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特開2016-180794光ファイバ融着接続装置及び光ファイバの融着接続方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2016-180794(P2016-180794A)
(43)【公開日】2016年10月13日
(54)【発明の名称】光ファイバ融着接続装置及び光ファイバの融着接続方法
(51)【国際特許分類】
   G02B 6/255 20060101AFI20160916BHJP
【FI】
   G02B6/255
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2015-59845(P2015-59845)
(22)【出願日】2015年3月23日
(71)【出願人】
【識別番号】000110309
【氏名又は名称】SEIオプティフロンティア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100136722
【弁理士】
【氏名又は名称】▲高▼木 邦夫
(74)【代理人】
【識別番号】100174399
【弁理士】
【氏名又は名称】寺澤 正太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100170818
【弁理士】
【氏名又は名称】小松 秀輝
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 龍一郎
(72)【発明者】
【氏名】本間 敏彦
【テーマコード(参考)】
2H036
【Fターム(参考)】
2H036MA11
2H036NA09
2H036NA16
2H036NA17
(57)【要約】      (修正有)
【課題】光ファイバの融着作業に要する作業時間の増大を抑制する光ファイバ融着接続装置を提供する。
【解決手段】光ファイバ融着接続装置1は、第1画像を取得する第1顕微鏡14と、第2画像G2を取得する第2顕微鏡16と、光ファイバ100,101の端部同士を融着接続する融着接続機構4と、第1及び第2画像を利用した処理を行う制御部5と、第1及び第2画像を表示する画像表示部3と、備え、第1顕微鏡14は第1軸方向L1に沿って移動可能であり、第2顕微鏡16は第2軸方向L2に沿って移動しないように固定され、制御部5は、第1及び第2コア径を取得するファイバ径取得部24と、第1及び第2コア径を評価する評価値を取得した後に、評価値が所定範囲外であるか否かを判定して、評価値が所定範囲外である場合には光ファイバのコアの見た目を揃える処理を行う処理部25と、を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1光源から出射される光を受けることにより、第1方向から一対の光ファイバを観察した第1画像を取得する第1画像取得部と、
第2光源から出射される光を受けることにより、前記第1方向と交差する第2方向から前記一対の光ファイバを観察した第2画像を取得する第2画像取得部と、
前記一対の光ファイバの端部同士を融着接続する融着接続機構と、
前記融着接続機構を制御すると共に、前記第1画像及び前記第2画像を利用した処理を行う制御部と、
前記第1画像及び前記第2画像を表示する画像表示部と、
を備え、
前記第1画像取得部は前記第1方向に沿って移動可能であり、
前記第2画像取得部は前記第2方向に沿って移動しないように固定され、
前記制御部は、
前記第1画像に基づく前記光ファイバの第1コア径、及び、前記第2画像に基づく前記光ファイバの第2コア径を取得するコア径取得部と、
前記第1コア径及び前記第2コア径を評価する評価値を取得した後に、前記評価値が所定範囲外であるか否かを判定して、前記評価値が所定範囲外である場合には前記第1画像における前記光ファイバのコアと前記第2画像における前記光ファイバのコアとの見た目を揃える処理を行う処理部と、を有する、光ファイバ融着接続装置。
【請求項2】
前記評価値が所定範囲外である場合、前記処理部は、前記第1コア径が前記第2コア径に近づくように、前記第1画像取得部を前記第1方向に沿って移動させる、請求項1に記載の光ファイバ融着接続装置。
【請求項3】
前記評価値が所定範囲外である場合、前記処理部は、前記第1コア径及び前記第2コア径が互いに近づくように、前記第1画像及び前記第2画像に含まれた前記光ファイバのコアが占める領域を変化させる画像処理を行う、請求項1に記載の光ファイバ融着接続装置。
【請求項4】
前記評価値は、前記第1コア径に対する前記第1コア径と前記第2コア径の差分値の比率である、請求項1〜3の何れか一項に記載の光ファイバ融着接続装置。
