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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2016-178795(P2016-178795A)
(43)【公開日】2016年10月6日
(54)【発明の名称】コンタクタ制御装置
(51)【国際特許分類】
   B60L 11/18 20060101AFI20160909BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20160909BHJP
【FI】
   B60L11/18 A
   H02J7/00 P
   H02J7/00 302A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2015-57138(P2015-57138)
(22)【出願日】2015年3月20日
(71)【出願人】
【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078499
【弁理士】
【氏名又は名称】光石 俊郎
(74)【代理人】
【識別番号】230112449
【弁護士】
【氏名又は名称】光石 春平
(74)【代理人】
【識別番号】100102945
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 康幸
(74)【代理人】
【識別番号】100120673
【弁理士】
【氏名又は名称】松元 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100182224
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 哲三
(72)【発明者】
【氏名】岡本 昌也
【テーマコード(参考)】
5G503
5H125
【Fターム(参考)】
5G503BA01
5G503BB01
5G503DA02
5G503FA06
5H125AA01
5H125AC12
5H125BC01
5H125CA01
5H125CD00
5H125CD04
5H125EE42
5H125EE68
(57)【要約】
【課題】電動車両におけるモータ‐インバータ間の電気回路上のコンタクタの、ON状態を保持するために必要な消費電力を、抑制することを可能とし、トルク滞留のない滑らかな加速を実現することができる、コンタクタ制御装置を提供する。
【解決手段】アクセル開度に基づいた要求トルクを算出する算出部18と、要求トルクに基づいて複数の正極側コンタクタ及び負極側コンタクタのいずれかをON状態に切り替える指令を出力すると共に、バッテリ20からインバータ21に対する出力電流を制御する制御部19と、を備え、制御部19は、前記指令を出力した際、要求トルクの増加速度に応じて出力電流を抑制する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動車両に備わるバッテリとインバータ間の電気回路の正極側に互いに並列に配設された、複数の正極側コンタクタと、
前記電気回路の負極側に互いに並列に配設され、前記正極側コンタクタにそれぞれ対応する、複数の負極側コンタクタと、
アクセル開度を検出するアクセルセンサと、
前記アクセルセンサによって検出されるアクセル開度に基づいた要求トルクを算出する算出部と、
前記要求トルクに基づいて複数の前記正極側コンタクタ及び前記負極側コンタクタのいずれかを接状態に切り替える指令を出力すると共に、前記バッテリから前記インバータに対する出力電流を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記指令を出力した際、前記要求トルクの増加速度に応じて前記出力電流を抑制する
ことを特徴とする、コンタクタ制御装置。
【請求項2】
前記複数の前記正極側コンタクタ及び前記負極側コンタクタは、前記制御部により前記指令が出力されてから接状態となるまで反応時間を要し、
前記算出部は、前記要求トルクを実現するために前記バッテリから出力すべき電流値である要求電流値を更に算出し、
