10からバルブV1の不具合情報を取得するものである。具体的には、不具合情報取得部21は、監視装置10の不具合通知部10dからバルブV1の不具合検出信号が通知された場合、その監視装置10に対してその不具合検出信号に対応した不具合情報を要求する。
【0047】
不具合情報取得部21は、監視装置10の不具合記録部10cを介してデータベース11から読み出された不具合情報を取得すると、この不具合情報を時点照合部24へ出力するとともに、不具合情報のうち不具合時点情報をイベント情報取得部22へ出力する。
【0048】
イベント情報取得部22は、監視装置10からイベント情報を取得するものである。具体的には、イベント情報取得部22は、不具合情報取得部21から受け取った不具合時点情報が示す不具合発生日時から過去48時間前まで遡った時間範囲内のイベント情報を監視装置10に要求する。
【0049】
ここで、不具合発生日時から過去48時間前まで遡った時間範囲とは、バルブ開度分布(
図5)を集計する際の規定時間(24時間)の2倍に相当する時間範囲であるが、48時間に限らず任意の時間範囲に設定することが可能である。
【0050】
イベント情報取得部22は、監視装置10のイベント記録部10eを介してデータベース11から読み出された複数のイベント情報を取得すると、このイベント情報を時点照合部24へ出力する。
【0051】
時点照合部24は、不具合情報取得部21から受け取った不具合情報に含まれる不具合時点情報(不具合発生日時)と、イベント情報取得部22から受け取った2つのイベント情報に含まれるイベント時点情報(イベント発生日時)とをそれぞれ照合し、不具合発生日時とイベント発生日時との日時を比較するものである。具体的には、時点照合部24は、不具合発生日時とイベント発生日時とを比較し、両者の時間的な近さを、不具合要因候補を決定する際の判断材料とする。
【0052】
ここで、時点照合部24は、過去48時間前まで遡った時間範囲の中に10個のイベント情報が存在している場合でも、不具合発生日時とイベント発生日時との時間的な近さが例えば20時間以内、すなわち不具合発生日時から例えば過去20時間前までの時間範囲内に2つのイベント情報が存在するときは、その2つのイベント情報を候補とする。ただし、時点照合部24は、過去48時間前まで遡った時間範囲の中に10個のイベント情報が存在する場合に、その全部をイベント情報の候補としても良い。
【0053】
時点照合部24は、不具合発生日時から過去20時間前までの時間範囲内に存在する2つのイベント情報のうち、不具合発生日時と時間的に最も近いイベント発生日時の第1イベント情報を第1不具合要因候補として決定し、不具合発生日時と時間的に次に近い第2イベント情報を第2不具合要因候補として決定する。その後、時点照合部24は、不具合情報および第1、第2イベント情報に基づいて不具合要因候補の一覧画像データを生成し、これを出力部30へ供給する。
【0054】
出力部30は、時点照合部24から供給された不具合要因候補の一覧画像データを外部の表示装置31へ出力するものである。
【0055】
この不具合要因特定支援装置20についても、CPU、メモリ、インタフェース等からなるコンピュータ(ハードウェア)にコンピュータプログラム(ソフトウェア)をインストールすることによって実現され、当該不具合要因特定支援装置20の各部の機能は、コンピュータの各種ハードウェア資源とコンピュータプログラムとが協働することによって実現される。
【0056】
<表示装置の構成>
表示装置31は、LCD(Liquid Crystal Display)等からなるモニタやパーソナルコンピュータであり、出力部30から出力された不具合要因候補の一覧画像データを受信し、その一覧画像データに対応した不具合要因候補一覧画面を表示して提供するものである。
【0057】
<不具合要因特定支援装置の動作>
不具合要因特定支援装置20の不具合情報取得部21は、監視装置10の不具合通知部10dからバルブV1の不具合検出信号が通知されると、その監視装置10から不具合情報を取得して、不具合情報に含まれている不具合時点情報をイベント情報取得部22へ出力するとともに、不具合情報を不具合要因特定支援部23の時点照合部24へ出力する。
【0058】
イベント情報取得部22は、不具合情報取得部21から不具合時点情報を受け取ると、この不具合時点情報が示すバルブV1の不具合発生日時である2015年2月18日7時から過去48時間前まで遡った時間範囲内に記憶された10個のイベント情報を監視装置10のイベント記録部10eから取得する。そして、イベント情報取得部22は、10個のイベント情報のうち、過去20時間の範囲内に存在する2つのイベント情報を候補として抽出する。
