【実施例】
【0035】
以下実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
なお、分析に当たっては下記機器を使用した。
1H−NMR,
19F−NMR:日本電子(株)製GSX−400スペクトロメーター(JEOL GSX−400 spectrometer)。
【0036】
参考例1 ビス(トリフルオロメチル)亜鉛・(ジメチルプロピレンウレア)
2錯体の調製
撹拌子を備えた50mlの丸底二口フラスコに、アルゴン雰囲気下、ヘキサン(15ml)及びジメチルプロピレンウレア(2.41ml、20mmol、以下DMPUと略す)を入れ、撹拌しながら−60℃に冷却した。次いでこれに、トリフルオロメチルヨージド(9.8g、50mmol)をバブリングして供給した後、ジエチル亜鉛(1.0M−ヘキサン溶液、10ml、10mmol)を滴下した。同温度で20分撹拌の後、−20℃で72時間反応を行った。
【0037】
反応終了後、余剰のトリフルオロメチルヨージド及び未反応のジエチル亜鉛を減圧下、留去することにより粗製のビス(トリフルオロメチル)亜鉛・(DMPU)
2錯体を白色固体として得、次いでジエチルエーテル(15ml×3回)で洗浄、減圧乾燥することによりビス(トリフルオロメチル)亜鉛・(DMPU)
2錯体を白色固体として得た(4.15g、収率90%)。
1H−NMR(300MHz,DMF−d
7)δ3.25(t,8H)、2.84(s,12H)、1.94(quin,4H)。
19F−NMR(282MHz,DMF−d
7)δ−42.8(s,3F)。
【0038】
実施例1 (ジフルオロメチル)亜鉛・テトラメチルエチレンジアミン錯体の調製
撹拌子を備えた試験管に、アルゴン雰囲気下、(CF
3)
2Zn・(DMPU)
2(92mg,0.2mmol)、水素化ホウ素ナトリウム(NaBH
4)(26mg,0.7mmol)、及びジエチレングリコールジメチルエーテル(ジグライム)(0.4mL)を入れ、70℃で15分反応を行った。反応液を室温まで冷まし、これにテトラメチルエチレンジアミン(60μL,0.4mmol)を入れ、10分撹拌した。反応液にジエチルエーテル(15mL)と水(10mL)を加え、有機層を分離した後、水層をジエチルエーテル(10mL)で2回抽出した。得られた有機層を硫酸ナトリウムで乾燥させ、溶媒を減圧下留去することによって粗製のCF
2HZn・テトラメチルエチレンジアミン種を得た。これをごく少量の塩化メチレンに溶かし、多量のヘキサン中へ滴下することで白色沈殿が得られ、デカンテーションによって上澄み液を取り除いた後、減圧下で乾燥させることでZn−CF
2H・テトラメチルエチレンジアミン錯体を得た。
19F−NMR(282MHz,CDCl
3)δ−128.6(d,
2JFH=42.1Hz,2F)。
【0039】
実施例2 ジフルオロメチル亜鉛・N
1,N
2−ビス(2,4−ジメチトキシベンジル)エタン−1,2−ジアミン錯体の調製
撹拌子を備えた試験管に、アルゴン雰囲気下、Zn(CF
3)
2・(DMPU)
2(138mg,0.3mmol)、NaBH
4(68mg,1.8mmol)、及びジグライム(0.6mL)を入れ、70℃で15分反応を行った。反応液を室温まで冷まし、これにN
1,N
2−ビス(2,4−ジメチトキシベンジル)エタン−1,2−ジアミン(N1,N2-bis(2,4-dimethoxybenzyl)ethane-1,2-diamine、以下単に「1,2−ジアミン」という。)(72mg,0.2mmol)を入れ、30分撹拌した。反応液にジエチルエーテル(20mL)と水(30mL)を加え、有機層を分離した後、得られた有機層を硫酸ナトリウムで乾燥させ、溶媒を減圧下留去することによってジフルオロメチル亜鉛・1,2−ジアミン錯体(CF
2HZn・N1,N2-bis(2,4-dimethoxybenzyl)ethane-1,2-diamine)(0.1mmol)を得た。
19F−NMR(282MHz,CDCl
3)δ−128.7(br,2F)。
【0040】
実施例3 ジフルオロメチル亜鉛・1,2−ジアミン錯体を用いた4−ジフルオロニトロベンゼンの調製
撹拌子を備えた試験管に、アルゴン雰囲気下、ジフルオロメチル亜鉛・1,2−ジアミン錯体(CF