前記制御部は、前記要求電流値が、前記正極側コンタクタ及び前記負極側コンタクタごとに対応して予め設定された所定の要求電流しきい値以上になった場合に、対応する前記正極側コンタクタ及び前記負極側コンタクタを接状態に切り替える指令を出力し、前記バッテリの現在の出力電流値と、前記指令が出力されてから前記反応時間経過後における前記要求電流値との差分値である第1の差分値の大きさに応じて、前記出力電流を抑制する
ことを特徴とする、請求項1に記載のコンタクタ制御装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記第1の差分値が、現在の出力電流値と、前記所定の要求電流しきい値との差分値である第2の差分値より大きい場合、前記出力電流を抑制する
ことを特徴とする、請求項2に記載のコンタクタ制御装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記出力電流の抑制を行う場合、前記指令が出力されてから前記反応時間経過後における出力電流値が、前記所定の要求電流しきい値以下となるよう抑制する
ことを特徴とする、請求項2又は3に記載のコンタクタ制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動車両におけるコンタクタ制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
まず、電動車両における従来の走行用モータの駆動システムを図6に示す。電動車両には、従来、バッテリ20とインバータ21との間の電気回路の正極(+)側に正極側コンタクタ23が、負極(−)側に負極側コンタクタ24が、それぞれ1つずつ設けられている。
【0003】
そして、ECU(電子制御部)25の制御により、正極側コンタクタ23及び負極側コンタクタ24をON(接)状態とすることで、バッテリ20からインバータ21へ電力を供給し、インバータ21で3相交流に変換してモータ22を駆動する。
【0004】
近年、モータ22‐インバータ21間の大出力化に伴って、バッテリ20からインバータ21に供給する電流も大きくなり、この大電流を流すためのコンタクタ23,24も大型(大容量)化されている。
【0005】
なお、下記特許文献1には、電動車両において、複数の電源とモータとを接続する電気回路上のリレー数を減少させることで、消費電力を削減する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2014−93806号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、コンタクタ23,24のON状態を保持するためには微弱な電力を消費する。この消費電力は、通常のコンタクタであれば無視できる程度であったが、大容量コンタクタとなると、ON状態を保持するために必要な電力(電流)も大きくなり、電費向上の観点から無視できなくなっている。
【0008】
そこで、本発明は、電動車両におけるモータ‐インバータ間の電気回路上のコンタクタの、ON状態を保持するために必要な消費電力を、抑制することを可能とし、さらに、トルク滞留のない滑らかな加速を実現することができる、コンタクタ制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決する第1の発明に係るコンタクタ制御装置は、
電動車両に備わるバッテリとインバータ間の電気回路の正極側に互いに並列に配設された、複数の正極側コンタクタと、
前記電気回路の負極側に互いに並列に配設され、前記正極側コンタクタにそれぞれ対応する、複数の負極側コンタクタと、
アクセル開度を検出するアクセルセンサと、
前記アクセルセンサによって検出されるアクセル開度に基づいた要求トルクを算出する算出部と、
前記要求トルクに基づいて複数の前記正極側コンタクタ及び前記負極側コンタクタのいずれかを接状態に切り替える指令を出力すると共に、前記バッテリから前記インバータに対する出力電流を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記指令を出力した際、前記要求トルクの増加速度に応じて前記出力電流を抑制する
ことを特徴とする。
【0010】