【0059】
例えば、イベント情報取得部22は、バルブV1の不具合発生日時の約10時間前に実施されていた第1イベント情報と、バルブV1の不具合発生日時の約16時間前に実施されていた第2イベント情報とを候補とする。
【0060】
ここで、第1イベント情報は、不具合発生日時の約10時間前である2015年2月17日21時に、バルブV1が取り付けられている配管の上流側に設置されている配管部品Aの一部を交換するというメンテナンス作業が実施されたという第1イベントに関するイベント情報である。
【0061】
また、第2イベント情報は、不具合発生日時の約16時間前である2015年2月17日15時に、上述の配管部品Aよりも更に配管の上流側に設置されているバルブ開度固定式のマニュアルバルブBの点検作業が実施されたという第2イベントに関するイベント情報である。
【0062】
時点照合部24は、不具合情報取得部21から受け取ったバルブV1の不具合情報に含まれる不具合時点情報(不具合発生日時)とイベント情報取得部22から受け取った第1イベント情報に含まれる第1イベント時点情報(不具合発生日時の約10時間前のイベント発生日時)とを比較する。さらに時点照合部24は、不具合時点情報(不具合発生日時)と第2イベント情報に含まれる第2イベント時点情報(不具合発生日時の約16時間前のイベント発生日時)とを比較する。
【0063】
その結果、時点照合部24は、時間的な近さに基づいて不具合要因候補の優先順位を決定し、バルブV1の不具合発生日時と時間的により近い方の第1イベントを第1不具合要因候補とするとともに、次に不具合発生日時と時間的に近い第2イベントを第2不具合要因候補とする。
【0064】
時点照合部24は、その優先順位の順番を表す情報を付加した第1イベント情報、第2イベント情報を第1不具合要因候補、第2不具合要因候補の順番に並べた不具合要因候補の一覧画像データを生成し、これを出力部30へ供給する。
【0065】
出力部30は、不具合要因候補の一覧画像データを表示装置31に出力し、その表示装置31において、
図6に示すように、一覧画像データに対応する不具合要因候補一覧画面G1(以下、これを「候補一覧画面」と呼ぶ。)を表示させる。
【0066】
この候補一覧画面G1には、「不具合」が発生した対象となるフィールド機器が「バルブ」であり、その不具合内容が「開度分布異常」であり、その不具合発生日時が「2015年2月18日7時」であることが提示されている。
【0067】
また、候補一覧画面G1には、第1不具合要因候補として決定された第1イベントの「イベント」の内容が「(1)配管部品A交換」であり、そのイベント発生日時が「2015年2月17日21時」であることが提示されている。同様に、候補一覧画面G1には、第2不具合要因候補として決定された第2イベントの「イベント」の内容が「(2)マニュアルバルブB点検」であり、そのイベント発生日時が「2015年2月17日15時」であることが提示されている。
【0068】
したがって、候補一覧画面G1を確認したオペレータは、バルブV1の不具合要因となる可能性の高い第1不具合要因候補が「(1)配管部品A交換」の第1イベントであり、第2不具合要因候補が「(2)マニュアルバルブB点検」の第2イベントであると認識することができる。
【0069】
オペレータは、第1不具合要因候補である「(1)配管部品A交換」の第1イベントがバルブV1の不具合要因であるか否かを確認するため、配管部品Aを実際に調べることができる。この結果、例えば、配管部品Aの再取付時の取付精度が低く、これによりバルブV1付近の流体の流れに乱流および偏流が発生していたことがバルブV1の開度分布異常の不具合要因であると判明することがある。このような場合、バルブV1の不具合要因の特定作業の効率性を格段に改善できたことになる。
【0070】
ただし、配管部品Aを実際に調べた結果、その「配管部品A交換」という第1イベントがバルブV1の不具合要因ではないと判明した場合でも、不具合要因特定支援装置20は不具合要因を自動的に検出するためのものではなく、あくまで不具合要因の候補を提供するものであるから、不具合要因の特定作業を支援していることに変わりはない。
【0071】
