【解決手段】V字搬送部131及び丸ベルト搬送部140上に作物Sが過剰に供給される。V字搬送部131は、作物列Lsを形成するように作物Sを挟持しつつA2方向に沿って作物Sを搬送する。丸ベルト搬送部140は、V字搬送部131と共に、作物列Lsを形成する作物S以外の余剰の作物を、A2方向に沿った位置に関して作物列Lsを形成する作物Sと重複するように支持する。ガイド156L及び156Rは、かかる余剰の作物SをV字搬送部131及び丸ベルト搬送部140上から還流搬送部150上へと案内する。
前記支持部駆動手段が、前記第1及び第2の作物支持部材を、前記所定の搬送経路に沿って上昇させつつ移動させることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の播種機。
前記所定の搬送経路に沿った位置に関して前記作物の列を形成する作物と重複するように前記余剰の作物を支持する第3の作物支持部材をさらに備えていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の播種機。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のような搬送方式を採用した場合、以下の通り、播種の高速化に限界がある。播種を高速化するためには機体上での作物の搬送速度を上げなければならない。そうすると、例えば、あるときは容器に2つ以上の作物を収容したり、あるときは容器に作物を収容できなかったりと、作物が適切に容器に収容されないおそれがある。作物が適切に容器に収容されないと、圃場の同じ個所に2つ以上の作物が植え付けられたり、ある植え付け位置に作物が植え付けられなかったりする。これにより、圃場に播種された作物の間隔が所望の間隔から大きく変動してしまうおそれがある。
【0005】
本発明の目的は、圃場に播種される作物の間隔を所望の間隔に保ちやすくしつつ作物の播種を高速化できる播種機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の播種機は、機体内の所定の播種位置まで所定の搬送経路に沿って作物を搬送すると共に、前記所定の播種位置に到達した作物を圃場に播種する播種機であって、それぞれが作物と接触して複数の作物を支持する第1及び第2の作物支持部材と、前記所定の搬送経路に沿った位置に関して複数の作物が互いに重複するように、前記第1及び第2の作物支持部材に作物を供給する作物供給手段と、前記第1及び第2の作物支持部材に作物を支持させつつ前記第1及び第2の作物支持部材を互いに異なる速さで移動させる支持部駆動手段とを備えており、前記所定の搬送経路に沿って1列に並んだ作物の列を前記第1及び第2の作物支持部材上に形成すると共に、前記所定の播種位置までのいずれかの位置において前記作物の列以外の余剰の作物を前記所定の搬送経路から別の経路に分岐させる。
【0007】
本発明によると、複数の作物を第1及び第2の作物支持部材へと供給する際、搬送経路に沿った位置に関して作物が互いに重複するように供給する。つまり、作物を過剰に供給する。その状態で、2つの作物支持部材を搬送経路に沿って互いに異なる速さで移動させる。2つの作物支持部材はそれぞれ作物に接触しているので、その状態で2つの作物支持部材が互いに異なる速さで移動すると、2つの作物支持部材に接触した各作物が回転すると共に撹拌される。搬送経路に沿った作物の列において作物同士に隙間が生じたとしても、上記のように作物が撹拌されることによって、作物の列に重複した作物が列の隙間へと入り込む。このため、搬送経路に沿って隙間のない列が形成されやすい。そして、所定の播種位置までに、作物の列以外の余剰の作物が分岐させられる。よって、播種位置には作物の列のみが到達する。上記の通りこの列には隙間が形成されにくいので、作物が播種位置に到達する間隔が変動しにくい。したがって、圃場に播種される作物の間隔を所望の間隔に保ちやすくできる。
【0008】