上記課題を解決する第2の発明に係るコンタクタ制御装置は、
上記第1の発明に係るコンタクタ制御装置において、
前記複数の前記正極側コンタクタ及び前記負極側コンタクタは、前記制御部により前記指令が出力されてから接状態となるまで反応時間を要し、
前記算出部は、前記要求トルクを実現するために前記バッテリから出力すべき電流値である要求電流値を更に算出し、
前記制御部は、前記要求電流値が、前記正極側コンタクタ及び前記負極側コンタクタごとに対応して予め設定された所定の要求電流しきい値以上になった場合に、対応する前記正極側コンタクタ及び前記負極側コンタクタを接状態に切り替える指令を出力し、前記バッテリの現在の出力電流値と、前記指令が出力されてから前記反応時間経過後における前記要求電流値との差分値である第1の差分値の大きさに応じて、前記出力電流を抑制する
ことを特徴とする。
【0011】
上記課題を解決する第3の発明に係るコンタクタ制御装置は、
上記第2の発明に係るコンタクタ制御装置において、
前記制御部は、前記第1の差分値が、現在の出力電流値と、前記所定の要求電流しきい値との差分値である第2の差分値より大きい場合、前記出力電流を抑制する
ことを特徴とする。
【0012】
上記課題を解決する第4の発明に係るコンタクタ制御装置は、
上記第2又は3の発明に係るコンタクタ制御装置において、
前記制御部は、前記出力電流の抑制を行う場合、前記指令が出力されてから前記反応時間経過後における出力電流値が、前記所定の要求電流しきい値以下となるよう抑制する
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係るコンタクタ制御装置によれば、電動車両におけるモータ‐インバータ間の電気回路上のコンタクタの、ON状態を保持するために必要な消費電力を、抑制することを可能とし、さらに、トルク滞留のない滑らかな加速を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施例1に係るコンタクタ制御装置を説明するブロック図である。
図2】本発明の実施例1におけるECUによる制御について説明するフローチャートである。
図3】差分値の増加速度によるしきい値とコンタクタON指令のタイミングの変化を説明するグラフである。(a)は差分値の増加速度による要求電流しきい値の変化についてのグラフであり、(b)は制御部19によるON指令のタイミングについてのグラフである。
図4】本発明の実施例1におけるECUに備わる、差分値の増加速度により変化する要求電流しきい値のデータを示すグラフである。
図5】出力限界到達予測時間tcと、コンタクタの反応時間trとを比較し、出力電流を抑制する様子を説明するグラフである。
図6】電動車両における従来の走行用モータの駆動システムを説明するブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係るコンタクタ制御装置を実施例にて図面を用いて説明する。
【0016】
[実施例1]
本発明の実施例1に係るコンタクタ制御装置の装置構成について、図1を用いて説明する。図1は、本発明の実施例1に係るコンタクタ制御装置を説明するブロック図である。
【0017】
本発明の実施例1に係るコンタクタ制御装置は、電動車両の走行用モータの駆動システムに搭載されており、図1に示すように、アクセルセンサ10、第1正極側コンタクタ11、第2正極側コンタクタ12、第3正極側コンタクタ13、第1負極側コンタクタ14、第2負極側コンタクタ15、第3負極側コンタクタ16、及び、ECU17を備えている。
【0018】
アクセルセンサ10は、ドライバによるアクセルペダルの操作、すなわち、アクセル開度を検出するものである。
【0019】
正極側コンタクタ11〜13は、電動車両に備わるバッテリ20とインバータ21との間の電気回路の正極(+)側に、互いに並列に配設されている。
【0020】
負極側コンタクタ14〜16は、電動車両に備わるバッテリ20とインバータ21との間の電気回路の負極(−)側に、互いに並列に配設されている。
【0021】
ECU17は、算出部18及び制御部19を備え、各コンタクタ11〜16のON(接)/OFF(断)の切り替えを制御する。以下、ECU17における制御について詳述する。