【請求項5】
前記評価値は、前記第1画像に基づく前記光ファイバの第1クラッド径と前記第1コア径との比率、及び、前記第2画像に基づく前記光ファイバの第2クラッド径と前記第2コア径との比率である、請求項1〜3の何れか一項に記載の光ファイバ融着接続装置。
【請求項6】
請求項1〜5の何れか一項に記載の光ファイバ融着接続装置を用いた光ファイバの融着接続方法であって、
前記第1画像に基づく前記光ファイバの第1コア径、及び、前記第2画像に基づく前記光ファイバの第2コア径を取得するコア径取得ステップと、
前記第1コア径及び前記第2コア径を評価する評価値を取得した後に、前記評価値が所定範囲外であるか否かを判定して、前記評価値が所定範囲外である場合には前記第1画像における前記光ファイバのコアと前記第2画像における前記光ファイバのコアとの見た目を揃える処理を行う処理ステップと、を有する、光ファイバの融着接続方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ファイバ融着接続装置及び光ファイバの融着接続方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一方の光ファイバの端部と他方の光ファイバの端部とを接続する装置として、融着接続装置が挙げられる。下記特許文献1には、一方の光ファイバの端部と他方の光ファイバの端部とを融着接続するための融着接続装置が記載されている。この融着接続装置は、互いに異なる方向から光ファイバの側面を観察する一対の顕微鏡を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−169050号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1の装置は、一対の顕微鏡のそれぞれが光ファイバに近接又は離間する方向に移動可能である。この融着接続装置を利用した作業では、光ファイバに対してそれぞれの顕微鏡の焦点を調整した後に、光ファイバ端部の画像を取得する。そして、当該画像を利用して、光ファイバ端部同士の位置合わせを行い、その後光ファイバ同士を融着接続する。このような装置を用いた接続作業では、2回の焦点調整が行われるので、作業時間が長くなってしまう。そこで、一対の顕微鏡において、一方の顕微鏡のみを移動可能とし他方の顕微鏡を固定した融着接続装置が考えられる。
【0005】
しかし、一方の顕微鏡を移動可能とし、他方の顕微鏡を固定した融着接続装置は、周囲環境によっては、一方の顕微鏡から得られた画像に含まれた光ファイバと、他方の顕微鏡から得られた画像に含まれた光ファイバとが、異なるように見えることがある。この場合、光ファイバの接続品質には実質的な問題がないにも関わらず、不要な確認作業を生じさせる虞がある。従って、光ファイバの融着接続作業に要する作業時間が長くなってしまう。
【0006】
本発明は、光ファイバの融着作業に要する作業時間の増大を抑制できる光ファイバ融着接続装置及び光ファイバ融着接続方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一側面に係る光ファイバ融着接続装置は、第1光源から出射される光を受けることにより、第1方向から一対の光ファイバを観察した第1画像を取得する第1画像取得部と、第2光源から出射される光を受けることにより、第1方向と交差する第2方向から一対の光ファイバを観察した第2画像を取得する第2画像取得部と、一対の光ファイバの端部同士を融着接続する融着接続機構と、融着接続機構を制御すると共に、第1画像及び第2画像を利用した処理を行う制御部と、第1画像及び第2画像を表示する画像表示部と、を備え、第1画像取得部は第1方向に沿って移動可能であり、第2画像取得部は第2方向に沿って移動しないように固定され、制御部は、第1画像に基づく光ファイバの第1コア径、及び、第2画像に基づく光ファイバの第2コア径を取得するファイバ径取得部と、第1コア径及び第2コア径を評価する評価値を取得した後に、評価値が所定範囲外であるか否かを判定して、評価値が所定範囲外である場合には第1画像における光ファイバのコアと第2画像における光ファイバのコアとの見た目を揃える処理を行う処理部と、を有する。
【0008】