このように不具合要因特定支援装置20は、不具合が発生したバルブV1と、その周辺に存在する配管部品AやマニュアルバルブB等の周辺機器との物理的な因果関係が不明瞭な場合であっても、バルブV1の不具合発生日時と、配管部品Aのイベント発生日時およびマニュアルバルブBのイベント発生日時とを照合すれば、発生日時間の時間的な近さを基準とした優先順位に基づく不具合要因候補を提供することができる。
【0072】
また、不具合要因特定支援装置20は、不具合発生日時とイベント発生日時との時間的な近さだけで不具合要因候補を抽出して提供することにより、バルブV1と直接的な因果関係を有さないためにオペレータが想像し得ないようなバルブV1の不具合要因であっても効率的に特定するよう支援することができる。
【0073】
<第2の実施の形態>
<不具合要因特定支援システムの構成>
図7に示すように、第2の実施の形態にかかる不具合要因特定支援システム200は、監視装置210、不具合要因特定支援装置220および表示装置31によって構成されている。なお、第2の実施の形態において、
図1に示された不具合要因特定支援システム100と同一の構成要素である不具合情報取得部21、イベント情報取得部22、出力部30および表示装置31には同一の符号を用い、その詳細な説明は省略する。
【0074】
<監視装置の構成>
図8に示すように、監視装置210は、第1の実施の形態における監視装置10の機器監視部10a、不具合検出部10b、不具合通知部10dに加えて、不具合機器位置記録部210a、不具合記録部210c、および、イベント記録部210eを備えている。なお、監視装置10の各部と同一の構成要素については同一の符号を用い、その詳細な説明は省略する。
【0075】
不具合機器位置記録部210aは、突発的な不具合が発生したバルブV1の位置情報(以下、これを「不具合機器位置情報」と呼ぶ。)を、上述したバルブV1の不具合情報(不具合内容情報、不具合時点情報)に対応付けてデータベース11に予め記録するものである。不具合機器位置情報とは、バルブV1の配管上の設置位置を表した計装位置情報である。
【0076】
バルブV1の不具合機器位置情報は、例えば、液体αが流れる流路系の配管の最上流側に設けられたタンクの位置を上流側の起点とし、そこから配管の下流側へ向かって45m進んだ位置にバルブV1が設置されている場合、距離「45m」という情報になる。
【0077】
イベント記録部210eは、上述したイベント情報(イベント内容情報およびイベント時点情報)に加えて、そのイベントの発生位置(イベントが発生した他のフィールド機器の配管上の設置位置)を示す情報(以下、これを「イベント発生位置情報」と呼ぶ。)をデータベース11に記録するものである。このイベント発生位置情報についても、イベントを行ったオペレータにより入力される。
【0078】
イベント発生位置情報は、例えば、液体αの流路系の配管の最上流側に設けられたタンクの位置を上流側の起点とし、そこから配管の下流側に向かって43m進んだ位置に配管部品Aが設置されている場合、距離「43m」という情報になる。
【0079】
<不具合要因特定支援装置の構成>
この不具合要因特定支援装置220は、不具合情報取得部21、イベント情報取得部22、不具合機器位置情報取得部26、イベント発生位置情報取得部27、および、不具合要因候補出力部28を備えている。不具合要因候補出力部28は、時点位置照合部29および出力部30を備えている。なお、不具合要因特定支援装置20の各部と同一の構成要素については同一の符号を用い、ここでは、その詳細な説明は省略する。
【0080】
不具合情報取得部21およびイベント情報取得部22は、第1の実施の形態と同様に、監視装置10から取得したバルブV1の不具合情報や、複数のイベント情報を不具合要因候補出力部28の時点位置照合部29へ出力する。
【0081】
不具合機器位置情報取得部26は、突発的な不具合が発生したバルブV1の不具合機器位置情報を監視装置10から取得するものである。イベント発生位置情報取得部27は、イベント情報取得部22により取得されたイベント情報に対応したイベント発生位置情報を監視装置10から取得するものである。
【0082】
時点位置照合部29は、第1定量化部29aa、第2定量化部29ab、評価値算出部29b、および、優先順位決定部29Cを備えている。
【0083】
第1定量化部29aaは、バルブV1の不具合発生日時とイベント発生日時との時間的な近さを予め規定された正規化指標に基づいて定量化するものである。第2定量化部29abは、バルブV1の不具合機器位置とイベント発生位置との位置的な近さを、予め規定された正規化指標に基づいて定量化するものである。
【0084】