【0022】
ECU17は、電動車両の走行状態(システムON(システム稼働)時、低負荷走行時、あるいは高負荷走行時等)に応じて、ON状態とする正極側コンタクタ11〜13及び負極側コンタクタ14〜16の個数を変更するように制御を行う。
【0023】
なお、第1正極側コンタクタ11と第1負極側コンタクタ14とは対応しており、同タイミングでON/OFFを切り替える。第2正極側コンタクタ12及び第2負極側コンタクタ15、第3正極側コンタクタ13及び第3負極側コンタクタ16についても同様とする。
【0024】
ECU17に備わる算出部18は、アクセルセンサ10によって検出されたアクセル開度及び車速に基づいた要求トルクを算出する。ここでの要求トルクとは、ドライバが要求するトルクのことである。
【0025】
ECU17に備わる制御部19は、車両のシステム稼働に伴い、第1正極側コンタクタ11及び第1負極側コンタクタ14のみをON状態とする。そして、第1正極側コンタクタ11及び第1負極側コンタクタ14の出力の限界に到達する以前に、さらに第2正極側コンタクタ12及び第2負極側コンタクタ15をON状態とする。また、第1,2正極側コンタクタ11,12及び第1,2負極側コンタクタ14,15の出力の限界に到達する以前に、さらに第3正極側コンタクタ13及び第3負極側コンタクタ16をON状態とする。
【0026】
また、制御部19は、要求トルクに応じて第2,3正極側コンタクタ12,13及び第2,3負極側コンタクタ15,16をそれぞれON状態とする。特に、要求トルクの増加速度(アクセルペダルの操作速度)に応じて、第2,3正極側コンタクタ12,13及び第2,3負極側コンタクタ15,16のON指令(ON状態とするように指令する)を行うタイミングをそれぞれ変更するものである。
【0027】
ECU17(制御部19)による各コンタクタのON/OFF制御において、実際には、コンタクタの機械的な特性によるタイムラグ(コンタクタがON指令を受けてからON状態となるまでの時間、すなわち、コンタクタの反応時間)が発生する。上述のON指令を行うタイミングの変更は、既知である上記反応時間を考慮して、上述のように出力の限界に到達する以前に次のコンタクタのON状態を実現するように行う。
【0028】
制御部19は、要求トルクの増加速度が大きいほど、正極側コンタクタ12及び負極側コンタクタ15のON指令を行うタイミングを早めるように制御を行う。
【0029】
また、制御部19は、要求トルクの増加速度から、実際にON指令を行う適切なタイミングを算出するに当たって、地図情報を用いて道路の勾配を予測したり、過去の運転パターンから学習したりすることで、さらに上記タイムラグの影響を抑制することができる。
【0030】
以下、ECU17による制御について、図2のフローチャートを用いて説明する。
【0031】
ステップS1では、算出部18において、アクセルセンサ出力(アクセルセンサ10によって検出されたアクセル開度)及び車速に基づき、要求トルクを算出する。
【0032】
ステップS2では、算出部18において、要求トルク及びバッテリ20の電圧に基づき、要求電流値I´を算出する。要求電流値I´は、要求トルクを実現するためにバッテリ
20から出力すべき電流値を指す。
【0033】
ステップS3では、算出部18において、要求電流値I´とバッテリ20の現在の出力電流値(バッテリ20からインバータ21に対する出力電流の値)Iとの差分値ΔIを算出する。
【0034】
ステップS4では、制御部19において、要求トルクの増加速度から、実際にON指令を行う適切なタイミングを算出して、第2,3正極側コンタクタ12,13及び第2,3負極側コンタクタ15,16にそれぞれON指令を行う電流値の各しきい値を、正極側コンタクタ12,13及び負極側コンタクタ15,16毎に対応して設定する。なお、このしきい値を「要求電流しきい値」と呼称する。
【0035】
また、ステップS4では、制御部19において、要求電流値I´が所定の要求電流しきい値以上になった場合に、所定の要求電流しきい値に対応する正極側コンタクタ12,13及び負極側コンタクタ15,16をON状態に切り替えるとともに、差分値ΔIの増加速度ΔI/Δtに応じて、ON状態とする要求電流しきい値を変更する。