本発明の別の側面に係る光ファイバの融着接続方法は、上記光ファイバ融着接続装置を用いた光ファイバの融着接続方法であって、第1画像に示された第1光ファイバの第1コア径、及び、第2画像に示された第2光ファイバの第2コア径を取得するコア径取得工程と、第1コア径及び第2コア径を評価する評価値を取得した後に、評価値が所定範囲外であるか否かを判定して、評価値が所定範囲外である場合には評価値を所定範囲内にする処理を行う処理工程と、を有する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一側面に係る光ファイバ融着接続装置及び本発明の別の側面に係る光ファイバの融着接続方法によれば、光ファイバの融着接続作業に要する作業時間の増大を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施形態に係る融着接続装置を示す概略構成図である。
図2】画像表示部に表示された第1画像及び第2画像の一例である。
図3】実施形態に係る光ファイバの融着接続方法を示すフローチャートである。
図4図3のフローチャートにおける処理ステップの詳細を示すフローチャートである。
図5】光ファイバの径方向に沿った輝度の強度を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[本願発明の実施形態の説明]
最初に本願発明の実施形態の内容を列記して説明する。
【0012】
本発明の一側面に係る光ファイバ融着接続装置は、第1光源から出射される光を受けることにより、第1方向から一対の光ファイバを観察した第1画像を取得する第1画像取得部と、第2光源から出射される光を受けることにより、第1方向と交差する第2方向から一対の光ファイバを観察した第2画像を取得する第2画像取得部と、一対の光ファイバの端部同士を融着接続する融着接続機構と、融着接続機構を制御すると共に、第1画像及び第2画像を利用した処理を行う制御部と、第1画像及び第2画像を表示する画像表示部と、を備え、第1画像取得部は第1方向に沿って移動可能であり、第2画像取得部は第2方向に沿って移動しないように固定され、制御部は、第1画像に基づく光ファイバの第1コア径、及び、第2画像に基づく光ファイバの第2コア径を取得するコア径取得部と、第1コア径及び第2コア径を評価する評価値を取得した後に、評価値が所定範囲外であるか否かを判定して、評価値が所定範囲外である場合には第1画像における光ファイバのコアと第2画像における光ファイバのコアとの見た目を揃える処理を行う処理部と、を有する。
【0013】
この光ファイバ融着接続装置は、第2画像取得部が第2方向に沿って移動しないように固定されている。これにより、当該光ファイバ融着接続装置を用いて光ファイバの融着接続を行う際に、第1画像取得部は一対の光ファイバに対して焦点調整を行うが、第2画像取得部は一対の光ファイバに対して焦点調整を行わない。従って、第2画像取得部の焦点調整に必要な時間を省略できるので、一対の光ファイバの融着接続の作業時間を短縮できる。
【0014】
ここで、第2画像取得部は焦点を調整しないので、例えば、周囲温度が低温又は高温であることにより、光ファイバ融着接続装置を構成する部品が熱変形すると、焦点がずれることがある。一方、第1画像取得部は、熱変形に対応して明瞭な画像が得られるように焦点を調整できる。そうすると、第1画像取得部から得られた第1画像に含まれた光ファイバと、第2画像取得部から得られた第2画像に含まれた光ファイバと、が異なって見える場合があり得る。光ファイバ融着接続装置は、第1画像取得部から得られた第1画像を利用して一対の光ファイバ同士の光軸合わせを行うので、光ファイバ同士の接続品質に問題は生じない。しかし、同一の対象物を観察しているにも関わらず、異なるように表示された第1画像及び第2画像を見た作業者は、違和感を覚え、例えば、光ファイバ融着接続装置が正しく動作しているかといった確認作業を行うことがあり得る。そうすると、接続作業には必須ではない確認作業時間が発生し、作業時間が長くなってしまう。
【0015】
そこで、この光ファイバ融着接続装置では、制御部が第1画像における光ファイバの第1コア径と、第2画像における光ファイバの第2コア径とを評価する評価値が、所定範囲外である場合に、第1画像における光ファイバのコアと第2画像における光ファイバのコアとの見た目を揃える処理を行う。そうすると、第1画像と第2画像とを見た作業者の違和感が軽減されるので、確認作業といった不要な作業の発生を防止できる。従って、光ファイバの融着接続作業に要する作業時間の増大を抑制できる。
【0016】
処理部は、評価値が所定範囲外である場合には、第1コア径が第2コア径に近づくように、第1顕微鏡を第1方向に沿って移動させてもよい。この処理によれば、物理的な動作により第1画像と第2画像の見た目を近づけることができる。従って、制御部における計算負荷を軽減することができる。
【0017】
処理部は、評価値が所定範囲外である場合には、第1コア径及び第2コア径が互いに近づくように、第1画像及び第2画像に含まれた光ファイバのコアが占める領域を変化させる画像処理を行ってもよい。この処理によれば、物理的な構成要素を移動させる必要がない。従って、第1画像と第2画像の見た目を近づける処理を高速化することができる。