作物を搬送部に供給するに当たって作物を1つ1つ容器に収容するという従来技術は、上記の通り、播種速度を上げた際に、圃場における作物の播種間隔を所望の間隔に保ちにくい。これは、播種の高速化のためには作物を供給する精度の向上が要求されるということに他ならない。これに対し、本発明は、2つの作物支持部材に作物を過剰に供給することによって圃場に播種される作物の間隔を所望の間隔に保つ構成を採用している。これは、播種を高速化するに当たって作物を供給する精度の向上を要求しないという発想に基づいている。例えば本発明において、作物の搬送速度を高めることにより、搬送経路に沿って形成される作物の列に隙間が生じやすくなるとする。しかし、この場合にも、余剰の作物が生じるように作物供給手段から作物を十分に供給しさえすれば、作物の列に生じた隙間に余剰の作物が入り込み、隙間を埋めることができる。したがって、作物の搬送速度を高めても、作物を供給する精度を上げることなく、作物が播種位置に到達する間隔に変動を生じにくくすることができ、もって、作物の間隔を所望の間隔に保ちやすくすることができる。
【0009】
なお、第1及び第2の作物支持部材はベルトであってもローラであってもよい。これらがローラである場合は、「第1及び第2の作物支持部材を互いに異なる速さで移動させる」とは、回転移動の速度をローラ同士で異ならせることに対応する。
【0010】
また、本発明においては、前記第1及び第2の作物支持部材のそれぞれが、前記所定の搬送経路に沿った表面を有し、前記第1及び第2の作物支持部材が有する一対の前記表面が、前記所定の搬送経路と直交する方向に関して、互いの間に作物を挟持し、前記一対の表面における前記所定の搬送経路と直交する方向に沿った断面において、前記所定の搬送経路と直交する方向に関する前記一対の表面同士の間隔が下方の位置ほど狭くなっていることが好ましい。これによると、第1及び第2の作物支持部材において、作物を支持する一対の表面がV字型の形状を有することとなる。これにより、第1及び第2の作物支持部材に作物を安定に支持させることができる。
【0011】
また、本発明においては、前記第1及び第2の作物支持部材が、前記表面が形成された一対の搬送ベルトからなることが好ましい。これによると、搬送ベルトを用いることで、第1及び第2の作物支持部材を簡易な構成で実現できる。
【0012】
また、本発明においては、前記支持部駆動手段が、前記第1及び第2の作物支持部材を、前記所定の搬送経路に沿って上昇させつつ移動させることが好ましい。これによると、作物の列を支持する第1及び第2の作物支持部材が上り傾斜となっている。このため、作物の列中に隙間が生じても、作物が後方に移動して隙間を埋めやすい。
【0013】
また、本発明においては、前記所定の搬送経路に沿った位置に関して前記作物の列を形成する作物と重複するように前記余剰の作物を支持する第3の作物支持部材をさらに備えていることが好ましい。これによると、第3の作物支持部材が支持する余剰の作物が作物同士の隙間に入り込むことで、作物の列に隙間が生じるのが抑制される。
【0014】
また、本発明においては、圃場の土と接触する土接触部材をさらに備えており、前記所定の播種位置から作物を圃場に落下させると共に、着地した作物へと圃場の土が被さっていくように前記土接触部材に圃場の土と接触させることが好ましい。これによると、土接触部材によって、着地した作物に圃場の土が被さっていくため、作物が着地後に転がったりしにくい。このため、作物の植え付け位置が着地点からずれにくくなる。よって、狙った位置に作物を植えつけやすい。
【0015】
また、本発明においては、前記土接触部材が、圃場の凹凸に応じて上下に移動可能に機体に支持されていることが好ましい。圃場に凹凸があると機体の移動に伴って土接触部材が凹凸に引っかかったりするおそれがある。これに対し、土接触部材が凹凸に応じて上下に移動するので、凹凸に引っかかりにくく、機体と共に円滑に移動しやすい。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の一実施形態に係る播種機1について、
図1〜
図7を参照しつつ説明する。本実施形態に係る播種機1は、ジャガイモやサトイモなどのイモ類、ニンニクやラッキョウ、タマネギの種球などの作物を圃場に植え付ける装置である。以下において、前後左右上下の各方向は、播種機1を中心とした方向とする。播種機1は、