評価値算出部29bは、第1定量化部29aaにより時間的な近さを定量化した定量化値と、第2定量化部29abにより位置的な近さを定量化した定量化値とを、所定の重み係数で重み付けして加算することにより、イベント毎の評価値を算出するものである。
【0085】
優先順位決定部29cは、評価値算出部29bにより算出されたイベント毎の評価値に基づいて不具合要因の候補とするイベント情報の優先順位を決定するものであり、その優先順位が示された不具合要因候補の一覧画像データを生成し、これを出力部30へ出力する。出力部30はこの一覧画像データを表示装置31へ出力する。
【0086】
<不具合要因特定支援装置の動作>
不具合要因特定支援装置220の不具合情報取得部21は、監視装置10からの不具合検出信号の通知を受けると、監視装置10から不具合情報を取得し、その不具合情報に含まれている不具合時点情報をイベント情報取得部22へ出力するとともに、不具合情報を不具合要因候補出力部28の時点位置照合部29へ出力する。
【0087】
イベント情報取得部22は、不具合情報取得部21から不具合時点情報を受け取ると、その不具合時点情報が示す2015年2月18日7時から過去48時間前まで遡った時間範囲内に記憶された例えば2つのイベント情報を監視装置10から取得するものとする。
【0088】
例えば、イベント情報取得部22は、バルブV1の不具合発生日時の約16時間前に実施されていた第1イベント(配管部品A交換)に対応する第1イベント情報と、バルブV1の不具合発生日時の約10時間前に実施されていた第2イベント(マニュアルバルブB点検)に対応する第2イベント情報とを取得する。
【0089】
なお、第1の実施の形態では、第1イベントが不具合発生日時の約10時間前、第2イベントが不具合発生日時の約16時間前に実施されていた。しかしながら、第2の実施の形態では、上述した通り、第1イベントが不具合発生日時の約16時間前、第2イベントが不具合発生日時の約10時間前に実施されている場合を一例として以下説明する。ただし、第1イベント情報および第2イベント情報のイベント内容については、第1の実施の形態と同じである。
【0090】
不具合機器位置情報取得部26は、バルブV1の不具合検出信号の通知に応じて、監視装置10に不具合機器位置情報を要求し、その監視装置10の不具合記録部210cを介してバルブV1の不具合機器位置情報を取得すると、この不具合機器位置情報を時点位置照合部29へ出力する。
【0091】
イベント発生位置情報取得部27は、イベント情報取得部22が取得した第1イベント情報および第2イベント情報に対応するイベント発生位置情報を監視装置10に要求する。そしてイベント発生位置情報取得部27は、監視装置10のイベント記録部210bを介して第1イベント情報および第2イベント情報にそれぞれ対応した第1イベント発生位置情報および第2イベント発生位置情報を取得すると、これらを時点位置照合部29へ出力する。
【0092】
具体的には、イベント発生位置情報取得部27は、液体αの流路系の配管の最上流側に設けられたタンクの位置を上流側の起点とし、そこから配管の下流側に向かって43m進んだ位置に配管部品Aが設置されていることを示す第1イベント発生位置情報(距離「43m」)を取得する。
【0093】
また、イベント発生位置情報取得部27は、液体αの流路系の配管の最上流側に設けられたタンクの位置を上流側の起点とし、そこから配管の下流側に向かって20m進んだ位置にマニュアルバルブBが設置されていることを示す第2イベント発生位置情報(距離「20m」)を取得する。
【0094】
この場合、バルブV1が取り付けられている位置よりも2m(45m−43m)だけ上流側の位置に配管部品Aが設置されているとともに、バルブV1の位置よりも25m(45m−20m)だけ上流側の位置にマニュアルバルブBが設置されていることになる。
【0095】
時点位置照合部29の第1定量化部29aaは、バルブV1の不具合発生日時と第1イベント(配管部品A交換)の第1イベント発生日時との時間的な間隔を示す時点間隔Pt1を、予め規定された正規化指標(この場合、48時間)を用いて、次の(式1)のように定量化する。
Pt1=(48h−16h)/48h=0.667…………………………………(式1)
【0096】
また、第1定量化部29aaは、バルブV1の不具合発生日時と第2イベント(マニュアルバルブB点検)の第2イベント発生日時との時間的な間隔を示す時点間隔Pt2を、予め規定された正規化指標(この場合、48時間)を用いて、次の(式2)のように定量化する。なお、正規化指標は、バルブ開度分布(