【0018】
評価値は、第1コア径に対する第1コア径と第2コア径の差分値の比率としてもよい。この評価値によれば、作業者の違和感を軽減する処理を好適に実施することができる。
【0019】
評価値は、第1画像に基づく光ファイバの第1クラッド径と第1コア径との比率、及び、第2画像に基づく光ファイバの第2クラッド径と第2コア径との比率としてもよい。この評価値によれば、作業者の違和感を軽減する処理を好適に実施することができる。
【0020】
本願発明の他の実施形態は、上記光ファイバ融着接続装置を用いた光ファイバの融着接続方法であって、第1画像に基づく光ファイバの第1コア径、及び、第2画像に基づく光ファイバの第2コア径を取得するコア径取得ステップと、第1コア径及び第2コア径を評価する評価値を取得した後に、評価値が所定範囲外であるか否かを判定して、評価値が所定範囲外である場合には第1コア径及び第2コア径を評価する評価値を取得した後に、評価値が所定範囲外であるか否かを判定して、評価値が所定範囲外である場合には第1画像における光ファイバのコアと第2画像における光ファイバのコアとの見た目を揃える処理を行う処理ステップと、を有する。
【0021】
この光ファイバ融着接続方法では、制御部が第1画像における光ファイバの第1コア径と、第2画像における光ファイバの第2コア径とを評価する評価値が、所定範囲外である場合に、第1画像と第2画像の見た目を近づける処理を行う。そうすると、第1画像と第2画像とを見た作業者の違和感が軽減されるので、確認作業といった不要な作業の発生を防止できる。従って、光ファイバの融着接続作業に要する作業時間の増大を抑制できる。
【0022】
[本願発明の実施形態の詳細]
以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、以下の説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には、同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。
【0023】
図1は、実施形態に係る融着接続装置を示す概略構成図である。図1に示されるように、光ファイバ融着接続装置1は、光ファイバ同士を融着接続するための装置である。光ファイバ融着接続装置1は、画像観察機構2と、画像表示部3と、融着接続機構4と、制御部5とを備える。画像観察機構2は、一対の光ファイバ100,101を観察して、第1及び第2画像G1,G2(図2参照)を取得する。画像表示部3は、第1及び第2画像G1,G2を表示する。融着接続機構4は、光ファイバ100,101のそれぞれの端部を融着接続する。制御部5は、画像観察機構2、画像表示部3、及び融着接続機構4を制御する。
【0024】
画像観察機構2は、載置部11と、第1光源12と、第2光源13と、第1顕微鏡(第1画像取得部)14と、フォーカス駆動部15と、第2顕微鏡(第2画像取得部)16と、固定部17と、を備える。載置部11は、光ファイバ100,101を保持する。第1及び第2光源12,13は、それぞれ異なる方向から光ファイバ100,101に向かって光を出射する。第1光源12及び第2光源13は、例えば発光ダイオード等の発光素子である。第1光源12及び第2光源13は、例えば赤色光を出射する。
【0025】
第1顕微鏡14は、載置部11を挟んで第1光源12と対向するように配置される。第1顕微鏡14は、第1光源12から出射される光を受けることにより、光ファイバ100,101の側面(特に光ファイバ100,101のコアの中心及び外径D3)を観察する。第1顕微鏡14として、例えばCCDカメラ(Charge-Coupled Device Camera)、CMOSカメラ(Complementary Metal Oxide Semiconductor Camera)等が利用される。第1顕微鏡14は、載置部11に載置された光ファイバ100,101を精度よく観察できるように、フォーカス駆動部15による焦点調整が可能である。第1顕微鏡14による観察結果は、第1画像G1として取得される。第1画像G1は、画像データとして制御部5へ送信される。
【0026】
第2顕微鏡16は、載置部11を挟んで第2光源13と対向するように配置される。第2顕微鏡16は、第2光源13から出射される光を受けることにより、光ファイバ100,101の側面(特に光ファイバ100,101のコアの中心及び外径D3)を観察する。第2顕微鏡16には、例えばCCDカメラ、CMOSカメラ等が利用される。第2顕微鏡16は、固定部17によって移動しないように治具に固定される。第2顕微鏡16による観察結果は、第2画像G2として取得される。第2画像G2は、画像データとして制御部5へ送信される。