図1に示すように、メインフレーム2と、トラクター連結部3と、支持輪4と、作溝器5及び6と、一対の作物搬送部100と、覆土部200とを備えている。メインフレーム2は、上方から見て長方形の形状を有するように組み合わされた複数本のフレーム部材を有している。トラクター連結部3は、メインフレーム2の前部に設けられている。播種機1は、トラクター連結部3においてトラクターの後部に設けられたアームと連結される。支持輪4は回転可能にメインフレーム2に支持され、圃場の地面と接触する。これにより、播種機1は、トラクターによって牽引されつつ圃場を走行する。作溝器5及び6は、圃場の地面に接触して溝を地面に形成する。作溝器5は肥料散布用の溝を形成する。作溝器6は、作溝器5より後方において、作物植え付け用の溝を形成する。播種機1がトラクターに牽引されて前進すると、作溝器5及び6によって圃場の地面に播種機1の走行方向に沿って溝が形成されていく。なお、播種機1に設けられた各駆動部は、トラクターPTO(Power Take Off)軸、電気モータ、あるいは、支持輪4からの動力で動作する。
【0018】
一対の作物搬送部100は、前後方向及び上下方向に関して互いに同じ位置に配置され、左右方向に関して対称に並ぶように、メインフレーム2に支持されている。作物搬送部100は、ホッパ110と上部搬送部120と下部搬送部130とを有している。ホッパ110は作物Sを収容する。ホッパ110に収容された作物Sは、上部搬送部120及び下部搬送部130によって、作溝器6付近の播種位置P1まで搬送される。播種位置P1に到達した作物Sは、播種位置P1から下方の圃場へと落下する。覆土部200は、圃場に着地した作物Sに土を被せる。
【0019】
以下、作物搬送部100の各部について、より詳細に説明する。ホッパ110の下部には、
図2に示すように、後方に向かって開口した作物Sの放出部110aが形成されている。上部搬送部120は、無端の搬送ベルト121と、当該搬送ベルト121が巻き掛けられた駆動ローラ122及び従動ローラ123と、ガイド124とを有している。搬送ベルト121は平型のベルトである。駆動ローラ122は、図示しない駆動モータによって駆動される。この駆動モータは、PTO軸等からの動力によって動作する。これにより、駆動ローラ122及び従動ローラ123に巻き掛けられた搬送ベルト121が、
図2のA1方向に走行する。上部搬送部120は、放出部110aから落下してきた作物Sを搬送ベルト121上に受け取り、A1方向に搬送する。ガイド124は、搬送ベルト121上の作物Sが上部搬送部120の左右の側面から下方に落下しないように作物Sを案内する。
【0020】
下部搬送部130は、
図2及び
図5に示すように、V字搬送部131、丸ベルト搬送部140、及び、還流搬送部150を有している。これらの各部は、
図2に示すフレーム部材22〜24等を介してメインフレーム2に固定、又は、支持されている。V字搬送部131は、
図3〜
図5に示すように、一対の無端の搬送ベルト132L及び132R(第1及び第2の作物支持部材)と、搬送ベルト132Lが巻き掛けられた駆動ローラ133L及び従動ローラ134Lと、搬送ベルト132Rが巻き掛けられた駆動ローラ133R及び従動ローラ134Rとを有している。搬送ベルト132L及び132Rは平型のベルトであり、前後方向に沿って延びている。搬送ベルト132L及び132Rは、
図4に示すように、上り傾斜になっている。つまり、前部が後部よりも高く配置されるように傾斜している。搬送ベルト132L及び132Rは、互いに左右方向に向かい合うように配置されている。搬送ベルト132L及び132Rは、A2方向に沿っており互いに向かい合った一対の表面132xを有している。一対の表面132xは、左右方向に関する互いの間隔が下方の部分ほど狭くなっている。これにより、前後方向に直交する一対の表面132xの断面がV字型の形状を呈している。一対の表面132xは、互いの間に作物Sを挟持する。作物Sは、V字型の一対の表面132x間に安定に保持される。
【0021】
駆動ローラ133L及び133Rは、
図3及び
図5に示すように、フレキシブルシャフト31及び32を介して駆動モータ161及び162(支持部駆動手段)と接続されている。なお、駆動ローラ133L及び133Rは、ベベルギヤ等、その他の伝達手段を介して駆動モータ161及び162と接続されていてもよい。駆動モータ161及び162は、PTO軸等からの動力によって動作する。これにより、駆動ローラ133L及び従動ローラ134Lに巻き掛けられた搬送ベルト132Lが前後方向に走行すると共に、駆動ローラ133R及び従動ローラ134Rに巻き掛けられた搬送ベルト132Rが前後方向に走行する。駆動モータ161は、搬送ベルト132Lの表面132xが速さV1で走行するように駆動ローラ133Lを駆動する。駆動モータ162は、搬送ベルト132Rの表面132xが、V1より小さい速さV2で走行するように駆動ローラ133Rを駆動する。これにより、これら一対の表面132xに挟持された作物Sは、