図4)を集計する際の規定時間(24時間)の2倍に相当する時間とした。
Pt2=(48h−10h)/48h=0.792…………………………………(式2)
【0097】
この(式1)、(式2)によれば、時点間隔Pt1よりも時点間隔Pt2の値の方が大きいため、バルブV1の不具合発生日時に対して、第1イベント(配管部品A交換)の第1イベント発生日時よりも、第2イベント(マニュアルバルブB点検)の第2イベント発生日時の方が時間的に近いことが分かる。
【0098】
続いて、時点位置照合部29の第2定量化部29abは、バルブV1の不具合機器位置(45m)と第1イベント(配管部品A交換)の第1イベント発生位置(43m)との位置的な間隔を示す位置間隔Pd1を、予め規定された正規化指標(この場合、30m)を用いて、次の(式3)のように定量化する。
Pd1=(30m−(45m−43m))/30m=0.933…………………(式3)
【0099】
また、第2定量化部29abは、バルブV1の不具合機器位置と第2イベント(マニュアルバルブB点検)の第2イベント発生位置(20m)との位置的な間隔を示す位置間隔Pd2を、予め規定された正規化指標(この場合、30m)を用いて、次の(式4)のように定量化する。
Pd2=(30m−(45m−20m))/30m=0.167…………………(式4)
【0100】
なお、この場合、正規化指標を距離30mと設定したが、(式3)、(式4)の分子の値が負にならない範囲で任意の距離を設定することができる。ただし、バルブV1の不具合機器位置とイベント発生位置との距離が30mよりも離れている場合、すなわち(式3)、(式4)の分子の値が負になる場合には位置間隔Pd1、Pd2の値を下限値の「0.0」とする。
【0101】
この(式3)、(式4)によれば、位置間隔Pd2よりも位置間隔Pd1の値の方が大きいため、バルブV1の不具合機器位置に対して、第2イベント(マニュアルバルブB点検)の第2イベント発生位置よりも、第1イベント(配管部品A交換)の第1イベント発生位置の方が位置的に近いことが分かる。
【0102】
時点位置照合部29の評価値算出部29bは、(式1)、(式2)により時間的な近さを定量化した定量化値と、(式3)、(式4)により位置的な近さを定量化した定量化値とを、次の(式5)、(式6)に示すように、それぞれ所定の重み係数p、qで重み付けして加算する。これにより評価値算出部29bは、第1イベントの評価値P1、および、第2イベントの評価値P2をそれぞれ算出することができる。
P1=p・Pt1+q・Pd1…………………………………………………………(式5)
P2=p・Pt2+q・Pd2…………………………………………………………(式6)
【0103】
ここで、重み係数p、qを例えばp=1、q=1とすると、第1イベントの評価値P1、および、第2イベントの評価値P2は、次の(式7)、(式8)のようになる。
P1=1×0.667+1×0.933=1.600………………………………(式7)
P2=1×0.792+1×0.167=0.959………………………………(式8)
【0104】
これにより、第2イベントの評価値P2よりも第1イベントの評価値P1の方が大きいことが分かる。なお、重み係数p、qを単純にp=1、q=1としたが、時間的な近さを重要視すれば重み係数pをqよりも大きい値に設定し、位置的な近さを重要視すれば重み係数qをpよりも大きい値に設定すればよい。この重み係数p、qは任意に設定することができる。
【0105】
時点位置照合部29の優先順位決定部29cは、時間的な近さだけを考慮した場合には、時点間隔Pt1よりも時点間隔Pt2の値が大きいため、バルブV1の不具合発生日時に対して、第2イベント(マニュアルバルブB点検)の優先順位を高く決定することになる。しかしながら、優先順位決定部29cは、時間的な近さに加えて位置の近さを考慮した評価値P1、P2を比較すれば、評価値P1が算出された第1イベント(配管部品A交換)の優先順位の方を高く決定することができる。
【0106】
このように時点位置照合部29は、不具合発生日時とイベント発生日時との時間的な近さ、および、不具合機器位置とイベント発生位置との位置的な近さの双方を定量化して加算した評価値P1、P2を算出し、その評価値P1、P2の大きい順番に不具合要因候補の優先順位を決定することができる。
【0107】