【0027】
以下の説明において、第1光源12から第1顕微鏡14に向かって出射される光の軸方向を第1軸方向L1(第1方向)とし、第2光源13から第2顕微鏡16に向かって出射される光の軸方向を第2軸方向L2(第2方向)とする。第1軸方向L1と第2軸方向L2とが載置部11上において互いに交差するように、第1光源12、第2光源13、第1顕微鏡14、及び第2顕微鏡16がそれぞれ配置される。従って、第1顕微鏡14及び第2顕微鏡16は、互いに異なる方向(角度)から光ファイバ100,101を観察するように設置される。なお、第1軸方向L1と第2軸方向L2とがなす角度は、例えば60°〜120°である。
【0028】
画像表示部3は、第1画像G1及び第2画像G2等を表示する。画像表示部3として、例えば種々のディスプレイ(液晶ディスプレイ等)が用いられる。図2に示されるように、画像表示部3には、光ファイバ100,101が水平方向に延在するように第1及び第2画像G1,G2が表示される。また、第1及び第2画像G1,G2は、光ファイバ100,101の延在方向に並置される。なお、画像表示部3には、第1及び第2画像G1,G2が画面における縦方向に並置されてもよい。この場合には、光ファイバ100,101の延在方向が画面における縦方向に沿うように表示される。
【0029】
再び図1を参照すると、融着接続機構4は、載置部11を移動させる機構と、融着接続を行うための放電機構と、を有する。この移動機構は、制御部5から入力される制御信号に基づいて駆動される。
【0030】
制御部5は、光ファイバ100,101同士の光軸の位置を合せる機能を有する。制御部5として、例えば一又は複数の集積回路(IC)で形成されたCPU(中央演算装置)が用いられる。具体的には、制御部5は、フォーカス駆動部15を制御して第1顕微鏡14の焦点を調整すると共に、第1及び第2顕微鏡14,16を制御して第1及び第2画像G1,G2を取得する。次に、制御部5は、第1及び第2画像G1,G2を利用して、光ファイバ100,101のコアの中心位置を取得する。そして、制御部5は、当該取得結果を利用して、融着接続機構4の移動機構を制御する。
【0031】
制御部5は、画像取得部21を有する。画像取得部21は、画像観察機構2において、第1及び第2顕微鏡14,16が撮像した光ファイバ100,101の画像を第1及び第2画像G1,G2として取得する。また、画像取得部21は、取得した上記第1及び第2画像G1,G2の輝度分布波形(図5参照)を取得する。
【0032】
制御部5は、光ファイバ100,101同士の光軸の位置を合せるための機能的構成要素として、中心位置判定部22と、中心位置決定部23と、を有する。
【0033】
中心位置判定部22は、第1画像G1において、光ファイバ100,101のコアがそれぞれ認識できるか否かを判定する。中心位置判定部22は、例えば画像取得部21によって得られた(第1顕微鏡14によって撮像された)第1画像G1の輝度分布波形を用いて、第1軸方向L1から観察された光ファイバ100,101のコアが認識できるか否かを判定する。中心位置判定部22は、画像取得部21によって得られた(第2顕微鏡16によって撮像された)第2画像G2の輝度分布波形を用いて、第2軸方向L2から観察された光ファイバ100,101のコアが認識できるか否かを判定しても良い。
【0034】
中心位置決定部23は、光ファイバ100,101のコアの中心位置をそれぞれ決定する。中心位置決定部23は、例えば第1画像G1の輝度分布波形を用いて、第1軸方向L1から観察された光ファイバ100,101のコアの中心位置をそれぞれ決定する。中心位置決定部23は、第2画像G2の輝度分布波形を用いて、第2軸方向L2から観察された光ファイバ100,101の外径D3(図2参照)を利用して、中心位置を決定する。
【0035】
また、制御部5は、画像表示部3に表示される第1画像G1と第2画像G2の見た目を揃える機能を有する。具体的には、制御部5は、第1画像G1に含まれた一対の光ファイバ100,101における第1コア径D1(図2参照)と第2画像G2に含まれた一対の光ファイバ100,101における第2コア径D2(図2参照)とを、作業者に違和感を覚えさせない程度に第1及び第2画像G1,G2の見た目を揃える。
【0036】
制御部5は、第1画像G1と第2画像G2の見た目を揃える機能のための機能的構成要素として、ファイバ径取得部24と処理部25とを有する。
【0037】