図3のRの方向に回転しつつ、搬送ベルト132L及び132Rによって前方に向かって搬送される。搬送ベルト132L及び132Rは前部が後部より上方にあるため、作物Sは前方に向かって上昇しつつ搬送される。
【0022】
丸ベルト搬送部140は、
図2、
図5及び
図4(a)に示すように、複数本の無端の丸ベルトから構成された搬送ベルト141L及び141R(それぞれ、第3の作物支持部材)、並びに、搬送ベルト141L及び141Rを支持するベルト支持部142L及び142Rを有している。搬送ベルト141L及び141Rは、搬送ベルト132L及び132Rの上方に近接して配置されており、前後方向に関してV字搬送部131の後端付近の位置から中央付近の位置まで延びている。搬送ベルト141L及び141Rを構成する丸ベルトは、それぞれ搬送ベルト132L及び132Rと平行に延びると共に、互いに上下方向に並ぶように、ベルト支持部142L及び142Rに支持されている。搬送ベルト141Rの左上側面は、
図4(b)に示すように、搬送ベルト132Rの表面132xに沿った平面(
図4(b)の一点鎖線に沿った平面)に沿っている。搬送ベルト141Lの右上側面も同様に、搬送ベルト132Lの表面132xに沿った平面に沿っている。このように、搬送ベルト141L及び141Rの表面は、V字搬送部131のV字型の内側面を斜め上方に向かって延長した延長面を構成している。これによって、丸ベルト搬送部140が、V字搬送部131のV字形状を拡大する役割を果たしている。
【0023】
ベルト支持部142L及び142Rは板状の部材であり、搬送部141L及び141Rの丸ベルトが作物Sに圧迫されて凹まないようにこれらを支持している。V字搬送部131の従動ローラ134Rには、
図4(a)に示すように搬送部141R(丸ベルト)を搬送ベルト132Rと同じ方向に駆動する伝達部143が接続されている。本実施形態では、伝達部143は、搬送ベルト141Rが搬送ベルト132Rと同じ速さV2で走行するように、従動ローラ134Rの回転運動を搬送ベルト141Rに伝達する。同様に、ベルト支持部142Lの一端にも、V字搬送部131の従動ローラ134Lと接続された伝達部が設けられている。この伝達部は、搬送ベルト141Lが搬送ベルト132Lと同じ速さV1で走行するように、従動ローラ134Lの回転運動を搬送ベルト141Lに伝達する。なお、従動ローラ134R及び134Lの軸が延長されると共に、延長されたその軸に丸ベルトを駆動するプーリが設けられてもよい。この場合、従動ローラ134R及び134Lの回転運動が延長軸を介してプーリに伝達され、そのプーリによって丸ベルトが駆動される。
【0024】
還流搬送部150は、
図2及び
図5に示すように、V字搬送部131を左右から挟み込むように配置された一対の搬送ベルト151L及び151Rと、搬送ベルト151L及び151Rが巻き掛けられた従動ローラ152L及び152R並びに駆動ローラ153L及び153Rとを有している。搬送ベルト151L及び151Rは、前後方向に沿って水平に延びている。搬送ベルト151L及び151Rの最上面151xは、作物Sを載せて搬送する搬送面(以下、搬送面151xとする)を構成する。搬送面151xは、上下方向に関して
図4(a)の一点鎖線に示す位置関係で配置されている。この位置関係において、搬送ベルト132L及び132Rの前端部は、搬送面151xから上方に突出している。また、搬送ベルト141L及び141Rの後端部は、搬送面151xより下方に配置されている。従動ローラ152L及び152R並びに駆動ローラ153L及び153Rはフレーム部材24に支持されている。
【0025】