【0036】
ここで、ステップS4について、図3,4を用いてさらに詳述する。図3(a)は、差分値ΔIの増加速度ΔI/Δtによる要求電流しきい値の変化についてのグラフである。縦軸が電流値、横軸が時間tであり、実線が、現時点までの出力電流値Iの変化を表しており、破線矢印は、その傾きが差分値ΔIの増加速度ΔI/Δtとなっている。また、図3(b)は、制御部19によるON指令のタイミングについてのグラフであり、横軸の時間tは図3(a)に対応している。なお、図3では第3正極側コンタクタ13及び第3負極側コンタクタ16についての制御を省略している。
【0037】
まず、図3(a)に示すシステムON、すなわち車両のシステム稼働に伴い、図3(b)に示すように、制御部19によって、第1正極側コンタクタ11及び第1負極側コンタクタ14に対してON指令が行われる。
【0038】
また、図3(a)に示すように、要求トルクの増加速度からステップS2,S3により算出された差分値ΔIの増加速度ΔI/Δtが、例えばCaseAの破線矢印のグラフの傾きであった場合は、要求電流しきい値をIAに設定する。図3(b)では、CaseAにおいて、要求電流しきい値IAに到達すると、制御部19が第2正極側コンタクタ12及び第2負極側コンタクタ15に対しON指令を行う様子が示されている。
【0039】
つまり、CaseAのように、増加速度ΔI/Δtが大きい、すなわち、グラフの傾きが大きい場合は、出力電流値Iが第1正極側コンタクタ11及び第1負極側コンタクタ14の出力限界電流値IM1に到達するまでの所要時間が短いため、第2正極側コンタクタ12及び第2負極側コンタクタ15の上記反応時間を考慮して、要求電流しきい値を(相対的に)低く設定する。このときの要求電流しきい値がIAである。
【0040】
すなわち、制御部19は、増加速度ΔI/Δtが大きいほど、要求電流しきい値を小さくするものである。
【0041】
一方、増加速度ΔI/Δtが、CaseBの破線矢印のグラフの傾きであった場合は、要求電流しきい値をIBに設定する。図3(b)では、CaseBにおいて、要求電流しきい値IBに到達すると、制御部19が第2正極側コンタクタ12及び第2負極側コンタクタ15に対しON指令を行う様子が示されている。
【0042】
つまり、CaseBのように、増加速度ΔI/Δtが小さい、すなわち、グラフの傾きが小さい場合は、出力電流値Iが第1正極側コンタクタ11及び第1負極側コンタクタ14の出力限界電流値IM1に到達するまでの所要時間が長いため、要求電流しきい値を(相対的)に高く設定する。このときの要求電流しきい値がIBである。
【0043】
さらに、ステップS4では、制御部19において、増加速度ΔI/Δt及び運転パターン情報、又は、増加速度ΔI/Δt及び地図情報に基づき、要求電流しきい値を変更する。制御部19は、増加速度ΔI/Δtに対応して変化する要求電流しきい値のデータを備えているものとし、該データを用いて要求電流しきい値を変更する。
【0044】
図4は、制御部19に備わる、増加速度ΔI/Δtに対応して変化する要求電流しきい値のデータを示すグラフである。縦軸が要求電流しきい値、横軸が増加速度ΔI/Δtであり、実線は車両が平坦な道を走行するとECU17により予測される場合、破線は車両が山岳路等の上り勾配を走行するとECU17により予測される場合を示している。なお、図4でも第3正極側コンタクタ13及び第3負極側コンタクタ16についての制御を省略している。
【0045】
例えば上記CaseAでは、既に説明したように要求電流しきい値をIAとする。ただしこれは、車両が平坦な道を走行すると予測される場合である。もし、山岳路等の上り勾配を走行すると予測される場合には、増加速度ΔI/Δtが大きくなる、すなわち、図3(a)に示す破線矢印の傾きが大きくなることが自明となることから、要求電流しきい値を下げた方がよい。
【0046】
つまり、制御部19は、図4の実線に示すような、車両が平坦な道を走行すると予測される場合における、「増加速度ΔI/Δtに対応して変化する要求電流しきい値のデータ」を備え、さらに、図4の破線のグラフに示すような、車両が上り勾配を走行すると予測される場合における、「増加速度ΔI/Δtに対応して変化する要求電流しきい値のデータ」を備えている。また、制御部19は地図情報を備えており、上記「予測」は該地図情報に基づくものである。