ファイバ径取得部24(コア径取得部)は、第1画像G1に含まれた光ファイバ100,101の第1コア径D1を取得する。また、ファイバ径取得部24は、第2画像G2に含まれた光ファイバ100,101の第2コア径D2を取得する。ファイバ径取得部24は、画像取得部21で取得された輝度分布波形を利用して第1及び第2コア径D2を取得する。
【0038】
処理部25は、ファイバ径取得部24において取得された第1及び第2コア径D2を利用して、第1及び第2画像G1,G2の見た目を揃える処理を実施する。具体的には、処理部25は、第1及び第2コア径D2が見た目に違和感を覚える程度の差異が生じているか否かを判定する。そして、処理部25は、違和感を覚える程度の差異が生じていると判定した場合には、第1及び第2画像G1,G2の見た目を揃える処理を実施し、処理後の第1及び第2画像G1,G2を画像表示部3に表示させる。一方、処理部25は、違和感を覚える程度の差異が生じていないと判定した場合には、第1及び第2画像G1,G2をそのまま画像表示部3に表示させる。
【0039】
次に、本実施形態に係る光ファイバの融着接続装置を用いた光ファイバの融着接続方法について、図3及び図4を参照しつつ説明する。図3は、本実施形態に係る光ファイバの融着接続方法を示すフローチャートである。図4は、本実施形態に係る光ファイバの融着接続方法における処理ステップの詳細を示すフローチャートである。
【0040】
図3に示されるように、光ファイバ100の端部と光ファイバ101の端部とが対向するように、当該光ファイバ100,101を載置部11に固定する(ステップS1)。次に、第1光源12を用いて光ファイバ100,101に光を照射する。続いて、制御部5は、フォーカス駆動部15を駆動することによって第1顕微鏡14の焦点位置を調整する。そして、画像取得部21は、光ファイバ100,101を第1方向から見た第1画像G1を取得する(ステップS2)。次に、画像取得部21は、第1画像G1から光ファイバ100,101の径方向に沿った輝度分布波形を取得する。そして、中心位置決定部23は、輝度分布波形に基づいて、光ファイバ100,101のコアの中心位置を決定する(ステップS3)。
【0041】
ここで、光ファイバ100,101のコアの中心位置を決定する処理について説明する。図5は、光ファイバ100の径方向に沿った輝度の強度を示す。図5における輝度分布波形31は、図2の(a)部における線A−Bに沿った輝度分布を示す。輝度分布波形31では、径方向の中央部に明部32が形成されており、当該明部32の径方向両側に暗部33が形成される。
【0042】
光ファイバのコアの中心位置は、輝度分布波形31における最大強度となる径方向の位置としてもよい。また、光ファイバのコアの中心位置は、予め設定された閾値を示す直線と交差する輝度分布波形31の点間の中央としてもよい。光ファイバのコアの中心位置は、輝度分布波形31において、明部32における極小値となる2つの径方向の位置(ピーク35,36の間の極小値37)を認識し、これらの極小値37の中央としてもよい。
【0043】
再び図3に示されるように、制御部5は、第2光源13を用いて光ファイバ100,101に光を照射する。次に、画像取得部21は、光ファイバ100,101を第2軸方向から見た第2画像G2を取得する(ステップS4)。次に、画像取得部21は、第2画像G2から光ファイバ100,101の径方向に沿った輝度分布波形を取得する。
【0044】
制御部5は、第2画像G2から光ファイバ100,101のコアの中心位置を取得する。中心位置決定部23は、光ファイバ100,101の外径D3から算出される中心を、コアの中心として検出する(ステップS6)。光ファイバ100,101の外径D3は、第2画像G2から検出した輝度分布波形を用いて検出する。なお、第2画像G2から光ファイバ100,101のコアを認識する処理を実施し、コアを認識できなかった場合(ステップS5:NO)には、ファイバ100,101の外径D3から算出される中心をコアの中心として検出し(ステップS6)、コアを認識できた場合(ステップS5:YES)には、光ファイバ100,101のコアの中心位置を取得する(ステップS7)こととしても良い。
【0045】
ステップS3、S6、(更にはS7)によって決定された光ファイバ100,101の中心位置を用いて、光ファイバ100,101の位置合わせを行う(ステップS8)。
【0046】
次に、制御部5は、画像表示部3に表示される第1画像G1と第2画像G2の見た目を揃える処理を実行する(ステップS9)。図4に示されるように、ファイバ径取得部24は、第2画像G2から取得された輝度分布波形を利用して第2コア径D2を取得する(ステップS9a)。具体的には、径方向の中央部における明部32をコアに対応する部分として抽出し、注出した部分の幅を取得する。コアに対応する部分の注出には、輝度分布波形31におけるその他の特徴的な要素を利用してもよい。また、ファイバ径取得部24は、第2画像G2から取得された輝度分布波形を利用して光ファイバ100,101の外径D3を取得する。