搬送ベルト151L及び151Rの搬送面151xの近くにはガイド154L、154R、155、156L及び156Rが設けられている。これらのガイドは作物Sを案内する平板状の部材である。ガイド154L及び154Rは、搬送面151xの外側に作物Sが逸脱しないように、搬送面151xの前端付近から左右の側端に亘ってL字型に形成されている。ガイド155は、搬送面151xの後端付近に配置されている。ガイド155は、V字搬送部131に近い部分ほど後方に配置されるように傾斜して配置されている。これにより、搬送面151x上の作物Sが、ガイド155によって円滑にV字搬送部131へと案内される。ガイド156L及び156Rは、搬送ベルト132L及び132Rの前部から搬送面151xへと作物Sを案内するように配置されている。
【0026】
駆動ローラ153L及び153Rは、図示しない駆動モータによって駆動される。この駆動モータは、PTO軸等からの動力によって動作する。これにより、従動ローラ152L及び駆動ローラ153Lに巻き掛けられた搬送ベルト151Lと、従動ローラ152R及び駆動ローラ153Rに巻き掛けられた搬送ベルト151Rとが、
図2及び
図5に示すB方向に走行する。
【0027】
以下、覆土部200及びその周辺構成について、より詳細に説明する。作溝器5及び6は、
図6に示すように、L字型の形状を有するフレーム部材25に固定、又は、支持されている。作溝器6は、支持部6aを介して上下方向の位置を調整可能にフレーム部材25に支持されている。フレーム部材25自体は、上下方向の位置を調整可能にメインフレーム2に支持されている。なお、フレーム部材25は、トラクターの後部の昇降機構に直接取り付けられてもよい。これによれば、トラクターの操作によってフレーム部材25を昇降できる。覆土部200は、覆土棒201L及び201R(土接触部材)、回転支持部202L及び202R、並びに、懸架鎖203L及び203Rを有している。覆土棒201L及び201Rは、L字型に折れ曲がった棒状の部材である。覆土棒201L及び201Rは、左右方向に関して作溝器6を互いの間に挟むように配置されている。覆土棒201L及び201Rの上端は、回転支持部202L及び202Rに固定されている。
【0028】
回転支持部202L及び202Rは、フレーム部材25から斜め前方に向かって水平に突出した支持軸25aに回転可能に支持されている。例えば、回転支持部202Rは、
図6のC1方向に回転可能である。回転支持部202L及び202Rは、覆土棒201L及び201Rの重みにより、覆土棒201L及び201Rの下端部がもっと下方(
図6のC2方向)に移動するように回転しようとする。一方、覆土棒201L及び201Rは、懸架鎖203L及び203Rによってフレーム部材25に懸架されている。具体的には、懸架鎖203L及び203Rの下端が、覆土棒201L及び201RにおけるL字の折れ曲がり部よりやや上方の位置に固定されている。また、懸架鎖203L及び203Rの上端が、フレーム部材25における支持軸25aより後方の部分に、鎖支持部25bによって支持されている。これにより、装置外部からの外力を受けない状態において、懸架鎖203L及び203Rは緊張した状態となる。そして、この状態において、覆土棒201L及び201Rは、懸架鎖203L及び203Rによってフレーム部材25に懸架され、
図6の位置に維持される。覆土棒201L及び201Rに石などが当たると、回転支持部202L及び202Rが支持軸25aに対して回転する。これにより、懸架鎖203L及び203Rが緊張状態から緩んだ状態になると共に、覆土棒201L及び201Rが持ち上がるように、覆土部200が構成されている。
【0029】
作物Sを播種する作業に当たっては、フレーム部材25の高さを調節することにより、作溝器5及び6を圃場と接触させると共に、覆土棒201L及び201Rの下部を、
図7の破線に示すように地面下に埋没させる。この状態において、覆土棒201L及び201Rの下部は、作溝器6における圃場との接触部分を前後方向に跨ぐように地面下に埋没する。作物Sは、後述の通り播種位置P1から落下すると、
図6に示す位置に着地する。この位置は、前後方向に関しては作溝器6における地面との接触部分と覆土棒201L及び201Rの後端との間、左右方向に関しては覆土棒201L及び201R同士の間の位置である。
【0030】
以下、本播種機1によって作物Sを圃場に播種する方法について説明する。作物Sを圃場に播種する作業に当たっては、播種機1がトラクターに牽引されて前進しつつ、下記の通りに作物Sが圃場に播種される。ホッパ110に収容された作物Sは、