【0047】
そして、増加速度ΔI/Δtが同値であっても、平坦な道を走行すると予測される場合に比べ、上り勾配を走行すると予測される場合は、要求電流しきい値が低く設定される。
【0048】
例えば上記CaseAでは、平坦な道を走行すると予測される場合、要求電流しきい値をIAとし、上り勾配を走行すると予測される場合、要求電流しきい値をIa(Ia<IA)とする。また、上記CaseBでは、平坦な道を走行すると予測される場合、要求電流しきい値をIBとし、上り勾配を走行すると予測される場合、要求電流しきい値をIb(Ib<IB)とする。
【0049】
なお、上述では、平坦な道と所定の上り勾配との2通りのデータを設定した場合について説明したが、これはあくまで一例であり、実際には、勾配(角度)毎に細かく上記データを設定してもよい。
【0050】
また、上述では、地図情報に基づき勾配を予測し、要求電流しきい値を決定したが、(直近の)運転パターン情報に基づきアクセル開度の増減を予測し、要求電流しきい値を決定するようにしてもよい。
【0051】
つまり、制御部19は、過去(直近)の運転パターン情報を記憶しておき、該運転パターン情報から、アクセル踏み込み量が増加すると予測される場合には、増加速度ΔI/Δtが大きくなる、すなわち、図3(a)に示す破線の傾きが大きくなることが自明となることから、要求電流しきい値を下げる。これは、上述の上り勾配の場合と同様である。
【0052】
ただし、制御部19は、上記データの設定を必須の構成としなくともよい。すなわち、制御部19は、地図情報を有するとともに、該地図情報に基づき、車両が走行する道路の勾配を予測し、予測された勾配に基づき、増加速度ΔI/Δtに応じた要求電流しきい値の変更度合いを補正するものである。
【0053】
あるいは、制御部19は、予測されたアクセル開度の値に基づき、増加速度ΔI/Δtに応じた要求電流しきい値の変更度合いを補正するものとしてもよい。
【0054】
なお、図3,4では、第3正極側コンタクタ13及び第3負極側コンタクタ16について省略してあるが、第3正極側コンタクタ13及び第3負極側コンタクタ16については、要求電流しきい値を第2正極側コンタクタ12及び第2負極側コンタクタ15よりも高く設定した上で、第2正極側コンタクタ12及び第2負極側コンタクタ15と同様の制御を行うようにすればよい。
【0055】
続いて、図2のステップS5,6の概要について説明する。
【0056】
アクセルの踏み込みが速すぎると、要求トルクの増加速度からステップS2,S3により算出される差分値ΔIの増加速度ΔI/Δtが速すぎて、第2正極側コンタクタ12及び第2負極側コンタクタ15をON状態とすることが間に合わなくなり、タイムラグが生じる場合が考えられる。このタイムラグの間は電流を増加できないので、トルク滞留によるドラビリ上の問題が生じる。
【0057】
そのような場合に、ステップS5,6によって、タイムラグ分を見込んで実際に流す電流を予め抑制する。このようにして、加速は若干遅くなるものの、トルク滞留のない滑らかな加速を実現することができる。
【0058】
以下、ステップS5,6について詳述する。
【0059】
ステップS5では、制御部19において、現在の出力電流値I及び増加速度ΔI/Δtから、第1正極側コンタクタ11及び第1負極側コンタクタ14の出力限界IM1まで現在の出力電流値Iが到達するのに要する時間を予測する。これを出力限界到達予測時間tcとする。
【0060】
ステップS6では、出力限界到達予測時間tcと、既に説明したコンタクタ(第2正極側コンタクタ12及び第2負極側コンタクタ15)の反応時間trとを比較する。tc≧trであれば、タイムラグの問題は発生しないため、ステップS4における説明のとおり、決定した要求電流しきい値に出力電流値Iが到達すると、第2正極側コンタクタ12及び第2負極側コンタクタ15にON指令を行う。そして、ステップS1に戻る。
【0061】