【0047】
処理部25は、第2画像G2の評価値を取得する。評価値は、下記式(1)により示される。この評価値は、いわゆる内外比(=第2コア径D2/外径D3)を利用した値である。内外比は、例えば0.24(=24%)に設定される。
評価値=0.24−(第2コア径D2/外径D3)…(1)
【0048】
処理部25は、第1コア径D1と第2コア径D2との間に、違和感を覚える程度の差異が生じているか否かを判定する(ステップS9c)。具体的には、処理部25は、評価値が、所定の範囲内にあるか否かを判定する。例えば、評価値が、−0.03以上+0.03以下の範囲内にあるか否かを判定する。この評価値がこの範囲内にある場合には(即ち、内外比が21%以上27%以下である場合)、違和感を覚える程度の差異が生じていないと判定される。一方、この評価値がこの範囲外にある場合(即ち、内外比が21%以下又は27%以上である場合)には、違和感を覚える程度の差異が生じていると判定される。
【0049】
処理部25は、違和感が生じていないと判定された場合(評価値が−0.03以上+0.03以下である場合)に(ステップS9c:YES)、第1及び第2画像G1,G2を画像表示部3へ表示させる(ステップS9d,S10)。
【0050】
一方、処理部25は、違和感が生じていると判定された場合(評価値が−0.03以下又は+0.03以上である場合)に(ステップS9c:NO)、第1画像G1と第2画像G2の見た目を揃える処理を実施する(ステップS9e〜S9j)。具体的には、処理部25は、フォーカス駆動部15を駆動させて第1顕微鏡14のピントをずらす(ステップS9e)。例えば、光ファイバ100,101に対して第1顕微鏡14を近づけた場合には、第1コア径D1は、小さくなる。逆に、光ファイバ100,101に対して第1顕微鏡14を遠ざけた場合には、第1コア径D1は、大きくなる。第1顕微鏡14の位置を所定距離移動させた後に、再び第1画像G1を取得して(ステップS9f)、第1コア径D1と外径D3とを取得する(ステップS9g)。そして、上記式(1)を利用して第1画像G1の評価値を算出し(ステップS9h)、第1画像G1の評価値が第2画像G2の評価値と同じとみなせるか否かを判定する(ステップS9j)。
【0051】
第1画像G1の評価値が第2画像G2の評価値と同じであるとみなせない場合(ステップS9j:NO)には、第1画像G1と第2画像G2との差異は未だに違和感を生じ得ると考えられる。従って、再びステップS9e〜S9jを実施する。一方、第1画像G1の評価値が第2画像G2の評価値と同じであるとみなせる場合(ステップS9j:YES)には、第1画像G1と第2画像G2との差異は違和感を生じさせない程度であると考えられる。従って、ステップS9dを実施する(図2(b)参照)。なお、このステップS9は、融着接続のための放電が開始される前に、光ファイバ100,101同士が所定の間隔を設けて位置合わせされた状態が所定時間だけ設定される場合(放電前停止ステップを有する場合)に特に有効である。
【0052】
次に、図2に示されるように、融着接続機構4は、突き合わせ放電により光ファイバ100,101の端部同士を融着接続する(ステップS11)。以上のステップS1〜S11により光ファイバ100,101同士が融着接続される。
【0053】
光ファイバ融着接続装置1及び光ファイバ融着接続装置1を利用した光ファイバの融着接続方法は、第2顕微鏡16が第2軸方向L2に沿って移動しないように固定される。これにより、当該光ファイバ融着接続装置1を用いて光ファイバ100,101の融着接続を行う際に、第1顕微鏡14は一対の光ファイバ100,101に対して焦点調整を行うが、第2顕微鏡16は一対の光ファイバ100,101に対して焦点調整を行わない。従って、第2顕微鏡16の焦点調整に必要な時間を省略できるので、一対の光ファイバの融着接続の作業時間の増大を抑制できる。
【0054】
ここで、第2顕微鏡16は焦点を調整しないので、例えば、周囲温度が低温(例えば−50℃)又は高温(例えば+80℃)であることにより、光ファイバ融着接続装置1を構成する部品が熱変形すると、焦点がずれることがある。一方、第1顕微鏡14は、熱変形に対応して明瞭な第1画像G1が得られるように焦点を調整できる。そうすると、第1顕微鏡14から得られた第1画像G1に含まれた光ファイバ100,101と、第2顕微鏡16から得られた第2画像G2に含まれた光ファイバ100,101と、が異なって見える場合があり得る。光ファイバ融着接続装置1は、第1顕微鏡14から得られた第1画像G1と第2顕微鏡から得られた第2画像G2をデータ処理して一対の光ファイバ100,101同士の光軸合わせを行うので、光ファイバ100,101同士の接続品質に問題は生じない。しかし、同一の光ファイバ100,101を観察しているにも関わらず、異なるように表示された第1画像G1及び第2画像G2を見た作業者は、違和感を覚え、例えば、光ファイバ融着接続装置1が正しく動作しているかといった確認作業を行うことがあり得る。そうすると、接続作業には必須ではない確認作業時間が発生し、作業時間が長くなってしまう。