図2に示すように、上部搬送部120によってA1方向に沿って後方へと搬送され、上部搬送部120の後端から下部搬送部130へと落下する。落下した作物Sは、V字搬送部131及び丸ベルト搬送部140全体によって形成されるV字部に、互いに積み重なるように受け取られる。これらの作物Sのうちの一部は、V字搬送部131の一対の表面132xに挟持される。一対の表面132xに挟持された作物Sは、
図5に示すように、A2方向に沿った1列の作物列Lsを形成しつつ、播種位置P1まで搬送される。
【0031】
一方、作物列Lsを形成する作物S以外の余剰の作物Sは、作物列Lsを形成する作物Sと共に、V字搬送部131及び丸ベルト搬送部140によってA2方向に搬送される。このとき、丸ベルト搬送部140の搬送ベルト141L及び141Rは、作物列Lsを形成する作物Sに余剰の作物Sが積み重なるように余剰の作物Sを支持する役割を担う。言い換えれば、搬送ベルト141L及び141Rは、A2方向に沿った位置に関して作物列Lsを形成する作物Sと余剰の作物Sが重複するように余剰の作物Sを支持する役割を担う。これらの余剰の作物Sは、V字搬送部131及び丸ベルト搬送部140からガイド156L及び156Rに移動する。ガイド156L及び156へと移動した作物Sは、還流搬送部150の搬送ベルト151L及び151Rの搬送面151x上へと、ガイド156L及び156Rによって
図5のC方向に案内される。このように、ガイド156L及び156Rは、余剰の作物Sを主たる搬送経路(A2方向に沿った搬送経路;本発明における所定の搬送経路)から還流搬送部150による搬送経路へと分岐させる機能を有している。還流搬送部150は、ガイド156L及び156Rに案内された作物Sを後方へと搬送する。還流搬送部150によって後方へと搬送された作物Sは、ガイド155によってV字搬送部131及び丸ベルト搬送部140の後端付近へと案内される。案内された作物Sは、V字搬送部131及び丸ベルト搬送部140によって再び前方へと搬送される。還流搬送部150は、このように、余剰の作物Sを主たる搬送経路に戻す(還流させる)機能を有している。
【0032】
V字搬送部131上で形成された作物列Ls中の作物Sは、
図1及び
図5に示す播種位置P1に順に到達する。播種位置P1に到達した作物Sは、
図7に示すようにV字搬送部131から落下し、圃場に着地する。一方、圃場の着地点では、覆土棒201L及び201Rの下部が当該着地点を左右から挟むように圃場の地面下に埋没している。このため、トラクター及び播種機1が前進すると、覆土棒201L及び201Rの下部が、着地した作物Sの左右から圃場の土を被せるように圃場の土を掘り返す。これにより、作物Sは、圃場に着地した直後に土で覆われる。本実施形態の覆土部200は、上述の通り、覆土棒201L及び201Rの下部が圃場に落ちた石等の凸部に当たると、回転支持部202L及び202Rが回転し、覆土棒201L及び201Rが持ち上がる。そして、播種機1の前進に従い、覆土棒201L及び201Rの下部が凸部を乗り越えるように上下する。このように、覆土棒201L及び201Rは、石等による凹凸が圃場にある場合でも、その凹凸に応じて上下に移動可能である。このため、覆土棒201L及び201Rが凹凸に引っかかりにくく、播種機1の前進に従って円滑に移動しやすい。
【0033】
さらに、本実施形態は、作物列Lsを作物S同士に隙間が生じにくいように形成するための以下の構成を備えている。第1の構成として、本実施形態は、作物Sを、
図5に示すように、V字搬送部131及び丸ベルト搬送部140上に過剰に供給された状態とする。「作物Sが過剰に供給された状態」とは、A2方向に沿った位置に関して作物S同士が互いに重複した状態をいう。
図5に示すように、作物列Ls中の作物Sは、A2方向に沿って1列に整列している。つまり、作物列Ls中では、作物Sは、A2方向に関する位置が重複していない。一方、作物列Lsを形成する作物Sには余剰の作物Sが、左右に隣り合ったり上下に重なり合ったりして積み重なる。つまり、作物列Lsを形成する作物Sと余剰の作物Sとは、A2方向に関する位置が重複する。このように、A2方向に関する作物Sの位置が重複し合った状態を、V字搬送部131及び丸ベルト搬送部140上に作物Sが過剰に供給された状態とする。