また、時点位置照合部29は、バルブV1の不具合機器位置とイベント発生位置との位置的な近さは、同じ流路系として連続性がある配管上の不具合機器位置とイベント発生位置との二位置間距離Pd1、Pd2であるため、時点位置照合部29はバルブV1の不具合要因と関連性の高いイベントのイベント情報を不具合要因候補として提供することができる。
【0108】
時点位置照合部29の優先順位決定部29cは、その決定した優先順位にしたがって第1イベント情報、第2イベント情報を並べた不具合要因候補の一覧画像データを生成し、これを出力部30へ供給する。
【0109】
出力部30は、不具合要因候補の一覧画像データを表示装置31に出力し、その表示装置31において、
図9に示すように、一覧画像データに対応する不具合要因候補一覧画面G2(以下、これを「候補一覧画面」と呼ぶ。)を表示させる。
【0110】
この候補一覧画面G2には、「不具合」が発生した対象となる機器が「バルブ」であり、その不具合内容が「開度分布異常」であり、その不具合発生日時が「2015年2月18日7時」であることが提示されている。
【0111】
また、候補一覧画面G2には、第1不具合要因候補として決定された「第1イベント」の内容が「(1)配管部品A交換」であり、そのイベント発生日時が「2015年2月17日15時」であること、および、第2不具合要因候補として決定された「第2イベント」の内容が「(2)マニュアルバルブB点検」であり、そのイベント発生日時が「2015年2月17日21時」であることが提示されている。
【0112】
さらに、候補一覧画面G2には、第1不具合要因候補および第2不具合要因候補の優先順位を決定したことの根拠を示す評価値P1、P2の値(「1.600」、「0.959」)が表示されている。
【0113】
したがって、候補一覧画面G2を確認したオペレータは、バルブV1の不具合が発生した不具合要因となる可能性の高い第1不具合要因候補が第1イベントの「(1)配管部品A交換」であり、第2不具合要因候補が第2イベントの「(2)マニュアルバルブB点検」であると認識することができる。
【0114】
このように不具合要因特定支援装置220は、バルブV1とイベントとの時間的な近さに加えて、バルブV1とイベントとの位置的な近さを考慮して不具合要因候補の優先順位を決定するので、不具合要因候補のイベントが実際の不具合要因であると特定する際の精度を一段と上げ、効率的に不具合要因を特定する支援を行うことができる。
【0115】
<第3の実施の形態>
図10は、第3の実施の形態において、第2の実施の形態における不具合要因特定支援システム200を適用する温度制御系300の全体構成を示す図である。この場合、温度制御系300を構成するフィールド機器の一要素である例えばヒータ301を不具合要因特定支援システム200の不具合発生対象として以下説明する。
【0116】
この温度制御系300は、箱型形状を有するチャンバ310、チャンバ310の内部空間に、その水平方向に僅かな間隔を開けて重なることなく配置されたヒータ301〜304、そのヒータ301〜304と鉛直方向に離間した状態でチャンバ310の内部空間に対向配置された板状部材からなる加熱対象物305、その加熱対象物305を載置する板状部材からなる載置台306、ヒータ301〜304と対向するように載置台306の下面に固定された温度センサ331〜334、チャンバ310の外側であってヒータ301〜304と電気的に接続された電力調整器311〜314、温度センサ331〜334の出力端子に接続され、電力調整器311〜314を制御する温度調節計(以下、これを「温調計」と呼ぶ。)321〜324を備えている。
【0117】
この場合、温調計321、電力調整器311、ヒータ301、加熱対象物305、載置台306および温度センサ331により温度を制御する温度制御系300aが構築されている。同様にして、温度制御系300b〜300dが構築されている。すなわち温度制御系300には、系として連続性のある4つの温度制御系300a〜300dが存在する。ただし、温度制御系300a〜300d同士の間には系としての連続性や直接的な関連性は存在しない。
【0118】
不具合機器位置情報取得部26は、ヒータ301に突発的な不具合が発生した場合、そのヒータ301の不具合機器位置情報を監視装置10から取得し、時点位置照合部29へ出力する。
【0119】
イベント発生位置情報取得部27は、ヒータ301の温度制御系300aにおける他のフィールド機器(電力調整器311、温調計321、温度センサ331等)に対するイベントのイベント発生位置だけを取得対象とするのではなく、ヒータ301と空間的に近い距離範囲に存在している他の温度制御系300b〜300dのヒータ302〜304に対するイベント発生位置についても取得対象とする。その理由は、系としての連続性や直接的な関連性は存在しないが、ヒータ301と空間的に近くに存在するヒータ302乃至304の熱伝達の影響を当該ヒータ301が受ける可能性が高いからである。