2HZn・N1,N2-bis(2,4-dimethoxybenzyl)ethane-1,2-diamine)(0.1mmol)、4−ニトロヨードベンゼン(25mg,0.1mmol)、チオフェン−2−カルボン酸銅(I)(10mg,0.1mmol)及びDMPU(1mL)を入れ、室温で48時間反応を行った後、1M塩酸(5mL)を加えて反応を停止した。ここにジエチルエーテル(15mL)を加え、有機層を分離した後、水層をジエチルエーテル(10mL)で2回抽出した。その後、全ての有機層を混合し、飽和食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、溶媒を減圧下留去した。ここで得られた混合物に、は内部標準物質としてベンゾトリフルオリド(BTF)を加えた後
19FNMRで分析し、目的物の収率が8%であることを確認した。得られた混合物から4−ジフルオロニトロベンゼンをカラムクロマトグラフィーによって分離、精製し、
1HNMR及び
19FNMRで同定を行った。
1H−NMR(300MHz,CDCl
3)δ8.35(d,
3JHH=7.8Hz 2H)、7.72(d,
3JHH=7.8Hz 2H)、6.73(t,
2JFH=55.8Hz 1H)。
19F−NMR(282MHz,CDCl
3)δ−113.2(d,
2JFH=55.8Hz 2F)。
【0041】
実施例4
撹拌子を備えた試験管に、アルゴン雰囲気下、CF
2HZn・テトラメチルエチレンジアミン錯体(0.1mmol)、下記式(8)で表される臭化シンナミル(8)(15μl,0.1mmol)及びN,N−ジメチルホルムアミド(0.5mL)を入れ、80℃で24時間反応を行った。
【0042】
【化6】
【0043】
その後、1M塩酸(5mL)を加えて反応を停止した。ここにジエチルエーテル(15mL)を加え、有機層を分離した後、水層をジエチルエーテル(10mL)で2回抽出した。全ての有機層を混合し、飽和食塩水で洗浄した後、硫酸ナトリウムで乾燥させ、溶媒を減圧下留去した。ここで得られた混合物に、内部標準物質としてBTFを加えた後
19FNMRで分析し、下記式(9)で表されるα−位がジフルオロメチル化された化合物および下記式(10)で表されるγ−位がジフルオロメチル化された化合物を観測、同定するとともに、これらの目的物の収率が3%であることを確認した。
【0044】
【化7】
【0045】
【化8】
【0046】
19F−NMR(α−CF
2H)(282MHz,CDCl
3)δ−116.0(dt,
2JFH=55.6Hz,
3JFH=17.2Hz 2F)。
19F−NMR(γ−CF
2H)(282MHz,CDCl
3)δ−120.3(ddd,
2JFF=283.0Hz,
2JFH=55.4Hz,
3JFH=15.5Hz 2F)。
【0047】
実施例5
撹拌子を備えた試験管に、アルゴン雰囲気下、CF
2HZn・テトラメチルエチレンジアミン(0.1mmol)、下記式(11)で表される4−ベンジルオキシヨードベンゼン(11)(15.5mg、0.05mmol)、Pd
2(dba)
3(1.4mg、0.0015mmol)、1,1‘−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン(3.3mg、0.006mmol)、(SIPr)AgCl(4,5-bis(2,6-diisopropylphenyl)-4,5-dihydroimidazol-2-ylideneAgCl)(26.7mg、0.05mmol)及び1,4−ジオキサン(1 mL)を入れ、50℃で24時間反応を行った。
【0048】
【化9】
【0049】
その後、水(5 mL)を加えて反応を停止した。この反応液をセライト濾過した後に、水(5mL)とジエチルエーテル(10 mL)を加え、有機層を分離した後、水層をジエチルエーテル(10 mL)で2回抽出した。その後、全ての有機層を混合し、飽和食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、溶媒を減圧下留去した。ここで得られた混合物に、内部標準物質としてBTFを加えた後
19F−NMRで分析し、下記式(12)で表される目的物の収率が38%であることを確認した。
【0050】
【化10】
【0051】
19F−NMR(282MHz,CDCl
3)δ―108.7(d,2JFH=57.6Hz 2F)