【0034】
本実施形態では、上部搬送部120及び還流搬送部150がV字搬送部131及び丸ベルト搬送部140の後端付近に作物Sを供給することによって作物Sが過剰に供給された状態となる。つまり、本実施形態では、上部搬送部120及び還流搬送部150の協働により、本発明における作物供給手段の機能が実現されている。作物Sの時間当たりの供給量は、上部搬送部120から下部搬送部130への作物Sの時間当たりの供給量、並びに、上部搬送部120及び還流搬送部150による作物Sの搬送速度の少なくともいずれかを調整することによって調整される。また、丸ベルト搬送部140の搬送ベルト141L及び141Rが、作物列Lsを形成することとなる作物SとA2方向に沿った位置に関して重複するように余剰の作物Sを支持しつつ搬送する。このため、かかる作物SがV字搬送部131及び丸ベルト搬送部140上に過剰に供給された状態となりやすい。
【0035】
このように、本実施形態では、作物列Lsより後方において作物S同士の位置がA2方向に関して互いに重複することで余剰の作物Sが生じやすくなっている。これにより、作物S同士の間にA2方向に隙間が生じたとしても、その隙間に余剰の作物Sが入り込みやすく、もって、隙間が生じにくくなる。
【0036】
第2の構成として、本実施形態では、
図3に示すように、搬送ベルト132L及び132Rが互いに異なる速さで移動する。これにより、作物SがR方向に回転しつつ搬送される。かかる構成によって、V字搬送部131及び丸ベルト搬送部140上に過剰に供給された作物S全体が撹拌されやすい。このような撹拌作用によって、作物S同士の間に生じた隙間に余剰の作物Sが入り込みやすくなる。さらに、このような撹拌作用によって、作物列Lsを構成する作物S以外の余剰の作物が作物列Lsから振り落とされやすくなる。なお、本実施形態では、丸ベルト搬送部140においても、搬送ベルト141L及び141Rが互いに異なる速さで移動する。したがって、さらに作物Sが撹拌されやすく、作物S同士の間に生じた隙間に余剰の作物Sが入り込みやすい。
【0037】
第3の構成として、本実施形態では、V字搬送部131が前方の部分ほど、つまり、搬送方向に関して下流の部分ほど高く位置するように傾斜している。したがって、作物Sは、A2方向に搬送されつつも上流へと転がりやすい。これにより、作物列Ls中の作物S同士の隙間が列中の相対移動によって狭まりやすい。
【0038】
以上説明した本実施形態によると、第1〜第3の構成を備えていることで、A2方向に沿って隙間のない作物列Lsが形成されやすい。そして、ガイド156L及び156Rによって、作物列Lsを構成する作物S以外の余剰の作物Sが還流搬送部150へと分岐させられる。これにより、播種位置P1には作物列Lsのみが到達する。この列には隙間が形成されにくいので、作物Sが播種位置P1に到達する間隔が変動しにくい。
【0039】
このように、本実施形態は、V字搬送部131及び丸ベルト搬送部140に作物Sを過剰に供給する構成を採用している。このため、作物を1つ1つ容器に収容することが必要となる従来技術と比べ、搬送部への作物の供給に精度を要しない。例えば、V字搬送部131を高速で移動させることなどによって作物Sの搬送速度を高めると、作物列Lsに隙間が生じやすくなるおそれがある。しかし、この場合にも、V字搬送部131及び丸ベルト搬送部140上に余剰の作物が生じるように上部搬送部120及び還流搬送部150から作物Sを十分に供給しさえすれば、作物S間に生じた隙間に余剰の作物が入り込み、隙間を埋めることができる。したがって、作物Sの搬送速度を高めても、作物Sが播種位置P1に到達する間隔に変動を生じにくくすることが容易である。よって、作物Sの播種を高速化しても圃場に播種される作物の間隔を所望の間隔に保ちやすい。
【0040】
また、本実施形態では、覆土部200が、着地した作物Sに圃場の土を被せていく。このため、作物Sが着地後に転がったりしにくい。よって、作物Sの植え付け位置が落下位置からずれにくくなる。仮に、作物Sが着地後に転がりやすいと、圃場における植え付け位置が狙った位置からずれやすい。かかる植え付け位置のずれは、播種速度を高速化するとより顕著になる。播種速度を上げるためには、上部搬送部120や下部搬送部130等の各搬送部による搬送速度を高速化すると共に、播種機1の前進速度を上げる必要があるが、播種機1の前進速度を上げるほど作物Sが着地後に転がりやすくなるためである。したがって、作物Sが着地後に転がりやすいと、播種速度を高速化させにくい。これに対し、本実施形態によれば、作物Sが着地後に転がりにくいため、播種速度を高速化しやすい。