一方、tc<trであるときには、制御部19において、要求電流値I´に抑制率α(α<1)を乗ずることで、要求電流値I´をα・I´と変換することで、出力電流を抑制する。これにより、第1正極側コンタクタ11及び第1負極側コンタクタ14を流れる電流が少なくなることで、タイムラグを解消することができる。
【0062】
図5は、出力限界到達予測時間tcと、既に説明したコンタクタの反応時間trとを比較し、出力電流を抑制する様子をグラフ化したものである。縦軸が電流値、横軸が時間tであり、実線が、現時点までの出力電流値Iの変化を表しており、破線矢印は、その傾きが差分値ΔIの増加速度ΔI/Δtとなっている。なお、図5中のIM2は、第1正極側コンタクタ11及び第2正極側コンタクタ12と、第1負極側コンタクタ14及び第2負極側コンタクタ15の合計の出力限界を表している。
【0063】
CaseCは、tc<trの場合である。またIcはCaseCにおける要求電流しきい値である。つまり、CaseCでは、要求電流値I´が大きすぎるため、要求電流しきい値ICが現在の出力電流値Iと略同一、すなわち、制御部19によりただちに第2正極側コンタクタ12及び第2負極側コンタクタ15にON指令を行う状態を示している。
【0064】
ところが、CaseCでは、ただちに第2正極側コンタクタ12及び第2負極側コンタクタ15にON指令を行ったとしても、出力限界到達予測時間tcが、第2正極側コンタクタ12及び第2負極側コンタクタ15の反応時間trより短い。つまり、バッテリ20の現在の電流値Iと、第2正極側コンタクタ12及び第2負極側コンタクタ15のON指令が出力されてから反応時間tr経過後における要求電流値I´との差分値である第1の差分値が、現在の出力電流値Iと、要求電流しきい値Icとの差分値である第2の差分値より大きい(すなわち、第1の差分値が大きいほど要求トルクの増加速度が大きいことになる)。
【0065】
これにより、出力電流値Iが第1正極側コンタクタ11及び第1負極側コンタクタ14の出力限界IM1に到達した時点で、第2正極側コンタクタ12及び第2負極側コンタクタ15がON状態とならない。
【0066】
よって、要求電流値をI´→α・I´とすることで、tc≧trとする。つまり、第1の差分値が第2の差分値よりも大きい場合、第2正極側コンタクタ12及び第2負極側コンタクタ15にON指令が出力されてから反応時間tr経過後における出力電流値Iが、所定の要求電流しきい値Ic以下となるように、出力電流を抑制する。図5では、これをCaseC´として表している。このようにして、タイムラグを解消することができる。
【0067】
すなわち、制御部19は、要求トルクに基づいて第2正極側コンタクタ12及び第2負極側コンタクタ15をON状態に切り替える指令を出力すると共に、出力電流を制御し、この指令を出力した際、要求トルクの増加速度に応じて出力電流を抑制するものである。特に、現在の出力電流値Iと、この指令が出力されてから反応時間tr経過後における要求電流値I´との差分値である第1の差分値の大きさに応じて、出力電流を抑制するものである。
【0068】
以上がECU17の制御の説明である。なお、上述の説明では、第3正極側コンタクタ13及び第3負極側コンタクタ16については省略したが、第3正極側コンタクタ13及び第3負極側コンタクタ16については、第1,2正極側コンタクタ11,12及び第1、第2負極側コンタクタ14,15がON状態で、上述の説明の出力限界IM1を出力限界IM2に置き換えて、同様の制御を行うものとする。
【0069】
ただし、本実施例はコンタクタの個数を限定するものではない。すなわち、正極側コンタクタと負極側コンタクタが、それぞれ2つ以上の同数であれば、いくつであってもよい。
【0070】
以上、本発明の実施例1に係るコンタクタ制御装置について説明したが、換言すれば、本発明の実施例1に係るコンタクタ制御装置は、複数の正極側コンタクタ及び複数の負極側コンタクタを、それぞれ互いに並列に配設することで、1つ当たりのコンタクタの容量を抑えることができる。
【0071】