【0055】
そこで、この光ファイバ融着接続装置1では、制御部5が第1画像G1における光ファイバの第1コア径D1と、第2画像G2における光ファイバの第2コア径D2とを評価する評価値が、所定範囲外である場合に、第1画像G1と第2画像G2との見た目を揃える処理を行う。そうすると、第1画像G1と第2画像G2とを見た作業者の違和感が軽減されるので、確認作業といった不要な作業の発生を防止できる。従って、光ファイバ100,101の融着接続作業に要する作業時間の増大を抑制できる。
【0056】
処理部25は、評価値が所定範囲外である場合には、第1コア径D1が第2コア径D2に近づくように、第1顕微鏡14を第1軸方向L1に沿って移動させる。この処理によれば、物理的な動作により第1画像G1における第1コア径D1を第2画像G2における第2コア径D2に近づけることができる。従って、制御部5における計算負荷を軽減することができる。
【0057】
評価値は、第1画像G1に基づく光ファイバ100,101の第1クラッド径と第1コア径D1との比率、及び、第2画像G2に基づく光ファイバ100,101の第2クラッド径と第2コア径D2との比率とする。この評価値によれば、作業者の違和感を軽減する処理を好適に実施することができる。
【0058】
本発明は、前述した実施形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能である。
【0059】
例えば、上記実施形態では、第1画像G1と第2画像G2との見た目を揃えるために、第1顕微鏡14の焦点位置をずらして、第2顕微鏡16から得られる第2画像G2と同じような第1画像G1を得た。しかし、第1画像G1と第2画像G2との見た目を揃える方法は、この方法に限定されることはない。例えば、第1画像G1又は第2画像G2を画像処理することにより、第1画像G1と第2画像G2との見た目を揃えてもよい。具体的には、処理部25は、第1コア径D1及び第2コア径D2が互いに近づくように、第1画像G1及び第2画像G2の少なくとも一方に含まれた光ファイバ100,101のコアが占める領域を変化させる画像処理を行う。すなわち、第1及び第2画像G1,G2における白黒部の面積比率を変更する画像処理を行う。この処理によれば、物理的な構成要素を移動させる必要がない。従って、第1コア径D1及び第2コア径D2が互いに近づける処理を高速化することができる。
【0060】
また、評価値は上記式(1)とは別の式によって示されるものであってもよい。例えば、第1コア径D1と第2コア径D2とを直接に対比する評価値であってもよい。この場合の評価値は、下記式(2)により示される。この評価値によれば、作業者の違和感を軽減する処理を好適に実施することができる。式(2)は、第1コア径D1に対する、第1コア径D1と第2コア径D2との差分の絶対値の比率である。そして、式(2)により示される評価値が、−0.125(−12.5%)以上+0.125(+12.5%)以下である場合は、第1及び第2コア径D2とは違和感を覚えさせないと判定する。一方、−0.125(−12.5%)以下又は+0.125(+12.5%)以上である場合には、第1及び第2コア径D1,D2とは違和感を覚えさせると判定し、見た目を揃える処理を実施する。
評価値=|第1コア径D1−第2コア径D2|/第1コア径D1…(2)
【0061】
また、見た目を揃えるステップS8が実施されるタイミングは、融着接続ステップの前に限定されることはない。例えば、融着接続を実施した後に、追加放電を行うこともあり得る。そこで、融着接続後であり、且つ、追加放電前にステップS8を実施してもよい。
【符号の説明】
【0062】
1…光ファイバ融着接続装置、2…画像観察機構、3…画像表示部、4…融着接続機構、5…制御部、11…載置部、12…第1光源、13…第2光源、14…第1顕微鏡(第1画像取得部)、15…フォーカス駆動部、16…第2顕微鏡(第2画像取得部)、17…固定部、21…画像取得部、22…中心位置判定部、23…中心位置決定部、24…ファイバ径取得部、25…処理部、D1…第1コア径、D2…第2コア径、D3…外径、G1…第1画像、G2…第2画像。
図1
図2
図3
図4
図5