【0041】
以上、本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々な変更が可能である。
【0042】
上述の実施形態では、本発明の第1及び第2の作物支持部材として、V字搬送部131がV字型に構成された平型の搬送ベルト132L及び132Rを有している。しかし、第1及び第2の作物支持部材として、これ以外の構成を有する部材が用いられてもよい。例えば、搬送ベルト132L及び132Rの一対の表面132xが、上述のV字搬送部131と比べて平行に近い位置関係で向かい合ってもよい。この場合においても、2つの搬送ベルトが互いに異なる速さで移動することで、2つの搬送ベルトに挟持された作物Sが回転しつつ搬送される。よって、搬送ベルト上の作物S全体が撹拌され、作物列に生じた隙間に余剰の作物Sが入り込みやすい。また、搬送ベルト132L及び132Rの一対の表面132xの間の角度が上述のV字搬送部131と比べて大きくてもよい。この場合においても、搬送ベルト132L及び132Rが互いに異なる速さで移動することで、例えば、一対の表面132xの境界に位置して一対の表面132xの両方と接触した作物Sが回転しつつ搬送される。よって、搬送ベルト上の作物S全体が撹拌され、作物列に生じた隙間に余剰の作物Sが入り込みやすい。また、上述の実施形態や変形例におけるベルト搬送は、ローラ搬送に代えてもよい。搬送ベルト132L及び132Rによるベルト搬送をローラ搬送に代える場合、搬送ベルト132L及び132Rの代わりに作物Sを挟持する一対のローラ搬送部を設けると共に、一対のローラ搬送部同士でローラの回転速度を異ならせることで、ローラ上の作物Sを回転及び撹拌させればよい。
【0043】
また、上述の実施形態には、V字搬送部131のみならず、丸ベルト搬送部140が設けられている。しかし、丸ベルト搬送部140が設けられなくてもよい。この場合には、例えば、丸ベルト搬送部140の代わりに、V字搬送部131に向けて上方から余剰の作物Sを案内する傾斜面を有するガイドを、丸ベルト搬送部140の位置に設けてもよい。この構成は、丸ベルト搬送部140を設けると共に、搬送ベルト141L及び141Rの走行を停止させた構成によっても代替可能である。また、V字搬送部131の代わりに、搬送ベルト132L及び132Rよりも搬送面の幅が大きい一対の搬送ベルトが、V字型に配置されてもよい。この場合には、V字搬送部131単独によるV字よりも大きいV字が一対の搬送ベルトによって形成される。このため、丸ベルト搬送部140がなくても、一対の搬送ベルト単独で過剰の作物Sを保持しやすい。この場合にはさらに、播種位置に到達するまでに余剰の作物SをV字の搬送部外へと分岐させるように調整されたガイドが設けられることが好ましい。
【0044】
また、上述の実施形態では、丸ベルト搬送部140の搬送ベルト141L及び141Rも、互いに異なる速さで走行する。しかし、搬送ベルト141L及び141Rが互いに同じ速さで走行してもよい。
【0045】
また、上述の実施形態における覆土棒201L及び201Rは、別の構成を有する土接触部材によっても代替可能である。例えば、棒状の部材でなく、その他の形状を有する部材、例えば板状の部材で代えてもよい。また、これらの土接触部材を圃場の土に接触させる態様は、さまざまに調整可能である。例えば、上述の実施形態では、覆土棒201L及び201Rの下部が作物Sの着地点を左右から挟むように圃場の土に接触(埋没)する。しかし、土接触部材の土との接触範囲が作物Sの着地点より前方になるように土接触部材を配置してもよい。この場合には、播種機1の前進に伴い、土接触部材が圃場の土を掘り返した直後に、掘り返した領域へと後方から作物Sが落下してくるように土接触部材を土と接触させればよい。これによって、掘り返されて柔らかくなった地面に作物Sが着地するため、作物Sが転がらずに着地しやすく、且つ、着地した作物Sに土が被さりやすい。