【0120】
例えば、ヒータ301の不具合発生日時から過去48時間前まで遡った時間範囲内で、他の温度制御系300b、300cのヒータ302、303に対してメンテナンスというイベントが実施されていた場合、イベント発生位置情報取得部27はそのヒータ302、303のイベント発生位置情報を監視装置10に要求して取得し、時点位置照合部29へ出力する。
【0121】
なお、ヒータ301の不具合機器位置は、温度制御系300aにおいてヒータ301が設置されている取付位置であり、ヒータ302、303に対するイベントのイベント発生位置は、温度制御系300aにおけるヒータ301の取付位置を基準位置として、その基準位置から温度制御系300b、300cにおけるヒータ302、303までの空間的な距離により規定される。
【0122】
したがって、イベント発生位置情報は、チャンバ310のヒータ301が設置されている取付位置を基準位置(0m)とした場合、ヒータ301〜304が並べられている中のヒータ302の水平方向の取付位置が基準位置から例えば0.5m、ヒータ303の水平方向の取付位置が基準位置から例えば2mの距離となる。したがって、この場合、ヒータ301にとってはヒータ302が空間的な位置として最も近いことが分かる。
【0123】
時点位置照合部29は、ヒータ301の不具合発生時点と、ヒータ302、303のイベント発生時点との時間的な近さに加えて、ヒータ301の不具合機器位置とヒータ302、303のイベント発生位置との空間的な位置の近さを考慮して上述した評価値P1、P2を求めることにより、ヒータ302、303のイベントを不具合要因候補とする際の優先順位を決定することができる。
【0124】
したがって、温度制御系300a、300b、300c同士の間に系としての連続性が無い場合でも、ヒータ301の不具合要因と関連性の高いヒータ302に対するイベントのイベント情報を有力な不具合要因候補として提供することができる。
【0125】
<他の実施の形態>
なお、上述した第1の実施の形態においては、不具合要因特定支援部23の時点照合部24により、不具合発生日時と時間的により近い方のイベント発生日時のイベント情報に高い優先順位を付した不具合要因候補として候補一覧画面G1により提供するようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、イベント情報取得部22から受け取った複数のイベント情報に対して優先順位を付けることなく複数の不具合要因候補を単に一覧として並べた候補一覧画面により提供するようにてもよい。
【0126】
また、上述した第1の実施の形態においては、1時間毎に時間的な近さを判断するようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、1日毎や、1週間毎等のその他種々の時間間隔で時間的な近さを判断するようにしてもよい。
【0127】
さらに、上述した第2の実施の形態においては、バルブV1の不具合機器位置やイベント発生位置を流路系における上流側の起点からの距離により規定されるようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、下流側の起点からの距離により規定されるようにしてもよい。
【0128】
さらに、上述した第1および第2の実施の形態においては、バルブV1に不具合が発生したときに、バルブV1以外の他の機器に対するイベントを不具合要因候補とするようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、当該バルブV1自身に対するメンテナンス等のイベントについても不具合要因候補とするようにしても良い。この場合、バルブV1の不具合機器位置と当該バルブV1に対するイベント発生位置とは同じであるため、二位置間距離Pd1=1.0とすれば良い。
【0129】
さらに、上述した第1乃至第3の実施の形態においては、流路系および温度制御系を適用対象とするようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、圧力制御系などの様々な系を適用対象として、その系のフィールド機器の不具合要因候補を提供するようにしてもよい。