また、本発明の実施例1に係るコンタクタ制御装置は、複数の正極側コンタクタ及び複数の負極側コンタクタのうち、第1正極側コンタクタ11及び第1負極側コンタクタ14については、電動車両の起動中常時ON状態とし、他の正極側コンタクタ及び他の負極側コンタクタ(例えば第2正極側コンタクタ12及び第2負極側コンタクタ15)については、ON状態にある正極側コンタクタ及び負極側コンタクタ(例えば第1正極側コンタクタ11及び第1負極側コンタクタ14)の出力の限界に到達する以前に、順次ON状態に切り替えるように制御する、制御部(ECU17)を備えることで、ON状態のコンタクタの個数を適切にし、従来のように1つの大容量コンタクタを用いた場合と比べ、ON状態を保持するための消費電力を抑制することができる。
【0072】
さらに、本発明の実施例1に係るコンタクタ制御装置は、アクセル開度を検出するアクセルセンサ10と、アクセルセンサ10によって検出されるアクセル開度に基づいた要求トルクを算出する算出部18と、要求トルクに基づいて複数の正極側コンタクタ(例えば第1〜3正極側コンタクタ11〜13)及び負極側コンタクタ(例えば第1〜3負極側コンタクタ14〜16)のいずれかをON状態に切り替える指令を出力すると共に、バッテリ20からインバータ21に対する出力電流を制御する制御部19と、を備え、制御部19は、上記指令を出力した際、要求トルクの増加速度に応じて出力電流を抑制することで、トルク滞留のない滑らかな加速を実現することができる。
【0073】
さらに、複数の正極側コンタクタ及び負極側コンタクタは、制御部19により上記指令が出力されてからON状態となるまで反応時間を要し、算出部18は、要求トルクを実現するためにバッテリ20から出力すべき電流値である要求電流値I´を更に算出し、制御部19は、要求電流値I´が、正極側コンタクタ及び負極側コンタクタごとに対応して予め設定された所定の要求電流しきい値以上になった場合に、対応する正極側コンタクタ及び負極側コンタクタをON状態に切り替える指令を出力し、バッテリ20の現在の出力電流値Iと、上記指令が出力されてから上記反応時間経過後における要求電流値I´との差分値である第1の差分値の大きさに応じて、出力電流を抑制する。
【0074】
そして、制御部19は、第1の差分値が、現在の出力電流値Iと、所定の要求電流しきい値との差分値である第2の差分値より大きい場合、出力電流を抑制する。
【0075】
そして、制御部19は、出力電流の抑制を行う場合、上記指令が出力されてから上記反応時間経過後における出力電流値Iが、所定の要求電流しきい値以下となるよう抑制する。
【0076】
このようにして、本発明の実施例1に係るコンタクタ制御装置では、より適切なタイミングで順次ON状態に切り替えるように制御することができる。
【0077】
あるいは、制御部19は、過去の運転パターン情報に基づき、アクセルセンサ10によって検出されるアクセル開度の値を予測し、予測されたアクセル開度の値に基づき、差分値の増加速度に応じた要求電流しきい値の変更度合いを補正することで、ECU17(制御部19)による各コンタクタのON/OFF制御におけるコンタクタの機械的な特性によるタイムラグの影響を抑制することができる。
【0078】
なお、制御部19は、複数の正極側コンタクタ及び負極側コンタクタのうち、電動車両のシステム稼動に伴って接状態とされる第1正極側コンタクタ11及び第1負極側コンタクタ14以外の正極側コンタクタ(例えば第2,3正極側コンタクタ12,13)及び負極側コンタクタ(例えば第2,3負極側コンタクタ15,16)に対してのみ、要求トルクの増加速度に応じた接指令を行うタイミングの変更を行うものである。
【0079】
このようにして、本発明の実施例1に係るコンタクタ制御装置は、電動車両におけるモータ‐インバータ間の電気回路上のコンタクタの、ON状態を保持するために必要な消費電力を、抑制することを可能とし、さらに、トルク滞留のない滑らかな加速を実現することができる。
【産業上の利用可能性】
【0080】
本発明は、コンタクタ制御装置として好適である。
【符号の説明】
【0081】
10 アクセルセンサ
11 第1正極側コンタクタ
12 第2正極側コンタクタ
13 第3正極側コンタクタ
14 第1負極側コンタクタ
15 第2負極側コンタクタ
16 第3負極側コンタクタ
17,25 ECU(電子制御部)
18 算出部
19 制御部
20 バッテリ
21 インバータ
22 モータ
23 正極側コンタクタ
24 負極側コンタクタ
図1
図2
図3
図4
図5
図6